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どうしても喰いたくて







「いたっだきま〜す」とは、命戴きますから来ているそうだ
だから食べる前には合掌するんだナ、フムフム。


誰が書いていたのかは忘れたが、一つ一つは可憐な黄色い花だが
それが途方も無く集って黄色いジュウタンのように
川原に咲き誇るであろう菜の花畑に行って
まだツボミ状態の上1/3部分を摘み取ってくる。
それをフライパンに少量のオイルをたらして熱し
摘み取った菜の花を、洗いもせずにザッザッと炒めて
最後に醤油を投入し、煙が立ったところで
アツアツのご飯の上にぶっ掛けて食らうと
なんともいえない「春の蕾ご飯」となる、と書いてあったが
川原の寒風の吹きすさぶなか、そして雪に押しつぶされながら
冬をやり過ごした菜の花という植物がが
さぁこれからとオラが春に期待を膨らませた
そのツボミを食べてしまう、そんなごちそうなんだろう。

「そのツボミに、なんの効果があるのかは分からないのだが
たくましく自然を生きてきた命をいただくのだから
きっと何かがあるのでしょう」と、筆者は結んでいたが
まさしく、狩猟とはソウユウことも多分に含んでいるのだ。






初夏のような6月のノー天気な陽気に誘われて
達曽部川へとフライフィッシングに出掛けた。

オルビスロッド、スプリングクリークにC.F.OのリールVtypeをセットした。
そのスプールには5番のフローティングラインを巻いている。
なんて言えば、イマドキ見かけない昔のバリバリフライマンのように聞こえるが
本当のところはフライマンのカッコだけはしてはいるが、やってることは
テンカラだというクロスオーバーフィッシング滅茶苦茶フライであった。
おっと「スプリングクリーク?それナニ」ってイマドキのFFマンは言うんじゃねぇよ。

今をさかのぼる事、20ン年くらい前は、とってもいかしたロッドだったんだ。
あの浜野安広氏をもって「これ以上、これ以下のロッドは無い」と
言われていたグラファイトロッドなのだ。
と言ったって「ダレ?その人」って感じなんだろうな今の子にしてみれば。
ちょっと威張っていうと、当時の高校卒業の初任給よりも高い78000円もした超高級ロッドでもあって
これを持ってると当時の希少なFFMの間ではケッコウ威張れたんだぞ。
それにC.F.Oのリール組み合わせた日にゃ
「アンタなにやってる人」ってな感じで見られたもんだ。
でも、そのころのオラはお金が無かったから
オリンピックのカーボンフライって言う名の
ガタガタいう、めちゃくちゃ軽いおもちゃのようなリールをつけていた。
まったくもって不釣合いなタックルではあった。

それには訳がある。
それは盛岡にその当時あったプロショップ「フリークランド」の店長が
「良いのが入ったぞ」ってオラに見せびらかし買わせようとして
バックスキンのリールケースからC.F.Oを出した時だった。
リールケースからC,F.Oがポロッと滑り落ち、ガラステーブルの上に
カキョーンと落ち、その勢いのまま床に転げ落ちた。
店長は一瞬青ざめてリールを拾い上げ、ハンドルをカリカリッと巻いたが
もう一つシュリシュリという音も混ざっていた。
それは、リールのフレームが変形してしまい、スプールと干渉している音だった。
「オラ知ら〜ねっと」、「手を出さなくて良かった〜」とも思った
店長は「不良品扱いで返品だな」とクールに独り言を言った。
オラは思ったね、たっかいお金出して、こんなリールを買っても
こんなんでスグにシュリシュリ言うんじゃ、やだね。
オラは川で思う存分気兼ねなく使えないと釣りになんないナと思ったからだ。

川で思う存分荒く使えるリールとして、その当時ダイキャスト製の安いリールも有ったが
腕力の弱いオラとしては少しでも軽いのを、つけたほうがイイジャンと思ったから
オリムピックのカーボンフライにしたのだった。
それにしても店長....そんなクレームつけてもいいのかぁ.......。

さて、このフリークランドだが、ここの店長はオラがフライフィッシングにハマリ始めたころ
よく通っていた地元大手釣具店の店長で、店内で威張っていたのだった。
その店の給料が良かったのか、店長の持っているロッドはオービスでオ−ルラインナップ。
リールはハーディーマニアのコレクターだった。

そんなS君はオラのフライの先生で、いろんな川にレクチャーと称して連れて行ってくれたんだが
「教えてくれる」なんてもんじゃなく「ここら辺でやってれば」といういい加減さで
彼はさっさと上流目指して釣り上がるので、オラは彼に置いていかれないように
石がゴロゴロの川原を竿を担いで付いて、どうにか行くのが精一杯で
正直なところ釣どころではなかった。
でもその分、川歩き技術は見る見るうちに向上したがね。
そんな彼が地元大手の釣具屋を辞めて念願のプロショップを開いたのであった。これまた
それは西暦1981年、今を去ること22年前の事である。

そう言えば開店から半年たってフライフィッシングジャーナル
通称FFJっていう、変態チックな小雑誌が発刊されたっけな〜。

Sくんの店はあんまり大きくはないというか、ちっさい店ではあったが
ハーディーのリールは全種類あり、もちろんオービスも完璧に開店当初は揃っていた。
オラは開店のお祝いに、オービスのパワーハウスを買ってやった。
その当時、地方田舎都市としては、大変珍しいフライフィッシングのプロショップであった。
というより、フライ人口が極端に少ない盛岡での出店は無謀だなというのが
当時の地元ルアーフライマンたちの姦しい評価であった。
初期在庫のまま一向に増えないフィッシングタックルでジリ貧になって行く店内。
最後のトドメは、アーキストリアルって言うヘンなおっさんがいる会社に
いいようにいじくられてしまい、そのマニアックさの塊のようなロッドに
お客さんの足もドンドン遠のいてしまって、S君自体もダンダンやる気をなくして
パチンコに逃避してしまい、あっという間にフリークランドは消滅してしまったのであった。

その後10年たってストーカーっていう、犯罪の匂いがぷんぷんする
今じゃ絶対付けないような名前のプロショップが出来た。
前のプロショップよりは長持ちしたが、社長の放漫経営と
これまたドンブリ勘定の果てに、これまたパチンコに狂って無くなってしまった。
その社長は人当たりのよさとフライカルチャーの高さと技術は
とても良かったので惜しい気持ちが残る。
その次はプロショップオノっていう店がストーカーを引き継いでやってはいたが
何故かブラックバスのルアーフィッシングに傾倒しすぎて
あっという間に無くなってしまった。
だから、岩手県都 盛岡にはプロショップは今現在存在しない。
でかいヤマメ岩魚の宝庫にいる者としては寂しい限りではアル。




ハヤブサの目


イマージャーを演出

そんな古きよき日を引きずりながら、とりあえず達曽部川へと急いだ。
9フィート2インチ2ピースのロッドを繋ぎ、チョッとばかし小金持ちになったのもんでC.F.Oを固定。
そのスプールには5番のダブルテーパーラインを半分に切ったものを巻き
7.5フィートのリーダーに1.5号のティペットを40cm足したシステム。
こんなリーダーシステム聞いただけで、今時の岩井派のFFMは「ひっくり返っちゃうな〜」でっしょ。
その先に付いてるのが、黄色のフローティングヤーンにグリズリーを巻いた、ただのパラシュート。
もしくは、鮎掛け針に巻いた、対 「尻尾で毛ばりを叩きにくる年増ヤマメ
あわよくばスレ狙い」のエクステェンドボディーパラシュート。
もちろん、どちらも名前は無い。
竿先からは5番のラインは1メートルしか出てない
つまり何だっていいラインナンバー。
これをピュッピュッと激しく前後に振って、ダイレクトにポイントにポチャと落とす。
派手なら派手なほうがいいなぁ〜落とし方は。
すると慌ててヤマメさんがパシュとライズした瞬間に
オラの左手は枠径が25cmの抜きタモに無意識に掛かるわけ。
そして間髪を入れず右手は合わせを繰れるわけで
そのままライズした勢いのままヤマメちゃんを川面から引っこ抜き
左手に持った抜きタモでドスンと受けるのだ。
24cmクラスのヤマメちゃんを掛けた日にゃ
受けた左手に重量感ある手応えがあって
「獲ったー」って感じがモロ強烈に味わえるな。
こんな釣り方やったら、ケッコウ病み付きになるかもヨ。
あっそ、オラだけか。
だから9フィート5番っていうロッドがいる訳で
ラインシステムもア〜なっちゃうんだな。


お口上手な年増ヤマメのお口には、鮎掛け針パラシュートフライ
そしてこれが噂のオリムピックのカーボンフライ

で、この日はヤマメの出が悪く漁にならない日であったが
フライテンカラを振ってると岩魚とニジマスは機嫌よく顔を出しくれたので
対象魚急遽変更で、川からスコスコ抜いてはタモキャッチ。
調子良く抜き上げて良い気分で川漁師していた時であった。
漁師って言うくらいだから「川魚で商売してんのかいな」と
お思い方いらっしゃると思います。
まあ、それに近い事をやってるんです。
一応レストランっていう名が付く、夜しかやってない怪しい店をやってます。
そのメニューの中に「一瞬料理」ってコーナーがあり
今日山や川海から獲ってきたエモノがあれば料理しますよってヤツですが
一応釣り師としての見栄もあるので
なんでもかんでも良いって訳じゃないんだなコレガ。
良い魚体のものだけに限ってですが、それをキープして商売させてもらってます。
だからエモノにはコダワリと思い入れが有るので
オラが気に入いったお客様にだけにお出ししているのは言うまでも無い事です。
川魚のベーニエとか、ポーピエッド、ハーブとサーディソースの紙包み焼きとか
チョット気取った料理にしてお出しております。

で、ここに川魚のもっともポピュラーなアーモンドムニエル レモンソース
なんて料理を紹介しようと思ったのですが
以前友人に「釣りの本に釣魚の料理法がよく載ってるのだが
アレはそれなりのキッチンがあるところの話で
俺らみたいな家には、マーガリンはあるが、バターなんてもんはネエよ」って言われた時は
成る程ナと思いました。
そーいや、オラんちはレモンさえ無いもんな〜。
そんなオラが家で作る「お父さんの料理」
簡単にやっつけられて、お酒にばっちりのうまい料理?
教えちゃいます。

ヤマメの干物、用意するもの塩と冷蔵庫。
ヤマメの腹を裂き(プロは背中から裂くと、お腹がペコッとならないので見栄えがよい
皿に盛る時は切り口を下にして盛るとカッコ良く見える。
頭は左に見えるように置くのが正しいとされている盛り方だから、右側から包丁を入れると良い)
内臓とエラを取り出し塩を、雪のようにぎっちりと振って40分
(プロは塩水を作ってその中に漬け込むが、面倒くさい)
そしてヨーク水洗いをして裂いた腹がふさがらないように
爪楊枝を適当な長さに折って、つっかえ棒にして腹を開けておく。
それを皿の上に載せ(プロはバットの上に網を置いて、その上に並べる)
冷蔵庫の中に置いて一日おきにひっくり返していくと
5.6日目くらいからヤマメの皮に透き通ったようなあめ色の脂が浮いてくる
(春のヤマメは美味くないのでやめましょう
6月に入ってから梅雨時のが一番ウンマイ))
そうなったら軽くあぶって喰う、芋焼酎のちょっといいヤツでやると
もうたまらんわな。

お次はヤマメのソーメン
用意するものソーメン一式。
ヤマメのソーメンって言ったら
なんかこうイカソーメンを想像してしまいますね。
切るのが面倒だなっても思っちゃいますよね。
そーじゃなく、ソーメンのつゆの中に素焼きしたヤマメの皮付きのままの
身をほぐし、それを薄味のソーメンのつゆの中に入れて
江戸前の蕎麦のようにチョコッと付けるのじゃなく
ヤマメのほぐした身ごとジャボッとソーメンに付けて食うだけの事。
ソーメンにしろ、つゆにしろどっちも自己主張が強いものじゃないので
余計にヤマメの味が際立ち
ホント、ヤマメを喰った〜って感動すら覚えるよ。
これで、鮎を腹ごと焼いたやつでやったら、こりゃーたまりません。
冷酒でグビッてか。

最後はヤマメのてんぷら、これはチョット面倒かな。
用意するのは小麦粉と油。
ヤマメは3枚におろす、ってことは最低七寸以上のサイズが欲しいわな。
これに衣を着けて油で揚げて喰う。
これまたシンプルながらも、いけてしまう一品。
塩をパラリと振って、レモンでも良いけどチョット酸味がきついので
すだちなんてのが用意できたら言う事無いな〜。
これをキュッとしぼって喰らう。
これでキリッと冷えた白ワイン(シャルドネ種)
なんかでやったらゴ ク ラ クでっせ。

っていう、至極簡単な調理法。
これなら俺にもできるっていうか
イッチョやってみるべかという気も起きますでしょッ。

その達曽部川だが、その規模といえば幅が7,8メーターで
スネくらいの深さしかない小規模河川だが
上流からは湧き水が結構入り込んで
所々にウオータークレソンなどが生え揃っているので
もちろんこれの若芽のところを採りながら釣をするのである。
また、帰り道には太い青蕗なんか生えており、たとえ魚が釣れなくても
お土産には困らない川ではある。

さて、川の真ん中に突っ立って、岸際の瀬脇のたるみに狙いを絞りフライを
ピュッピュッしてるオラの所から、そーだな50メートルくらい上流に
この川にしては淵と言えるような所があって、その淵の開きに
どっから着たのか分からないが、ハヤブサが忍者のように
鋭く川面に突っ込んできたのが視界の隅に見て取れた。
(釣りに行くと山菜とかキノコ目の隅に入りません?
餌釣り界の巨匠、伊藤稔氏とヤマメ釣りに行った時のこと。
ミズが岸辺に生えていたので一回分サクッと
取っていた所を見た巨匠は言いました。
「ヤマメ以外に目が行く人は釣りが上手くなんないよ」って。)
と思った瞬間、派手な水しぶきが上がると同時に「ギュワッ、ギュワッ」と
悲鳴にも似た声が川中に響き渡り
そこだけが修羅場と化し騒がしくなっていた。
そこには、ニワトリの半分くらいの大きさのコガモ君が
悲鳴をあげ逃げ惑っていたのだった。
あっという間も無くコガモ君はハヤブサの
鋭い一撃を喰らったのわけだが、そんなコガモ君すんでのところで身をかわしたようで
とりあえず一命はとりとめた様子。
コガモ君はバタバタとかなり激しく抵抗をして逃げまくりのだ様子だった。

その一部始終を見ていたオラはとっさに「獲物だ!いただきッ」と心の中で叫んだ。
と同時にオラは大声で「オラオラッー」とわめきながら
そしてフライロッドをグルングルンと振り回しながら
足で派手にバシャバシャとアピールしなが、らその現場に急いだのである。
そんなオラの業態と大声にビビった忍者ハヤブサは
コガモ君に最後の止めを刺せないままノッタリと空に飛び上がった。

コガモ君はと言えば必死の思いで川岸に生えてる膝丈くらいの
草むらに逃げ込もうとしていた。
そんなコガモ君めがけてオラは、必殺の抜きタモの一撃を見舞ってやった。
魚タモの中で暴れているコガモ君は額から血を流しながら必死でもがいていた。
そこでオラはコガモ君の足をワッシと掴んで逆さまに持ち上げてみたが
もはや抵抗する体力も無くなったか弱弱しく羽をばたつかせるだけだった。
もう片方の手で背中の方から胴体を掴み、もう片方の手で頭を掴み直し
首根っこをくるりとひねったが、抵抗感が無くどこまでもクルクルと回るので面食らった。
(だれだ、鳥を〆るのは首をくるっと捻ればよいなんて言った奴は)
しょうがねえから頭をグイッと引っ張って、ヴィクトリノックスのスーベニアを喉に入れ
血抜きを兼ねて一気に息の根を止めてやった。
が、頭からの血を噴出しながらもがいた後だったんで
あまり血はしなかったのでそのまま川岸に放った。
そんな横取りした獲物をビニール袋に入れて、首から下げているゴアテックス製の
気化熱を上手く利用した優れモノのクリールに川魚とともに納めたのであった。

「オヤ、なんか頭の上から見られているよな」と、視線を感じたので空を仰ぐと
そこには苦労して獲物を見つけ出し、自分の口に入るはずのご馳走を寸での所で
横取りにされたハヤブサ君が恨めしそうに鋭く鳴きながら飛んでいったのであった。

ひがみ目

店に持ち帰ったコガモ君「どうやって料理して食べようかな」と
思いながら毛をむしっていたら
釣りキチの八っちゃんが店のカウンターに座った。
彼はトゥ−ルダルジャンの鴨料理を何回か食べているグルメなので
一応お伺いを立ててみた。

「鴨にはグランマルニエを効かせたオレンジソースで決まりだな」と
言ったきり、八っちゃんはニコニコ顔で舌なめずりをした。
と言われてもオレンジはオラの店には無いし
代用のオレンジジュースじゃコガモ君に悪いし。
「そーだ、店の裏で栽培しているっていうか
雑草の如く生えまくって困った状態の
今じゃ全然ありがたみが無いハーブを使った
蒸し焼きなんかどんなもんでっしゃろ」と
いらない事まで言って、お伺いを立てたら八っちゃんは
「それでよかろう」と難しい顔をして言った。

さっそく料理に取り掛かった。
コガモ君の体全体に塩と黒胡椒を挽いて振り掛けてから
ハーブをたっぷりと腹に詰め込んだコガモ君の柔肌にベーコンスライスを
その鳥肌が見えないようにまんべんなく巻きつけていった。
フライパンの底にタイム、オレガノ、ローズマリー、セイジ、イタリアンパセリ
ペパーミントのハーブ、にんじんと玉ねぎとにんにくのスライスしたやつを
きっちりとバットに敷き詰め、最後に先ほどのベーコンで
ミイラ状態のコガモ君を乗せて全体にオリーブオイルを回し掛けて
180度くらいの中温のオーブンの中でじっくりと焼き上げるのだ。

20分くらい焼いたらベーコンを取り出しフライパンの底に溜まっている
いろんな香りが付いたハーブオイルを大さじですくい取り
コガモ君の柔肌にテリテリになるように回し掛けるのだ。
ソーやって仕上げたコガモ君の腹からシンナリとなったハーブを取り出し
その中にも先ほどのフライパンの底に溜まっている
ハーブの香りが移ったオイルを注ぎいれるのだ。
腹の中にハーブオイルを行き渡らせたら、そのオイルを腹からそそぎ出し
全体に黒胡椒を振って終わりという、天然素材のいい物が手に入った時だけの
単純きわりない、素朴な男の料理で攻めてみた。

それではさっそく二人で食することにする。
カウンターの上に載せた一皿は、二人で食うにはチョットばかし小さいが
なかなか手に入らない自然の恵みを二人で共有して堪能するには
これ位いがちょうどいいかも知れんとなと
勝手に思いこむ事にし口にした。

そしてオラが唸り出した一声は「コレゾ山の味
鉄分が利いた味、野生の味!」だ。
八っちゃんがボソッとつぶやいた一言は
「グランヴァンと一緒にヤリテェ〜」だった。
さすが洋行帰り、言うことが一々にくいね。
この一言でポーイヤックなウタゲが始まったのは言うまでも無いこと。

宴の後、ヨーロッパの料理にやけに詳しい八ちゃんが帰り間際に言った。
「フランス料理って言っても、そもそもはイタリア料理の派生でしかない。
そんなイタリア料理の真髄は土産土法で
塩とオリーブオイルそしてレモンとトマトが有れば良い。
フランス料理は広大な国がゆえ新鮮な食材が手に入り難かったから
チョット危なくなった材料をごまかす為に発展した料理法なんだな。
今日の料理はイタリアのトリノを思い出す夕食だったな〜」と俺にはほど遠い
うれしい事を言って、夜のネオン街の方へと消えていった。

後日、八ッちゃん、またまたラトゥ−ルダルジャンに
女の子を連れて行き「口説きのお食事」
お約束のダルジャンのナンバー付きの鴨を食しているとき
その女の子にオラの話題を提供。
「友達のkikiが釣りの最中にハヤブサからコガモを横取りして焼いて食った」
てな事を、面白おかしく脚色してしゃべったそうだ、したらその女の子は
「やーねッその人、野蛮人」てなことを言って顔をしかめてたそうだ。
をいっ!あんたも喰っただろっ。
そんな女の子、今は八っチャン婦人であられる。
ソーイヤ最初にお目にかかった時
「こんなヒトとは、お知り合いになりたくないわ」てな目で
見られたような気がするのはオラのひがみ目か?




オラの友達の一ちゃんはオラに五つつくらい輪を掛けた釣りキチで
北東北と言わず、北海道全道をマタにかける果てしない釣りバカである。
そんな彼の釣りに掛けた人生と、飾らない人柄もあって日本各地に知り合いが沢山いる。
そんな友達の輪の中の青森の知り合いから「雫石の○○沢で撃ち取ってきた
マガモの夫婦をもらったけど、kikiいらないかって」電話をもらった。
もちろん断るはずも無い、何でも喰っちゃう野蛮なオラは二つ返事で戴くことにした。

そんな一ちゃん、雪降りの中わざわざオラの店まで届けてくれた夫婦のマガモは
以前ハヤブサから横取りしたコガモ君の5倍くらいはある大物であった。
一ちゃんが言った「青い頭をした方が上手いって言ってたぞ
確かオスのマガモとか言ってたな」と。
そんな死後硬直もはなはだしいマガモは、オラのひ弱な白魚のような指では
鴨の肌が鉄のように固く締まって毛がむしリ難いので
そのままの状態で熱湯にくぐして皮を柔らかくしてから毛をむしろうとした。
が、そのブ厚い毛が邪魔をし皮まで熱が伝わらないのであった。
さすがダウンを自前で着ている鳥なわけだな、断熱効果が高すぎる。
だから家を建てるときは、外断熱がイイって言うのは北海道の新築の家の
8割が外断熱だってこともでも納得できる。ナンノコッチャ

こうなると持久戦で時間を掛けて気長にむしるしかないなと覚悟を決め
流し場に椅子を持って来て、焦らないでのんびりとむしる事にした。
でも一ちゃんがオラのそばに居て、あれやこれやと釣り話をしていると
鴨の毛をむしる長い時間も、たいして苦にならないものであった。
それにしてもむしり終えたマガモ二匹分の毛の量はすごいものだ。
凍てつく川面に立ちすくんで寝てても平気な事が、改めてヨーク分かった毛の多さだった。

毛をむしった跡は取り残しの産毛が点々と残っており、皮を美味しく食べるには
鳥肌を直火にあぶって、その産毛をキレイさっぱりと焼いてしまわなければならんのだな。
それが終わったらガラすき包丁を取り出してマガモ君の解体作業に入る。
それを見ていた一ちゃん「鮮やかなもんだな〜」と一声。
「オイオイおらを誰だと思ってんだ、この道ウン十年のコックさんだゾ」と言ったら
「てっきり、ただの釣りばかだと思ってた」とぬかしやがった。

解体して分かった事だが、取り分けてみた胸肉の一片を見ると
ボツボツと穴が開いて、その周りの肉はうっ血してて、どうみても美味くなさそうであった。
ハハーンこれが散弾銃で撃ち取った鳥独特の、もったいない肉となった銃創跡だなと思った。
さあ気を取り直し美味しそうな部位をだけを選び塩をして、こんがり狐色に皮を焼いていく。
厚手にスライスしたニンニクとタカの爪をフライパンの上にひき、先ほどの肉をのせて
オリーブオイルを回しかけてオーブンでローストにする。
このときの肉の焼き方はだな、皮はあくまでもパッリッと焦げ目を軽くつけた狐色にするのだ。
焼き終えた肉片にナイフを入れ切り分けた時、中の身はキレイなロゼ色になっていなければ
プロの仕事とは言えないのである。
このときのコツは、オーブンの熱で肉ので中まで火をとうさずに、オーブンから出した時の
余熱でロゼ色に発色させる小技が必要となると、ちょっとプロの自慢が入ったかな。

そのこんがりと狐色に焼けたマガモの美味しそうな肉を、オーブンから出したばかりの余熱で
上手い具合に徐々に火がとっている間、スパゲティーをチョット硬めに茹でておくのである。
そしてソースはブッタネスカソースで決まりであります。
矛盾した話ではあるが、トマトのフレッシュ感はあえて出さないようにして
時間をかけずに手早く作っておくのである。
このときのオリーブは3色くそろえると、これまた見た目にもきれいな
一品に仕上がるので、是非取り揃えて欲しいものだネっと。
スパゲティーの上に出来上がったブッタネスカソースかけたら、その上に
ロゼ色にバッチシ決めたマガモ肉のチョット厚めに切り分けたヤツを載せ
オレガノの若葉少々と黒胡椒をたっぷりと挽きかけて
あとは黙って食するだけの男の料理だッ。

ブッタネスカソースの娼婦のようなしたたかさと、マガモのワイルドで危険な味が
イットキ舌の上で喧嘩するのではあるが、それらをいたぶる様に口の中でシャブっていくと
したたかさと危険な味が、まるでコトを終えたかのようにマッタリとした時間が
舌の上でゆるやかに流れていき、口腔は至福の味で満たされるのだ。ふふふっふっと
モチロンこの時の酒はワインなんて不良な男は言わないバーボンで決まりだ。
ワイルドターキーでは駄目!ましてやフォアローゼスじゃ軟弱。
ブッカ−ズじゃ高すぎる、ここはジャックダニエルの土臭いハイボールで決まりだ。

今年の一月の終わり八ちゃんから電話がきた。
「タブン美味くないかもしれないが、マガモが余分に手に入ったんで
食べるなら持ってってあげようか」と
モチロン要らないと言うはずもない オ ラ 。
楽しみに待っていた次の日、八ッチャンはニコニコしながらアオクビを持ってきてくれた。
持つべきものは友!

さて、どんな風に食べてやろうかなっと。
そーだ鮎マスターズ仲間、函館のミスターNに聞いてみよっと。
彼も八っちゃんに負けず劣らずのグルメだし、狩猟を始めたって言ってたから
多分もっと美味しい喰い方を知っているかなと思って電話した。

ミスターNに電話すると、いつものように機関銃のようにしゃべり始め止まらなくなった。
そんな電話話をかいつまんで説明するとこんなふうだ。
「フランス料理の代表的鴨料理って言えば〔鴨のローストオレンジソースで決まりだ〜ね〕って
みんなおっしゃるけど、でもあの調理の仕方は野生の鴨肉の臭みを誤魔化すために
甘酸っぱいソースに鴨肉を泳がせて、これでもかッと言う位いに
オレンジ風味で食わせる料理である。
あんなのはマガモの肉に失礼な喰い方だね」とミスターNは怒ったように言った。
「じゃあぁ どんな風にしてっ喰ったら美味いのかな〜」とミスターNを
なだめる様にオラは恐る恐る聞いてみた。
そしたらミスターNは先ほどの勢いのまま、さらに増幅した口調でミシンのようにしゃべり出した。
「そりゃーアンタッ 鴨鍋で決まりだ〜ね」
「その鴨鍋ってどんな手順で料理すんの?」と聞いたら
「ぶっとい青ねぎを、すき焼き鍋の縁の高さくらいに切りそろえ
その切り口が見えるように鋳鉄製のすき焼き鍋の縁周りの中を取り囲むように
隙間なく縦に並べ、鍋の真ん中の開けたスペースに鴨肉を並べるのだ。
そして全体にそばつゆの濃い目のものを注ぎいれ火にかける。
全体がブツブツ言い始めて、ぶっといねぎの切り口からも
だし汁が沸々と出始めたらこれでおしまい、後は黙って食うのみ」と高らかに言い放った。
ソッカそんな簡単な方法でいいのかと言ったら
ミスターNは「それでいいッのだ」と言い切った。
そのあとはお約束の狩猟のお話が延々と続いたのであった。

電話が終わってオラはマガモ君をさっそく切り分け鴨肉をバットに並べ
ラップをして冷蔵庫に仕舞い込んだ。
明日のお昼は、おうちで鴨鍋だ〜い。わっはは。。

さてと次の日の待ちにマッタお昼の時間。
しばらく使ってないすき焼き鍋を棚の奥から探し出して見ると、なんと白くカビていた。
なんだようと思いながらキレイに洗ってやった。
さっそく太いねぎを、そのすき焼き鍋の高さに合わせて切りそろえた。
そして冷蔵庫から昨日解体したアオクビ君のお肉が入ったバットを取り出した。
そこには、暗赤色に変わり果ててあんまりおいしそうには見えないお肉があった。
それをスライスして、すき焼き鍋の真ん中へんにたっぷりといれた。
そして切り揃えた根曲がりネギを周りにキッチリと立てた。
そしてCOOPのつゆコーナーの棚に並んでいた中から一番値段が高い
「本醸造・鰹と昆布だしのそばつゆ」を、そのすき焼き鍋に注ぎいれ
勢い良くガスの栓をバチッとひねった。
唾をごくりと飲み込みながら鍋が沸々言うまで待つ事にした。
エラク長い時間がたったような気がしてならなくなった頃
ようやくねぎの切り口の間からだし汁が沸々と湧き出始めた。
出来上がり!「それでは、アオクビ君いっただきま〜す。」
口に含み4、5回噛むと「うわッ」と声がでてしまった。
「なんだこの美味しさは!」
今まで食べた事のないようで、どっか舌のある部分で記憶しているような味だった。
それからのオラは、頬っぺたの下の部分がククッと痛くなるような感覚を味わい
額から汗を流しながら一気に鴨鍋の具を食べ尽くした。
残った汁にはミスターNが「最後に残ったつゆに蕎麦を入れて喰うとゲキウマ」と
言ってたとうり、チョットおごってCOOPの「ヤマイモ半生蕎麦」を入れて
それにチョビットばかし七味振って、一気に喉に流し込むようにして食べた。
こんな五体に震えがくるようなメシは初めてだった。
喰い終わった感想は「どうしても喰いたい、マガモ」だった。

このごろ年取ったせいか、あれほど好きだった前沢牛のサーロインステーキを食っても
半分くらい喰った所で、牛の油に当たったかのようで「もうイイや」となる。
かと言って、魚の煮付けのほうがいいかと言えば、まだ牛肉の方に未練がある。
そんなオラにとって、この鴨鍋の肉は今のオラの肉体が一番欲しがっている
食い物に間違いないものであった。

その晩、青首を持ってきてくれた八っちゃんに感激のメールを打った。
そしてミスターNにも電話して鴨鍋の感想をのべた。
「いや〜、うまくてうまくて又食べてな〜」と言ったら
「そりゃ〜アオクビだもんな、あったりまえ」と言ってさらに話し始めた。
「どこもかしこも凍っちまう北海道の冬で、唯一鴨猟ができる函館の猟師のもとに
道内のハンターから「エゾシカ一頭とアオクビ1羽交換しないか?」っていう話が来るくらいの
美味しさで、鴨肉を食べる習慣が盛んな秋田ではアオクビ1羽安くても15000円の
値がつくのだそうで、そう めったやたらに喰える代物ではない」といった。
それからのミスターN、また狩猟の話が延々と続いた。

そんなミスターNの話の中で、2年位前から高性能な空気銃が輸入されるようになって
散弾銃で撃ち獲れない様な距離にいる鴨も、十分射程範囲に入ってきたと言った。
ミスターNに聞くところによると、ショットガンって言うのは一度に米粒くらいの鉛の玉を
2、300個くらい打ち出す銃なそうで、銃口から飛び出していった弾は小さくまとまって
飛んでいくわけでは無く、アッチコッチ弾どうしがぶつかったりしながら拡散して
飛んでいくそうで、あらかた40メートルも飛べば弾自体に威力がなくなるものだそうだ。
それで50メートルも離れた所で散弾銃をぶっ放されて顔に当たったとしても
「いてッ」くらいなモノで、なんとも情けない鉄砲なんだと言った。
だから鴨猟の有効射程距離は30メートル以内で、それ以上少しでも
離れた所で飛んでいる鴨に弾があたっても、少しクラッとする位で
鴨はなんか変だなくらいで平気で飛んでいくのだそうだ。



それに引き換えプレチャージ式の高圧エアーライフル(空気銃)は
80メートル先の鴨も撃ち獲れるくらいの威力とグルーピング(集弾性能)を備えているそうで
ショットガンで獲れない所にいる鴨も、このエアーライフルでなら何とかなるって言った。
そして「散弾銃と違って一発で急所を射止めるわけだから
肉自体の損傷も少なくて済むから、とってもキレイなお肉が取れるよ」と付け加えた。

その話を聞いて「オラも猟師になって思う存分アオクビをクイテ〜」と
さらに心というか舌が燃え上がったのは言うまでも無い事である。

たしか20年位前、木こりのケンちゃんが銃の免許を受けに行った帰り
オラの店によって、いかに難しい試験だったかトクトクと話をしていった事があった。
その中で銃を持つ為の試験では無く、安易に銃を持つことが出来ないように
落とす為の試験だと言っていた事を思い出しミスターNに、この事を恐る恐る聞いてみた。
そしたらミスターNは、「ナンモだ、あんなもん難しくもなんともないんだワ
ジョーシキ問題だから簡単に取れんでナイカイ」と言った。
それを聞いて今すぐにでも銃を欲しくなってきた、お調子者のオラであった。

家庭の事情で今は鉄砲を手放した木こりのケンちゃんに、このプリチャージ エアー ライフルの事で
電話して聞いてみたら「そーなんだよな、俺もまた鉄砲持つとしたら、絶対に
プレチャージのエアーライフルだな」と言い切ったのであった。
彼もソー言うのなら、やっぱりやるしかないと心の中でひそかに誓ったオラであった。

まずそれには銃の取り扱いを指南してくれる近くに住んでいる人を探す事からはじめる事にした。
なんたってケンちゃんのうちは「雪渓カワゲラ」の章で紹介したくらいトーイトコに住んでいるので
師匠になっていただくには距離があまりにも有りすぎまんねん。
これまでのオラだったら、誰に聞くでもなく、あーだのコーダの悩みながら
一人で突き詰めていくのがオラ流の趣味の極め方なのであるが
なんたって人生の折り返し地点がとうに過ぎた明日にでも死んでもおかしくないオラとしては
そんな悠長な事はしてはおられんのだ。
だから手っ取り早く「師匠」を見つけて弟子入りして技を盗むのが
短期間でイッパシの猟師になれる方法だと思い、友達知り合いに尋ね歩いたが
「そんな人はいね〜な〜」と言ってくれる人は、まずいい方で
ほとんどの人は「好き好んで動物を殺すなんて人、イマドキいるわけ無いでしょ」
とか「そんな危ない事はしないほうがいんじゃない」と言われる始末であった。
この方なら大丈夫かなと思って、オラの陶芸の先生に相談したら
「鳥ッコだって、生きたいと思って一生懸命生きてるんだから、殺さネンダ」と諭されてしまった。


喜喜銘で最後に残った作品

気の弱いオラは、ものすごく暗い気持ちになって「そーだな銃なんてアブネ−な」と
ヤッパリ辞めようかと思ったりして、かなり左右に心が振れた。

ほとんどの人の狩猟への反応は「銃を持つ人=変態or危険人物」という結論を得たが
オラの中の「どうしてもアオクビを喰いたい」という食欲には勝てず
少し迷いながらも鉄砲の師匠探しの旅は続くのであった。
ところで家族の反応はと言えば、もちろんノーでありまして聞く方がバカというもの。
だからオラは隠密に行動を起こすのであった。
という訳で、このページだけはリンクが難しい隠しページになっているのだナ。


そんな折、釣具店のF・Iに暇つぶしに行ったとき
フト「うんちくの釣りの章」で紹介したヒカリ釣りの梅さんの事を思い出した。
その梅さんご用達の喫茶店「猟」という名の店がこの近くにあることに気が付いた。
善は急げとばかりに直ちに尋ねて行ったが「マスターは仕事に出ている」と言う事で
居なかった、ん〜仕切り直しである。
店内は「狩猟界」って本が山積みになっていたり、熊の毛皮が飾ってあったり
鹿を撃ち取った時の写真が飾ってあったりと雰囲気がたまらなくよかった。

この日ならマスターが居るっていう土曜日の午後、再度たずねていく事にした。
店に入っていくとママだけがいてマスターは居なかったが、もう少しで来るというので
待っていたら、眼光がやけに鋭い「中尾彬」に似たマスターがやって来た。
恐る恐るお話をしていくうちに、なんか一年ぶりに会う友達に会うような
感覚に惰ってしまい一気に会話が進んで行くのであった。
「ん〜、なんだか今日始めてあった人だという気がしないな〜。」
そんなマスターの狩猟話を色々と聞いていく中で「この方ならオラの鉄砲の師匠になって
いただくのに、間違いの無い人だ」と勝手にオラは確信したしだいで
無理を言って弟子入りする事を、お願いしたのである。

そんなオラの師匠に「一番なにが美味いですかね」と最後に聞いたら
師匠はほんの少し間を置いてから「ウシだな」と言った。
オラ的には一般人ではチョット口に入らない鳥獣の名前が出てくるのかと期待していたのだが
「ウシだ」と言われてオラはひっくり返りそうになった、し
JAROな嘘偽り誇大広告的な発言がまったく無い、そんな人柄に更に惹かれた。


