赤岳 天狗尾根 [冬季アルパイン]


日付 2011/02/05(土)-06(日)

天候 05日 晴れ
06日 快晴 (最低気温-7℃程度)

パーティー構成 天狗隊 : こうの・やまちゃん
権現隊 : 3B・ぐっさん

アプローチ 05日 JR国府津駅[8:30]==新松田駅[9:00]==[12:00]美し森駐車場
(富士五湖道路故障者のため渋滞40分)

ルートと所要時間 05日
[12:25]美し森--《2:20》--[14:45]赤岳沢出合小屋BC(小屋内設営)

06日
[4:00]起床[5:15]発--《2:15》--[7:30]カニのハサミ[7:50]--《1:35》--[9:25]大天狗直登基部[9:35]--《0:45》--[10:20]大天狗ピーク--[10:40]小天狗コル[10:50]--《0:20》--[11:10]稜線縦走路[11:20]--《0:35》--[11:55]キレット小屋[12:00]--《0:45》--[12:45]ツルネ東稜分岐--《1:20》--[14:05]出合小屋BC撤収[18:20]--《1:55》--[19:15]美し森

ルート情報 ・今回は渡渉なし。
・取り付きは最初のルンゼにとったほうがロスが少ない。
・ナイフリッジからカニのハサミの急登までに3箇所コルがあるが、それぞれ幕営可能。
・ニセ天狗岩稜部の正面岩稜帯直登はV級程度。スタカットする場合は50m1ピッチだろう。
・大天狗直登クラックルートは3〜4手W級25m。左肩(中間部)に残置2枚のビレイ点あり。
・カムはキャメの#.75〜#2が使えるが、ジャミングする場所がなくなる。
・大天狗ピークに残置3枚の懸垂支点あり。黄色のスリングを新たに残置した。
・20m懸垂下降でテラス状。クライムダウンも可能かも。

報告&感想 当初八ヶ岳西面の合宿で発案したが、メンバーの顔ぶれにより権現東稜と天狗尾根をそれぞれの目的にして八ヶ岳東面に入った。

初日はのんびり入山のみ。8:30に国府津駅で3Bさん、新松田でやまちゃんをピックアップして美し森に向うが、土曜日のこの時間は行楽地に向う車が多くスムーズに進まない。更に富士五湖道路のトンネル内では観光バスが故障して止まっていたため40分程の渋滞にも巻き込まれてしまった。行きの渋滞はあまり良い思い出がないなぁとぼんやり考えながら美し森に到着。

今回は両日とも天候が安定して気温も高い予報。青空の下、積雪が少ない林道に踏み出す。汗だくになりながら50分ほど歩いて樹林越しの牛首山を撮った後、再び踏み出そうとすると急に体が動かなくなる。ザックを下ろす事も容易ではない状態。やばい、シャリバテだ。駐車場を出たのが昼過ぎだが、いつもと違う時間帯のため考えてみれば朝飯食っただけだった。そりゃバテて当然だよな。急いでおにぎりを食うがすぐには動けないので暫くその場に留まっていたら、心配した3Bさんが引き戻ってきた。もーしわけない(滝汗) ペースを落として2人の後を追う。何とか復活してきた頃に出合小屋到着。小屋の中に名古屋パーティーの幕が1張りのみ。半分空けて貰い、偵察にも出ずにそのままお酒の時間に突入。味噌煮込みうどんを食って19:30シャラフに入ったが、小屋の縁の下にネズミがいるようで明かりが消えるとすぐさま名古屋Pのゴミをガサゴソと漁っていた。

朝方はこちらのテントの周りをネズミがガサゴソしていたので、4:00起床にも関らず3:30に小屋の外に出ると漆黒の空に満点の星が煌いている。今日は予報どおりの快晴だろう。シェラフに戻りたい気持ちを抑え、一服しながら起床時間を迎える。各自軽食を食らって、俺らは定刻の5:15発。

まだまだ暗い中、トレースの付いた赤岳沢に分け入り取り付きのルンゼを目指す。しかし、最初のルンゼにはトレースが入っていない。楽をしようとそのまま赤岳沢のトレースを追い、3本目あたりのルンゼを詰めあがるが昨年の記憶より素直なルートではなかった。ヨコシマな気持ちを抑え1本目のルンゼを詰めればとプチ後悔。尾根に乗れば樹林の中を進むことになるが更にトレースは明瞭となる。暫しでナイフリッジ。ようやく東の空に朱がにじみ始める。急登の樹林帯を抜けると、そこからは開けた岩稜線となる。

