ジビエと一本釣り スペシャリテ



一握り入魂 寿司も握るシェフ渾身の アワビ握り 肝ソースで。






真冬の楽しみ 野兎のレバソテ ベイリーズソース 赤でも白でも お好きなワインでね 





シーフードテリーヌは二層に分けて作ってます。
上層は三陸田老のホタテの貝柱、下層は三陸綾里沖で捕った真鱒のフィレをムースにして低温で焼き上げます。
そこにウニとキャギアを載せました。ソースはマイルドなヴィネグレッタクレマでお召しあがりください。






黒毛A5タンの熟成40日のレア仕立て 





三陸宮古の極厚ヒラメを釣り上げたら、直に完璧な血抜きと丁寧な下処理をほどこしてから氷に漬け込んでクーラーで持ち帰ります。
それを、かるーくスモークをかけて生感を損なわないように仕上げました、
食べた後からスモークがほのかに追いかけてくる感じはポイヤックの赤ワインに通じるとこがあります。 






1999年「社長ーっ! ポンって 金」っていうボトル 歯ぐきにバッシーンっとくる熟成されたタンニンが強烈さすがポイヤック村 それがいつまでも続く ところがね、
時間が経つと優しくなるのよ、そこがね。 きれいなおねいさんと マグロの血合いのコンフィと合わせて飲んだらたら、
良からぬ妄想と相まって 腰が抜けるほど、うまかったのは内緒の話だよ。。。 





スペイン東部バレンシア地方発祥の、ジャバニカ米、魚介類と共に、そのスープを米に炊き込む料理ですが
、当店ではお米こだわり東和町の契約農家が作られている低農薬のヒトメボレの超大粒米を使用しているので旨味がたっぷりと御飯に浸み込みます。
作り置きはしませんので90分掛かります。なので予約がいいのでわ。 






KIKIHOUSEのシェフは凄腕の漁師です。雫石町を流れる竜川の7月に捕れた若鮎と呼ばれる物だけを使用し、
ムースにして低温で焼き上げました一切れに3匹使用。テリーヌにつけていただくソースがウルカ(若鮎の内臓を塩漬けにした珍味)の15年寝かせたビンテージものを使用してます。
日本広しと言えども若鮎のテリーヌ、ウルカソースは当店だけのオリジナルだと自画自賛中です 






ワインは生き物です。冷蔵庫に使われているモーターの振動はワインの熟成にダメージを与えます。なので当店ではモーターを使わないワインセラーを導入して、
ワインの熟成に適した温度と、コルク栓を通してワインは呼吸しているので、
コルクが乾燥させないようにワインセラーの湿度を適正管理してますので、安心してワインを楽しんでください。







ウニをトコトン堪能したい方の為のパスタです。ウニを一船使いますので、
濃厚なウニの出汁が、トマトと生クリームのソースに溶け込み、
それが絶妙にパスタに絡み合います。ソースに激しくこだわる、プレミアムなスパゲティーです。







イタリアのカンパニア州のナポリ料理、ベシャメルソース、ミートソース、パスタ、
チーズを何層か重ねキツネ色にコンガリと焼きあげたのがラザニアです。KIKI-HOUSEのシェフはハンティングも得意なエアーライフルハンターなので、
ミートソースには獲ったキジを使った、ジビエ料理となっています。






鹿の赤ワイン煮込み ホロホロ崩れる身とソースの相性は口中唾液噴出もんです





あくなき美味の「探求」三陸沿岸に一瞬だけ回遊してくる真鱒
海底に潜むオオナゴが餌を求めて浮遊して来る時を狙ってたらふく捕食 その甘い脂がのった身は
鮭鱒の中で特級にランクされ豊洲市場で大間のマグロと同等の値が付く そんな真鱒を厳選しカルパッチョに






KIKIHOUSEのシェフはジギングのマエストロです。鮭と同じく太平洋を回遊し川に戻ってくる真鱒は、
三陸町の綾里沖の海底でオオナゴをたらふく食べ、川に遡上し産卵するパワーを貯め込みます。
そのパワーは脂となって、身に回って蓄えられるのですからまずい訳がありません。
ちなみにそのとろけるような身を持つ真鱒は豊洲市場で2万円の値がつきますそんな真鱒紙包み焼き





森伊蔵は、日本の鹿児島県垂水市のプレミアム芋焼酎です。
有機栽培のサツマイモを原料とし手間の掛かる伝統的な甕壺仕込みによる少量生産なので、入手困難な芋焼酎です。
当店では常時在庫してる「チーム森伊蔵」ならでわの 力業です。






カキのコンフィとガーリックトーストはワインと良き結婚 (日本語ちょと不自由)




フランス・イタリアにまたがるアルプス周辺の郷土料理であるチーズフォンデュ。
野菜等の具をチーズに加えない比較的簡素なタイプのチーズフォンデュですが、チーズとパンには激しくこだわっています。







キキハウスのシェフは釣り名人です。漁期は早起きというか夜の二時に起きて海に出かけます。
が、自然が相手なので海に出れば何時も捕れるとも限りません。良い状態の真鱒などの魚が捕れた時は、
かる〜くスモークにしてカルパッチョにします。そんな腕次第の、魚のカルパッチョ





お酒の後のしめは、熟成三陸ヒラメのえんがわだけのワサビをちょいときかせた丼に、お茶を回しかけるとたまりませんね。





お酒の後のしめは、熟成三陸ヒラメのえんがわだけのワサビをちょいときかせた丼に、お茶を回しかけるとたまりませんね。




あくなき美味の「探求」三陸1000mの海溝に潜む「幸神めぬけ」今では「幸神めぬけ」を狙う漁師はいない。
またま捕れると豊洲市場に一直線 豊洲市場での相場は大間の本マグロに勝るとも劣らない。
そんな捕れるとも分からない「幸神めぬけ」をシェフは三陸最高級魚を狙う。
贅沢にも「幸神めぬけ」をたっぷり使い仕上げたのが 「幸神めぬけのテリーヌ」贅沢の極みです。





幸神めぬけのポワレ 一口ほうばればあまりの美味しさに絶句必死です




採れたてウニの中ジョッキ(季節限定)




キキハウスのシェフはヒラメを釣らせたら右に出る者は居ないと言われているムーチングの名手です。
大物の魚は美味いと言われてますがヒラメに関しては50センチくらいのが一番うまいので、
選んで釣り上げる技は神です。 





南フランスのプロバンス、マルセイユが発祥と言われているが謎?
地中海沿岸地域の各レストランが地元料理の魚介鍋を発展させ、
洗練されて今日に至る。
地元三陸の魚を使い魚介の出汁を徹底的に抽出し更に洗練されたスープです。






キキハウスのシェフは利き腕のハンターです。猟期は毎日早起きして愛犬と供に山に出かけます。
散弾銃を使いますので弾で身が荒れることが多いのですが。上手いこと頭にだけ当たって落としたキジは、
 かる〜くスモークにしてカルパッチョにします。なので獲れた時限定メニューなのです。 





獲物はシェフみずから獲ってきて下処理してますので 安心してお召し上がり下さい。





キキハウスのシェフはスーパーハンターです。猟期は毎日早起きして愛犬と供に山の溜池や川に出かけます。
散弾銃を使いますので弾で身が荒れることが多いです。
上手いこと頭にだけ当たって落とした真鴨の肉は熟成させた後 ゆっくりとローストします。
なので何時も有るとは限らないメニューなのが、マガモのローストです。






カリブ海の島国ジャマイカの郷土料理で、
ナツメグ、タイム、ニンニク、ジンジャー、クローブ、シナモン、オールスパイスなどなどの香辛料やハーブをブレンドした
チキンですボブ・マーリーも大好物だったそう それを鹿肉でやっちゃいました




鹿料理 キキハウスのシェフはポンコツ猟師です。一発必中は無理です、
なので数打ちゃあ当たるで確立勝負です。猟期は毎朝山に出かけ鹿を狙います。鹿はたいへん臆病な生き物なので、
なかなか射程範囲に入れさせてくれません。
結構難しい相手ではありますが、獲れた時は赤ワインで煮込みにします。出来上がったソースは酸味が鋭いので、カシスクリームの甘味で和らげてあげます





山を駆け巡り、そーっと忍んで獲るまでは猟師
さぁ、これからが調理師としての腕の見せ所 いかに鮮度良く保って、
捨てる部位と特上の部位を見極め 一番良い肉で調理に入れるかが勝負どころ。 




脂質多めの特級イノシシ 和風ステーキ お箸でど〜ぞ




シェフはエアーライフルのG13並の名狙撃手です。
一月に入って木の高い所に残された木の実を食べ腰回りに脂肪を溜め美味しくなったヒヨドリを狙います。
これぞ究極のザ焼き鳥です。 





鹿のしゃぶしゃぶは、急斜面を上り下りしてエサを取っている強靭なモモ肉を使います。
なので薄切りにした鹿モモ肉をサッと火を通して特製漬けダレで戴く野趣豊かな味が口中に広がります。 





健康食品としても注目されている「亜麻仁油」を配合した飼料で飼育し更にエゴマと海藻粉末を加え
、脂肪の美味しさと、食べる人の健康を考えた「遠野の亜麻豚」を使い、一晩じっくりと秘伝のタレに漬け込み
 さらに付けタレを何度も付けてジックリと焼き上げたスペアリブは45年も愛され続けております。





日本一香り高い 岩泉のマツタケ6枚入りのクリームパイ





区界峠や岩手山の麓の畑にいる雉のしゃぶしゃぶ 伊風つけタレでいただくと白ワインが欲しくなります。





大追の本州鹿は冬は積もった雪を払い除けて落ちているドングリを主体に食べているので、脂の乗りが半端ないです。
イベリコ鹿ですね、これは。。






今晩のまかないは 北上川に飛来してきたマガモの鍋。モチロン日本酒でいきます。〆にはうどんかな




岩泉の香りマツタケ、鬼瀬の香茸、八幡平の舞茸のブルスケッタ




ステーキを焼くこと48年、牛肉を知り尽くしたシェフが、こだわり抜いたのがサーロインを焼く時のフライパン。
経験から導き出したのが鉄板の厚さが16mmの超極厚の特注品ステーキ専用フライパン。
その重量14kgと日本一重いフライパンなで蓄熱量は半端ないです。その焼き上がりは他に比類無きものです。
 肉の表面を一瞬で焼き閉じ込める時間は超絶待ったなし。         
この特注フライパンで焼くステーキは格別





健康食品としても注目されている「亜麻仁油」を配合した飼料で飼育し、
さらにエゴマと海藻粉末を加え、脂肪の美味しさと食べる人の健康を考えた遠野の亜麻豚を使います。
それのロースの芯だけを使い、仕上がるまでに40日掛かる自家製生ハムはアンティパストで好評です。 





「とりあえず」で、人気の一品です



女子人気のピカタですが、当シェフは週に3回いは食べているお気に入りの一品です。ご飯が欲しいと言われます




ワタリガニをトコトン堪能。渡り蟹を2ハイ使った濃厚なカニの出汁が、
トマトと生クリームのソースが絶妙にパスタに絡み合った。ソースに激しくこだわるパスタ。 





日本海で捕れるアオリイカのスミ袋を取り寄せ、香りと味に徹底的にこだわりました。
イカ墨の黒い色素成分はメラニンで、旨み成分であるアミノ酸がたっぷりと含んでいます。
これを上手に焦がすと薫り高い美味しいソースとなりパスタと絶妙に絡み合う、ソースに激しくこだわる




ソースに激しくこだわるカルボナーラは、当店一番人気のスパゲティーです。
お客様からは日本一うまいカルボナーラだと激しく絶賛されています。
過大評価だとは思いますが、作っている本人も大好きなスパゲティーです。




エビをトコトン堪能したい方の為のパスタです。 
6本もエビを使い、じっくりと旨味を引き出した濃厚なエビの出汁がトマトと生クリームのソースにまろやかに溶け込んでいます。
それがスパゲティー絶妙に絡み合う、ソースに激しくこだわる、ちょいリッチなスパゲティーです。




サウザンカリブソースを使ったキキスパゲティーはピリカラに仕上げており、
とろけるチーズとの相性はバッチリです。いままで980円で提供してましたが開店から、
はや45年をむかえましたので記念価格780円でのディスカウントです。





東京渋谷の最古参のレストラン「SABARAN」で修行したシェフはオムライス作りの名人です。
が激しくフライパンを煽るので、手首が痛くなるので作るのが大嫌いです。
なのでメニューには載せないてないイワユル裏メニューがチーズオムライスです。
たいへん美味しいと言われますが、腱鞘炎になるので絶対に注文しないでください。 




葉山から年に一回、スペアリブだけを喰いに来てくれてる熊谷氏。
ライオンのように豪快に骨をも砕くかのような食べっぷりには、
いつも惚れ惚れ見ている自分も唾液が舌の裏から溢れ出てくる。



「夜のチーズケーキ」製作ちゆう 濃厚なソースをかけて頂きます。


フォンダンショコラ



アイスドブリュレ


ご予約にてお誕生日ケーキお作りいたします





夏を惜しみつつ「鮎のムニエル、キュウリのぬか漬けと」
酸味の効いたワイン、トロッケンが決まるね。



「鮎のピザ」
ハイボールでグビグビといかがかな。




「あゆのムニエル 赤ワインソース」
赤ワインにもばっちりだよ〜
ブルゴーニュの赤じゃなくても
デイリーなピノノワール系のワインがよろしんじゃない。。



なつの終わりにショートパスタ
「鮎のフジッリ」酸味の少ない白ワイン
おフランスのソービニョンブランがいい。



まつたけオイルと岩塩で食べる「ヒラメの皮」
あさ開の「水神」よきかな






ヒラメのムースをヒラメのフィレで包みポワレ
ミュスカデ シュールリーをキリっと冷やし
グビグビとやちゃいますか
グビグビっと





鴨とかジビエを喰う文化が無い盛岡だけ
そこで「真鴨のソテー、オレンジソース」
グランヴァンでもデイリーでも赤ワインと合わしたら三日間は幸せになれるよ。





「雉のバカボン」の出来上がり。
ちゅうことは、オイラはバカボンのパパなのだ。
バカボンのパパは、ご近所の造り酒屋の
「ふなしぼり」でやりたいのだ。



熟成まで待てませんっ
早池峰山のドングリを熊と争いあって喰っていた鹿なので
特級品と言われている北海道の十勝のエゾシカと同じく
脂が口の中で溶けてしまう希少な「鹿のステーキ」
極シンプルに塩で味わう。
何が合うってボジョレー、それもヌーボーじゃなく
ムーラナヴァンで決まりっしょ。





鹿のモモ肉は大きいので赤ワインで煮込んで小さくして喰うのもいいかな。
合わせるのは赤ワインと思いきやヤッパリ赤ワインだな。
俺的にはボルドータイプのスーパータスカンぢゃなく
サンジョベのでやりたい





雪もチラつきクソ寒いんで、冷え症とか婦人病に効くと言われているサフランで色と香りを「鹿のポトフ」
スパイスも利かせてる事だしサフランの香りに合わせるのが白ワイン
その中でもアルザスのゲヴェルツトラミネールがいい






今が旬の赤カブのソテーを添え、ソミュール液に漬け込み味付けと強制熟成させた鹿肉だからソースはいらない「鹿のポワレ」
それこそコレにはポイヤックの赤がばっちし、グランヴァンじゃないやつでね





ヱビスビール飲みながら鹿料理最後の「鹿のカチャトーレ」
今が旬の甘いネギも一緒に焼いて食べる「幸せだなぁ〜」と思う瞬間。っと言う事で
狩猟によって捕獲された野生鳥獣魚いわゆる「ジビエ」料理お出ししてます。
ヱビスあります。





誰だ、今年の山は不作だなんて言った奴は。
ドングリがいっぱいだぞ。
そんな丸っとしたヤマドリを「御狩場焼き」で喰らう。
それと、こんがり焼いた一片を徳利に入れてヤマドリ酒と洒落こむ。
旨いのかって?
ふふふ秘密。




冬一番、夜の味覚「鴨すき」
渡りのマガモならではのヘモグロビンたっぷりの
レバーを連想する暗紅色の肉。
脂は敵から身を守るため太ってられないのと
岩手の雪事情で餌が取れず、ほとんど乗ってないが
肉のうま味の濃厚さは例えようがない。
コレには熱々のネギもこれまたばっちり。
なんたってカモネギって言うくらいだからね。
それと喘息とかアトピーにも効くっていうくらいだから
ミネラルとかビタミンAが豊富なんだね。
最後にウドンを入れて〆とする。
さぁ〜てと今夜も頑張るか。。




「ママスのカルパッチョ」
川にヤマメっていう雑魚がいるじゃん。
そのヤマメのメスが海に下って鮭みたいな体になり
川に遡上しサクラマスとなって
川に残っていたオスと一緒に秋に産卵するわけだが
サクラマス一匹に30センチオーバーの♂が3匹みたいな乱交パ―ティー。
なのだが、20センチくらいのチビヤモメの♂が
サクラマスの放卵の一瞬を狙って
シレっと参加しているちゅうのが笑える。
その魚、海にいる鮭みたいな雌ヤマメをママスというんだな。
その反面♂は、♀が海から上ってくるまで川で一人で暮らしているから「ヤモメ暮らし」
なまってヤマメという名前にった。
鮭と違って回帰率が悪いので稚魚放流はされて無い。
自然の産卵だけに頼っているので、その数は至って少ない。
なので早春の真鱒は築地で2万円の値が付く貴重な食材。
その身を口の中に入れると
フワッとするとともにしなやかさもある。
それを追うように鮭鱒科特有の香りが鼻に抜け
身の甘さが舌の上といわずのどちんこまでにも、まとわりつく。
感の悪いお前らにも分かりやすいように乳房に例えてやると
まぁ、人にもよるだろうけど
10代の青くゴリゴリした乳房ではないし
かと言って、40代の子供がいる人妻の腐る寸前の
熟成された乳房でもない
ましてや、子供を身ごもっている女性の乳房でもない
そうだな30代前半の女性
それも結婚をを控えている、希望に満ち溢れているおっぱい。
と例えたが、もっと分かりやすく言うと
舌で触った瞬間は柔らかいのだけれども
その身を親指と小指に力を入れ揉みしだくように手のひらで包むと
モッチリとした感覚が手のひらに返ってくる。
ママスの生とはそんな感じだ。
たぶん。。。






岩洞湖のオイルサーディン その二
冬は遊ぶのに忙しい
じゃなくて、仕入れに忙しい。
ようやく時代が追いついて来た今
店の攻撃的メニューとなったジビエ料理。
キジ、マガモ、山鳩にヒヨドリそして
売買禁止鳥のヤマドリ。
これは商品にしてしまうと、お縄頂戴になってしまうので
「お振舞い」用として獲る。
ジビエって野禽類のことをいう
野禽っていうと小鳥主体で四足動物は入らない
せいぜい入れれるのは野ウサギまでくらいかな。
鹿とか熊、イノシシはジビエって言わないからね。
獣肉だよ獣肉。
まぁ、うちではマガモとかキジと物々交換したイノシシや鹿
クマも出してますけどね。
だから一年分の食材を冬の狩猟期間中にストックしなければならい
遊びじゃないんだよ〜
仕入れだよ。
コレを真空パックにしてマイナス25度で保存ずると
味も、そ〜落ちないないで一年中提供することができる。
それと同時に岩洞湖のワカサギ釣りが一月中旬ころから解禁となる
これもまた狩猟と並行して行かなければならんのだ。
ここの水深20mより深いとこに居るワカサギは
「ピンクワカサギ」といって透きとおるように桃色に染まった魚体は
岩洞湖の中でも特別に んまいっ! 
それは、ほんのりと甘く口腔から鼻に抜ける香りもいい。
淡水魚のくせに生臭みが、まったく無い。
腹の苦みは若草を連想させられるかほり。
それは淡水性の極小オキアミが極寒の岩洞湖ならでわの条件下で発生する
ひらたくいえば「エビ」
コレをタラフク喰っているワカサギの体は
薄いピンク色に染まり脂がのるのだよ。
エビが大量発生すると、岩洞湖のワカサギは釣れなくなる。
いわゆる喰い渋りちゅうやつ
へたすりゃ数匹の釣果で終わることもある。
それはエタイの知れない釣り針に大きいエサと
それから伝わる殺気。
そんなもん喰うよりも
大量に浮遊しているオキアミを喰っている方がいいからね。
それと、生活排水が一切入らないから美味いのかもしれんな。
ワカサギと言えば、から揚げテンプラ、そして南蛮漬けで喰うのが定番。
岩洞湖のワカサギのデカいやつは、メザシにしてもいい。
当店では「ワカサギのピザ」ちゅうので料理します。
魚臭さまったくない岩洞湖のワカサギならでわのピザ
口いっぱいに堪能できる18匹入りだからね。
リピーター続出ですわ。
とにかくめちゃくちゃ美味いのは保障する。
もう一つの料理がコレ
オイルサーディンってあるじゃない?
ノルウエ―産のイワシの油漬けっていうヤツ。
平べったい缶をのプルトップをシュルシュルと開けると
ゴロンゴロンと2,3匹入ってるヤツ。
あれはどうもねぇ〜
繊細な舌を持つ大和民族には合いませんね。
オオザッパすぎて。
臭いし。
チョイ昔「TANGO SARDINES IN OIL」ちゅうのを
食材展で見つけたんだわ
缶のフタにはそー書いてあった
ま、平たく言うと 丹後地方で捕れたイワシを油に漬けた缶詰だな
丹後ちゅうと京都の北部、日本海に突き出ている半島の事か。
黙って缶のフタに「丹後イワシの綿実油漬け」って書きゃいいものを
下手な英語で表記するもんだから
あの、おいしくないノルウエ―産のオイルサーディンを
連想しちゃうぢゃないか。
ちゅう事で、サンプルにと一缶もらって来たわけ。
期待しないでプルトップをシュルシュルっと引っ張り上げると
可愛らしいイワシちゃんがキレイに20匹マエナライしてるわけ
見た目も美しいので期待を大にして、お口に一匹
あらまっ、繊細なお味で「はんなりどすぇ〜」
やっぱり大和民族が作ると一味も二味も違いますのんえ〜
そこで賢いオイラは思ったのだ。
岩洞湖のはんなりと甘いワカサギをオイルサーディンに仕立てみようかと
家の庭に生えている北限の月桂樹の葉を一枚と鷹の爪を3輪入れて味付け
さっそく「岩洞湖オイル―ディンを作ってみたら
これがまた美味いのなのんって
タンゴサーディンより、うまいんでないかい。
俺的にはカリッと焼きあげたガーリックトーストの上にコレを乗せて喰うと
あらま、幸せ感がお口に広がります。
それをキリっと冷やしたシャンパンで流し込むと昇天してしまいます。
ここはレモンをギュッと絞ってパクリとやりたいところだが
それをやっちゃあ、いけないよ。
レモンは生臭みをマスキングするために使うものだから必要ないって
っていうか、レモンを掛けたその瞬間
この料理がオジャンになってしまいやす。
それで、食べ尽くしたワカサギのオイルサーディン
残ったオイルは捨てちゃぁいけないよ。
岩洞湖のワカサギのダシが効きすぎて美味いオイルになっているからね。
アリぺロで決めるとニンニクに負けない美味しさに卒倒するはんで






