八ヶ岳 [冬季アルパイン]
@ 赤岳西壁 主稜(北峰リッジ)
A 横岳西壁 石尊稜


日付 2010/12/18(土)-19(日)
天候 12/18日 曇(ガス)のち夕刻晴れ(登攀中 気温-12℃ / 最終ピッチ 南西の風20m)
12/19日 晴れ(山頂 気温0℃ / 南西の風10m)
パーティー構成 俺(CL)・山ちゃん

アプローチ 12/17 こうの==[20:00]新松田駅==[22:30]道の駅こぶちさわ(車中泊)

ルートと所要時間 12/18
[4:00]起床[4:30]発--《0:30》--[5:00]美濃戸[5:30]--《1:35》--[7:05]赤岳鉱泉[7:20]--《0:30》--[7:50]行者小屋[8:00]--《1:20》--[9:20]文三郎分岐点--《0:10》--[9:30]主稜取付[9:55]--《3:15》--[13:15]終了点--《2:10》--[15:25]赤岳鉱泉(小屋泊)

12/19
[6:00]起床[6:30]朝食[7:35]発--《1:25》--[9:00]石尊稜取付[9:30]--《3:00+待ち0:20》--[12:50]横岳稜線[13:05]--《0:45》--[13:50]行者小屋[14:00]--《1:25》--[15:25]美濃戸==帰路

ルート情報 [赤岳主稜]
・ 文三郎道分岐点に先端に赤テープが付いた数本の棒が刺してある。
・ 1P目のルンゼは雪が少なく、チョックストーン下を潜って抜けられた。
防寒のため、薄手ダウンを着る(地蔵尾根下降では汗で濡れてしまった)

[石尊稜]
・ 赤岳鉱泉からの場合、中山乗越への急登が始まる地点の分岐より橋を渡った地点から分け入った方が早い。
・ 取付までの尾根に積雪がほぼなく赤茶けた岩肌が露出して、脆い岩稜帯のトラバースとなるので結構時間が掛かった。大半のパーティーは右寄りのルンゼをスタカットで詰めていたが、先行Pがいる場合は落氷・落石が頻繁にあるため注意が必要。
・ 雪が少ない場合且つトレースがある場合は、三叉峰ルンゼから滝の手前の左岸のルンゼ状の雪壁を支稜まで詰めた方が容易だろう。
・ 横岳稜線鉾岳のトラバースは積雪が多く、悪い状態ではなかった。
・ 下山路の南沢は週半ばの雨のため広域に渡りアイスバーンだった。
昨日と比べると暖かい。中間着のNFのフリースを脱ぎ、アンダー+アウター。

[赤岳鉱泉]
・ 夕食は受け付け順に17:00〜、朝食は先着順に6:30〜
・ 飯食って爆睡したので消灯時間は21:00頃?(汗
・ テルモス充当のお湯は100円(!

報告&感想 カモカモ星の山ちゃんとファスト&ライトな小屋泊で八つの2ルートに入ってきた。
昨シーズンは土曜入山で日曜アタックを行っていたが、今回は初日からルートに入り両日で2本登る計画とした。登攀具のみの軽快なアプローチとベース設営&装備デポなどの煩雑さを排除して小屋泊を選択したが、値段が高いのが難点だがかなりお気軽な山行になったような気がする。

今シーズンに入って既に前泊日帰りの中山尾根と阿弥陀北稜をこなしている。(つーか、日帰りしかしてない...) 日帰りの連荘と思えば、初日の下山と翌日の入山がない分で体力的&気持ち的にラクになるはずだ。(連荘しなければ更に楽なんだろうけど、おバカな発言かな)
初日から10時間以上の行動になるが、なにより1本登攀した後にベースに戻り食事の支度もせずゆっくり暖かい部屋の中で反省会が楽しめると思うと登攀時の辛い時も心の支えにもなる。(実際はなにもせず夕食後即爆睡してしまったが)
また、土日で1ルートのみの計画より無駄のない充実した山行になった。強いて言えば、レポを書こうとすると記憶がごちゃ混ぜになるし、1回の山行で2本登ってしまうと早々と登るルートがなくなってしまうって事かな。(笑