その先にカニのハサミ
中央のルンゼには雪がまったくない。時間があればルンゼの直登も考えていたがここまで2時間強、余裕もないのでそのまま基部を左に巻く。

すぐに10m程の草付
ここも少ない雪がザラメ状となっているが岩もあり、慎重に登れば問題なし。

更にその先の10mの岩峰
前回は右からスタカットしたが、今回は一般的な右トラバースからルンゼを詰める。ここではモナカ雪のためトラバースから一段上がってルンゼに移る箇所を慎重にこなす。ルンゼも落ちるような傾斜ではないが雪質がよくないため意外に緊張した。

再び稜に戻り暫しでニセ天狗の岩稜帯
前回は基部を左に巻いていったが、正面を見れば雪もなく傾斜もないV級程の岩稜。今回はここに取り付いてみる。一段目4mを上がれば一旦テラス状になり、その先の右バンドから2段目2mに立ち、3段目6mを正面から抜け、小キレットを経てニセ天狗手前で左巻きルートと合流する。雪が付いていて各段への抜け口が悪い場合も考えられる。スタカットする場合は基部から50m1ピッチで済だろう。

ニセ天狗を右から巻いて大天狗に向う。ここでも雪が少なくトラバースから一段上がる箇所がチョイ悪。雪があっても悪そうかも。最近はキレ落ちた斜面など気にならなくなったはずが、なぜか今日はちらちらと視野に入り緊張してしてしまった。

これを過ぎれば大天狗
右肩ルートを見ればバンドの壁に昨年の記憶ではなかったビレイステーションらしい鎖が2つ見える。実際はそのビレイ点より少し右から抜け出る方が素直だと思う。ここは左からの直登に進む。雪面から岩稜部を暫しで多少安定した場所にハーケン3枚のビレイ点。しかし安定していると言っても岩稜左は天狗沢まで200m以上いっきにキレ落ちている。高度感は気持ちよいが、悪ふざけすると落ちるのでご注意を。アンザイレンして取り付く。正面の岩を右から回り込むと4m程のコーナークラック。中間部には残置ハーケンにスリングが2本連結されている。下部は気持ち垂直。残置にランナーをとり、3足上がり更にキャメ#.75を決める。腕に下げたピッケルがみょーに重く身軽さがない感じだ。クラックはジャミングが効くし、左には第一関節が掛かるホールドがあるが、なぜか身体が上がらない。一旦下がり再トライ。それでも行けない。ザックを下ろして空身の3便目で何事もなかったように突破。そのままピークまで伸ばそうと思ったが、ザックの引き上げもあるためクラックを抜けた左肩にハーケン2枚の残置でビレイ。今日は気持ちが負けている。余裕でフォローしてくる山ちゃんをビレイしながらちょい落ち込む。残り8m程を山ちゃんに伸ばしてもらい大天狗のピーク。情けない登りで30分ほど浪費してしまった(汗) 権現隊に無線を入れる。

大天狗下降

ピークから左寄りに行けばクライムダウンも可能な感じだが未知の部分が多いため素直に懸垂下降を選ぶ。ピークの岩にハーケン3枚の懸垂支点があり、古いスリングを回収し新たに残置する。懸垂距離は20m弱。着地手前の2mは空中懸垂になるが、降り立てば安定した場所になる。
僅かに下れば右肩ルートと合流し小天狗
コルから左上気味にトラバースし草付を登り稜に戻ってから終了点の縦走路を目指すが、小天狗の周りもまったく雪がない。一部悪げなトラバースもあるが慎重に通過して終了点到着。写真を一枚撮って下山を開始する。

下降

縦走路のルンゼにも雪がない。ほぼ夏道のガレ場をガツガツ下降してゆく。ルンゼを抜ければ雪も多く残っている。トレースはあるがそれほど快適ではない。時折踏み抜くと膝上以上だ。キレット小屋を経てツルネへ登り返す。風も強く、やはりここの登り返しは辛い。ツルネ東稜は雪は深いがトレースは明瞭。前回のようにロストする事もなく出合小屋に無事下山。

14:05小屋に到着直後権現隊から入電。まだ最終ピッチを抜け切れず、3時間ほど遅れるとの事。のんびり幕の撤収を済ませて、薪を燃やしながら待機。時折の応答もなく、もろもろの交錯が巡る4時間目が経過する。淡い期待を秘め無線を入れるとあと5分との返信。ようやく安堵の合流。陽も落ち雪も降り始めた出合小屋をあとにした。


