赤岳 天狗尾根 [冬季アルパイン]


日付 2010/03/21(日)-22(月)

天候 21日 曇り時々雪
22日 快晴 稜線上風速10mほど (AM5:00 -5℃)

パーティー構成 こうの(CL)・おーさわ・3B

アプローチ 21日 JR国府津駅[6:15]==[9:00]美しの森駐車場(大雨のため電車遅れ)

ルートと所要時間 21日
[9:30]美しの森--[13:35]出合小屋BC(幕営)

22日
[3:30]起床[5:00]発--[5:30]尾根上--[7:05]カニのハサミ--[8:50]大天狗--[10:00]赤岳稜線--[11:25]ツルネ--[13:05]出合小屋BC撤収[13:55]--[15:25]美しの森

ルート情報 ・増水時は出合小屋まで地獄谷で5回、出合小屋からの赤岳沢で1回の渡渉あり。
・カニのハサミの先の右にFIXがある岩稜部は、残置がないが立ち木や潅木でランナーが取れるなら左のバンドからの直登も楽しい。スタカット1P。
・大天狗右肩ルートはスタカット1P。
・キレットに向う場合、赤岳稜線に設置されたハシゴを登る必要はない。
・ツルネ東稜の下降でトレースがない場合、尾根が広くなる箇所があるので左の尾根を丁寧に拾ってゆく必要がある。シリセードで飛ばすとロストは必至ですのでご注意!(汗
・途中の尾根から上権現沢支沢へは、急なルンゼを後ろ向きで下降する程傾斜がある。
・上権現沢の上部は急だが滝もなく意外とすんなり下れる。
・帰りの林道は長く辛い。
報告&感想 神奈川労山リーダー学校中級の卒業山行で赤岳天狗尾根に入ってきました。
初日が荒天のためフル装備周回の計画から、出合小屋をBCとして翌日軽装での1Dayアタックに切り替えましたが、これが正解だったと思います。フル装備での登高を考えると行動時間も疲労も予想以上になった事は確かでしょう。


21日:
大雨も上がって予報では晴れてくるとの事で美しの森でおーさわと合流して[9:30]林道に踏み出す。途中、土曜日から入山し雨で撤退してきた3組ほどのパーティーすれ違う。話を聞くと出合小屋までに渡渉が5回ほどあるらしい。
[10:30]林道終点の真新しい堰堤から地獄谷左岸に入る。2つの堰堤を左岸から越えると、その先の堰堤を右岸から越えるトレースが増水した沢に分断されている。この水量なら膝下まであるだろう。休憩を入れて暫し試行するが成す術もなく、3Bさん案の左岸を藪を掻き分け鹿の糞だらけの尾根に高巻く。崩落したルンゼから沢に戻り、再び渡渉ポイント。ここは巻けそうにない。追いついてきた2人組みは思案する事もなく靴のまま沢を渡っていった。それを見て驚いた俺らは、「水は冷たくない」との話から「コケたら撤退」を合言葉に靴を脱いで渡る。流心で膝上まで浸かる沢の水は凍りつきそうな冷たさだった。対岸に駆け上がり苦悶で足を暖める。二人も必至で渡ってきたが、なぜかピッケルを置き忘れたおーさわは再度渡渉を繰り返していた。その後の2回は岩を選び選び飛んで[13:35]出合小屋に到着。先行の「トマの風」4人パーティーもBC形式に切り替えたらしく、ここでの幕は2張り。小屋には靴のまま渡渉したツワモノ2人組みが入って薪を燃やして暖を採っていた。八ヶ岳の東面は初めての入山。西面に比べると入山者も少なく静けさと寂しさが漂う。これが本来の冬山なのだと実感すると同時に、何か事故などがあった場合の緊張感もひしひしと涌いてくる。
[14:35]まだまだ夕刻とはいえない明るさの中、待望の宴会モードに突入する。でものんびり呑んでばかりではなく、アタック形式に切り替えた事で明日の行動時間を再検討する。結果、赤岳稜線に12:00、駐車場下山を18:30として、カニのハサミを撤退ポイント、撤退時刻を12:00に設定する。逆算した出発は3:30起床5:00発。まだ明るい幕の外は小雪が舞っている。明日はどうなる事やら。満点の星の下、[20:30]就寝。