■■■ 18日 赤岳主稜 ■■■

■■■ 18日 赤岳主稜 ■■■

美濃戸 駐車場
シーズン突入以来、毎回同じ場所に停めてます。出だしと帰りの1時間の辛さは重々味わっていますからこそ、ありがたいフォレスターなのですぞ(V

赤岳鉱泉で薄手のダウンをミッドレイヤーに追加しながら、昼過ぎに強風のピークの予報なので暫し思案。
1P目終了時に強風なら即撤退、中間部以降なら終了点まで抜けて頂上小屋脇で風が弱まる夕刻までプチビバークと合意をとって出発。

ガスが掛かっているがそれほど風は強くない。後続もこない。行者小屋で話した山岳部だろう若者達は昨日快適な中山尾根を登ったらしく、本日風速22mの予報を聞き断念したようだ。

主稜への分岐点
申し訳なさそうに赤テープが付いた棒が刺さっています。一般の登山者が見ればなんだろう?この棒は、と感じるだろうね。

トラバース路は氷結もなく安定した積雪のため容易に通過できた。

それほど悲惨な状況ではないよね(笑

1P目 W級- 40m 俺
チョックストーン下を潜り、立ち気味のチムニー抜けてから右正面の壁を右上バンドで回り込んだ先のハンガーでビレイ。

前回のこのピッチはCS下部付近まで雪に埋もれてチムニーと言うよりルンゼ状となっていたため難しさを感じなかった記憶から安易に取り付いたが、フロントポイントの立ち込み感覚を取り戻せず気弱に手に頼りがちになってしまったため、ちょっとパンプ気味で難儀してしまった(涙) 実際、左右の壁には手足共にガバ系ホールドが豊富にあるので難しいピッチではないはず。

2P目 V級(出だし) 45m 山ちゃん
左寄りから一段上がって岩稜を直上して岩角でビレイ。

残り少なくなったロープが止まる。気持ちの中で解除の用意をして耳を澄ますが、風もそこそこありフードも被っているためコールが聞こえない。再び流れ始めたロープに意識を集める。アップしている流れだと確信し即解除。
山ちゃんとは2度目のアンザイレンだが、コールが聞こえない状況は初めて。このような場面を活用して早々にパートナーとの呼吸を合わせるようにしたいね。

2P目一段上がった先の岩稜。

3P目 U級 60m 俺
岩稜上を歩き、中間の岩場を越え稜上の岩角でビレイ。

中間の岩場までコンテでも十分だと思ったが、ガスと風とデビューに近い山ちゃんを考慮してスタカットを継続する。

3P目の稜線。のこのこ歩いてゆくとこの先に中間の岩場があります。

振り返るとガスに薄れた山ちゃん。

稜上部から見下ろす中間の岩場。
正規ピッチはこの岩場の基部で切るのだが、なんとか岩場を抜けられるだろうとそのまま伸ばしてしまった。岩場の中間でランナーを取って振り返ると山ちゃんが後を追っている。ありゃ(汗)、当然だがロープが足らなくなって追随してきていた。こんな判断ができるなんて、トシさんのお陰かな?!

4P目 U級 70m 山ちゃん
岩稜上を歩き、上部岩壁基部ではなく右のルンゼ中間までなんちゃってコンテ。
正規ピッチは赤マーク付近の一抱え程の岩上の残置支点でビレイだが、山ちゃんは見つけられない様子。そのまま上部岩壁に食い込むルンゼ基部まで伸ばすように叫び、ビレイを解除してコンテで後を追うが、ガスのためかその先のルンゼへのルーファイも苦戦している。と、絶妙なタイミングで一瞬ガスが抜けた。山の神様はいるんだなぁと浮かれて指示を出したが、俺の立ち位置からだと本来のルンゼが隠れて見えなかったようで、正面に見える右のルンゼを指示してしまった。ルンゼ右肩に上がった時点で間違いに気が付いた。正規ルートに戻るにはルンゼ上部を5-6m左にトラバースする必要があるようなので一旦ピッチを切る。