鹿のお刺身
鹿肉いる?って言うと90%の確立で「いらない」って
言われてるらしい岩手県。
そーゆー俺も、そー言われたら
「あんまり欲しくないかな」って思う。
なんでかって言うと「臭い」からだ。
その臭さってのは夏の暑い日に脱いだズック靴から
立ち上る臭いに、鹿特有のケモノ臭い匂いが混ぢった
オエッとする臭いだからだ。
なんでそーゆー臭いがするのかって言うと
鹿を撃つでしょ。
その場で内臓を取り出すでしょ。
その鹿をブルーシートに包むでしょ。
時間が余っているときなんか、また猟を再開するでしょ。
で、そのまま鹿を包んで帰るでしょ。
そしてブルーシートの包みを解いて解体に入るでしょ。
皆でアーダのコーダの言いながら楽しく解体するでしょ。
そしてブルーシートに置かれた肉を
各自ビニール袋に入れて持ち帰るでしょ。
持ち帰った鹿肉は臭くて喰う気になれないから
知人に配るでしょ。
っていう流れの中で臭くなるのだ。
で、分かりやすく鹿を臭い精肉にするまでの解説をする。
狩猟人生で最初に誘われたのが鹿の巻き狩り。
誘ってくれた山窩集の隊長が簡単に説明してくれた。
それは「自動車が現場に着いてドアーを閉める音だけで
鹿は猛烈な勢いで現場から逃げ出す」のだそうだ。
だから鹿を追い出す勢子は二山先の所まで車で移動し
そこから待ち受けの壁まで追い出すように大声を上げながら
歩き始めると、勢子に追われた鹿は待ち受けの壁まで逃げるのだが
壁の待ち受けの人間を察知すると追われて来た獣道を
引き返し逃げて来た道を引き返す鹿やら霧散する鹿たちは
挟み撃ちにあうものやら、勢子達の壁に突っ込んで行く
鹿がいたりして撃ち殺される運命をたどるっていうわけだ。
それが鹿の巻き狩りちゅうものだそうだ。
とりあえず僕は新入りだからって
鹿が来さそうも無い山の麓に
保険の意味で配置させられるってワケ。
無線機を持たされて、そこから流れる勢子たちの
鹿を追う威勢のいい声を聞きながら
待つ待つ、ただひたすら待つこと2時間。
あまりにも暇なもので、ラヂオ体操とか始めたら
山のてっぺんで指揮を取っている隊長から
「動くなっ!音立てると鹿が寄ってこない」と
お叱りを受ける。
そして冷え切ったからだの生理現象オシッコ
たまらずジョジョジョーと垂れると
また隊長から「オシッコの匂いで鹿が感づくから我慢しろっ」
って、お叱りを受ける。
しゅんとなって待つ事2時間半もたったころ
勢子たちが「あっち行った」とか「こっちに回ってきた」
とか、にわかに騒がしくなる。
そんな会話が無線機に流れてくるやいなや
勢子に追われた初めてみる野生の鹿が僕の目の前を
ザザザっと大きな岩が谷底めがけて落ちるが如く疾走していく。
そんなド迫力の鹿に驚いてしまい銃を構えれないまま見送る。
ちょっと間をおいて二頭目の鹿が疾風のように
デッカイ角を木々の枝にバシバシッと打ち付けながら
これまたマッハの速さで疾走し谷へ落ちていく。
あまりの角のド迫力に、鉄砲を構えられないまま
2頭目の鹿も見送ってしまう。
これが鹿の巻き狩りっちゅうもんか
エライもんだなと大いにビビった新米猟師。
鹿が獲れないまま、お次の山を巻き狩りすると隊長は言った
次の山でも「2時間待ちか〜」と腹をくくることにした
でもあんがい早い時間でパパーーンと銃声が聞こえた
その後から無線機には「獲れたのかっ」
獲れたのかっていう声がバンバン流れてくる。
しばらくして「獲ったぁ〜」という
勢子の声が無線機から流れてきて鹿の巻き狩り無事成立
ばんざーい ばんざーいで鹿の角にロープを引っ掛け
ズルズルと山から引きずり下ろして
おもむろに鹿の腹にシュパっとナイフを入れて開く
そして気道食道を切り離してから内臓を一気に
開いた腹からドバっと出す。
そして、無造作に畳まさったブルーシートを広げると
これがまた、いつの使いまわしのブルーシートなの?
っていうくらい血と泥まみれの汚らしいブルーシート。
あんまりなのでペイペイの新入り猟師の僕が隊長に
「ブルーシート汚いんで毎回替えませんか」と進言したら
「いままでこーやって来たから大丈夫だ」と
ウルサイっ!みたいな口調で一言。
僕は黙るしかないペイペイ猟師
そのブルーシートに鹿を乗せてグルグルっと巻き
自動車のキャリアに乗せた。
そして時間も時間だし今日の猟は終了と隊長の宣言。
その鹿を獲った所は三陸町っていう自分が住む盛岡から
2時間半くらい離れている所
ちゅことは2時間半ブルーシートに
鹿が包まれているちゅう事。
鹿の体温は40度と言われている。
そんな鹿をブルーシートに包んで2時間とかしたら
当然蒸れて臭くなるし、さらにばい菌の繁殖最適温度
ってのは35度くらいと言われている
その速度は15分で1細胞が2細胞に分裂てことは
一時間で16細胞に増殖するって事を考えたら
当然食あたりになっても不思議じゃないっていうより
普通に当たるでしょ。
で、長距離ドライブで持ち帰った鹿の解体が
隊長の庭で始まるわけ
その広げたブルーシートの上を会の皆様全員土足で
ワイワイ楽しく解体ってことは
おぢ様たちの歯槽膿漏の唾が飛び散っているってこと
汚いな〜ではなく、まぢ不衛生だと思った。
さらに言うと、土足の解体現場の衛生観念の無さに
ゾッとしたというより
あきれ返って吐き気がしたのが本音。
貰った肉を見ると鹿の毛がサワっと張り付いているし
チョー臭いし。
このまま煮込んで犬の餌にしようかとも考えたが
隊長に「どうだ、初獲物の鹿は美味かったか?」と
聞かれた時を思うとそうもいかないので
腹をくくって食べることにした。
だから僕は水道の水をジャンジャン流しながら毛を洗い流し
さらにカメノコタワシでゴシゴシと表面の肉を
削り流してから、貰った肉全部赤ワインでコトコトと
徹底的に煮込んだ煮込んで3時間半。
まるでマリーアントワネット時代に
潜り込んだような錯覚に落ちいった。
そんなマリーアントワネットのころのフランス料理ってのは
流通体制が整っていなかったので
臭くなった肉や魚が当たり前だったらしい
だからそれらの肉は充分以上に熱を通し
バイ菌を殺したらしい煮込み料理が主。
そして臭みを感じさせないようなソースを
作らざるおえなかったから
手の込みすぎたソースを発案していくわけだ。
ヌーベルキュイジーヌって言う日本料理に触発された
近代おフランス料理
食材本来の味を生かす手法は
流通形態の発達で可能になった。
それは近年1980年に入ってからの話だ。
そんなことを思い出す初体験だった。
まあぁこのくらいグツグツと煮込むと鹿か牛か何の肉か
分からなくなってしまうってのが本音。
旨いかって言うと、柔らかくてホロっと崩れる肉質加減が
たまらないちゃあ、たまらないかな。
そんな隊長は案の定、次の日に焼肉して喰ったら
2時間もしないで、家族全員ピーッのゲロゲロで
一晩中便所の取り合いだったそうだ。
さすがにそれからはペイペイの新米鉄砲ブチの俺の進言を
聞いてくれ、次から新品のブルーシート使うようになった。
そんな鹿の巻き狩りなのだが、2時間も寒い中ジーっと動かないで
待ち続ける我慢強さと辛抱がいる猟は自分的には合わない。
やっぱり犬と一緒に山々を駆け巡るのが楽しいし面白い。
でも一番は不衛生な肉を貰ってもしかたないなと
おもったので、なんのかんの理由を付け
なるべく参加しないようにした。
それに比べてユウチューブを見ていると
北海道の鹿猟は衛生観念がしっかりと根付いている
だから行政一体となって食肉としての価値を
高めようとしているから
汚らしいと思うとこはまったく感じない映像。
それは大間のマグロと同じ戦略だ。
大間のマグロは捕ったらすぐに腹を割き血抜きを完璧に行い
すぐに氷詰めにしてしまうという事を船上で完結し
品質の向上と維持を示すことによって
ブランドが確立したのだそうだ。
それに内地の日本鹿より北海道のエゾシカの方が
美味いという品種の違いもあって
昔から商品価値があって全国流通してるってことも
多分に影響しているとおもう。
で、ヘタッピィな俺にも弟子が出来
その弟子が鹿狩りしたいというので
その弟子の言うがままに手探り状態で鹿狩りを始めた。
二人なので巻き狩りは成立しないので
コール猟を手探りではじめたが
これもまたユーチューブを見て弟子が真似をしたのを見て
僕も真似てみた。
鹿の繁殖期にはオスがメスを何頭も従えてテリトリーを宣言する。
そこへ雌鹿にあぶれた雄鹿がやってきてバックで雌鹿に乗ろうととする。
が、そうはさせんとばかりにボス鹿が出てきて
メス鹿争奪の戦いが始まるのだ。
チンポに地が昇ったオス鹿、あの凶器満載のツノでバシバシと戦う。
で、角でグッサリと刺された方が敗退。
まれに喧嘩角が折れたまま刺さった
負け鹿がいるくらい、壮絶な戦いらしい。
その前兆戦として雄叫びの鳴き声を発するのだが
それに似せた笛を使ってテリトリーが出来上がっていそうな所で
この鹿笛を思いっ切り吹くと
俺のシマに無断で入ってきたヤツは許さんとばかりに
角をブインブイン振りながら出てきた
ハーレムのボス鹿を仕留めるって猟なのだ。
それと鹿の角を短く切って何本か、自分の腰にぶら下げて山を歩くと
カンカンとぶつかる音がし、鹿同士の戦いの角合わせの音が出る
それに釣られて、チンポに血の昇ったオス鹿が忍び寄って来る。
その猟を始めるにあたって俺は思った。
一昨年だが、秋田の西木村マタギの佐藤さんから
電話があって「大口径ライフル射撃大会仲間の
岩手のAさんから連絡が合ったんだが
忙しくて鹿を貰いに行けないから代わりに貰ってくれないか」
という内容の電話だった。
なのでヒマしてた師匠を誘って
佐藤さんに教えられたとおりの
落ち合う場所に行き、鹿をくれると言うAさんという
鹿ハンターと初対面。
その方は早池峰山の麓でククリワナを掛けている狩人。
鹿の有害駆除に掛かっている賞金稼ぎみたいな
プロのディアハンターだった。
今回は3頭もらってくれないかという事で
さっそく現場に連れていかれた。
水量のある沢に腹を割った鹿がロープに繋がれ
冷たい流れに浸っていた。
それを丘に引き上げ解体が始まった。
「今回は3頭も解体しなければならないから背割りで
肉を取る」と師匠は言った。
そのシカたちは腹が割かれ内臓が取り去られた状態で
沢の水に浸されていたので肉の冷却と血抜きが完璧だった。
切り分けていく肉の綺麗な事この上なし状態。
もちろん臭いなんかしない、初めて見る綺麗な鹿肉だ。
更にホンシュウシカにあまり見られない
分厚い脂肪の層があって
まるで牛のロースに見まごう肉が取れたのだ。
一般的に熱を通して、鹿の脂肪は口の中に入れると
口蓋の上に張り付き、溶けないので食感がこの上なく悪い。
なので、鹿の脂は徹底的に取り除くのが精肉方法だ。
だから、綺麗なロース脂なんだけど
あまり嬉しくはない鹿肉の脂なんだよなと思いながら
切り取っていった。
この3頭の鹿は下顎と尻尾はバッサリと切り取られて無い。
なんでかって言うと、鹿を獲った賞金をもらう為の
証拠提出品なのだそうだ。
それと下顎で推定年齢とか生活状況などが
見る人が見れば分かるのだそうだ。
で、持ち帰った鹿肉 臭くないし血も滴らない極上品なのだが
切り分けた時の解体手順が悪く毛が張り付いていて
衛生的にはどうなの?って感じだったし
清冽な沢水に浸っていたんだけど、しょせん沢水
信用はならない。
これまたジャンジャン水道の水をかけまくり、洗浄した。
その肉の塊を切り分けていくと
鹿の脂の割には牛の脂のように
手のひらの温度でサラサラと溶けていく感があった。
これなら鹿肉の脂でも美味いんじゃないかと
期待したりなんかして、、、
脂が付いたままのサーロイン部分を切り分け
塩コショウでジュっと焼いて喰ってみた。
その鹿の脂は口の中でへばり付く事もなく口の中で
スーッと溶けた。
あまりの美味さに絶句した。
この事を西木村マタギの佐藤さんにお礼かたがた報告した。
農繁期が終わって秋の終わりに北海道に渡って
プロのハンターとして活動していた秋田マタギの佐藤さんは
獲ったエゾシカを内地のホテルや旅館などに
卸していたのだそうだ。
中でも北海道の十勝地方のエゾシカは特に一級品で
「食い物が違うと肉も美味くなる」と言った。
そりゃそーだ。
俺らが喰っている牛ってやつは本来、草を食っている草食動物なのだが
その牛に無理やり栄養価の高いトウモロコシを
食わせると美味しい脂となって
旨い肉になるのだから
鹿も高カロリーのドングリとか食べてたら
当然イベリコ級に旨くなるよな。
一般的に冬場の本州鹿は千島笹の葉を好んで食べる。
なので解体すると、四つある胃の中は
千島笹の葉やらでパンパンだ。
体重の半分は、この胃じゃないかというくらい
超膨らんでいる。
そーやって貧小な千島笹の葉から微量の栄養を取るのだ。
まぁ狩猟期は冬場なので笹しか青い植物が無いので
それしか食い物が無いので仕方なく喰っていると
言った方が正解なのかもしれない。
冬場以外の季節には百姓が育ててた畑の野菜
米、牧草などを好んで食べるから有害駆除獣に指定獣なのだ。
四つもある胃だから、その食いっぷりは
想像をはるかに超していて
せっかく作った畑や田んぼは、ほぼ全滅なのだそうだ。
キジ撃ちに里山に行くと、畑や田んぼの周りに
ネットを張り巡らし、場合によっちゃあ電柵といって
高圧電流が通っている線を張り巡らして鹿の侵入を防いでいる。
そんな百姓に「鳥っこじゃねぐ、鹿を撃ってけろ」って
よく言われるから
鹿の被害にはそーとー切羽詰まっていると感じる岩手県。
と、大幅に話がそれたので修正すると、電話向こうの佐藤さんは
「十勝地方のエゾシカは、ドングリなどの木の実を
主食としているのでその身の脂が美味くなるのだ」と言い
続けて「早池峰山の麓の本州鹿も木の実を食べているから
脂が美味いんだと思うよ」と言った。
まさにイベリコ級の鹿になっているのだ。
そんな戴いた鹿の肉は上等品の上に
Aさんの処理が適切だったのだが
その後の我々の解体処理に難があって毛が付いていた。
だから弟子と俺とがやる以上は
それ以上の鹿肉にしたいと思った。
なんなら刺身で食えるくらいまでの肉に
仕上げたいなと思った。
それには、撃ち殺してから徹底した衛生観念を持って
精肉にするまでの時間短縮だ。
僕が調理人として現場に入った40数年まえは
肉の部位で頼んで配達される時代ではなく
チキンといえば丸のまま一羽くるし
牛とか豚は半割りといって、縦に半分にされた体がくるし
牛の頭とか豚の頭も普通に厨房のテーブルに転がっていて
その頭から肉をこそげ取って、ハンバーグの種にしていた時代だ。
だから鹿の解体は、ちょー楽勝。
あとは、ユーチューブでいろんな方の解体の仕方をみて
衛生的に肉に切り取る方法を組み合わせ
最良の方法を考えてみた。
倒した鹿の血抜きだが
人間で言うと耳の下の頚動脈を切れば
ドバドバと出るんじゃないかと弟子がやって見たが
期待したほど血が出ない。
なのでユーチューブで、またまたお勉強すると
人間で言う鎖骨と鎖骨のくぼみのとこから
心臓に向かってナイフの刃を差し込み
グリグリとすると左右の頚動脈とか大動脈あたりの血管が
破壊されドバドバと出ていたのでコレで行くことにした。
まぁ一番良いやり方は、ヘッドショットと言って
頭を狙い撃ち倒すと心臓はドクドクと動いたまま
鹿の動きだけは止まるので
心臓のポンプ効果で頭から血が素早く大量に放血する。
コール猟で初めて獲った鹿が弟子のヘッドショットで倒した鹿
この時の肉は、まさに完璧な肉だったのだ。
なので、いつもヘッドショットでやりゃ〜いいじゃん
となる訳だが、そこまで腕が良いわけじゃないので
とりあえず鹿の体に当てることに集中する。
2年目のシーズン、またしても弟子がヘッドショット。
杉林を疾走する鹿の頭に見事に命中
なんなの?弟子、凄腕ぢゃないの!
てな感じで俺のほうが弟子ちゃいまっか。
あとyoutubeで見ると撃ち殺した後、鹿の後ろ足にロープを掛けて
木に吊るして頚動脈を切り血を抜き出すっていう
方法もあるみたいだが
こもまた、あまり現実的じゃないので
せいぜい鹿の頭を斜面下に向けるくらいか。
北海道のプロ猟師はピックアップの自動車の荷台に
X字の鉄骨を組み、滑車を使って鹿の両後足をくくり
放血している人もいるみたい。
それにしてもエゾシカハンターの美味しい肉を取るっていう
執念はすごいねぇと
ユーチューブを見てるといつも感心する。
てなわけで我々の血抜きは鎖骨と鎖骨の間のくぼみに
ナイフを入れ、グリグリとかき回し放血する手段を採用。
それからの解体手順はこーだ。
まずゴム手袋をして、肉を入れるビニール袋を6枚
口を広げて鹿の周りに置く。
そうしてから鹿をうつ伏せに四肢を開いて置く。
そして背中の真ん中に一本ナイフで切り込みを入れ
いわゆる背開き状態にする
この時、背開きに使用したナイフと手袋は廃棄する。
なんでかって言うと鹿の体表面にはマダニが付いていて
それを取るために泥の溜まり、業界用語で言うヌタ場で
転げまわってダニを落とすから毛皮は、めっちゃ汚いのだ。
どのくらいマダニが付いているのかというと
鹿の死体を放置して体温が下がると
ポップコーンの大盛
ホウキではくくらいゴッチャリ出てくる。
そりゃ〜鹿さん、体が痒いはずだよ〜。
ちなみにマダニの越冬は鹿だの熊だの猪の毛皮に取り付き
寒い冬をやり過ごすのだ。
その一番鹿の汚い毛皮を触ったナイフと手袋を
肉をはがす時にも使ったら
ばい菌繁殖の元にもなるし、鹿の毛も付いて汚らしいから廃棄するのだ。
オット、手袋は廃棄するがナイフは持ち帰って
キレイに洗って、次回の猟のために準備するのだよ。
そしてからにゴム手袋とナイフを新しいものに替えて
肉の切り取りに入る。
絶命したはずの鹿から肉を切り取るとき
肉が痛いようってビクビクと動く。
だから余計に、綺麗に切り取ってやらねばと思うのだ。
部位ごとに切り取るのだが切り取り始めたら
絶対に地面に触れないように
慎重に且つ丁寧に切り取り、そのまま脇に置いてある
ビニール袋の広げた口に
そっと部位ごとに収納する。
注意して切り取って行くんだが
間違って地面に付いた肉や毛の付いた肉は
別の袋に仕舞うのは言うまでもない。
そうして鹿肉を切り取り終えたら、次は肝臓と心臓を取る。
その時、膀胱と大腸小腸を傷付けないように
慎重に肋骨下の腹膜を開く。
膀胱を間違って傷付けると繁殖期のオスの小便は
縄張り誇示のためチョー雄臭すぎるし
大腸小腸は大腸菌やらの菌の塊だから
特に気を付けなければならない。
肝臓と心臓を取り終えたら、ゴム手袋を廃棄して完了。
ここからが一番のキモ。
僕はここで猟から一旦離れ、切り分けた肉が入った
ビニール袋を持って、一目散と自分の店へと向かうのだ。
この時クーラーボックスに肉を収納してはならない。
なぜなら鹿の40度近くもある体温で蒸れて臭くなるからだ。
なので肉が入った袋を風にさらせる軽トラの荷台なんかは最高だ、
車を飛ばして走る走る、時間にして30分以内限定勝負。
急いで帰ってきた店の厨房の馬鹿でかいシンクに水を満たし
製氷機からたっぷりの氷を入れる。
そこに切り取った肉をビニール袋から取り出し入れる。
これには訳がある。
とにかく体温を落とすと言うことは勿論だが
同時に血抜きも出来るからだ。
氷水が血で赤くなったら、氷水を入れ替える。
これを半日かけて5回くらい替えると
綺麗で衛生的なお肉となるのだ。
お肉が水でブヨブヨにならないかって?
心配無用の介
肉の表面5mmくらいだけが白くはなるが中は赤いままだ。
そして新品のパンパースに包んで水気を完璧に取ると
白くなった肉の表面は赤く戻り水っぽさは感じなくなる。
ここでようやく食材となるのだよ〜
ここまでして精肉したんだから生でも大丈夫とばかりに
鹿肉を刺身にして食ってみた。
鹿臭さがまったくなく「鳥さし」みたいに
幾らでも食える感覚で
赤身の肉なれど赤ワインよりも白ワインを合わせたい
上品な一品になった。
あの早池峰山の麓で鹿猟をしているAさんの訃報が
突然舞い込んできた。
それは「山で猟をしていたハンターが暴発させ
自分で自分を撃ってしまった」
という新聞の記事。
崖を下っていて足を滑らせ、ずり落ちていく途中
猟銃の引き金が物に当たり暴発し
Aさんの胸を直撃したらしい。
そこから気丈夫なAさんは自ら軽トラを運転し山をくだり
町の知人宅に助けを求め駆け込み病院に搬送されたが
次の日未明に出血性ショックで死亡したらしい。
享年80歳というから、その負傷して運転したという精神力には驚きだが
死んだら元も子もない。
岩手で最近あった鹿猟での話 その2
鹿猟を終え車で帰宅しようと、何気に軽トラの荷台に置いた猟銃が
置いただけのショックで暴発し、運転室後部の鉄板を貫き
助手席に乗っていた猟友の背中を貫通し即死。
撃たれたのは若い猟師だったので余計に悔やまれる事故だし
間違って撃ってしまった老猟師は鮎釣りの顔見知りだったので
余計にこの事故の事を思うといたたまれない。
オイラの師匠はいみじくも言っていたが
「狩猟とは行ってきま〜すと言って玄関を出て
獲物が獲れなくても、ただいま〜って無事に帰るのが
狩猟というものだ」と。
ハンティングは野山を駆け巡る生き物を殺して
旨くなくても料理し食べてやる遊びではあるのだけれども
常に死と隣り合わせの危険なものと
常に認識してなければならないと
この事もあって、明日は我が身と己の胸に確と刻んだ。