師匠40年の凄みさえ感じる構え

師匠は散弾銃から始めライフルまで所持している40年のベテランハンターであるが
そんなエキスパートな人が、いまさらっていう逆戻りの感じがある空気銃を持つことにしたのには
「22口径並の威力がある空気銃って何モノだ」という興味からなそうで
今年の始め、試しにプレチャージ式のエアーライフルを手に入れてみたとかで
ますますオラの鉄砲の方向性が見えて来たので
大いにオラは心の中で燃え上がったのであった。

師匠の紹介で盛岡に唯一あるT銃砲店に行き、銃砲所持免許の申請と
その免許の取り方について、いろいろとレクチャーを受けた。
店主の話では年に6回しかない銃刀所持免許の講習会とその試験の
盛岡会場開催を待っていたら、日程的に今年の狩猟免許は受けられないとの事で
急遽盛岡から2時間半程離れているが、どーにか狩猟解禁日に間に合う大船渡会場で受ける事にした。
その前にこれを読んでいけば必ず受かるという銃砲工業振興会が発行する
銃砲所持免許の解説書なるもの買わされた。
そんな解説書の中身はたいした事が書かれているわけでもなくチョロイなと思った。
その銃砲店の帰り際、師匠と同じAIR ARMS S410をカタログから見つけ出し
「お幾らくらいになりますか」と聞いたら「カタログに書いてある値段の通りだ」と言った。
イマドキ値引き無いなんて、やけにショッパイ店だなと思い
この鉄砲屋では銃を購入してやんないと心に決めた。

いよいよ持って大船渡会場当日、講習会を受けて試験を受けたわけだが
はっきり言って銃砲店に勧められたテキストは読まなくてもいいナと断言しちゃうオラ。
それには講習会の話を寝ないでちゃんと聞いていればと言う条件付きだが
半分寝ててもイイかと言う程度のもので、誰でも取れる常識的な問題ばかりなのだからである。

お次は狩猟免許であるが、函館のミスターNは最近狩猟免許を取ったので
その内容を聞いてみると「事前に猟友会が行う講習会を受ければ100パーセント受かる」
との事だったので、だから今回は予習勉強はせず、取りあえず講習会には
行き当たりばったりの出たとこ勝負で行ってみた。
それは朝の9時から夕方の6時半までウダウダと詰め込まれる講習会で
そのノロイ進行状態に、オラの納豆な糸引き脳みそには結構きつかったな。
そんな講習会の実技模試から要点をかいつまんで言うと、目測距離の試験については
一番遠い赤旗までの距離が300メートルで固定との事で、この一問だけ合えば合格みたいだ。
でも必ずとは言わなかったので、一応道路に立っている電柱間の距離が41.5メートルなので
それを参考に大体の距離を書き込めば、誤差の許容範囲が上下20パーセントも有るので
ほとんど誰でもOKとの事であった。

銃砲の取り扱い実技は、引き金に指をかけない、銃口を人に向けない
この2点さえきっちりと守れるならば、ほとんどOKなそうである。
軽く予行練習をさせられたわけだが、いつも厨房で引き金式のチャッカマンを
使っているオラは無意識のまま銃を持つと、つい人指し指が引き金の上に乗り
講習会の講師に「それをやったら有無を言わせず即退場だぞ」と怒られてばっかしいた。
だから後の人の迷惑もかえりみず何回も銃を構える練習をしまくった。
そして、これだけは本チャンで肝に銘じて気を付けならねばと思った。

あとは狩猟鳥獣の判別試験だが、これは思いっきり笑ってしまったな。
紙芝居のような手書き風の鳥獣を5秒間だけ見せられるわけだが
この5秒間で撃ってもいい鳥獣か、いけない鳥獣か判別する幼稚な問題だった。
学校の授業では生物が大得意で動物好きなオラとしてはワケも無いテストであった。
あとは筆記テストだが「これといって難しいもではないな」というのが実感であったが
ここで落ちるのもしゃくだから、一応テキストの後にくっ付いてある模擬試験だけは
さらっと軽く2回ほど復習して狩猟免許にいどんだ。

本番の実技編では、つい引き金に指掛けてしまいそうになるので
人差し指と中指の隣り合わせになる部分に
両面テープを貼り付け、金輪際人差し指が勝手な行動を取る事を
自己阻止して受ける事にした。

コレマタやたらと時間ばかり喰う、飽きるほど長い退屈な狩猟免許試験であった。
受かったから言うわけでもないが一般常識を備えている人だったら
誰でも合格する、まことにもって簡単な試験だった。
「ホントウに、こんなんで銃を持っていいのかな?」と言うのが正直な感想である。
これから鉄砲やりたいって人「なめてかかっても大丈夫だぁぁぁ」
少なくとも4級船舶免許よりは数段やさしいぞ。
ただし、これらの手続きと講習会、試験などはみんな平日に行われるわけで
時間が自由になる人じゃなきゃ、ちょっときついかも知れんな。
でもそこは自分の中の熱意でカバーしようねっと。

これで、 エアーライフル ハンティングの世界に一歩近づけたわけだな。
で、いよいよ銃の発注であるが、県南の某銃砲店に、いま日本で一番熱い
エアーアームス社のS410を師匠の紹介で電話注文したが、ここの社長ってのが
コレマタ驚く事に、お客様をお客と思ってない対応で「売ってやる」って態度がありありの
思いっきり気分悪くなる対応で、最初がこうならこの先思いやられるなと思ったほどだった。
ここは師匠の紹介だし、鉄砲ビギナーのオラとしては、グッとこらえて我慢する事にした。
しかし何回かの電話のやり取りの中で、オラの堪忍袋の緒といわず袋自体が
プチプチという音を立てて大きくなっていったのは言うまでも無い事。
あんまりなので師匠に泣き付いたら、鉄砲屋ってのは昔からそんな商売の仕方なそうで
「売ってやる」ってのが基本の殿様商売だと諭されたが
イマドキそんな商売が成り立つのかという納得いかないオラだけが
一人ポツンと原野に取り残された感じだった。

エラク待たされたてオラは切れる寸前に、催促の電話を入れたわけだが
蕎麦屋の出前みたいな事ばかり聞かされて、しまいにゃ「銃は10日前に着ていた」って
オオボケを噛まされる始末で、ホントに切れる寸前0.5秒前だったが、憧れの鉄砲が
来たという嬉しさの方が勝って、この場は波風を立てないようグッと我慢した。
それから2日後、銃砲譲渡証明書がオラの予想に反して早く鉄砲屋から送ってもらう事ができ
警察の生活安全課という所に、いろんな書類をかき集めて申請にいった。
この書類の中で一番納得がいかないのが、健康診断書ってヤツだ。
「銃砲所持の健康診断書なんて書いたことが無いから、貴方が雛型を書いて持って来てくれ」と
日ごろお世話になっている行きつけの内科の先生に言われた。
しょうがないから自分で書いて持っていったら、先生は「この内容に間違いないね」と聞いて
その書面にハンコをペタンと押して終わり。
それで会計が3000円プラス消費税だって、そこのアンタ納得できますかってんだよ。
これじゃピンキャバ並みのボッタクリだ〜ね。まったく。
それと、この鉄砲所持許可書類の中で同居親族書って書類を見たときは
結構マズイナと思ったが、親族同意書ではなかったのでセーフって感じではあった。


その生活安全課で「何にも無ければ1ヶ月後くらいに銃砲所持の許可が下りる」という説明を受けた。
そんな20日も過ぎたあたり、銃のアクセサリーの注文分について鉄砲屋に電話を入れたら
従業員のツッケンドンのゲキむかつく電話の応対。
「わりゃッー、オラッチに喧嘩売ってんのか」と思ったが、もう少しで許可が下りる時期なので
ぐぐっと堪えに堪え電話を切ったが、その後から思い返せば思い返すほど腹が煮えくり返ってきて
もう夜中の2時、とっくに寝ている時間だというに思いっきり暴れたくなってきたオラであった。

なかなか怒らない気の長い事で有名なオラなんだけど、この時ばかりは
どう考えても許せなくなって朝一番で鉄砲屋の社長に抗議の電話を入れた。
相手の出方では無かった事にしてやろうとも思ったが、電話でやり取りしているうちに
アホらしくなって「おまえんちから買うのや〜めた」とキッパリと言って電話を切った。

又一からやり直しで、いろんな所の鉄砲屋に電話をしまくってAIR ARMS S410を探したが
さすがに今一番の人気機種、どこもかしこも
「売り切れです、次回の入荷予定は40日後です」と断られ続けるのであった。
インターネットでも探していたら一軒だけ在庫があるって言うので
速攻で買いますと返事をして、取りあえず書類を早く送ってもらう事にした。
まあ「親切な電気屋さん」ほどではないにしろ、前の店よりはましな対応だったので
ちょっとは心静かに安心して銃を買うことが出来るかなと思った。

これが日本の鉄砲屋の商売の仕方なようで今現在、狩猟界の新陳代謝が全然進まず老齢化が進み
鉄砲所持者がここ10年で十分の一になったというのも納得した一件であった。

送ってもらった書類を警察の生活安全課に急いで持っていき、申請の書類の一部を
差し替えて欲しいと頼み込んだら「まだ認可前だから何とかしましょうね」と言われた。
お役所に有るまじき大変親切な対応で、銃砲店より格段に愛想が良い「親切な警察屋さん」
希望のもてる返事をもらって大いにほっとしたオラであった。

そして1週間後、警察の生活安全課からの銃砲所持許可認定の連絡を受けた。
その銃砲所持許可証のコピーをとって、銃砲店にFAXで送ったら
あっけなく次の日には、あこがれのエアアームズ S410がナント宅急便で届いた。
(それも弾と一緒に、大丈夫かいな)
その銃を警察生活安全課に持っていき現品を確認検査してもらい
ようやくの事で自分の銃を持つことが出来た。
この間5ヶ月の歳月を費やしたのであった。ふうっーーー

この日から据銃練習30回1セット3クールを始める訳なのだが、鉄砲っていう代物は
自重がたった3,5kgしかないモノだが重心が先の方にあるから、持つ手に感じる重さは
その4倍くらいに感じるし又、普段使った事無い筋肉を使うせいか
据銃練習が終わったあとのジョウワンキンにボッーとした疲れが残り
思ったよりも結構きつい練習ではあるのだよオラには。


スコープ選びの迷いが始まった最初の一本

いよいよ射撃場デビューの日がやって来た。
それは8時45分頃、なかなか着信音がならないオラの寂しいケイタイがけたたましく鳴った。
それは盛岡のマグナムエアーライフルマンの草分け的存在のジマさんからだった。
「いまから射撃場に行くんだが、一緒にどうですか」と言うお誘いの電話だった。
家の引越し準備やら、キノコ採りやらで、なかなか射撃場に行く機会を
逃していたオラは、渡りに船とばかりにその話に即乗ったのだった。
待ち合わせの射撃場についたオラは、もちろん右も左も全然分からない ド素人。
ジマさん曰く、ここの射撃場での空気銃の射撃は10メートルの距離で行うのだそうだが
ここの常連さんであるジマさんは、場長にお願いして100メートルライフル射撃場で
エアーライフルの射撃練習する許可を戴いたそうで、その場所に連れてってもらった。

まずは一歩目の高圧ボンベの取り扱いから手取り足取りジマさんに教えてもらった。
そして銃に取り付けてあるスコープの調整を始めるのであるが、50メートル先の
直径5センチの赤丸の標的にはカスッとも当たらないのでジマさんに泣き付いて
大体の所を調節してもらったが「後の微調整は自分やりなさい」と言われ
オロッたオラは1時間も掛かって、ようやく赤丸の中に弾が当たりだすようになって来た。
そうなると面白みがモクモクと心の底から湧いて来るのであった。
標的の赤丸の中に弾が入った瞬間、弾は壁の向こう側の異時限地帯にに消えてしまうような感じで
オラはその不思議感覚にアドレナリンがジョビッと体中に噴き出すのであった。

こうしてオラの銃の場合はジマさんがいたからナンモ不安無くスコープ調整が出来たが
ジマさんの場合、まるっきり一人で始めたのであーだのこーだのと迷いながら
調整をしたものだから、あまりにも合わない焦点調整に銃の性能が悪いのだと思い込み
おもわず叩き折ってやろうかと思ったくらい結構最初は難しいものなそうだ。
それに比べたら熟練者が側に付いてくれるオラは「ナント恵まれている事だろうね」と感謝した。


50mといえどもケッコウ遠い

肩の力を抜いて銃を構え、真綿で首を締めるように引き金を絞って行くのだ。
と教えられながら打ち込んで行ったら、何とか赤丸に集弾出来るようになって行き
射撃がドンドン面白くなって、持ってきた弾100発はあっという間に無くなってしまった。
もちろんこの間には4回ほど高圧空気を銃に充填したのだが「これを銃に一緒に付いてくる
手動ポンプで入れていたのでは、こうは連射できないし一回の充填に150回もポンピング
しなきゃなんないのでとてもシンドク、これ自体がスポーツだ」とジマさんは言った。
「だから一発の弾を打ち出す毎に昔はモッタイ無さを感じたもんだ」とジマさんはオラに語った。
そんな体験すらした事の無いオラは、遠慮なく弾を打ち込みジマさんのボンベをガバガバ浪費した。

飛んでいく弾と的に当たる弾の軌道とが見えるようになった頃「この弾を使ってみて」と
「クロスマンプレミア」と書かれた紙の箱に入った弾を渡された。
遠慮なく弾装に込め打ち出したところ、今使っていたエアーアームス純正の
ディアボロ.フィールド弾に比べたら、ゼンゼン弾自体のふらつきが無く
思ったとおりのまっすぐな軌道で飛んでいく弾にオラはエラク感心し
実猟では絶対にこの弾を使いたいなと思ったのであった。


551と552があるけど、これは552

あくる週、今度は師匠と一緒に射場に行ってもらい実戦形式の射撃のコツを教えて頂く事になった。
師匠曰く「実猟の射撃では時間を掛けて狙いを定めていては獲物を逃すし
競技をやる訳でもないんだから、針の穴を通すように照準を合わせていれば
マスマス迷いが生じるので、標的のやや上部からクロスポイントを下げて行き
標的に照準が合ったと思われる瞬間にためらう事なく瞬時に引き金を絞る練習をする事」と
構え方からスコープの覗き方などきっちりと教えられた。
そして「エアーライフル競技と実猟は別物と心得ておけ」とも言われた。
ぶっちゃけた話「ネックショットやヘッドショット一発で撃ち取るなんてスケベ根性出さず
ヨロッタ獲物に2発め3発めでくらいでようやく撃ち取るくらいでちょうど良い」とも言った。

「弾なんて風が吹いていたら、なに撃っても同じ、標的との距離だっていつも50メートルとは
限んないんだから結局の所、銃や弾に頼らず自分の持っている射撃の感を
研ぎ澄ます事の方が一番大事だ。
ましてや相手は生き物じっとしている方がおかしいんだから、標的と照準が合ったと
思ったら速射っていう勘所を掴みなさい」と口を酸っぱくして教えられたが
でもやっぱり助平なオラはじっくりと標的を睨み引き金を絞るのだった。

「50メートルの標的射撃だけじゃ飽きちゃうから、100メートル射撃もやってみるか」と師匠はいった。
100メートルも離れた標的を狙い撃ってみると、標的を貼り付ける板にさえ当なかなかたらないもんで
師匠が「20センチ上を狙え」と言うので、標的の20センチ上にクロスヘアーを合わせ引き金を絞った。
弾は山なりに飛んで(たぶん)標的板の端の板に当たったカツーンという音がした。
修正を重ねてようやく、標的の紙の白い部分に当たるようにはなったが、真ん中の黒い的に
弾を集めるのにはオラの腕では、まだまだ無理な話ではあった。
で、標的にどのくらい当たっているか師匠と一緒に見に行った。

50メートルの赤丸の標的は結構当たるようになってきたので、オラ的には大変満足であった。
次に100メートルの標的を見に行ったら、黒丸の標的には1発しか当たっていなかったが
それよりも驚いた事は標的板の6ミリくらいあるコンパネを、見事に弾が貫通している事だった。
たかが空気銃の弾と思っていたが恐ろしささえ感じたスーパーペネトレーション!

それにしてもかっこいい師匠の迫力ある銃の構えを真似して
オラも左手で銃を肩付けしたまま持ちもう片方の右手でボルトを引いた
そしてボルトを戻す瞬間、銃を持つ左手のバランスが崩れて
とっさに銃を支えようとして右手が用心金を持つような格好となった。
そして、その右手薬指が思わず引き金に触れてしまい暴発した。
その瞬間「ピキッ!」と音がした。
弾装の透明なカバーが割れてしまった。
十分に薬室に入りきれなかった弾が、暴発の瞬間逆戻りしてプラスティックカバーを
割って出てしまい、ボルトがまだロックされていない状態のボルト室に半分くらい入って
弾が弾装とボルト室の間で首吊り状態になってしまって弾装をを引き出せなくなったようだ。
でも師匠は言った「大丈夫、洗い矢で直る」と。
実際の話そのとうりで、あっけなく元に戻った。
しかし弾装のカバーは真っ二つになってしまったまま元には戻らない。
でも師匠の半年前に買った銃の弾装とは違い今のは割れても
そのまま銃を使える構造になっており助かった。
師匠は言った「日々進化しているんだなこの銃は」と。
逆にいえば完成品ではないって事も言える。

この事件をオラなりに検証してみるとこうだ。
師匠の腕周りとオラの腕周りは2倍も違う。
だから師匠が何気に片手で銃を構えてボルト操作しているのだが
それを真似して力の無いオラが片手で銃を構えようってのが
大きな間違えだったのである。(反省)

「銃は確実にホールドしようね」ってのが今日のご教訓でした。

帰り際師匠は「狩猟解禁までこの空気タンクを使え」って渡してくれた。
多分師匠は「狩猟が始まるまでに腕を上げとけよ」って意味で
オラに空気タンクを貸してくれたんだな。
ホント、親分肌のお人なんだな〜。


師匠から戴いた「熊の手の長煮込みを煮汁と共にラーメンにして喰った。
もちろん、ビンビンに効く一品であった。


その空気タンクの残圧は160気圧まで下がっていたのでドライエアーをすぐに充填しなくちゃならない。
さっそくジマさんに電話して、盛岡で高圧の空気充填してくれる所を教えてもらった。
ジマさんの話では「団地のとある一般住宅で密かに詰めてもらえる」と教えてくれた。
そして「おかあちゃんが応対に出た時は1000円の充填料であるが
お兄ちゃんが出てきた時はしっかりと2000円取られちまう」と言っていた。
さっそく尋ねて行った所は話どうり、民家の門に小さく「マリン調査」とだけ書かれていて
それは、よく見なきゃ分かんないほどの小ささであったが
目端の利くオラはすぐ見つけたのであった。
「おかあちゃんが出ろ」と心で念じていたら、ヤッパリおかあちゃんが出てきて
「ラッキーッ」とよろんこんだオラであった。
小さい作業小屋に手招きされて、ボンベかついて行ったら小さなコンプレッサーがあった。
ホントにこんな小さいコンプレッサーで大丈夫かいなと思った。
「目いっぱい空気つっこんで下さい」と頼んだ。
「10分くらい待っててね」と言われ、そこら辺を探索しながら時間つぶしをした。
きっちりと10分でおかあちゃんが出てきてオラに言った。
「本当は2000円戴くのですが、このボンベには160気圧も残っていたので
半額にしておきますね」と、ジマさんがいってたとおうりの展開になって、チョット得した空気充填。

さっそくこのボンベかついて次の日射撃練習に行った。
プラスチックカバーが半分に割れてしまったままの弾装に弾を詰めて
ボルトを起こし弾を銃身に押し込めようとした瞬間又、ピキッという音と共に
弾装カバーが更に2枚に割れてパラパラと地面に落ちてしまった。
足元の地面を見ると弾装カバーは四っつにバランバランになってしまっていた。
これと言った修理案も浮かばなかったので、割れたカバーの中から比較的大きいカバーを
弾装に付け直して、こぼれ落ちた弾を地面から拾い集め弾装に入れ直してみたところ
カバーがかかってない部分の弾装室から弾がポロポロとこぼれ落ちてしまった。
しょうが無いからカバーがかかっている弾装室に弾を込め、気を取り直して撃ち始めたが
カバーが無い部分が作用してか、弾装と銃身の薬莢室とが斜めとなってしまい
弾が薬莢室手前でつかえてしまい、ボルトで弾を押し込めるのが難しくなり
5、6回ガツンガツンとショックを与え無理クリ弾を押し込んで使う事にした。
その内コツがつかめ、弾装の下部を前部斜め上方に指で押さえながらボルトを
ゆっくりと押し込めると、弾がつかえる事も無くスムースに装填できるようになった。
そんな弾装を使いながらも練習を重ねた。

家に帰ってから、四分の一の弾装カバーしか付いていない情け無い弾装を修理する事にした。
さっそくハンドメイドミノーを作る時、リップに使う3mmのポリカーボネイト板を取り出し
弾装に合うように最初にネジ穴と弾入れ穴の2箇所を穴を空け
それらの穴にゆるいテーパーを付けてから弾装の縁に合わせて周りを
板金ハサミで切り取り、その縁にヤスリを掛け面取りをした。
そして弾装に当たる面にはリューターで削りを入れ
装填の具合を確かめながら徐々に削りを入れた。
クリック穴にはシリコンチューブを切ったものを詰めて、クリックボールとそのバネ止めとし
これでハンドメイド弾装カバーとした。
さっそく試しに弾を込めてみたところ「マッタク問題なし」
これに気をよくしたオラはもう一つ予備にと弾装カバーを作っといた。


左が純正ヒビワレカバー、中央がルーターで削りだした力作カバー、右が量産型カバー

10月に入ってまもなくジマさんから「明日の講習会に行って手続きをしないと
今期の猟は出来なくなるぞ」と忠告の電話を戴いた。
「こりゃ大変!今年の猟期に間に合うように手続きを進めてきた苦労が水の泡になっちまう」と
慌てまくったオラは、師匠の携帯に電話した。
ソーしたら師匠は「猟友会に入るのだったら行けば」と言った。
その時、師匠が前に言ったことを思い出したオラであった。
師匠はかなり前に協会の体質に文句を付け喧嘩し、岩手県で始めての退会者になったそうだ。
その時協会から「銃の弾を買う許可書を発行してやらない」と言われエンガチョされた。
だから師匠は個人でも弾を帰るように、何度も何度も警察に足を運び
誰でも弾を買えるように道をつけた先駆者なそうだ。
そんな曲がった事の大きっらいな、正面から堂々と誰とでも渡り合う豪傑でもあられる師匠だ。

「心配するな、ライカ版の写真2枚と銃砲所持許可書と狩猟免許と射撃証明書
これは多分丙種はいらないと思ったけどな、後は印鑑と6000円くらい用意しとけ」と
「その内ヒマな時申請に連れってやるから」と言った。

コレで万全抜かりなし!次の射撃練習が待ちどうしいいな〜ってか。
とか思って師匠のところに遊びに行ったとき、ジマさんとバッタリと出会い
明日射撃場で落ち合う事になった。
このときスコープの話で盛り上がり、師匠のスコープを覗かせてもらったが
その視野の広さと明るさにおもわず「いいな〜」と思ってしまったオラ。

次の日の射撃場、何故か標的にオラの弾はゼンゼン当たらなく落ち込んでしまった。
そこでジマさんにお伺いを立てたところオラの師匠とは又別な考え方を持っておられ
いろいろとアドバイスやら考え方を聞かせていただいた。
オラの師匠の場合の空気銃の考え方は「精密射撃をするわけでも無し、鴨やキジの目を狙って
撃つ訳でもなし、首の付け根を狙い2、3発くらい打ち込み仕留めればいい」という考えで
あくまでも自分の中の猟という感覚を大事にした射撃に重きを置く考え方。
ジマさんの場合はあくまでもヘッドショットに重きを置き一発でゲームを倒す一撃必殺の構え
集弾率に置き換えて言うと2センチメートルの円の中に5発弾を撃つのであれば
5発ともその中に納めてしまうという、ある意味精密射撃的の考え方なようである。
そんなジマさんの助言どうりにやってみると、標的の真ん中に弾が集まりだした。
試しにジマさんのスコープを覗かせてもらったところ、そのレンズの明るさと
コントラストの表現力にカメラ小僧モドキでもあるオラは参ってしまったのである。
そして、オラもジマさんの銃に付いているのと同じ
リューポルドのスコープを欲しくなったのは言うまでも無い事。
そんなミーハ−なオラであった。
最後にジマさんは「そこまで突き詰めていかないと
この銃の性能(価格も含めて)とバランスが取れない」ような事をオラに説いてくれた。


ブシュネルからリューポルドに、でもマウントが。。。。

それは、釣り大会におけるオラの考え方と一緒で「一期一会」と言う言葉があるが
釣り大会の時の魚相手に、この熟語を使っていいのか悪いのか分からないが
「狙い定めて掛けた魚は絶対にとる」と言う事にあい通じるものがあり
その為には、タックルも含めて、どのくらい自分の精度を高めていくかと言う事だ。
ましてや今回の相手は大型の鳥類であり、半矢にしてしまった場合の後々のことを考えると
必ずクリーンキルにしなければならないという使命感というか義務感もある遊びではあるなと思った。

もちろん、すぐさまインターネットで銃砲店に2週間待ちの
リュ−ポルドのスコープを注文を出したのは当然の流れではある。
ようやく来たジマさんお勧めのリュ−ポルドの4−12×40AO
さっそく箱から開けて取り出すのももどかしく手に取りのぞいて見ると
そのレンズの明るさと、くっきりとしたコントラストには絶句した。
銃に取り付けてからのカッコ良さも絶品で、あまりの嬉しさにジマさんに電話した。
ジマさんは「家の近くに来ているからスコープ見にに行くよ」と言って10分後に来た。

その銃に取り付けられたスコープを眺め、いろいろと指摘してくれた。
まず銃へのマウントベースの取り付け位置と目との位置関係。
レチクルラインの水平度とリング取り付けネジとの関係など。
言われたとおりに修正調整をしていった。
次の日の射撃場での実射調整が楽しみである。

さて朝一で射撃場に到着したオラ、最初のスコープの合わせは近い距離での射撃が
一番手っ取り早く簡単だと言う事でジマさんに言われたとうり25メートの位置に
長ネギの入っていた長い段ボール箱に標的を貼り付け
地面に立て、倒れないように箱の中に石を入れて固定した。

さっそく狙いを定めて一発目の引き金を絞った。
箱の手前2メートルの地面に着弾した。
レチクル調整ネジをUP側に回しながら調整をしていったが、ついにStop位置まで来てしまっても
いっこうと的には当たらず、遥か下40p位離れたの所に着弾し、後はどうにもならなくなった。
それを見ていた隣のライフルマンが、困ったオラを見てスコープやマウントを調べてくれた。
「これはマウントが悪いから取り替えなさい」と言った。
ジマさんも射撃場に到着してオラの銃をいろいろと調べてくれた。
と、周りにいたライフルマン3人も寄ってきて、仲間内で色々と意見交換しながら
見てくれたが結局の所、マウントの取り付け金具が銃身のマウント受け台と幅が合ってなくて
この部分が干渉しているのが一番の問題点だし、スコープ取り付けリングのネジ穴一つが
バカになる寸前だと言う事も判明した。

そして、そこに居合わせたライフルマンたちは「銃の命はマウントにある。」
と言うような事を口々に言った。
ソーイヤ、師匠も同じ様な事を前に言てたような気がした。

しょぼくれてオラは射撃場を後にした。

そして銃砲店に駆け込んだがあいにくと定休日であった。
この晩ジマさんに電話して「俺一人じゃ不安だし、なんたってここで銃を買ったわけじゃないので
一緒に付いて来てくれませんか」と頼み込んだ。
ジマさんは快く承諾してくれて次の日、盛岡にある「武田銃砲店」で落ち合うことになった。
さっそく、マウントを選んでいただき、ついでに射撃の時の銃の安定ということでの
フカンとスリングも銃に取り付けて貰うことにした。
その時、S410の先台の先端部が薄くて不安だというので
純正フカンを取り付けて戴いたのだが、これがまた若干加工がいるものであった。
そして、ここのご主人の仕事振りはとても丁寧で、ジマさんも「ここのオヤジはウマイ」とオラに言った。
「ヤッパリ初めて銃を持つのであれば少々高くても地元の銃砲店から
授業料付きと思ってまず一丁買うべきだな」とオラは思った。
ジマさんも師匠もここの常連さんだったのが幸いして
今回のスコープ事件もすんなりと解決できたようなもので
一人で始めたんであればこうは行かなかったし、やっぱり鉄砲は機械ものだから
いつ何時トラブルに見舞われるか分からないしね、それと地元のお客さんとも
貴重なお話が出来るし、すぐ直してくれる地元のお店はホント大事だなと思った。

さっそく次の日バチッと目が覚めて、盛岡での初雪の中を朝一番で射撃場に乗り込んだ。
今度は大丈夫だろうという確信をもって20メートルの所にセットした標的に撃ちはじめたら
ナント、一昨日と同じで標的の遥か下に着弾した、ガッカリした。
が、このマンウントが入ってた箱にスペーサーが3枚入っていたのを思い出し
それを取り出しリヤのマウントに一枚ずつ足していっては調整した所
2枚目でなんとか納得できる範囲に入った。
左右のブレは少なくこの点だけはホッとしたが、付属の六角レンチを使ったのに
ネジ穴を2本駄目にしてしまった。
ついてきた六角レンチ自体がこのボルトの穴には少しばかり小さく、それが原因でなめったようだ。
そんなオラは射撃の気持ちが萎えてしまったし、空気ボンベの圧力も160まで落ちてしまい
弾を十発くらい撃つと、150圧切るようになって来たので、ネジを探しながら帰ることにした。

スコープに付くようなボルトなんてホームセンターには無いと思い、ボルト屋さんを2軒ほど
尋ねてみたが、ピッチと長さは合うのだが、ボルトの頭が大きすぎて使いモノにならかった。
ヤッパリ餅は餅屋ということで、武田銃砲店に行ってご主人にこのことを話したら
嫌な顔一つせずせず相談に乗っていただくことができてほっとした。
ご主人曰く「S410番はマガジンが銃身よりかなり上に飛び出ているので、なかなか合う
マウントが無く、合ってもスペーサーなどの調整が要るようだ」と話してくれた。
結局合うボルトの在庫が無かったので、店に並べてあった同じ製品からボルトを外してくれた。
それと一緒に、このボルトの穴にバッチし合う六角レンチも付けてくれた。

オラはこのお店でエアアームズ S410を買わなかった事をチョッピリ後悔した。


さてさて次の日、朝一番で行ったつもりの射撃場だがもうクレー射撃している方がいて
出遅れたかなとも思ったが、100メートルライフル射撃場には誰もいなかった。
又例の長ネギが入っていた段ボール箱をセットし、50メートルの所にも標的を貼った。

一発目狙い済まして弾を打ち出すと、的から30センチ下に着弾した。
「こりゃ行けるな」と思った。
後は微調整を数回繰り返しただけで的に弾が集まりだしたので
50メートル標的に切り替えて撃つ事にした。
それでも標的からはそんなに外れる事も無く、コレマタ数回の調整で的に弾が集まりだした。
この時感じた事だが、前に付けていたスコープでは的から外れた弾がどこに着弾したかを
見つけるのには双眼鏡が必要だったが、このスコープにはそれが要らなかった。
それにもまして、百メートルの標的さえも弾痕が見て取れるのがとても嬉しかった。

よこでスラグ弾を発射させていたグループの方が、仲間が撃っているヒマな間
オラの後に寄って来て「ライフルみたいな空気銃だな」とか「ガス銃か?」とか聞いてきた。
それに丁寧に返答していたら一人が「チョット待てよ、その空気銃の弾はショットガン並みのスピードだな
250か?」と聞いてきたが、オラには全然理解できない質問なので「わかりません」とだけ答えた。
その方々は着弾確認スコープまで持ち出して、オラの後にはちょっとしたギャラリーが集まった。
その中の一人が「空気銃に大口径のリュ−ポルドは大袈裟かと思ったが
それなら要るかも知れんな」と言った言葉が非常に印象的だった。
「音もしないから、それならどんな鳥でも撃てるな」とか「夜の鴨にナイトスコープを付ければ
獲り放題だな」とか「リス喰いて〜な」とか、誠にもって不謹慎極まりない会話で
後ろのギャラリーはメッチャクチャ盛り上がっていた。

今日は調子良く銃を撃つ事もできて、とても気分がよくなったオラはその勢いを買って
前から欲しくてたまらなかったニコンのレンジファインダーを、今月始まったばかりだと言うのに
後先考えず、大枚はたいて衝動買いしてしまった。(極貧生活だな、今月は.............。)

さて狩猟解禁も一週間と迫ってきた、チョット落ち着かなくなってきた気分で
最終調整にと射撃場に出かけることにした。
その前にエアータンクの充填に団地の中の一般住宅風の秘密基地っぽいところに出かけた。
詰めれるだけ詰めてと言ったら、女将さんは「コンプレッサーが泡吹くから210気圧が限度だ」と言った。
オラとしては250は欲しい所なんだがな、ムリカ。

今日の射撃はジマさんが「バラクーダの弾はAAのフィールドより重い分殺傷力が強いので
実猟の時は有利に働くよ」との助言を得たので、武田銃砲店で2缶購入し
次の日の射撃場に備えた。

射撃場で働いている方々がくる前に到着してしまい(いつもの事だが)門の前で待った。
すっかりと顔を覚えたれてしまい、射撃手続きもスピーディーにしてくれるようになった。

据銃台をふたつセットし片方の据銃台にはエアータンクを置き
すぐさま空気を詰めれるようにセットした。
今日は師匠からマガジンを借りてきて、マガジン3個を据銃台に並べ
弾を詰めて置き速射の構えで練習をする事にした。
あっという間の一時間でバラクーダの缶をひとつ空にした。
使ってみての感想は、ヤッパリ180気圧の時が一番安定しているし
弾が重たい分、標的に当たった時の音が重くて大きい音がする。
これならジマさんが言ってたように少々ネックショットを外しても
ビッグバードを沈めれられそうな気がした。

二缶目に突入し50発くらい撃ったところで、突然弾がアッチコッチにとバラツキはじめ
スコープの調節スクリュ−を動かした所でマッタク収拾がつかなくなってきた。
銃身を見ると、うっすらと霜がかかっていた。
コリャアカンと思い今日のところはこれで止める事にした。
せっかくバッチリとゼロインを決めたのに、バランバランになってしまった。
もちろんガックリと来たオラ。
ジマさんに電話したら「とりあえずマウントのネジを増し締めしてごらん」と言われたが
ネジはバッチし締め込まされており問題はなかった。

その日の午後は狩猟猟者登録証交付日だったので、重い足取りのまま会場へと向かった。
受け付けで「あんた!どこの支部」って怖い顔と口調で地元猟友会の爺さんに聞かれたが
「ェ、チョット待ってください、ゴニョゴニョ」って訳のわからない事を言って、会場に逃げ込んだ。
師匠に、この事を言ったら「俺に付いていれば大丈夫」と言って笑った。
肝心の狩猟者登録証の交付は「その他」のクラス分けで難なくもらえた。

例の事を師匠に話したら「サルのセンズリみたいに限度知らずに撃ちまくるから
銃身に傷が付いて使い物ならなくなったかも知れんな
修理に出すしかないかもナ」と言われてしまった。
それを聞いてオラは奈落の底に落ち込んでしまった。

側にいたジマさんは「そうかもしれないが、たぶん銃が落ち着けば元に戻るよ」と
慰めてくれたが、それには土曜日の射撃場の結果待ちいかんである。
そんな気が晴れないまま、師匠率いる軍団の狩猟解禁祝いの席に呼ばれていたので
その日の夕方、末席を汚しに出かけるオラであった。

その会に行ってわかった事だが師匠の率いる軍団名は「山窩衆」という名の会であった。
その方々に混じってお話を聞いていくと、どうやら山に放たれた一匹狼たちが
鹿撃ちや熊撃ちの時に、一致団結して仕留めていく集団らしい事がわかった。
先ほどの狩猟者登録証交付会場受付にいた猟友会の怖い爺さんと違って
師匠はじめエラっぶった人は誰一人おらず、本当に山歩きが大好きな方々が
チームワークを大切にし、皆同じ標的に向かって対峙するという主旨の会のようであった。
もちろんオラもその会に混ぜてもらう事を皆にお願いして
山窩衆の2軍の端くれにしてもらったのは当然の事である。


「撃ち落したキジバトはどこだ」とジマさん

その席でジマさんにエアアームズ S410の相談をしたのは言うまでも無い事で
ジマさん曰く「銃腔内のクリーニングしてみた方がいいな〜」と言われ
酔った頭でその手順を聞き頭に叩き込んだ。