22日:
[3:30]起床[5:00]発。BCから僅かで左岸から入ってくる赤岳沢に分け入るが、ここでも増水で濡れ凍りついた岩を飛び渡渉する。赤岳沢に入り10分程で先行パーティーのトレースが尾根に向っている。トレースを追い藪を分けながら天狗尾根に詰めあがり、部分的だが笹が深い尾根上を進む。ナイフリッジ状の岩稜を越えて平坦なコルから針葉樹の樹林帯の中を急登する。[7:05]樹林帯が切れ視界が開けるとその先にカニのハサミが立ち上がっている。ここは基部を左に回り込み、直後の10mほどの草付きを直登して稜上に上がる。その先の岩場で先行Pに追いついた。トポによるとFIXで右トラバース後ルンゼを登るとの事だが先行Pがトラバースに難儀していたので、俺らはアンザイレンして左のバンドをコンテで進み、最初の立ち木でセルフを採ってスタカット。20mほどの岩場を凹角から右上気味に稜上に上がるが、いつものように朝一のリードは緊張してしまった。途中、立ち木と潅木で3箇所のランナーがとれて稜に上がった立ち木でビレイ。フォロアーのおーさわを迎えて多少傾斜のある尾根をコンテで進む。ニセ天狗の岩稜は基部を左に回りこみ、バンド中間部あたりの8mほどの凹角から岩稜を登って稜に戻る。すぐ先のニセ天狗の右を進むと正面に大天狗が聳えている。大天狗は直登も可能だが今回は一般的な右肩のバンドに上がるルートを採る。手も足も選び放題の10mV級程度の岩場をスタカットでバンドに上がり潅木でビレイ。1/3の地点にスリング付きの残置があるがそれ以降は見当たらない。中間部に総長から頂いたハーケンを打ち足し残置してきた。フォロアーを順次迎えてアンザイレンを解き、バンドの雪面をトラバースして大天狗の裏に出る。小天狗は阿吽の距離となる。小天狗基部を左に回り込みながら岩稜帯を稜に上がると、赤岳稜線まで雪稜が続く。出発して5時間。予定より2時間早い[10:00]に稜線到着。先行Pと写真を撮り合ってキレットに下降する。出だしに急傾斜の岩場にハシゴが張り付いている。ハシゴの降り口も狭く、その下は先が見えない沢まで切れ落ちている。俺にこんなハシゴは降れない。しかし臆病者のためだろうか、右には鎖が付いていて助かった。ハシゴ基部からは急なルンゼの下降が始まる。一部氷化しているが概ね締まった雪にザクザクとアイゼンを効かせてサクサク下降してゆく。ここのルンゼは雪が腐るとかなり難儀するだろう。ルンゼを降り切ると、キレットまでは広い尾根の雪面を歩き、ツルネへ登り返す。登り返しは遠目で見たほど辛い登りではなかったが、風が強い事を示す波模様(名前忘れた 汗)が付いていた。カモシカ親子とスライドして、道標に従いツルネ東稜に分け入る。トレースは昨日の雪のためだろうか、あまりにも薄いが、爽快なナイフリッジにトレースを付け左の尾根を追って下降してゆく。右に明瞭な尾根を分けた先の小岩峰を右からトラバースすると尾根が広くなってくる。普段からテープを追わない俺らに、ふとヤバイ予感が走る。地形図を読んで左に軌道修正。不明瞭な場所を切り抜け浮かれ気味に急傾斜をシリセードで飛ばすが、先の尾根が沢に落ちている。シリセード中に右の尾根に乗ってしまったらしい。登り返しを覚悟するが3Bさんは降れば、と。降ろと言われても後ろ向きで足場も見れないような傾斜なんですけど。3Bさんが先行して、急なルンゼの下降を体験しながら上ノ権現沢の支沢に降りたつ。その後暫くは雪が腐り始めた急なルンゼを沢筋まで降ってゆく。右から入ってきた上ノ権現沢本流に20mほどの滝が掛かっていた。水流も見え始めた沢沿いを下って、本来のツルネ東稜下降点を分け[13:05]出合小屋着。撤収を終えて下山を開始する。昨日より水量が減った沢だが、すんなり渡れるほどではない。1時間ほどの辛い林道を終始無言で歩いて美しの森へ無事到着した。



* 俺が写っている写真は、3Bさんから提供頂いたものです。感謝!