30年まえくらいかなぁ〜、いや もっとだな〜
そんな昔によく来てくれてたAくん、ご来店。
君といっても好い加減な歳の初老オヤジだから
今はAさんだね。
最初は「なんか親しそうに話かけてくる、おっちゃんやなぁ」と思っていたが
そのお客様とお話しをしていくとだんだんと
40年前開店した頃の思い出が蘇ってきた
お客様に言われて、遅ればせながら俺は「あ〜 そういえば」と
心の中で思ったわけ
でも
時は残酷なもので、その当時の面影はまったくといって無い
いや、少々はあるか
てか、相手も俺の事ソー思っているんだろうけど。
近頃そんなお客様が、おいでになられるので
俺の老化した脳みそのしわにはちょうどいい刺激だ
と言うわけで、30分くらいかなぁ
ご注文のヱビスを飲みながら話し込むわけだ。
モチロン俺もヱビスを飲みながら
そして一段落したところでオモムロに注文戴いたのがコレ
スペアリブ
それも3枚のオーダー
お一人さまで2枚のオーダーはたまにいるのだけれども
3枚のオーダーは、さすがに居ない。
過去にプロレスラー体系の大学時代の後輩が一人いるだけ。
つまり後にも先にも3枚オーダーは二人目という事だ、Aさん。
このスペアリブ
食べたお客様の評価はキッパリ二つに分かれる。
強烈過ぎて喰えないというお客様と
こんなに旨いスペアリブは喰った事が無いと言う
お客様に二分する。
大体ねぇ、俺が感じるままに言っちゃうと
生きて行く上では何の問題は無いが
何て言うか人生を楽しんでないみたいな人とか
覇気が無さそうな人は
スペアリブのパワーに負けるのか、一口食べて顔をしかめる。
一方、バシバシッと精力が沸きまくり
なおかつ公私ともに充実しきっていて
エネルギッシュな人が、スペアリブを一口喰うと
唇をスペアリブの脂で光らせながら獲物をくわえた
野獣的な射るような目をする。
それはトムソンガゼルを獲ったチーターのようにも見える。
そうAさん、いまは100余名を率いるベンチャー企業のトップだからねぇ〜
ビールジョッキ片手にかる〜く平らげていただいたAさん
ホントにすんばらしいぃよ、あなたは
俺もうれしいよ。。
まぁヒトの好みは色々だから断言はできないのだがね、、、
でも軽い気持ちでのスペアリブのオーダーは
止めたほうがいいかもネ。
このスペアリブをお出しする時
どの部位が当たるかはその時のタイミングだが、
チーターなスペアリバーを観察すると
軟骨部分に当たった野獣は
頬を膨らませボリボリと音を立てて喰らう
肋骨部分に当たった野獣は
嬉しそうに肋骨を片手に持ちながらキレイにむしりかじり
白い骨だけにしてウレシそうにいつまでもしゃぶっているん。
俺のお袋は93歳なのだが「スペアリブ持ってこい」という時は
心身ともシャンとして体調バッチリの時に限ってだ。
俺も体調イイ時にスペアリブを喰いたくなるので
間違いないだろう。
どぉ? 一本、いってみる?
さて
サーロインステーキのお話し。
肉を焼いて40年
ようやく俺の理想の焼きに行きついたのが
この特注ステーキ用のフライパン
それも超極厚のステーキパンだ。
日本料理の板長と仲良くしてもらっているんだけど
その人が「まず、食い比べて見ろ」と、言うんで
酒を飲む前に、別々のゲタに盛った刺身を喰ってみた。
見た目はまったく同じ刺身の盛り合わせだ。
まずは右のゲタに載った刺身から喰ってみる。
普通に美味いじゃん。
そいで、おんなじ盛りの左のゲタの赤身のマグロをほお張る。
「ん?コリャ右のゲタのマグロと違うぞ」となったわけ
「な〜んだ、大間で獲れたマグロと小泊で獲れたマグロの違いか」
と、元マグラーのオイラが板長にゆったら
「どっちも同じマグロだ」と言った。
「違いがわからねぇのか」とお叱りを受けた。
わかりましぇ〜んと降参する。
で、この違いはなんなの?って聞いたら
包丁の違いなんだって。
そう言われりゃ左のゲタの刺身は
切り口が鏡みたいに光り輝いて綺麗だし
右のゲタに盛られたマグロの赤身の切り口はボサっとしていて
言われれば、どことなく潰れた感が漂う。
使ったのがこの2丁と見せてもっらた包丁
右のゲタに盛った刺身は、どこの家庭にもあるような
普通のステンレス製の文化包丁。
左のゲタに盛られた刺身は、たぶん見た目での判断だけど
日立の青紙鋼で作られた蛸引き庖丁とみた。
つまり切れ味が悪いステンレス包丁で切り分けると
細胞を押し潰すような切り分けになっちゃうので、うま味が流れ出す。
また口に、ほうばった時の食感にキレが無い。
それに対し切れ味抜群の包丁でサクから切り身を切り分けると
魚の細胞を壊すことなくスパッと切り落とすことで
細胞内のうま味成分が流れ落ちる量も少ないし
言ってみれば、口に入れた時の食感はコクがあるのにキレがあるちゅう
感じかな。
オイラも調理師なので包丁はモチロンこだわるのだが
洋食屋なんで、フライパンには更に激しくこだわるのだ。
一枚のフライパンで何でもこなすちゅうのはカッコいいのだけれども
理にはかなっていない。
包丁と同じで調理する材料の種類と同じくらいフライパンもいるものだ。
で、渋谷のレストラン SABALANでの修行時代
ステーキの焼き方はってぇと
二重になったバーナー全開で自重750gのフライパンを
ガスの炎で包むように肉を焼いていた。
自分の店を持つった時 多少こだわって
自重1.3sの、おフランス製の当時としては
ぶ厚いフライパンを買い揃えた。
重量は約倍になるので、蓄熱量が増えた分
その肉の焼き上がりは格段に違った。
開店からしばらくして、お客様にはイイお値段の和牛を食べて戴くのだからと
もっとこだわって南部鉄器のぶ厚い2.2sフライパンを購入した。
これで焼いたらヒジョーに美味くなった。
なので、これで40年ちかく焼いている。
が、肉の表面の焼き具合がちょと甘いなと思う今日この頃。
こーゆーときはネットで調べてみる
12o厚の鉄板で焼くと異次元の焼き具合になるとあった。
それは、べらぼうにお値段がお高くて美味しいステーキを喰わせる
高級鉄板焼きの店の焼きカウンターには
この12oの鉄板を使用してるのだそうだ。
ステーキの表面はカリッと焼け、中はジューシーみたいな
つまり鉄板が厚ければ厚いほど、肉を鉄板に置いた瞬間
分厚い鉄板の蓄熱効果により、鉄板の表面温度が下がらない
だからそのままの温度で焼けるのでタンパク質の熱変質が無い。
そして蓄熱効果による遠赤外線で中まで素早く火が通るちゅうことだな。
この遠赤外線っていう言葉にオイラはひじょうに弱い。
おととしはマツタケの豊作の年だったので
店で「七輪でマツタケパーティー」っていうイベントやった。
七輪を20oの板の上にのせてテーブルに置き
思い思いにマツタケを焼いて食べてもらった。
そんな宴、みなさまマツタケを存分に味わったようなので
置き板ごと七輪をテーブルから持ち上げ撤収したら
なんと、テーブルの天板が七輪の輪郭で炭化していたのだ。
つまり炭の発する遠赤外線で、七輪の底と置き板を通過し
テーブルの天板が、七輪の底の形で炭化してしまったのだ。
恐るべし遠赤外線浸透力。
そー言えば、あの帝国ホテルの村上信夫さんが
肉を焼くのは、備長の堅炭の置き炭がいい言っていたのも
なるほどとうなずける事件だった。
この事が頭の隅にあって、
遠赤外線でステーキを焼いたら美味いだろうなって
この時から、うすうす思いはじめたってわけだ。
それに冷蔵庫から取り出した肉は、ふつう1時間前に取り出し
室温に戻しておくのが定説。
それは、焼いた時に表面だけが焼けて
中心部は生(レアーじゃないよ)だったりするからなのだが
でもそれは、黒毛和牛には言い当てはまらない。
霜降りの加減が強い黒毛和牛は、常温に戻さずに手早く焼くのがいいのだ
だって常温に置くと肉の上質な脂身が溶けだし
それと一緒に旨みも逃がしてしまうからだ。
そんな冷たい黒毛和牛を焼くには、遠赤外線を強く発射する
ぶ厚いフライパンが必要、炎のムラが多少あってもその分厚さゆえの
蓄熱量が多いのでムラ無く一気に肉の表面を焼ける
そして備長炭を超えた速攻遠赤外線が期待でき中までしっかり熱が入る。
で、厚さ12oのフライパンはとネットで調べるも
そんなもの、ありません。
なので鉄板制作専門店に尋ねてみると、特注で作れば何とかゆう話し。
そこで鉄板の厚さはといろいろ聞いてみると
過去に注文受けた鉄板焼き用のものはやっぱり12oが主流のようで
ステーキの鉄板焼きにはスペシャルな厚さだった。
じゃあってことで12oの鉄板で作るフライパンをオーダーした。
次の日フライパンサイズの内合わせの話の中で
16o厚の鉄板もあるよとの事。
でも焼くまでの温度を上げるに相当時間が掛かると言われた。
「う〜ん」と生返事。
ここでは、だまって鉄板焼き専門店ご用達の12oで作る事にした。
が、
鮎釣りシーズンの真最中だったのだが
いつもなら頭の中には鮎が群れをなして泳いでいる。
頭の中はステーキパンの事でイッパイだった。
鮎釣りしながら、あ〜でもないこ〜でもないと
さんざん迷いに迷ったあげく、肉を焼ける温度になるまで
掛かる時間が比較的早い12oの鉄板を取るよりも
この温度上昇の時間が掛かりまくるが
遠赤外線効果爆大の16oの鉄板方を取ることにした。
だって家庭用のコンロは4000kcal
対してうちの店で使っているコンロは12000kcal
たぶん鉄板屋さんは、家庭コンロを
イメージして言ってるんじゃないかと思ったし。
「ほんとにいんですか?」と鉄板屋に念を押されたが
そこは、キッパリと「早く焼きあがる時間より美味しさを取る」と
宣言したのだ.
この16oは、今流行りのいわて短角牛とか
オージービーフなどの赤身が多い肉には焼くのに細心の火加減がいる。
この超極厚フライパンで、今までの感覚で赤身の肉を焼くと
あっと言う間に火が通り、ただただ肉が硬くなるだけだから。
ジビエのたぐいの肉はもちろんだけど
こーゆー肉質が硬い肉の調理は
フライパンで焼くより、お湯に漬けたりする低温調理法がいい。
それに対して黒毛和牛は触っている手の温度だけで
肉の脂身が溶け、いっしょに旨みも逃がしてしまうから
低温調理法は適さないっていうか、低温調理している段階で
流失する肉汁がもったいない。
なので、この16oのフライパンで一気に肉の表面を焼き固めるのがいい。
この超極厚フライパン調理法は
サシが入ったやわやわな肉質の黒毛和牛に当てはまる焼き方かもね
てなわけで、たかが肉を焼くちゅうことに激しくこだわった結果が
厚さ16oの鉄板。
と言うわけで、ただ焼けばいいと思えるステーキだが
美味しく焼くのにこだわれば
黒毛和牛を100枚は焼いてみなけりゃ分からない事がある。
家でこの黒毛和牛を食べる場合はなんだけど
家庭でステーキを焼くにはハードルが高すぎるので
薄く切っててスキ焼きか、シャブシャブで食べる方が間違いないかな。
ギリギリで厚さ5oくらいまでの焼肉だな。
なのでお高い黒毛和牛のステーキは
熟練のコックさんいる店で食べるのが間違いないおいしい食べ方と断言。
で、待つこと10日、手元に来た30センチ四方の角型フライパン
重すぎます。
気合を入れて持ち上げないと腰にピキっときます。
それはキッチンスケールで計ってみる気もおきないくらい。
だって2kgまでしかはかれないんだもん。
そこで釣りのとき使うデジタルスケールを持ち出します
それにしても重い
吊り下げて計ってみるとナント14kgオーバー
笑っちゃいます。
さっそく油馴染みの作業に入ります。
分厚いこの鉄板、黒皮も分厚い。
この黒皮は剥ぎません。
そのまま生かして、油馴染みの作業に入ります。
肉焼き温度260度になるまで、ガスコンロダブル全開で8分
思ってたより時間が掛からないんだな
さすが二重バーナーのプロストーブ
これが家庭で使っているコンロだと単純に計算して24分掛かるけど
ヒートロスを考えると30分以上は掛かるだろうし
たぶんコンロも一緒に焼けてしまうんじゃまいか
ヘタこいたら火災の原因になるかもなるかもだ。
最初に油馴染み作業に入ります。
鉄板温度を300度まで上げ空焼きし
鉄板に付いている機械油などの不純物を焼き切ります
そして水洗いをしてから、250度まで温度を上げて
捨て油を流し込みます。
煙がボウボウと上がるので、火が付かないように慎重に油を回し
油の焼き被膜を黒皮の上に更に作って水洗い。
次は200度まで温度を上げ野菜を炒め焼き慣らしを3回
これで鉄板の表面に油の膜が形成されたはず。
そしていよいよ黒毛和牛のステーキ焼きに入ります。
まずはフライパンの温度を250度まで上げます。
かるく油を引き、すぐさまその油を素早くふき取り肉を載せます。
普通のフライパンと違ってジュっと言う音が出ません。
一気に肉の表面を焼き固めるので、汁が出てこない
なので音が出ません。笑っちゃいます。
フライパンの重量ゆえの蓄熱量を考え、焼く時間に神経をとがらせ
ミートフォークから伝わる感覚だけをたよりに
肉をひっくり返すタイミングをはかります。
そしてひっくり返したその瞬間、肉の表面の焼き上がり具合
その色 すんばらしいぃ〜 の一言のみ。
僕が求めていたそのものです。
今までにないサーロインステーキが焼きあがったちゅうわけだ。
ミートナイフをこんがり焼けた肉面に差し込み切ってみます。
その断面、焼き過ぎかなと思ったが、十数秒後には
中心部から赤身が差し広がっていきます。
さてステーキの焼きなんけど
レア・ミディアム・ウエルダンの三つがある
中にはミディアムレアと細かいこと言う人もいて
ほとんど生状態の焼き?からウエルダンウエルダンまで
12種類の細分化した焼き方もあるそうだ。
が、当店は焼き方は聞きません。
その時の肉の状態をみてベリーベストな焼き方でご提供いたしますのよ。
目指すのは、あくまでも火が肉の中心部まで入ったレアーをめざしています。
ほとんどの人のステーキのレアってのは表面だけ焼き
中は生と思っていらっしゃるけど
違うんだよね〜
内部は55度程度まで火を通して焼いている肉をレアーって言うんだよ。
まぁ、いろんなトコでステーキを食べてみるんだが
レアーを注文するとほとんどは表面はきれいに焼けているが
中心に火が通ってない生状態
だから、やたらと肉汁が多い。
レアは、中身の見た目が赤かったとしても
中まで「火がチャンと入っている状態」なのだが
なかなかそーゆー風な焼き方のレアーに会えない。
じつはこの赤い肉汁の正体は血ではなく
正しくは「ミオグロビン」色素タンパク質の一種なのだそうです。
牛の筋肉の中に含まれている水分と
タンパク質の一種であるミオグラビンが
入り混じった状態で溶け出してくると赤い血液そっくりに見えるのね。
それに54度から57度くらいの温度を与えるとロゼ色に仕上がり
無駄に肉汁がでないのだよ。(ステーキ画像)
それと肉の中心部にある脂に火を通し溶かす箏によって
脂の甘みと触感が良くなるのだよ
でも、熱を加えすぎると肉のタンパク質が凝固して堅くなってしまう
そのギリギリの境い目まで火を入れる順正レアー焼きがコックの仕事。
まぁぶっちゃけ言うと、肉汁と言う名のドリップが出る
処理がまずいお肉を買っちゃダメという事。
目利きと言う名のお仕事が出来るかどうかで
ステーキの味はホボホボ決まると言っても過言ではない。
だから、高温に熱したフライパンでステーキの両面を
しっかりと焼き、火からフライパンを下ろし 肉を休ませるっていう
工程を踏み中心部まで火を通す工程をふむのが普通だが
火から下ろして休ませたステーキの情けないトコは
肉の表面を高温で焼いて出来たカリッという触感がクタッとした
食感になってしまうことだ。
そこで登場する特注14kg16mmのフライパンでは
その休ませるって言う工程がいらないのだよ
なぜかっていうと、分厚い鉄板から放射される遠赤外線によって
瞬時に肉の中心部に熱を加える事が出来るからなのよ
だからぶ厚いフライパンで一気に中心部まで火を入れたレアー焼きの肉は
表面はパリッとして中芯部はほんのりジューシーに焼き上がるのよ
さらに言うと、食中毒の原因であるバイ菌が死滅する温度は60℃前後で
肉の蛋白質の変質が起きて硬くなるのが約65℃
このわずかな温度差を巧みに利用してレアーに焼き上げるって事。
まあ、黒毛和牛は色んなお薬を処方されているので
バイキンが繁殖するって事は無いらしいが
100%安全とは言い切れませんからね。
ていうか、おいしく焼けばその状態になるから
オートマティックでバイキンが死滅するのね
なんでかって言うと
熱せられた分厚い鉄板から放射される遠赤外の量がハンパない。
なので一瞬にして肉の中心部が65度になるってわけだ。
よくやる一般的なステーキ肉の焼きかた手法として
強火で肉の表面を焼いてから一旦火から降ろして
お肉を休ませて中心部まで熱が通るまで
銀紙に包んで待ったりお椀を被せたりするっていう行程は
いらないのが極厚鉄板の良いトコロなのだ。
話は長くなりましたので、ここで胡椒を挽いてお肉にかけます。
焼く前に塩胡椒って言われてますが、それは間違いです。
肉を焼く前に振りかけるのは塩のみです。
胡椒を焼く前の肉に振りかけても、肉を焼いてる時に一緒に胡椒
も焼いてしまう事になるので、胡椒野の風味は無くなってしまい
辛味だけが残ってしまう。
なので焼き上がった肉に胡椒を挽いて振り掛けるっていうのが
正しい使い方です。
その胡椒をカリカリっと挽いて振り掛けひと口頬張ります。
表面のカリっとした食感具合といい
なかのジューシー感といい
僕が追い求めていた焼き上がりそのもの。
完璧です。
てなわけで、トマトガーリックソースかけて戴くわけだが
塩だけでもいけちゃう当店のステーキ
その重さ14キロオーバーのフライパンで完結したのだよ。
下の画像はスペアリブ3枚盛りと
しっかり中心部まで火を通したレアーの焼き目が美しい
黒毛和牛のステーキだよ









画像が二枚のものは「タンメ」で見ておくれ。
「何だって、タンメって?」
そう、より目にして見てごらんよ


桜鱒の紙包み焼き

/
閉伊川の遡上サクラマス

サクラマス、違うんだなー、カタカナで書けば「カラフトマス」みたいな感じで
脂のノリが悪くてマズそうだし。
さくらます、これじゃ養殖場で飼われている、お馬鹿な魚みたいだし
どっかの釣堀にでも泳いでいる、ヒレがボロボロのゾウキンマスみたいだ。
やっぱりこの魚は「桜鱒」と漢字で書いた方が
偉そうでウヤウヤしくて美味そうではある。
二昔前(古いっ)、や田瀬湖のサクラマスを追いかけ
ルアーフィッシングで、盛んに鱒を釣っていた頃.の話し。
知り合いの熊さんに、得意げにアッチコッチの湖で釣った
桜鱒の自慢話しをするそんなオラは、今思うとヤナ奴ではあった。
そんな釣り話のやり取りの中で熊さんが
オラにソーッと教えてくれた話がった。
「市内を流れている中津川にも、海から上がって来る
鮭みたいな桜鱒がいるんだぞ」と。

そういえば桜鱒ってのは雌ヤマメの稚魚が
(なかにはオカマのヤマメもいるらしいが...。)
1年間川で過ごした後、大きくなったヤツから
順々に海に下って行く魚なんだと。

そして海に下った雌ヤマメが
小魚やエビを悠々とたらふく食べている頃
川に残っているヤマメたちは水生昆虫やアリなどを食べて細々と日々暮らしている。
そんなヤマメ達はオスばかりで、川でヤマメくらし。
そんでもって一人身の事を「ヤモメぐらし」と呼ぶようになったと(ホントかぁー)
なんかの雑誌に書いてあった。

その中津川の桜鱒の話を聞いてからは、遡上の鱒だけを狙って
県内の各河川をさまよい、幻の桜鱒を追い求め釣り歩くのであった。
しかし、そうは簡単に釣れるはずも無く、そのあまりの釣れ難さで
オイラはキレてしまい、大好きだったドライフライフィッシングをする事も無くなり
マスマスもって狂ったように、桜鱒のケツだけを
追うようになったというストーカーな話。
そして気が付いたら20年経っていました。 (こりゃ浦島太郎だ。)

なぜかって言うと、美食的戸外遊び人兼料理人の見地から言っても
桜鱒は最高の食材魚なんだな。(村上信夫さんもソー言っていた)
北東北3県またに掛け、各河川の桜鱒を釣ったり貰ったりして
ずいぶん食べ比べてみた。
結果。
大体は河口から4km位までの区間で取れた奴が、一番美味い。
それも尾っぽの付け根とか、尻ビレのアタリにシーライスと呼ばれている
寄生虫が引っ付いてる桜鱒が特に美味い。

※このシーライスという寄生虫は、人体に影響が無い寄生虫と言われてる。

何が怖いって、そりゃ桜鱒の身の中に入っている事が
ままに有るアニサキサスという寄生虫が一番怖いゾ。
確か俳優の森重久弥さんが、この虫に当って大変な事になったハズだ。
くれぐれも桜鱒は刺身で食べないように。
  でも食べた人に聞くと、とっても美味くて、3年前の傷が疼くって言っていましたけど。
(ソ〜いえば、骨折したあとが痛くなったナ。って、をい。)

どうゆう風に美味いかって?
ン〜脂だな、それも鱒の上品な混じりっけの無い
ピュアでフィネスな味だな。
そんじゃ川に上ってくる前の、海で泳いでいる桜鱒はもっと美味いんじゃないかと
お思いの方もいるんじゃないかと思いますが
あにはからんやソーでもないんだなコレガ。
脂がきつ過ぎて味に締まりも無いんですな。
盛岡弁で言うトコロの「どへんとした味」

川漁師曰く、五月鱒と言って川に上りはじめた桜鱒を 
特一級品としている事からも分かる。


櫻鱒の紙包み焼き

桜鱒は特に頭と皮が絶品だな。
昭和天皇が朝食に桜鱒の塩焼きを食べておられた時
お付きの者に「皮が三寸のモノは無いのかね」と尋ねられたそうナ。
皮もなんですけれども、頭だけは例え自分のカミさんであろうと絶対にあげません。
まず、氷頭と言われる口先から首根っこかけて
ある軟骨部分の、脂の載ったコリコリとした食感は、たまりません。
そして眼の下にあるホウ肉と言われる
まるでホタテの貝柱に脂を乗せたような筋肉質の部分。
下あごの骨の中を貫通している一本の筋は
これまた独特のもので氷頭のコリコリ感とはまた異なるコリコリ感で、たまりませんわナ。
もちろんカマと言われる首根っこの周りは、どんな魚でも一番美味しいところ
マグロで例えれば特上大トロと言われている部分で、桜鱒のも特一級品ですね。
胸びれの付け根に至っては、桜鱒の脂の極致ですな。
オッと忘れちゃいけませんゼのメン玉、コレゾ桜鱒の超味。
コレで極楽、ごくらく。
まったくもって桜鱒ほど、頭と皮が美味い魚はイネ〜よなホント。

前に店で飼っていたブラックバスのふじチャンは
人の手から餌を貰うほど慣れまくっていました。
そいつに桜鱒の切り身をご馳走してやったことがありましたが
コレガとても脂ののりが良い切り身だったようで
次の日バスのふじちゃんを飼っている水槽の水の表面に
淡いピンク色の桜鱒のきれいな脂が浮いておりました。
たぶん、ふじチャンは、こんなに脂の乗った魚を食べた事が無いので
腹をこわしたんじゃないのでしょうか。
それくらいの魚なんです桜鱒とゆう魚は。
で、これを調理するときのコツは火をとうし過ぎない事です。
北海道の川漁師の言い伝えにこういう言葉があります。
「鱒の身は馬の鼻息で焼ける」と。
それだからこそ紙包み焼きの調理方法が生きてくるのだ。

あまりの美味さに、ン〜ここで一句
桜鱒 紙に包むと 激ウマイ...................................おそまつ。

やっぱりこれにはお酒でしょう。
それも、おごって久保田の萬寿なんてはいかがなもんでしょっ。
お隣には美女なんて居たら、あずましいんでないかい。   1998.11.03






     
   ヤマメで紙包み焼き


ブラックバスのフレッシュハーブポワレ

       今一番、日本中で老いも若きも、熱中している釣りがブラックバスフィシング。
(1999年時点での話)
SMAPのキムタクちゃんが、テレビ特番で
「ブラックバスフィッシング大好きなんです」
と言ったもんだから光速で大ぶれいく。
一躍桧舞台に踊り出て、そしてメジャーとなった、すたぁ〜ブラックバス。

それまでの釣りの世界と言ったら、おジジの暇つぶし
ハナクソホジリ世間の認識ダッセ〜の地味〜ナ趣味の世界。
今じゃ女の子と楽しいデートにチャッカリ使う、まにゅあるブラックバス。

そんでもって女の子同士でも真剣に釣りしてる
 国民的健康すぽーつ、ブラックバスフィシング。

シマノの江口さんも、ダイワの反町さんも
樋口の糸井さんも大好きな、あいどるブラックバス。

小中学生のお坊ちゃんの釣り道具
このごろじゃフィッシングタックルと言いますが
一式5万円は当たり前経済効果抜群の、さかいやブラックバス。

  獰猛な殺し屋、ギャングフィッシュなどと騒がれ
一部の良識人に嫌われている、ぷれでたーブラックバス。

お子様から親父まで家族中でハマっている
みーんな大好きな、まにあっくブラックバス。

    から大きいものになると
1500万円の賞金が懸かってしまう、ぎゃんぶるブラックバス。

で、そんなブラックバスを食っちまおうってのがこの料理。
をいをい、一部トーナメンターからヒンシュクを買ってるゾ。


/
シラネアオイが咲き始めると山菜採りはピークを迎える。

 この料理に使うハーブは、春はふきのとう、しどけ、みずなどの山菜
これ私シェフ的にはハーブのなかにはいるのだ。
  夏はセージ、ローズマリー、タイム、ローリエ、オレガノ
  ルッコラなどの、趣味の自家栽培モノ。

/
山菜の女王さま、シドケ。(タンメ画像)

 秋は、はきもだし、あずきもだし、うえっこ、ぼり
あかぼり、ぎんたけ、こりゃどう見てもハーブじゃねーな
 きのこダヨ、これらをつっかたマァ平たく言えばムニエル。うまいよコレ

 ところでブラックバスって、スズキと同じ科だって知ってます?
ん〜と、人間で言えば親戚関係、そうだな従兄弟どうしの間柄くらいかな。
  モノにもよるけど、日本海のノッタリスズキより
ずっーとうまい魚なんだゼ、こりゃぜひとも食べないテはない。


シカシだな、三陸海岸で釣った夏スズキだけは、思いっきり ウメーよな。
  なんたって切り身にさばいて刺身で食うとき、醤油がノンねんだよ、切り身に。
脂が乗りまくっててさ、ホントだよ、ん〜言ってみりゃクルミの味ってとこかな。
でぇ〜ごん(大根)入れた、あら汁なんて、もう大変。
これこそナべコワシ。
  でもナ〜、なかなか釣れない魚なんだよなコレが、、、。
ん〜、食いてぇな〜。

で、この一皿にはロワールの白ワインだな。
ペイナンテのきれいにオートリーゼされたミュスカデのシュールリーがいいな。
そんなかでも、かすかな炭酸が舌の上に残るフレッシュさを楽しみながら
深い味わいをも持つミュスカデ ド セーブル エメーヌがいち押しだネ。







/
これは赤いブラックバス?(テリ)の激うまアクアパッツァ
魚の周りにまとわり付くソースが、あんたを悩殺する。

春告魚と書いて普通はニシンとと読むが、釣り人的にはテリ(ウスメバル)と強引に読ませる。
海水温が10℃をはるかに切る三陸の海底で、動きの鈍い小魚たちをタラフク食べているテリは
その腹腔にプルンプルンとした半透明で柔らかい脂をはち切れんばかりに貯めに貯めている。
内臓とエラを取る下ごしらえのとき、この脂も一緒に付いてくるのだが
これを丁寧に内臓から剥ぎ取り、ソースにしてし喰っちまおうてのがアクアパッツア。




塩をして、下準備が終えたテリを鍋にぶち込み、先ほど取っておいたプルプルの脂を入れる。
裏山から戴いてきた湧き水を、魚体の厚みの半分くらいまで入れ
あとは、コトコトと煮込むだけの、至極簡単な料理。
それだけにソースなどで誤魔化しが効かない料理手法で
激しく魚の脂の乗り具合と鮮度を選ぶ料理なのだ。
魚体にまとわり付く黄金色の液体は「さあ骨の髄まで食べてください」と
言っているかのようにキラキラと光輝き、舌の奥に唾液を誘うのだ。
そんな早春の美味は、その繊細な魚体から染み出た甘みを邪魔しないワインがいる。
イタリアはシチリアの白あたりが自己主張しないで、お料理の脇役に徹してくれるからイイ。

弱発砲のランブルスコも、口の中で軽いステップ踏んでくれるからイイね。
魚の身も軽やかに舌の上で踊ってくれるのだ。      1999.3.11


 

生け締めという血と神経を同時に抜いた魚体は築地の魚河岸の常識。
、北国の鯛ことマゾイはチャイニーズ清魚で戴くと
アクアパッツアに負けない激しい美味しさに、味覚中枢は天空をさまようのだ。

1998/10/11

  











津軽海峡のブリ




あゆのテリーヌ




オイラが死ぬほど大好きな釣りに鮎の友釣りてェのがある。
この釣りの面白いとこって、どこかって。
ほとんどの場合、釣りってのは魚の食い気を誘い
針の付いたエサ(ミミズやら川虫等)を
水の中に流してやって魚に食わせるんだ。
そしてそのえさをくわえた瞬間に、合わせをくれ
魚の口に上手く針を引っ掛けて魚を釣るわけだナ。

で、鮎の場合はと言えば、普段食べているエサは石に付いたカビ
(藍藻や珪藻などの植物性)のようなモノで
それを四角い唇をカンナみたいにして、石からこそぎとって食ってるんだ。
だからそんなカビみたいな藻に針を刺すってえのは無理があるってもんだ。
ジャアどうやるのかってェと、鮎は石についている藻を
ほかの鮎にカスミ取られないようにシマを持つヤクザな魚なわけよ。
このコケのついた石を数個守っているシマに侵入して来た他の鮎に
バシッと体当たりを食わせ、追い払ぱらう強暴な習性があるんだ。 
その習性をうまく利用するわけよ。

その昔、先人達は石の周りで鮎が、バッシンドッシンと喧嘩しているのを見ていて
川のそばで、どうしたら鮎が獲れるかってぇ考えたわけよ。
生きた鮎に糸と針を付け、あたかもシマを荒らしに来た鮎に仕立てて
(ここが一番ムズイ)演技操作し、そのシマを地回りしているケンカ早い
体当たりに来るヤクザな鮎を引っ掛けてしまおうという魂胆なのであ〜る。

ここでウマク針掛りをすると、2匹の鮎が釣り竿の糸の先に付いてグルングルンと暴れる訳だ。
そうなると、糸を引き込む力は2匹分の引きの強さとなり
竿を曲げる力は単純計算で×2と、なるわけよ。

鮎釣り竿の先には2匹で大体160gの重さが暴れてるわけだが
鮎竿ってぇのは、9mくらいの長さがあるから、そのモーメントにより
自分の手に来る感触は、暴れまくる冷蔵庫でも釣り上げたような感覚になるんだな。

そんとき、釣り人はアドレナリンの大放出で
汗をかきかき、体中興奮の嵐が吹きまくるんだな。
これだから止められません。
鮎釣りは。
中毒になります。

そんなオイラ、8月のプライムタイムは
あゆ釣り道まっしぐらのゴクドウになっちまうんです。
 そして「シェフは毎日下の川にいます」
てなモンで、どう見ても調理師には見えない
タンニングオヤジになってしまうんだな。
それに近年、トシのせいか食が細くなり
ナチュラルダイエットとなり(ガンじゃね〜のか)
痩せてしまったぶん、どこから見てもインドの
ガンジス川のほとりで沐浴しているオジジ状態に
なってしまう、そんな鮎釣り三昧の夏なのだ。

そんなモンで1シーズン1000匹あまりの鮎を水揚げします。
(おまえは漁師かっ。まっ出せる鮎は、その半分くらいですけど)

で、この水揚げした鮎を.、厳選して使って作るのが、あゆのテリーヌ。
マア日本広しといえども鮎のテリーヌなんて料理はうちぐらいなもんでしょ。
それも天然あゆだけを使ったテリーヌは。
(ちょっというか、かなり自慢が入ってます。) 

さらに、このテリーヌに添えるソースが、またまた泣かせます。
それはあゆの内臓(清冽な流れで泳いでいる鮎だけを選別。
おもに、雫石川春木場から上流の若鮎のみ)を、三年以上寝かして作ったアユのウルカ。
知る人ぞしる珍味で、言わばイカの塩辛みたいなモンですけど。
これをベースに調味した、熟成ヴィンテージソースです。
これをチョビットずつテリーヌに盛りながら食べるのだナ。
こりゃた左党には、まらんわね。
ちなみにこのテリーヌひと切れに必要なアユは
若鮎3匹分のフィレが必要なんですゼ。

で、この一品には酸味の利いた白が絶対おすすめ。
ズバリ、ドイツのモーゼル地方の、酸と甘味のバランスが心地よい
シェーネゾイレのきわみベルンカステラー バートスチューベのシュペトレーゼか
シャルツホーフベルガーのカビネットクラスのワインがピッタシだと断言してしまうワタシ。
日本酒なんてのもアリかな。
ってゆーか、合いすぎるかも「越の寒梅」の秘酒「特つくり大吟醸」なんかはイケイケでしょう。




シェフは 下の川にいます。
っと、まだまだ続くよ。。    1999.3.21





























フィッシャーマンのテリーヌ






三陸沖のメヌケは美味なグラマラスクイーンだっ。

8月に入り、どこもかしこも海水浴で賑わう頃北三陸の海は、時としてヤマセと呼ばれる冷たい空間に覆われる。
それは海全体を乳白色の、そう冷凍庫の扉を開けたとき
冷気が白い煙のように庫内から滲み出してくる、まさしくアレに取り囲まれるのだ。
そんな視界を奪われた空色の船は、電子海路図だけを頼りに
深海の美味を求めて舫いを解くのである。

湾口を過ぎたころ軽快な船外機の音を更に唸らせ、うねりの頂点をかすめて
あたかもトビウオのように沖へと急ぐと、鼠色の夜が少しづつ海に吸い込まれいくのだった。
はるか沖合い地平線からはヤマセの冷気を透かすように
スカーレットの血の色のような不気味な色の大きな太陽の一片がのしてきた。
だがそれは、海原を一方的に支配するヤマセの前にあっては
光線の暖かさを微塵も感じることすらままならない、それは敗北の色なのだ。
かじかみ始めた手から、鉛色の海面を突き刺すように
命を探る透明な糸が、ねっとりと空色の船玄にまとわり付く波間に投入された。