次の日さっそくクリーニングをやってみた。
途中から分からなくなり、ジマさんの携帯に電話しながらアドバイスを受けながらやってみた。
そしたら思ってもみない、とんでもない黒い鉛カスがバシバシ取れた。
これじゃ銃口内を貫通して行く鉛弾に影響しない方がおかしい事だと思った。
このクリーニングには1時間も掛かったのだが、そのくらい銃口内はヒドイ汚れ方だったのだ。
皆さんも今一度クリーニングをした方が良いですぞ。
げっ!と思うほど汚れてるよキット。

次の日ちょっぴり不安な気持ちを抱きつつ射撃場に車を走らせていたら
ジマさんからの「今から射撃場へ行くよ」という心強い携帯が鳴った。

さっそくスコープを覗き一発目、とんでもない所に弾が飛んだ。
嫌な予感。
左へと調整ネジを回して行くが全然弾が中央に寄らず焦った。
最後のストップの位置まで来た。
「ナンデコーナルノ」
そーいや昨日銃ケースに入れたままではあったが、立て掛けようとしたら手が滑って
バッタンと倒しちまったもんなと後悔した。

ジマさんに又泣き付いたら「マウントを逆に付けなさい」と指示をもらった。
スコープを取り外してマウントを逆に取り付けてみたところ完璧に治ってしまった。
「流石ですねジマさん、治りましたよ」と言ったら、ジマさんは
「俺の場合、今の位置に合わせるのに、30回近くマウントの入れ替えをして
今の位置にようやく治まったのだよ」と【修行が足りん】と言うような顔をして語った。

ジマさんが居てくれたおかげで、オラは空気銃に目糞ポッチも悩まなくていいのだ。
空気銃のメカニカルな事はもちろんの事、空気銃の果てを知り尽くした頼もしいオラの先生である。

そんなジマさん「良い事してあげるから弾の缶を貸してごらん」と言った。
差し出した弾が入った缶に、なにやら薬をパッパと振り掛け、素早くその薬入れを仕舞った。
「その弾で撃ってごらん」と言われたので、薬の付いた弾をマガジンに込めて撃った。
驚く事に弾のブレがまったく無くなり集弾率が異常に高くなった。
「これなんなんですか」と聞いたら「魔法の く す り 」と
茶目っ気たっぷりにジマさんは答えた。
「今度持ってる弾をミンナ持ってきてごらん、振り掛けてあげるから」と
ジマさんは言ったきり、その薬は永遠に謎に包まれたのであった。

そうそう、銃身が駄目のなった件も何事も無かったように元どうりになって解決した。
ハイになったオラは「ジマさん他にも有るんでしょ、 ま ほ う が。」と聞いたら
ニヤッとしたまま、トラップ場の方にフッと消えてしまった『魔法使いジマさん




そんなジマさんから教えてもらった、ペレットケース。
そのケースは、ダイワ精工から釣りのオモリ入れとして
売り出しているモノを流用。
このケースに合わせた厚さの、ネオプレーン製のラバースポンジを
3室分切り抜き、ペレットに合わせて二回り小さい穴を
ポンチでくり貫いていく。
ケースと穴開きネオプレーンの接着には
両面テープで貼り付けて完成。
なんとこのケースの内寸の高さが
このペレット為にあるのか、と言うくらいぴったりの高さで
コツっともいわないで、ガタがまったく無いにに驚いちゃう。
この穴にペレットを弾頭部分から差し込んだら
その上からペレットルブを振り掛けると
モアベターであります。
後は室ごとに、バラクーダ・AA・デイステートなどと
仕分ける事もできる。
コレでペレット同士がぶつかって、変形してしまう事も
防いでしまっちゃうというスグレモノだ。








師匠は、こやつ等をドロガモと言って相手にしない。
結構美味いのにねェ〜。


いよいよ解禁日が近くになるにつれ、落ち着かなくなってきた。
師匠から「下見に行くぞ」と電話をもらった。
「空気銃の場合は散弾銃が遠慮するような場所を選んでやるからな」と言われた。
「今日はソーユーところ選んで下見をする」と言って車を走らせるのであった。
それは盛岡市内周辺の民家が散在する田んぼであったり
畑の脇や、それこそ民家のすぐ脇であった。

本当にこんな所にキジは居るのかなと半信半疑で車を走らせていたら「STOP!」と師匠が言った。
「ホレ、そこのあぜ道に居たぞ」と言われ双眼鏡を覗き込んだら
丸々と太ったキジのオスが首を伸ばして警戒しているよな雰囲気を見せながら居た。
オラは双眼鏡ごしに見るキジは初めてなので感激し見とれていたら
「距離を測れ」と師匠に言われた。

さっそくニコンのレンジファインダーを取り出し、キジの頭にクロスヘアーを合わせ
 引き金を じゃ無かった、測定スイッチを押した78メートルと距離が出た。
師匠は「向こう側の道路から来て、手前で車を置きソット近づいていけば一発でバンだな」と言った。
レンジファインダーの仮想射撃で取りあえず1羽ゲットだ。
しかしこの地区は、このオスキジ1羽のみで、他は見当たらなかった。
「こんな荒れた日なんだから、もっとキジの姿見てもおかしくは無いはずなんだがな」と
師匠は首をひねった。

「今度は盛岡市内を縦断している北上川の川原に行くぞ」と師匠は言った。
川原に降りて間もなくカラスの群れに混じってオスキジが居た。
さっそくスコープならぬレンジファインダーのクロスヘアーをキジの頭に合わせ測定ボタンを押した。
28メートルと出た、もちろんコレは一発ゲットの鳥だな。
嫌な気配を感じたんだろうか、そのオスキジは頭と尻尾をピンと上げて畑の端を逃げていくと
その途中でもう1羽がそれにつられて走り出した。
「これで定量だな」と言ったら「師匠はあと1羽見ないことには二人で4羽定量にはならない」と言った。
さてもう一羽だがヘラフナ釣りの最後のしめ「アガリベら」の一枚ってのは、なかなか釣れないモノで
それと同じように「あがりキジ」には苦戦したが、対岸に渡ってようやく1羽見つけた。
コレで心置きなく家へ帰れるってもんだ。
師匠は最後に言った「空気銃は、ナガシとシノビ だからな」と。

鉄砲を始めようと思ってから半年「どこかにキジはいないか」と釣りの行き帰りに気をつけて
探していたんだが、飛んでいるキジ2羽と畑にいたキジ1羽の3羽しか探せなかったのに
今日一日で4羽なんて「さすが師匠すごいな」と改めて感心した。
そんな師匠は言った「もし撃ち損じてもキジは同じ時間に同じ場所に出てくるから
その時の時間は必ずチェックしておくように」とキジ撃ちの極意の一つを授かった。



5時半、けたたましく目覚しい時計が鳴った。
と鳴るはずだったが、ショセン腕時計のアラームは小さい音で目が覚めるまでには至らなかった。
ぼんやりとした頭で腕時計の文字を読んだらナント5時40分「ヤッベー」と飛び起きて
師匠のうちへ急ごうと表に出たら、雪がワンサカワンサカと降っていて
車はスッポリと雪で包まれてダルマサン状態。
急いで雪を払い車を出した。

師匠の家に着いたら、ジマさんも居て、お茶を飲みながらオラの事を待っていてくれていた。
初っ端からトンだ失態、不肖の弟子であった。
「この雪ではキジは望めないな」と師匠。
「木の枝に雪が積もっている間は、キジはブッシュの中でじっとしている
この分じゃ3日は出て来ないけど、解禁日だから行っては見るか」と語った。

ポイントを次々と見ながら車で流していったが、11月中旬にしては記録的な積雪と
寒さのせいかキジはまったく見えなかった。
「それじゃ鴨を狙いに行くか」という事で、北上川の川原を流す事にした。
そして間もなく鴨の群れが岸よりで休んでいる所を発見した。
しかし車でその鴨達の脇を通ってしまったので、そのまま車を進め知らんぷりを装った。
しばらく車を進めてから駐車して、射撃の準備をし大きく川原を迂回して
先ほどの鴨がいたポイントへ忍び寄っていった。
「俺は右に迂回していくから、あんたは左に迂回して行け」と師匠の指示で進んでいった。
ポイントの目の前に師匠とオラが着きスコープを覗こうと思った瞬間、師匠の鉄砲が噴いた。
その刹那、鴨はいっせいに飛びだった。
その後からジマさんのマグナムショットガンが火を吹き一羽が落下した。
オラはただただ唖然として見るばかりで、デジカメのシャッターさえ切れなかった。

その丸々と太った鴨は初猟のお祝いでオラが戴いてしまった。
もちろん即解体して2時間後にはオラの胃袋に入ってしまった。
御味はって?モチロンうまかった〜でっしょ。

あくる日は師匠と二人でチョット遠くまで流しに行った。
ヤッパリ雉は全然見えなくて、ただただ車を流しているだけだった。
小道に分け入っていくと、小さな堤があっていきなり視界が開けたと思った瞬間
タカブーの群れに当たった。
師匠は慌てて車をバックし、この小道から抜け出て、可猟区の確認がてら
近くのお店に行って朝食をとることにした。
先ほどのタカブーのいた堤を少しの時間では有るが休ませてから
再度忍びで攻める事にした。

30メートルくらいの距離でスコープを覗き引き金を絞ったと思ったら
それと同時に師匠の銃も噴いた。
が、一羽も落ちずに飛び立たれてしまいゲームセット。
かくして、オラの猟解禁デビューの第一章は終わった。

コレで大体の猟の仕方がオボロげながらも分かったような気がした。

解禁三日目、連荘の朝5時半起きがたたり日の出の時間には起きれなかった。
8時に家をでて、昨日のタカブー(地元ではコガモの事をタカブーと呼ぶと言うらしい
「なんでタカブーって言うんですか?」と師匠に聞いたら「コガモは他の鴨より高く飛ぶから
高飛と言うんだ、しかし実際の所は体が小さいから高く飛んでるように見えるだけじゃないかな」
と言った、[何でも知ってる師匠だな]とオラは思った。)の居た池へ急いだ。
が、ものけの空でガッカリした。
しょうがないから、周りの畑を地回りするかと思い、車を山沿いの畑の方向に
走らせようとした途端、脇の草むらから大きな雉が飛びだった。
「こんなとこにいるのかよ〜。」
またもやガックシ。
師匠の教えのとうり雉が居た場所と時間だけはメモ帳に書き込んだ。
これがオラが見つけたポイント1であった。

その又あくる日、一人で北上川の岸辺を車から降りて歩きの忍びで雉を狙う事にした。
雉がオラを見つける前に、オラが先に見つける作戦なので
忍者のように川原をコソコソと歩いた。
双眼鏡を持って辺りを確認しながら、そして肩に銃を担いでいると
フト子供の頃の戦争ごっこ思い出してしまい、何時の日でも楽しかった子供の頃の
アトランティスの国に入り込んだみたいで、とってもウレシイっていうか
楽しくなってオモシロイなっと、狩猟界。

そんな事を思いながら気を抜いて歩いていたらキジに見つかってしまい
またキジのケツ穴を見る羽目になってしまった

そんじゃヒヨドリを狙ってみる事にしたが、木の枝にとまっていたヒヨドリ君には当たらず
周りの木の葉が散っただけに終わった。

カラス君の場合は肩から銃を下ろすだけで逃げられる始末

そんなイチネンッコの狩人は、ことごとく鳥たちにバカにされるだけだった。
それでもしつっこく通っていた11月21日午前10時
前に師匠と一緒に地回りしていた里山での事。
チョット小降りの雨模様の日。

百姓家がある段々田圃に車が差し掛かったときであった。
キジ君が一生懸命地面に落ちた稲穂を一心不乱についばんでいたのでした。
オラの心臓はドクンと響きブレーキを踏みそうになった右足をこらえ
何食わぬ顔で、車のスピードを落とさず通り過ぎたのであった。
しばらく行った道路のふくらみに車を止め、ドア−の音を立てないようにして
銃を持って先ほどの田圃に急いだ。

「アレッどこの田圃だっけ」と分からなくなってしまったので
静かに忍び寄って一枚づつ田圃を確認した。
次の田圃に間違いないと確信したその時、キジ君が背伸びをしてオラの眼と合ってしまった。
「サアーどーするキクチ君」と自問自答。
「よしっ!」と意を決して、立射の構え。
モタツク事無くクロスヘアーに合わせたキジ君の頭。
でもハズシたらという思いが一瞬頭の中をよぎり、クロスポイントを下げ首根っこに合わせ
「パシュン」と一発、キジ君くの字になってオラオラと歩いた所にもう一発。
田圃のあぜ道にもたれ掛かるように倒れた。
念には念でもう一発、止めの1矢を刺した。


そして、オラの帽子で生き続けるのだ。

これでようやくエアーライフルハンターになれた、という御粗末な顛末記でした。

初めて食べるキジ君のお味はというと荒々しさが無い、とっても日本的なお味で
ドーンと味が前面に出ず侘び寂に通じる味、さすがニッポンの国鳥だなと思った。





念願のアオクビくんを食べたの巻

「どうしてもアオクビを食いたい」と思って、銃を持つ事にしたって話は文頭に書いたよね。
さてその後どうなったかという話の続き。

狩解禁日にジマさんが撃ち落したカルガモ君を、初猟祝いで戴いて美味しく食べたのではあったが
それからのオラはどうしても自分で撃ち落したアオクビ君を食いたいとの一念で
この初猟ポイントに日参したのは言うまでも無い事で、ちょっとした空いた時間があれば
家から往復1時間で行ける結構近場の、このポイントに日に何回も足繁無く通った。

そんな11月の26日のこのポイントに通い始めて11日目の朝である。
橋の下流から順々にポイントを見て下りて行って、最後のどん詰まり
銃猟禁止の赤い看板があるところまで下って来た。
[ア〜ア今日もスカか。」と毎度の事なので、そう落胆もせず車をUターンし帰る事にした。

チョット走って上流の中州を見てみると、その中州後端部に黒いものが5個浮かんでいた。
さっき見たときは何も無かったのに変だなと思い、車のダッシュボードからニコンを取り出し
覗いてみたらなんとカモ君ではないですか、それも念願のアオクビ君。
ヤッタとハヤル心を押さえて忍者のように慎重に近づいていったら、ナナナント推定60羽のアオクビ君の
中にポツポツとカルガモ君が混じった大群が、その中州の手前の緩くなった流れに群れていた。
こりゃ〜イタダキとばかりに銃を構えてスコープを覗き込んだ。
、その中から一番大きい奴にリュ−ポルドのクロスヘアーを、そのアオクビ君の頭に合わせた。

前の日曜日に、木こりのケンチャンの案内で深山奥の浅くて小さい透明度のメチャクチャいい
砂防堰堤に案内された時、ヒドリガモが、その堰堤の真ん中にポッカリと浮いていた。
こりゃ〜イタダキとばかりに銃を構えてスコープを覗き込んだ。
一回は頭に合わせたのだが、ヤッパリ自信がなくて首の付け根にクロスヘアーを合わせて
引き金を絞ったところ、弾が当たった瞬間に水に潜られてしまい見失ったのだった。

イヌワシの目を持つ男といわれたケンチャンでさえも探せなくて
堰堤の周りをうろうろと目を凝らし探していたら
堰体のコンクリートの端で、その鴨がようやく浮いて来たのだった。
がしかし、そのカモ君は息をするや否やすぐに水に潜るので、リュ−ポルドのクロスヘアーは
合わせられずじまいで地団太を踏むのであった。
堰堤の脇の土手から、その堰堤の中を見ていると、例のカモ君は一回呼吸をすると
潜水したまま3分以上底を這うようにスイスイとラッキョウのよな格好で泳いでいたのであった。
そんなカモ君をケンチャンと二人で感心して見ていたら、急に見失しなってしまい
そのままどこへ行ってしまったのか分らなくなってしまった。
という、お粗末な一件があって、そんな話をジマさんにメールで報告したら
「あんたは解禁前の射撃場で、標的に弾を集めていた良い腕を持っているんだから
自信を持って頭を狙いなさい、特にカモは矢強い鳥なんだから、なおさら頭を狙わなきゃ
ほとんど半矢になってしまうからね」とメールで叱咤激励されていたので
オラは意を決して推定50メートルの距離にいるアオクビ君の頭にクロスヘアーを合わせたのだった。
ジマさんに前から注意されていた「ガク引きにならないように!」というのを念頭に置き
ゆっくりと引き金を絞った。
その瞬間アオクビ君は頭を水中に入れたままクルクルと水面をのた打ち回りあっけなく絶命した。
そのアオクビ君50メートル先に浮かんだままで回収不可能かと思われたが
こっち岸に微風ではあるが向かい風が吹いて来たので、ウエイダーを履き
4メートルの磯タモを伸ばし、じっと待つ事にした。

ようやく寄ってきたアオクビ君だが、こっち岸手前の川の流芯に乗ってしまい
今までののろさが嘘のようにスピードを上げ流れ去って行くのであった。
慌てたオラは走って先回りをしようと岸際のテトラの先端に急いだら
ズルッと滑ってしまって、胸まで浸かってしまい冷たい川の水がウエイダーの中に
チュルチュルと入ってきてポコチンがキュルルンと縮みあがった。
ウワッ!と言ってるうちにアオクビ君がもの凄いスピードで下ってきたので
慌てて磯タモを出すもアオクビ君に届かず、更に踏み込んだらウエイダーの中に
更に水が浸入してきたが、ウギャ!なんてことも言ってる場合じゃなく
更に更に川の中を進みアオ向けになったアオクビ君を
どうにか無事にキャッチしたというミットモハップンな話ではあったな。

そんなアオクビ君は、お約束の鴨鍋にして美味しくオラのお腹の中に入ったのであった。
お肉はモチロンの事、なにがウマイってレバーが一番美味かったな。
血抜きしている段階で溶けはじめる、そんな柔らかさと舌の上でとろけるような
メローな舌触りが 絶品!絶句!フォアグラなんかタダのレバーに成り下がってしまうくらいの美味さであった。



見よッ脂ノリノリ鴨蕎麦




キジはウジ虫のように湧いてくるの巻き。

師匠は昨日、山窩衆の仲間を集めて鹿撃ちに行った。
もちろん二軍のオラも誘われた。が
毎年の事であるが、オラの店は12月の宴会シーズンに突入してしまい
ここ両日お客さまの予約で埋まって、午前の早い時間少しなら何とかなるが
マル一日となる遠征にはとても行けそうも無い状態で、しごく残念だが鹿撃ちには行けないのであった。


鹿の脳みそベーニエ,タルタルソース

次の日、鹿の脳ミソをねだりに師匠に家に朝早く尋ねて行った。
早起きの師匠、さすがに昨日の巻き狩りの疲れが残っていたようで
たった今起きたと言って「久しぶりの山歩きで足が痛い」と言いながら、鹿の頭を見せてくれた。
その頭はライフルの銃弾が当たったのか角の先端が欠けていた。
ひとしきり鹿猟の話を聞いてからオラは「これからキジ撃ちに行きましょうよ」と誘ってみたが
師匠は昨日の今日なので、あまり乗り気じゃないようだったが強引に誘った。


師匠の御狩場

師匠の御狩場をグルッとめぐる事にし車を走らせた。
その御狩場である部落の入り口の峠脇にある林檎畑に
キジが数羽いるのを師匠がいち早く発見した。
その群れはオスが一羽にメスが五羽のハーレムスクールであった。
もちろん師匠は、その中のひときわ立派なオスキジにスコープを合わせるや否や引き金を絞った。
師匠の速射にガクンとそのオスキジはうなだれる様に倒れた、もちろん即倒である。

師匠は昨日の鹿撃ちの余韻をまだ引き摺っているようで、猟調子が良さそうだ。
その峠の反対側の斜面に車を走らせていると、田圃の脇のススキの近くにコレマタ立派なオスキジが
ジョキンと首とシッポを立てて仁王立ちになっていた。
もちろんこのオスキジも師匠が見つけた。
「撃ってみるか」と師匠が言ってくれたので、お言葉に甘えてオラが撃ち取る事にした。
推定距離は20メートで、今までに経験した事の無い近距離までストーキング出来た。
スコープの中に見えるキジ君の頭は500円硬貨くらいの大きさに見えた。
じっくりと狙いを定め静かに引き金を絞った。
が、あまりにも間合いが良すぎたためか、キジ君の頭をかすめAAのフィールド弾は跳んで行った。
そのキジ君は「ギャギャアギャアッ!」と大騒ぎしながら林の方へと飛んで行った。
オラは失敗したのを隠すように「やけにうるさく騒いで飛んでいきましたね」と話題をふったら
師匠は言った「あのキジが居た周辺に仲間がいるから、派手に警戒音を発しながら飛んで行ったな」と。
そして続けて師匠は「条件が良すぎたな」とオラの失敗を慰めるように言った。


キジ林に虹が。

この失敗した一矢で、今日のキジ猟は終わったなとオラは落胆した。
師匠は「今日はキジがやけにさわぐ日だな、こういう日は大きく回ろう」と言った。
この部落を一回りして一山越えた次の部落に入った。
そして間もなく田園のはるか向こうにキジらしき物を発見したオラは、ニコンを取り出して確認した。
それは紛れも無くオスキジであった、しかも彼女を連れたスカシタ野郎だった。
少しばかりそのオスキジに近づいていったら、そのスカシタ野郎はぺッタンと座り込んでしまった。
これ以上近くに寄ると飛ばれそうな雰囲気だったので、この位置から撃つ事にした。
レンジファインダーを取り出しクロスポイント合わせたら87メートルと出た。
この距離は未知の世界で、撃ち取るのはまったく持って自信が無い。
オラの遠距離撃ち落しの最高は74メートルのヘッドショットのカラスだ。
あの時はカラスの頭から500円玉一つ分クロスポイント上げて撃って正解だったので
今回は二つ分クロスポイントを上げて静かに引き金を絞った。
またしてもキジ君は「ギャワギャワッ」と騒いで逃げて行った。
続けて彼女も飛び出して行った。
師匠は弾を外した事に付いては何も言わなかったが
「銃を構えてから撃つまでが長い」と一言だけ言った。
その一言はアッパーで突き上げるボディーブロウのように深く効いた。
ここまで来るとオラは、ただ笑って誤魔化すほかなかった。

そこから少しばかり行くと、葡萄畑が連なる所に出た。
そこでまた師匠が素早くオスキジを見つけた。
哀れに思ったのか師匠は「ヤレ!」とオラに言った。
「ワカリヤシタ、オヤカタ」とオラは気合を込めたが、同時にこれを外したらと思うとゾッとした。
スコープを構えた時、師匠は「胴を狙え!」と静かに言った。
どうやらオラが銃を構えてから撃つまでが長いのは、ヘッドショットに
こだわっているからだと見抜いたようであった。
オラはスコープのクロスポイントを一旦はオスキジ君の頭に合わせたが
今度はそれを下げて行き、首根っこのちょっと下の胴に来た時引き金を絞った。
キジ君はヨタヨタと歩きバタンと倒れた。

師匠は、3度目にしてようやくキジを撃ち取った出来の悪い弟子に失笑しながらも
「今日はキジの特異日だな」と言った。
ようやく調子が戻ったオラはノーテンキに「キジはウジ虫の様に湧いてくる」なんてヘラズ口を叩いた。
そして「今日は仕事を休むので、徹底的にキジを狙いましょうよ」と師匠に言ったら
師匠は「そう変な色気を出して、むきになってやる時に限って後が無いもんだ
仕事ぐらいは真面目にやれい」と叱ってくれた。
その帰りの道すがらメスキジだけだったが六羽見た。


just1.3kg

その晩立派な1.3キロのキジ君を解体してみたら、砂肝には葡萄の種がぎっしりと詰まっており
砂肝の内側の硬い皮の部分が普通は黄色い筈なのが、葡萄色に染まっていた。
取り分けたキジの部位も、こころなしか薄っすらと葡萄色に染まっており
葡萄の香りすらするようだった。
さっそく砂肝、心臓、肝臓に塩胡椒して焼き鳥にして食べてみたところ
砂肝は口の中に入れて噛んだ瞬間、葡萄の甘い香りが口中に広がった。
ささみの部分は軽く湯がいて、塩だけで食べてみたら
ヤッパリ葡萄のほのかな香りが鼻の奥に広がった。
この葡萄キジ君は正月にメデタク喰う事に決めて、3日くらい熟成させてから
ギッチリと冷凍にする事に決めたのであった。



あっという間だったナ

2月15日狩猟終了日....だ。
フッーとして、ヤレヤレという安堵感と満腹感が入り混ざって
なんだか脱力の感じが、少しばかり残った狩猟終了日だった。

銃の取り回しも、おぼつか無いまま11月の15日に始まった初めての狩猟。
「本当に、こんな場所で銃を振り回しても良いのかな」と、緊張と不安の狩猟。
そして、初めてコガモという名の獲物に向けて銃のトリガーを引き絞った時のアドレナリンな狩猟。
「ヤッパリ、あんなチッチャい弾なんか当たるわけね〜よな」と、弱気になってしまった狩猟。
ここまでは何が何だが分からないままに、師匠の後をひょこひょこと付いて回った狩猟。

タマタマ運良く一人で見つけたキジに向かって引き金を引き絞りった狩猟。
そして初めて銃で生き物の命を奪った狩猟。
ウレシイのにはウレシかったが、ナンカ心が苦しい部分が、ヤケに残った狩猟初獲物だった。
一発目の銃弾がキジの胸に入った時、ガクンと腰が落ちたキジを
スコープ越しに見た時のなんとも言われぬ哀れみを請うようなキジの眼。
それを振り払りはらうように、弱弱しく逃げるキジに一発二発と打ち込んだ。
その次の日の晩、初猟祝いの酒を飲んだが、酔えば酔う程あの時の光景が
頭の中でグルグル回りだす。
それを振り払うようにシコタマ酒を飲んだ。

次の日、師匠とヤマドリ探しに行った時の車中「狩猟の時もそうなんだが、生き物を殺しているという点では
釣りと同じなんだけど、鳥の場合オラたちと同じ地上に住み同じ空気を吸って生きているもの同士
その生きとし生けるものを殺した時の後ろめたさとは、どういうふうに考えたら良いんだろう」と聞いてみた。
師匠は間髪入れずに言った。
「ふた昔前、盛岡市の砂子沢に住んでいた伝説の熊猟師
梅村の権兵衛さんは、銃で熊を狙い無事に仕留めた後
熊を迷わないで成仏させる為に呪文をこう唱えるんだ」と言った。

その時オラは「多分マタギ言葉での意味不明な独特の山言葉で呪文を唱えるんだろうな」と考えた。
そして師匠は一呼吸置いて言った。
「その時マタギの権兵衛は、こう言う風に言ったんだそうだ 俺に喰われてクソになれ!」と。
それを聞いたオラは、心の壁に張り付いたキジのあの時の眼がガサガサと言う音と共に
ガッハッハと、どっかに消え飛んでしまった。

「可愛そうだったなと哀れんだりしたら、殺された方は成仏できんだろうし
そんな負い目を背負ってなんか獲物に銃を向ける事は出来ない。
だから弱肉強食、強いものが弱いものを喰って生き永らえる精神がないと駄目だ。」
と師匠は言い放った。

食い物のほとんどは、誰かが命を奪ったモノばかりなはずだ。
それにお金を出して、買って食ってるのはオラ達な訳だ。
イマドキの子供達の中には、スーパーの陳列棚で白いトレーに切り身になって
キレイにラップがかかっているいるのが、魚とか豚だと思っている子もいるそうだ。
つまり、お菓子と同じ感覚であり、オラたちと同じ血が流れている動物とは思ってないのだ。
だからチョット美味くないとか冷めたからと言って、その子らの親でさえ平気で残し捨ててしまう。
狩猟を始めたオラは思った。
手の平の中で最後の命を振り絞り逃げようと、生暖かくもがいている鳥を
自分の指と手で命を奪って喰うのが狩猟と言うもの、だからいっそう大事にして
喰ってやらんと駄目だなと思い、ありがたくその命を頂戴する事を身をもって学んだ。
し、なんの食い物でもちゃんと食べてやらんといけないなと思った。

そんな弱気な心で始めた狩猟だったが、師匠のあの言葉を聞いてからはプツッと何かが吹っ切れた。
それからのオラ、今では丸丸としたキジバトをると口の中で唾が湧き出るほどになったし
嫌われ者のカラスを見た日にゃ、即射の構えが当たり前になった。
や〜や、チョットブルーが入ったか菊池君。
閑話休題。

師匠が猟期が始まって間もなくこんな言葉を吐いた。
「久しぶりに鳥ッコ撃ちしてみたんだが、ほんとに山と言わず里にも鳥ッコの姿が見えね〜な
オレが散弾銃を持ちはじめた頃は、キジバトはもちろんの事、ツグミやらヒヨドリなんて
石をぶつければ当たるほど居たもんだ。犬を掛ければキジなんか群れでドドドッーと
走り回り、晩飯前の一発てな感じで、やろうと思えばナンボでも獲れたもんだ」と。
それから間もなくして猟期も中盤に差し掛かったころ、地元の新聞に
「狩猟愛好家は嘆く」と言うお題で、今年の猟はさっぱり良くないと載っていた。
その記事では、今年の夏は雨ばかり降っていて、盛岡の街の中を流れる中津川が
こんなに何回も大水で氾濫した年も無い。
(ソーイヤ今年の鮎釣り、いつもの年なら60日は出漁するんだが
今年は10日しか川には入れなかったくらいの、大水だらけの年だったナ。)
そんな雨だらけの夏でせっかく卵から孵った雛鳥たちが、雨に打たれすぎて
死んでしまったそうで、それで今年は大不猟の年になってしまったそうだ。

だからって言うわけでもないが、猟の後半はキジはキジでもキジバト狙いに掛けてみたのであった。
だって、焼き鳥にして喰ってみたら、こんなに美味い喰い物はネ〜ナと思ったんだも〜ん。
鴨からはじめスズメまで、いろんな料理方法を駆使して食べてみたんだが
一番美味い喰いかたは、腹割にした獲物に塩を振り掛けただけのオーブン式焼き鳥が一番美味かった。
新鮮な味はもちろんの事、3日くらい置いてから喰った、熟成した味もまたよかった〜。
なんたって、この喰い方は「何を喰っているか」が、はっきりと分かる喰い方だもんね。

その次にウマかった喰いかたは、水から煮ただけの、お手軽水炊きが美味かった。
煮あがった獲物にカボスとかライムとかスダチをフッリっと掛けて
塩を少々ピッチッと付けて、喰らい付くってのが、オラのお気に入りの食い方になった。
これでキジをやっつけるとキジ肉独特の酸味が、いやみ無く際立って特に美味いナと思った。
し、なんたってキレイに骨から肉が外れてくれるので、喰った後の征服感には格別なモノがあった。


キジのサムゲタン


これのバリエーションとしては、朝鮮人参ともち米とナツメとで、もっと煮込むとサムゲタンになる。
チョット薬臭さが際立つ部分があるが「この匂いが嫌いだ」って家族には不評を買った。
そんな奴らには、もう喰わしてやんない!と思った。
でもオラは、そんな薬臭さが結構好きだしぃ。
これを洋風にアレンジして「キジのスープ仕立て」とか言って、常連さんに食わして上げたら
「中国では、もち米をいろんな形にしてテーブルに出してきてくれるけど
この店で、もち米料理を味わえるなんて感激」と言って、とっても喜んでいた。
おいおい、もち米料理じゃなくキジ料理だっつーの。
だからオラ的にはチョット許せなかった。
ほんで、これは永久封印にした。

で、その煮出したおつゆは気取って言うとブイヨン、もっと気取ればブロード。
これはもちろん蕎麦の汁にしても良いだろうし、これでリゾッ作ってみれば
その美味しさにたまげるだろう。
これはオラの店の十八番の料理となった。


リゾット仕立て


こうして書いている間にも唾が舌の両脇から溢れ出てくる。
ギョェッギョェッギョェッって鳴きながら飛んで行くヒヨドリなんか見たときも
唾が噴き出るようになった狩猟。

さて猟期も終わりに近づき、銃身の中を前と同じ手順でクリーニングして
たっぷりのオイルで拭いてしまおうと準備をして始めた。
相変わらず銃身の中は真っ黒の鉛カスで、中を通してくるキッチンタオルペーパーは
真っ黒に汚くなって銃口から出てくるワ出て来るわ。
だいぶ鉛カスも取れて中を通してくるキッチンタオルペーパーにも付かなくなってきた。
最後にオイルをたっぷりめにつけて銃口から引き出そうとしたら
銃口から30cmの所でキッチンペーパーが切れてしまい、滞弾ならぬ滞紙になってしまった。
どーしようモノかと考えて「エーイ、ボルトを引いて一発ブチかましてやれ」と
引き金を引いてみたら「ポツン」と情けない音を出して手元近くにある
二つの穴から圧縮空気と共にキッチンペーパーの繊維が飛び散った。
こりゃまずい事になった右往左往して、狼狽してしまったキクチくん。
洗濯屋さんでくれる針金のハンガーを伸ばして、銃口から突っついてみても
キッチンペーパーは固く詰まってしまい、うんともすんとも言わない。
ヤケになって3発ほど撃ったが、やっぱり駄目だった。
こういう時は師匠に聞くのが手っ取り早いと携帯に電話したら
「銃を持って来い」と言われたので、師匠の家に急いだ。
師匠は玄関の所にいて「これで詰まった紙を掻き出せや」と、螺旋状になった
クリーニング棒を渡してくれた。
これを銃口か突っ込み、詰まった紙に当たった所でクリクリと回したら
ワインのコルクにソムリエナイフを使って差し込むような感じで刺さって行き
そのまま引き抜いたら、ワインのコルクのように一発では取れないが
少しづつ取れて来たのでオラはナンカほっとした。
あらかた取れたところで、シンチュウブラシで残っている紙をかき出して
事なきを得たような気がした。
乱場に銃を持って行きボルトを引いて撃ってみたら、かみふぶきが舞った。
それを何回か繰り返し最後にペレットを装弾し推定50メートルにいたスズメの
足元にスコープを合わせ引き金を引いた。
ペレットはスズメの足元の小枝に当たって、もちろんスズメは慌てて逃げた。
「ア〜良かった、なんでもなくて」という
お粗末な一件で今期の猟は幕を閉じた。



さて、ここまで来るには一人では、こうはいかなかったな〜と、今更ながら思った。
前文にも書いたが、ホトンド今までのオラの趣味は師匠を持たないで
一人でこつこつと一歩進んでは五歩下がりの、試行錯誤の繰り返しで極めていくのである。
唯一釣りの雑誌が師匠と言えば師匠と言えるものだった。
その数たるや400冊くらいにのぼり、ようやく2ヶ月掛けてヤフオクで全部処分した。

その点、今回の狩猟っていう趣味は、教えをこうむる方が二人もいたので一切悩みなし。
何か困る事があれば、お二人にすがればホホイのホイであっという間に解決。
頭の中は空っぽのままで、パッシュン、パッシュンとお気楽な狩猟。
人に頼るってこんなに楽な事とは知らなかったな〜。

そんなジマ先生には、エアーライフルのメカニカルな問題が発生した時には
いっぱい助けていただいたし、エアーライフルならでは狩猟の仕方を
理論的に説いて戴き、素人のオラは大いに納得しながら銃を扱う事が出来た。

そして師匠には、40年にわたる狩猟経験から得たノウハウを分かり易く
手取り足取り教えていただいたし、いろんな乱場に案内して戴いた。
そして実戦では狩猟とは何たるかの真髄をビシバシと、そしてみっちりと仕込んでもらった。
それより人としての師匠の人柄に(オラのコスイ部分と、早とちりの部分を取って
繊細にして豪快、大胆に行動するが、周りには繊細に気を配るという
オラに無い部分をイッパイ持った人)心酔し、オラはとっても安心して頼れたな。
だから狩猟の雑誌等とは縁がなく買う気も起きなかったのであ〜る。
だからオラの結論は、もっと早くから狩猟を始めれば良かったな〜。
と思ったし、お二人には深く感謝の念でイッパイでありまする。
来シーズンもよろしくでありまする。


いらねえ事言っちゃったな。

初めて過ごした狩猟期間中は、毎日が面白くて面白くて
朝が来るのが待ちどうしくて、早起きしていたのだった。
気がついたら、一日の休みもなく毎朝出猟していた。
さすが終盤は惰性で出猟していた感じは否めなかったが、、、、。

その中で痛切に感じて「どーにかしなくちゃ、なんないな」と思った事は
当たらない、もしくは半矢にしてしまいどこに落ちたか分からずじまいで
結局、獲物を取り逃がしてしまった事だ。
ヤッパリMOA付きのスコープがあれば、一発必中改善されるんじゃないかと
狩猟期間中も、それが終わってから桜鱒釣り、鮎釣り
マグロ釣り等している間中、オラは考えていた。

ショットガンを手に入れたいと思って
今回は秋田の佐藤さんに色々とお世話になったのだが
その時、エアーライフルの情報もたくさん教えていただいた。
その中でもやはり、MOAの重要さを説いている情報誌があった。
それを借りてきて、隅から隅までじっくりと読んだのだが
ヤッパリMOAはPCPにとって大事なアイテムなんだなとオラは確信した。