5P目 U級 8m 山ちゃん
ルンゼ右肩から左にトラバースし、上部岩壁基部にてビレイ。
トラバースはそれほど悪くなかったが、このミスで20分ほどロスしてしまった。


核心部を撮れと、束の間のガスが切れた。

6P目 V級 20m 山ちゃん
上部岩壁基部から一段上がった岩角でビレイ。
前回入った時に稜線への抜け口であるチムニーが判りづらかったので、ルートが指示できる一段上がった岩稜部までで短く切る。

7P目 V級 70m 山ちゃん
凹状からチムニーを抜け、最終ピッチのルンゼ基部の岩角でビレイ。

チムニーを抜け出たすぐ上の岩上に残置支点がありそこで切れと告げたが残置が見出せないようだ。暫く止まっていたロープが再び流れてゆく。ビレイ解除の心積もりをしていたが、まだ解除ではないらしい。心配しながらロープを出すが、コールも聞こえないらしく残り1mでもまだ出てゆく。このチムニーを抜ければコンテでも問題ない傾斜なので、素早くビレイとセルフを解除してコンテ状態で追随に入る。しかし、コンテ状態。出だしV級のチムニーで落ちる訳にはいかないと思いつつ抜け口手前あたりからビレイの感触を感じられるようになり、ほっとして稜上に抜け出た。どこでビレイしているのだろうと考えながらフォローしてゆくと、最終ピッチスタート地点であるルンゼ基部まで伸ばしていた。結局、6P目後半と7P目を繋げてしまっていたのだ。しかし、そこまで伸ばしたのも問題だが、ここの残置支点も見逃して岩角でビレイしているのも問題だな。初めてで焦る気持ちからか、ピッチの記憶が飛んでしまったのだろうな。

チムニーから稜上へ


赤マークの岩角でビレイした山ちゃんだが、実際はルンゼ入り口の左側面に残置があるんだよね。


8P目 U級 40m 俺
ルンゼの中を歩いて、抜け出た先の岩角でビレイ。
短く切ったり長くなったりしながら、終わってみれば正規のピッチ数になっていた(笑

終了点から最終ピッチのルンゼを見下ろす。
風速20mほどで海老のシッポがバキバキに飛んでくるが、風向きが南西のため風に冷たさがないのが僅かな救いである。

強風のため赤岳山頂まで行かずに、ここから一般道に出て地蔵を下降しました。

■■■ 19日 石尊稜 ■■■

■■■ 19日 石尊稜 ■■■

橋を渡った地点にトレースがあったが、昨日トレースが目に付いたこの場所から分け入る。結論は、ここから入るのは行者方面から来た場合に有効。

日ノ岳ルンゼには新しいトレースが付いている。ルンゼを詰めながら先を見上げれば既に1パーティーが取り付いている。その他に2パーティーが先行していて、先を進むパーティーは取り付き付近に達しようとしている。今日は小屋で朝飯を食ってのんびり出てきたから出発は7:35。先行パーティーが20組もいたとしても驚くほどの事はないだろう(涙

ルンゼから雪面を詰めて支尾根に上るが、雪が付いていない痩せた稜上はトラバースするにも岩が脆い。先行パーティーは右寄りのルンゼをスタカットしている。

俺らも雪面からトラバースして左のルンゼから再び稜上へ。

再び戻った稜上では、立ち木や草付をワシワシ掴み、小岩峰を右に左に回り込みながら取り付きに向う。木登りやトラバースやらで日ノ岳ルンゼから離れて40分以上を費やしてしまったが、どうせ先行が取り付いているから、このくらいの余裕を見ておけば渋滞もないだろうとのんびりと進む。しかし、到着してみると先行していた3パーティーがまだそこにいるじゃないですか!!!。1組目の女性が苦戦しながら、ようやくハング帯を右から越えようとしている。そこは見るからにムズそう。話を聞けば1時間ほど待って(登って)いるとの事。