暫くして虚無の海底を感じるコトンという声が、糸から聞こえた。


ヤマセの申し子メヌケの肌は、まさしくスカーレットそのもの、血の色だ。
そしてヤマセの空間を切り裂くように進んで行った空色の船のように
その豊満な魚体斜めに削ぎ包丁を入れて現れた身は、まさしくあの乳白色の空間の色であった。 

その一片を夏野菜と一緒に紙に包み蒸し焼きにすると
メヌケ独特の甘い脂が夏野菜にまとわり、そして染み込み
スカーレットの皮に張り付くはぜた身ともに味わえば
虚無の海底から一変して、舌の上は豊穣な海底を知る事になるのだった。。

とわ言え、魚のなので白しかにゃいなんていう貴方。
旨い脂が載った魚の場合、赤も探せばこれにピッタンコのものが見つかったりする。
カベルネとかピノなんかはタンニンがガツーンと来るので、もちろん合わない。
ヴァルドロワールのシノン、その中でも女性的なワインを生み出すドメーヌ
グレゾーのVVなんかバッチシだぞ。  2001.3.4
2000.6.18






もうひとつの美食的戸外遊び人
/
マツタケのクリームソース、パイで焼いて。(タンメ画像)
これにソービニヨンブラン
種のワインがいいねえ。
カルボニューブランなんてのは、いかがかな。  



マツタケのパスタ
実はオラ、キノコ採りもダイスキなんです。  
カミングアウト?本来ならば、9月いっぱい鮎釣りを楽しめるはずのシーズンなのですが
この大好きな鮎釣りを9月の初旬でやめるのも
このマッシュルームハンティングが大好きなせいでもあります。
(なにカッコ付けてんだヨ、キノコ採りと言え!)
とりあえず手始めに狙うのはハッタケ(初茸)です。
アシナガバチの巣に気を付けながら、赤土の地面で
背の低い松が生えているような斜面を狙っていきます。
この初茸ですが、生えているのにもかかわらず
よくそのキノコを踏んでしま事がママあります。
よくキノコ採りの人の間で交わされる言葉に
「早くキノコ目になれと」言われる言葉が有ります。
それはどういう事かといえば、キノコの保護色と言ってキノコ自体が
アミノ酸などの旨み成分を多量に含んでいる大変ウマイ食い物なので
その捕獲人の眼から逃れようと幾千年もの時間をかけて
地面と同化してしまう色となったと僕は考えている。
ホラ 毒キノコはわざと綺麗な色をして目に付くようになっているでしょ
あれはキノコの王様が我々に送った刺客なんだな、エッ ホントゥ。


これがシメジの中のシメジ、大シメジだぁぁぁ。
白身の魚(舌平目とか、ヤマメとか)と一緒に
カルトッチョにしたら、もう最高ぅぅぅ。


   で、その刺客の話なんだが、キノコの大富豪 八ちゃんが
ベニテングタケを採ってきて大事そうに僕に見せてくれた事がありました。
「それってベニテンじゃね〜の」とオラ、そして「白戸三平先生が
その著書に長野のある地方では長く塩蔵し毒抜きをして食べるとは書いてあったが
そのまんま食らうとは書いてなかったな〜」と言った。
そしたら八ちゃんが「三個まで食うのはダイジョーブ」と言い切ったのだ。
「でもそれ以上はやばい」とも付け加えましたが。
「どうやって食うの」と聞くと「アシは美味くないから傘だけを網焼きにして
塩をふって食うのだ。」と言いました。
「ただし酒を飲みながら食っては絶対にいかんぞ!」とも言いました。
まあ当ったとしても、死にはしないキノコだと聞いてはいたのですが、、、、、。
家に帰ってから、エーイ ママヨと食らいついた私でした。
はたしてそのお味はと言えば、とっても濃い〜味だとだけ言っておきましょう。
モチロン3個までにしときましたけどね。
※俺がコンなこと書いていたから、ベニテングタケを喰って当ってしまいヒドイ目にあったぞ!
ナンテコトは無しネ。
地域によってキノコの毒性は変わるようで
一般にキノコの先端部分が赤や黄色になるハナホウキタケは
毒キノコに分類されていますが、僕の住んでいる地方では
先端が黄色いハナホウキタケは立派な食菌となっている、なんて事も有りますからね。


山にイの一番に生える、フンギポルチーニことアカヤマドリタケはパスタに合うぞっ。

なもんで、特に初茸は最初の一つ目を見つけるのがコツで
一つでも採ってしまえば、あとは勝手に自分の目が地面とキノコの色とを
識別してしまうのです。

このキノコは甘辛く煮つけてから、ご飯と一緒に炊き込むと
今年お初のキノコご飯となるのだ。
僕シェフ的には晩夏の熟れ熟れトマトを使ったポモドーロソースと
一緒に煮こみカリカリぱりぱりの薄焼きピザにのせて食らうのが
一番スキなキノコなんです。

20年近くキノコ採りをしてきた私がどうしても採れないキノコがありました。
   ハツタケ、ホウキタケ、アミタケときてキノコの帝王それがマツタケとなるんですが、、、。

秋も半ば頃になるとシメジの中のシメジ、ウエッコ採りが始まります。
このキノコを採る為に、雑木林の開けた斜面を探しながら歩いていき
松林に差し掛かるころ、突然人間臭さがぶんぶん香るような
獣道よりもっとはっきりとクッキリと
道だと分かる雷型のジグザグ道が突然表れる事があります。
この道を見て最初に思った事は、松林イコールマツタケだという事。
   マツタケを探して道が付いたんだろうな事ぐらいは、誰にでも察しの着くことです。
   ここで素人考えに思った事は、こんなにクッキリと付いた道なりに歩いていては
マツタケなんぞ見つかるわけが無いと思った事です。
     そんな考え深い僕は、このジグザグ道を無視してアチラコチラの茂みを探索しました。
さすが森の中の1万円札、おいそれとは簡単に見つかりません。
  いつかはきっと見つける事ができるだろうという希望を持ちながら
長い間キノコ採りをしてきた僕でした。

   1998年、釣り友達の八ちゃんから、「マツタケ採りに来ないのか」という
誘いの電話が着ました。
今まで釣り一筋の八ちゃんで、まさかキノコ採りを始めるとは
思いも寄りませんでした。
    で、それもいきなりキノコ採りを始めた素人がマツタケ取りとは
その想像もしていなかった言葉に一瞬絶句してしまったオラではあります。
モチロンイヤと言うはずも御座いません「行く行く行くっ―」の三連発で
ワクワク気分で次の朝早く出かけました。

そして連れて行かれたところが、町の中にある彼の家から車で10分も掛からない
山というよりも丘といったほうがいいくらいの斜面でした。
もちろん「入山禁止」の札がぶら下がっておりました。
それはまぎれも無く彼のウマイ字です。
 また都合の良い事にその入り口にはマツタケキーパーの家もあり
完璧とまでは行かないが、なかなかのガードぶりで有ります。


狂喜乱舞とはこの事じゃっ!
ブツブツと粗切りして味噌汁だっっっ



さっそく身支度を済ませ山に入っていきます。
  ちょうど山の中腹あたりに差し掛かると、クッキリハッキリとした道が現れました。
「ははーん、これはかなり人が入って付けたキノコ道だな」と思い
先頭をいく八ちゃんのキノコ道をそれて藪の方へと掻き分けていったときでした。
     「だめだよ〜」と八チャンのたしなめるような声が頭の上から降ってきました。
       「なんでだよう、人の歩き回ったあとなんか探しても、キノコはみつからね〜ゾ
人の見落とすようなところを探すのがキノコのプロってもんだ」と
一応キノコ取りの先輩ズラをしてオラは言い返しました。
「違うんだよね」と八チャン。
「マツタケというものは、長い年月を掛けてシロという菌床という
根みたいなものを張り巡らせ、それが一升ほど重さに成長完成すると
ようやくキノコとして地上に顔を出すんだ。
一回でもキノコとなって顔を出した所は、何年にも渡って同じ所に生えるんだから
この道をはずして歩いても、まったく意味の無い事。
それよりもコマルのは、この道からそれる時
せっかくキノコとなる条件が揃った菌床を踏みつける事となり
それが破壊されてしまう」というような事を言って
オラにレッドカードを出すのであった。

それからはおとなしく八ちゃんの言うとうりにジグザグ道をテクテクと歩くのだった。
とあるキノコ道の三差路に差し掛かった時、「ここにあるぞ」と八ちゃん。
「エッ、どこどこ」と目を凝らすオラでは有りましたが、キノコのキの字も見えません。
「ヘヘン」といつもの八チャンの勝ち誇ったような一声。
(彼と一緒に釣りに行き、この声を聞かせられるたびに「ドキッ」としてしまい
次に獲物を見せつけられ、毎回戦意喪失しちまうオラなのだ)

八ちゃんは、三差路に捨てられている木っ端をチョコッとどかせました。
なんとマツタケはそのゴミのように捨てられている木っ端に
プロテクトされ生えていたのです。
「こんなところに生えるの?」と、一般常識のキノコ取りでは
考えられないような場所から簡単に取れるマツタケにびっくりしました。
「キキのために隠しておいたんだ」と八チャン。
オラはそのコトバにとても嬉しく思い涙が流れそうになり「なんて良い奴だ」とは
これっぽっちも思いませんでした。
それよりもキノコの王様が、こんな拍子抜けた貧相な所に生えるのに
がっかりしたし、長年培ってきたキノコ取りとしてのプライドに傷ついたしさ。

でもよ〜く考えると、八百屋やス―パー以外の所でマツタケに出会うのは初めてだし
それをくれるって言うんだから八チャンに感謝しなくちゃネ。
それからなんとなくも分かったオラは、このキノコ道を外さないように
そしてこの道の両脇を丹念に見ることにしました。
しかしマツタケを取るのは八チャンばかりで、オラには見つかりません。
「なんで八チャンばかり取れるんだ」と、チョットむかつきながら泣きごとを言いました。
「マックスタイムになると、地元のキノコ取りは会社を休み
夜の2時3時ころに山にでかけ、夜明けと同時にマツタケを取るんだ」と八チャン 
「そりゃそうだマツタケだもの」とオラ。
「朝の一仕事を終え朝昼兼の飯を食って一休みしてからまた山に行くわけなんだが
時として朝と同じコースをたどる事も結構あるそうで
そのくらいに頻繁にチェックしなければ取れないキノコなんだゾ」と八チャン。
そう簡単にマツタケを取られてはコマルみたいなこと言いました。
「そ〜か、それで素人には見つからないんだな」と納得したオラ。
このマツタケ取りだけは、完全にプロの仕事なんだなと
改めて思い知らされた訳です。


(やっぱり山の万札)

 で、このとれ採れマツタケ、薄切りのスライスなんて
ケチな事は言わないで、分厚くスライスしておく。
次にフライパンの中にニンニクのスライスしたものと
タカのツメをスライスしたものをオリーブオイルで軽く炒める。
その上に先ほどのマツタケのスライスを載せ280度のオーブンに入れ
マツタケの表面に白玉のツユが出てきたらソレでおしまい。
これを茹でたてのパスタの上にのっけて、後は寡黙に食すのみ。
ん、それは寡黙にならざるおえない、うまさではあるからなのよ。



最初八チャンに「こうしてパスタにあえて食えば結構いけるぞ」といわれた時
あの繊細な香りがニンニクの強い香りで負けはしないか
また唐辛子なんかでマツタケの味が殺されはしないかと思ったのですが
それは取り越し苦労もいい所で
とれとれのマツタケのパワーは、ニンニク唐辛子は敵では有りません。
むしろ家来になり下がって、しっかりと脇を固めてくれます。
試しに次の日も同じようにして食べてみましたが
若干マツタケパワーが落ちたくらいでしたがまだいけます。
でも、さすが3日目はニンニクと唐辛子の造反パワーにマツタケは屈したようで
そこら辺の八百屋で売っている足軽マツタケに成り下がっていました。
という訳で、このメニューは極超季節限定品です。

コレには、にんにくとマツタケのパワーに負けないお酒がいい。
ここでは敢えて焼酎で攻めたい。
「刀」とか「安納」「魔王」なんてのは腰砕けでアマイ。
芋100%の「純芋」が、オレ的にはお勧め。
もちろん、ストレートで。。    2002.6.18







タカブーのロースト


川面をスレスレに飛んでくるタカブーは
空の明るさが水面に反射する逆光を利用し
天敵の目から逃れる術を持つ、鴨界のステルス戦闘機だ。
その飛翔性能はかなりのもので、急旋回はモチロンの事
急上昇、急降下もお手のものだから、鉄口を向けても、向けても追いつかない。
だから、目くら滅法撃つものだから、まず当たらない。
銃口が追いついたとしても
散弾の玉をかいくぐるようにクイックに飛行線を変えて飛ぶから
散弾が、その飛翔を捕らえれないのだ。
だからハンター仲間たちはタカブーが獲れて、始めて
「鴨撃ち」と認められるほど、腕がいるのだ。
それにご当地では絶対数も少ないってこともあるんだがね。

ほどよく熟成させたタカブーを岩塩と黒胡椒だけで味付け
ドライハーブで軽〜く薄くスモークで仕上げアクセントを付けててみた。

鴨類のなかで唯一、白ワインが合う肉なので
ここでは赤ワインと言わないでほしい。
ソービニヨンブランの燻したような香りと相性はバッチしなんで
カルボニューブランをチョイスってのが無難なところかナ。
あ、手前のブツは内臓です。

御狩場で明治天皇がタカブーを食された時
「鴨はタカブーに限る」といわれたそうな。









鴨のソテー・オレンジソース、冬大根と土ネギを枕にして。
/
フラッシュピンクに仕上げた鴨のソテー、オレンジソースで。       (タンメ画像)

冬大根は灰汁がまったく無く、甘くさえもある。
だから灰汁抜きの米の研ぎ汁は要らない。
むしろやってはいけないのだ。
土ネギは、納豆に入れるのがはばかるくらい下品でぶっといのがいい。
野鴨のガラで取ったブロードの中で泳がせるように
そして静かに踊るよう、くつくつと煮込むんでいくのだ。
煮上がったこいつらには、バターで焼きを入れ香りを出しておく。

オレンジソースにはグラン・マニエとかコアントローで風味付けするのだが
これでは口にしたとき、匂いが鼻腔の奥であばれ料理を破壊する。
ソースが出しゃばらないようダークラムでスタイリッシュに仕上げるのがオレの流儀。


野生の鴨は四季折々、列島を縦断する筋力と持久力を胸肉に内包する。
だからヘモグロビンをいっぱい蓄えた胸肉は汚い暗紫色なのだ。
それは養鴨のような旨そうな色とは、お世辞にもいえない。
この肉塊に対して最大にして無限の注意を払わなくてはいけない決まり事が一つある。
それは決して火を通しすぎてドドメ色にしないことだ。
かと言って、その作業に神経質に臆病になってもいけない。
火を入れるときは、ロゼ色を思い描き、唾をゴクリと一飲みにして
その勢いのまま大胆にそして、一気加勢にやっつけるのだ。
こうして首尾よく仕上げたモノにナイフを入れる瞬間
火を通しすぎていやしないかと、何時も不安に駆られる。
カリッと焼けた焦げ色の表面をそっと押し割ると
中からロゼピンクに染まった柔肉が現れ、淡い肉汁が滴る。
あの暗紫色の肉塊は見事に美味しい色となり
それが杞憂に終わったとき、口の中では唾液が更に湧き上がるのだ。

透き通るような白い肌をした雪国の女が、きりっと冷えた白ワインを口に運び
やがて頬から耳たぶ、うなじへとほんのりとあからめたその色合いと同じだ。
まちがっても浅黒い女が赤ワインをがぶ飲みしたような色合いだけは勘弁だ。

口のなかでふくらむような肉塊の一切れを、優しくそしてゆっくりと三、四噛みほどし
赤ワインで流し込む。
これほど官能的でセクシーな食いものは、この世の中で他には無い。  2004.11.30


心臓と砂肝とレバーとボッチの肝焼きのポワレ
精が付くど〜





鴨のソテー、オレンジソースで。

















やまどりのブロード



火の鳥、ゲット。。

冬が始まるエッヂが効いた朝。
燻しが天馬のように大きく流れ、それは低く短く吠えた。
そして深山の静寂に大きく口を開け、牙を剥いた。
時間という空間を一瞬にして飛び越えた奴は、その光芒なる時空の割れ目に
吸い込まれそうになるのを拒むように、低くそして長く飛び込び越えていった。
それを追うかのように天空を彷徨う内なる己は、小さな鈍い鉛色の助けを借り
はやる時間を空にとどめながら、烈音を連れ雄叫のように放射したのだった。
それはおのれ自身となり、柔らかでふくよかで艶やかな肌を貫く為にだけ飛翔した。
そんな小さい一瞬の時という光の空間を駆け抜けて行った烈群は
柔らかな綿毛を纏いつつも、生きる為だけの信念のように
あの窮屈で甘美な肉体を貫き通したのだった。
地力から逃れるように蹴り出したはずの一歩と、空気を纏う音の羽ばたく刹那
鈍い時間がまとわり付き、掛けて行くはずの浮遊という空間を引き剥がしたのだった。

時だけがハロゲン光のように駆け抜けていった。

取り残された一瞬の光りは
「火の鳥のブロード、ポロ葱と大根の煮浸し砂肝をのせて」
それは上品(じょうぼん)となる為だけの羽ばたきにすぎなかったのだ。  2005.12.05


黄金色のブロードは、リゾットに命を吹き込むのだ。


ヤマドリ料理は残念ながら、あなたのお口には入らない。
なぜなら、売買禁止鳥獣にカテゴライズされているからだ。
(狩猟法13条第2項)
どうしてもと言うあなたには
ヤマドリの肉質に一番近い
落ち穂雉で、お作りいたします。



ヤマドリのファルシィ
(タイムスリット)



禁断の食、ヤマドリのしゃぶしゃぶ



悦楽の口腔、ヤマドリのカルパッチョ




ヤマドリのウエスト






ヤマドリのキッシュロレーヌ





昨日の猟
谷沢を急降下して来るヤマドリに合わせて、どうにか撃ち落したのだが
落下した所が、深い笹薮と潅木が混ざった見るからに難儀な所。
山の奥からヤマドリを追い出してくれた猟犬「銀」
笛を吹いて呼び戻し、深い藪の中に落ちたヤマドリの探索させる。
猟犬銀はヤマドリの匂いをさっそく感知し
スルスルとブッシュの中に入り込んでいった。
それに続いて俺も深い藪の中に突入するが
思った以上に密集した笹薮と潅木に行く手を阻まれ
1メーター進むのに45秒は掛かるほどの、込み入った所だ。

ようやく銀の姿を見つけ、寄って行くと
凄い勢いでヤマドリに喰らい付いていた。
俺はこれ以上でないくらい大声で「マテッ!」と叫んだが
まったく聞く耳持たずで、前足でヤマドリの体を押さえ付け
肉片を引き剥がし、ろくに噛みもせず胃袋に流し込んでいた。

犬とかの群れをつくる動物社会ではボスの命令は絶対的で
これに逆らうと半殺しに会うか、へたうったら殺される運命となる。
だから、主人でありボスでもある俺の命令を無視した件には
ギッチリと焼きを入れる必要がある。


良く見る光景
ちまたのお犬様を散歩させている御仁を見れば
犬に散歩させられている輩が殆んどで
主客転倒、犬に完全になめられている風体だ。
そんな飼い犬はいつでも、隙あらばボスの座をと虎視眈々と狙っているのだ。

今回の件は銀が「俺がボス」と勘違いしたか
ハタマタ銀自身そろそろボスの時期だなと
俺のことを計っていたのかもしれない。
まぁそれはともかく、焼き入れるのは可愛そうだとそのままにして置くと
付け上がってしまい、猟犬「銀」がボスと勘違いしたまま
これからの猟もスムースに上手くいかなくなる可能性が出てくる。

だから俺は急いで銀のそばに行き「マテ」とこれ以上の出ないくらいの大声で怒鳴り
心を鬼にし銀の口元に一発二発と握りこぶしを喰らわせ
さらに殺さんばかりの気迫を込めた回し蹴りを
尻に一発二発三発と連続。
フルボッコ体制に入った。
さすがに猟犬銀は俺の殺気に恐れおののいたか
目のフチを真っ赤にし、ブルブルと怯えだしたので、ここまでで止めにした。

そんな反乱失敗「銀」を連れて今日もまた沢を攻めに来たが
どうやら昨晩食べた金沢名物「かぶら寿司」に当たったらしく
腹に力が入らず攻めの気持ちが、どうも湧いて来ない。
従順「銀」は昨日の詫びのつもりなのか
いつも以上に張り切ってヤマドリ探索してくれ
沢の奥から、ばんばんヤマドリを追い出してきてくれた。
でも、オイラの気合が追いつかず、見送りしてばっかりだった。

いよいよもってオイラの調子が上がらないので
この沢を最後に帰ろうと決め、いつも車を置かしてもらっている
百姓屋に車を止めて、ドアーを開けて降りた。
この百姓屋は、ひと昔前までは生活していたのだろうけど
今は家人が暮らしているわけでなく
ここの百姓屋の老夫婦が暇な時
里から上がってきて、畑の世話をしている程度の百姓屋だ。



だから五回ここに来れば四回は誰もいなくてシーンと静まり返っている。
事情を知らない初めて来た人は廃屋だとおもうに違いない。
いまさらながらだが、今日は特に静けさが周辺に漂い
真冬前の鋭角的な時の流れが空間を支配していた。

さて、ハリキリ犬「銀ちゃん」を車から降ろして、沢を攻めに奥まで詰めて行く事にする。

沢の奥へ奥へと詰めて行くが、ヤマドリといわず他の生物の気配もほとんど無く
とうとう沢の奥、行き止りまで来てしまった。
それでも銀ちゃんは四方八方、斜面を這いずり駆けまわり捜査したが
ヒヨドリ一匹出ません。
「こりゃ、帰るしかないな」と思い
回れ右で、今上がってきた坂道を下る事にした。
腹具合が悪いのもそうだが
毎日休まず山通いしている疲労も今がピークなのかも知れん。
なんて思いながらの帰り道、杉林の中を通ろうとした時
谷底を捜索していた銀ちゃんの姿が霞んで見えた。
「あぁ、眼精疲労もでたかぁ、かすんで見えるのなぁ」と思った。
そして、その視線を帰り道のその先に移した時
帰り道の先が、これまた霞んで見えたが
それは先ほどの銀ちゃんが霞んで見えたのとは違う
空間が歪んでいるように不気味に見えて、この先進むのにチョッとひるんだ。
銀ちゃんはといえば、ヤマドリの臭いを取ったのか姿が見当たりません。
 
「まいいや、今日は早く家に帰って寝よう」と
初冬にしては薄ら暖かい太陽の光を浴びながら
ちょと霞がかかって歪んだ感じの杉林に挟まれた道を進んだ。
そこはまるで、時間が止まっている、いや戻っているような気さえした。
そんな杉林を抜けると、また初冬の太陽の白い陽がキラッと眼に入ってきた。
その途端、腹の調子も良くなったような感じで、腹にぐっと力が入った。
足取りもなんとなく軽くなった。
坂道をもう少し下ると、車を置かしてもらっている百姓屋がすぐそこにある。

その百姓屋が見え始めた頃
童子の笑い声と、泣き散らす声が聞こえてきた。
オイラは歩くの止めた。
と言うより、歩く足が止まった。
向こうには、着物のボロをきた童子たちが鬼ごっこして笑っている童子や
鬼に泣かされている子やが散らばっていた。

そこに有るはずの百姓屋は、もう二軒増えていて三軒寄り添うよう建っていた。
その脇の畑には青々としたダイコンの葉が繁っていて
野良着姿の百姓が生き生きとダイコン堀りで忙しそうにしていた。

そう、いつも見慣れているウラ寂しい百姓家の空気は無かった。

今まさに生活感があふれている家の周りでは
老婆が大豆だか小豆だか分からないが、一心不乱にザルの上で選別していた。

不意に背後で「おめぇ!」と声がして
振り向くと、そこにはボロっちい着物姿のとうさんが
クワを持って身構え怖い顔をして立っていた。
オイラは大きい声を出して「ここはどこだ」と、聞いたが
オイラの声は、とうさんの耳には聞こえないみたいだったので
更にオイラは大きな声を出して「ここはどごだ」と言った。
それでも、とうさんの耳には聞こえてはいないみたいだ。
このとうさん、つんぼか?と思った。
だからオイラは大きな身振り手振りを交えて「ここはどこ」と、また聞いた。
おとうさんは困った顔をして「おめぇはだれだべ」と言った。

オイラは思った。
とうさんの声はオイラには聞こえるが
オイラの声がまったく、とうさんには届いてはいないのだと。

とうさんの後ろからボロ着をきた、小奇麗なかぁさんが来た。
そして「なんだべが、わがんねかっこしてんな」と言った。
そうかヒョッとして、ここは「昔だな」と、勘の良いオイラは思った。

戦国自衛隊なんていう映画があったが、まさにそれだなとオイラは思った。
でも、あの映画と違う所は、あちらの声は聞こえたも
こちらの声は相手には聞こえないって言う点だ。
どうせ声を出しても聞こえないのだから
身振り手振りでパントマイムをする事にした。

とうさんは、どうやらオイラが危ない人ではないなと感じたらしく
怖い顔はだんだん解けて、ド田舎の酒焼けした百姓の顔に戻った。
連れの小奇麗なかぁさんも「なんだべがねぇ」と、狐につまされたような顔をしてた。

そのうちに、とうさんの大声に気づいた童子たちと
老婆も駆け寄って来て「はぁ、なんだべがねぇ」って
ツチノコでも見つけたような騒ぎになった。
その中の童子の一人がオイラにぶつかるくらいに近寄ってきて
オイラの事を触ろうとしたが
空気を掴むような、じゃんけんのパーとグー仕草の繰り返しで
オイラの体は掴めないようだった。
「そうか、オイラは半透明人間に見えているんだな
だから俺の声は相手にゼンゼン聞こえない無いんだなと思った。

もしここが江戸時代だったら、オイラは存在すらしていない人間なので
3次元コンピュータグラフィックスいや
スターウオーズのR2D2が、空間にレイア姫を写す
ホログラムみたいに見えてるんだなと思った。

とうさんは言った。
「その鉄砲みでなのは玉がでんのが」と言った。
「撃ってみせるが」と、パントマイムしながら銃を構えたら
とうさんと他の皆は後ずさりして一瞬怯えた。
空に銃口を向けて一発撃った。
が、まったく彼らは動じることも無く、ハテナみたいな顔をしていた。
「そっか、ここが江戸時代だったらレミントンM870は無いわけで
無いものを撃っても、音さえ出ないのだな」と思った。

そうこうしてると3歳くらい小汚い童子が
「エーイッ」と叫びながら棒切れを振り回しながら体当たりをしてきた。
一瞬身構え、体を固くしたオイラだったが
オイラの体をすり抜けた童子は勢いあまって
枯れたススキの林に頭から突っ込んで転げた。
それを見ていた、とうさん かあさん 童子に老婆は笑った。
それにつられてオイラも笑ってしまった。