それと、海外からの銃アクセサリーの購入方法も佐藤さんに教えていただいた。
さっそくShooting-Catalogのスコープのページを開き
どれにするべかなと、楽しい時間を過ごした。
BSAは安くて良いな〜とか、スプリングフィールドはカッコええな〜
でも、 やっぱりリューポルドしかないしょっ。
などと思って、お盆も過ぎた頃、ショットガンの件で秋田に行った時
その事を佐藤さんにお話したら「9・11自爆テロ以来スコープは
輸出禁止品目に指定されたようだよ」と聞かされた。
ガビビーーン。
でもオラにはもうひとつの考えがあった。
それはシューティングカタログの隅に小さく載っていた
ターゲットタレットってヤツだ。
これは「今お持ちのスコープのアジャストカバーを、これに変えるだけで
あっという間にあなたのただのスコープも、MOAに早変わり」なのだそうだ。
簡単に言えば、ただのアジャストノブなのだが54,44ドルとやけに値段が張る。
これに25ドルたすとブッシュネルのMOAとAO付きのスコープが買えちゃうのだ。
でもスコープが買えないのであれば、これしかないなと思い
初めての海外通販にチャレンジする事になった。


スコープ選びの旅は完結した。

無事に届いたターゲットタレットを、リューポルドのアジャストカバーを外し
それに付け替えたら、とってもカッコエーくなってジャッカル気分になったオラ。
さっそくエアータンクに空気を充填し、射撃場へと急ぐ事にしたが
その前に、佐藤さんから借りていたエアーライフルの情報誌からの進言では
「MOAのアジャストノブには、白いテープを張り付けて
その計測した値をそれに書き込むと、実猟で使うとき大変使い勝手良い」と
書いていたので、射撃場に行く前に白いテープを
アジャストノブの幅にカットして、きれいに張りつけたのである。

そして今までエアアームズ S410に付けていた間に合わせの安物のスコープマウントは
いろんな不具合が生じ散々苦労し懲りていたので
このターゲットトタレットを購入する際一緒に
PCP専用のマウントも一緒に買っていたのであった。
ところで、このスコープマウントは、エアアームズ S410のために有るんじゃないかと思われるほどだ。
機関部上方のマウントベース前方にある小さな穴にピッタリとはまる
固定ピンまでも付いているスコープマウントでオラは大変満足したのであった。
もちろんこれも、佐藤さんから教えていただいたマウントだ。

射撃場に付いて受付に行ったら「クレー射撃はどうなさいますか」と聞かれたが
「今日はこれでみっちり遊ばせてもらいます」と断った。

100メートルのライフル射撃場で、30メートル表示の所に
持参のダンボール箱を立て、赤いターゲットシールを張りつけた。
狙いを定めて一発目、はるか下方に着弾した。
こりゃイケンねえ。
スペーサーを一枚足した。
それでもまだ下方に着弾した
またスペーサーを一枚足した。
それでもまだまだだったが、イイ線を捉えてきた。
もう一枚足した所で満足な仕上がりになった。
佐藤さんも言っていたがエアアームズ S410の場合、マガジンが邪魔していて
足の高いマウントを付けざる負えないから、ある程度のスペーサー調整は
覚悟しなければならないのだ。
だからマウントとスコープの間に入れて調節するスペーサーは
事前にちゃんと作っていたので、今回は焦らず余裕でセッティング出来た。
上下の調整が終わった所で、今度は左右の調整だが
流石ターゲットタレット、簡単に調整できて気持ちが良い。

30メートル先の3cm径の赤丸に弾がまとまって入ったので
ターゲットタレットに張ってきた白いテープにボールペンで3と書き記した。
40メートル、50メートル、60メートルは、それぞれ持参の巻尺で
正確に距離を測り、ダンボール箱を置いた。
そして、それぞれの値をターゲットタレットに書きこんで行った。
当初オラは距離別のターゲットタレット調整はアップダウンだけで済むと考えていたが
実際はアップダウンのターゲットタレットの調整幅でないにしろ
微妙に左右のターゲットタレット調整もしなくちゃなんなかった。
なぜかと言うと、銃身にライフルリングが切ってあるから、弾がスパイラルして
右カーブが掛かるんだなと、オラは薄いノーミソで考えたのだった。

ダンボール箱70メートルの段階で弾がまとまらなくなってしまって止めた。
オラのS410は、どうやら60メートルが射程範囲のようだ。
ジャア、あのカラスを撃ち取った時の78メートルってのはなんだったんでしょうね。

こうして無事にターゲットタレットの試運転が終わったのだが
正確に距離を測りながら弾を撃ち出して見て、改めて痛切に感じた事は
180気圧以上の空気充填では弾が暴れた感じで、ターゲットにゼンゼンまとまらない。
気持ち良くターゲットに弾が集まるのは、いいところ160から170気圧の間だけだ。
ターゲットには3cmの赤丸を使用したのだが
その美味しい気圧範囲を維持して、どの距離で撃ってみても
10発中3発は、この赤丸の中に入らない。
そして一発二発は必ず、あさっての方向に着弾するって事だ。
つまり5/10の確立しかないって事は、マガジン5発中5発とも
連続して狙いがそれるっていう事も起きても不思議じゃないって事だ。
でも反対に5発ともキジの赤丸に入るって事もあり得るってことだ。
久しぶりにエアーライフルを触って遊んだが
ん〜やっぱりショットガンより、絶対にこっちの方が面白れェな〜と思った。
(ショットガンは飛んで行くクレーに対して銃身のリブを外して撃たなくてはならないので
PCPから始めた身としては、ついクレーを狙ってしまうので当たらないのである
って言い訳をしてしまうが、ただ単に当てるのドヘタっていう話もある)

店に遊びに来てくれた師匠に「スコープをMOAに改造したよ」って言ったら
「だ か ら、ヘッドショットを狙うんじゃねェ」と言われてしまった。
ウッ、言うんじゃ無かった。
「いらねえ事と言っちゃった」と照れ隠し笑いで言ったら
師匠はあきれた顔をして「出来の悪い弟子だな」
とは言わなかったが失笑していた。

次に行った時は風がケッコウある日だった。
50メートルの標的板にターゲットシートを張り付け
上下左右のターゲットタレットの値を5に合わせて弾を発射した。
思っていたとおり、3センチの赤丸に、なかなか弾が集まらなかった。
ヤッパリなという思いで引き上げた。


この「あっという間にMOA、ターゲットタレット」での狩猟が始まって
使ってみた感想はと言えば、スコープの中に捕らえたキジとカモは
100発100中の思ってたとおりの成果で驚くべき好成績。
しまいにゃ、初めての一日定量まで記録した。

そんなある日の事、川原で見かけたキジ君、ブッシュに入りそうになったので
慌てて車から降り、畑の隅から胴体の真中(余裕の無い時は師匠に教えのとおり
胴体狙いで引き金を引き、即二の矢掛ける)に狙いを定めてパッシュン!と一発。
首の辺りの毛が散ってゲット!かなと思ったが、スタスタと遁走されてジエンド。
おっかしいなと思いタレットの数値を確認してみると
いつも40メートルにダイヤルをセットしていたはずなんだが
ゲゲッ、60メートルにダイヤルが回っていた。
そーいや昨日60メートル先のカラスを打ち落としたままで
オラのスコープの標準数値40メートルの所に戻してなかったのだ。
オラはこれで思ったな「この数値のままでキジ君を倒していたら
????ってなっていたところで、外れて大正解だった」のだな。
ますますもって、このシューティングスコープ改造は大いに自信を持った。
と感じたら、チョビッコ、マグナムエアーライフルの熱が冷めてしまったのは
まぎれも無い事実ではあったのだ。


定量キジの足煮込み

中国に弱電関係の仕事で出かけていた高橋さん。
上海の市場に見物がてら食料を買出しに行ったときである。
異様な光景を見たそうです。
それは、、ざるの上にニワトリの足だけが山盛りになっていたそうです。
店番のおばさんにどうやって食べるか聞いたところ
「コトコトと6時間くらい煮て、その足から腱を搾り出すようにして食う」と
教えられたそうだ。
それを聞いて、いつもなら投げ捨てるキジの足をガラと一緒にコトコトと煮てみた。
そして、切り口に口を当て足全体を揉みほぐしながらながら
チュルチュルと吸い出して食べてみた。
なんとも言われない優しい味がした。
これは味付けは控えめが正解だ。

もちろん、アオクビ1羽(残念ながら足は捨ててしまった)と
コガモから取ったスープに、キジ2羽分のガラと足を
そして、ヒヨドリ撃ちの帰りに寄った、水分け神社の霊水6リットルを使い
獲ったばかりのヒヨドリ丸のまま一羽加えて煮込んだスープは絶品だった。


これがヤバイ、スープ

まずは、加ト吉の冷凍うどんを買ってきて食べてみた。
言葉が出ない。
今度は冷凍蕎麦を買ってきて食べてみた。
これまた言葉が出ない。
っじゃということで、賞味期限切れの生ラーメンを買ってきて食った。
これにはヤラレタ。
豚骨スープのような感じだが、独特の嫌味がまったくなく
それでいて濃厚な味わいのスープは、たとえようのない美味さで
11日間ぶっ続けでラーメンとうどんと蕎麦にして食った。
見事に三者ともバッチしマッチングして飽きが来なかった。

このスープを無理に言い表すとこうなる。
「うちはねえ黒豚豚骨をじっくりと煮込んだスープが自慢だ」等と言う
スープ自慢のラーメン屋のスープを飲んでみると、確かに一口目のスープは
ウマイ!と唸っらせられるわけだが、麺を食い終わってから飲むス−プには
一口目で味わった、あの感動はゼンゼン無いもので
「な〜んだ、ただ腹が減っていただけじゃないか」と、いつもながら思っちまう。
それに比べてこのスープは、麺を食い終わってから飲んでも
ウンマイ!を通り越し感動する何かがある。
なぜだろう。
これでオラは、ラーメン店を探し彷徨うことはなくなった。
美味いラーメンを求める旅は自己完結した。

オラが思うに、やっぱり山の自然のものだけを食って
広範囲を動き回り生きている動物は、えも言われない深い味わいが出ると思うし
ゲージとか狭い囲いの中で配合飼料で育てられたモノは、薄っぺらい美味さだ。
合成調味料と同じでポンと最初に美味しさは出てくるには出てくるが
それは後が続かないもんだな。
まあ単純には比較できない自然の何かがあると思うな。

でも、キジ2羽分のガラなんていう、一日定量なんて日は滅多に無い。
そういう時は一羽分のスープを取ったら、それをちょっと煮詰めて冷凍保存か
もしくは手っ取り早く簡単な方法は、最初のガラで味付けしてしまったスープそのままに
次に獲れたキジのガラと水を注ぎ足して、またコトコト煮るのでも良し。
そうして注ぎ足し注ぎ足しでスープをストックしていくのもいんじゃないかな。
うなぎ屋の一子相伝秘伝のタレみたいで。

それにしても解禁日から10日間くらいはPCPで良い思いもするが
それを過ぎるとメッキリとキジの姿は見えなくなるな〜〜〜。
やっぱ最後は犬頼みなのかなぁ。








先ちょがぁぁぁぁぁぁ



「さてと今日もガッツリ山を攻めるか」と 
布団の中の寝ぼけた頭で、そう考えると
毎度の事だが、いきなり俺は目が覚めてしまう。
今日は昨日の酒がまだ残っている状態なので
朝飯抜きで出かけることにした。

が、トイレの窓からのぞく外の天気は
ミゾレ混じり風雨、それも結構つよく降っているいる。
あずましくないから今日の山行き、ヤマドリ猟は中止とした。
こんな日は車を畑の空き地に止めてエアーライフルで
山鳩を狙うのが、あずましい。

階段を下りて、朝の一杯のお茶をすする。
二日酔いの胃にキリッと効く。
いつもの銀ちゃんが縁側に現れない事だし
この機を逃さずコッソリと出掛けるとする。

ライフルのスリングを肩に掛け
玄関までの廊下を渡っていた時
肩の重量感がフッと消え、ガッツンと言う音を立てて
ライフルが俺の後ろでひっくり返ってしまった。

新築したばかりの家のフローリングに傷が着いたなぁ
なんて考えながら振り返りながらライフルに手を伸ばした途端
俺は青ざめてしまったのだ。

ななな〜んと、エアアームズ S410の銃口から10cmくらいの所で
「し」の字に曲がってしまっていたのだ。
俺は例えようの無い精神的ショックで
吐き気さえもようして来たのだった。 


セロにマジックで時間を巻き戻してもらいたい。

それはエアータンク部分に取り付けていた
スリングのジョイント金具部分(負環)から
スリングのベルトがスルリと抜けていたのだった。

哀れエアアームズ S410君のチンポはウナダレてしまった。
なんて言っている場合じゃない。
どうしたら良いのか、、、、、
取り合えず武田銃砲店に行ってアドバイスを仰ぐ事にした。

武田のオヤッサンに銃を取り出してみせたら
「ああこれな、よくやるんだよ皆さん」と言って
「大した事ぁ無い」みたいな顔をした。
そして「ここをアッセンブリで取り替えると18万円」
ニヤリと言った。
あのね、これはね、18万円で買った銃なの。
だから、修理に18万円は出せないの。
と、心の中で言った。
さらに悪い事に、武田のオヤッサンは分かって無いだろうが
正規代理店を通した銃じゃないので修理はきかないの。
とも思ったが、それを言うと何を言われるか分からないので
ぐぐっとアルコールの残っている胃に飲み込んだのであった。
「ここで修理は出来ないんですか」と聞いたら
「ああ出来無い事も無いがね、、、、、」と言ったのであった。
「じゃあ頼みます」と言ったら
「間違って戻し過ぎたり、ネジれたりすると責任持てないから
自分でやって」と言った。
あ、あ、あのねぇ、「自分で直すったってどう治すんですか」と聞いたら
「万力に曲がってしまった先の方を挟んで
力を入れ過ぎないように、ゆっくりと戻すだけだ」と言った。
「それだけですか」と聞いたら「んだ」と言った。
「責任は問いませんからお願いしますよぉ」と言っても
取り合ってくれず「やってみれば、それでダメだったら
折れ曲がった部分から切り落とすっていう手もあるから」と言った。
「切り落とすって銃身を切り落としても大丈夫なものなんですか」と聞いたら
「410番の本当の銃身は中に入っていて、ちょうど曲がった当たりから
銃身が始まるから大丈夫のようだぞ」と言ったが
「大丈夫のようでは、なんていう適当な事では困る」と思ったが
口には出さなかった。
続けて武田のオヤッサンは「ただの長くカッコ良く見せるだけの
カバー部分が曲がっただけだから
切り落としたって何にも影響は無いからやってみな」と畳み掛けてきた。
「銃身を切り落としたらカービンか」と言ったら
「んだ、カービン銃だ、その時は改造届を書いてやっから」と言った。
っはぁと溜息を付きながら作業に取り掛かる事にした。

まずは万力にウエスを挟み、銃身カバーに傷が付かないようにして
万力を閉め込んで行った。
オヤッサンは「あんまり締め込むと、筒が潰れてしまうから
軽〜く締めるんだよ」と言った。
これで準備完了。
何が準備完了だ、なんて自分で自分に突っ込みを入れてしまった。

「曲がっている方向をチャンと確認して、正反対の方へ曲げるんだぞ」と言った。
「そんなの分かってらい」と思ったが口には出さなかった。
「まぁ、ダメで元々、ダメならまた買やぁいいジャン」と思う事にしたら
スゥーッと気が楽になった。
変な力が抜けたところで、グググッと力を入れて戻しにかかった。
あらまし真っ直ぐになった所で力を抜き、万力から外した。
その銃を「こんなもんでどうですか」とオヤッサンに見せた。
「おぅ、初めてやったにしては上出来だ」と誉めてもらった。
が、銃口から黒い小さなプラスティックの破片のような物が
ポロリンと落ちた。
「何ですかコレ」と聞いたら
「あぁこれね無くても大丈夫」とオヤッサンは言った。
ちょと信用できないが、楽天的なキクチ君にも問題ない。


なんとなく戻ったようにも見えなくは無い?

出来上がった銃身を見たら、エアーをタンクに充填するアダプターの
保護キャップがこれ以上曲がらないようなガードになったのか
丁度そこの部分が凹んでいた。

そこへ東京アームスのセールスマンが店の中に入って来た。
事の真相をセールスマンに話し始めたオヤッサンだった。
「あぁそれね、やっちまってる人ケッコウいるようで
修理交換にチョクチョク来てますよ」とセールスは平然と言った。
そして「そうゆう自分もエレベーターのドアーに挟み込んでしまって
銃身を曲げてしまった事があるんですよ」と続けた。
「こないだなんか、エアータンク部分が異常に膨らんだのが
修理に来ましたよ」と言って
「そいつはね、エアーを満タンにした銃を
ストーブの脇に立て掛けたまま、昼飯を喰って戻ったら
膨らんでいました」って言う事なそうですよ。
おもわず「おっかないねぇ」と、武田のオヤッサンと口を揃えてしまった。
と言う事で、何となく心が晴れたノー天気なキクチ君であった。


これがフルフローティングのサイクロンだったらと考えると、こうは戻らない。

とりあえず何時もの猟場に行って試し撃ちしてみた所
上下のMOAクリックを3クッリク戻しただけで見事に直ってしまった。
俺って職人?なワケねぇーだろ。

晴れ晴れとして家に帰ったら、カベラスから通販で買った
エアーライフル用のボアースネークが届いたので
さっそく銃口に通してお掃除お掃除。
今までだったら、ペパータオルにテグスを結び、苦労してお掃除。
前にやっちまったペーパータオルが切れて
銃身に残ってしまい青くなる事件も
コレで無くなるなとラクチンお掃除。

コレが後に大変な事になるとはツユ知らず。

さぁ、ヤマドリの記録を伸ばさなきゃなんないから
これで暫くはエアーライフルは使い収めだなと
銃身はもとより、銃口からCRCたっぷりと
シューとしてガンロッカーに仕舞った。

これも後から大変になった事になった一因であった。

キジ・ヤマドリ猟が終わってから後半は
鴨猟オンリーだった終わり頃。
えも言われぬ匂いが漂ってくるような腐って
オッと失礼、良く熟成されたお肉の
鶉が大好きな八ッチャンが言った。
「死後硬直のヒヨドリも喰いてぇなぁ」って言うもんだから
「一つブッパナシに行ってくらぁ」とばかりに
エアーライフル片手にイザ出猟。

幸先いいねぇ、ヒヨドリはっけ〜ん。
推定45m。
狙いは、そのマンマ。
プッシュン
エッ当たらないの?
当のヒヨちゃんは平然。
おっかしいなぁ?
もう一度狙いを定めてパッシュン。
今度は止まっている枝、30cmずれた所に当たって
ギィーイ・ギィーイ。ギィ〜イと鳴きながらバイバイ。
なんで弾が暴れるの?

今度はキジバトはっけ〜ん。
推定55m
狙いは、そのまんま。
パッシュン。
これまた平然な鳩くん。
もう一度狙いを定めてパッシュン。
何とも無い鳩くん。
そのまんま、4発かけたが鳩くん平然。
さすがに5発目には、ピヨーンピヨーンと逃げ去って行った。

次はカルガモ君ハ〜ケン
幾らなんでもこれは大きいから当たるでしょ。
推定60m。
MOAノブをクリクリっと6の数字へ。
チョッと警戒はしてるが、狙い所撃ち所満点。
自信が無いからネックの根元にレチクルを合わせてパッシュン。
とんでもない所に着水してギャアギャアと、バイバイ。
なんでやネン。
もう俺は自信を100%無くして帰宅した。
そして2005年度の狩猟は終わった。


2006年10月ジマさんからのケータイで
「エアーライフルのゼロイン決めに行かない?」のお誘いで
自信喪失を引きずったままに射場に行ったのであった。

50mの標的狙うも、バランバランに弾が暴れて
黒丸に一発も入らないでやんの。
ジマさんに事の経緯を細かく話した。
って、恥ずかしかったので銃身を曲げたって事は内緒にしてたけど。
そしたら「やってはイケナイものの最大のアヤマチは
銃口にCRCを吹く事なそうだ。
じゃあ、ペレットルーブは吹いても良いのか?と思ったが
これ以上墓穴を掘らない為にも言わないでおいた。
「CRCが切れるまで弾を撃つしかないね」と言われた。
「それとアンタのスコープの位置、後ろ過ぎやしないか」
と言われた。
確かに前々から後ろ過ぎて据銃が変では
という気がしてはいたんだが、、、、。
その場でスコープリングをバラして
ジマさんの助言を得ながら、スコープ移動完了。
これで何となくシューターとして様になったような気がしる。

気分が乗ったところで、AAフィールド弾500発の乱れ撃ち。
この日は一缶をカラにしてから帰る事にした。

帰りのクルマを運転しながら考えた。
CRCを切れば良いのなら、車のブレーキオイルクリーナーを
銃身内に吹けば早いじゃねぇのかと思った。
さっそく帰ってから、コレ以上やったらライフリングが
溶けてしまうのじゃねぇのか、というくらい吹きかけた。

次の日、武田のオヤッサンの所によって弾を補給。
今度はいんじゃねぇの。
と、勇んで射場へ。
さてと一発目。
あれっ。
2発目
アレレ。
3発目
レレのレ
お出かけですかぁ。

また500発の乱れ撃ちするも
黒丸に入ったのが5発のみ。
命中精度1/100
はあ、完全に壊れたねS410くん。
ま、いいや。
俺は銀チャンとヤマドリ撃ちするもんね。
と決めて、エアーライフルは、永遠に封印する事にした。



ジマさん式ペレットケース・タイプU


以前、ジマさん式ペレットケースの作り方を紹介したんだが
アレとは違う考えの別バージョンのペレットケースを
またまたジマさんから教えていただいた。
今度のペレットケースも釣り関係から拝借したスグレモノだ。
それは鮎の掛け針用のハリス入れを流用したモノで
最初に紹介したペレットケースより、ずっとずっと
コンパクトに仕上がる。
これまた、ペレットの径にピッタンコの内径でびっくりした。
更に、ペレットケースから弾装に移し変える時
前のネオプレーン製の弾ケースと比べると
ワンアクション手間がはぶけるという
まことにエコモードなペレットケースだ。
それは、この筒の黒いフタを取って、弾装の穴に直接当てながら
流し込むと、いっさい手を汚さずに装填できるというスグレモノだ。
そして、ペレットルブは片方から2、3滴落とし込むと
全弾に行き渡ってしまうという手軽さだ。
更に、後ろに続く弾の頭が前の弾のスカート部分を押し支える格好なので
弾のスカート部分が変形しないって点でも秀逸な品だ。
何本か揃えて、弾の種別に詰めて何本か揃えてもポケットの中はかさばらない。
なので、これを使ってしまうとタイプTは使う気になれないほどのスグレモノだ。








待望の猟期に入ってヤマドリ撃ちに夢中になって
記録をドンドン延ばしていったころ
ネットサーフィンで、あるテッポウ屋のホームページに立ち寄った所
S410のメンテナンスというページが目に止まった。
メンテかぁ、出して見るかなぁ
見積もり出してもらって、ほんとにダメだったら
また並行輸入品を買い換えればいいもんなと思った。

さっそく大体の経緯を書いてメールを出し
メンテナンスっていうか修理を依頼した。

S410を発送して、一日置いてメールが来た。
銃身のマガリを直した所の部分が欠損しているから
メンテしても完璧に治るっていう保証は無いって言う事だった。
こちらからは「お任せしますので、出来うる限りの修理をお願いします」
とだけメールを返し待つ事にした。

3日ほどしてメールが来て、 治りましたと言う事で
エアアームズ S410送り返して貰うことにした。
そのメールには、銃身を曲げてしまった時
シュラウドの部品が欠けてしまったので
自社製部品でなんとか修復したとの事。

あと、銃身に無理矢理ボアースネークを通して掃除したので
中のパッキンが、ちぎれて無くなってしまったのが
集弾しない第一の要因だったそうだ。
つまり、ボアスネークは、使い方を誤るとトンでもない事になるとの事。

CRC吹き付けに関しては更に脱脂したので、問題が無いとの事。

後はシュラウドの中の銃身が錆付いていたので
取るのが大変だったとの事。

もう一つ、空気圧力メーターパッキンが硬化していたので
空気漏れが発生する前に交換したとの事だった。

バッチし整備した結果33flにパワーアップしたとのこと。
思いもかけない出力向上で費用はそれなりだったが、治っていれば儲けもんかな。

届いたエアアームズ S410くんを持ち出して発射。
えええっ?スコープ外して送って、再度取り付けしたのに
なんで当たっちゃうの???
ななななんと3発でゼロイン完了。
もどったぁっていうか、買った時そのまま状態。
いや、それ以上だ。

トライアルマシンも、そうなんだが
どうも外国製品ってやつはどれもこれも
組み付けがいいかげんで悪いような気がする。

トライアルマシンでは買ってすぐに全バラと言って
エンジンから全部バラバラにバラして
バリを取ったり、平面スリ合せをしたりまでいかなくても
ただ組み立て直す事で、ようやくパフォーマンスを発揮する。

多分エアアームズ S410もそんなもんじゃないかな。
っていうか、銃身を曲げたのは誰だ?ッて話だが、、、、
テッポウ屋の社長も言っていたが
エアアームズ S410は一つとして同じものがないそうで
また一つ一つ出力も違うのだそうだよ。

ハレて治ったエアアームズ S410くんを携えて
腰脂たっぷしのヒヨくんを獲り揃え
一年ぶりに八ちゃんのご希望にそえたのであった。






カッコいいのにはワケがある。

メンテに出したついでに、水準器ってヤツも頼んでみた。
エアーライフルの師匠、ジマさん自慢の
改造ハイパワーエアーライフル・デイステートに取り付けている
大口径50のリューポルドのスコープ。
その上に取り付けているのが、蛍光グリーンに光り輝く水準器。
それを見るたびに「かっこえ〜なぁ」っていつも見ていた。
だから、取り合えずカッコウから入るミーハーな俺は
それをページで見つけた途端、たまらず速攻で買うことにした。

社長の説明では「メーカーがテストする時は、必ず水準器を
装備してテストするはずだから、それがエアーライフルで
的を射るときの標準なのだ」そう。
「ベンチレストが好きな人や、異常にコダワル人には必須なモノ」
でもあるそうだ。
俺は、当たらぬも八卦、当たるも八卦
スコープをのぞいた時、一番明るくなって鮮明な画像になった時に
引き金を引くエ〜加減シューターなので
コダワリはミジンも無い。
ただ一言社長は「俺には無くてはならないモノ」って
書いてあったのが、猟欲が人一倍強い俺には
大いに気には掛かっていたからだ。

さっそく取り付けに掛かったが、何処に取り付けて良いものやら
分からないので、社長に取り付け位置の画像を送ってもらった。
それを参考に色々と取り付け位置を換えてみた。
俺的にはスコープをのぞく時は両目を開けて見るので
獲物を右目でスコープのレンズの中に収めた時に
左眼で瞬間的に水準器を見て取れる位置を探した結果
ここの位置となった。


かっこいいねぇと思っているのは俺だけか。

この取り付けの過程で、人間の目で見る感覚なんてのは
ほとんど、いい加減だなと思った。

最初に水準器で水平を取ったときに、レンズの中のレチクルは
30度くらい左に傾いていたのだった。
つまり今までは左に30度傾いたままのスコープを
使っていた事になるのだね。
さらに、コレで水平を取っていると確信して
水準器を見ると、右に傾いていたり
左に傾いていたりして、ほとんどっていうか
俺は今までナニをして来たんだって言うイイカゲンさだった。

さてと、実猟に出ての結果はどうなの?って言うみなさん
コレはエアーライフルをやっている人には必携品である
と断言してしまう俺である。

47m先に木の枝がある。
ここがヒヨドリが地面に降りる時、必ず止まる停車場だ。
ここに止まるヒヨドリを基準にテストをしてみた結果。
水準器を確認して引き金を引くと100発百中であった。
って、言っとくけど100羽撃ち落したってワケではないからね。
今度は水準器を無視して、勘を頼りに今までのように撃った。
ハイ、尾っぱの毛が散ってビィーイビィーイと、飛んでいった。
 
68mの自信の無い距離でカラスをスコープに捕らえ
MOAを7にクリック、そして水準器で水平を取って撃ち込んだ。
ハイ、見事にカラスは落下。

と言う事で、俺みたいなアバウトな性格のアップランダーに
世界標準が出来たので、自信を持って引き金を引くことが
出来るってもんだ。

さらにズに乗ったキクチくん
今度は堰堤に浮かんでいるアオクビ君はけ〜ん。
その距離73m。
ノリに乗っているキクチくんの敵ではない。
MOAを7にクリック。
撃ち下げだったので、さらに頭一つ分上を狙う。
そう、無謀にもこの距離で、ヘッドショットを敢行しようとしているのだ。

パシュンと同時にアオクビの首が水面に刺さって動かない。
ん〜、見事なクリーンキル。ゴルゴ。。
ウオーターファウルでも、バッチリと成果がでた水準器。
をっと、水準器じゃなく水平器


解体して見たらヘッドショットじゃなく、チョイ下のネックショットだった。
白のワッカ、毛が乱れている所。

























ヤマドリを見たことが無いオラは、師匠に頼んでヤマドリ撃ちに連れて行ってもらった。
そいつらの住家はオラのうちから40分くらいのところにある
杉林と雑木が混ざって生えているいる山の沢すじに案内してもらった。
雪がけっこう積もって、ぱらぱらと粉雪が舞う日であった。
山の沢すじは氷が張っていて、それをパキパキと踏み割りながら登っていった。
なめてかかった訳ではないがオラが履いていった靴はトレッキングシューズだったので
石に張り付いた氷で滑ってよく転びそうになった。
その登っている途中、ヤマドリが沢すじの斜面から勢いよく飛び出してきて
間髪入れずに師匠は2発撃ち込んだが、距離的にチョット遠くて当たらず仕舞いだった。
それよりも目の前で発砲された散弾銃の迫力と、一発づつ撃つたびに師匠の肩が
銃の反動を上手く吸収し、動く姿に「いつかはオラも装薬銃を持つ事になるのかな」
という思いも交差して憧れてしまった。
そしてオラがガキの頃、鉛管で作った鉄砲を撃って遊んでいたことを思い出し
その肩に受ける反動を思い出してしまった。すたんばいみ〜

4月の桜鱒釣りのある日の事。
去年までならぜんぜん気にも止めていなかったオスキジの声が
釣りに行く先々でオラの耳に良く入るようになったし
畑の横をテクテクと歩くキジを良く見かけるようになった。
これもワンシーズンみっちりとキジのケッツを追い掛け回したせいだろうな。
こんな話を師匠に話したら「そんな時はキジ笛を吹いてみるといい」と言った。
「キジ笛ってどこで手に入るんですか」って師匠に尋ねたら
「5円玉2枚で吹くのよ」って、手真似して教えてくれた。
桜鱒狙いに河原に出る途中のマメ畑で、キジのオスが鳴く声が遠くで聞こえた。
師匠に聞いていた「キジ笛を上手く操るとオスキジが目の前まで来るぞ」と。
もちろん「これでキジ猟をしたら罰金モンで、ご法度だぞ」とも聞いていたが
バードウオッチングする分にはな〜んも問題は無いのだ。
車を農道の脇に止めてキジ笛を取り出しスイッーースイッーーと吹いてみた。
だんだんとオスキジの鳴く声が近くになってきた。
そーだな10分も吹いただろうか、近くでホロを打つ音がして
ギャンギャンとオスキジが吼えまくった。
車の陰から、そーッとその声がする方を覗いてみたら
あまりでかくないないオスキジがジョギンと立っていた。
初めて吹いたキジ笛だったのでいい加減に吹いたのだったが
オスキジがすぐ目の前まで来たのには感動した。
結局その日は、桜鱒釣りそっちのけで笛を吹いて遊んでしまった。

去年の10月の半ばから旧家の解体から始まり、2月の下旬まで続いた
菊池家の新築工事もようやく完成にこぎつけ
親友のツーんちに預けていたフラットコーテッドレトリバーの
「しょうちゃん」を3月に入ってすぐに連れ戻してきた。
今までは外で飼っていたんだが、ツーんちでは家の中に飼っていたので
ふぬけのチンタラ犬に成り下がってしまっていて
顔付きまでもノホホーンとした締まらない顔になって帰って来た。
それと預ける前まで仕込んでいた服従訓練が大分抜けており
命令の反応の切れも無くなって帰ってきた。
そんなしょうちゃんに訓練を入れなおしながら、山や川でみっちりと遊んでやった。

そんな愛犬しょうちゃんの訓練がてら散歩で近くの岩山に行った時。
オラの近くでウロウロしながら付いて来たしょうちゃんが
いきなり笹薮に突っ込んだと思ったら、15メートルくらいの先の山の斜面から
オスキジをフラッシュさせた。
この事を師匠に報告したら「どうやらポイントする犬じゃないようだから
ヤマドリ猟にも使えるな」と言った。
一応レトリバーって名前が付いているもんだから、オラは鴨なんかを回収してくる
「水商売な犬」とばかり思い込んでいたので、まさかキジとかヤマドリ猟に
使えるとは思っても見なかった青天の霹靂。
師匠のその言葉が雷管発火となって「オラも散弾銃欲しいっ!たら欲しいッッ!」と
激発してしまったオラ。
と、また師匠に話したら「散弾銃なんか買わないで、だまって空気銃やってろっ
空気銃を極めてさ、その道のプロになった方がいんじゃね〜の。
それに散弾銃を持ったって、そんなに発砲できるとこもね〜し」と言われたが
否定されればされるほど欲しくなるのが世の常というか、ヘソ曲がりなオラ。
銃砲所持免許も「たぶんそーなるんじゃね〜かな」と思い
乙種を取っておいたから問題は無しと。
後は銃を買うのみじゃ〜〜〜〜〜〜。
とマタマタ激発しまくりのオラ。
そんなオラをつぶさに観察していた師匠は「射撃を専門にするようじゃなさそうだし
実猟だけのようだし、それにあんたは危なっかしいから自動銃じゃなく
リーピーター銃が適切だな」と言われてしまった。
「それに俺が専門に狙っている鹿打ちにも問題なく使えるし
なんたって回転不良を起こさないしな」とも言った。
そーなると、どーやら師匠いわくレミントンのM870番しかないようだった。
それからファーイーストガンセールスのカタログを毎晩見ては「これだな〜レミントン
ウイングマスターかエキスプレスだな」とにらめっこ。
こうなると話は早いオラ。
さっそく警察署に行き散弾銃を持つための射撃講習許可証の申請に
生活安全課の窓口へと急いだのだった。
マアいつもの事でしょうがないんだが、鉄砲関係の申請って
いつ何時でも金がかかるように出来ているもんで印紙を購入して
書類を申請したが、コレが又ナカナカ許可証がおりて来ないお役所仕事。
2週間もたった頃ようやく電話連絡があり射撃講習許可証と
装弾購入許可証(モチロン印紙を買わされた)をもらいに行った。
師匠にこの事を連絡したら、懇意にしている射撃講習指導員がいると言うんで
師匠から射撃講習の予約を取ってもらった。
その当日、学科講習から始まったわけだが、やけに銃に付いて詳しいオラの事を
不審に思った指導員に「空気銃を持っているんですよ」って説明したら
な〜んだって顔して、話しは早くなったのだった。
次は実技講習でイヨイヨ弾をぶっ放せると思うとワクワクした。
スタンスやら構えなどみっちりと教え込まれ銃を渡された。
飛んでくる皿に向かって撃つもののナカナカ当たらなかった。
それもそのはず、空気銃しか撃ったことの無いオラは
お皿を外さなきゃと思ってもツイツイお皿の芯を狙ってしまうのだった
「的を外して撃たなきゃ当たらない」って教官は何回も言った。
けっこう難しいすねっ、狙いを外すって事は。
お皿を追って狙うものだから、上体がだんだん反ってしまう。
その格好のママ撃つものだから、反動をもろに喰らってよろけたりなんかもして
教官の失笑を大いに買ってしまったのだった。
でもそんなのは平気で、バッカンバッカン肩にくる衝撃がやけ嬉しく
オラはとっても楽しいのであった初めての散弾銃。
最後に一人でラウンドして実技講習の締めくくりとなった。
一人で回ったほうが、数倍ワクワクて楽しかった。
点数は16点だった。
良いのか悪いのかは分かりまっしぇ〜ん。
最後に中古銃が買えるくらいのお金を払って講習修了書をもらった。
家に帰って風呂に入るとき鏡に映った自分の腕の付け根に青いあざが残っていた。
師匠にこの事を話したら「下手な証拠だ」と言われてしまった。