■■■ 21日 ■■■



■■■ 21日 ■■■

この時期、水流はないらしいが、
朝までの大雨のため激増水中


なぜか無意味に巻いてるの図(笑
堰堤下の渡渉を避けて左岸を高巻ました。
しかし鹿の糞だらけでイヤになります(涙

崩落したルンゼから沢に戻ります。

ここの渡渉は巻く事ができずに靴を脱いで。
「水は冷たくないよ」との事でしたが、ウソです。
足を拭ったタオルが凍りついてましたし。

「冷めてー」と苦悶で足を暖める3B氏
必死で渡ったおーさわは、ピッケルを置き忘れて再度渡渉

出合小屋へ最後の渡渉ポイント


出合小屋
黄色の幕は「トマの風」パーティー


3Bさん、ナイス講師!(謎


■■■ 22日 ■■■


■■■ 22日 ■■■


出発です。

尾根上へ


朝日に染まる旭岳と権現岳

ナイフリッジって所です。

まだピークじゃないけど(笑

一旦平坦なコル


カニのハサミまでのぐぐっと急登
ここをフル装備で登りたくないです。

樹林帯が切れるとその先にカニのハサミ


中央のルンゼからもいけそうでした。
無意味な余裕があれば、次回はお試しします?

カニのハサミは基部を左に回りこみます。
回り込む一手のバランスが微妙との事でしたが、あまり気にならなかった。つーか、どの箇所が微妙なのか分らなかった。

回り込んで稜に戻った先の10mほどの草付き

先行Pが難儀していた、
FIXがある右トラバース〜ルンゼルート

俺らはバンドを左に上がって、3Bさんがいる立ち木をビレイ点として20mほどの草付を直登しました。
残置はありませんが立ち木や潅木でランナーが取れますので、こちらルートの方が素直かもしれません。

朝一のリードは今日もビビリまくり(汗
簡単なんですが、2本目にランナーをとった立ち木が枯れてグラついたんで、いきなり緊張の極み。
そういえばここでビナ落としてしまった(涙

いつものように飄々と
フォローするおーさわ


見下ろす、トラバースからのルンゼルート

ビレイ点からの稜上に戻ります。

その先の岩峰

直登するレポートもあるようですが、ここは何事もなかったように基部を左に回りこみます。

すると、よく見るニセ大天狗の岩稜帯
バンドを緩やかに進み、3Bさんの頭上の凹角を登って稜に戻ります。本物の大天狗はニセ天狗に隠れて見えません。

凹角を登るおーさわ。
俺が立ってるところがバンドです。

なんかイイ感じの写真なんで(笑



待望の大天狗
先行Pは直登ルートと右肩ルートに分かれて取り付いていました。

右肩ルート
中間部に残置スリングが掛かっていますので取り付きに悩む事はないと思います。

初ハーケン中

フォロー中のおーさわ

右肩テラス上の潅木にてビレイ


テラスを右に回りこむと小天狗が阿吽の距離になります。
でも意外に遠いのです。

振り返る大天狗
テラスから雪面をトラバース後、
一段降りて稜に戻ります。

小天狗の岩稜帯は左から回り込んで稜上に上がります。



稜線までは雪稜です。
急ぐ気持ちで意外と苦しかった。

振り返る小天狗からの雪稜

ここの稜上のハシゴは赤岳方面に向ってしまいます。

2009年度中級 おーさわ&こうの



下山前に「トマの風」の方に撮って頂きました。
ここからツルネへ下降します。

かなりビビる斜面にハシゴが張り付いてます。
基部の足場も悪そうだし、その下は先が見えないって。泣きながら右の鎖を使いましょう(汗

泣いてます(たぶん

ハシゴから降り立ち、急なルンゼを下降します。

雪も堅くアイゼンが効いたので前向きでサクサク降れましたが、雪が腐ると辛そうです。

ルンゼ下部

ルンゼを抜けると右手に阿弥陀南稜を見ながら気持ちの良い雪稜がツルネまで続きます。


キレット付近から見た、
カニのハサミ〜小天狗の天狗尾根核心部

ツルネへ登のり返し

左に出た尾根がツルネ東稜の下降点です。
指導標あり

ツルネ上部のナイフリッジ
トレースは消えていました。

途中、岩峰を右に巻いた先をシリセードで飛ばしたせいで痛恨のルートミス。左の尾根にのってしまった。消えかかった尾根の先の激急なルンゼを後ろ向きで下降して上権現沢に降り立ちました。この先も雪が腐り始めた急な沢筋を進みました。

BCに到着

撤収完了

なぜか落ちてるし...。

短いけど辛い林道を無言のまま突破して無事下山。