とうさんは鍬を置き、相撲の真似をして四股を踏んだ。
オイラは余裕で「来い」とばかりに両手を広げて睨んだ。
とうさんは頭から突っ込んできたが
そのままオイラの体を通り抜け
ススキの林に前のめりに突っ込んで転んで笑った。

それからは次から次と童子がすり抜け
老婆もかあさんも通り抜け
トーリャンセ、トーリャンセと歌いながら
皆で俺の体を駆け足で通り抜け回り始めた。
「やっぱりオイラはホログラムだ」と、確信した。
それならそれと思い、気が楽になったオイラは
カーモメが途切れたころを見計らい
さっきまでモヤモヤしていた腹も調子良くなって
お腹も空いてきた事だしと、図々しく振舞ってみる事にした。

自分のお腹を左手で押さえ、前かがみにチョット九の字になり
右手でご飯をかっ込む仕草をした。
それを見ていた小奇麗なかあさんは、駆け足で坂道を下り家にとって返して行った。
そして、ちょっと間を置いてから戻って来たその両手に持った
使い古したお盆の上には、稗だか粟だか知らないが
雑穀と大根を水で煮たような汁が入った、素地の真新しいお椀があった。
かあさんは箸を片手に喰えとばかりにオイラの目の前に差し出した。

その差し出されたお椀を、お盆の上から持ち上げよとしても持てなかったのだ
やはりこの時代に存在しないオイラは、この時代の物は手では持てないし
ましてや触れさえも出来なかったのだ。
腹が減っているのに、目の前にある汁が喰えないオイラは
苛立ち、そして悲しくなった。
これで一気に覚醒したオイラは、今さっき降りてきた坂道を引き返して
銀ちゃんが待っている未来に戻ろうと思った。

ここにいる昔時代から現代に上手く戻れるのかっていう
迷いと言うか不安は、オイラの中ではまったく無かった。
素直に帰れるもんだとしか考えられなかった。

とうさんに向かって、自分のムネを左手の親指で突く動作をしながら
今しがた来た坂道を右手人差し指で差し
両手を振って帰る仕草をした。
とおさんは、「んだが、んだが」という風にうなずき
道に溜まっていた皆をドケドケと言わんばかりに手で払った。

皆は坂の上り口を両端に寄り、真ん中を開けてくれた。
オイラはいつも通り、歩き慣れた坂道を鉄砲担いで淡々と歩き始めた。
少し上がった所で振り向き、手を振りながら
とおさんと小奇麗なかあさんと、童子と婆さんに思いっきりの笑顔を返した。
皆は手を振るわけでもなく
シーンと静まりかえった、その坂の時間は確かに止まっていた。

上り始めて杉林にかかる頃、歪んだその先の道むこうには
透き通った光が一直線に伸びていた。
オイラは、それをたどるように進み杉林を抜けた。

そこには待ちわびた銀ちゃんが初冬の白い光が溜まっている中、ポツンと居た。

 

2004.4.27









ヤマドリのファルシ

以上のヤマドリ料理は振舞う分には良いのだけれども
狩猟法13条第2項により、金銭の授受が発生すると罰せられます。
なので残念ながら店のメニューにはなりませんです。


シェフに赤ワインをシコタマ飲ませ、いい気分にさせてからねだれば
ふるまってくれと思うよ。






















甫嶺鹿のパイ包み焼き


114層に折り畳んだパイ生地を薄くのばして一気に高温で焼き上げると
シャクシャクっとした感覚が歯の神経を伝い脳天へと響き抜ける。
そのパイに内包されていたものは
じっくりとブルゴーニュの赤ワインで煮込んだ甫嶺鹿。
そのホロリとした肉感が、唾液で柔らかくなったパイ皮と混ざり合って
甫嶺鹿の旨みが更に口中に広がる。

それは、チョいとばかし塩味を効かせたパイの皮と
甫嶺鹿独特の笹を連想させるようなエグっぽさを
ブルゴーニュの赤ワインで煮込むことによって押さえ込みつつも
ワイルドな味わいを適当に残してみた結果だ。

この二つの異なった食材を口の中で楽しむ。
だからソースも二種類。
生クリームのソースと、鹿のグラスドビアンド。
あえて混ぜ合わせないで添えてみた。

つまり、二種類の食感と二種類のソースを組み合わせて食べると
16通りに楽しめる料理となるのだ。

まぁ五択三択並べたが、これらを一気に口の中に放うりこみ
何も考えないで、ムシャムシャと鹿の咀嚼のように噛みくだく。

そしてエロいブルゴーニュの赤ワインでも
セクシーなコートデュローヌの白ワインでも
お好きなワインで胃に流し込んでみるといい。
左頬が3センチほど収縮し、目尻は1センチほど垂れ下がること受け合いだ。

エゾシカが美味いのは分かっている。
それに引き換え、本州鹿の食味が劣っているのも十分わかっている。
だから、こういう手の込んだ料理にして味わってみると
充分エゾシカと渡り合えるか、それ以上の美味しい獲物となる。

垢抜けない女でも、会うたびに慈しみ愛でていると
いつの間にか魅力的な女に変貌していくのと同じ。
だから料理と女の扱いには、手間隙を惜しまず時間をかけ
溢れんばかりの愛を与え続けるといい。


この頃チョイとばかし気になる獲物は
プリプリッとしたお尻がとってもセクシーで
キリリと引き締まったアキレス腱あたりが妙にエロい
小またの切れ上がった、あの女を口説き落としてみたい。
もとい、美味しそうな女鹿を撃ち獲ってみたい。
                    VAYA CON DIOS」」   2007.2.11
  









八杯豆腐
キコリのケンちゃんは、日本の大いなる田舎岩手県
その岩手のなかでも更に田舎のっていうか山奥の
それこそ何が悲しくて、こんところに住んでいるの?
って言うくらいの所に住んでいる割りには
ウルトラライトプレーンを2機も所有してるし
フライフィッシングは山奥だから分かるが
オフショアーのタックルが何故かあったり
おまけにシーカヤックも有ったりもする。
その脇の柱のハリに蓑が掛かってあったりして
田舎なんだか、そうじゃないんだか
訳が分からなくなってくる多趣味人間だ。

そんなケンちゃんは、日本におけるカーバーの草分けでもあって
アメリカで行われたチェンソーカービング大会に
ふらっと出かけては、軽く一等賞を獲ってくる
ウルトラスーパー変なキコリだ。

/
一見、お友達にはなりたくないサダム@ken

そんな彼が住んでいる山奥の寒村に細々と伝わっている料理に
「釜津田・八杯豆腐」なるものがある。
以前にも何回か豆腐を、お土産に戴き食べてみて
歯ごたえが有って甘みっていうか、コクが濃い豆腐で
「歯ごたえがあって、豆腐臭くて、こりゃうめぇなぁ」と食べた。

男前豆腐なんていうヤサ男みたいな豆腐が巷では流行っていたが
ここの豆腐を例えるならば「げんきですかっー!」っていう
コブラツイストをガッチリ掛けた猪木豆腐です。

そんなケンちゃんは、ほとんど毎日のように
大豆のタンパク質がギッシリと詰まった、この豆腐を食べているのか
ビックリするほど腕がブットイのです。
ボディービルダーがプロテインを摂取して筋肉増強を図るのと同じ効果で
良質のタンパク質の塊のような豆腐を摂っていると
あんな太い腕になるのかも知らんね。


そんなケンちゃんとボー年会で、ひとしきり豆腐の話題になった時
「オレの田舎では、葬式のとき八杯豆腐っていうのを喰うんだけど
これがまた美味くて美味くて、ホントに八杯食べられてしまう」
なんて、どうだと言わんばかりに舌なめずりされた。
「そんなに美味いんなら、ムラの葬式の時は俺を呼べ」と
冗談半分で懇願した俺は大の豆好きで
ありとあらゆる お豆 が大好きだ。

/
ホレッこんなに薄くスライスしてもご覧のとおり崩れない。

その八杯豆腐の大体の作り方を聞いた。
出汁は煮干で取って醤油で塩みを付ける。
そこに釜津田豆腐を薄くスライスして
ウドンより一回り細く切った豆腐を入れ
一煮だちさせてからお椀に盛り、こまかく刻んだ胡桃を
いいくらいの量を振りかけて、ネギを盛って出来上がりなそうだ。
だが、ここでの一等のコダワリがある。
それは胡桃と言えば昨今アメリカ産のクルミ、ウォールナッツが
幅を利かせているが、それでは釜津田八杯豆腐は完成しない。
ここでの胡桃と言えば山胡桃の事をいうのだそうだ。

そんな美味しい話を聞かされて、コロッと忘れた頃
いきなりケンちゃんが現われて、店のカウンターに
ドンと言う音と供に置いたのが、紛れもない幻の釜津田豆腐。
さすが猪木豆腐、置いた時の音が凄い、ドンだぞドン。

そこで今回は俺流にアレンジしたのが
「山鳥のブロード、八杯豆腐仕立て」だ。

さてと、ヤマドリの腰脂が載ったガラでとった
ブロードで、本返しのソバ汁を作るか。
このヤマドリのガラでとったブロードは、画像にもあるように
黄色みがかった脂が表面に浮かんでいる。
一般的なブイヨンは脂分も取ってしまうのが常識だが
家畜からとったブイヨンとは違って、冷蔵庫に保存しても固まらない
サラサラの脂なので
口に含んでもしつこさというものがまったく無い。
木の実だけを食べているからであろう。
だから俺は「なんでこんなに美味い脂を取ってしまうの?もったいない」となってしまうのだ。

言ってみれば、魚の脂と同じように低温でも固まらないサラッとした脂だ。
このブロードで作った蕎麦出汁だが、あっさりとした味わいなのだが
一呼吸置いて、から圧倒的な旨味が口の中で広がる。
これが雉では、こうはいかない。


言われたとおり釜津田豆腐を、鉛筆一回り小さくしたくらいに
スライスしてから切り分ける。
そしてウドンの麺ような感じで軽く煮込んでみた。
それをお椀に盛り付けて、山グルミをグラインドしたやつを
いいくらいにかけた。
ネギは生のままで喰うのが嫌いな俺は、軽く煮込んでおいた。

出来上がったそれは、まるでドンブリいっぱいに浮かんだ挽き胡桃が
背脂たっぷりのトンコツラーメンのようにも見える。
そのコッテリ加減に、細長い豆腐が負けてしまう予感がしてしまう。

/

その背脂のようにも見えるだし汁を、一口すすってみる。
山鳥のブロードに、山胡桃の淡い旨味が幾重にも重なり合って
一反の紫紺染めの織物のようにも思える。

さすが山にいる鳥ヤマドリは、ドングリやブナのなどの
木の実を拾っては、喰っているだけあって
山胡桃との相性は例えようもないくらい、自然に一体となった味だ。
更に追い討ちをかけるように、豆腐から滲み出て来る旨味が絶妙に絡み合っている。
まさに渾然一体とはこの事を指して言うのだろうと思った。

次はウドンのような豆腐を口に入れ
ひとかじりすると、豆腐独特の甘いマメの香りが鼻腔にぬけ
山鳥のブロードに負けないくらいの、豆腐の味が口いっぱいに広がった。

今度は出し汁と豆腐を一緒に喰ってみた。
この世の中にこんな美味い食べ物があったのかと、正直思った。
蕎麦をこねる時、繋ぎで豆腐を入れるっていう事を聞いたことがあるが
蕎麦を入れない豆腐だけの蕎麦汁は、蕎麦を超越したなと俺は思った。
この日本、そして岩手に生まれてきて良かったなぁと
しみじみ舌で感じ入ったのである。

モチロン、森伊蔵をロックで戴きながらでしたけど。

 

てなわけで、八杯豆腐っていうのをググってみた。
「八杯豆腐とは淡い絹ごし豆腐で作る京料理のすまし汁」のようだった。
そう言えば、釜津田は平家の落ち武者が
逃れて来た所と言い伝えられている。
だから、京料理の亜種が存在するのかもしれない。


そんなケンちゃんの奥方は、ヒナにもまれなる京美人だった。2006.12.14








ジビエのリゾット

/


晩秋から冬にかけては、なんたってこれで決まりダ〜ネ。
ウマイのはモチロンの事、心も体も暖まるしィ。てか。

滋味華やいでいるのにでしゃばらず、それにもましてふくよかな輪郭が
チョット芯が残ったお米に隠されて、噛めば噛むほどに口腔の隅々に響きわたる。

晩秋の里山の畑や田圃の脇に立ち枯れたススキや、ハサ掛けに取り残されたの稲の穂
木々に取り残された明るい橙色の柿、深紅色の林檎の、目の裏に焼き付けられた風景が
鼻腔から海馬へと稲妻のように突き抜けていく。

そんな少し寂しさが残る渓の落ち葉を溜めた小さい流れに余韻を楽しみながら
アスファルトの向こうに見える朝焼けの峰峰に心を飛ばして欲しい一皿ではある。


合わすとしたら、米には米で勝負じゃ。
とゆ〜訳で、日本のジャックダニエル「天下無敵」なんていう
チャコールメロウイングの焼酎なんか合わしたら「良い結婚」

えっ、ワインはって?
懐に余裕があればモンラッシェの私生児なんて言う、こそばゆい名を付けられているバタールなんかお勧め。
グラスのリムからボウルのヘリをゆっくりと覆い広がるように伝わり落ちるワインの涙、グリセリン。
その粘度の高いグリセリンを愛でながら、私生児とリゾットのマリッジを祝おうじゃないか。  2006.1.16
















雉のポワレ、大吟醸のサバイヨン・根曲がり竹を添えて



雉の肉はチョッと酸味を感じるが、この酸味を雉独特の美味い肉と感じるか
はたまた、この酸味を美味くないと嫌うかは、その人それぞれの感じ方の相違だ。
そ〜ゆ〜人には敢えて言います。
「KFCでも食べてな」と。
この淡い酸味を、雉独特の美味しい味だと分かっている人にこそ
食べさせてあげたい一品なのだ。

黄色いソースのサバイヨンは、大吟醸のアルコール分を飛ばしてから隠し味程度に使う。
すると、このソース独特の甘みを感じる部分と、雉の肉の酸味を繋ぐ絶妙な架け橋となってくれるのだ。
根曲がり竹は、採ってすぐに皮を剥き食べると、ほのかに甘くて美味いという人がいるが
オレ的には、エグミが舌の上にドンとのっかてしまい、味覚中枢を麻痺させるので好きくない。
採ってすぐに茹で上げると、トウキビみたいで美味いとも言われるが
オレにはトウキビのようなと言うより、やはりエグミのほうが強く感じられて美味しいとはおもはない。
さすが深山にたくましく生きているパワーだけの事はあるエグミだ。

根曲がり竹の一番美味しい食い方は
飽和食塩水に半年ほど漬けてから水出しをして使う。
するとエグミが完全に取れて、根曲り竹特有の味が出て美味しく戴ける。
山菜の中でも春遅くに採れる、この根曲がり竹を塩付けにして
11月の15日、狩猟解禁日に合わせて水出しをすると、うまい具合に半年となる。
水出ししても、ご覧のとおりタケノコの色は採った時そのままで
味もさることながら見た目にも美味しく出来上がる。
だから、この半年という期間はじつに絶妙な熟成時間で
味・色合いともベストな状態になるのだな。
これをジビエの付け合せで、一緒に食べると
同じ山のもの同士、美味しさも相乗して頬の筋肉が痛くなるほどだ。


この料理をほおばると、最初にサバイヨン独特のほのかな甘みが口に広がり
それを追いかけるように雉の肉独特の淡い酸味が追いかけて来る。
最後の仕上げにゴマの生クリームソースをアクセントで散らすのだが
この黒ゴマの生クリームソースが、雉の肉をポワレした時の焦げたオイルの香りを封じ込め
ストレートに雉の肉の、ほのかな酸味を誘い出してくれ
これがまた白ワインの淡い酸味と見事にマッチし更に
この料理を美味く引き立ててくれるのだ。

ジビエならではの肉質を楽しみながら、充分に味わったモノを飲み込んだ後
舌の上に残る渾然一体となった香りに、あの時あの場所に思いを馳せるのだ。
それは、銀ちゃんが微動だにせずガッチリと雉にポイント。
あたかもギリシャ彫刻のような、筋肉質な雄姿を思い浮かべ
TOREDANAのガヴィディガヴィを口に拭くみながら、ひとり酔いしれるのだった。


※この料理をヤマドリでやったら、雉の肉が美味しくないと言われる貴方でも絶句モンだ。
が、、第三者に食べさしてあげると、狩猟法第13条の2項の違反で
6箇月以下の懲役を喰らっちまう。
という訳で堀の中では、美味いワインを飲みながら美味いものは喰えないので
ザンネンながら当店では食べさせてあげる事は出来ないのだ。2006.1.21
















まったりとした甘味がたまらない、男鹿半島の親アオリイカ。


アオリイカのパエリア
いつも黒のお作りで食べている真イカのワタのコッテリ感が無い
アッサリ系のワタを持つアオリイカは
そのまま出汁に取ると
ん、もう一つ?という味なのだった。
そこで味にもう少し深みを与えるため、パンチェッタを加えてダシをとる事にした。

東和町産のモッチリとした噛み心地のヒトメボレの芯まで染みこんだ
イカのワタの風味を味わいつつ、後からアオリイカの甘みが
口の中で沸いてくるのには正直なところヤラれた。
アクセント的なタラの芽もなかなかで
これに合わせたトレダナのガビディガビのグレープフルーツぽい味わいに
タラの芽の独特のエグミがマッチした。
パエリア自体も、このワインを合わせることで味が締まった。
狙ったとおりのワインチョイスで、ひとり密かにニンマリとした一品に仕上がった。



タラの芽とアオリイカ丸ごとのパエリア



海鮮炒飯

アオリイカの身に歯がスウっと入って行く
独特の触感は、まるでバターにナイフを入れるような感覚でもある。
アクセントで昆布締めした鯛の身も入れてみた。
こちらの身は、日本海を自在に泳いでいる強靭な筋肉を思わせる歯ごたえがたまらない。
ご飯は新潟在住の釣りの弟子が、お土産に持ってきてくれたコシヒカリを使用した
贅沢海鮮炒飯の出来上がりっ。。   2004.6.28







三陸の潮流に揉まれたマダラは、身が締まって実に美味しい。
脱水シートを使って熟成させると、タラ独特の歯触りが更に美味しくなる。
そんなマダラは刺身はモチロンの事、あらゆるオイルと相性の良い魚だ。


太陽が届かない海の中では、ほとばしる愛の季節を終えたマダラが
小魚たちを鱈腹食べて体力を回復させている。
そんな大食漢を更に喰っちまおうってのが、今日のテーマ。
一本釣りで釣り上げたマダラは、鰓の付け根の延髄に包丁を入れる。
尻尾は付け根からバッサリと切り落とし血抜きをする。
そして背骨沿いにある神経に、バッサリと切り落とした尾びれの付け根から
一本の針金を首の付け根まで通し神経束を破壊する。
これで筋肉劣化を起こす原因の死後硬直を防ぐ事ができる。
いわゆる最高品質の刺身を作り出す方法「活け締め」だ。
こうする事によって、匂いも無く弾力に富んで透明感のある身となるのだ。
このフィレに塩を振り昆布締めにして、薄く身をそぎオリーブオイルだけで食す。
そうカルパッチョだ。
そのモチモチとした食感のなかにあるハラリとした甘味のある繊維質の身の味わいは
活け締めでしか味わえない悦高の喜びではある。

昆布のグルタミン酸がバッチシ効いた味わいと、〆たタラの身のテクスチャーには
「八海山」大吟醸が、よく似合うのだ。

ワインならカチッとした酸と、力強いミネラル香を持ったシャブリ。
その中でも飛び抜けてうまいのがロンデパキのムトンヌだ。   2004.8.21







昆布締めタラの寿司
(寿司も握るコックって、ど〜よ)


盛岡の行者ニンニクは、北海道のアイヌネギほど
強烈なニンニク臭は発しない。
そのなかでも、岩手県で一番寒い(つまり、本州で一番寒い)
御大堂の峰筋に生えているヤツは、ブナやナラそしてシナの木の
フカフカの腐葉土に抱かれるように生えている。
だから白い部分が太く長く伸びているせいか
ニンニク臭がほんのりで、まるで甘い韮のように感じる。



ここの行者ニンニク、里に下ろすとアッと言う間に融け始めるので
食べきれないヤツは、すぐさま生醤油にギッチリと付け込むと
この微かな風味を、しばらくの間は楽しめる。
こやつを荒く刻み、昆布締めにしたタラの寿司の上にチョコッと乗せて食らうと
繊細な味のタラの昆布締めに、ガッツンと活が入り旨さが倍増するのだ。

この寿司を一口飲み込んだ後に来る、昆布のほのかな香りと
ホワンとした微かな韮のような、ニンニクような香りが
入り混じり合いながら、鼻空を駆け抜けていくと
深山のひそやかな微風と、深海をうねる強い流れが口腔で一体となり
それはそれは深い味わいとなった。

片手に寿司を、もう片手に八海山のグラスを持った俺は
もう一つ、またもう一つと手が伸びて止まらなくなるのだった。


/
久六島のナブラ、本マグロ



寿司といえば黒マグロ。
Hei お待ちっ。。


こちらの寿司はてぇ〜と、黒マグロの尾トロの握り。
上に乗っかってるのが、ワサビの葉を三杯酢で漬け込んだ
「ふすぺっ」ていう、郷土料理。
これがまた、あっさりとした脂のノリの尾トロに合うんだなぁ。
俺っちの方では、ワサビの根はほとんど食べない。
その代わり、葉っぱをこうして漬け込んでワシワシと食べるのがフツーだ。
モサッとした十割蕎麦に、このふすぺっをぶっ掛けて喰うのが
地元呑み助の蕎麦通の間では人気なのだな。
白いご飯に、ふすぺっを山盛りにぶっ掛けて
お茶漬けなんても、飲んだ後には「こでられね〜」て言う声が聞こえてくるのだ。    2006.9.21



天王サーフの遠投スズキ




大はマグロなんだが、小さい魚と言えばコレ
☆ワカサギのエスカベーシュ、ほとんど手抜きバージョン。
でもウンマイ。








 ワカサギのピザ


生魚とチーズ、取り合わせの悪さ感がはんぱ無いが意外や以外ぞ。


本州で最も低い気温を毎年記録するのが去年から盛岡市となった藪川。
その中でも特に寒いと恐れられているのが「岩洞湖」と呼ばれている
ロックヒルのダム湖である。

日本各地の湖の富栄養化が進み、水質汚染が問題になっているが
岩洞湖の周辺には民家が無い。
それに、まわりには家畜が飼われている場所が無い。
ってことは、汚物水が一切流れ込まないので
水質は誠にもって綺麗の一言。

ワカサギ釣りでは、仔細かつ微妙な当たりを捕らなければならないので
ご飯を食べている片時も、片手は必ず竿を握っていなければならない。
が、オイラは釣る間を惜しみながらも、ワカサギを釣る穴から
岩洞湖の水を汲んでコーヒーを立てるのが俺の岩洞湖の朝の流儀だ。

それを一緒に来た仲間に振舞うと
ズズズっと一口すうと必ず「ウメェ」と
白い息と供に独り言のように吐く。
お世辞で言うなら「おいしいですね」だろうが
「ウメェ」と言われた日にゃ、コーヒーを立てた方は嬉しいってもんだ。
まぁ、マイナス 二ケタ台の環境で飲むっていうのも差し引いても美味い。
だから裏岩洞流の家元、千家を名乗っているのだ。

こんなだから、ここで捕れるワカサギの味は言わなくても想像できると思う。
あえて言ってみれば、一般に言われる生臭さは無い。
ワカサギ独特の青臭さはあるが、手に何時までも残る臭さではない。
味はというと、苦味が強いとされるワカサギだが
岩洞湖のワカサギの腹は、ほのかな苦味だ。
それより身に甘みがあるので、一口食べただけで
他のワカサギとは別物だと誰でも分かる。

そんな美味を求めて東北各地と言わず、関東周辺からも
アイスバーンや積雪を物ともせず、釣り人がやって来る。
実際は福島第一原発の放射能拡散で、福島周辺の湖が汚染されてしまった
っていう、状況もあるんだろうけどね。

そんな甘みなワカサギ、ピザの具にしてもなんら問題は無い。
というか、メチャクチャ美味しい
ピザにすると風味的にはアンチョビみたいな感じだが
塩気はもちろん無い。
これをピザ一枚に18匹入れてある。
18匹というと、すごい量と思われるが、小はマッチ棒サイズなので
六つ切りにした一片に3匹は入れないと
俺の舌が黙ちゃいないって言うことだ。
 
ただ量産はできない。
それは市場には絶対に出回らない魚だからだ。
喰いたければ自分で釣れということだ。

それにこの釣りには危険がいっぱいだ。
毎年というか、一週間に一度は必ず救急車が迎えに来る。
それは極寒を省みず、寒さ対策でテント内で小型のストーブ炊くので
換気を怠って一酸化中毒になる人が後を立たない。

ワカサギ釣り師の知人友人たちの、一酸化中毒で意識を失いそうになったとか
頭がガンガンして痛くなったとかの話はよく聞く。
気づかない内にやられるらしい。

オイラの愛車は20年前の古いやつなので、よく故障する。
そんなオンボロ車でも、嫌な顔をせずに快く直してくれる自動車工場の工場長。
彼も極寒の岩洞湖の氷上テントの中で一酸化中毒死。
時間が経っていたので、凍ったままの状態で発見された。

あと、湖底から湧き水が出ている所は、湖水が縦に回流しているので
氷が薄くなっている落とし穴状態。
簡単にパリンと、湖に落ちるらしい。
落ちた穴の周りの氷の上に水が上がってしまって
アイスバーン状態になり、ツルツルすべって這い上がろうとしても
這い上がれないアリ地獄なそうだ。
氷上には、なにも掴まるものが無いし。
運よく発見されても、ミイラ取りがミイラになるという落水の連鎖になるので
落ちた現場には近寄れないという事情もある。
知らない間に死んでしまう一酸化中毒と違って
こちらはタイタニック的拷問に近いとおもうぞ。