去年、オラのホームページを見たって、お店までわざわざ訪ねてきてくれた
秋田県の佐藤さんの事を、風呂場で頭を洗っている時ふと浮かんだ
そーだ、あのお方なら良いお話を持ってるんじゃないかとピカッと頭に閃いた。
なんたってあのお方は自分でで銃本体や、そのアクセサリーを自分で輸入し
ガンライフをエンジョイしてる方だもんね。
さっそく電話して近いうちに尋ねていく話をした。
っていうか、居ても立っても居られない性急なオラは
即日佐藤さんの住んでいる秋田県へと桜鱒釣りを兼ねて向かった。
もちろん桜鱒釣りは上の空で、早くお昼になんないかなと思った。
そして佐藤さんの仕事場へ、ずうずうしくもお邪魔したのであった。
いやな顔を一つせず、個人輸入の方法を教えてくれた。
でも銃に関しては、リスクを犯してまで個人輸入するよりFEGSで購入するほうが
後々のことを考えればいいんじゃないのってお話だった。
間違って、銃本体番号が違うのが来た日にゃ、東京往復2回しなきゃなんないそうで
実際佐藤さんもそんな経験があって、えらく高い買い物になった事があったそうだ。
でもPCPに関して言えば、国内の空気銃価格はあっちの3倍もするので
リスクを犯しても個人輸入するほうが安くつくとも言っていた。

とりあえず佐藤さんの懇意にしているアッチのディーラーに、レミントン870番は
いくらくらいするか聞いてあげるという事で秋田を後にした。
数日して佐藤さんから電話が来て「知り合いの方がレミントンM870を手放すって
言っていたが、中古でよかったら紹介するよ」って言われた。
「レミントンのスライドは新品だとエラク渋くて厄介だが、使い込んだ銃だと
銃口を上に向けただけで、先台が下りてくるから良いもんだヨ」っても言っていた。
「20インチのスラグ銃身と28インチのフル銃身が付いてるよ」って話だった。
もちろん!オラはこの話に二つ返事で乗ったのであった。
秋田県と岩手県じゃ銃の譲り受け渡しが面倒なので
いったん銃砲店に預けてから受け取る方法で話はまとまった。
さっそく銃砲所持許可の申請に行ったのは言うまでも無い事。
銃砲所持許可書の印紙は5800円だった。
後は許可が下りるまで、鮎釣りでもして待ってヨット。

あらかた2週間もたったころ、生活安全課から電話があって、鉄砲所持許可がおりたとの事でした。
もちろん、警察署まで吹っ飛んでいって許可証を発行してもらった。
次の日、武田火薬銃砲店に行って銃を引き取って来たのであった
さっそく師匠に電話をかけて、射撃練習に付き合ってもらうことを約束した。
その間三日ほど間があったので、教習射撃の時もらった赤本を見ながら
挙銃練習をして、いくらかでも銃に慣れておく事にした。
当日、早めに射撃場に行ったつもりが、師匠はひとふろ浴びて余裕でお茶を飲んでいた。
「レミントンの870番は狩猟を目的とした銃だから、狩猟射撃の練習をする」と師匠は言った。
「競技射撃も面白そうだが、お金が掛かりそうだからオラはパスかな」と思っていたし
やはり食い物を手に入れたかったので、狩猟だと鼻から決めていたから渡りに船で二つ返事をした。
という事で師匠はアメリカントラップの5メートルっていうのを最初にチョイスしてくれた。
「アンタの場合、銃の取り回しと構えからだから、ここでみっちりと基本を覚えてフォームをつくろう」と
言って、オラの挙銃姿勢の矯正と目線の構えかたを仕込んでもらったが
果たして上手くいったのやら?????
自分の散弾銃を撃った感想は「小物を獲るならやはり空気銃だろうけど
バッカンバッカンと火薬を爆発させ鉛球をぶっ放すのもこれまた痛快で
空気銃にはない豪快感があって面白いもんだ」と思った。
それに、思ったよりラウンドフィーが安くて、こりゃいいもんだと思った。
その時オラの銃所持許可証を見ていた師匠は、火薬譲り受け許可のページを見て
譲り受け目的の欄に狩猟と明記されていないから、安全課に行って
狩猟のはんこをついて貰って来るようにと指摘された。

さそっく次の日生活安全課に行って「この欄に狩猟の判子をついて下さい」と頼んだら
ここに判子をついたら「あんた違反で逮捕だよ」と言われてしまった。
「なんでですか?」と尋ねたら「あんたの許可証で狩猟の許可になっている銃は
空気銃だけで散弾銃は射撃だけの許可だから狩猟は出来ない」って言われてしまった。
「所持許可申請書にはちゃんと狩猟って書いたような気がするんだけどな」と反論したが
「射撃目的ですか?」とあんたに尋ねたら「そうです」ってあんたは答えたはずだよと
担当官に言われて「ソーいや、そー言われたような気がするな」と内心思った。
ここでごねても勝ち目は無いと察したので「用途の欄に狩猟の判子下さい」と頼んだら
「内容変更の届書に変更事項を書いて提出して下さい」と言われ
その用紙と印紙納付書を渡された。
1800円の印紙を貼り付け内容変更届書に狩猟と書いて提出し
「狩猟」という判子を用途の欄にペタンとついて完了したが
「火薬譲り受け渡しの欄にも狩猟の判子を下さい」と頼んだら
「狩猟目的の場合は許可が無くても弾は買えるから
ここに狩猟の判子をつかなくてもいんだよ」と言われたが
チヨット不安だったから無理を言って判子をついてもらった。
これを知らないまま散弾銃を担いで猟に出かけたら「逮捕!」って言われるところだった。
アブネ、アブネ。

狩猟解禁もスグそこまできた。
最後の仕上げっていうか「あんたとなら安全に狩猟に出掛けられるか」という
最終チェックを兼ねて師匠と射撃場に向かった。
もちろん5mのアメリカントラップである。
どこら辺りまで銃の扱いが出来ているか、何にも言わないで師匠は
オラの射撃を黙って診てくれた。
結果、国体級の腕を持っている人ならOKだが、初心者のオラにしてみれば
暴発と言っていいほどの速射で「皿を捕らえないままに、焦ってしまい
勢いだけで引き金を絞っている」との診断であった。
手本の師匠の射撃は、じっくりと皿を追いかけてから引き金を引いて
確実に皿を捉えている射撃であり、オラみたいに早引きはしていなかったのだ。
この事を矯正するのに時間が掛かってしまったが、師匠は辛抱強く付き合ってくれた。
だいたいOKが出たところで、今度は実猟を想定しての
安全装置を掛けたままの状態からの射撃であった。
これはボタンのロック解除してから、引き金に指を掛けるので
必然的に皿を捕らえてからワンクッション間を置く事になるので
オラとしてはかえって気持ちに焦りがなくなり落ち着いて引き金を絞る事が出来た。
もちろん、落とした皿の数はほんの少しだったが「皿だから当たらないのであって
これがキジならスピードも遅いし、的も大きいので当たる」と師匠は言った。
「それよりも、バサバサといってスグにドンじゃ、キジの雄か雌か見極めれないで
撃つ事になるし、ましてやガサガサドンじゃ鹿か人か分からないままに
撃つ事になるので危なくてしょうがない」続けて「狩猟という遊びは何事も無く終わって
家に着くことが一番大事で、獲物を獲らなくちゃなんないという欲は捨てる事だな」
と言って、最終射撃訓練を偏差値49くらいの最低ラインぎりぎりで終えた。

解禁日は山窩衆の先鋒隊長テラさんのアイリッシュセターを借りて
師匠の乱場でのヤマドリ撃ちに決まった。
ヤマドリは朝が早いうちは沢に下ってきて居るそうなので
そこを狙って犬を仕掛けヤマドリに沢下りさせて追い出すのだそうだ。
楽しみだにゃ〜、食べたいな〜。


やまどり

師匠とバロン師匠

解禁日、今年こそは遅刻しないようにと、しっかりと目覚まし時計の
セット確認を済まして眠りに入ったが
散弾銃での初猟の為か、わくわくして眠りが浅く夜中ときおり目が覚めた。
が、チャンと5時半の時計のベルが鳴る前に目が覚めて
出陣の前のコーヒーの支度をした。
さてと、師匠の家には6時前には行かなくちゃなんないなと
思っているとセットした時計のベルがけたたましく鳴りやがった。
家族のもんに文句を言われる前に、慌てて部屋に駆け上り
ストップボタンを押して、ん〜朝一番から疲れるなと思った。

銃を担いで師匠の家に着いた途端、師匠家の中の電気が点いた。
起きたばかりで悪いかなと思いつつもデカイ声で「おっはようございま〜す」と
玄関の戸をあけると、おかみさんがいて家の中へと招いてくれた。
師匠は?と聞けば、昨日の夜遅くまで飲んでいたそうで
なかなか2階の書斎から降りてこなかった。
そうこうしている内に、山窩衆の先輩が一人二人と集まリだした所で
ようやく目を真っ赤にした酒臭い師匠が二階から降りてきて
ようやく出陣とあいなった。

2回目を迎える解禁日は、山窩衆の先輩が二人駆けつけ
更に、狩猟犬アイリッシュセターのバロン君も合わせて
5名様の大所帯となった。
師匠の家を出てすぐ国道を東へと車を走らせていたら
師匠が遠くの道路に転がっている物体を指して
「たぬきか?」「いや猫か。」オラは「尻尾がやけに長いっすよ」と言った。
車を近づけて行くと「きじッ」とオラ。
「いや、やまどりだ。」と師匠。
通り過ぎた所で車を止め、ドアーを蹴って車から飛び降りた師匠とオラ。
オラは軽く流し気味にダッシュしたが、師匠が後ろからまくって来たので
オラは逃げの体制でスピードを上げ、やまどりの所へタッチダウン。
車にはねられたばかりの若いヤマドリだった。
フラフラと町の灯りに浮かれて飛んで来たは良いが
綺麗なメスヤマドリに目が行ってしまったワキミ運転だったんだな。 
そして山窩衆の仲間が、口を揃えて言った。
「鉄砲を撃たないでヤマドリを獲ったのは初めてだな
こりゃ解禁日草々縁起がいいわい」と。

車を30分転がして着いた所が、師匠の昔取ったキネヅカな大きめな沢。
名前は聞いたが、この頃物忘れがひどいキクチくんは忘れた。
わくわくイッパイ気味で車を降りたオラだったが、それ以上に興奮しているのが
アイリッシュセターのバロン君。
「ブワハハ、今度こそ生きのいいヤマドリ君とたいけつじゃ〜〜〜〜。」
と言ったか言わないか。

久しぶりのワンコとの散歩?に「やっぱりノーリードで自由気ままに
野に山に川にと走らせているワンコの姿を見ているだけで
楽しくなるな」と思いつつバロン君のギャロップ姿に
先日薬殺したしょうちゃんを重ね合わせてしまい、グッと来るものがあった。
そんなワンコと一緒になって夢中で沢を登って行った。
すると二股になった枝沢が右手の方にあり、本沢をジグザグに登っていた
バロン君の挙動に変化があり、枝沢へと突込んで行った。
しばらくその合流点で待っていたら、後方でバンバンと銃声が二発聞こえた。
バロン君が戻ってきたので、一緒に沢を下って銃声の成果を確かめに行った。
大隊員が左手にぶら下げていたのが、まぎれも無い大きいいヤマドリ。
「あんたとワンコが左の沢から追い出してくれたおかげで
峰を超えてこちらの斜面に沢下りをしてきた所を撃ち落した」のだそうだ。
そこで師匠が一言「きぐっつあん、ワンコに付いて行くとこうなるんだよ
犬が見えなくなる程度にゆっくりと沢を登って行かなくちゃヤマドリは獲れないよ」
という事は、上の方でワンコが追い出したヤマドリを
待ち伏せて撃ち落す算段って事らしいい。

でも、なんもカンモが楽しくて、ついついワンコのおケツを
追いかけて行くオラであった。
それからしばらく行くと、本沢に流れ込んでくる枝沢が何本も有ったが
バロン君はその沢の入り口少しは入っていくんだが
その反応は芳しくなく、すぐに戻って来た。
これって枝沢の筋に残っている山鳥の臭腺が無いって事なんだな。
と思いつつ登って行くとバロン君、おもむろにスピードを上げた。
こりゃなんか有るぞと思い、肩から銃を降ろそうとしたその瞬間
左カーブになっている沢の上流からレンガ色のヤマドリが
ヒューッと左バンクをなぞるように下ってきた。
オラは慌てて銃を構えリピーターをスライドさせた。
機関部にカートリッジを装填し引き金に指を掛けた時には
沢のノリ面にそって沢を切って、その下りの勢いのまま掛けあがっていった。
そこにレミントンの照星を追っかけるように追尾し
ヤマドリのおケツに発射一発。
もちろん当たらない。
っていうか、当たる気が米粒ほども無かったな。
戻って来たバロン君は「獲った?」てな顔をして尻尾を振ってオラを見たが
オラは両手を広げて首を振ったら「へッン。」って言われたような気がしたのは
おらのひがみ目か。
でも、すげェカッチョ良かったな、ヤマドリ君の沢下りは、なんて思いつつ
また上流へとバロン君と歩き始めた。
するとすぐに伐採地が広がり、沢の木立はそこで無くなっていた。
どうしたものかと、ワンコとそこで待っていると
師匠が息せき切って沢を登ってきて言った言葉が「暴発か?」
オラは「うッ」っと言葉に詰まったが、ことの次第を話たら
「そうか一応はヤマドリに撃ったんだな、良かった良かった」と言ったが
やっぱり射撃場でのオラの挙動をつぶさに見ているだけ有って
心配してくれたんだなと思うと、とってもイイ師匠にめぐり会えたんだなと痛切に感じた。
続けて師匠は言った「沢の中途で一発仕留めたから、この沢の林が切れる辺りで
もう一度チャンスがあると思ってた。やはりそのとうりにヤマドリが出たな」
師匠いわく「大きな沢には登り口、中途、登り切りとだいたい3ヶ所に
ヤマドリいるチャンスが待っている確率が高い」なのだそうだ。

その後3ヶ所くらい沢を見て回った。
行く所、行く所ヤマドリが出たが、峰方向に飛ばれたり
沢の横に逃げ込まれたり、メスだけだったりと、鉄砲を撃つチャンスは無かった。
そのメスのときは、バロン君が木の上にヤマドリを追い上げポイントした。
オラは余裕を持って鉄砲を構え「こりゃ戴きだね」と思った。
が、その止まり木から滑空してきたヤマドリを銃身のリブに乗せたら
メスだったので引き金に乗せていた指の力を抜いたのだった。
沢の入り口で待っていた師匠は「冷静に判断したな」と、ほめてくれた。
これで散弾銃での猟に、少しは及第点をもらえたのかな。
バロン君のポイントの話をしたら「赤犬はキツネと思うらしく
頭の良いヤマドリは木の枝に飛び乗って、キツネ?を馬鹿にしてから
ゆうゆうと飛び立つのだ」と言った。
そうか、ヤマドリには、木に追い上げる赤犬がいんだなと思った。
結局この日の初猟は拾った小さなヤマドリと、大隊員の撃ち落した
大きなヤマドリの二羽であった。

山窩衆のキマリで、共猟の時は誰が撃っても等分に山分けとなっている。
が、大きなヤマドリは、先輩大さくら隊員がさっさと持って帰ってしまった。
「ウゥ、食い物の恨みは恐ろしいゼヨ」
と思ったが、ど〜やら事情があるらしい。
次はあんたの番だからと師匠に慰められた。

小さなヤマドリは鍋にして後の3人で食う事になったが
オラは店の仕込み時間が迫っていたので、胸肉と内臓を分けてもらって
開店準備が迫る店へと車を飛ばした。
ヤマドリの内臓はもちろんオーブン焼きで食す。
焼き加減はミディアムレアだ。
味付けは塩と胡椒のみ。
まず、心臓を食って不本意に命を落としたモノに、冥土へと引導を渡す。
それからレバーにうつり、脂のノリを確認しつつその固体の健康状態を舌で知る。
最後は砂肝だ。
これは時間を掛けてゆっくりと味わうと、その砂肝固有のコリッコリッとした
歯触りの感食を楽しみながら、その味わいの奥から
普段食っていた餌の味わいを知ることが出来る。
これがオラ流の内臓の食う儀式の順番だ。

さて、とっておきの胸肉は削ぎ切りにして
キコリの健ちゃんから聞いてたとおりのキコリ風しゃぶしゃぶにする事にした。
それはこうだ、ふつふつと煮立ったお酒だけの中に、お肉を軽く泳がせて
生醤油に青ネギの輪切りをたっぷりと漬け込んだヤツを
そのレアーな肉の上に載せてくるクルっと包み、パクっと食った。
あまりの美味しさに思わず久保田の万寿に手が伸びた。
あらまし軽い?酔いが回った頭で考えた「空気銃じゃヤマドリ猟は、ちょいと厳しいな
やはり犬を使った散弾銃での猟しか、今後の明かるい展望は開けんな」
と、痛切に思った瞬間「ワンコ欲しい」と、またまた欲しい欲しい病に火が付いた。
という訳で、次の日から知り合いに電話をかけまくってワンコ探しが始まった。



ゲキウマのヤマドリ


秋田の佐藤さんから戴いた脂のりのりのヤマドリ。

美味かったかって?
そりゃ〜涙がちょちょ切れるくらい美味かったのだ。

去年初めてキジを獲って有頂天になっていた頃。
きこりのケンちゃんに電話したら「こっちの人達はキジの肉なんて食わねえよ
まあ使うとしたら蕎麦の出汁にするくらいかな」
「鳥の肉といえば、ここいら辺ではヤマドリだな」とおっしゃった。

こないだ拾って食ったヤマドリは一年っこで、脂のノリが悪く
お世辞にもコンデション良い物とはいえなかったが
初めて食った感動で美味しさが百倍になったのだ。
今回秋田の佐藤さんから戴いたヤマドリは腰から首にかけて
体全体に脂が回っており、まさに旬といえる絶品モノだった。

このヤマドリでケンちゃんが言っていた事がようやく理解できた。
といっても彼の言わんとする事は、標高が低いところで育った山鳥と
ケンちゃんが住んでいる標高が高い所のヤマドリでは
食べる物の違いと、寒冷な気候で、脂のノリが違うって事らしいが
それは今年4羽目のキジでオラも痛感した。
その4羽目のキジは腰回りといい、首の周りといい黄色い脂が
こってりとノッテいるキジで、何をどうやっても美味くて
あまりの美味しさに刺身にして食ってしまったほどだ。
もちろんそのガラからも、たっぷりと脂が出てきた。
川魚でも言える事なんだが、春先の魚や産卵近くの魚はまずい。
やはり川虫が盛んに羽化する頃の、餌がたっぷりと捕れる事が出来る
梅雨時期のが一番美味いって事と繋がるな。

このキジはおまけの話があって、車で農道を走っている時に
ノコノコと道脇を散歩していた、のんびりキジオヤジだった。
オラはキジオヤジの真っ赤なホッペに、体中のアドレナリンがギューンと
脳味噌から一気に放出され舞い上がったが
何食わぬ顔でそのキジの脇を通り過ぎ、30メーターほど走った
ススキ林のところで車を止め、農道からススキ畑へそっと降りて
その隙間からスコープで狙いを定めて「パシュン」と一発
なんか変だなと感づいて戻りかけたキジオヤジに当てた。
そしたらそのキジオヤジは、まるでB流アクション映画を見ているような感じで
大げさに2メートルほど吹っ飛んだ。
それは解体して何であんなに吹っ飛んだか分かった。
ペレットが腰骨あたりから入り込み、首の根っこの一番太くなった
骨の所で停弾していたのだった。
30メートルの至近距離で受けた、勢いある弾が貫通しなかったもんだから
その弾のエネルギーをもろに受け、体がもんどりうったって訳だったんだな。
ちなみに、このペレットにはライフリングが刻んであって(当たり前か
でもそれを見た時は妙に感動した)弾頭には腰骨を通過した時の
傷が斜めに薄く入っていた。
S410で撃った弾を回収出来る確率は無いに等しいので
お守りにはしないが、大事に取って置く事にした。









師匠は「フィールドレンジが広すぎる犬は、猟後のワンコの回収が大変なので
トライアル系の血が濃い犬はパスしろよ」と助言してくれた。
「やはり実猟系のレンジの狭い、しっかりとした血筋のワンコが良い。
セターならスモウ系、ポインターならアオア系だな、でもポインターは
寒さに弱いし、共猟が苦手なワンコだし、持久力が無いからパスかな」と付け加えた。
そんじゃ何が一番お勧めですかと聞いたら「日本のフィールドには日本の犬が一番だな
その中でも一番良いのが地犬だな。」なんですかその地犬って
「ん〜今じゃめったに見かけないが寒村に連綿と、その狩猟の血統を
絶やさずに飼い続けられている、その土地固有の狩猟犬だな」
ソッカそんな犬もいるんだなと思ったその時、寒村といえばキコリの健ちゃん
と発想思い付き、電話をしてみたら「地犬って20年前くらいから見かけなくなったな
今じゃここら辺でもゴールデンレトリバーやラブラドールを飼う時代だからな
まあ無理でしょう、でもそれらしき物は他の村で見かけた事がある」という返事だった。
これでは希望の光が差さないなと思い、あきらめる事にした。
師匠は続いて延々と語った「俺が昔飼っていた甲斐犬のマリーはとっても良かったな〜
カモをやらせれば水の中を泳ぎながらラウンドし、撃ちやすいように集めるし
キジをやらせれば、メスキジには反応せずオスキジだけをフラッシュさせるし
ヤマドリにいたっては、沢の出口で待っていれば確実に沢の入り口まで沢下りをさせるし
しまいにゃヤマドリを飛び立たせないまま、地面を這わせながら追って来たもんだ
あんな良い犬は滅多に出会えないな」と、遠い目をしながら話した。
ソッカ甲斐犬か。

今は銃猟よりも鷹狩に凝っている、動物大好き人間の函館の恒さんに電話したら
「ブリタニースパニエルかドイツポインターが良いな」と語った。
「ブリタニーは溜め池の隠れガモも確実に見つけフラッシュさせる能力が高いし
水の中でもポイントするし、なんたってその陽気さが家庭犬としても良いのよ」と言った。
「ドイツポインターはレンジがそんなに広くは無いし、寒さにめちゃくちゃ強いし
ポインターって言うくらいだからポイント能力はずば抜けていてすばらしいよ」と言った。
そんな恒さんの飼っているドイツポインターは、わざわざアメリカの
繁殖家のところまで出向いて買い付け、そのまま狩猟訓練を入れてもらい
アメリカ認定のハンティング試験ジュニアー部門合格のお墨付きなそうな。
ソッカ、ブリタニーも良いけどドイツポインターか。

でも師匠いわく「ヤマドリ猟にはポイントする犬は勧めないな〜。
このあいだのバロン君を使ったヤマドリ猟の時のように
下手にヤマドリにポイントするものだから、ヤマドリに飛び上がるチャンスを与えてしまい
峰のほうに飛ばれてしまう事が多いのだ。」
「ヤマドリ猟にはポイントなんぞしない、ただただがむしゃらに突込んで行く犬のほうが良い
そんな犬に驚いたヤマドリに羽ばたたせないで、一気に沢下りさせるのが
ヤマドリ猟には良い犬なんだぞ。」とも教えられていたので、ちょっと?だった。
そんな恒さんの紹介で、恒さんと同じ兄弟犬を飼っていらっしゃる
大館の鉄砲ぶちを紹介していただき、さっそく電話をしてお話を伺った。
「古いタイプの鉄砲ぶちはヤマドリにはポイントしない犬が良いとよく言うが
今のヤマドリは生息数も少なくなり、その習性も少しづつ変化してきており
俺のヤマドリ猟の長年の経験から言えば、ポイントする犬のほうが猟稼は多いぞ
来春子ッコとる予定の俺のドイツポインターを使ってみれば」
みたいな事を電話の向こうで話してくれた。
ん〜ソッカ、やっぱりドイツポインターか。

昔飼っていたエアーデルテリアのスターシャを紹介してくれた
藤沢警察犬訓練所に、カモ撃ちがてら寄って猟犬の相談に行ってみた。
所長は「今は目を悪くしてしまい銃猟を止めたから、猟犬関係の情報は
あまり持ってないが、俺の鉄砲の師匠、四国訓練所ではアイリッシュセターを
繁殖させているから聞いてあげるか、アイリッシュセターはフィールドレンジも
そこそこで、持来良し、猟欲も強く水良し陸良しでいいぞ〜
それにあの被毛の美しさと言ったら他にたとえようのない物だ」と絶賛した。
ソッカ、アイリッシュセターか。
他の犬種について習性など訓練士としてのプロの意見を聞いてみた。
「なんの犬でもそうなんだが、ポインターだからポイントするとは限らないし
レトリバーだから水に好んで入るとも限らない、この犬種はこうだと思って飼ったら
間違いを起こす事になる。良い血統の猟犬だからと信じて飼っても同じ事が言える。」
じゃあどう言う基準で判断したら良いでしょうねと聞いたら
「まあ、犬のコッコを買うときは博打みたいなもので、飼って見なけりゃわからない」
「ホレここに居るショー系のゴールデンレトリバーを見比べてみな
同じ腹から生まれてきたのに、方や若犬部門で優勝はするが
片方の兄弟犬はポーズひとつ取っても綺麗に決まらない」と言った。
「だから猟犬の場合は犬種がどうの、血統がうんぬん言う前に
とりあえず雑種でも良いから飼ってみて、猟に引っ張りまわしたほうが
よほど良い結果出ると思うよ」とも言った。
つまり猟犬の場合は、飼い主のたゆまない愛情と訓練と、非狩猟期でも
猟野への頻繁な実地訓練が、玉を磨く結果となり良い猟犬となるらしかった。
ソッカ、雑種っか。

さてと、いつもお世話になっている秋田の佐藤さんにワンコのことで電話をしてみた。
「もう少し早く電話を貰えたら良い犬が居たのにな、惜しかったな。」
その惜しかった犬はブリタニースパニエルだった。
「今の時代、俺の住んでいる田舎でも住宅事情が悪化してきて
大型の猟犬は飼いづらくなってきており
ブリターニーみたいな小型猟犬がもてはやされているようだな」
「イイ子犬の出物があったら紹介してあげるけど、年々猟犬を飼う人が
居なくなってきているし、ましてや子犬をとるともなれば
そのもらい手を探すのも容易じゃないから、繁殖させる人もいなくなってる。
だから、あんまり期待しないで待ってろ」てな事を言われた。
ソッカ、猟犬のコッコは、なかなかいないんだな。

さてと散弾の弾も無くなって来たから買いに行くかと、武田銃砲店に出向いた。
餅は餅屋で「猟犬欲しいな」と鉄砲屋のオヤジに尋ねようかと思ったとき
ふとベレッタのカレンダーに目をやったら、そのカレンダーにぶら下げるようにして
張り付けてあった小さな紙切れに目を引かれた。
「英系の英ポのオス9月生まれ、3万円」
エッ、ポインターが3万円。
安すぎ。
鉄砲屋の親父に聞いた。
「こんなに安いのは何か欠陥がある犬なの?」って。
「ある運送屋の社長が飼うことに決まっていたのだが、病気になってしまい
引取りがノビノビになってしまい、最後にはヤッパリ病気が治らないので
キャンセルを食らった犬なので、思いっきり安く出した」との事。
「季節がら年初めの生まれの犬なら、猟期に十分間に合うのだが
9月生まれの犬じゃ中途半端で、誰も欲しがる人がいないからね」とも付け加えた。
そうか、ひょっとしてオラのワンコになるのかなと思いつつ
その紙に書いてある住所と名前と電話番号をコピーしてもらい
家に帰ってさっそくその飼い主に電話し、あらましの内容を確認した。
でも結局は現物を見なくちゃ話にならないので
明日の朝見に行く事を約束して、ひとまず受話器をを置いた。
その晩、師匠に電話してお伺いを立てたのだが「ショードッグの要素が色濃い
米系のポインターじゃないにしろ、トライアル系ならチョットまずいな。
英系のポインターって言ってもな色々あるし
あんたみたいに毎日山を曳く人には合わないんじゃないかな。
それに寒さには弱いっていううしナ」と、やんわりと反対された。
ソーダナと思いつつもヨーシという心意気も芽生えたのも事実だった。
まあ、ワンコを見てからだと思いながら布団に入った。

次の朝チョイトばかし約束の時間には早い時間だったが家を出た。
もちろん財布にはしっかりと3万円プラス2万円入れて。
ついた先は広い庭に立派な大きな犬舎がある
見るからに気合の入った愛犬家のお家だった。
その犬舎の前で掃除している方が、飼い主の高さんだった。
その広い庭にポツンと杭を打って繋がれていたのが英ポのワンコちゃんだった。
つぶれた顔がなんとなくボストンテリアを連想させる愛嬌のあるワンコだった。
もちろん一目で、これが欲しいという気持ちがガッーと沸いてきたのは言うまでも無いこと。
高さんの説明では、父親がア・オ・ア系で母親がコーンバリーと
スコットニーの系統なのだそうだが、そう説明されたも、オラにゼンゼンわっかりましぇ〜ん。
そんな高さんは30年に渡ってポインター一筋で繁殖させて来たそうで
なおかつ、トライアル系の血は入れずに実猟一本に絞って繁殖させてきたので
ここから出ていった子犬は「よく稼ぐ」って喜ばれているそうだ。
今年の年初めに生まれたコッコも、もう猟野で大活躍しているそうだ。
でもオラは、とりあえず健康で長生きしてくるなら何でも良いってのが本音。
「一番良い子犬をと社長に注文されていたので、種付けしたオス犬の当然の権利として
一番良い子犬として持ってきたのだから間違い無いよ」と言った。
そっか、一番良い子犬っか。
オラはその一番良い子犬って言葉を聞いた瞬間
即答で「持ってきます」と答えてしまった。

知り合いに聞くとポインターの事を良く言う人はいなかったので
ポインター一筋30年のプロに「ポインターの常識の嘘、Q&A」してみた。
寒さに弱いってよく聞くけどどうなんですか。
「寒さに弱けりゃ、岩手県にポインタ−は存在しないって事になんないかな」
そりゃそーだ。
体力的に他の猟犬よりバテ易いと聞きましたが。
「そりゃ育て方次第だな、毎日30分の散歩で済ましているくせに
猟が始まって猟野を曳くと、すぐバテルなんて自分に都合よすぎだな。」
それもそーだ。
共猟出来ないって聞きましたがどんなモンでしょ。
「それも育て方次第だな、常日頃他の犬がいるところで遊ばせていると
しっかりとマナーが入るので、そういうチャンスを作ってあげる事だな」
「それにこいつは、長い事母親のそばに居たから、そこら辺のマナーは
身に付いているし、ここに来てからも成犬に囲まれて居たので心配は無いな」
「まあ、これからのあんたの育て方次第で、良くもなるし悪くもなる。
犬の悪口を言うやつは、自分の育て方の悪さを公表しているようなもので
聞いている俺の方が情けなくなってくるよ」と、高さんは話を結んだ。
そんな高さんは「ホントにポインターが大好きなんだな」というのが
ひしひしと伝わってきた回答だった。

さてとワンコちゃんを持っていくかと思ったとき
いつの間にやら1歳半くらいの男の子が家の中から出てきていて
ワンコのそばに黙って立って頬から一筋の涙を流していた。
こんな小さな子になんにも言わなくても、別れちゅうもんは雰囲気で分かるんだな。
師匠が言っていたが「犬は人間の言葉がわかる。もし犬がしゃべれたら
どのくらい文句を言われるか分かったモンじゃない」と。
そうだよな、こんな小さな子でさえこうだからな。
高さんは帰り際「1000円とかでホームセンターで売っているような
安いドッグフードは絶対駄目だよ、あれはただのウンコ製造機で
タンパク質よりも繊維質の雑モノで出来ているから、毛並みは悪くなるし
成長期には合わない」と言ってHILL’Sの母犬用ドッグフードを指定して来た。
そーいや、しょうちゃんはガリガリのウンコ製造機だったな。
でもあの場合は、あれしか下痢しないドッグフードだったからな,,,,,,,,,。
お土産をたくさん戴いて、朝の渋滞の中 家路を急いだ.