行きの渋滞。渋滞中に昨年の中山尾根で苦労した記憶をぼんやり思い起こしていたが、実際今回もいろいろな面で難儀する事になってしまった。たまたま(偶然)の域を出ないと思うが、何かしら起こる兆しとも思える。妙なジンクスになってしまうと困るけど、こういった感覚的なものは昔からあったし、大事にしないといけないとも思っている。(感覚的なものって言葉にならないけど、山で走っている時代には随分と助けられたと思う。目を三角にして走っているのにコーナーを抜けたとたんに急に今日は帰ろうって思ったりするんだよね。)
かといって渋滞に巻き込まれたからと中止にするわけにもいかない。単独行ならそれも可能だが、実際はどうすればいいのだろね。





■■■ 05日 ■■■



■■■ 05日 ■■■

今日は今季初のフル装備
モンベル アルパインパック 60L

ケルン手前付近
樹林越しに真教寺尾根の牛首山

[13:50] 林道終点付近

[14:15] 前回は豪雨の増水で渡渉出来なかった堰堤

[14:45] 赤岳沢出合小屋
赤岳沢の出合に水流あり


今回は俺が食担
林田隊長から送って貰った味噌煮込みうどん
山で食えばとの提案で出番となったよ(笑
当然、美味し。


■■■ 06日 ■■■


■■■ 06日 ■■■

小屋の中

[5:15]発
ぐっさん合流

先週から降雪も無かったようで、
トレースばっちりでした。

[6:05] ナイフリッジ

[6:25] 最初のコル
大型のテントも数張り張れます。

朱に染まるニセ天狗


[7:05] カニのハサミ下のコル
もっとも一般的な幕営地かな。

カニのハサミ下の急登

[7:30] カニのハサミ
ここからは潅木帯と岩稜となり、
周囲のルートを見放題になります。

ギボシと権現岳と旭岳
中央の稜が旭東稜。五段の宮がハッキリ見えますね。

カニのハサミ裏の草付
それほど傾斜があるわけじゃないけど、
ザラメで快適じゃなかった。

草付抜け口

草付を抜け稜上の先に10m程の岩稜帯
(FIXで右トラバースする箇所)

右トラバース後のルンゼ
ここもモナカ&ザラメで悪っぽかった。

トラバースを終えてからのルンゼ下部

ルンゼから再び稜上へ
前回はこの稜へ左から上がってきました。

振り返る天狗尾根

左が切れてるバンド状

[8:25] 10m程の岩稜帯
左に巻くトレースが付いている場合が多いです。

出だしの岩稜正面はこんな感じ。
どこでも登れますが、
スタカットするならここでアンザイレン。

横から見るとこんな傾斜

でかホールド多数ですが、浮石も多数。
一段上がった先の右バンドから
小キレット沿いに再び岩稜上へ

まだ岩稜は続きますがそれでもV級-

この後、プチコルを経てニセ天狗へ

左からニセ天狗・大天狗・小天狗
今回、この岩稜帯は雪がまったくありません。

赤線が左巻きルート
緑線が今回の直登ルート
(緑線の出だしがキレット状のプチコル)

ニセ天狗は基部を右から巻きますが、
トラバース後草付を一段上がる箇所がちょい緊張するかも。
大天狗
右肩ルート
バンドの壁(赤丸)にビレイステーションらしい鎖2つが見えました。昨年3月にはなかったと思う。

大天狗左直登

雪面から岩稜を進み基部テラスへ
スタカットは必要なし。

3枚の残置支点あり

取付きは安定していますが、左側は天狗沢まで一気にキレ落ちていますのでご注意を。

残置ハーケン1枚に残置スリング2本連結
ハーケンベタ打ちとの情報もあったが、
ランナー用の残置はこの1枚のみだった。

ザック回収(汗)のため残置があった左肩で短くピッチを切ったが、そのまま伸ばしても問題なし。

小天狗と竜頭峰


ニセ天狗を巻いてきた名古屋P
右肩に進みました。

大天狗ピークの懸垂支点
黄色のスリングは今回残置したものです。
(古いスリングを切って持ち帰るつもりが、切ったまま置き忘れてしまいました。気付かれた方がいられたら是非回収をお願いします。)

20m程の懸垂で安定したバンドに達します。
最後は2m程の空中懸垂になりましたが、
左寄りならクライムダウンも可能かも知れません。

小天狗は左に草帯を巻いてゆきます。
ルーファイにより一部悪げなトラバースを経ることもあり。

[11:10] 終了点(稜線縦走路)


キレットへの下降ルンゼ
ここもまったく雪がなく夏道でした。

[11:55] キレット小屋

ツルネから見る天狗上半部

[11:35] ツルネ
この付近は風が強くてツルネへの登り返しと共に辛い一時です。