北岳バットレス ピラミッドフェース [アルパイン]


日付 2013/08/03(土)-04(日)

天候 03日 晴れのち曇り
04日 晴れのち曇り
パーティー構成 3B・こうの

アプローチ 03日 [7:10] 国府津駅==[9:40] 芦安駐車場==[10:40]広河原
ルートと所要時間
03日
広河原[10:50]--《1:40》--[12:30]白根御池 BC設営(幕営)

04日
BC[2:05]起床[2:55]--《1:25》--[4:20]下部岩壁ピラミッドフェース取付(アンザイレン)[5:10]--《1:30》--[6:40]ピラミッドフェース4P目終了点(崩落ハング下)--《2:40》--[9:20]ピラミッドフェース終了点(四尾根1P目終了点〜懸垂1P)--《0:15》--[9:35]四尾根テラス(懸垂4P)[9:55]--《1:35》--[11:30]Bガリー大滝基部--《1:10》--[12:40]BC 撤収[13:10]--《1:05》--[14:15]広河原]==芦安==帰路


ルート情報 ・ この一週間でピラミッドフェース基部下(Dガリーへのアプローチ路)の雪渓が切れました。五尾根支稜の左上ランペまではシュルンドをトラバースして通過できますが、念のためスタカットした方が良いと思います。

・ 先週の四尾根でするっと2本、今回のピラミッドフェースでは浮きが3-4本ありました。このように浮いていたり全く効いていない残置ハーケンが多くあります。ピラミッド以外にもバットレスを登攀するならハンマーとハーケンを持って、叩き直すなり新たに打ち直すなりする気持ちを持った方がよろしいかと。

・ 残置支点に掛かっているスリングもハーケン以上に相当ヨレています。懸垂で利用する可能性があるなら、数本の捨て縄を装備して不安を感じたら掛け替える気持ちが必要かも知れません。(切った古いスリングは下山後ゴミ箱へ)

・ ピラミッド4P目の崩落ハング下のバンドに乗り上がる箇所で相当の落石を起こします。後続や下部岩壁などに他のパーティーが確認できる場合は事前に注意を呼び掛ける方がよろしいかと。

・ 各ピッチ中のフェースは終始逆層のカチですが、指先に掛かる感触はしっかりしています。

・ 赤い岩のチャートのスメア感は全くしっくりこなくてツルツルですが、多少ザラついた(白くなっている)箇所を見出せばそこそこのフリクションが得られます。ばっちり立ち込めるかと問われると微妙、あなたの技量次第です。
(昨年の奥壁の時と比べると全く効かないって感じでした。うっすらと苔がついているような感じでしたので、湿度にもよるのでしょうか)

・ Cガリーのガレは一歩踏み出すと50cmほど流れますし同時に落石を誘発させます。その落石はCガリー大滝基部まで達する事もあります。できればBガリーからのアプローチは避けた方がよいのではないでしょうか。

・ Bガリー大滝からの踏み跡は明瞭ですが、四尾根などからCガリー経由でBガリーに下降する場合、Cガリーから尾根を越える踏み跡が不明瞭です。


■ ピラミッドフェース終了点からの下降ルート
・ 四尾根1P目(1P) / ヒドンスラブ(1P) / Cガリー / Bガリー(3P)
* 各パートにクライムダウンや踏み跡の歩きを含みます。


・ 登攀PTは俺ら含め3PTのみ。
-- 下部フランケ : 2PT ( 長野PTのKさんのブログ 「旅鳥の独り言」 勉強になります。 )
-- ピラミッドフェース : 1PT
-- 四尾根 : 皆無


先週7/27-28のバットレスの様子は こちら へ(四尾根ですが...)

( ピッチ・グレードの評価は個人的なものですので参考までに )
報告&感想 2週連続の北岳バットレス。今回は今季の本気ルートの1本目のピラミッドフェース。一年ぶりに3Bと2人だけのパーティー編成。
初日は雪渓や取付きの偵察を含め何もする必要がないのでゆっくり朝発で白根御池入り、翌日は今更四尾根もないのでピラミッドフェースのみを登攀して下部岩壁まで下降する計画。

いつもの様に国府津駅で3Bを[7:00]にピックアップして先ずは芦安。芦安へ到着してみると案の定何処も満車。「釣り堀」とか言われる芦安から10分程度走った臨時駐車場に回されたが、タクシーが待機していてそのまま広河原へ。今回も車酔いは回避!