今まで居た所では、名前も付けずに飼って居たそうなので
さっそく名前を考えたがイイ名前が浮かんでこなかった。
とりあえず仮名「じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょのすいぎょうまつ
うんらいまつふうらいまつ、くうねるところのすむところ、やぶらこうじのぶらこうじ
ぱいぽぱいぽのしゅうりんがん、しゅうりんがんのぐーりんだい、ぐーりんだいの
ぽんぽこぴーのぽんぽこなーのちょうきゅうめいのちょうすけ」とした。
ちぢめてジュゲムと呼ぶ事にしたが、家族のもんに総すかんを食らった。

かみさんが銀ちゃんがイイといった。
そーだな、こないだまで飼っていた犬は二歳とちょっとで殺してしまったので
今度はいっぱい長生きしてもらいたいから「長生きの金さん銀さん」から戴いて
特に長生きした銀ちゃんでイイなあと思った。
というわけで名前は「銀ちゃん」ですう。

後日、武田銃砲店のオジイチャンに弾を購入がてらこの事を報告しに行った。
そしたら「まずあんたが射撃を上手くならんといけないな、ドンと撃っても
なんにも空から落ちてこないようだと、犬の方で猟欲が湧かないからな」
と言いながら、最後に「高級な犬なんだから」とも付け加えた。
この武田のじぃちゃま独特の言い回しがオラは好きだ。
なんたってPCPに使うエアータンクのレギュレーターを
「ボンベのアタマ」って言う、素敵なお方なのだから。

そして、師匠のところへも銀ちゃんを持っていき
「オトッツアンがアオア系だって言ってました」と報告したら
「な〜んだ英系のポインターって言うからトライアルかショウ系の犬だと思った」
「アオアなら間違いね〜な」と言って、最後に独り言のように言った。
「猟犬を飼い始めたら散弾銃ばかりなってしまい、空気銃はやらなくなるんだろうなぁ」と。
そっか、そんなに犬を使った猟はハマル遊びなんだなとオラは思った。

と言うことで、銀ちゃんとオラの猟芸の切磋琢磨が始まるのだ。


キコリのケンちゃんちの英ポのメリーちゃんとヤマドリ。

これじゃこれじゃ、オラが想いを馳せているシーンは。
ちなみに上の画像ここいら辺の気候は、岩手県で一番寒い所。
どのくらい寒いかといゆうと、空気が凍るダイヤモンドダストが平気で出現するし
山の木立も氷裂するくらいの寒さでもあるが、ちゃんと英ポは元気で稼いでいる。
これを聞いたからオラは、安心して英ポを飼おうという気が起きたのだ。


という訳で、9月生まれの銀ちゃんは、年の瀬も押し迫った頃
ようやく幼児期から少年期に入った感じになったんで、そろそろ乱場に連れ出して
散歩がてら様子をみてみようかなと思い、店が年末年始の休みに入る12月31日から
1月4日まで毎日1時間半くらい疲れない程度に山を曳いてみる事にした。
初日は今年の初猟で行ったあのヤマドリのいた沢山に行くことにした。
途中途中沢を横切りながら進むのだが、銀ちゃんは「渡れないよ〜」って鳴いた。
オラはそれを無視してどんどん進むので、銀ちゃんは焦りながらも
恐る恐る沢に足を入れながら付いて来た。
そんな沢山の中腹あたり、50メーター先の沢の斜面にヤマドリさんは威張っていた。
オラと銀ちゃんに「ドコドコ」ってホロを打って、馬鹿にしたように威嚇しやがった。
クソッタレメがと思い、射程距離を縮めようと近づいて行ったが
そこにはヤマドリの姿は影も形も無かった。
今日の目的の一つ、沢山の行き止まりでガンシャイの試験をする事にした。
銀ちゃんが山の匂いに夢中になっている時に試しに空に一発撃ってみた。
銀ちゃんは「何?」って顔をして驚く様子も無かったので
続けて2発空に撃ってみたがゼンゼン平気だったので
お花つき三重丸の合格点をあげる事にした。

2日目は川原を散歩している時にヒヨドリがうるさく飛んでいたし
そろそろ食べごろの脂のノリ具合を調べるために一羽撃ち落した。
もちろん銀ちゃんは何も知らずにオラの後をついてきた。
草むらに転がったヒヨドリを銀チャンに噛ませようと誘導したら
いきなりガブガブと噛み付き食べ始めたのであった。
獲物を好きなようにさせると猟欲が増すって聞いていたから
獲物を取り上げないで気の済むように食べさせたが
羽まで食おうとしたので「マテ」の号令を掛けた。
日頃食事の途中で「マテ」を掛け、餌ボールから顔を上げさせてから
次の「ヨシ」まで待つ訓練をしていたので
思ったとおり、すんなりと羽を口から出したので
次に獲物を噛ませる時は「マテ」の号令を掛けることに決めた。

3日目、昨日の川原と違う川原に行きまたヒヨドリ狙いで行ったが
なかなか出会えず、がっかりして川原のススキをかき分けて歩いていたら
上空30メートルをアオクビ10羽くらいの編隊が飛んで来た。
バンバンと2発ぎこちなく発砲したら一羽がグラついて後方30メートルのススキ林に落ちた。
さっそく探しに行ったが見つからなかった。
銀ちゃんが完璧な猟犬に仕上がったら、半矢のカモくらいは
簡単に回収するんだろうなと思いながら期待を込めてあきらめる事にした。



よ〜くやった、えらいッ。

4日目また違う川原を歩きながらカモでも飛んでこないかなと
淡い期待を持ちながら歩いていたら、ヒヨドリとキジバトの群れに当たった。
さっそく一発バンとお見舞いしたら、都合よく半矢で樹上から落ちてきた。
さっそく探し回ったら、小川の向こう岸でバタついていたので
向こう岸に渡って回収に行こうとしたら銀ちゃんが、オラの足元をすり抜け
キジバトを咥えて持ってきた。
「マテ」の号令を掛けたら口からキジバトを落とした。
「ン〜、えらいえらい」と、これ以上の無い誉め殺しをしてやったら
銀ちゃんポカーンとしていて可愛かったな。
これでオヤバカ度合いが増したのは、いうまでも無いことである。






ショットガンを持とうかなと思った理由の二つ目に、師匠率いる山窩衆のメンバーが
一番熱くなっているのが「鹿の巻き狩り」である。
その魅力的な話は一緒に空気銃での猟をしている時や
酒を飲んだ席でのお話の盛り上がりようから、十分に伝わってきた。
「空気銃でも、鹿じゃないけどヤマドリくらいは狙えるから
巻き狩りに行こうと」昨シーズン誘われたのだが、どうせやるなんだったら
オラもショットガン担いで参加したいモノだと思ったので
先シーズンはお断りして空気銃に専念した。
そして、今年晴れて散弾銃所有と相成ったのだ。

さてシカ狩りに行く前に色々と準備があってと言っても
そんなに大げさなもんじゃないが、忍び猟の空気銃とはチョト勝手が違う。
まず弾は師匠に指定されたように6粒と止めのスラッグそれぞれ一箱つづ購入
スラッグ弾ってどんなもんかいなと箱から取り出し見てみると
その昔のはたまた昔、オラのちんぽこみたいな仮性包茎みたいで笑えた。
6粒弾を箱から出してヨーク見てみるとイボイボが透けて見えて
H系のバイブレーターみたいでこれも笑えた。
山ではひときわ目立つようにと言われていたので、オレンジの帽子と
蛍光オレンジのジャケットをワークショップで購入した。
それを買ったついでに師匠の家に寄って見せたら
「そんな薄っぺらいジャケットは、山の中でブッシュを漕いだら
一発でビリビリだな」と笑われてしまった。ゲッロッパ。。
じゃあと、極寒の地からはるばる遊びに来た、きこりの健ちゃんに相談したら
「いい物ありまっせ」と言ってカタログを持ち出してきた。
それはハスクバーナのチェンソーカタログだった。
その中に載っていたオールウェザージャケット タイフォンを指差すのだった。
それは健ちゃんも着ているネービーブルーに肩のあたりが
オレンジ色で出来ている、とってもスタイリッシュジャケットだ。
でもカタログに載っていた値段はスタイリッシュじゃなく、引けてしまった。

あのくらいのお金を出すんだったら前から目をつけていた
フィルソンのハンティングジャケットの方がいいな。
それに、これを着て夜の町に出かけていってら、けっこうヤバイなと思った。


山の仕事人ご用達、何故か名前は 岩礁55

靴は山のプロフェッショナルである樵と地元鉄砲ブチのご用達、三馬の「岩礁55」を
木こりのケンちゃんがあまりにも絶賛するんで、去年のうちに確保していた。
どんなに良いかって聞いたら、スパイクピンが特殊素材の2本ピンでグリップ抜群
尚且つ耐久性が良く、なかなか減らず、胴の部分もちょっとやそっとじゃ破れない
素材を使っており、これ以上のものは無いとケンちゃんがおっしゃっていたので
キジのツガイが印刷されてあるお札一枚を、渋々だして購入していたのである。
これで良し、っと。
追記、一猟期そして終わってからのフィールド訓練でも履き続けてみたが
履けば履くほど足に馴染んで来て手放せ無くなってしまったゾ。

12月1日4時出発となった鹿の巻き狩り。
この日は平日だったので4人しか集まらなく
師匠は「ちょっと人数がたりネ〜ナ、シカに切られるかも知れねえな」と言った。
「切られるって?」と聞いたら「包囲網をかいくぐられて逃げられる事」なそうだ。
車で2時間走ったところがシカの本場、五葉山近くのポイントであった。
その山で盛岡の鉄砲ブチの知り合いに会った。
と言ってもオラだけ知らない先輩方の知り合いの人達だった。
勢子長が話し掛けたら「待ち合わせに後二人来なくて心配なんだよな」と言ったが
これが後々大変な事件になってしまっていたのだった。

ついた先が山窩衆のシマ、銃禁近くのシカの餌場と言われるポイントだった。
「今日は勢子をやれ」と師匠に指示された。
勢子長テラさんの後をついて山の斜面を登って行く途中
「等高線をたどって斜面を横切るように追って行くからな」と
勢子長に指示されたが、オラは?マークが頭の中でゆれた。
すかさずオラの挙動を察したセンセイが「登りもせず下りもしない
一番楽な歩き方をすれば、それが等高線沿いに歩くことになる」と解説してくれた。
最初にセンセイが止まって位置につき、それから100メーターくらい登った所で
オラが立たされて、勢子長テラさんがそれから100メーターくらい登った。
タチ役の師匠からのセット完了の連絡を待った。
しばらくしてGOの無線が入った。
いよいよ始まり始まりィ。

さてと「等高線沿いに歩くんだっけな」と、はんすうしながら歩き始めたら
下にいるセンセイが「うっりゃツ!」とか「こっりゃツ!」とか
誰かに喧嘩売っているよな声と言うか、叫び声をあげていた。
オラは大変な連中がいる集まりに入ったもんだなと
正直言って後悔したと言うか、びびった。
と思うまもなく、上にいるだろう勢子長も「おっりゃツ!」と叫んでいる。
オラはこのまま帰ろうかなと思ったその時無線が入った。
「キクチィ、でけえ声出して行けよっ」と勢子長から気合の無線が入った。
了解しました。
「声出さないと間違って撃たれるぞ」
了解しました。
「大声出してシカをタチに追い込めよ」
了解しました。
な〜んだ、そういう訳だったんか。

日ごろ遊んでばかしいるので、かみさんには頭が上がらず
何を言われても「ハイハイ」と言っているので、かみさんへのウップン晴らしに
オラは大声で「ざっけんじゃね〜」とか「ぶっ殺すぞコラァ」なんて
叫びまくったのである。
とその時、上にいる勢子長の方から「パパパーンパンパン」と銃声が鳴った。
そく、無線を入れた。
が、師匠の方が一瞬早く入った。
「獲ったか」
「少し修行が足りなかったな」
と、勢子長が頭をかきながら言っているような返答が返ってきた。
「木と木の間でチラチラ見えるシカに撃ったんだが
弾がはじかれたようだな」と続けて言った。
「とにかく、その近く調べてみろ」と師匠は言った。
オラはシカに弾がはじかれるってどんな事だろうと思って聞いてみた。
「ライフルの弾は葉っぱに当たっただけで、その弾道が狂ってしまうものなのだ
だからあんなに大きな標的でも倒れないんだ」てな事を説明してくれた。
したら勢子長が「師匠じゃない、ここでは隊長と呼べ」と、また気合を入れられた。

しばらく等高線沿いに歩いて行くと、勢子長から「走ってるぞ、走ってるぞォ」と
アドレナリンが吹き出てくるような無線が入ったその瞬間
オラが歩いている50メートル先の木立の中を、でかい顔を上に向け
何本も枝分かれした角を背中にしょうようにした大きな雄ジカが
下枝に大きい角をカツッカツッと当てながら、猛スピードでドドドッーと駆け下りて行った。
オラはその迫力に銃を構えることすら出来なく、ただポカーンと見送るだけだった。
「師匠!じゃなく隊長、オラの目の前を雄ジカが駆け下りて行きました。」
「撃だねがったのガッ」
「あまりの迫力に負けて銃を構える事もできませんでした。」
「そうか、そうか、シカ見れただけでも良かったな」と師匠じゃ無く
隊長らしい心使いの無線を戴いた。

また等高線沿いに歩き出したが、これがまた斜面を横に歩くのって
谷足にだけ荷重がかかるもんで、けっこう足を痛めるし
なんたって自重3.5kgもあって、なおかつ重心が向こうにある物を
抱きかかえるようにして歩くとこれまたキツイ。
汗がフィルソンのハンティングジャケットの中でしたたりおちている。
ようやくの事でタチの隊長のところまで着いたら
ジャケットの中は汗まみれでグショグショ、体中が暑いのなんのって。
もう熱湯地獄。

虎の子は叩いて買ったフィルソンのハンティングジャケットは
はっきり言って鹿猟には不向きである事が身をもって証明された。
昼飯を食べてからもう一つの谷を攻めることになった。
オラは途中でへたばりそうになりながらも、ようやくの事で
タチの隊長の所までたどり着いた。
2回目の巻き狩りは鹿の気配が無く終わり、今日の鹿の巻き狩りは終わった。

次の日の朝、お婆ちゃんが「ハンターが死んだってよ、あんたも気ィつけな」と言った。
その日の朝刊に「鹿猟に行ったハンター二人が重体」と言う記事が載っていた。
それは昨日、師匠の知り合いのグループに会った時「後二人来ないんだよな」という
例の不安な話そのものであった。
それは、鹿猟解禁日前に五葉山近くの山でテントを張り夜を明かした二人が
テントの中で換気もせずにストーブを焚いてしまい、一酸化中毒になって
一人は死亡、残る一人は重体で高次救急センターに運ばれたとの事であった。
その病院に運ばれた方は、オラも知っている鮎つり名人のHさんであった。
そんなアウトドアーの達人でも「魔が差す時ってあるんだよな」と人事ではないなと思った。

それから10日ほど立った日曜日、また鹿猟の召集が掛かったが
12月に入ってからのオラの店は忙しい時であり「90%行けません」と
隊長に返事をしておいたのだったが、どうしてもし鹿猟に行きたいオラは
仕込みをやりくりし、どうにか行けるように準備万端整えた。
確か4時集合だって聞いていたから隊長の家に3時40分に着くように家を出た。
着いた途端、家の電気が点いた。
師匠にしては寝坊だなと思い玄関のベルを押した。
戸が開き出てきたのがおかみさんで「お早いですね」と言った。
「え!」と聞き返したところ、今日の集合時間は5時になったのだそうだ。
まずいなと思いつつ、お上さんにすすめられるまま居間にお邪魔した。
師匠は昨日遅くまで酒を飲んでいたそうで、なかなか2階の部屋から降りてこなかった。
5時近くになって目を赤くした師匠が下りてきて「早え〜な、キクチクン」と呆れていた。

続々と集まりだし、その人数は10名になった。
3台に分乗しあの山に車は走り出した。
その車のなかで「今月は仕事で疲れているのでタチにして下さい」と隊長に頼み込んだ。
そう思って今回はタチの防寒対策として、ダウンのジャケットとパンツを用意してきた。
それは一回目の巻き狩りのとき、暑がりの隊長が寒そうな白い顔になって
手もかじかんでいる様子だったからだ。
暑い勢子に対して、ただひたすら定位置で鹿がくるのを待ちつづけるタチは
寒さとの戦いなるのだそうだからである。
山に入る前に用事のある人は用を足し、弁当やオヤツ買うので
どやどやと、迷彩の戦闘服に身を包んだ、目つきの悪いオヤジ10名が
コンビニになだれ込んだ。
そこに居合わせた客たちが思いっきり引いていたのが可笑しかった。

解禁日と同じく最初に入った山に入ることになった。
隊長に聞くと「いざとなったら逃げ込める銃禁との境だし、なんたってこの斜面は
鹿の大好物なミヤコ笹が群生している餌場が広がって
巻き狩りに一番適した地形でもあるそうで、30年掛けて築いた
山窩衆の財産なのだそうだ。

さっそく一番下のタチに立たされて、用意してきた折りたたみ椅子を広げ
立ってじゃなく座って連絡を待った不肖の弟子。
まだかまだかと思っているとようやく勢子長の無線が鳴った
「これから行きます、皆さんよろしく!」と。
それから20分くらい経ったところで「鹿が走ってるぞっ」と言う無線が飛び交い始めた
その時「パパパーン」と景気良くライフルの銃声が山々にこだました。
思わずオラは無線に手をやり「獲れました?」と聞いた。
ゴソゴソと言う無線が入ったが、その内容は聞き取れなかった。
続いて勢子長の「おめでとう」の無線が聞こえ、方々からお祝いの無線が入った。
雫石から来た熊のマタギさんが見事ネックッショットで倒したそうだ。
それも木立の中をライフルの流し撃ちでだ。
と言うことで、北海道のだだ広い草原にいるエゾシカ猟のように
遠距離から狙うスコープ付きライフルと違い、木立の中を駆け巡る
シカを近距離から撃つわけだから、ここ岩手県の鹿撃ちの鉄砲には
スコープを付けないのが流儀なそうだ。
それとスコープを付けると木立が消えてしまうので、よろしくないのだそうだ。

無線によると獲れたのは一本角のピンコなそうだ。
いわゆる一年っ子と呼ばれる鹿で、その肉質はとっても上質なそうだ。
それを聞いてオラは今から唾をごくりと飲んだ。
角に紐を巻かれて降ろされてきた鹿は、もう腹が裂かれており
残っているのは心臓とレバーだけだった。
これは刺身にして食うと最高なそうで、さっそく腹から切り離して
大事にビニール袋に入れて保管された。
腹を裂かれた鹿はブルーシートに包まれて、勢子長の車のキャリアーに積まれた。]


サイドガラスに映った三陸の空

と言うわけで、このブルーシートは鹿を獲ったゆうトロフィーなのである。
車で道行くハンターたちが羨ましそうに勢子長の
車の上を見上げていたのがとても印象的だった。

そして勢子長テラさんが言った。
「先週の撃った鹿、剥かれて転がってた。もっとちゃんと探せばよっかったな」と
隊長は「雪がサラットでも積もっていたら血痕を頼りに探せただろうが
今年みたいに雪が降らない年はその見極めが出来ず
半矢にする確立が高いからな」と慰めた。
つう事は、オラの最初の鹿猟で獲物は有ったんだなと、ちょっとがっかりした。
昼飯をとって2回目の巻き狩りに入ったが反応はまったくなかった。

この日は隊長が会社に出番の日だったので、皆さんより一足先に帰ることになった。
もちろんオラも店を開けなくちゃなんないんで一緒に帰ることにした。
鹿肉は明日隊長の所に届く手はずだったので楽しみであった。
キジの地回りを早々におえて隊長の家へとぶっ飛んだ。
隊長は夜勤明けで寝ていたので、分けられた肉をこっそりと戴だくことにした。
さっそく、鹿肉を削ぎ切りにしてピンピンに焼いた鋳鉄製のフライパンで
ジュンと一瞬だけ焼いて何も付けずに食ってみた。
子牛に近い味がしたが、やっぱりチョッと味わいが違ってやはり鹿だなって感じだ。
それからは一心不乱で削ぎ切りにしてはジュンの繰り返しで
タマネギソースにサット漬けて、あっという間に半分ほど食っちまった。
後半分は家に持ち帰って家族に食わしてやったが「シカ〜?」と言って
恐る恐る食っていた。
ほんとに、こいつらは食わしてやった甲斐が無い。













うまく引っ掛けたカモは、骨までしゃぶり尽すのだ。

某所で一時話題になった鴨キャッチャー。
オラなりに改良って言うか、いつの間やらどこかに落としてしまって
無くす度に作るモノだから、必然的に少しづつ進化して行ったという
あまり自慢できないモノではある。

オラは金は無いが時間はいっぱいある。
だから並みの人間、二生分の釣りをしてしまった。
と、釣り仲間にはヤッカミ半分で言われ続けている。
そのなかでも鮎とルアーとフライフィッシングに関してはチトうるさい。
だからと言うわけでもないが、鴨キャッチャーはすぐにイメージできた。
というよりも、落としギャフ(これはかなり重宝したモノで
海面から3,4メートルの高さがある岸壁からキャストしたルアーにヒットした魚
小はメバルから、大は85cmのスズキまで無事にランディングした)という
カモキャッチャーに非常に近い物を作って持ち歩いていたので
頭に描いて作るのは楽勝であった。

最初はボラ掛け針(岩手県では鮭のガラバリという名で売っている
もちろん許可を受けた漁協の組合員がメスのオトリ鮭の鼻に紐を通し
杭にその紐を結び付け、寄って来たスケベな雄鮭をガラ掛け針で引っ掛けて
採捕する目的手段のためだが、実際は闇夜にまぎれてメス鮭を引っ掛けてしまう
密猟者のために売っているようなものだ)これにセルウキの特大を付けて
最初は使っていたが、これが縦横高さが18cmくらい有る
大変がさばるシロ物で、並みのポケットに入りやしない。
これをポケットに入れて転んだ日にゃ、ポケットの中から針先がブスリと
体のどこかに刺さるのは想像できる。
考えただけでもぞっとする。
っていうか、以前落としギャフをフィッシングベストの大きな胸ポケットいれて
岸壁を歩いていた時、漁船のモヤイロープにけつまずいて
目の前にあった魚箱に激突した時、オッパイの先あたりにチクッと
ガラバリの先っちょが刺さった時があって、一瞬ドキッとした事がある。
それ以来、落としギャフの先っちょには、厚手のコンドームゴム管をかぶしてある。

そこでカモキャッチャーは安全第一で、針先が常時立っていない様にと折畳式とした。
すると、小さなポケットにでも入るようなコンパクトな物になった。
これの製作上のキモは、針を束ねる糸はビヨーンビヨーンと
ある程度伸びるラインが、いい具合だって事だ。
ここでオラは、フライフィッシングで大河の桜鱒を狙うとき使う
シューティングヘッドラインに繋げるランニングラインに目をつけた。
それはエアロラインという細いナイロン糸を袋状に組み上げたラインだ。
これで何回も(そんなに鴨を獲っちゃいないけどね)広げては畳むの繰り返しでも
針を束ねたテンションはフレキシブルに変わるので、バラバラにならない。
これに巻いて余った糸を切らないで、セルウキの足を切った元に
ドリルで穴をあけ、この余り糸でセルウキの穴に結び通す。
ここでのキモはセルウキと針の間隔を、リールのラインに
干渉しないくらいな長さを、とるっていう事が大事だ。
これにより、クルリンとひっくり返って流れていくアオクビちゃんに
ガラ掛け針の先っちょに刺さり易い角度が生まれるのである。
最終的に折り畳んだ状態で10cm四方で、厚みが3cmに収まった。
これでいつでも携帯でき、いちいち車まで取りに戻らなくても済むように
胸の小さなポケットに楽勝で入るまでにコンパクトになった。

そしてこれを投げる竿は、船の小物釣り用の振り出しロッドがいい、とってもいい。
オラのお気に入りフィルソンのハンティングジャケットの
ゲームポケットに、コレマタ楽勝で入るくらい小さく折りたためる竿だ。
でも、この手の竿は安かろう悪かろうの部類に入るバーゲン品的竿がほとんどで
腰が無いグニャグニャのが多いから、少しでも硬い方を選んだほうがいい。
ちなみにオラのは30号の錘負荷表示のロッドであるが、これでもヤワイ。

リールは持ち運びに楽なようにコンパクトな物がいい。
ここでのキモはラインである。
厳冬の北東北では日中でもマイナス5度6度って話はいくらでもある。
この気温の中では、コンパクトなリールに巻かさっている関係上
くるくるとパーマしてしまうナイロン糸はトラブルが多く使えない。
だからオラはPEラインの3号を使っている。
これはいくら寒くてもパーマにならない点が気に入っているが
強度的にもナイロンラインの2,5倍と言われているのだ。
だから15kgオーバーの鴨でも回収出来るっていう強度がある。
といっても、モチロンそんなバカデカいアオクビはイナイ。
いくら大きいくても、せいぜい8kg止まりだ?


推定8kgオーバーの足跡?


猟期も少し経って、この870に少しは慣れスライドアクションにも抵抗感が無くなったあたり
どっか懐かしい感じがするんだな〜このレミントンくんと思っていた。
そんな870で初めて鴨をゲットした夜というか明け方、オラが小学校4年生の時
東京から裁判官のお父さんと一緒に引っ越して来た、綺麗な標準語使うアダチくんを誘って
近くの野原で戦争ゴッコしている時の夢を見た。
アダチくんの銃は発火石で銃口からパチパチと火花が散ってダッダッダッダッダッと音がする
マガジンが丸くなっているマフィアタイプのマシンガンだ。
オラはといえば、去年の暮れにサンタさんから戴いた、左の手で持つ所を手前に引っ張ってから
銃口の先にコルクの弾をつめて発射するスライドアクションのライフルだと
夢の中で見た瞬間、その夢をそばで見ているオラが居て(オラが計3人いる)
「これッこれッ870だあッ!」と叫んでいたのである。
朝起きて「どおりで懐かしい思いがある銃だなと感じていたこのレミントンくん
小学生の頃、戦争ゴッコで手にしていた鉄砲だったんだな」とようやく解明した瞬間
ますます愛着が沸いてきたレミの870であった。




去年の狩猟解禁の日は一晩で雪が50cmも降り積もり
散々な目に合いながら初猟を迎えたわけだが
それからもずっと狩猟期間中は気温も下がったままで
雪が降り続く真冬の中で猟を終えた。
マア空気銃を持ち、車での流し猟一本で勝負したので別段
寒いだのとは感じなかったし、また雪中行軍をしたわけじゃないので
楽と言っちゃ〜楽だった空気銃。

先シーズンは師匠に何度となく鹿撃ちに行こうと誘われていたのだが
「エアーライフルじゃ行く気しないな〜」と思い、丁寧に断り続けていたのだった。
でも何れはオラもという思いがフツフツとしてたのは事実。
しからば来年は散弾銃かついて、山の中でも歩こうかナともウツウツ考えていた。
そんな話を函館の恒さんに話していたら、途中からカモ撃ちの話になって
「溜池や湖の水面が凍ってしまうとカモ達は、畑の中の用水路や川に
舞い降りて水草やクレソンを食うようになる、その時に一番役に立つのが
ポイントまでたどり着く為のスノーシューだな」と言った。
オラはワカンジキを持っている事を思い出し「カンジキじゃだめかな」と聞いた。
「カンジキもいいけど、スノーシューの方がカッコえ〜ぞ」と言った。
オラはカッコえ〜ぞと言う言葉にエラク弱い。
さっそくその日の夜、ネット検索してアウトドアーショップのバーゲン品を買い込んだ。
そんなスノーシューをゲットしたのはいいが、エアーライフル猟では使うチャンスも無く
小荷物状態のまま小屋に仕舞い込み、この年は日の目を見るチャンスは無かった。
そんな話をきこりのケンちゃんに話したら「俺も前から欲しい欲しいと思っていたんだ」
と言い、オラと同じ性格か、速攻でしっかりとゲットしていた。
それも2セットも。
その後2週間くらいして電話してみたら「いや〜、スノーシューの世界はマタ別物で
新しい世界が開ける」っていうような事をエンエンと楽しそうに喋っていた。
モチロン彼の商売、木こりの現場で大活躍したのは言うまでも無い事らしかった。
そんな話を聞いていると「やはり一番グレードの高いスノーシューじゃなきゃ
使い物にならない」と言うのが彼のスノーシューに対する評価だった。
ジャア、オラの買った低級品で、しかも投売り品はど〜したらいいのかね。

今年の猟期前半は、去年とまったく反対で雪が降らず気温も高めに推移した。
モチロン、解禁して2週間くらいは空気銃での車流し猟をした訳だが
途中から銀ちゃんの散歩をかねて、散弾銃かついてヤマドリの猟というか
生後4ヶ月の銀ちゃんに山になれてもらうだけのバードウオッチングしていた。
岩手県のキジとヤマドリ猟は1月15で禁猟だ。
それ以降は北上川の河原でカモ専門と言ってもモチロン
キジバトやヒヨドリ、ムクドリが居れば抜け目無く戴いていたのだが。
河原を歩き回ったのだが、雪が無いのでとっても楽チンだった。
猟期もあと残すところ30日過ぎに、遅ればせながら寒波がやって来た。
そして雪が降る日が続いた。
いよいよ冬本番って感じになって来た。
そんなある日、積もった雪にズボズボと足を取られ、汗をかきながら河原を歩いていた時
「そーだ、スノーシューが有ったんだっけナ」と思い出し、帰ってから小屋から引っ張り出してきた。
確かケンちゃんは「例のスパイク長靴じゃしっくりとこないぞ」と言っていたのも思い出し
トレッキングシューズも一緒に出してきて、おまけにスパッツも出して来た。
準備万端、いざ出発。

ここんとこの冷え込みで雪は50cmくらい積もった。
吹き溜まりでは80cmくらいまで積もっている。
スパッツを巻いてスノーシューに乗っかってみた。
クロスカントリースキーを初めて履いた時よりはゼンゼン違和感が無い。
銀ちゃんを車から降ろしスノーシュー初出猟。
チョッと慣れないせいか、歩き始めて間もなく体が汗ばんできた。
フリースのインナーを脱ぎゲームポケットに仕舞い込んでからは
ちょうどいいくらいにクールダウンして快適になった。
2時間くらい乱場を歩き回ったが、猟果はカラスが一匹だけの有害駆除に終わった。

それから10日間続けてスノーシューに乗ってみた感想。
銀ちゃんが足ズボにならずに走り回れるくらいの雪面では
こちらのスノーシューも、あまり雪にめり込まず快適に歩き回れた。
たまに雪ズボになったとしても、ワカンジキのようにもがきながら汗を流し
ズボ足を抜くというようなことは無い。
オラのバーゲン品のスノーシューは、親指の母子球あたりでビンディングが
自由な角度を取れるので、つま先をピンと伸ばして足を上げると
抵抗が無くすんなりとズボ雪からスノーシューが抜けてくる。
これは案外重要な事でワカンジキの場合、ズボ足になった時
ワカンジキ自体が抵抗になって、思うように足が抜けず
罠に掛かったイノシシのようにもがいて汗をかきまくり
体力を大幅に消耗してしまうって事が無いのが、とってもいいねェと思った。
それとオラのはトレッキングモデルといって、スノーシューのラインナップの中では
一番ライト(お値段もライト)なモデルであるが、河原の雪の上を歩く分には十分用は足りる。
この調子だとちょっとしたヤマドリ撃ちにも活躍してくれそうだ。

ケンちゃんのスノーシューはボダーが言う所のバックカントリーモデルっていう
ヘビーモデルだが、彼が言ってたようにライトモデルは使えないっていうのは
ケンちゃんたちが働いているような標高が高い所の、深いパウダースノーと
格闘しなければならならない高山での話だけだなと思った。
結論としてヘビーデューティー仕様のスノーシューはオラの狩猟にはいらないネ。

似たようなもので雪原を歩き回るクロスカントリースキーよりも良い点は
クロスカントリースキーでは躊躇するような坂でも平気で直登できる。
っていうか、ほとんどの坂は軽くクリアーできる。
もう一つ良い点はストックがいらないので両手がフリーハンドだ。
っていうことは、狩猟のためにある道具だねコレハ。
クロカンの悪口は言いたくないけど、あれはあれでケッコウ技術がいるからね。

これからの季節、積った雪の表面が軽く融け、凍って締まった状態の所で歩くと
足が時たまにズボッと刺さり、ご老体の身では腰を痛めたりすることがあるが
これだとそんな事も無く笑いながら歩ける。
それと狩猟期間が終わっても、これだけでも十分遊べそうで
これからのシーズン、おおいに楽しみではあるな。

これで北上川のカモは全部いただきぃ。


スノーシューの跡と銀ちゃんと870。










S410の純正弾ディアボロのスカート部分は、見た目にも頼りなく薄く出来ている。
多分これが集弾率を良くしている大事なポイントかもしれない。
この弾が入っている円形の黒いケースを開けると
スポンジのクッション材が入っているわけだが
これだけでは、移動中の弾の変形や傷を防ぐことが出来ない。
調べたわけじゃないが、全体量の90%は大なり小なり
スカート部分に傷や変形を負っているみたい。
オラは性格的に大雑把だから、そんなには気にならない。
とは言え、少し気に掛かる点ではある。
そうゆう話題を師匠に振ったら「変形したスカート部分は
圧縮空気で押し出された弾が銃腔内のライフリングに
こすり付けられるように通り過ぎる時
その銃腔の抵抗と押し出される空圧でスカートが広がるものだ。
だから、少しぐらいスカートが変形してても問題ない」と
実際に弾が通り過ぎる銃腔内を見た事の様に言い切った。
ホントカナ〜と一瞬思ったが、師匠の言うことだから83%本当だろう。
あとの17%は疑問を持っていたのだが、例の2メートルも吹っ飛んだキジ君の
体内から取り出した弾をつぶさに見て、師匠の言うとおりだったとホント感心した。
弾のスカート部分は圧縮された空気の放出圧力によって、丸みを帯びるように膨らんで
そのスカートにはライフリング痕が、2mm間隔で長く深く刻まれていた。
恐るべし師匠。
今度からは95%信用しますです。
「ナンダあとの5%ってのは」と言われそうだが、モチロン消費税ではない。
これはオラが自分自身で考える5%でやんす。
そんな師匠は予備弾をフィルムケースの空き缶にカラカラと入れて持ち歩いている。

かたやジマ先生はオラと違い緻密な性格と頭脳を持っているから
チョットのスカートの変形や傷も許されない事らしい。
だからジマ先生は狩猟に出掛ける時の
予備弾の携帯にはタイヘン気を使っているのだ。
そんなジマ先生から教えてもらったのが、スカート変形防止ラバースポンジだ。
1センチくらいの厚みのあるラバースポンジに、4mmのポンチで穴を開け
そこに弾を差込み持ち歩いているそうだ。
緻密な性格じゃないオラでも猟欲は人一倍ある。
0.5%でも獲物が獲れる確率を上げたいが為に、それをマネッコすることにした。

まずはそのスポンジを探すために、小屋の中を引っ掻き回してみたところ
ネオプレーンのウエーダーの補修材が出てきた。
手にとってみると、この条件にピッタシ合うことが分かったのでこれで作る事にした。
次はそのネオプレーンのクッション材を入れるケースを探すことにした。
オラは釣りの小物入れが大好きで、いろんなケースを買って死物にしてしまっている。
そんな死物が入ったダンボール箱を小屋から引っ張り出し
アレヤコレヤと摘まみだしてはラバースポンジをあてがってみた。
一番しっくりときたのが針入れとか、オモリの小物ケースだった。
これは3ヶ所に区切られており、弾のローテーションを組むのに好都合だ。
それにもまして、その厚みがクッション材と弾の寸長にピッタシ来ることが分かって
思わず「ヤッター」と、アゴに古いチョキを決めてしまった。
そのネオプレーンのクッション材を、それぞれ3ヶ所のボックスに合うように切り出し
ハンドメイドミノーの目玉を作るときの4mmのポンチで
カッコ良く等間隔に穴をそれぞれ8ヶ所開けた。
それをケースに貼り付けるわけだが
あの魔法の薬がタップリと付いた弾を収めるとなると
あの薬の影響で粘着力が失われてしまうのじゃないかと思い
両面テープで貼り付けるのはヤメにした。
そこでオラはいいかげんなカンを駆使し
酢酸ビニール系の接着剤で貼り付ける事を思いついた。

弾を込める前に、ネオプレーンの台材にタップリと魔法の薬を振り掛け
ここに弾を差し込むだけで薬が塗布できちゃうようにした。
結果、気分的にもこれは正解のような気がした。


停弾は、ちょうどこの辺かな

たまたま入れと続いたら、おんなじ弾つながりで「銃腔クリーニングキット」のお話し。
前々の話で銃腔をクリーニングしたら集弾率が元に戻ったって話あったでしょ
あれの続き、どうやったら銃腔をきれいに出来たかっていう
ジマ先生にそ〜っと教えてもらった実技編。
まず用意する小物たち。
環付きオモリ0,5号(第一精工社)とナイロン糸1号(バリバス)たこ糸(カープ)
キチンタオルペーパー(スコッティー)そしてガンオイル(ベレッタ)。
まずは環付きオモリ0,5号にナイロン糸1号を結びつける。
そして銃身と同じくらいの長さにナイロン糸を切る。
それに、たこ糸を銃身の長さプラス40センチの長さで切り
先ほどのナイロン糸に結びつける。
もう一方のタコ糸の端をダンゴ結びにしておく。
これに二重になっているキッチンタオルペーパーを
3等分にペーパーの繊維のとおりに、切り分けこれに軽くヨリを掛けておく。
このヨリの掛かったペーパーの真中にタコ糸を一回ダンゴ結びでくくり
タコ糸の端のダンゴ部分まで結び目を下げておく。
ここからが重要。
このキッチンタオルペーパーにタコ糸で結んだ部分から
1センチほど離してガンオイルをタップリとふくませる。
もし結び目にガンオイルがにじんでしまったら、もう一度始めからやり直し。

S410のボルトを目いっぱい引き弾倉を抜く。
この目いっぱい引いたボルトのレバーに輪ゴムを2本掛けて
銃床のグリップ部分に回して、またボルトのレバーに輪ゴムを掛けておく。
これで薬室部分は開かれたままになったでしょ。
そしたら銃口を下に向け、開かれた薬室口から
ナイロン糸のついた環付きオモリ0,5号を静かに落とし込んでいく。
途中、どっかに引っ掛かってオモリが落ちて来ない時があるんだが
そこはやさしくナイロン糸を引いたり緩めたりしながら落とし込むのだ。
無事に銃口からオモリが出てきたら、ナイロン糸をたぐり寄せて
続けてタコ糸を銃口から引き出し、ガンオイルがついたキッチンタオルペパーを
薬室口まで引き寄せたなら、無理にスピードは付けなくていいんだが
でも躊躇せずに銃口まで一気にペーパーを引き出す。
その引き出されのキッチンタオルペーパーを見てキットあなたは驚く事でしょう。
後は抜き出されたキッチンタオルペーパーに、汚れが付か無くなるまで
何度でも繰り返すのだ。
使用回数にもよるが、たっぷりと1時間は掛かるかな〜。
それくらいアンタの410は汚くなっているはず。キッパリ

さて、さっきのキッチンタオルペーパーとタコ糸の結び目に
ガンオイルが付いたままに銃腔を通すとどうなるかという話。
水を吸ったティッシュペーパーと同じで、はかなくもモロなってしまい
銃腔のどこかの部分で アッケ無く切れてしまいあなたの顔は真っ青です。
っていうかオラはこれをやらかしてしまい
ホントに真っ青になってしまいました。
オラはオロったままに、カラ撃ちをしてしまった。
出てきてちょうだいって、祈りながら。
モチロン出るはずも無いキッチンタオルペーパー。
その代わりに、木っ端微塵になったキッチンタオルペーパーの一部が
逆噴射して隙間といい、小さなアナというアナからプシっと噴出たんだね、これが。
どうしようもなくなったキクチくん。
師匠に泣きを入れました。
そうしたら師匠が「クリーニング棒と螺旋ブラシでどうにかなる」との心強い返事。
師匠の家に吹っ飛んでいって、しこしことブラシで掻き出しました。
とさ。
モチロンその後は試射してみましたよ。
ふう、セーフ。

オイルのトラブルで、文字通り油汗をかいてしまったっていう、おそまつな話。








狩猟免許を受けるために猟友会主催の予備講習に行った時
負環と負皮と言う言葉を初めて知った。
それは銃の先台、これも初めて聞く言葉だが
これは左手で支える木で出来たグリップだと。
これの先に付いているベルト通しの金具のことを負環と言う。
銃床とは肩と頬につける木の持ち手のこと指していた。
これに付いている金属製のベルト通し金具もまた負環というそうだ。
その両方に橋渡しすろように付けるのが、肩に背負う負皮であると。
カッコいいはずのショットガンも日本語にすると散弾猟銃だし
ホント、思いっきりかっこ悪く、そして字の判読が難解になるねェ〜。
なんだか日清日露戦争の時代まで落っこちてしまうような気がするね
ムリクリ和訳すると。

さてさて その負皮だが、秋田の佐藤さんのところに遊びに行って
お家に案内され、秘密銃弾製造所に上がらしてもらった時スリングの話になった。
「俺はスリングを今までに何本買ったか分からないな。
カベラスから密輸したスリングは色落ちするし、伸びたりして
いろんなヒドイ目にもあったな」と語っていた。
そんなもんかなと話を聞いていたが、やっぱりオラも狩猟をはじめて
まる一年の間に4本も買ってしまったのだった。
一本目は銃を買った時付いてきた、まことに頼りないスリング。
2本目は地元の鉄砲屋さんに勧められて買った、ちょいとばかし
気張ったスリング。
3本目がカベラスのカタログを見てて思わず注文してしまった
肩から絶対ずり落ちないスリング。
このカベラスから買ったスリングだけが、前の2本に比べれば
ほんのちょっとばかし毛色が変わっていたが
ここまではごく普通の格好したスリングだ。

