KIKI-HOUSEのシェフは無愛想だと、初めてのお客さまにも
そうでないお客さまにも、お小言をチョウダイしております。
まったくもってそのとうりでございます。(って、反省の色なし。)
ここで少しばかりの弁解をさせて戴きます。(逆切れ?)
それはこうです。  
一皿一皿の料理が、食べていただくお客さまとの剣勝負だと
私は考えているからなんです。
その戦いの場で、お愛想笑いなど浮かべながら料理を
ワタシとしては作れないのです。

そんじゃ弟子を使って、時間的にも精神的にも余裕を持ちながら
料理を作れば良いんじゃないのとも言われたことがありました。
ワタシの料理における美学では、お客さまと一対一の
真剣勝負の場に助っ人など無用な事。

アーチストと呼ばれている職人
画家は果たして一つの作品を仕上げるのに
他の人の手を借りてまで仕上げているのでしょうか。
(中にはいるみたいだけど、ほとんどの場合ってこと)


もしシェフがが弟子を使い、下ごしらえをまかせて
一皿を完成させたとしたら、それはそのシェフ本人の料理とは
ワタシは認めませんし、やろうとも思いません。
何よりも自分自身の達成感がありません。
あくまでもKIKI−HOUSEのの料理はシェフ菊池千秋の
お皿の隅から隅まで 気 を配った一つの作品と捉えて欲しいと思うのです。

 閑話休題

私が生まれ育った家は築76年も経った古〜い2階建ての家です。
どのくらいすごい家かというと、1月も過ぎた大寒の頃
寝ている枕元には薄っすらと雪が積もります。
と言っても、ちゃんと家の中で寝てるのは寝ているのですが
土の塗り壁と柱の間が微妙に隙間が空いており、寒風がピューっと吹くと
そこから北風と一緒に粉雪が吹きすさぶのであります。
だから、鼻髭を伸ばしている私の鼻の下は、鼻汁でビショビショになってるって事もよくあります。
そんなだから、ファンヒーターは2台全開にしても薄ら寒いのです。

春は春でスズメが外壁の三角隙間の崩れた穴から潜り込み巣をこしらえます。
だから、卵から孵ったヒナ達の合唱が日が昇るのと同時に始まります。
と同時に私の睡眠不足も始まります。
そんな雛の一羽が私の寝ている真上の天井板に落ちた時は大変でした。
雛は親に助けを求める声を途切れ無しにピィピィ鳴くし
親は親でそれに答えてチュッチュ鳴くしで、惰眠をむさぼってなんぞは居られませんでした。
しょうがないから雛鳥救出作戦です。
押入れの天井板をはがし、部屋の天井裏に潜り込んだのはいんですけど
築76年の埃が5センチくらい積もっていて、それに咽かえりながら雛を救出したのでした。
鼻の穴は真っ黒、髪の毛は真っ白、喉はいがらっぽくて痛いしで
そりゃもう大変でした。

そんな2階の部屋に上る階段の上には採光の窓があるんですけど
その窓枠が平行四辺形に歪んでしまっているのですから
外壁と言わず、いたるところに隙間があるのです。

もう一つ、冬になると大変な所がありました。
それは私の書斎っていう名の部屋といっても畳一畳くらいの狭いスペースが
一階に有ったのですが、ここのガラス戸は冬には絶対に開けてはいけないのです。
なぜなら開けたら最後、春までそのガラス戸は閉める事が出来なくなるからです。
土台がいい加減なのか、凍った土が柱を押し上げてしまうから
家自体が更に変形してしまうからなのです。
そんな感じなので、コタツの上に置いた鉛筆はコロコロと転がって落ちてしまうのです。
いたるところがひん曲がっている、そんな古くてガタピシな家なのです。

かみさんは嫁いできてから口癖のように「建て替えよう」って事ある毎に言ってましたが
何たってこの家は、私が生まれた所。
つまり産婆さんが、この家で私をとりあげてくれたそんな愛着ある家です。
そう簡単には「はいよ」という訳にはいきません。
釣仲間が来ると「広くていいうちだなぁ」って、他に誉め様が無いから
そんな広いって事だけでお世辞を言ってくれました。
それに庭いじりが大好きな父は庭を荒らされるのが一番大嫌いな事なので
「俺の目の黒いうちは、庭を踏み付けられるから家を建て換えは許さない」と
言ってはばからないからです。
そんな頑固な父も亡くなって3年、かみさんの口癖が本格化してきて
「冬の寒い朝一番で起きて、子供たちのお弁当を作る辛さは耐えられない」という
泣きを入れられて、この愛着のある傾いた家を建て替えることになったのです。