たかがマッチ棒サイズの魚釣りだが
危険が危なくてデンジャラスな釣りがワカサギ釣り。
だから、こころして食べるように。




うっかりメバルはカットレットも良いけどコレでキマリだ〜ね。






真鯛と雪下大根のポワレ






松かさ造りの寿司












そっそう、そうなんだっ。。




と、鼻の穴を膨らませていたら背後からか山の神の声がした。
「魚屋から買ってきたほうが、よっぽど安い」と。




いつも寝酒にと赤ワインを引っ掛けに、店に来て頂いているテツビン屋さん
早朝、銀坊の散歩に出かけている中津川カワラ組のMIX犬ふうちゃんのパパである。
で、銀ちゃんがめでたくゲトーしたカモのお話をしながら鴨鍋をつついてもらったら、
テツビン屋さんはワインをゴクリと飲み干しポツリと言ったのだ
「食べ物にお話があるっていう料理は、これまた格別なお味ですね」と。
山菜採りにしろキノコ取りにしたって釣りでも、狩猟でも誰かと何処そこに行って苦労して獲ったとか。
いやぁ〜、まさかあんな所で採れたなんてオドロキとか。
危ない目に合ってヤバかったとか、いろんな体験やそれに付いてのモロモロの事件があってから
はじめて口に入る食材とその料理は、言葉には言い表せれない格別なご馳走だったんだ。
スーパーで売っている野菜や豚ロースやカルビなんかには、微塵もストーリーは感じられない。
ましてや何を使っているのか不明のお惣菜なんか、ただのウンコになる物としてしか感じれなかった。
だから何時も、どっかが違う食いもんだなぁと、喰う前からさめた舌で感じては
食べていたんだけど、今の今までそれが何だかはわからなかった。
ふうパパに言われて今初めて気づき合点がいったのだ。
今までバカみたいに真剣に遊んでいた事が、実は「ストーリーを持った食べ物の追求」だったんだなと
初めて気づかされたし、その一言でとっても納得いって心が楽しくなった。
だから、ふうパパの何気ない一言で遊びと料理との融合を、しっかりと確信したしだいである。
これと話はあまり似てないのだが、有機野菜や低抗生物質肥育豚などには
作った人の紹介が有ったりして、これも一つのストーリーかもしれないな。
うちで喰っている米は釣り仲間の真ちゃんが作っている。
それは品評会でも何度となく受賞している東和町の「ひとめぼれ」だが
そのなかでも釣友の真ちゃんが作るの米は、特にもっちりとして大粒な「ひとめぼれ」で
その作付けの土地の優良さは、近所の農家から羨望と嫉妬の目で見られているそうだ。
で、友達からその年の収穫するまでの苦労話なんか直に聞けたりして
一噛み一噛みにお米の弾力っていうか、生命力が感じられ
ご飯の美味しさが口中に染み渡る美味さは天下一品!だ。
それは、くだんのすし屋のシャリがナントも不味く感じるほどで
近頃は自分で釣ってきた魚を種に寿司を握って家族に振舞っている。
だから、菊池家では回る回る寿司とはだいぶ疎遠となっているんだな。
でも、息子達からはブーブー文句が出ている今日この頃。
「ブリならブリだけ、マグロならマグロだけ、イカならイカだけって
一種類しかない寿司って寿司って言わない」と、、、。
これからの俺の遊び事全般は「ストーリーを食す」ってのがお題になった
だから、山に行ってきま〜す、川に釣り行ってきま〜す、海行ってきま〜す
じゃなく  「仕入れに行ってきま〜す」 だす。
とどのつまり、馳せて走って集めた獲物。
これぞまさしく

「ご馳走」






 

 前文からの印象で、釣や山遊びばっかりやっているダメオヤジのようなイメージを持っている方がいるとは思いますが
実はムッシュ、意外とまじめな料理人でも有りまして
おおよそ40年ばかり包丁とフライパンを振っています。
そんな厨房からの面白いエピソードや、うんちく話の始まり。
 

 


サーロインステーキ



かれこれ40年あまり料理を作っているわけだが
その中でもサーロインステーキの焼き方さんは
コックの中でも一番実力がある人が担当する事になっている。
かと言って、一番上のチーフコックが焼くわけではない。
チーフコックともなれば、平たく言うと監督みたいなものだから
現場ではあまり手を出さない。
でも、口は出すっていうやつだな。
んだから、サーロインステーキを焼く担当はセカンドになるわけ。
柔道でも空手でも一番強いのが2段とか3段見たいなのと同じなわけだ。
8段、9段ちゅうのは、死に際間近の爺さんがなるもんだ。

黒毛和牛のサーロインといっても見た目にはサシと言われる
脂が五月雨のように入っているものやら、スコールのように入ってるもの
アラレのように入っているのものなどがあり
それらを瞬時に見極め、肉を焼く鉄板だったりフライパンの
温度きめる習熟の技というか感というものがいる。

それには幾多の失敗を重ねなければ得られるものではない。
一般的には一気に表面に焼きを入れ肉汁を閉じ込める
な〜んて言われるが、素人でも考えれば分かるんだが
裏表を焼くのは分かるが脇はどうやって焼くの?ちゅう事だ。
そこまでやらなきゃ意味ねぇ〜だろって言うことだ。

しかもだ、しかも裏表をキッチリ焼いて肉汁を閉じ込めたなんて言ってる
コックはどうしようもない薄ら馬鹿でしょう。
キッチリ焼いたとしても、肉汁は出で来ます。
じゃあサーロインステーキを焼くキモは何かと言うと
肉汁を閉じ込めるって言うことを頭の中から消し去ることです。
どう焼いたら牛の肉がサーロインステーキに変わるかって言う事を
追求すれば良い事だけの話です。


 

  チーズフォンデュ

/
寄り目でど〜ぞ


スイスの原産のチーズ、メンタールチーズとグリュエールチーズを主体とし
各種チーズをシェフ独自のテイストで絶妙にブレンドしました。
本場スイスのレシピそのままで作ると
舌と鼻に来る強烈な刺激でどうも美味しいなーとは
手放しで言えないものがありました。(俺だけかな〜)
この刺激的な部分だけをKIKI‐HOUSE風にアレンジした結果。
そのクリーミーでメローな味わいは女性の方をはじめとして
各年代層の方々に大人気となる料理となりました。

ちなみに冷えきったビールを片手に、このチーズフォンデュを食べますと
お腹の中でチーズといっしょに固まってしまい、消化不良を起こしてしまう
食い合わせの悪い例の一つだと、欧州では言われているそうですヨ。
(ソーでもないような気がしますけど)

   発祥の地スイスでは、なかなか面白いルールがあるそうです。
それはですね、チーズをたっぷりと付けようとしてフォークにさした
バゲットの切れ端を鍋の中に落としてしまった欲張りな食いしんぼさんにはレッドカード。
       ペナルティーは男性の場合
お連れの皆様にワインをおごらなければならないそうです。
じゃあ女性の場合はどうなるのかとゆうと
隣の男性のかたにキスしてあげなければならないとゆう
楽しいルール(地獄になる場合もありますけど)があるそうですヨ。
        キキハウス的には、レッドカードを受けた人は会計を全額持ちなんてのはド〜オ。
スリルあると思うけど。

ここで飲み物を合わせるとしたら、はやはり軽めの赤ワインとか行きたいですね。
たとえばブルゴーニュのフルっぽくなく、あまりタンニンを感じさせない
ピノノワールの葡萄品種を使ったレギュラークラスのメルキュレなんかがピッたしですね。
  白ワインでしたら、ワインの涙と言われているグリセリンの成分がたっぷりで
ビロードのような滑らかさを持つ楽しいワイン、プイィフイセのオールクラッセなんかが
ヨイナーと思うのです。



パエリア


ポワッソンスープで魚介類のうまみをていねいに取りだし
オリーブオイルでいためたお米とともに
オーブンで蒸し焼きにすると、海香りがギュッと詰まった香ばしいパエリア
(炊き込み御飯じゃございませんぞ。あくまでもパエリヤ)の出来上がりです。
特に鍋底にひっついたカリカリお米の一粒一粒に魚介類の旨みがギュッと詰まり
軽く焦げ付いた香りが赤ワインの樽香とマッチし涙モンですネ。
ここではあまりフルなボデーを持つワインより、イタリアの太陽をさんさんと浴びた
元気のいいルフィーノのキャンティクラシコリゼルヴァとか
シチリア、ヴィットリアの赤なんかもいいですね。

           とあるお客様が「去年、旅行に行ったバレンシアで食べたのよりおいしいわ。」
と言ってくださいました。
私涙モンでた。

ちなみに、お米の量が少なく感じると思いますが
炊飯と違って蒸し焼なので
お米は膨らまない
んだよ。
でもって、お米の量はちゃんと一人前一合使ってるので
後から徐々におなかが膨らみますぞ。
昔の福田パン(ロリーネ&コンビーフがスキ!)みたいに。

当然の事ですが作り置きはしてません。
なもんで、お客さまの注文をいただいてから、料理に取り掛かりますので
少なくとも一時間ほどお待ちいただく事になります。
     席についたらスグにでもとゆう方は、ご予約頂ければ
指定の時間までにお作りしますので
こられる前に電話でもくださいな。

人数が多ければ多いほど美味しさが倍増してくる料理です。
最大50cm、人数で言いますと20人分はゆうに有る特大なべも
用意しておりますので機会がありましたらどうぞ。

これにはスペインのワインと言いたいところだが
カスティヨンの魔法のワインと呼ばれている
ア レ が一押しだね。
アレはあまりにも美味しくてパエリアに合いすぎるから お し え な い 。
なんたって近頃、手に入りにくくなったから。。



ブイヤベース


私の店は開店して33年も経ってしまいましたが
その間に手伝って戴いた人の
延べ人数は20人いるかいないかくらいだと思います。
それで、今まで働いてくれた人が辞める時でも
店の玄関に求人広告の看板を出せば
すぐに反応があり、次の働き手に困ったという事がまったく無いのです。

私の友人が言うには、「お前の店はアルバイトの人が長く働いてくれてイイな〜
俺のとこなんか半年もいれば長いほうだぜ」といってました。
そう言われてみればアルバイトの出入りがあまり無く
働いてもらったアルバイトの皆さんは
私の言う事を良く理解してくれる頭のイイ子たちばかりで
経営者的には だいぶ助かっているナと思います。

そういった中で20年くらい前になりますが
それまで長いあいだアルバイトをしていてくれたK君が
実家の商売を継ぐ事となったので
あと1ヶ月くらい後に辞めたいとの申し出がありました。
さっそく店の前に求人広告を出しましたが
この時はなかなか次の人が決まらず、あせりました。
K君が辞める2日前に「表の求人広告を見ましたが」
と電話での問い合わせがようやく来ました。

        「それでは明日にでも履歴書を持参の上
一度来てみてください」という電話のやり取りとなりました。
次の日、実際に電話の方とお会いしてみると
私が想像していた年齢よりかなりご年配の女の方でした。
来る物拒まず、去る物追わずの僕でも一瞬たじろぎました。

そして、その方が差し出してきた履歴書を受け取った私としては
当然のごとく年齢の欄に目が行きました。
そして一瞬にして目が点になってしまいました。
52歳と書いてあったのです。
素早く僕の挙動を察知した、仮にスズキさんとでもしておきますが
その方が、「年齢制限に引っ掛かりますか」と、私の経営者としての
懐の大きさを計るかのように問い掛けてきました。
ン、ここは私の寛大な懐の広さを
一応は見せておかなちゃとヘンに勘違いしたワタシでした。

ある人生の師が私にトツトツと語っていた事が有ります。
「誰かと初めて出会うという事は
それは自分にとって、その人が何かメッセージを
持って来ている事なのだよ。」と
「だから、そのメッセージは何かと解読する開けた心を
持たなくてはならないのだヨ」と言いました。Open your maind
という事はだ、俺の店にわざわざ食べに来てくれたお客様に
何かメッセージの残る事をしなければいけないのかナと。
とすれば、そうだな料理という仕事を通して美味しいメッセージを届けられればと
その話を聞いて私は思いました。

これも何かの縁と私は腹をくくり
その方に店を手伝って頂くことに決めました。
やはり私の人選眼に間違い無く!?
その方とお話をして行くうちに、どこか変人的とゆうか
ユニークなトコが有る、おもしろそうな方だと理解し始めた私でした。

永く勤めていた大会社を自己退職したあと、ヨーロッパに長期遊学し
一時帰国しているんだよと言っていたスズキさんではありました。

ちょうどブイヤベースの注文を受けて
私が料理に取り掛かってすぐの事です。
スズキさんが独り言のようにいいました。
「あらプロバンスの香りだわ」 と。
オーそうなのか、この香りが地中海沿いの街の匂いなんだなと
その時僕はハッキリと理解できました。

それから程なくしてスズキさんは
またヨーロッパへと遊学へと旅立ちました。
そして料理に対しての揺るぎ無い確信を私に残して。
そんな思いがぎゅっと詰まった私会心の作品です。

鍋に隠れている具がサフランの黄金色に染まり
濃厚な海の幸エキスがたっぷりのスープとあいまって
いっそうこの料理を引き立てています。

    ワインを合わせるとしたら、土地柄ヴァンドペイドオックの白ワインと
いきたいところですが、私的にはグラーヴのソービニヨンブランか
カルボニューブランなどのソービニヨン系を飲みたいのだ。
もしくはちょっと気取ってパヴィヨンブランなんかがおすすめですね。


ちょっと蒸し暑さが残る秋の夕暮れ
reiは、ちょっと茶がかったロングの髪を
109から吹いてくる風になびかせ
そして心地よい風を顔で受けるかのようにして
鹿のようなかろやかな足取りで渋谷道玄坂を下っていた。

そしてoreに小さく振り向きこう言った。
「たまにはどっか遠い所に行ってみたいわ」と。
そんな話をoreは聞き流す振りをしながら
こっ汚い宇田川の通りを抜け、東急ハンズの方へと向かった。

行き先は、小さなビルの地下一階の奥まった所に
ひっそりと店を構えている手打ち讃岐うどんの店「やしま」
もちろん食べたのはreiの手前上
ちょっとおごって「えびてん上」である。
道玄坂帰りのクールダウンには、ちょうどいい食い物だ。

次にreiと会ったのはトーヨコ渋谷駅の改札口である。
それは、前に会ったときreiに言われた「遠いところ」に行くためである。
横浜はじゅうぶんに遠いところだとoreは思っていたので
トーヨコ線の電車に乗る事にしたのだ。

横浜で降りたreiはタツノオトシゴマークで大流行だった
「フクゾー」に行ってみたいと言った。
もちろんoreには興味のない話だった。
が、しかし学校帰りのフェリスの娘や、山手の女の子を見るのも
悪くは無いなと心の中で思った。

案の定「フクゾー」は、それらしき一見清楚でキャピキャピした
エエトコお嬢様風の女の子でイッパイであった。
一通り見終わったreiは、「行こう」と言った。
次は三大ハマトラの聖地「ミハマ」[キタムラ」と続くかなと思ったが
そんないわゆる横浜元町詣でには、あんまり興味が無いようで
フクゾーを後にしたreiはハマ風を髪にまといながら
この町を軽やかに抜けていった。

ore的に横浜って所は、海の香りがして波の音がする所がいいと
常々思っていたので、海の見える丘公園よりは山下公園に行こうぜと
reiに言った、もちろんreiは振り向きながら片目を瞑ってOKした。

山育ちで、渋谷の雑踏の中で汗流して働いているoreにとって
海辺のそばっていうのは、憧れというか実に非現実的な場所だと思っていたからだ。

青春ドラマのように「海なんか嫌いだっ〜」なんて
大声で言ってみたくもなったが、照れくさいので止めた。
そんなデートコースを歩き回ったore達は
当然のように お腹がすくわけで
oreは「どこで昼めし食べる?」とreiに聞いた。
そうしたらreiは迷うことなく「杉の木」と言った。
oreは名前からして和食の店だナと思った。
まさか、うどん屋じゃネエヨナとも思った。
    

reiのいとこは結構トンデル娘だとreiに聞かされていた。
そんな娘のハマ一押しの店なのだそうだ。
「何が美味いの?」ってreiに聞いたら
「いとこの話ではブイヤベースが一番美味いし
ピザも結構イケルよって言ってたよ」と言った。
「イケイケ娘がそこまでイイって言うんだったら決まりだな」と言った。

ちょっと道に迷いながら、ランチにはかなり遅い時間に
海岸通りに面した「杉の木」についた。
店の中の様子は「ん〜ヤッパッシ横浜」って感じで
店内はもちろんのこと、先客などを観察すると
どことなくインターナショナルな香りがした。

窓際の席がぽっかりと空いていたので、そこに座る事にした。
さっそく渡されたメニューを見るふりはしたが
もう食べるのが決まっていたore達は
さっそくピザとブイヤベースを注文した。
するとボーイのやつは「お飲み物は何になさいますか」と尋ねてきた。
コーラにでもしよっかナと思っていたoreは、reiのワインと言う声に
つられてしまい、つい「俺も白ワイン」と言ってしまった。

散々歩き回って少し疲れたoreのスキッパラに
ボディーブロウのようにワインはジワっと効いた。
しかし適度なアルコールは胃を刺激し、食欲がますます沸いた。
ちょと待たされて出て来たブイヤベースは
空きが多くて見た目にちょっなぁと期待はずれであった。
が、食べてみると、これがマタ結構イケタ。
それは後々になって分かってくるのだが、それはどちらかというと
「ズッパデペッシェ」であった。
美味しそうに食べるreiを真正面に見ながら
ほろ酔い加減で食べるごちそうは
この店の空間とともに、とても心地よいものであった。

食前酒と言えばキリンラガービールと言う時代で
今のようにワインを飲む機会がそう滅多に無いころで
ましてやワインを飲みながら食事をするという習慣がまったく無かった時代だけに
お酒といえばウイスキーを酔い潰れるまで飲むものだと思っていたoreには
ちょっとした美味しい発見でもあった。

時間をたっぷりと掛けて食べ
そしてワインのお代わりを程よく飲んだ遅いランチは
reiと一緒に楽しく食べたので、ブイヤベースも倍以上の美味さになった。
非日常の一日を、このランチで締めくくったore達は
傾き始めた太陽を気にしながら、日常である渋谷に戻る事にした。

どうしても7時までには帰らなければいけなかったreiだったが
その時間には遅れてしまっていた「遠い所」に文句を言うでもなく
銀座線の改札口へと、小走りで向かった。
もちろんoreも一緒になって改札口まで走る。

しなやかな髪をなびかせながら、足早に改札口に向かったreiは
振り向きながらoreに小さな声で言った。
「今度会う時は、近くね」と。
そう言って片目をつぶった。





ラザニア


親しい女性の方とワインでも飲みながら、一緒に夕ご飯でもとゆう下心たっぷりな貴方
oreだったらこのプツプツいっている、アツアツのラザニアを
注文の一品に絶対に加えるな。
なんたって女性の方の大好物なパスタ,チーズ
ホワイトクリームソースの三大素材
絶妙に組み合わさってる料理ですから
世の女性の方たちが、嫌いなはずございません。

キモはなんたって一子相伝のミートソースです。
それは、岩手山麓や早池峰山麓に生息し
どんぐりの実や草の実などを食している、言わばイベリコブタのような
雉の肉を使っているからです。
これがこの料理を独創的に美味しい物にしているのです。
ジビエ料理です。

あとはキリッと冷えた中口でありながら深い味わいの
イタリアの白ワインなんかが有ればハナ三重丸。
そうですねえ当店一押しのイタリアのベローナの白ワイン
コステジオーラでも飲みながら。

あとは貴方の機知にとんだお話という名のスパイスで、この料理を仕上げてください。
もちろん男どうしでも誰とでも構いませんヨ、愛があれば。




オイルフォンデュ


当店のフォンデュメニューのトリをつとめるのがこのメニューがオイルフォンデュです。
 このオイルフォンデュ、みなさまが創造してるほどギトギトの油こっくありませんヨ。

手長えびやらビーフやらをくしに刺してあげるのです。
このとき人の好みにもよりますが軽くレアっぽく揚げるのが美味しく食べるコツです。

ここで一番注意していただくことは、この鍋の中に突っ込んだフォークから
揚げ立てのヤツを別のフォークに差し替えるってことです。
もしこのまま揚げたての具とフォークを一緒に、口の中に入れると
どーなるか皆さん、その後の事はお分かりですよね。
そうです、貴方の大切な唇が熱くなったフォークにさわりプクーと膨らみ
ヤケドとなってしまいますくれぐれも注意して食べて下さい。
慣れれば、そのままのフォークで食べてみるのも
スリルも味わえ余計に盛り上がりますぞ。
当店は一切関知しませんけどネ。

この揚げたての具を4種類のソース、タルタルソース
長期熟成ガーリックソイソ-ス生トマトのピリカラソース、オニオン和風仕立てソース
サルサポモドーロソース等のお好みのソースをたっぷりと付けて頂きます。

ビールもいいですけど,ちょっと辛目のフランスの白なんか小さめのグラスで飲むのがいいですねぇ。
シェフ的にはちょっと薫った感じのロワールのプイィフュメなんぞ
合わせたいなーと思います。
ブルゴーニュのシャルドネ、うーむ。
ミュルソーのクロデペリエールなんかだったら、もっと良いのでしょうけど。

イカスミのスパゲティー



ご存知イカスミのまっくろくろすけ、じゃなかったスパゲティー。
いろいろなイタリア料理の本を買ってきては、そのレシピどうり作ってはみるものの
どうもいまいちで、お世辞にも美味しいとは言いきれないものばかりで
さすがの私もこのメニューは、お蔵入りだなと半ばあきらめていました。

そこで私の料理人としての職人魂に、深くインスピレーションを与えてくれる
とてもフリョウな友人 八チャンにお伺いを立てましたところ、実にあっさりと
 「俺がベンキョウ?にいっていたイタリアでは、こうやって作って食っていたぞ」 と
イトモ簡単に言ってくれました。
まったもってくそのとうりで、いとも簡単にナゾは解けました。
ちょっとピリッとした辛味でイカスミ本来のうまさが
十二分に引き出されたスパゲティーとなっておりますが。
ここで注意しなければならない事があります。
それは、イカスミで唇及び口中か真黒くなってしまう事です。
これが、行くところまでまだ行ってない、おすましカップルの場合は
最悪の状態になります。
ていうか、お互い真っ黒くなった口を見合って大笑い。
これがきっかけとなって、打ち解けあう場合も多々あるようですが。
とりあえず、各自ティッシュペーパーをご用意くださいね。
また次の日の、はばかりには驚かないでくださいネ、もれなく真っ黒いのが出ます。

でもって合わせるワインはイタリアの白ワイン
そうだなーエミリアロマーニャの白ワイン
カデルボスコの黄橙柑橘系のフレバーと味わいが
イカスミ独特の味を盛り立ててくれるから、お勧めだよ。

日本酒もこれまた不思議なほどに合うんだな。
オレ的には大吟醸以外の日本酒は、もわっとした匂いが好きくないのだが
ドブロクは好きだ。
あのプチプチとした発砲加減がたまらんね。
う〜ん、飲みたくなってきた、のどが鳴る。
明日はあそこで買ってキヨウっと。



スペアリブ
 

骨のついたままの豚肉を、12種類のスパイスで絶妙にブレンドした
ソミュールに味がなじみ込むまでゆっくりと一昼夜寝かせます。
そして肉のうまみが逃げ出さないように焼く事2時間で
ようやくスペアリブは9割方出来上がります。

お客さまのオーダーを受けてから、20年間変わらぬ味で勝負してきた
キモ味のタレで最終行程の高温短時間での焼きに入ります。


開店当初、スペアリブとゆう料理はその名前さえ知られることなく
ましてや料理の本に載ることもない
思いっきりマイナーなジャンクフードでしたが
今や当店一ファナティックなファンが多いメニューとなっております。
その反面とてつもない個性の強い味となっているせいか一口しか口をつけないでしまう
お客さまがいる料理であるとゆうのも 事実です。
あなたも一度怖いもの見たさで食べてみますか?
ハマったら抜け出せませんゾ。

当店のスペアリブにはご飯が一番合います。
そしてエビスビールにも抜群にあいます。
ワインを合わせるとしたらボルドーのカベルネソーヴィニョン
それもスペアリブの強列なパワーにまけない
コルディエールのグリュオーラローズクラスがいいのですけど。
そこまで行かなくても六、七割のポテンシャルを持ったエンポリオボルドー的なワイン
Chメイネイクラスがが良いのでは。
もしくはイタリアの太陽をさんさんと浴びた
そのパワーと大地の香りが
うれしくも頼もしいピエモンテのレギュラーなクラスのバルバレスコ。
そうだな〜 ガりーナディネイバがいいでしょう。
もしくは、時代に取り残された大樽熟成のガッティナーラ。
でも、コカコーラってなもんも意外とイケたりする。
ところでこの料理の当店のウタイ文句は、土用丑の日スペアリブ となっているのだヨ。 




ピカタ


地元TV局で、飲食店のまかない とゆう特集で紹介した食べ物がこのピカタ。
これをご飯の上に盛り付けたのが自称ピカドンでした。

これは私がコヨナク愛しているクイモノの筆頭で、かれこれ30有余年
毎日食べつづけていると言っていいほどの料理なんです。
またこのピカタはなぜか外食産業にたずさわっているいわば業界の人達に
大変ウケがいいのも事実。

オレの修行時代に、厨房での夜食メニューだった料理のひとつで
まさにコックさんのまかない食でした。
マア人にもよるでしょうが、私シェフ的にはタバスコを
たっぷり振り掛けて食うのが一番好きで
なぜかストレスがフットンでしまう食いモンでもあります。

これに合わせるとしたらキキフリーカーなんぞいかがなモンでしょう
赤ワインのジンジャーエール割りです。
またはボジョレーヌーボーのがぶ飲みってのもアリです。





チキンのベーニェ


このメニューも開店当初から人気が続く料理です。
お客さまによく聞かれることがあります。
「なんであんなに鶏肉が柔らかいんですか」って
それはですね、よく肥育された鶏とゆう厳選された素材と
レストランサバランの修行時代に五十嵐先輩に徹底的に
仕込まれたガラスキの技術の賜物ですヨ。
もうひとつ、このベーニエを美味いものとしているのは
ワイン風味もうれしいサウザンポモドーロソースです。
非常に、この料理を引き立てるのに一役買ってるのだよ。
※茹で上ゆであげたスパゲッティーの上に
チキンのベーニエをのせて食べたら、とても美味しいウラメニューです。
(近じかメニューとしてデビューする事になってます?)
 