そのスリングで鹿狩りの勢子をやった時、いつ鹿が出て来ても良いように
体の前で銃を保持しながらヤマの急斜面を歩かされたので結局のところ
肩からずり落ちないスリングは使わず仕舞いだったし
急斜面でバランスを崩すと危ねえなと、勢子を初めてやってみて痛切に感じた。
だから、手で猟銃を保持して安全に歩くのはとっても疲れた。


師匠はといえば、体の前面で銃を吊り下げるようにできる
スリングを使っていて、こりゃ良いもんだねェ楽そうだなと思って
「隊長のスリングどこで買ったんですか」と尋ねてみた。
そしたら「カベラスの通販だ」との答えが返ってきた。
この日の鹿狩りを終えて帰宅し、さっそくカベラスのカタログを
引っ張り出し調べてみたら、師匠のスリングとはちょっとカッコが違うけど
有りましたねえ「サファリスリング」というヤツが。
ちょうどその日、秋田の通販王、佐藤さんから電話があったので
どんなもんですかね?と聞いてみたら「あれねェ、ケッコウ使えそうで
使えないよ、買ったはいいがすぐに友達にくれてやったよ」との
答えが返ってきて、ナ〜んだとガッカカリもした。
どうやら師匠のスリングは、かなり昔に買ったものらしく
今は絶版モデルらしかった。

どうしようかナと考えているうちに、次回の鹿狩りの日がやってきた。
前回で勢子役に疲れまくって、夜の仕事に支障が出て懲りたので
隊長に「夜の営業に支障が出ないように、タチやらして下さい」と頼み込んだ。
そのタチなんだが、勢子が到着すまでに、ケッコウ待ち時間があるし
寒いし、勢子達の無線を傍受していると「上に走ったぞ!」とか
「今先までの寝跡があるぞ」とか、景気いい話が飛んできてチョッとばかし
うらやましくも有った楽なタチ。
そんなタチをやって、勢子長が目の前に現れた時、隊長のスリングとはカッコが
違っていたが、体の前で銃をぶら下げて保持できるスリングを発見した。
これだッ!とピンと来て勢子長に聞いてみた。
「ああ、これね。タケダで売ってるよ、4000円くらいだったかな〜」との返事。
さっそく次の日武田銃砲店にいって陳列棚を物色してたら有りましたね〜。
3モードスリングとやらが。
耐久性には欠けそうだが、これなら楽できるな〜と確信し、モチロン即買い。


美味しそうな群れ

というわけで、今までは肩から絶対ずれないスリングで銃を背負い
鴨狙いで北上川の川原を、銀ちゃんとあても無くブラブラと歩き
ときおり北上川を行き来する鴨が低く飛んできたときに
ショットガンをダンダンダンと、ぶっ放していたわけだが
今日からは、このスリーウエイスリングにチェンジして歩いてみた。
なるほど肩に銃の重さの八割がた負担してもらっているので
川原を歩くのがとっても楽チンになった。
そしてすぐに銃身のリブに鴨を乗せられる速攻性もあって
これで幾らかは猟果アップかなと思ったが、そうは問屋はおろさない。

ナカナカ鴨に当たらず、たまに当たったとしても
グラっとするくらいで、平気で飛んで行ったアオクビ。
こんな話を師匠にしゃべったら「鴨撃ちの場合は、鴨の脚がちゃんと
目で確認出来るくらいの距離じゃないと、いくら弾を撃っても
落ちないものだ」と言い、それくらい鴨は矢強いものなそうだ。
ソーいえば、鴨をはじめてさばいて食った時
その羽毛の多さにビックリしったっけな。
あれは防寒保温のためだろうが、散弾の弾をよける
防弾服の役割もしていたんだな。

そして師匠は「北上川の鴨を狙うんだったら、対岸から向こう岸を
双眼鏡で覗き、鴨が休んでそうな川柳や葦のおおいかぶさったような所
大きい岩の陰なんかをよ〜くチェックし、休んでいる寝屋を山立てし
対岸に渡りソーっとその寝屋に近づいて行き、近距離から鴨を
フラッシュさせて撃ち込むのが北上川流の鴨撃ちで「踏み抜き」と言う
伝統ある猟法だ」と教えてくれた。
だからか、先日師匠と鴨のデコイ猟の仕方を教えてもらっている時に
「対岸からこのデコイを見つけて、音もなく後ろから散弾をぶっ放す
不届きモンがいるので、鹿猟のときと同じく「狩猟中」の
旗を立ててからデコイを仕掛けるように」と教えてくれたんだな。

そして「犬を使えば対岸からも見つけれなかったようなボサの中で休んでいる
鴨もフラッシュできるぞ」と付け加えて話してくれた。
それを教えてもらってからは、面白いように鴨がフラッシュし始めたが
ナカナカどうして、そうは簡単に落ちてはくれなかった。

連れの銀ちゃんも川原の歩き方がわかって?来た猟期も終わりに差し掛かった頃
うまい具合に川岸下流から、オラの立っている上流へと銀ちゃんがラウンドして来て
足元近くから鴨をフラッシュさせてくれた。
そして初めて散弾3発で鴨を2羽しとめる事ができた。
これで来シーズンのメドがたったと思ったら
2羽撃ち落したうれしさと共に、期待と嬉しさがこみ上げてきた。

なんだかんだと、ここまで来るには北上川の川原で
キジのツガイ6組分の弾を撃つことになったのがだがね。


このスリングのデメリットはって?
もはやスリングベルトの一部ががボサボサになってきており、耐久性に劣るかな〜。
っていうか、ほとんど毎日行ってるからな〜、サモアリナン。
それとスリングがすぐにヨレてしまって、スムースな銃扱いが
出来なくなってしまう事がママあり、まめにチェックが必要ってのも欠点の一つかな。
デモ楽したいヒトには絶対オススメ。
そうそうもう一つ、これは行ってこいのユーターンスリングなので
いつも銃口に軽く手を添えていなければ、すぐにお辞儀してしまうのが弱点だ。
オラはこれをやらかしてしまい、銃口に雪を詰まらせてしまったのだった。







老後の楽しみでは無い、猟後の楽しみを見つけたという話。

な〜んだ、ただビデオカメラじゃん
それも今じゃ誰も見向きもしない8mmビデオカメラじゃねェ〜か
と、お思いでしょうが、そう言われたんじゃ話が続かないって事よ。
はは〜ん、ナイトショットが付いてるから、これで良からぬ事
しようって魂胆だなっと思ってるアンタ、違うって。
HはHでもハンティングのH.
っじゃ、なんでこれが、このページ載ってるかって事だな。

それは狩猟期間も終わってホッとしたのもつかの間
来るシーズンの為に生後6ヶ月の銀ちゃんに
フィールドワーク&バードワークを覚えてもらう為に
禁猟になった次の日から銃禁エリアに温存されているキジに
当てまくって、少しでも上達してもらう算段なのだ。

最初の頃はただ銀ちゃんに付いて回って、右だの左だのって
指示を出しながら、銃禁エリアをただ歩き回ったのだが
鉄砲を持たないで猟野みたいな所を歩くのって
ものすご〜く手持ちのブタさんなのである。
そこで、そこら辺に冬枯れている木をフォールディングナイフで切り折り
これを猟銃に見立てて、銀ちゃんがフラッシュさせたキジを
この木に載せてリードさせて「バン」と口で激発。
「定量、定量」なんてね「な〜んちゃってハンティング」を
愉しんでいたわけ。
でも、それにもナンダか空しさを感じて3日4日で
アホらしくなって止めた。
そこで今度はデジカメを持ち出してファインダーで捕らえてシャッターで射獲
なんてやってみたものの、そのカメラのファインダーにキジを収めたとしても
シャッターが瞬時には落ちないのがデジカメの悲しい所。
ジャアって事で今度は200mmのズームのフィルムカメラを
持ち出してみたものの、今度はファインダーの中に収められない。
キャナ(盛岡の方言で腕前の事)が悪いし、機体が重いし
プログラムオートなんてもんは無い、全手動のCONTAX・S2。
手にとる前から却下。

そこでファイナルウエポンである所の8mmビデオカメラの
登場と相成るわけだが、久しぶりに押入れから出して来た
その昔一世を風靡したソニーのTR75。
バッテリーはまだ元気があったがウンともスンとも言わない。
イワユル経年動作不良って奴だな。
このまま捨てるのも悔しいし、それに今まで撮り貯めたカセットも
見れなくなるんじゃモット悔しいナと思い、Mrコンセントっていう
家電修理屋さんに修理見積もりは無料との事なので見てもらった。
そこの店員さんは一目見るなり「安くて15000円最悪で25000円」と冷たく言放った。
十何年も前の、それもカセット入れる蓋が経年変化で
ベト付いてるカメラに修理代20000円払うのは、もっと悔しいんで
さっさと諦める事にした。
デモちょっと未練あるオラとしては、いい加減な思い付きで
ブレーキフルードクリナーっていう、物凄く強力な洗浄スプレーを
駆動部分に吹いてみた。
モチロン、ウンともスンともゆう訳がない。
というよりも、その物凄い洗浄力で中のプラスティック部品が
ポキンと折れてカセットを入れる所からポロンと落ちてきた。
結果、このカメラに鼻糞ほどの未練も無くなって清々した。

デワという事で、家電量販店めぐりをしてビデオカメラの物色をしてみたが
ビデオカメラは第3世代に突入しており
もはや8mmビデオカメラは店頭には並んでない。
時代はデジタルビデオ世代になっていたのだった。
DVはコンパクトな機体で、これでもいんだが、今まで撮り貯めた
カセットはモチロン再生は出来ない。
これじゃ絶対面白くない。

困った時のYAHOO頼みって事で、ネットで拾ってみたが
8mmビデオカメラは2000年をもって製造中止だってさ、ソニーさん。
じゃあ、オークションしかねェなと思い検索。
おわァ安い!
程度の良い最終モデルの8mmビデオカメラが、運が良ければ
1万円後半で落札可能。
2万円も出せば新品同用なものが確実落札できちゃう
人気落ち目っていうか、まったく無い8mmビデオカメラ。
ある意味、お買い得かもしれんね。
さっそくリーチしてロンでゲット。
これをさっそくフィールドに持ち出して銀ちゃんとお散歩。
いいねェ〜。
オラでもチャンと写せます。
キジがフラッシュして飛び去るまでを。
これで一番喜んだのが、うちのオバア。
足腰が弱ってきて、川原なんぞに行けないオバアは
オラが撮ってきた銀ちゃんとキジの雄姿に感激?していた。

でもやっぱり、全手動の200mmズームカメラで
キジを撃ち落して見たいものだと思った。

ドコドコっていう音が耳に入ったその刹那、レミの870をピタッと肩付け
そして頬付けの構えが瞬時に出来るようになった猟期後半の事を思ったら
一眼レフのカメラで飛び立つキジぐらいは
簡単に捕らえられるんじゃないかなと思った。
それに、やってみなきゃわかんネっていうのがオラの標語。
そうと決まりゃあ、明日からはアナログもいいトコ、前時代のS2の出番だな。
次の遅い朝、銀ちゃんを連れて自宅から車で10分も掛からない銃禁の川原にいた。
最初から200mmじゃ狭すぎてピント合わせに自信が無いので
100mmくらいから始める事にした。

生後6ヶ月に突入した銀ちゃん、まだバシっとは認定ポイントできないが
キジがいる近くになると、盛んに尻尾を振って地鼻を使うので
こちらとしてはキジが近くに潜んでるなと、ハッキリと分かるようになったので
カメラを構える時間と余裕はたっぷりとあるはずだしさ。
と、お気楽気分でGO〜。
最初の出会いキジは50mくらいの所から、さっさと飛び立ったヒネキジのメス。
これは撃ってはいけない非狩猟鳥なんてネと、銀ちゃんとマケオシミ。
2羽目の出会いキジは銀ちゃんが流し認定してから、間を置いてフラッシュした。
クレー射撃に例えれば20mのアメリカントラップてな感じで
マークハウス方向に綺麗にプール飛行曲線を描いて切れていった。
このキジは落したか?ってのは距離的に微妙な所だな。
そうだな、3号を装填していたら追い矢で落ちたかもね。
でも、キジの時はそんな号数入れてねえ〜ので、これは半矢かもね。
肝心のカメラのファインダーで捕らえたかって?もちろんシャッターは切った。
が、100mmじゃチョッと画像が小さいか。
3羽目の出会いキジは、銀ちゃんが流し認定に入った途端フラッシュした。
これは5Mのアメリカントラップって感じだな。
今度はプール飛行曲線気味にケツ穴を隠すように流れていった。
当たったかって?八割方落ちなかっただろうナこれは。
なんたって暴発気味に近距離で引き金を引いてしまったハズ。
だから、散弾のパターンが広がらないまにキジに向かって行ったのだから
十中八九当たらないはずだ。
今シーズン、木こりのケンちゃんの目の前でこれをやらかして
ヤマドリの群鳥に5メートルの距離で近射、そして外してしまい
「近すぎ!」って言われた経緯があるから、これは自己申告で失中とします。
4羽目の出会いキジは、30m向こうの冬枯れしたススキの小山と小山の間からのぞいた
黒ッポしいトンガリ頭を、オラは逃さずに確認した。
ここは第2種狩猟免許で鍛えたオラの目が、銀ちゃんの鼻に勝ったのだ。
もちろん銀ちゃんに指示して、その場所に急いだがキジはモチロン居ない。
ズット目をそらさずにその場所を押さえていたのだがね、、、、。
キジ君は這うような低姿勢でダッシュして逃げて行ったのは言うまでもない事。
銀ちゃんはキジ君の臭いを完璧に捕らえてリンゴ畑の向こう、笹薮の方へと追跡した。
しばらくたってもキジは飛び出さなかった。
やっぱね、オラの少ない狩猟経験上ヒネキジは
さっきみたいに距離を縮めさせないままに飛び出すか
ハタマタとんでもない逃走距離を稼いでから、はるか遠くから飛び出すもので
銀ちゃんみたいな若造の相手では無かったようだ。
ヒネキジをかなり追跡していったようで、銀ちゃんの気配が無い。
心配になって来て、口笛を吹いて呼び戻しにはいった。
しばらくして、ここから出て来るだろうと思っていた方向とは違う方向から
銀ちゃんがハアハア言いながら出てきた。
この瞬間が犬バカ冥利に尽きるというもんだ。
「ん〜完璧、カンペキ」と、呼び戻しに更に自信を持った。
5羽目の出会いキジは、フィールドレスポンスよろしく左右に振れていた銀ちゃん
急に忙しく尻尾振って地鼻を使い始めた。
認定に入ったのだ。
スーっと右に切れて進んだ時、3番射台からプール方向へクレーが飛んだ。
じゃなく、クワックワッと叫びながらキジ君がフラッシュして平行飛行に入った。
人犬一体となった会心の一撃がキジ君に決まった、お見事!


フラッシュ!!

というわけでせっかく手に入れた8mmビデオカメラ。
アレハアレデ良いもんだが、いつも撮影スタンバイにしていて
ここゾという時に、撮影スイッチを親指で押して画像をおさめるわけだが
ちょっとばかしネエ、なんだな。
その点、全手動カメラを構えてシャッターを人差し指で押すっていう方が
より射撃に近いような気がした。
それにズームがリピーターのような気がしないでもない。
さっそく行き付けのラボに、スマメじゃなく久しぶりにフィルムを持っていったが
白黒の現像はもうやってないとの返事で、外注扱いで3日待ち。
ぁ〜アナログ白黒の悲しい事、フウゼンノトモシビ。


そんなこんなで、銀ちゃんにぞっこんのオラ。
暇を見つけては銃禁のエリアに行って散々キジを追い掛け回し
そのフィールドワークに磨きの掛かった銀ちゃん。
もうバッチシと思っているのは飼い主だけか、、、。
もちろんポイントはゼンゼン出来ないものの、フィールドでの
キジの臭いを取る時の高鼻のポーズも様になって来たし。
キジの臭線を捕った時のレベルヘッド&レベルテールでの追跡
(この時、忍者みたいな走りと姿勢で、とってもカッコ良いネェ)
そしてキジとの距離を縮めた時、地鼻に転換し盛んにテールを振る
認定スメルトチェイスも、ほぼ完璧にモノになったと
なんちゃってフィールドトライアラーのオラに分かるようになった。
そしてカメラを構えるオラとしても、その銀ちゃんのスタイルを見て
「キジが出るな」と確信できるようになり、数少ない
シャッターチャンスを逃さずに捉えることができるようになったのだ。
そうなると次のターゲットは、あれにキマリ、だな。
そうヤマドリだぁ〜ネ。

今猟期、師匠の案内でバロン兄貴を連れてヤマドリ狙いに行った
山々の谷を、銀ちゃんと思い出しながら回って見る事にした。
最初はバロン師匠とオラが枝沢の谷からヤマドリを追い出して
大先輩が見事に仕留め、初めてヤマドリ猟ってのを体験した
鮮烈な記憶がオラの薄い脳味噌に刻まれてある沢に行って見る事にした。
が、行って見たればその沢は、木の切り出し道と化しており
無残にも沢は瓦礫で潰され、その脇を情けなく沢水が流れていてガックシ。
その隋道の入り口にいたキコリのオヤジが「危ないから入らないでくれ」
みたいな事を言われたので、トットとこの沢を後にしてやった。

次は鉄砲一年生の時、「ヤマドリを見た事の無いkikiさんに
ヤマドリを見せてあげる」と師匠に連れてかれた沢に向かった。
あの時は入り口すぐそばでヤマドリが出たんだが、チョッと角度的にも
距離的にも悪くヤマドリのケッツを見ただけだったナ。
でも、この沢はイヌワシが生息しているとの事で、今年から保護区に
設定されちゃったから、ヤマドリは温存されているハズだと
オラは踏んで、捕らぬ狸のナントカよろしく向かう事にした。
ヤマドリの気配が無いままに、その沢を銀ちゃんとズンズン上がって行った。
そろそろオラは疲れても出て来た事だし、熊除けの唐辛子スプレーと
熊と対峙してしまった時の鉈も忘れてきたので、深入りはせずに戻る事にした。
今日は8mmビデオカメラを持って来たのだが、それもバッグに詰めた。
オラの車の赤い屋根が見え始めた当たり、急に銀ちゃんの動きが慌ただしくなった。
ヤマドリの匂いを嗅ぎ捕ったのだ。
銀ちゃんは臭腺をたよりに、沢筋左側の斜面に突っ込んで行った。
それを見て取ったオラは慌ててバッグからビデオカメラを取り出そうと
モタモタしている間に、銀ちゃんは尻尾を盛んに振って
ヤマドリ認定の動きになった。
「ヤッベェー」と思った瞬間、ヤマドリがネービーのコブラみたいに
右側斜面に舞い上がり沢渡りをしてしまった。
何たる不覚、ガックシ。
さっさっと左側斜面から降りてきた銀ちゃんが「オヤジうまく撮れたか?」
てな顔をしてオラを見上げたが「銀ちゃんナイスフラッシュ!」とか
言って話題をそらした。
「これがショットガンだったら、誤魔化しもきかねえ〜ナ」と
思わず頭を掻いてしまった。

次の沢は山窩衆の先輩5人とバロン師匠とで行った沢。
下っ端のオラが隊員達の後ろをノコノコと後ろを歩いていたら
大隊員が「キクチくん、ヤマドリが出てくる場所だから前を歩け」と指示されて
大隊員を追い越し、弾を銃に込めようとした途端にヤマドリ2羽が
突然沢下りして来て、オラの目の前を通り過ぎて行った所を
大隊員が見事にリード射撃で撃ち落した。
オラはただただボーゼンと、もう一羽のヤマドリが飛がび去るを見送った
そんな痛恨の場所にリベンジを兼ねて行く事にした。
その沢を上り詰めたが、ゼンゼン銀ちゃんの反応が無くモノケのカラ。
オラは脱力し倒木で道がふさがっている所でユーターンした。
またしても帰り際、銀ちゃんが匂いに反応し臭腺にのった。
先ほどの教訓もあったので、カメラを素早く持ち構え、銀ちゃんの後を
レンズで追ったが、林の笹薮に突っ込んで行った銀ちゃんを見失って
ガサガサと笹藪を漕ぐ音もしなくなったしまった。
カメラのファインダー時計を見たら10時53分と出ていた。
待てと暮らせど、銀ちゃんの気配は無い。
不安が胸中によぎった。
今日に限って首輪にドッグタグを付けてこなかったトカ、、、、、
最悪の場合、飼い主は服を脱いで別れた場所に置けば
次の日には、そこに飼い犬は居ると言われているトカ、、、、、、
誰かに持ってかれてしまってチャンチャンとか、、、、、
こうなりゃ銀ちゃんが戻って来るまで何時までも持久戦だトカ、、、、
嫌な事ばかりが頭の中をよぎる。
かなり待ちくたびれた頃、ガサガサと笹薮の向こうから
へへっとした顔の銀ちゃんがあらわれた。
全身からドット力が抜けた。
「銀!ドコ行ってたんだ」とカメラの時計を見たら11時2分。
な〜んだ、たったの9分しか経ってなかったのか。
山の10分は里の1時間に相当するな。
オラはこれで疲れ果てたので、今日はこれまでにして山を下りた。
この事を高さんに話したら「戻ってこないって言うのは
1時間2時間の事を言うんだ」と、失笑されてしまった。

次の日は別の山窩衆のメンバーと行った山を攻めに行く事にした。
車から降ろした銀ちゃんの脱糞が終わり少し歩いた所で
臭腺にのった銀ちゃんが右側先方の斜面笹薮に突っ込んでいった。
今度はビデオカメラを素早く構えスタンバイOK!
綺麗に右側前方よりヤマドリの沢下り。
その一部始終をビデオカメラに捕らえた。
これがショットガンだったらダンダン!ビューッ バサッだなと
オラは内心ほくそえんだ。
斜面から降りてきた銀ちゃん「撮れた?」てな顔をした。
「バッチリ、銀ちゃんナイスフラッシュ!」と今度は胸を
ヤマドリのホロ打ちみたいにエヘンと張った。
それから銀ちゃんは2度ほど臭腺にのったが、認定までは行かなかった。
これで銀ちゃん、キジとヤマドリ猟に今すぐにでも使える
犬に仕上がったナとオラは大満足した2日間だった。
そんな銀坊、片足ションベンもまだ出来ない、すわりションベンの齢6ヶ月。
こうしてみると鳥猟犬として作出され同定された犬種っていうやつは
オヤジがなんだかんだと指示したり訓練しなくても
勝手に狩るんだなとツクヅク感心した。
恐るべし血というかDNA。
師匠が言っていたが「それように作出された犬に対してオヤジは、ハイそうですかと
ただ付いて行くだけで良い、奴らは頭が良いから下手に指示を出すと
犬に嫌われるゾ」と言っていた意味が、今ようやく分かったような気がした。

そんな銀ちゃんとのオフシーズンのあいだ、訓練と野山の遊びの中で
生まれて持った血が上手い具合に出て来たようだった。
まだポイントは出来ないのだが、キジの追い出し方も大分さまになってきた。
だからキジを追い出すたびに、「エライゾ、銀」とか言って誉めちぎっていたら
猟が解禁になる頃には誉めてもらいが為か分からんが
オラの方にキジを追い出してくれるようになって来た。
いわゆるラウンドって言われる猟芸だな。







ど〜よ

今年の狩猟解禁日は、師匠がどうしても会社の休みの都合が取れなかったので
銀ちゃんの里親、高さんにキジ猟をご一緒させていただき
キジ猟での犬の使い方などを学びながら初猟を一緒にして戴く事になった。
高さんトコのワンは、オトコ犬のベルとオナゴ犬のキャリーと娘犬のビスだ。
ビスちゃんは銀ちゃんとは、腹違いの兄弟だ。
早朝、朝も明けない真っ暗な中を高さんの家がある岩手山の麓へと急いだ。
今日は高さんの猟友スズキさんと3人でのキジ猟だ。
猟といっても高さんの家自体が可猟区のなかにある、うらやましい環境である。
車で5分も走れば、いたるところキジの付き場である。
さっそく犬たちを放しキジ猟の始まりだ。
5分もたたないうちに銀ちゃが相変わらずポイントもせずに
笹薮に突っ掛けて行き、マークハウスからクレーが飛ぶようにキジをだした。
上手く照星照門にのせたキジをリード気味に流し撃つことが出来た。
(今回っていうか、カモの遠射以外ほとんどの場合20インチの
スラグ銃身を使っているので、リブに乗せるっていう感覚は無く
照星照門にのせるっていう感じなのだ)
しかし、これって、ほとんど上出来すぎなだな、オラにはと思った。
あっさりと落ちたキジは銀ちゃんが素早く掛けよりくわえたが
持って来なかったので、オラが走って行って
充分キジを噛んだのを見計らってキジを取り上げた。
銀ちゃんがキジを噛むのも初めてだし、オラが散弾銃でキジを落としたのも
初めての初物尽くしの初猟、そんな今日はオラの50歳の誕生日でもあった。

2回目は銀ちゃんも1羽噛んだので余裕が出たのかデントコーン畑の脇の
カヤ林の前でピッタシとポイント。
こんなにピチッとキジにポイントした姿も初めてみた。
カッコええなぁ、しびれるねえと見とれているうちに
カヤ林に突っ込みキジを追い出すが、キジを追い出しながら出てきた銀ちゃんと
低く飛んだキジが交差してかぶさり、引き金に指が乗ってはいるものの
引き金は引けずで、至極ざんねんだが銀ちゃんを撃つよりはマシと諦めた。
他のワンたちも稼いではいる様だったが、あまり猟果は上がってない様子だった。
途中で一緒になった鈴木さんは、そんな銀ちゃんを見て「ええ感じで仕上がってるなぁ
3歳くらいか」と聞いてきた。
「いや、一歳にになったばっかしです」と答えたら「もしかして、キジは初猟か?すげなぁ」と
感心しきりであった。
ちょっとっていうか、かなり鼻の穴が広がったオラではあったな。

3回目のキジ出しは、牧草地にある笹薮の島だった。
銀ちゃんが右回りに笹島のヘリをラウンドして向こう側に回りこみ
絶妙な角度でオラの真正面にキジを追い出してくれた。
3発連射を掛けたがキジはピクリとも動かずに、プール方向へ滑空して
はるか向こうの林に消えていった。
ガサガサと出てきた銀ちゃんは「ん。」という顔をしてオラの事を見上げた。
「ごめんゴメン、あんまり条件が良すぎたもんで」と、ツイ謝っちまったオラではあった。
そんな一部始終を見ていた高さんは「何にも言うことは無いなあ
これから後は一人で猟をしなさい」と誉めてくださった。
こうやって今年の初猟は無事に終わったわけだが、オフシーズンの訓練と
銃禁でのキジ当てがてらの散歩の成果が十二分に発揮されて
本当に嬉しい思いでイッパイの一日であった。

ん〜、これで当分のあいだ空気銃は触ら無いだろうなあ。






狩猟解禁日はオラと銀ちゃんにしてはあまりにも出来すぎのスタートで
余りあるものがあった。


一応、道外れてるから。


2日目は師匠のガイドで猟の先輩方と5名プラス、バロン師匠とで近所の里山を回った。
隠れ沢では銀ちゃんが見事にヤマドリを出したが
いかんせん、高度が高すぎで皆さんで連射を掛けたが
かすりもしなかった。で終わった。
贔屓目で見たのを差し引いても、バロン師匠を超えた動きをした銀ちゃんに満足満足じこまんぞく。

3日目は家庭の事情で本当ならば、山に行っている場合じゃない師匠なのだが
律儀なお方なので、午前の数時間案内してもらった。
山深くに分け入ったが、銀ちゃんの得意な高鼻での残臭ひろいにも引っ掛からなかった。
師匠は言った。
「キジ猟での銀ちゃんの動きを見てみたいな」という事で、里に下りて田畑を探る事になった。
そこは師匠のうちから車で5分も掛らない、国道脇川向うの田畑だ。
川向こうに渡るのに、稲の収穫後乾燥させるためのハサガケの細い丸太で貧相に組んである
ものすげぇ〜オッカナイ橋を渡らなくちゃなんないので、オラは正直な話ビビッた。
無事に向こう岸に着いて、キジの探索の始まりである。
師匠の指示で左の小高い土手沿いを流す事になった。
モチロン銀ちゃんはやる気満々。
笹薮の細い島を通り過ぎた銀ちゃん。
高鼻を使いながら、戻ってきた。
オラを通り過ぎた辺り、いきなり姿勢を低くして尾っぽをしの字に伸ばした。
師匠が「ポイント」と言った。
狩猟解禁の初日、一回はポイントした姿を始めて見たわけだが
今回のポイントは、あの時の弱々しいポイントじゃなくガッチリと見事にポイントした。
銀ちゃんの体からはオーラさえも漂う迫力満点のポイント。
思わずオラは見とれてしまった。
その尻尾は微妙に痙攣してるかのような、緊張の振動波が伝わってくるものだった。
その時間にすれば1分も無いだろう。
ガサッと突っ込み、5メートルのアメリカントラップって感じでオスキジが奇麗にフラッシュした。
師匠はガイド役だったので鉄砲は持っていない。
オラはといえば銃を持ってるのだが、銀ちゃんのポイントに酔いしれちまって
銃のリブにキジを乗せることさえ出来なかった。
まったくもって不肖の弟子と師匠は思った事だろう。
まっ、そーだからしょうがない。
フラッシュしたキジが山の麓の笹薮に着陸したのを見届けてから
銀ちゃんは猛ダッシュした。
師匠が「お前も銀ちゃんに付いて行け」と言った。
オラもダッシュして銀ちゃんの捜索している笹藪脇で
今度こそ撃ってやると待機したが、銀ちゃんは遥か向こうに駆けていき
キジをまたもや追い出したが、もはや遠すぎ。


遠すぎて、ボーぜんと見送り。

ここでの猟が終わって師匠は言った。
「ちゃんと飛んだキジを見て、着陸した地点に一直線だったな」と続いて
「あんな俺でも怖い橋を渡る犬はそうざらには居ない、度胸が座っている」そして
「このまま行けばトンデモナイ犬になる」と誉めていただいた。
オラはモチロン鼻高々だったが、オラの銃の腕はねえ?と反省しきりである?

3日目は共猟していただける人がいなかったので、銀ちゃんと二人っきりの猟である。
昨年バロン師匠を連れて案内してもらった寒村の奥山へと分け入った。
一本目の沢にはくっきりと、スパイクブーツの足跡が点々と付いてはいたが
銀ちゃんの捜索鼻に賭けて構わずスタート。
やはりヤマドリは出てこなかった。
銀ちゃんの反応も、とんと無く飽きてきた頃、銀ちゃんが急に慌ただしくなった。
銃を構えて見晴らしの良い所で待機した途端それは出た。
が、メスヤマドリだった。
それが山から山へと谷渡りをして行ったのを見届けてから
この沢に見切りを付けて下りる事にした。

次に行った沢は先行者の足跡は無く期待が持てそうな雰囲気であった。
案の定、5分も歩かないうちに、銀ちゃんがオラの方向にデカイ山鳥を出した。
あわてて据銃するも、頬付けもままならぬままタンッタンッタンッと3連射。
モチロン落ちるわけが無い。
銀ちゃんはと言えば、左山すそに消えていったヤマドリを追いかけてはいったが
ヤレヤレと言う顔をして戻ってきた。
「ごめんごめん銀ちゃん」と謝った。
それにしてもデカカッタナぁ。
色合いも燃えるようなレンガ色で、まさしく「フェニックス」神々しくもあった。
2匹目はそれから間もなく右斜面から追い出してくれた。
それも3連射掛けたがスーッと右山すそに切れて見えなくなった。
こんな感じで計5羽、その弾の数15発みんな大外れ。
それでも、不満を言うわけじゃなくモクモクと一生懸命働く銀ちゃん。
「不甲斐ないオヤジでご免な」と言いながら、カモシカを見た所で引返した。

帰りの車中で思ったが、射場で師匠に見てもらったスキート。
「アンタは目でクレーを追っている」「頬付けが甘い」「空気銃じゃないんだから
クレーを捕らえて撃つのじゃなくクレーを外して撃て」と口すっぱく言われていた事を
思い出し反芻した。
でも、いんだもん。
半矢にした訳じゃないから、5羽ちゃんとヤマドリは残ってるし。
それに銀ちゃん、ヤマドリでも、ちゃんと猟をコナシタし。


先日のキジ、躊躇しての不発とヤマドリ5羽連続ハズシの後遺症が残って
散弾銃での猟はまったくもって自信を無くしてしまった狩猟解禁6日目。
先ほども書いたが、家庭の事情で本来ならば狩猟してる場合じゃない
師匠に、それとなく「散弾銃での猟場を案内してもらえないかなぁ」という
まったくもって自分勝手なメールを出したら「午前中ならば」という快諾をもらった。
そんな師匠に連れて行ってもらったランバは、盛岡市内の外れでもないビックシ近場だ。


向こうに見えるのが雫石スキー場、その下に見えるのが盛岡市、そんな近場だっ。

キジの不発も、ヤマドリの連荘ハズシも知っている師匠は
不肖な弟子の為に、超近場ゆえに盲点になっている隠れ沢に連れて行ってくれた。
その前に肩ならしにと、キジの付き場で霜を踏みながら探ってみたが
銀ちゃんのしっかりとした認定反応は無かった。
ここはそそ草と見切りをつけ次へと急いだ。

いよいよ、ヤマちゃんの付き場である第一の隠れ沢の入り口に到着した。
入り口の沢で銀ちゃんが弱いヤマドリ認定の動き。
オラはそれを見て沢の入り口で待機セット完了。
そしたら師匠は「あんたは右側の雑木林の陰で待機」と言った。
何でかなぁ?と思いながら待機してると銀ちゃんがハアハア言いながら
雑木林から出てきた。
オラは感心した。
師匠のヤマドリの見切り方の完璧さに。

しばらく行くと沢が二手に分かれていた。左側の沢を登って行くと
銀ちゃんが忙しなくなってきて、すわッ!ヤマドリ認定かと緊張が走った。
そして銀ちゃんも沢の上流へと走った。
銃を構えて待機してると上流で銀ちゃんがワンワンと吠えながら
何かを追って沢を下ってくるように、その吠え声がだんだん近くなってきた。
左山すその陰からドドドって出てきたものは蒼、カモシカであった。
それを必死の形相で追いかける銀ちゃん。
師匠は叫んだ「銀を呼び戻せ、笛ッ笛っ!」
オラは「来い来い」って叫ぶのを止めて、アクメのホイッスルを思いっきり吹きまくった。
その呼び戻しの笛にのった銀ちゃんは渋々オラの所へ駆け寄った。
ご褒美のチーズをあげて、御用でリード付けた。

このご褒美のチーズだが、これも師匠からの直伝の飼いならし方法で
「人間でもただ誉めるよりは、何か物をやったり、お金を上げたりするほうが
嬉しいのとおんなじで、犬にはチーズをやりながら誉めると躾が入りやすい」と教わったからだ。
そんな師匠は今までに狩猟犬を三十頭くらい飼い、フィールドトライアルまでやった人だ。
そんなだから今までの経験からの失敗談や、成功例を包み隠さず話し教えてくれる。
そんな猟や猟犬の話はオラの知らない事ばかりで、とっても勉強になる。
この蒼の件が落着してから、一言アドバイスしてくれた。
「追い泣きするような犬は猟欲が強く豪胆な犬なので、このまま上手く育てば
伝説の犬になるぞ、だからあんたは犬なりに付いて行くだけでいいからな」と。
そして、この沢を後にした。

いよいよ本命の第二の沢らしい。
車を置いてリヤドアーを開け、銀ちゃんを出した。
銀ちゃんは十歩も歩かないうちに忙しなく尾を振りはじめた.
オラは慌てないで深呼吸しながら、確実に薬莢を二個込めて
(レミの870は中途半端にカートリッジを押し込むと、よく薬莢を
噛むので、キチッと親指で押し込めなければならないのだ)
先台をガッチャっとスライドさせ薬室にカートリッジを装填完了した。
そして師匠をさておき、先頭にたった。
それは、何時もそ〜なのだが「飼い主が先頭を切らなければ、犬は誰の指示を受けるのか
迷うからなのだ」と師匠に言われていたからである。

銀ちゃんはと言えば、沢の入り口からはもう姿が消え
奥の方へとスピードを上げて、グングン進んでいるようだった。
そして間もなく、沢の上流から明るい茶色の物体が猛スピードで低く飛んできた。

先日、西木村のマタギ佐藤さんがオラの店に来たとき
ヤマドリ5羽連続ハズシの件をお話したら
「ヤマドリは、そのものを狙っちゃぁマズ100%当たらない」
「ヤマドリは空を撃たなきゃ当たらないもんだ」と、アドバイスをもらった。
そして「ヤマドリ猟の場合は、こちらに向かって飛んで来るので
弾なんかはナナハンの32g、トラップ弾で充分というより煙幕のように
弾が細かく霧散して壁を作るので、重装弾を使うよりはよっぽど良い結果が出るし
ともかく安く上がる」と、さすが山のプロ、マタギならではのアドバイスだった。

で、その猛スピードの茶色の物体には、イイ具合に二発連射できた。
2発目の弾が効いたようで、飛行姿勢が微かにグラッとして
オラの頭上を緩やかな放物線を描いて、後方待機の師匠に向かって落ちて行った。
ヤマドリは師匠の左肩を狙ってタリバンの自爆飛行機のように突っ込んで行ったが
師匠は余裕で瞬時にかわした。
もんどりうって地面に激突したヤマドリは羽をばたつかせ最後の抵抗を試みていた。
そこへ、沢の上流からヤマドリに負けず猛スピードで銀ちゃんが降りて来た。
そして、のた打ち回っているヤマドリにトドメを刺すように噛んだ。
確か初めての獲物は充分に噛ませたほうが良いと、聞いていたので放っておいたら
師匠が「ヤマドリをスグにとり上げろ」と言った。
銀ちゃんはチョッと抵抗したが「待て」の合図で口からヤマドリを離した。
口の周りに付いた山鳥の毛に銀ちゃんはゲホッとむせていた。
師匠に尋ねてみた。
「初めての獲物は犬に良く噛ませたほうが良いとヨク聞きますけど?」
師匠は答えた「それは猟欲が無い犬か、弱い犬の話でアンタの犬は先ほどの
蒼の件で証明してるように、完璧に猟欲は備わっているので必要ない」
「むしろ強すぎる傾向があるので、持ち逃げの癖が付く前に取り上げたほうが良い」
と解説してくれた。
もちろんこの場合もバーターのご褒美でチーズをあげた。
が、銀ちゃんは納得してはいないようだった。


悔しそうな銀ちゃん

オラはと言えば3年越しの憧れのヤマドリだったので画像を見れば分かるように
破顔で鼻の穴が開きっぱなしになっている。
PCPでキジを初めて獲ったときは、畏敬の念が強く素直には喜べない自分が居たが
今回の散弾銃でのヤマドリは、念願中の念願だった。
それにオラの中では幻のヤマドリだったし、「喰うために獲る」と言う信念が
自分の中で確固たるものになっていた。
それにも増して、5連続ハズシの後だったので、天にも登るような嬉しさではあったな。

次は朝に獲れる確立が多いと教わったヤマドリ猟に見切りを付けて
昼に獲れる確率が多いキジ猟にと、寒村に向かった。
一通り田畑の山沿いを流し師匠は言った。
「ここからはキジが潜んでいる田畑の川沿いを流して行く」と。
しばらく行くと師匠は「ここのブッシュは必ずキジが潜んでるので犬を掛けろ
俺は喉が渇いたので、水筒の水を飲みがてら車を取りに行って来るから」と。
それじゃあ行くかと思ったら、銀ちゃんはもうそのブッシュへと左回りに
ラウンドしながら突っ込んで行った。
オラは銃を構えて、先台をスライドしカートリッジを薬室へガッチャと送り込んだ。
間を一息入れてからキジが先ほどのヤマドリのようにオラに向かって飛んできた。
が、左側に反れはじめたキジの先方向300メートルには人家がかすって見てとれた。
その人家を避けるような気が働いたのか、一発目の弾はキジから大きく外れた。
2発目を撃とうとした瞬間、完全に人家が視界に入ったので
トリガーに載っていた指を凍らせた。
銀ちゃんはアレッとしたような顔しながらやって来たので
一応説明したが分かったのやら、ど〜やら。
先ほどのヤマドリの見切りもそ〜なんだが、今回のキジの見切りも見事な師匠。
鹿猟の時も師匠が山に見切りを付けるわけだが、今回も改めてその眼力には
「凄い!」っとしか言いようが無い。
そんな凄い師匠を見つけ見切りを付けたオラも凄いでしょう???