いろんな住宅展示場など一夏かけて歩き回り、どこに頼もうか迷っていましたが
結局のところ、地元の商売っ気の無い工務店になぜか惹かれてしまい頼む事になりました。
その結果、大変満足の行く家が出来上がり「やったー」ってかんじでした。
大手ハウスメーカーみたいに宣伝費やセールスの人件費が掛って無い分
コストパフォーマンスに長けていたのだと思います。
それに、なんたって小回りが効くというか融通が効くので大いに助かりました。
そんな古い家からアパートの借り住まいに移る引越しなんかも
工務店のトラックを使い大工さんたちが運んでくれて大いに助かりました。
その大工さんの中に、シティーボーイズの「きたろう」に似ている
ニコニコしていい人だなぁという感じの大工さんがいました。
少したって新築現場に、どんな進行具合かなと初めて行った時です。
あの時の「きたろう」似の大工さんが厳しい目をして立ち働いていました。
とてもあの時の「きたろう」とは思えない、近寄りがたい雰囲気をかもして働いておりました。
やはり業種は違えど、職人とはそんなもんなんだなと思いました。
日々どのようにしたら上手く行くかを考えながら集中して仕事をすると
笑顔なんぞは作れないって言う事なのだ。







閑話休題その2

とある集まりで東京の名店に、およばれしたことがあります。
そこはテレビの料理番組で「鉄人」と呼ばれていた方のお店です。
同じ業界人としては、どんなに感動するお料理が出てくるかと
大いなる期待をもって行きました。
最初に手渡された、お品書きを見てワタシはがっかりしました。
それは、キャビア、フォアグラ、前沢牛、おまけにフカヒレまでの
まことにもって目もくらむような、豪華なハッタリメニューの羅列です。
素人さん筋にはうけるでしょうが、同じ業界人としては納得行きません。

何がいけないんだろうと、ココでワタシは考えました。
それはテレビのプロレス的興行料理番組がいけないと独断しました。
そんな一見豪華な名前を並べれなければ、お客様である視聴者が
納得し喜ばないと、その方は料理番組でインプットされちゃたんじゃないだろうか。
じゃあ、その料理の鉄人が悪いかといえば、そうでもないような気もします。
あの有名な方の料理だから、何も知らないミーハー的お客様が
この方のお店にそう欲求するのかなとも思いました。
仮にそうだとしたら、そういふうに決め付けちゃった客が悪い。
との結論にワタシの考えがまとまりました。
つまり何が言いたいかというと
「自分で食いたいものだけを造るワタシは、客に媚びない」ってこと。

変わって翌日、渋谷で一番古くからやっている洋食屋さんで食べた
カニクリームコロッケが、やけにワタシの心に響いた事か。

まぁ、そんなハイソな食材にはついていけないワタシの料理ではありますが、、、。



ワタシの料理に何料理というカテゴリーはありませんし、まったく意識していないんです。
マアしいて言えば玉村氏的に言うところの私撰料理(プライベートチョイス)と表現しますかね。
自分が食べたいなーという料理の数々を、自分の中で 変換して
美味しいと言えるものだけをメニューに載せているだけの事。
ということで御託三択うんちくを並べましたが、要は うまい夕飯を食べたい 
それも可愛いあの娘と一緒に、という一言に尽きます。

だからチーズケーキ(ンッ!ムフフ)が大好きなオヤジが
とてもフリョウ※なオヤジの為につくる料理というのが
コンセプトといえばコンセプトかなぁ。

 ※は、なんでも楽しめちゃう、素敵なポケットを沢山持っている人間を
フリョウとワタシは定義します。

こんなグチかましのページまでお付き合い戴き有難うございます。
そのささやかなお礼ということで、ご同伴の方も含めまして
ディナータイムに乾杯のワインをサービス致したいと思います。
ご来店の際には、上のサービス券をプリントのうえ切り取ってお持ちくださいネ。







                                         

そんじゃ、いつの日か、お会いしましょう、にゃにゃぷす。。



2018/11/3