これはスパイシーなサウザンポモドーロソースとゆうことで赤ワインとなるナー
ちょっと甘くちのフルぽい感じのワイン、そうねイタリアの
ヴェネトーのレチョートタイプ ベルターニのワインなんかがお勧めです。
白でしたら、これまたイタリアのエミリアロマーニャ
パッシートタイプのワイン アルバーナディロマーニャなんてのも良いな。
あとねジンジャエールなんて変則技もあり。

開店してからずーっと来てくれているアベさん。
そんな彼女はデラシネのマスター?である。
とある春の昼時前、11時チョット過ぎたあたり
「たまにはアベさんの様子でも見に行かなくちゃ」と出かけたオラ。
アベさんを驚かしてやろうと、カウベルのついたドアーを
ならないようにとソーッと押し開きました。
そこには身をひいたアベさんがいるはずだったんですが見当たりません。
便所にでも入ってるんだなと思い、カウンターに座って待つことにしました。
すると厨房の方からハナウタまじりでランチの支度をしている
アベさんの包丁使いの音がします。
ここで僕はいたずらを思いつきました。
「カウンターに突っ伏して、背中からナイフのような物で刺され  
息も絶えた死人のフリをして驚かそう」そう思いました。
片手を突き出しカウンターの向こう側をガッシと掴み
もう片方の手はカウンターの上でつめを立て、もがき苦しんだように演技しました。
顔は厨房の入り口とは反対に向け、カウンターに突っ伏した格好です。
あとはアベさんが厨房からホールに出てくるのを待つばかりです。
しかし待てど暮らせどアベさんは出てきません。
それどころかジャージャーいう仕込みの音が高くなってくるばかりです。
ここで僕はフト思いました。
この状態で、他のお客さんが入ってきたらどうなるんだろうと。
まあそん時はそん時だと。
いいかげん飽きた僕は、その格好でウトッとして寝てしまいました。
ガシャガシャという厨房からの音で目が覚めた僕は、顔を上げ
壁に掛かっている時計を見ました。
11時40分です。
こんな格好をしてもう30分です、ばかですね〜。
「いいかげん来てくれないかな」と腹が立ってきたそのとき
ハナウタまじりのアベさんがやってくる音がしました。
「いら、、、、、、」といったきり絶句してしまったアベさん。
筋のような細い目を大きく見開いた図が目に浮かびます。
かなりの空白時間が有りその間、音は何も聞こえてきません。
「固まっているぞ、固まっているぞ」と想像したオラは
ニヤニヤして顔を上げて見まし。
やはり目を大きく見開き、固まっていたアベサン。
そんなアベさん、20年来ウチの店に来るとこれしか食べない。






コーンドタン




牛タンといえば仙台名物、たんの塩焼きとすぐに舌の上に思い浮かべるのですが
ウチの場合牛タンといえばこのコーンドタン。
「舌の塩漬け」と言ってしまえばそれまでですが、、、、。

このメニューにはちょっとした思い入れがあるのだ。
田舎町盛岡から、将来店を持とうと料理の修行に東京へと出て来て一年ほど経ち
だいぶ訛りも薄らぎ飲み友達もできた頃の事でした。

一週間ぶりの休日の前夜、飲み友達と騒ぎまくって朝一の始発に近い夜まで
飲んだアルコールがまだ残るかったるい体で、お昼もだいぶすぎた頃
仕事場がある渋谷からR246を紀伊国屋方面に
体からアルコールを抜きがてら、テクテクと散歩することにしました。
いつもながらの表通りは、別に変わった事などなく
あくびの一つでも出そうなくらい退屈な通り道です。
そんじゃ今日は裏町ウォッチングでもしようかなと思い
表どうりをそれて一本裏手の通りを歩くことにしました。

ちょうど表参道の駅から5分ばかりの、裏道を歩いていた時でした。
プ〜ンとローストしたコーヒーのなんとも言われない香りの誘惑。
その香りが流れてくる店の構えも
ちょっとそこらへんの喫茶店とは違う格式高い感じで
オレの好奇心をいたく刺激したのである。
チョックラ、ハイッテミンベーかなと、その重厚なドアーを開けることにしました。

そこは喫茶店というよりは、カウンターバーのオモムキで
分厚い一枚板のカウンターがドアー近くにデ〜ンと鎮座して
そこら辺にえもいわれぬ威圧感を発しているのだった。
そのカウンターの中にはナイスミドルなマスターが
ネルの生地で出来ているドリッパーを片手で持ち
もう片方の手には銅製の細長い注ぎ口のポットを持ち
「の」の字を書くかのようにして静かにコーヒーを落としている最中だった。

「ん〜イイ雰囲気じゃないの」と、僕は静かにメニューが来るのを待つのであった。

コーヒーを落とし終えたマスターが、オレのの存在などまったく無視するかのように
隣に座っているお客さんに、今しがた丁寧にドリップしたコーヒーを
音をたてずに静かに差し出しました。
それが終わったところで、やっとこさオレの番になり
2枚開きの皮製のメニューをカウンターに置いてくれました。
モチロンオレもアッソてな感じでチョット格好をつけて
素早くそして何気に応戦したのは言うまでもないことだった。

その差し出されたメニューを開いてみると一番安いブレンドコーヒーで650円。
オレの大好きなキリマンジャロのストレートは850円!これって今でも高いよナ。
これが20年以上も前の話だぜ。
「まイッカ」と軽い動揺を悟られないように気を取り直し
キリマンジャロのストレートを注文しました。
オレののオーダーを受けたマスターは軽くうなずき
銅製の重そうな筒のコーヒー入れを
後ろの棚から取り出し、分銅式のはかりの上にカラカラと
コーヒー豆を載せ始めるのでした。
何グラム位計っているのかは判らないが
その分銅が平均を保つように最後の段階では
神経質にコーヒー豆を一粒単位で計っていったのだった。
慎重に計り終わったところで、そのコーヒ豆を
今度は後ろの棚のカウンターに取り付けてある
ハンドルに大きなフライホールが付いたのコーヒーミルで
急ぐこと無くゆったりと回すのであった。

僕は正直言って「ここまでするか」と思いましたが
「この値段だからな」と思いつつ、この店のマスターが優雅にコーヒー入れる儀式を
一部始終もらさず食い入るように見るのであった。
(田舎モン丸出しだね)
ようやく挽き終えたコーヒー豆は、さらさらのスキムミルクような粉となりました。
そしてあたりにキリマンジャロコーヒーの香りが漂いました。
そして陶磁器の中に水と一緒に漬け込んであるネル生地のフィルターを
(後から飲み友達の喫茶店の店長に聞いたところネル生地のドリップの場合は
紙製のフィルターのように使い捨てではないので
ネル生地のドリッパーに着いたコーヒーの油が
空気に触れて酸化しないように、次のコーヒーを入れる時まで
味に影響を与えないように水の中に入れておくのだそうだ。)
取り出しギュッときつく絞り、それをステンレス製の
丸いドリッパーの枠に丁寧にはめ込みました。
そしてネル生地のフィルター中に
先ほどの丁寧に挽いたキリマンジャロの粉を
サラサラと真中を盛り上げるように満たしたのである。
カウンターの上のコンロに乗って
蒸気を吹き出している小さな銅製のポットを右手にとり
優雅にそして、ゆっくりと「の」の字を書きながら
コーヒーを落とすのでありました。

コーヒー豆を計るとこから始まり
カップに注ぎ差し出されるまでの一連の仕種は
極上のビロード生地の上をめらかに流れるかのような
よどみの無い動作にオレはウットリと酔いしれて眺めていました。
もちろん差し出されたキリマンジャロコーヒーが
極上の物に思えて来るのは
この熟練された技という魔法の儀式のせいでしょうね。

この魔法にかかったコーヒーを口にしながら僕は思いました。
今度は夜のバータイムが始まる頃に
マスターの後ろの棚にひかえてあるシングルモルトウイスキーを
もう一度このカウンターに座って飲んでみたいなと。
そしてマスターのカクテルさばきなぞを眺めながら
そのシングルモルトのウィスキーの
ロックでも舐めてみたいなーと強く思いました。

昨日のアルコールも、おいしいキリマンジャロコーヒーと
よどみの無い滑らかなお手並みのせいか
すっかりと抜け、体調も万全飲みモード全開
「ヨシッ今日の夜はこの店だ」と心に決めた私でした。

けだるい午後の昼下がり、ここですっかりイイ気持ちとなった私は
この店を後にしてエサ場の渋谷に地下鉄で戻ることにしました。
後はハンズにでも行って時間をつぶし、そして飲み仲間がいる店で
うだうだと時間をつぶすことにしました。

夜のトバリが落ちはじめる頃。
遠い水平線が消えて、ふかふかとした夜の闇に心を休めるとき
はるか雲海の上を音もなく流れ去る気流は
たゆみない宇宙の営みを告げています・・・・・・・・・・
(Mr・ロンリーがここで流れる、それもFPのやつが)
な〜んちゃってジェットストリーム。
いよいよ出撃の時間が始まろうとしています。

昼間見た店の印象とは別で、夜のその店の顔は
そうだな〜アクターで例えれば三国錬太郎さんかMrショーンコネリーといったおもむきか
音楽で言えば、ジェームズキャメロン監督の映画タイタニックが傾き始めた時
楽団員が甲板で演奏し始めたアイルランドの国歌 TheLastRoseOfSummer
これの五嶋みどりさんが奏でるバイオリン。
テクニカルなんだけれどもそれを感じさせない。
それはエリッククラプトンの冠詞「スローハンド」的バージョン。
ってな感じ。
昼にもまして重厚さをさらに漂わせたように見えたのである。
その重々しい扉を押し開き中に入ると、カウンターの中には
黒いベストに蝶ネクタイをきりっと結んだ
渋いマスターがいて、昼間見たマスターとはエライ感じが違うくみえました。
やっぱりまた着たなワカゾーという感じで、唇の端にちょっとばかりの
笑みを浮かべ挨拶らしきものをしてくれたマスターではありました。

カウンターの椅子に座ると間髪をいれずに
飲み物のオーダーを尋ねられました。
もちろん格好つけの僕はボーモアをロックで注文しました。
ボーモアが入った分厚いクリスタル製のグラスの中に浮かぶ
大ぶりのロックアイスは、そのクリスタルグラスにも負けない位いキラキラと輝いていて
注がれたボーモアの液体は氷にまとわりつくようにその接点が
ノルマンディーグリーンの輪に染まりました。
そそ、、そうです、いよいよ持って極上の時が始まる瞬間です。

ブ厚いカウンターの上をすべらせるように皮製のメニューを
マスターが差し出してくれました。
そのメニューを開くと昼のメニューとは打って変わって
洒落た前菜が書かれたものでした。
その中でなぜか俺の目を引いたメニューがコーンドタンでした。
僕ははそれに決めマスターに注文しました。
しばらくして出てきたその一皿は
鮮やかなサーモンピンクに、ちょっと滑らかそうな照りが入った
美味しそうな一皿でした。
そのコーンドタンの一枚を口に含むと
なんとも言えない軽いスパイスの香りが鼻に抜けます。
そしてその味と言えば塩加減といいアマさ加減といい、僕の味覚にバッチリです。
極上の牛タンの霜降り加減との組み立て方も素晴らしく
ボーモアのそれと合まって、とてもとても素敵な味わいとなりました。
そ〜だな ワインで例えればマリアージュって感じでした。

ここはガブガブ飲んで酔うお店ではないし
上質のお客を気取るには引け際が肝心。
で、軽く3杯ほど飲んでからこの店を後にしました。
う〜む我ながら渋い。ってか。

そういった感じの店を探しては入ってみるものの、自分イメージに合った
ここ以上の雰囲気を持つ店には東京広と言えども
そう出会うことはありませんでした。

しかしながら、どこの店にも、オッこれはという所は必ずあるもので
その良いとこ取りしたものがオレの店のコンセプトとなりました。
そのコンセプトとは「大人の隠れ家に美味しい物アリ。」です。
それがコーンドタンなどのメニューになっておるのだな。

そして自分の店を開くにあたり
絶対にこのコーンドタンをメニューに加えようと
試行錯誤しながらスパイスのミキシングやら
塩加減の組み立て方をいろいろやってみた結果。
最終的にはどんな料理にも言えることですが素材を厳選する事が大事。
そして、その持ち味を生かすような調理の仕方がもっとも大事です。
特にコーンドタンというシンプルな料理には
特に言える事とさらに実感したした次第でたどり着いた素材とは
前沢牛のタンでした。
その調理法とは最低でも40日間に及ぶ調味液への漬け込みと
最終行程であるボイル時の温度設定と時間の徹底的管理です。
アバウトな僕としては珍しく、この時ばかりは
温度計とタイマーとのにらめっこです。
さすがの宮本武蔵なオレでも、このコーンドタンをボイルするときは
いっさい他の仕事はしないことにしています。
とても長い話になってしまいましたが、そんな自慢の一品です。

という事で、バーボンでやっつけたい一品である。
土臭さがのどに引っかかるJDでやってください。





白カビで熟成させた自家製生ハムも自慢の一品





スキャンピーのアルフォルノ







イチゴのタルト







姉妹品に洋ナシのタルトもあるで。



みんなの大好きな果物イチゴを使ったタルトで、友人であるピーターパンのマスターから
かなりの影響とインスピレーションを得て作ったものだ。
ちなみにピーターパンのマスターは、盛岡で一番美味しいバゲットを作るパン職人であり
努力家(ヨイショッ)でもあるが、釣りの超大バカなのは周知の事実だ。
私の記憶が確かなら、岩手県で一番ドライフライフィッシングが
めちゃくちゃジョーズなひとです(太鼓判)。 

このドライフライフィッシングだが、フライラインのキャスティングがじょうずで
何十ヤード飛ばしただの、絶妙なカーブキャストで覆い被さった柳の木の下を
ドラックフリーで流せるといった、まったくもって実釣に関係ない
サーカス的テクニック偏重自称他称名人は結構いるんですが・・・・。
ピーターパンのマスターの場合、そのタックツした川読みの眼力は
フライフィッシングのテクニックと共に
誰にも真似の出来ないセンスがあり、フライフィッシングが
どうのこうの言う以前の動物的感覚のモノではある。
もはや獲物を狩るオロロンチョウのようだ。
なんでオロロンチョウかって、それは日本では数少ないトリでしょ。  
だからだよ。

そしてフライフィッシングの世界で、尺やまめを
シーズン中に一匹でも釣り上げるという事は
とてもミラクルな事であり、あまりの釣れなさで年々フライフィッシングから
遠ざかる人が増えていると言われて久しい。
かくいう私も、その筆頭軟弱フライマンの一人だ。
あまりの釣れなさ過ぎで、フライフィッシングに嫌気が差し
この釣りから遠のいた私としてはピーターパンのマスターから
おこぼれヤマメをちょいちょい頂いておりますだ ハイ。
そうするとだ、おれは他の鳥の獲物をちょいちょいと拝借するゴメか。 
 なさけねー。
まあ、騙されたと思って
 ピーターパンのマスターに頼みこみ、川をガイドしてもらいな。
きっと釣るという事の本質が見えて来るはずだ。
あらゆる釣りのジャンルを超えて勉強になるゼ。

というわけで ※ドウイウワケダ。
イチゴのタルトは12月から3月までの冬の季節限定と
なっております。

姉妹品にチーズタルトもあるで。
その又姉妹品にゴルゴンゾーラ ドルチェのチーズケーキも。




で、この夜のチーズケーキのうんちく話。
僕の小さい頃のおやつといえば、近所にあった駄菓子屋アサヌマのカキノタネ。
お袋が握ってくれた筋子が入ったオニギリ、スルメ、盛岡流お好み焼きなんて物ばかりで
どう見たって酒のみオヤジのおつまみみたいな物ばかりでした。
そんなだからイチゴがのった甘いバタークリーム(古い!)たっぷりの
ショートケーキなんてモンはダイッキライで
人の食いモンじゃないと思うくらい見るのもいやな食べ物でした。
それが22歳の頃まで続くのでした。
(いまだに生クリームのホイップを見ると食欲が減退)

東京に修行に出たその当時、昼過ぎのホンのチョットの息抜きの時間に
店の裏手にあるキャンドルという喫茶店
(本当はこちらの方が表通りある)に避難していました。
上京して、この店にちょくちょく行くようになり、とても勉強になったことは
何時の時でも今のメニューに満足することなく、つねに次の
商品開発を模索していて、留まる事の無いその営業姿勢です。

その喫茶店で出していたケーキの一つに、チーズケーキなるものがあって
その当時渋谷の町にブールミッシュ有りと言われていた時代で
有名なケーキ店でした。
そこからケーキを買ってきて、その喫茶店では出していたわけだが
売り切れそうになると、店長がその喫茶店に入り立てのアンちゃんに
ブールミッシュまで日に何回となく使い走りさせていました。

その日もケーキが足りなくなったようで、店長の一言で入り立てのアンちゃんが
例のように店を矢のように飛び出していきました。
そのアンちゃんが息を切らしながら戻ってくるのには、そう時間が掛かりませんでした。
店長がケーキの入っている箱から自分ちのトレイに移していた時ですが
何を思ったか店長が白い小さな三角形の豆腐みたいな物をトングで持ち上げ言いました。
「おごって上げるから、このブールミッシュのケーキ、菊地君一つ食べてみるかい」と。
初めて見るそのケーキは、なんの飾り気もなく、甘くもなさそうなかといって
うまくもなさそうな貧相な感じがした。
これなら食っても良いかなとケーキ嫌いな僕が一瞬思うまもなく
小皿にのったその小さな三角形の白い物体が、目の前に置かれました。

そして耳くそでもほじるような小さなスプーンを
手に渡され絶対に食わなければならない状況に
置かれたのはいうまでもありません。
エーイままよと口にしたその半切れの白い物体は
口の中でにゅるにゅると溶けていきました。
そして舌の上に残ったザラッとした物は
バターくさいクラッカーのような物で(当たり前か)
舌触りと言い、レモン臭いチーズ臭いエライ気色の悪い食いモンでした。

その店長が鼻を少し高くして言いました。
「どうだウマイだろこれがブールのチーズケーキだゾ!」と
心して食えよと言ったか言わないかは、忘れてしまいましたけどね。

当然ケーキ屋さんから買ってきて自分のお店に出すものだから
ほとんど儲けは無いわけで、つねずね儲け損なっていると感じていた店長が
チーズケーキを作り始めるのは時間の問題でした。
そうなると試作品が日に何個となく出来る訳で、当然その店の常連さんが
実験台になるの当然の成り行きです。

田舎から出てきたばかりの僕は、この喫茶店でツマハジキにされたくない一心で
毎日食いたくも無いチーズケーキを涙目で
(美味しくてこの田舎から出てきたばかりの若造が、涙を流して
食べていると勘違いしている店長でしたが。)食わされる羽目になるのでした。

そんなことが長く続くと不思議なモンで、僕の体が異常になって来たのか
チーズケーキにだけは好意的反応を示すようになり、涙も流れなくなりしまいには
一日一回チーズケーキを食さなければならないジャンキーとなってしまいました。

そうなるとすぐに熱くなってしまう僕の性格上
「あそこのチーズケーキは美味い」と言われると東奔し
その喫茶店に来ているお客さんが
その出されたチーズケーキを食べながら
どこそこの店のチーズケーキはここのよりウマイなどと
不謹慎なひそひそ話しを小耳に挟んだ日にゃ西走し
赤坂のしろたえ、紀伊国屋の輸入チーズケーキ
六本木のユーラシアン、新宿のグローリエッテなど
人づてに聞き食い歩く休日が続くのでした。

そんなある日、午後のチョットの休み時間に厨房を抜け出し
行き付けのキャンドルに行きホッと一息。
カウンターの隅でキリマンジャロをすすりながら
今晩の飲み会話を適当にアイズチを打って聞いていた僕の耳に
「東京で一美味しいチーズケーキの店はどこそこだよな」だなんてことを
言い合っているカップルの声が飛び込んできました。
当然のごとく僕は自分の耳をダンボのように大きくして
飲み会の話をそっちのけにし、聞き入っていました。
で、女の子はやはり、ここの土地柄からか「ブールミッシュが最高よね」と言ったが
彼氏はきれいな東京弁で「世田谷のル・ピエールが
僕が食べたうちでは一番美味いチーズケーキだな」
てなような事を語った。(世田谷って言ったって広いもんな
どこのあたりなんだろと僕は思った)
そうしたら女の子がタミングよく「世田谷のどの辺にあるの?
ピエールっていう店は」と言った。
(ヨシヨシと僕は思った)
彼氏が「ここから井の頭線で三つ目の池の上の駅から
少し歩いたとこだよ」と言った。
(ナヌ、池の上!俺が住んでる寮のすぐそばじゃね〜か)
女の子は「食べてみた〜い」と甘えた声で言った。
(僕も食べてみた〜い低い声でいいたかった)
彼氏が「ジャア行ってみようか」と言って、そのカップルは席を立った。
僕も仕込みに入る時間が迫ってきたので席を立った。
ドアーを開ける俺の後方で「ツバキだぞ〜」という声がした。

次の日の夕方、少しばかりの休憩時間を使い
大急ぎで池の上に行きピエールのチーズケーキを買いに走った。
その店は、よっぽど注意しなきゃ気がつかない小さなたたずまいだった。
店の中の小さなガラスケースには、2,3種類の貧相なケーキしかなかった。
その中でもひときは小さくたたずまっていたのが「ピエールのチーズケーキ」だった。
それを2個買って急いで渋谷に戻り、店の休憩室で食った。
頬が緩んだ。
そんなピエールの美味しいチーズケーキをイメージして、ようやく出来上がったのが
夜のチーズケーキです。





チョコレートフォンデュ

/

わが店のフォンデュ料理のオオトリを勤めるのがこれ
デザートって感覚じゃないね チョコレートフォンデュ。
シチュエーションとしては、やはりホットな二人が、シャンパンを飲みながら
楽しい会話で盛り上がるってのが、絵になるな。 
※甘党の私としては一人で盛り上がりながら食べてますけど。
サミシ〜。
トローリと、とろけたチョコレートにイチゴや
パイナップルのフルーツやマシュマロ、バゲットなどを
生クリームかブランデー、アーモンドをプラス味にして食べるんです。 
オシャレです。

このチョコレートフォンデュは、アルコールを飲まなくても
気分が高揚してくるのは、アツアツのチョコレートのせいでしょうか。
とてもナチュラルハイになる料理なことは確かです。
バレンタイン、ホワイトデーはもちろんの事、バースデイなどのお祝いに
コレでやったらあなたの株はストップ高です。


なんたって華やかなシャンパンが合う、ってもんじゃなく格好イイ。
酸味の利いたフルーツと甘いチョコレートに合うシャンパンは
ル・メニル・シュール・オジェのブランドブランがいい。
その中でもクリュッグのヴィンテージものがいいでしょう。
って、軽く言っちゃいましたけど、丸が一つ多いですよね。
お相手の品格と財布に相談して、それなりのシャンパンをオーダーしましょう。
最近のお気に入りでは、チュルジが、俺的cp値がたかいです。
なんたってレコマニュなんだよ、コレ。

それと、こやつには琉球泡盛「千年の響」なんていう、古酒なんかもいいねっ。
スコッチウイスキーの炭酸割なんてのもなかなか合いやすゼ、だんな。

キャラメルフォンデュってのもあるよ。






麺好きシェフが、オヤジの為に作るスパゲティーと
ソースに激しくこだわるパスタ。


カキとパンチェッタのスパゲティー、発酵バターで。









ぷりぷり小エビのフジッリ、コーンクリームソースで。








スモークサーモンのパスタ、生クリームのソース、ウオッカで締めて。









ヴェルミチェッリのアッラ ペスカトーラ、トマトスープで。










カルボナーラの語源、炭の粉はかけないのが当店の流儀。















/
ムール貝のスパゲティー、サルサビアンコ。












鴨のボラチョレッタ、パスタとともに

 2時間前までにご予約いただければデチッとした生パスタも打ちます。






鴨鍋

冬一番、夜の味覚「鴨すき」
渡りのマガモならではのヘモグロビンたっぷりの
レバーを連想する暗紅色の肉。
脂は敵から身を守るため太ってられないのと
岩手の雪事情で餌が取れず、ほとんど乗ってないが...
肉のうま味の濃厚さは例えようがない。
コレには熱々のネギもこれまたばっちり。
なんたってカモネギって言うくらいだからね。
それと喘息とかアトピーにも効くっていうくらいだから
ミネラルとかビタミンAが豊富なんだね。
最後にウドンを入れて〆とする。
さぁ〜てと今夜も頑張るか。。
2008/2/24



真鱒の冷薫製



「ママスのカルパッチョ」
川にヤマメっていう雑魚がいるじゃん。
そのヤマメのメスが海に下って鮭みたいな体になり
川に遡上しサクラマスとなって
川に残っていたオスと一緒に秋に産卵するわけだが...
サクラマス一匹に30センチオーバーのオスが3匹みたいな乱交パ―ティー。
なのだが、20センチくらいのチビヤモメのオス
サクラマスの放卵の一瞬を狙って
シレっと参加しているちゅうのが笑える。
その魚、海にいる鮭みたいな雌ヤマメをママスというんだな。
その反面オスは、メスが海から上ってくるまで川で一人で暮らしているから「ヤモメ暮らし」
なまってヤマメという名前にった。

鮭と違って回帰率が悪いので稚魚放流はされて無い。
自然の産卵だけに頼っているので、その数は至って少ない。
なので早春の真鱒は築地で2万円の値が付く貴重な食材。
その身を口の中に入れると
フワッとするとともにしなやかさもある。
それを追うように鮭鱒科特有の香りが鼻に抜け
身の甘さが舌の上といわずのどちんこまでにも、まとわりつく。

感の悪いお前らにも分かりやすいように乳房に例えてやると
まぁ、人にもよるだろうけど
10代の青くゴリゴリした乳房ではないし
かと言って、40代の子供がいる人妻の腐る寸前の
熟成された乳房でもない
ましてや、子供を身ごもっている女性の乳房でもない
そうだな30代前半の女性
それも結婚をを控えている、希望に満ち溢れているおっぱい。
と例えたが、もっと分かりやすく言うと
舌で触った瞬間は柔らかいのだけれども
その身を親指と小指に力を入れ揉みしだくように手のひらで包むと
モッチリとした感覚が手のひらに返ってくる。
ママスの生とはそんな感じだ。
たぶん。。。
2016.5.11



カルボナーラ




いちばん売れてるパスタ、それが「カルボナーラ」
「どうして美味いの」って聞かれます。
どうしてって、原材料ケチってませんから、ただそれだけ。
「盛岡で一番うまいカルボナーラ」とも、たま〜に言われます。
その一言が40周年に向かっての私の原動力になりまっす。








ワタリガニのトマトクリームスパゲティー

カルボナーラの陰に隠れて、地味に人気なKIKI-HOUSEのパスタがコレ。
1パイでもじゅうぶん美味いワタリガニなんだけれども
これを2ハイ使ってワイン蒸しにすると甘みがドーンと出る。
そこにトマトと生クリームを加えながら煮込むと...
カニ味噌の濃厚な味とワタリガニの身の甘さが加わった濃縮感が味わえる。

滋味タップリと吸ったパスタは伸びないうちに、先にやっつける。
そして、ワタリガニの身は後からじっくりとしゃぶるのだ。

なんの蟹でもそーなんだけれども、その身をホジホジしながら無言で食べるのは
身の少ないワタリガニでも同じだ。
おもしろい事に、各部位で味が微妙に変わるワタリガニは余計に楽しめる。

だからワインを合わせて食べるなんて、そんなヒマは無い。
食べ終わった後、口中のワタリガニの余韻を味わいながら
スミノフのストレートをチビリとやるのが俺の流儀。

2017.1.23









オムライスが嫌いだ。

僕が二十歳過ぎた頃、駒場東大グランドの裏にある古びたしもたや風の家。
部屋の窓を開けると、東横線の線路がすぐ目の前にあり
午前4時始発の電車が、俺の枕を揺らす。...
歩くと廊下がギシギシいう寮に、ゲジゲジやゴキブリと一緒に住んでいた。
そこはホテル ニューグランド直系、渋谷で一番古いレストラン「サバラン」の古寮だ。

そのレストランで朝の9時から夜の11時まで、みっちりと修行してたわけだが
修行完了後、新宿ツバキハウスとかブラックボックスで酒とか飲んでの踊りまくり。
AM4時ころ店に戻って、休憩室のコタツで寝る。
モチロン夏でも電気が入ってないコタツで寝る
みたいな生活。
だからトキオ在住中、ぐっすりと寝たという記憶は無い。
まさに真剣に働き、真剣に遊んだ。
そのモチベーションはどこから来るの?って
それは近い将来、自分の店を持ちたいと一途な思いだな。

だから、はやくフライパンを扱えるポジションになりたいと頑張った。
でも先輩コックは、自分の地位を犯すものにワザを教えないのがあたりまえ
というか、有能な弟子は蹴落とす、という方向に向かう。
意欲満々な後輩には、揚げ油をヒョイと投げ、いじめに入る先輩もいる。
でもチョー賢いオイラは、あたり障りなくヒッソリと先輩たちの立ち振る舞いから手さばきまで、微に入り細に入り
まるで豹が木陰から獲物を捕えるよう
気配を消して凝視するみたいな感じだが
食い入るように見ないで
先輩方の動きを一瞬で目に焼き付け吸収していった。
そしてデシャップ前から、アコガレのストーブ前に2年での異例昇進。

でストーブ前、コレだけはやりたくね〜なぁと
思ったのがオムライス。
入店して厨房の中で最初に目に止まったのが
直径が50センチ以上もある巨大フライパン。
何に使うのかな?なんて見ていた巨大フライパン。
これがあとあと、見るのも嫌になった巨大フライパン。

店のメニューには無かったのだが
一週間に一度は必ずオーダーが入るのがオムライス14人前。
名前は忘れてしまったが近くの大きな寿司屋から
見習い小僧達が、まかないのオムライスを取りに来る。
14人前って、ご飯の量もハンパない。
ガスコンロの炎全開、巨大フライパンで一気呵成に
ご飯を炒める。
もう、腹筋、背筋は使うし手首は崩壊寸前。

もう一人のストーブ前コックが別のフライパンで炒めた鶏肉とオニオンそして
、マッシュルームとグリンピースを巨大フライパンに投入されると更にキツさは増しす。
それでなくても暑い40度越え普通の厨房の中、もう汗だくだくでフライパンと格闘。
そして卵32個を溶く。
たって32個だぜ。
それを溶くだけで手首が痛たくなるっちゅうの。
それをクルクルと卵の薄焼きで巻いてデミグラスソースを掛け
出来上がったのがオムライス。

何回も、まかないのオムライスを取りに来る小僧に
来週はオーダー来ませんようにって祈りながら持たせる。

だから自分が店を持った38年前、ぜったいオムライスはやらないと心に決めた。
でも、オムライスっていうやつは、ナポリタンもそうなんだけど無性に喰いたくなる時がある。
そーゆー時は自分の食べる分だけを、少さいフライパンで作る
だから苦にもならず、作って食べるオムライス。

そのオムライス、第二世代に突入した。
クルクルっと巻くオムライスじゃなく
ドロッとした卵が乗ったやつ。

鮎釣りに行く途中、オムライスが売りの横浜ナンチャラていう
ドロッとしたオムライスをウリにした店が十数年まえにオープンした。
その店の横を通って帰るのだが、まいど大入りなので気になってはいた。

いつもはオニギリかホットサンドを持って鮎釣りに行くのだが
その日にかぎってホットサンドをサンドマシーンにセットしたまま家に置き忘れた。
なので、その気になっていた店のオムライスを食べることにし

それは予想通り、ベチャっとしたケチャップライスにドロッとした卵が。
まっ、それはそれで有りなんだが俺的には好きくない。
俺が作るオムライスのケチャップライスは、パラパラとドライに仕上げるのが流儀だ。

なので、そこで僕は思っった。
中身はドライに仕上げ、掛ける卵はフワトロにしたら美味いんじゃあるまいかと。
昼食のベチャドロのオムライスの口直しに
夜の賄いにフワトロパラリのオムライスを作ってみる。
昔ながらの巻き巻きの卵のオムライスより
フワトロの卵ににした方が、よけいにパラパラケチャップライスが引き立ったのだ。
弟子にも食べさしたら、無言で一気食い。
それを親しいお客様に出したら「メニューにしないのはもったいない」って言われた。

あれから十数年たち、布団の中ででフワトロパラリのオムライスを喰っている自分を夢の中で俯瞰した。
朝、夢から覚める寸前、無性に喰いたくなった。
そしって、もっと美味くならないかと朝起きる前の布団の中
朦朧とした頭の中で考えた。
で、考えがまとまって目が覚めた。
ケチャップじゃなくトマトソースで、ご飯に味付けてぇの
フワトロの卵にデミグラスソースを飾ったらと。

さっそく自分のランチに作ってみた。
どう考えたって旨いにきまってるよね〜
なのでメニューの片隅に、昨日のっけてみたのがコレ
「チーズオムライス」
はたして、賄い食から一軍昇格なるのか。。





岩洞湖のワカサギ


岩洞湖のオイルサーディン その二

冬は遊ぶのに忙しい
じゃなくて、仕入れに忙しい。

...