広河原から早々に出立。しかし3Bは無用(無謀?!)に早いので御池で合いましょうと予防線を張って、汗を出し切るまでの辛い小1時間を誤魔化すために行き交う登山者と会話をしながら御池入り。[12:45]先ずはビールから(笑






トラバース以外はW級以上のピッチのみ。ほぼルートの中核を成す逆層のカチフェースと核心のクラックは終始気の抜けない立ち込みとルーファイが要求されますが、そこそこのレベルになってようやくその価値が分かるルートだと感じました。また、残置を追うのではなくルーファイを主体に攀じり、結果的にハーケンを見出せる満足感もあります。ピラミッドフェース、多少ヤバい場面もありましたが登り応えのある充実の1本でした。




1日目


BC入り
広河原〜白根御池 BC設営
[ 1時間 40分 ]


今日のBCはここ。

レスキューヘリ
時刻的にラストチャンスとの事でしたが、
その一瞬にガスが切れ、見事ピックアップ完了との報。
小屋のご主人曰く、ヘリのパイロットはピカイチだと。
よかった。


白根御池小屋のご主人及びスタッフ皆さまの気持ちのこもった取り計らいに当事者に代わり感謝致します。ありがとうございました。


2日目


BC〜ピラミッドフェース〜Bガリー大滝基部〜BC〜広河原
[ 11時間 20分 ]


隣に引っ越してきた、仲間のBC(^^

鳳凰をバックに日出前の濃紺の空に浮かぶ月。
下部岩壁基部にて。


昨日の件もあり、気持ち的に沈底気味。
日の出まで時間があるので、今日の登攀を行うかどうかを検討中...。

ダメならどこからでも引き返すって意識を合わせて、登攀開始。

下部岩壁基部の雪渓の状態 その1

下部岩壁基部の雪渓の状態 その2

1P目 W級 40m おれ
逆層気味の凹角を草付きまで直上し、左側の立木にてビレイ。


2P目 U級 30m 3B
一段上がってバンドをトラバースし、
フェース基部左の残置にてビレイ。

3P目 W級+ 45m おれ
逆層気味のカチフェースを小ハング帯まで直上、左に回りこんで再び逆層フェースから右のテラスにトラバース気味に乗り上げて残置にてビレイ。

乗り上げたテラスから見下ろす。

4P目 X級 35m 3B
逆層のカチフェースを緩く左上し、ガレが堆積した崩落ハング下のバンドに乗り上げて、バンド左の残置にてビレイ。

これが残置
ここから更にDガリー(左)へ進むと下部フランケ下。

5P目 X級 50m おれ
ガレた右上バンドを辿り、その先のテラスから逆層のフェースを直上し一旦テラス状。そのまま下部核心のコーナークラックをバンドに抜けて残置にてビレイ。

トポでは一旦ここで切ります。

ランナーを伸ばして屈曲を抑えれば、
ロープの重さはそれほどでもありません。
まぁ、この上は核心ピッチですので現場判断でお願いします。

コーナークラックを抜けた長さ5m程のバンド状と残置支点。

右のフェースはほぼフラット。左の側壁やカンテにホールドを求めればカチやピンチはそこそこあります。

6P目 X級 45m 3B
逆層のフェースをハング下まで直上し、バンド状を左に回りこんで更に逆層を直上。小ハング部からバンドに乗り上げて残置にてビレイ。

ビレイ点から凹角を直上する出だしの2歩がムズ(面白)過ぎ。フォロアーなので解決せずにハーケン踏んで離陸しましたが、しっかりやれば5.10c程度あるのではないでしょうか。時間があればフリーでやりたいですね(笑

ハング下を左にトラバース。
ここにビレイ点あり。

ここを越えるとバンド。

7P目 X級 45m おれ
逆層フェースを緩く左上してバンドに上がり左トラバース。その上の逆層フェースの浅い凹角から核心のフィンガーサイズのコーナークラックを抜けて残置にてビレイ。

途中のバンドから見下ろす。

バンドを左に歩き、2本の立木の間から再び逆層フェースに取り付く。

見た目はそれほど長くはないコーナークラック部で余裕だろうなって取り付きましたが、さすがに核心。下から1/3程の位置にハーケンが1枚ありますが、それ以降に残置はありません。

中間部のキャメ#.75がバチ効きするクラックは絶好のホールド位置です。しかしここで取らなかったので、後半ちょっと怖い思いをしてしまいました(汗
立ち込めるホールドや足ジャムするクラックも微妙なので、早めにプロテクションをとるようにすると余裕で抜けられると思います。

残置のみだと核心部がほぼランナウトする状態になるので、その精神的な部分もグレードに含まれているのかも知れません。

コーナークラック下のフェースはそれまでのフェースに比べるとカチが多数見出せます。楽勝って感じです。

微妙な立ち込みをしながら攀じり、最後はガッチリした久しぶりのガバをとればお終い。
8P目 W級- 40m 3B
出だしツルツルのスラブから一旦バンド状に上がり、かなり脆い壁を右上してカンテを越えると四尾根の1P目終了点。

このビレイ点からスグ(5m程)下を下部フランケ3P目が通っています。

ここを越えると四尾根。

ピラミッドフェース終了点(四尾根1P終了点)

快晴から一転、このタイミングでガスが沸いてきました。

懸垂1P目 残置スリングにて
四尾根テラスまで

懸垂2P目 潅木にて
ヒドンガリーをCガリーまで

Cガリーの横断


懸垂3P目 立木の残置スリングにて
Bガリー上部のぼろぼろのルンゼ

懸垂4P目 支点に捨て縄を残置
Bガリー大滝2P目

懸垂5P目 支点に捨て縄とハーケンを残置
Bガリー大滝1P目

フライを回収中...。

Bガリー大滝基部





お疲れさま。
無事、ピラミッドフェース完登できました。