1ピン目を掛けた場所から取り付きを見る。

俺らがアンザイレンした頃に1組目フォロアーが離陸。続く2組目はすんなり余裕で抜けてゆく。3組目が一段上がり1ピン目を掛けてからリードの方が振り返る。「良ければ先に行かれますか?」と。長い待ち時間を経てやっと離陸したのだから、更に待って貰う事もない。支点を共有させて貰いますと告げて、30分待ちの俺らの出番。

1P目 W級 40m 俺
中間部まで浅い凹角を追い、緩く左に直上して上部ハング帯基部を更に左に寄って立ち木から乗越して稜上の立ち木でビレイ。

草付にダブルアックスは有効だが、出だしからルートの大半は雪が付いていない乾いたスラブ登りのため手でホールドを求める。焦らず探せば多少細かくても手足共に不自由する事はないと思う。先行パーティーは残置スリングが掛かった2ピン目から先を浅い凹状草付を追って大きく左に回りこんでゆく。俺は2ピン目を掛けて更に上の残置を目指してそのままスラブを緩く左に直上する。アイゼンの前歯で確実に立ち込めればバランスを崩すような傾斜ではない。ハング基部は草付きとなり残置は見当たらない。アイスハーケンとハング上部にせり出た木の根にランナーを取る。更に左に寄り立ち木を掴んで乗越えた先の斜面を稜に出て立ち木でビレイ点構築。

配慮頂いた先行パーティー

緑ラインが俺らのルート(黄ラインは先行P)
ピンクはハンガーや立ち木など支点をマークしています。撮影地点にもハンガーあり。

2P目 ???m コンテ
ここから先は上部岩場までコンテ

最初の岩峰は左に回り込み、ちょっと急な雪面から稜に戻る。

ちょっと急とは、こんな感じ。

この岩稜部は正面のルンゼ状から左に出て再び稜上。


左の草付きを右上して小ピークに立つ。

小ピーク先の雪稜部

雪稜部は一旦コルに降りてから再び登り。

その先、ウネウネな雪稜。一部ナイフリッジっぽくなっていたりしてプチ楽しい。先行2パーティーが取り付きにいます。

上部岩壁の全体象

1組目と2組目の順番が入れ替わっていました。

コンテのロープを捌き直して軽く1本入れると、先行のフォロアーがビレイ解除。早々に俺らも取り付く準備。

3P目 V級 40m やまちゃん
凹角から階段状のリッジを右寄りに越え、岩峰右をトラバースした先のルンゼ終端の残置支点にてビレイ。

リッジ上部で振り返る。すぐ下には空身の女性を引く後続パーティー。
谷川より全然簡単だったと山頂で耳にした。確かに石尊稜は易しいルートだけど空身の人に言って欲しくないなぁ。最低限の装備も自分で持たず、装備を持ってるリードの方とはぐれたり、自分が滑落したらどうするんだろ?

同じ時点から。先のルンゼを詰めた先に残置支点あり

4P目 U級 40m 俺
稜を跨いだ先の左ルンゼを進み、ガレ状斜面の岩角でビレイ。

稜を越えるとルンゼの2択があります(笑
左のルンゼに進みましたが、ルンゼ上部小滝が全面氷結していてアイスクライミングができました。まぁ、ピッケル1本でも大丈夫な傾斜ですが。

ビレイ点から見下ろすガレ中間部。

横岳稜線で終了。

一日違うとこんなに快晴(笑
先行Pの方に撮って頂きました。

お約束の赤岳〜阿弥陀

鉾岳のトラバース路
昨年はかなりビビリながら通ったトラバース。今日は雪も安定していて途中で泣きが入らずに済んだ。ルートに入ればもっと悪いトラバースとかやってるからこの程度ならヘッチャラになってしまったのだろうか?(基本的にここは一般縦走路なんで、悪すぎってのは論外だからなぁ...)

トラバース路を振り返ると結構傾斜がキツいんですね(笑
後は横岳本峰。