ようやく時代が追いついて来た今
店の攻撃的メニューとなったジビエ料理。
キジ、マガモ、山鳩にヒヨドリそして
売買禁止鳥のヤマドリ。
これは商品にしてしまうと、お縄頂戴になってしまうので
「お振舞い」用として獲る。

ジビエって野禽類のことをいう
野禽っていうと小鳥主体で四足動物は入らない
せいぜい入れれるのは野ウサギまでくらいかな。
鹿とか熊、イノシシはジビエって言わないからね。
まぁ、うちではマガモとかキジと物々交換したイノシシや鹿
クマも出してますけどね。
だから一年分の食材を冬の狩猟期間中にストックしなければならい
遊びじゃないんだよ〜
仕入れだよ。
コレを真空パックにしてマイナス25度で保存ずると
味も、そ〜落ちないないで一年中提供することができる。

それと同時に岩洞湖のワカサギ釣りが一月中旬ころから解禁となる
これもまた狩猟と並行して行かなければならんのだ。

ここの水深20mより深いとこに居るワカサギは
「ピンクワカサギ」といって透きとおるように桃色に染まった魚体は
岩洞湖の中でも特別に んまいっ! 
それは、ほんのりと甘く口腔から鼻に抜ける香りもいい。
淡水魚のくせに生臭みが、まったく無い。
腹の苦みは若草を連想させられるかほり。

それは淡水性の極小オキアミが極寒の岩洞湖ならでわの条件下で発生する
ひらたくいえば「エビ」
コレをタラフク喰っているワカサギの体は
薄いピンク色に染まり脂がのるのだよ。

エビが大量発生すると、岩洞湖のワカサギは釣れなくなる。
いわゆる喰い渋りちゅうやつ
へたすりゃ数匹の釣果で終わることもある。
それはエタイの知れない釣り針に大きいエサと
それから伝わる殺気。
そんなもん喰うよりも
大量に浮遊しているオキアミを喰っている方がいいからね。
それと、生活排水が一切入らないから美味いのかもしれんな。

ワカサギと言えば、から揚げテンプラ、そして南蛮漬けで喰うのが定番。
岩洞湖のワカサギのデカいやつは、メザシにしてもいい。
当店では「ワカサギのピザ」ちゅうので料理します。
魚臭さまったくない岩洞湖のワカサギならでわのピザ
口いっぱいに堪能できる18匹入りだからね。
リピーター続出ですわ。
とにかくめちゃくちゃ美味いのは保障する。

もう一つの料理がコレ
オイルサーディンってあるじゃない?
ノルウエ―産のイワシの油漬けっていうヤツ。
平べったい缶をのプルトップをシュルシュルと開けると
ゴロンゴロンと2,3匹入ってるヤツ。
あれはどうもねぇ〜
繊細な舌を持つ大和民族には合いませんね。
オオザッパすぎて。
臭いし。

チョイ昔「TANGO SARDINES IN OIL」ちゅうのを
食材展で見つけたんだわ
缶のフタにはそー書いてあった
ま、平たく言うと 丹後地方で捕れたイワシを油に漬けた缶詰だな
丹後ちゅうと京都の北部、日本海に突き出ている半島の事か。
黙って缶のフタに「丹後イワシの綿実油漬け」って書きゃいいものを
下手な英語で表記するもんだから
あの、おいしくないノルウエ―産のオイルサーディンを
連想しちゃうぢゃないか。

ちゅう事で、サンプルにと一缶もらって来たわけ。
期待しないでプルトップをシュルシュルっと引っ張り上げると
可愛らしいイワシちゃんがキレイに20匹マエナライしてるわけ
見た目も美しいので期待を大にして、お口に一匹
あらまっ、繊細なお味で「はんなりどすぇ〜」
やっぱり大和民族が作ると一味も二味も違いますのんえ〜

そこで賢いオイラは思ったのだ。
岩洞湖のはんなりと甘いワカサギをオイルサーディンに仕立てみようかと
家の庭に生えている北限の月桂樹の葉を一枚と鷹の爪を3輪入れて味付け
さっそく「岩洞湖オイル―ディンを作ってみたら
これがまた美味いのなのんって
タンゴサーディンより、うまいんでないかい。

俺的にはカリッと焼きあげたガーリックトーストの上にコレを乗せて喰うと
あらま、幸せ感がお口に広がります。
それをキリっと冷やしたシャンパンで流し込むと昇天してしまいます。

ここはレモンをギュッと絞ってパクリとやりたいところだが
それをやっちゃあ、いけないよ。
レモンは生臭みをマスキングするために使うものだから必要ないって
っていうか、レモンを掛けたその瞬間
この料理がオジャンになってしまいやす。

それで、食べ尽くしたワカサギのオイルサーディン
残ったオイルは捨てちゃぁいけないよ。
岩洞湖のワカサギのダシが効きすぎて美味いオイルになっているからね。
アリぺロで決めるとニンニクに負けない美味しさに卒倒するはんで、

2018/4/11




スペアリブ



30年まえくらいかなぁ〜、いや もっとだな〜
そんな昔によく来てくれてたAくん、ご来店。
君といっても好い加減な歳の初老オヤジだから
今はAさんだね。

...

最初は「なんか親しそうに話かけてくる、おっちゃんやなぁ」と思っていたが
そのお客様とお話しをしていくとだんだんと
40年前開店した頃の思い出が蘇ってきた
遅ればせながら俺は「あ〜 そういえば」と
心の中で思ったわけ
つくづく思った。
時は残酷なもので、その当時の面影はまったくといって無い
いや、少々はあるか
てか、相手も俺の事ソー思っているんだろうけど。

近頃そんなお客様が、おいでになられるので
俺の老化した脳みそのしわにはちょうどいい刺激だ

と言うわけで、30分くらいかなぁ
ご注文のヱビスを飲みながら話し込むわけだ。
モチロン俺も飲みながら
そして一段落したところでオモムロに注文戴いたのがコレ
スペアリブ
それも3枚のオーダー
お一人さまで2枚のオーダーはたまにいるのだけれども
3枚のオーダーは、さすがに居ない。
過去にプロレスラー体系の大学時代の後輩が一人いるだけ。
つまり後にも先にも3枚オーダーは二人目という事だ、Aさん。

このスペアリブ
食べたお客様の評価はキッパリ二つに分かれる。
強烈過ぎて喰えないというお客様と
こんなに旨いスペアリブは喰った事が無いと言う
お客様に二分する。

大体ねぇ、俺が感じるままに言っちゃうと
生きて行く上では何の問題は無いが
何て言うか人生を楽しんでないみたいな人とか
覇気が無さそうな人は
スペアリブのパワーに負けるのか、一口食べて顔をしかめる。

バシバシッと精力が沸きまくり
なおかつ公私ともに充実しきっていて
エネルギッシュな人が、スペアリブを一口喰うと
唇をスペアリブの脂で光らせながら獲物をくわえた
野獣的な射るような目をする。
それはトムソンガゼルを獲ったチーターのようにも見える。

そうAさん、いまは100余名を率いるベンチャー企業のトップだからねぇ〜。
ビールジョッキ片手にかる〜く平らげていただいたAさん
ホントにすんばらしいぃねぇ〜あなたは
俺もうれしいよ。。

まぁヒトの好みは色々だから断言はできないのだがね、、、
でも軽い気持ちでのスペアリブのオーダーは
止めたほうがいいかもネ。

このスペアリブをお出しする時
どの部位が当たるかはその時のタイミングだが、
チーターなスペアリバーを観察すると
軟骨部分に当たった野獣は
頬を膨らませボリボリと音を立てて喰らう
肋骨部分に当たった野獣は
嬉しそうに肋骨を片手に持ちながらキレイにむしりかじり
白い骨だけにしてウレシそうにいつまでもしゃぶっているん。

俺のお袋は93歳なのだが「スペアリブ持ってこい」という時は
心身ともシャンとして体調バッチリの時に限ってだ。
俺も体調イイ時にスペアリブを喰いたくなるので
間違いないだろう。

どぉ? 一本、いってみる?







本州鹿のカチャトーレ



ヱビスビール飲みながら鹿料理最後の「鹿のカチャトーレ」
今が旬の甘いネギも一緒に焼いて食べる「幸せだなぁ〜」と思う瞬間。っと言う事で
狩猟によって捕獲された野生鳥獣魚いわゆる「ジビエ」料理お出ししてます。
ヱビスあります。





キジのバカボン


雉肉を昆布締めにし
これをクルクルと巻いたら
「雉のバカボン」の出来上がり。
ちゅうことは、オイラはバカボンのパパなのだ。
バカボンのパパは、ご近所の造り酒屋の...
「ふなしぼり」でやりたいのだ。



三陸ヒラメのポーピエット


ヒラメのムースをヒラメのフィレで包みポワレ
秋のフルーツをソテーして添えちゃったりして

ミュスカデ シュールリーをキリっと冷やし
グビグビとやちゃいますか

2018/5/6



黒毛和牛のステーキ


肉を焼いて40年
ようやく俺の理想の焼きに行きついたのが
この特注ステーキ用のフライパン
それも超極厚のステーキパンだ。

日本料理の板長と仲良くしてもらっているんだけど
その人が「まず、食い比べて見ろ」と、言うんで
酒を飲む前に、別々のゲタに盛った刺身を喰ってみた。

見た目はまったく同じ刺身の盛り合わせだ。
まずは右のゲタに載った刺身から喰ってみる。
普通に美味いじゃん。
そいで、おんなじ盛りの左のゲタの赤身のマグロをほお張る。
「ん?コリャ右のゲタのマグロと違うぞ」となったわけ
「な〜んだ、大間で獲れたマグロと小泊で獲れたマグロの違いか」
と、元マグラーのオイラが板長にゆったら
「どっちも同じマグロだ」と言った。
「違いがわからねぇのか」とお叱りを受けた。
わかりましぇ〜んと降参する。
で、この違いはなんなの?って聞いたら
包丁の違いなんだって。

そう言われりゃ左のゲタの刺身は
切り口が鏡みたいに光り輝いて綺麗だし
右のゲタに盛られたマグロの赤身の切り口はボサっとしていて
言われれば、どことなく潰れた感が漂う。
使ったのがこの2丁と見せてもっらた包丁
右のゲタに盛った刺身は、どこの家庭にもあるような
普通のステンレス製の文化包丁。
左のゲタに盛られた刺身は、たぶん見た目での判断だけど
日立の青紙鋼で作られた蛸引き庖丁とみた。

つまり切れ味が悪いステンレス包丁で切り分けると
細胞を押し潰すような切り分けになっちゃうので、うま味が流れ出す。
また口に、ほうばった時の食感にキレが無い。
それに対し切れ味抜群の包丁でサクから切り身を切り分けると
魚の細胞を壊すことなくスパッと切り落とすことで
細胞内のうま味成分が流れ落ちる量も少ないし
言ってみれば、口に入れた時の食感はコクがあるのにキレがあるちゅう
感じかな。
 
オイラも調理師なので包丁はモチロンこだわるのだが
洋食屋なんで、フライパンには更に激しくこだわるのだ。
一枚のフライパンで何でもこなすちゅうのはカッコいいのだけれども
理にはかなっていない。
包丁と同じで調理する材料の種類と同じくらいフライパンもいるものだ。

で、渋谷のレストラン SABALANでの修行時代
ステーキの焼き方はってぇと
二重になったバーナー全開で自重750gのフライパンを
ガスの炎で包むように肉を焼いていた。
自分の店を持つった時 多少こだわって
自重1.3sの、おフランス製の当時としては
ぶ厚いフライパンを買い揃えた。
重量は約倍になるので、蓄熱量が増えた分
その肉の焼き上がりは格段に違った。

開店からしばらくして、お客様にはイイお値段の和牛を食べて戴くのだからと
もっとこだわって南部鉄器のぶ厚い2.2sフライパンを購入した。
これで焼いたらヒジョーに美味くなった。
なので、これで40年ちかく焼いている。
が、肉の表面の焼き具合がちょと甘いなと思う今日この頃。
こーゆーときはネットで調べてみる
12o厚の鉄板で焼くと異次元の焼き具合になるとあった。

それは、べらぼうにお値段がお高くて美味しいステーキを喰わせる
高級鉄板焼きの店の焼きカウンターには
この12oの鉄板を使用してるのだそうだ。
ステーキの表面はカリッと焼け、中はジューシーみたいな
つまり鉄板が厚ければ厚いほど、肉を鉄板に置いた瞬間
分厚い鉄板の蓄熱効果により、鉄板の表面温度が下がらない
だからそのままの温度で焼けるのでタンパク質の熱変質が無い。
そして蓄熱効果による遠赤外線で中まで素早く火が通るちゅうことだな。

この遠赤外線っていう言葉にオイラはひじょうに弱い。
おととしはマツタケの豊作の年だったので
店で「七輪でマツタケパーティー」っていうイベントやった。
七輪を20oの板の上にのせてテーブルに置き
思い思いにマツタケを焼いて食べてもらった。
そんな宴、みなさまマツタケを存分に味わったようなので
置き板ごと七輪をテーブルから持ち上げ撤収したら
なんと、テーブルの天板が七輪の輪郭で炭化していたのだ。
つまり炭の発する遠赤外線で、七輪の底と置き板を通過し
テーブルの天板が、七輪の底の形で炭化してしまったのだ。
恐るべし遠赤外線浸透力。
そー言えば、あの帝国ホテルの村上信夫さんが
肉を焼くのは、備長の堅炭の置き炭がいい言っていたのも
なるほどとうなずける事件だった。
この事が頭の隅にあって、
遠赤外線でステーキを焼いたら美味いだろうなって
この時から、うすうす思いはじめたってわけだ。

それに冷蔵庫から取り出した肉は、ふつう1時間前に取り出し
室温に戻しておくのが定説。
それは、焼いた時に表面だけが焼けて
中心部は生(レアーじゃないよ)だったりするからなのだが
でもそれは、黒毛和牛には言い当てはまらない。
霜降りの加減が強い黒毛和牛は、常温に戻さずに手早く焼くのがいいのだ
だって常温に置くと肉の上質な脂身が溶けだし
それと一緒に旨みも逃がしてしまうからだ。
そんな冷たい黒毛和牛を焼くには、遠赤外線を強く発射する
ぶ厚いフライパンが必要、炎のムラが多少あってもその分厚さゆえの
蓄熱量が多いのでムラ無く一気に肉の表面を焼ける
そして備長炭を超えた速攻遠赤外線が期待でき中までしっかり熱が入る。

で、厚さ12oのフライパンはとネットで調べるも
そんなもの、ありません。
なので鉄板制作専門店に尋ねてみると、特注で作れば何とかゆう話し。
そこで鉄板の厚さはといろいろ聞いてみると
過去に注文受けた鉄板焼き用のものはやっぱり12oが主流のようで
ステーキの鉄板焼きにはスペシャルな厚さだった。
じゃあってことで12oの鉄板で作るフライパンをオーダーした。
次の日フライパンサイズの内合わせの話の中で
16o厚の鉄板もあるよとの事。
でも焼くまでの温度を上げるに相当時間が掛かると言われた。
「う〜ん」と生返事。
ここでは、だまって鉄板焼き専門店ご用達の12oで作る事にした。

が、
鮎釣りシーズンの真最中だったのだが
いつもなら頭の中には鮎が群れをなして泳いでいる。
頭の中はステーキパンの事でイッパイだった。
鮎釣りしながら、あ〜でもないこ〜でもないと
さんざん迷いに迷ったあげく、肉を焼ける温度になるまで
掛かる時間が比較的早い12oの鉄板を取るよりも
この温度上昇の時間が掛かりまくるが
遠赤外線効果爆大の16oの鉄板方を取ることにした。
だって家庭用のコンロは4000kcal
対してうちの店で使っているコンロは12000kcal
たぶん鉄板屋さんは、家庭コンロを
イメージして言ってるんじゃないかと思ったし。
「ほんとにいんですか?」と鉄板屋に念を押されたが
そこは、キッパリと「早く焼きあがる時間より美味しさを取る」と
宣言したのだ.
この16oは、今流行りのいわて短角牛とか
オージービーフなどの赤身が多い肉には焼くのに細心の火加減がいる。
この超極厚フライパンで、今までの感覚で赤身の肉を焼くと
あっと言う間に火が通り、ただただ肉が硬くなるだけだから。
ジビエのたぐいの肉はもちろんだけど
こーゆー肉質が硬い肉の調理は
フライパンで焼くより、お湯に漬けたりする低温調理法がいい。
それに対して黒毛和牛は触っている手の温度だけで
肉の脂身が溶け、いっしょに旨みも逃がしてしまうから
低温調理法は適さないっていうか、低温調理している段階で
流失する肉汁がもったいない。
なので、この16oのフライパンで一気に肉の表面を焼き固めるのがいい。
この超極厚フライパン調理法は
サシが入ったやわやわな肉質の黒毛和牛に当てはまる焼き方かもね
てなわけで、たかが肉を焼くちゅうことに激しくこだわった結果が
厚さ16oの鉄板。
と言うわけで、ただ焼けばいいと思えるステーキだが
美味しく焼くのにこだわれば
黒毛和牛を100枚は焼いてみなけりゃ分からない事がある。
家でこの黒毛和牛を食べる場合はなんだけど
家庭でステーキを焼くにはハードルが高すぎるので
薄く切っててスキ焼きか、シャブシャブで食べる方が間違いないかな。
ギリギリで厚さ5oくらいまでの焼肉だな。
なのでお高い黒毛和牛のステーキは
熟練のコックさんいる店で食べるのが間違いないおいしい食べ方と断言。

で、待つこと10日、手元に来た30センチ四方の角型フライパン
重すぎます。
気合を入れて持ち上げないと腰にピキっときます。
それはキッチンスケールで計ってみる気もおきないくらい。
だって2kgまでしかはかれないんだもん。
そこで釣りのとき使うデジタルスケールを持ち出します
それにしても重い
吊り下げて計ってみるとナント14kgオーバー
笑っちゃいます。
さっそく油馴染みの作業に入ります。
分厚いこの鉄板、黒皮も分厚い。
この黒皮は剥ぎません。
そのまま生かして、油馴染みの作業に入ります。

肉焼き温度260度になるまで、ガスコンロダブル全開で8分
思ってたより時間が掛からないんだな
さすが二重バーナーのプロストーブ
これが家庭で使っているコンロだと単純に計算して24分掛かるけど
ヒートロスを考えると30分以上は掛かるだろうし
たぶんコンロも一緒に焼けてしまうんじゃまいか
ヘタこいたら火災の原因になるかもなるかもだ。

最初に油馴染み作業に入ります。
鉄板温度を300度まで上げ空焼きし
鉄板に付いている機械油などの不純物を焼き切ります
そして水洗いをしてから、250度まで温度を上げて
捨て油を流し込みます。
煙がボウボウと上がるので、火が付かないように慎重に油を回し
油の焼き被膜を黒皮の上に更に作って水洗い。
次は200度まで温度を上げ野菜を炒め焼き慣らしを3回
これで鉄板の表面に油の膜が形成されたはず。

そしていよいよ黒毛和牛のステーキ焼きに入ります。
まずはフライパンの温度を250度まで上げます。
かるく油を引き、すぐさまその油を素早くふき取り肉を載せます。
普通のフライパンと違ってジュっと言う音が出ません。
一気に肉の表面を焼き固めるので、汁が出てこない
なので音が出ません。笑っちゃいます。

フライパンの重量ゆえの蓄熱量を考え、焼く時間に神経をとがらせ
ミートフォークから伝わる感覚だけをたよりに
肉をひっくり返すタイミングをはかります。
そしてひっくり返したその瞬間、肉の表面の焼き上がり具合
その色 すんばらしいぃ〜 の一言のみ。
僕が求めていたそのものです。
今までにないサーロインステーキが焼きあがったちゅうわけだ。
ミートナイフをこんがり焼けた肉面に差し込み切ってみます。
その断面、焼き過ぎかなと思ったが、十数秒後には
中心部から赤身が差し広がっていきます。

さてステーキの焼きなんけど、レア・ミディアム・ウエルダンの三つがあるけど
中にはミディアムレアと細かいこと言う人もいて
ほとんど生状態の焼き?からウエルダンウエルダンまで12種類の細分化した焼き方もあるそうだ。
が、当店は焼き方は聞きません。
その時の肉の状態をみてベリーベストな焼き方でご提供いたしますのよ。
目指すのは、あくまでも火が肉の中心部まで入ったレアーをめざしています。
ほとんどの人のステーキのレアってのは表面だけ焼き中は生と思っていらっしゃるけど
違うんだよね〜
内部は55度程度まで火を通して焼いている肉をレアーって言うんだよ。
まぁ、いろんなトコでステーキを食べてみるんだが
レアーを注文するとほとんどは表面はきれいに焼けているが中心に火が通ってない生状態
だから、やたらと肉汁が多い。
レアは、中身の見た目が赤かったとしても中まで「火がチャンと入っている状態」なのだが
なかなかそーゆー風な焼き方のレアーに会えない。

じつはこの赤い肉汁の正体は血ではなく
正しくは「ミオグロビン」色素タンパク質の一種なのだそうです。
牛の筋肉の中に含まれている水分と
タンパク質の一種であるミオグラビンが
入り混じった状態で溶け出してくると赤い血液そっくりに見えるのね。
それに54度から57度くらいの温度を与えるとロゼ色に仕上がり
無駄に肉汁がでないのだよ。(画像参照)
それと肉の中心部にある脂に火を通し溶かす箏によって
脂の甘みと触感が良くなるのだよ
でも、熱を加えすぎると肉のタンパク質が凝固して堅くなってしまう
そのギリギリの境い目まで火を入れる順正レアー焼きがコックの仕事。

だから、高温に熱したフライパンでステーキの両面を
しっかりと焼き、火からフライパンを下ろし 肉を休ませるっていう
工程を踏み中心部まで火を通す工程をふむのが普通だが
火から下ろして休ませたステーキの情けないトコは
肉の表面を高温で焼いて出来たカリッという触感がクタッとした
食感になってしまうことだ。

そこで登場する特注14kg16mmのフライパンでは、その休ませるって言う工程がいらないのだよ
なぜかっていうと、分厚い鉄板から放射される遠赤外線によって
瞬時に肉の中心部に熱を加える事が出来るからなのよ
だからぶ厚いフライパンで一気に中心部まで火を入れたレアー焼きの肉は
表面はパリッとして中芯部はほんのりジューシーに焼き上がるのだよ

さらに言うと、食中毒の原因であるバイ菌が死滅する温度は60℃前後で
肉の蛋白質の変質が起きて硬くなるのが約65℃
このわずかな温度差を巧みに利用してレアーに焼き上げるって事。
まあ、黒毛和牛は色んなお薬を処方されているので
バイキンが繁殖するって事は無いらしいが100%安全とは言い切れませんからね。
ていうか、おいしく焼けばその状態になるからオートマティックでバイキンが死滅するのね

話は長くなりましたがひと口頬張ります。
表面のカリっとした食感具合といい
なかのジューシー感といい、僕が追い求めていた焼き上がりそのもの
完璧です。
てなわけで、トマトガーリックソースかけて戴くわけだが
塩だけでもいけちゃう当店のステーキ
その重さ14キロオーバーのフライパンで完結したのだよ。


2018.10.2










KIKI-HOUSE
盛岡市神明町1-19(競馬会館西側裏て) 654-6050 
(またはコンビニでマップル立ち読み参照)


このほかにもまだまだ美味しい料理を、沢山取り揃えてますよ。
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美味しいものにリンクしてますよ、キット。

ここまで読んでくださいまして大変ご苦労様です。
もうひとつおまけになんていうページも
ありますので良かったら行ってみてね、にゃにゃぷす。。