こうして初めてのヤマドリを手にしたわけだが、それはやっぱり師匠の御狩り場という
ハンティングフィールドと銀ちゃんの活躍に負うところが大だった。
そんな銀ちゃん、帰り間際オラが立ちションベンした跡に
片足を上げてションベンを更に掛けやがった。
ナンカ気分が悪いやっちゃなぁ〜。

今、分かった事。
一に場所、二に犬、三に脚、四に腕 かにゃ。





「俺はPCPを始めるか、良い犬を更に飼うかで迷った末にPCPとったのだっ」
「だから散弾銃猟のアンタとは別行動」と言い続けていた師匠をなんとか口説き落とし
師匠の散弾銃での乱場をムリクリ案内して頂いたのだった。
そして、犬を使った狩りの仕方を手取り足取り伝授して頂いた。

だが後半は師匠の家に不幸があり、猟をしている場合じゃないのであったが
そこを無理言って、真に迷惑千番を承知の上、ご一緒していただいた。
師匠は喪中なので銃を持たずに手ぶらで御狩り場の案をしてくれた。

そんな師匠は乱場を見渡せる所にいつも立って、あらゆる指示を出してくれ
監督兼コーチ、司令塔みたいなことをしてもらった。。
その結果、銀ちゃんの持ち味を考えて師匠はこう言った。
「ポインターなら銀ちゃんみたいなア・オ・ア系、セターならナポレオン系などは
ラウンド(行って帰って来るような単純な動きじゃなく、エリア全体をぐる〜っと回って
極端な話、後ろから帰って来るような匂いを拾う働き方)を得意とする系統なので
あまりフィールドトライアルには向かないが、実猟では文句無しに良い働きをする。
だから、キジを狩る場合は銀ちゃんの仕事を邪魔しないように
銀ちゃんがイキナリ走り始めたポイントで待つようにして
ただひたすらキジがこちらに飛び立つのを待つのが良い狩り方だ。
100%とは言わないが、たいていの場合はキジをオヤジのほうに追い出してくれるはずだ。
キジが飛び立たない場合は、ラウンドして必ずオヤジの元に返ってくる。
コレガ下手に犬に付いて行くと、ほとんどの場合キジは向こうへと飛び立ってしまう。
あとは、エリアを見渡せるような所があったなら、そこで銀ちゃんを観察して
ガッチリとポイントしたら速攻で近づいて行くやり方もいいな。」
「ヤマドリの場合は、なるべく銀ちゃんに付いて行ける所まで付いて行き
沢下りする前にヤマドリをリブに捉えるか、スピードに乗る前に撃ち落すのだ。
あと銀ちゃんに付いて行けなくなったら、ヤマドリが沢下りするルートを押さえてるだけでいいのだ。
なんったってアンタの犬は若くして、とんでもない稼ぐバケモノなので何も言う事なし。
アンタが銀ちゃんの能力をどう引き出すかは、あらゆる場面で考えながら行動しなさい。」と
まことにもって分かりやすいアドバイスをもらった。
キジは何とかなりそうだったので、ヤマドリの沢下りルートの押さえ方を
あらゆるシュチエーションで、師匠からシツコク聞き出した。

そして、師匠はこうも付け加えた。
「でもなぁ、こーゆーイイ犬に限って、ちょっとした怪我なんかで、あっさりと亡くすもんだ」
(をいをい。そんな悲しくなるような事言わんといて〜な。ホンマに。。)
「だから、狩りから帰ったら銀ちゃんをひっくり返してあらゆる所を点検し
大事に至る前に小さな傷でもしっかりとケアしろ。」っていう
非常に大切なアドバイスも戴いた。
そんな銀ちゃんは、猟が終わってみるとほとんど血が出てない日はない。
特に振幅の激しい尻尾の先はイツモ血に染まって真っ赤っかだ。
そういう切り傷のところには、前に飼っていたフラットコーテッドレトリバーの
しょうちゃんの後ろ足切断手術の時、獣医さんが消毒で大量に使っていた
ウガイ薬で有名なイソジンガーグルをたっぷりと振りかけてやる事にした。
これだと犬が舐めても体に害は少ないらしい。
いつだったか藪から悲鳴に似たキャインという声がした時はぞっとした。
スグに呼び戻したら、耳から血がドクドクと吹き出て前半身チダルマ。
耳に止血のビスマスの黄色い粉をたっぷりと付けて指で押さえ込み血を止めた。
だから、この黄色い粉とイソジンガーグルとガムテープは何時もポケットの中に忍ばせている。
ガムテープは包帯の代わりにもなるし、耳を大きく切った場合、耳たぶをくるくると丸めて
ガムテープで止めると、猟を続行できるのだと、ナンカに書いてあったから持ち歩いてはいるが
もしそんな大怪我したら、俺なら猟を即中止して獣医のとこへ行くんだがね。

迷惑千万な猟に長々と付き合っていただき、師匠が「この辺でいいだろう」みたいな免許皆伝の
引導を渡してくれたので、いよいよ一人と一匹のルーキーチームで狩りをしていく事になった。
そういえば、事ある毎に「アンタは歩くの速すぎるッ、捜索してる犬を追い越して行くのは
言語道断もってのほかだ。」「ゆっくりと山道を踏み締めるように歩き、先に行った犬がオヤジを
確認しに戻って来るくらいじゃなきゃ、良い犬に育たないぞっ。」と師匠に言われ続けていたのだった。
そんな師匠のアドバイスを肝に銘じ、銀ちゃんの動きが慌ただしくなっても
ぐっとこらえるように努めたら、一人で歩き始めた初日から
ウマイ具合にキジがオラの方に向かって飛んでくるのじゃあございませんか。
って、飛んで来るんじゃなく銀ちゃんが追い出してくれるんだった。
その初日から3日連続で猟果あった。
恐るべし銀ちゃんってゆーか、師匠の教え。
4日目はヤマドリの沢下りがMAXスピードに乗って落とせなかったが
なんとなく犬を使った散弾銃猟が分かったような気になった。エッヘン。。

5日目は畑の中にある堤に居たカルガモにポイントした銀ちゃん。
俺は素早く駆け寄ってカルガモ2羽に連射を掛けたが落ちたのは一羽。
銀ちゃんは恐る恐る堤に浸かり泳ぎだし、鴨をくわえて見事にオラの所に持ってきた。
そして丸々と太ったカルガモを足元に落とした。
ヤマドリの場合、銀ちゃんは目の色が変わって口から離すのが嫌だッてのが分かるくらい
殺気だっているんだが、どうやら銀ちゃん鴨にはあまり執着が無いようだな。

猟をこなしていくとキジとかヤマドリの行動を読む事より、銀ちゃんの挙動を読んで
狩をしていく方が楽な事が分かってきて猟にチームとしての一体感が出てきた。
でもな、俺の銃の腕がド〜モともなわなくて、銀ちゃんともども
歯がゆい場面が多くなって来たのだった。
そんな俺の打率は一割五分くらいなもんだ。
ホントにあたらねぇなぁぁぁ。
師匠いわく「あんたはPCPの癖が取れてない」そ〜だ。
って、今年のクレー射撃に行ったのは、たったの一回コッキリ。
PCPの感覚で散弾銃での射撃をみくびっていたツケが、ここに来て回ってきたのだった。
来年からはミッチリと射場に通うとするか。

そんな7日目。
今日最後のシメの乱場、川向こうの水田に向かった。
三段上の田んぼで、銀ちゃんがキジをビタッビタッビタとフラッシュさせた。
いったんキジはこちら側に飛んできそうになったが、左カーブを切って山裾に消えていった。
ヤレヤレ今日はこれで終わりかとガッカリしたが、銀ちゃんはやる気満満で山裾をグルッと
ラウンドする気で走り抜けていった。
俺は気が抜けてしまったし、今日の疲れもドット出て来たので高見の見物で銀ちゃんの
疾走する姿を見て悦にいっていたが、向こう山裾の端の所で杉林の中に消えていった。
5分もすれば戻ってくるだろうと思っていたら、ゼンゼン戻ってくる気配がない。
30分待った。
怒りが込み上げてきた。
銀の奴めっ!帰ってきてみろっ、たっぷりとヤキ入れてやっからなッ。
それでも帰ってこないから、マーキングの小便をして車に戻った。
1時間経った。
怒りが引っ込んで、心配になって来た。
また元のところに戻って、ションベンして待ってみた。
嫌な思いが頭の中をよぎる。
「藤ツルにヒッカラマって動けないんじゃないかとか」「崖から落ちてしまったんじゃなかとか」
「そこらへんの道路に飛び出して轢かれてしまたんじゃないとか、、、、、。」
車に戻って1時間30分経った。
また元の所に戻って、ションベンして待ってみた。来ない。。
もうスグで2時間経つ頃、助手席のドアーの隙間から白い影が見えた。
「銀だっ!」と車から飛び降りた。
そんな俺の形相に恐れをなしたか銀ちゃんはヤベェ〜とばかりに後ずさりした。
でも、もはや怒る気にはなれない。

しかし無事に戻って来てくれただけで嬉しかったはずなのに、また怒りがフツフツと込み上げてきた。
そこはグッと我慢して「ヨシヨシ、良く帰って来たなエライエライ」と座って
目線を同じにして誉めたら、ようやく銀ちゃんはヘラヘラと笑いながら寄って来た。
銀ちゃんの里親、高さんが「うちの血統は1時間2時間は戻ってこないのが普通だから
車に戻って寝ていればいい」と言っていたが、待つ身はジリジリなのよ。





朝から降っている雪も何のその、キジ猟も悲しいかな最終日の頃。
目をつぶってても歩ける勝手知ったる河川敷きに、あまり期待もせずに出掛けた。
車から降ろした銀ちゃんは、気合一発、糞一発、やる気満々。


ポットン寸前

雪を踏み分けながら小一時間歩いてみてもキジ君はさっぱりで
ハトすら見かけない景気の悪い日だった。
折り返し地点、銃禁近くに有る小さな堰を飛び越したところで、銀ちゃんが慌ただしく動き始めた。
行きは鳥ッコ気配がまったく無かったので集中力が萎えてた俺は
「マサカネェ〜」と思いながら挙銃もせずに銀ちゃんを見守っていたら
こんもりとした枯れ藪の小山から、大きなキジの雄をトビットビトビトビと追い出した。
慌てて挙銃して一発撃つのが、ようやっとのギリギリタイミングだった。
いつも師匠に言われていた事なんだが「犬を信用しろ」っていうのを
よりによって猟の最終日にすっかりと忘れちまっていたのだった。

どうにか撃ちこんだ弾は、かすりもせずに(多分)キジはオッパを広げ高く飛んだ。
そんなキジ君、最初の100mは必死で羽ばたいて猛ダッシュしたが
後半150メートルは余裕をかまし、雪で白く覆われた田の上をグライダーのように滑空し
250m先の杉林の際にコトッと着陸した。
そして林の中に首を立てたまま、トコトコと逃げていく様子が見てとれた。
その様子を銀ちゃんもしっかり最後まで見てたようで、キジ君が着陸したと同時に駆け出して行った。
俺はなんとなく、いけるんじゃないかという予感がしたが、ちょいと距離がなぁとも思った。
でもキジ君が着陸した地点が分かっているから、あとはキジ君の臭線を
たどっていけば良い事なので、チョイ楽勝かなとも思った。

いつもならキジ君が飛びだってしまった後は回りの障害物で
どこへ着陸したものか分からないので、俺も犬もお手上げなのだが
今回は着陸した地点をしっかりとオラも銀ちゃんも確認しているから
モシカシタラと変に確信を持ったのだった。
以前、何回かはこのパターンで雉を追い出してくれたからなァとも期待した。
そんな銀ちゃんは自慢の長い足で豹のように一直線に駆けて行き
あっという間にキジ君が着陸した地点にたどり着いた。
そして、地鼻を使いキジ君の臭腺をたどって林の中に消えた。
多分、銀ちゃんに驚いたキジ君は、また必死で飛びだって元のところに戻るか
元の所を飛び越して対岸に行くのじゃないかと、オラはこの後の展開を読んだ。
だからオラは、堰の窪みに隠れるようにしてしゃがみ込み林のほうを凝視した。
しばらく待って見ても何の反応も無かった。
読みが外れたか、、、。
すると、林に飛び込んだ地点から200m左の斜面から銀ちゃんがガガッと駆け下りてきた。
な〜んだ、やっぱり逃げられてしまったのかと思い
オラは立ち上がり堰から這い出て田の端に立った。
こちらに向かってくる銀ちゃんの足取りが、ウサギのようにピョンピョン跳ねているように見えた。
「んん、チョト待てよ、その口元の黒いのは何だ」
と、よ〜く見ると銀ちゃんの口元には、大きなキジ君があった。
「へえっ〜、やるじゃないか銀坊」ここまで成長したかと思ったら
オラは体中に感動の電気がビリビリと走った。
そんな銀ちゃんは、これ見よがしに咥えたキジ君をオラに見せびらかし
笑いながら俺の周りをピョンガピョンガと跳ねまわった。
「ヨクやった、エライ銀ちゃん」と誉めまくり、マテの号令を掛けてキジ君を奪い取った。
銀ちゃんはチョット面白くなさそうにしたので、代わりのご褒美にチーズをあげたがまだ不満そう。
であれば、キジのお尻の回りの毛をむしって、肛門の周りにナイフを入れ
腸を引っ張り出し、特別ご褒美で銀ちゃんにあげようとした時だった。
オラの背後で「見事なもんだ」という声がした。
オラはいきなりだったのでビックリした。
後ろを振り返るとワゴン車から爺さんが顔を出しニコニコしていた。
その方は、ここら辺でたまに行き会う田舎然とした鉄砲ブチだった。
去年まではオラはエアーだったので、あまり行き会いたくない人だったが
今年は最強の相棒と散弾銃だったので、そんな思いはマッタク無かった。
ジジイが「鉄砲は上手とはいえないが、さすがポインターだ。
素晴らしい動きだなぁ」と車の窓越しに言った。
やっぱり誰が見てもオラは鉄砲が下手なのかとガックリした。
まあ、そうなのだから仕方ないが「ハッキリと言ってくれるじゃないか
片足棺おけジジイめッ」と腹の中で言ったが、銀ちゃんを誉めてくれたから許してやる事にした。
そして「そのキジはケッコウ遠くまで飛んで行ったので、散弾の弾がモロに当たらなかたんだな
少しばかり、かすったのかもしれないな」と言った。
俺もそうかも知れないなと思った。
半矢にしてはエラク飛んでいったし、林の中に消える時もスタスタと素早く駆けて行ったし。
オラ的には頑張って飛んだキジ君が体力を消耗してヒイヒイ言ってる所に
(なんたって1.3kgも有って、くちばしが曲がったジジイキジだったからな)
疲れしらずの若い銀ちゃんに追い詰められて御用になったんじゃないかと推測したのだ。
だって、追い詰められて銀ちゃんに咥えられたのかキジ君のオッパは見事に無くなっていたし。
とにかく、どちらの理由でもいいが銀ちゃんの猟芸に、思いっきりしびれたキジ猟だった。
帰り際キジバトも2羽追加し、まことにもって景気のいい日だった。
後からこの話を師匠にしたら「ヤマドリなんかは山スソを半周くらいしてから
落ちるのもいるくらいだから、300や400メートルは、半矢でも平気で飛ぶぞ」と言っていた。

もうっていうか、とうとうっていうか、キジ(ヤマドリも)さん達と遊ぶ日が終わっちまったな。
と言っても、キジさん達は遊んだなんて思っちゃいねぇだろうな。
だって、犬がいきなり現れて「ヤバイ」逃げろで、バンッ!だからな。
ビックリするって言うか、そりゃぁ生きた心地しなかっただろうな。
そんな幾千の弾の下をかいくぐりホントに「ヤレヤレ」と思ったことだろうよ。
そして春も近いし、可愛いあの娘を探しナンパしながら
また平穏な暮らしに無事戻った事でしょう。

エアーライフルを2猟期、延べ日数にして一日あたり3時間×170日やって
出会ったキジ君達は、20羽はいかなかっただろう。
2猟期目で分かったんだが、狩猟解禁から10日間が勝負って感じで
それ以降の出会いは、まったくもって無い、皆無ったらカイム。
トロトロと車を流し、ただただガソリンを撒き散らしてただけって感じだった。
キジはキジでも山に居るキジ、ヤマドリさんに至っては林道を横に掛け抜けた3羽見ただけで
自慢のリューポルド×16のスコープの中に捉えた事は無い。

そして今猟期はオラ溺愛の銀ちゃんを連れてレミントンのM870を担いで
師匠直伝の乱場をローテーションを組んで毎日巡ってみたんだが
キジ君たちとの出会いの数は、撃てない角度から飛び立つキジも勘定に入れたら数知れず。
出たキジ一羽に隠れキジが3羽てな感じが良くあり、ほとんど野山のゴキブリ状態。
犬を使うと、こんなにキジやヤマドリが、隠れて居たんだなぁというのが
オドロキを持った実感であります。

ホント昔の人はヨク言ったもんだなぁ。
一に犬、二に足 三に鉄砲って。
二に足だが、獲物を探しながら犬に付いて歩くと
時間が経つのが早いっていうくらい楽しく歩き回る事になる。
だから、足腰がだいぶ強くなり毎冬恒例の「腰痛」から、おかげさまで開放された。
それくらい楽しい思いをした俺は断言します。
「キジ猟」は究極の犬の散歩だと。
その代わり足の裏にウオノメが3個出来てしまいやした。
それと、タイマイはたいて買ったばかりのブッシュパンツは、2ヶ月で擦り切れてしまいやした。
そうまでして毎日歩いた乱場だが、ぶっちゃけた話
キジ君たちを見かけなかった日は両手くらいしかない。
でも、お恥ずかしい話ながら外したキジ君達は、体の指を全部使っても追いつかない。
なんで当たらないんだろう???

ある人は言う。
20インチのスラッグ銃身じゃな、パターン悪いだろっ。
また、ある人は言う。
20インチの銃身じゃ、銃身が短くて狙いが不安定、少なくても26インチはいるな。
でも師匠は言った。
20インチのスラッグ銃身でも、26インチの銃身でも28インチでも
当たる時は当たるし、外れる時は外れる、銃のせいじゃない。(という事は、、、)
それにアンタの犬はラウンドするから問題なぁ〜い。
そして、鉄砲屋のオヤジは言う。
よ〜く当たる自動銃のイイのあるよぉ、それにしたら?

試しに換え銃身28インチ全絞りを使う、こりゃ重い。
銀ちゃんが追い出してれたキジが俺の右10mくらいの所をブッ飛んで向かって来た。
キジを追い越し様って言うか、振り向き様に撃ったらドスン。
ある人は言う。
28インチのフルチョークじゃあ、10メーターのキジはボロ雑巾だろっ。
また、ある人は言う。
28インチは、長いし重いもんだから手ぶれが無いのでヨク当たる。
そして師匠は言った。
腰の回転が上手くいったな。
またまた鉄砲屋のオヤジは言う。
上下二連の軽い鉄砲があるよぉ、それにしたら?

結局の所、分かっちゃいるがオフに練習しなかったの一言に尽きたキジ猟期間。
猟期へたくそ記録集。
キジ3羽連続はずし4回、5羽連続はずし1回。
ヤマドリ5羽連続はずし2回、7羽連続はずし1回の体たらく。
しかし半矢は2羽のみ。(威張る事じゃないけど、、、)
そんな俺に鉄砲屋のオヤジが吠えた。
「オフシーズン2000発は撃たないと上手くはなんないな。」と。

ところで、肝心のキジ、ヤマドリ何羽獲ったの?って。
そんな無粋な事は聞っきこなしよって事で、ここは軽く流しときます。
なんたって「熊を獲っちゃあイカン」という、蒙昧無知なあちらの方面の人たちに聞こえたら
「ヤマドリもキジも獲っちゃイカン」と、なりますもん。
ただ、解禁日からのお昼ご飯には、美味しい蕎麦を毎日戴きました。(をい、自慢すな)

子供たちやらが言いよった。
「銀ちゃんはいいよなぁ、受験勉強なんか無いし、毎日たっぷりと遊べて。とうちゃんもッ」と。
で、かあちゃんが冷たく言い放った。
「そんな危ない鉄砲で遊んでばかりいないで、しっかり働きなさい」と。
ゴモットモでござんす。
お後がよろしいようで、、、、。
って、まだ猟期は終わっちゃいねぇだろっ。
キジ以外はいいだろ、てか。ふうぅ。。

後日聞いた話だが、例の田んぼの上をグライダーのように滑空して飛んだ半矢キジは
支部の方たちが躍起となって追っていたキジなそうで
猟犬の気配を察知するや否や、素早く笹薮に逃げ込み
猟犬をマキながら一気に遁走し、散弾銃ではどうにもならない距離から飛び立つ
百戦錬磨のヒネキジだったそうで、特にそこの支部長は獲れそうな距離まで
幾度となく詰めておきながら、あと一歩の所で飛び立たれてしまい
いつも猟犬と供に地団太を踏んでいたそうだ。
そのキジをオラが御用とした事を聞いて、ガックリと肩を落とし残念がられたそうだ。







 
1月15日のキジ、ヤマドリ猟が終了となって残るはカモ猟だけとなってしまった。
えっ、ハトやヒヨは?って、喰ってウマイのは分かっちゃいるが
散弾銃で撃つとバラバラになっちまって喰う所が無かったりするからね。
やるんだったらPCPのほうが効率がいいし、肉の損傷が少ないので喰ってもウマイ。
なんと言っても今は、銀ちゃんとショットガンにはまっちまってる最中!
あんまりPCPには気乗りしないですから。

今の季節、鴨のご猟場は畑の中の堤や池などが氷結してしまった現在
唯一狙えるのは北上川や雫石川などの川原だけとなっちまった。 
そんな北上川の川原で銃を撃てる所は、盛岡市内ではハナクソほどしかない極端な狭さだ。
だから近隣の村や町の可猟区に出掛けるのだが、ここもまたご多分に漏れず
どこもかしこも銃禁で、カモが居る所よりも銃を撃てる所を探すほうが難しい状況ではある。
それに可猟区だとしても、大白鳥が居座ってたりして、常識的に撃てない状況もあるし。
以前、北上川の可猟区内に居る白鳥を観察していた園児の近くで
白鳥と一緒にいたカモに発砲して大ヒンシュクを買った
非常識なハンター事件もあったりして、真面目にやってる鉄砲ブチは
彷徨いながら大いに嘆くのである。
もう一つの御猟場、雫石川はといえば盛岡市内とは打って変わって
雪が深く積雪量は市内の10倍こえるすごさだ。
だから、ひと気も無いし民家もまばらで気兼ねなく鉄砲をバンバンぶっ放す事が出来る。
フラストレーションが溜まらなくて、スカッとする猟場だ。
そんなだから、道路から川原の猟場まで行くのにはヒザ上まである雪を
かきわけながらの雪中行軍を強いられる。
ここで登場するのが前文にも書いたスノーシューだ。
川原までこれを履いて行くと、労力は半分以下になるスグレモノだが
川原に付くとマッタク持って無用の長物に成り下がる。
それは川原の岸沿い1メートルくらいは、雪が積もらず楽に歩けるから
スノーシューはお役目ご免となるからで、それを持って歩こうとすると
これがまたケッコウがさばるし、重い。
さりとて背中に担ぐわけにも行かないし、ダイイチ鉄砲を構えるのに邪魔なので×。
例のマタギご用達の長靴、岩礁55と相性が悪いしね。


これでオラもこれでオラもマタギ?

そこで登場するのが、マタギご用達の輪カンジキである。
大きさ的にはスノーシューの半分、重量は1/5以下で非常にコンパクト。
だから、使わない時は背中のゲームポケットに入るから機動性は抜群で
めちゃくちゃ使い勝手がいいスグレモノだ。
現代のスノーシューは西洋のスポーツ的考え方の上に出来たもの
輪カンジキは日本の風土に根ざした生活道具、この差は大きい。
これで、雫石川は俺のもんだぁ。
と思っても、あの雪と獲物の少なさを考えると、今一足が向かないのだナ。
だから、北上川の猟場に飽きた時に行く程度だ。

そんな北上川は、車での行き帰りの銃禁にはカモがたくさん居るのだが
これが可猟区だとまったく姿が見えなくなる。
そりゃそ〜だ、狭い可猟区範囲にハンターが集まりバッキューンバッキューンと
朝から夕方まで脅かす物だから、カモさん達はそんなヤバイ所には寄り付かなくなる。
そんな狭い可猟区の川原を通して歩きながら、時おり飛び立つカモや
川原を行ききするカモなんぞ飛んで来ないかなと、ほとんど期待しないで歩き始め事にした。
やっぱり鴨との出会いはほとんど無かったのだった。 
そこでオラは考えた。
おおかたのハンターは車で流しながらカモを探している。
イワユル「ながし」ってやつだ。
だからオラは銀ちゃんの散歩も兼ねて、車が入り込めないところばかりを
選んで、テクテクと丹念に歩いて鴨を探す事にした。
そんな銀ちゃんはキジ、ヤマドリに関しては目の色変えて大活躍してくれたが
彼はあんまり水の中に入るのが好きじゃないみたいだし
それと以前にカモの腸をやっても見向きもしなかったしな。
そして、カモはと言えば狭い畑の中のツツミや池と違って大河、北上川にいるものだから
鉄砲ブチの隠れ場所は無く、オレンジ色の長い筒を持った変な人間は
特に容易には近づかせてはくれない。
だから1月16日のオラ的に鴨猟初日、ほとんど鴨猟の期待を捨てて銀坊と歩き始めた。
でも、一段とパワーアップしたした菊池君っていうか、スラッグ銃身じゃ
なかなか当たらないのを身を持って感じたので、キジ猟後半は替え銃身の
28インチ、フルチョークにしてからは、ケッコウいい線いったので
遠矢の鴨にはチョト自信を持って臨んだのだ。

そんな北上川と川沿いの小道の間にある笹薮が密集したブッシュに
銀ちゃんが川に向かって、いきなりポイントした。
俺はブッシュにキジが居るんだなぁと思ったが、今は禁猟だしと銃を構えなかった。
ヨシ!と声を掛けたら銀ちゃんは笹薮に突っ込んで行った。
そしたら、ななんなんと!アオクビがいっせいに50ッ羽くらい笹薮向こうの
川岸からいっせいに飛びだった。
ウワッと慌てて据銃しアオクビ目掛けて三連発。
もちろん、アオクビは落ちて来ない。
な〜んだ銀坊、カモにもちゃんとポイントするじゃないか。
2回目の笹越えの川へのポイントでは、しっかりと据銃してから「ヨシ」を掛けた。
カルガモが、これまた50ッ羽くらい飛び立ち三連発。
何とか1羽がクルクルと回りながら落ちてきた。
クルクルと落ちて来ただけあってハンヤで水面でバタついた。
それを見ていた銀ちゃんは興奮したように水の中に入って
もがいてる鴨めがけて泳ぎだした。
カモは白黒のデカイ顔が近づいてくるので、余計バシャバシャと暴れだした。
カモにようやく追いついた銀ちゃんは幾度と無く、くわえようとしたが
そうは簡単に問屋は卸さないカルガモ。
どうにか、疲れ果てた鴨を首尾よく捕らえた銀ちゃんは、目を血走らせながら泳ぎ戻ってきた。
そして俺の周りで「ど〜よ」とばかりに笑いながらピョンピョンと跳んではねて
全身で喜びのオーラを発しまくりだった。
ここんところ川原にばかり行って、山には全然行かなくなったし
キジを追い出しても俺がゼンゼン撃たないものだから、変だな〜と思っていた銀ちゃんは
この一撃で鴨モードにスイッチを切り替えたようだった。
それからは川面に浮かんで流れて行くペットボトルにも、鋭く反応するようになった。




オラの腕はどうかと言えば、師匠からは「何の弾を使っても当たる時は当たるし
外れる時は外れる、だから鴨撃ちの場合も強装弾はいらない。
だから32gの3号で充分だし、強装弾は弾同士が暴れるのでヨクナイ」と言われ続けていたが
まことにもって不肖な弟子は、玉数が多いけりゃ多いほど当たるんじゃないかと言う
短絡的に安易に考え続けていたのだった。
それに強装弾は値段が張るし、狩猟解禁前に鉄砲屋のオヤジが
「弾値上がりするよ」と言っていたしさ。
ちょうど俺が弾を買いに行った時、鉄砲屋に来ていた東京銃砲店のセールスが
「アポロの装弾より絶対にウインチェスターの方が良い」と
激しくうんちくを垂れ流すので、セールスお勧めの
ウインチェスターXXベビーマグナム3号二箱を密かに買ったのだった。
それと、ジマ先生から勧められたアポロのマグナム44もゲットしていたので
去年の在庫分の33g3号のレミントンのシュアーショットも含め
撃ち比べてみてどれにするか決めようと思った。
なんたって、PCPの時も弾が違えばドロップも違ってレチクルが変ってしまうので
安易には弾を使ってられないと思ったからだ。

まずはレミントンのシュアーショット33g。
なかなか落ちないね〜カモくん。
去年の残り全部使ったがハンヤが一匹のみの、お寒い貧果。
お次はアポロ44g3号マグナムを使ってみた。
一発目から鴨が落ちた、二発目でもカモが落ちた。
一振り2羽の大猟果。
こりゃ縁起が良い弾だと思った。
それに44gのわりには思ったより反動が無い。
一箱使い切り上々の猟果が出たので、今度はウインチェスターの38g3号を使ってみた。
なかなか鴨が落ちない。
何故なのだとイイカゲンパターンテストしてみた。
狭いっ!パターンの範囲が狭い。
これじゃ俺の腕では無理かと思った。
でも金色のシェルにカウボーイのプリントがカッコイイ。
と言う事で、もうちょっと弾数が多いXXのマグナム43g3号が
いんじゃないかと思い二箱買って来てみた。
ちょうど秋田のマタギ佐藤さんが、頼んでいた26インチのスキート銃身を
持って来てくれたので、ウインチェスターマグナムの弾について聞いてみた。
「ウインチェスターは火薬が無煙とうたってるが、銃身内の汚れがひどくて
あんまり良い火薬を使ってるとは思えないな」と言った。
俺はそれを聞いてがっかりしたが、でもひょっとしたらと淡い期待を持って使ってみた。
ほんとうだ、撃ったシェルの1/3上部分はコ汚くなってススケて出て来る。

5個も撃った頃、うッ?なんだ弾が出てこない。
撃った弾が薬室に停弾してスライドできない。
それで排莢も出来ないのだ。
しかたないので、ボルトの爪をドライバーで起こしながらボルトを後退させ
銃身に取り残されたカートリッジの縁をドライバーで起こしながら引き出した。
なんじゃいなこれは?と思ったが、まだイッパイ弾があるので
もう少し使って様子を見る事にした。
銀ちゃんが下流からコガモをラウンドして追い出して来てくれた。
バッキュ〜ン、ガツガツッ。
ウォ〜、タカブーの群れが俺の頭の上を低く飛んで行くぅ〜〜〜〜。
またしても停弾だっ、をいっ!。
一箱使う内に停弾が4回、コリャイカン。
固着状態になったので、スライダーグリップをガチャガチャと
乱暴に動かしていたらスライダーが固着してしまった。
仕方が無いからピンを2個抜き、トリガーアッセンブリを取り外した瞬間
薬室の下から長いカギ型の部品がポロッと足元に落ちた。
コリャ、アカン。
その部品を拾って車に戻り、トリガーアッセンブリを外した所から
あ〜でもないこーでもないと、長い部品が収まる所を力ずくで探しながら
ようやく収まる所を見つけ、力ずくで取り付けた。

文句を言いに鉄砲屋のオヤジの所に行ったら、まるでクレームをつけられるが
分かっているかのように、こちらから交換しろと言いもしないのに
アポロのマグナム一箱と素早く交換してくれた。
こりゃ確信犯かね。
オヤジ曰く「火薬の燃焼速度が速いとか遅いとか、、、」
試しに聞いてみた「マグナム装弾は、アポロとウインチェスター
どちらが人気あるんですか?」
「ダントツにアポロだな」と、鉄砲屋のオヤジは墓穴を掘った。
ひょっとして、長期在庫で火薬があめてるんじゃないのかと思った。
激発音もアポロの場合はダンッていう音だが、ウインチェスターの場合
バァ〜ンていう間抜けた音で、火薬の燃焼速度が遅い感じがした。
という訳でウインチェスターは完全消去。

交換したアポロ44gマグナムを再度使ってみる。
いきなり3羽、鴨をゲット、もう2羽で定量ってか。
一羽目は推定55メートルななめ45度上空を飛んで行くカルガモに銃身2本半リードして
ダメモトでバンと一発、ガクンガクンと落下、ホッホー。
バッシャ〜ンの水面激突音で、下流に走っていた銀ちゃんが
大急ぎでUターンして、川にそろそろと入り回収にと泳ぎだした。
二羽目は土手を登って川面を見るとカルガモが4羽水面で雪虫を追っていた。
ななめマイナス10度、バックストップを確認して連射。。。
クルクルと一羽ゲット。
後方待機マテ状態の銀ちゃんが、銃声の合図でスッ跳んで来て回収にと元気ヨク泳ぎだす。
三羽目は下流から銀ちゃんが追い出したカルガモ。
猛スピードで水面すれすれに飛んで来て、まずは一発目バンと撃つと
カルガモくんはグンと急ブレーキを掛けながらF16ファントムのようにギューンと急上昇。
そこに追い矢の2発目が決まり、ドッポン。
遥か下流より銀ちゃんが落下カモを確認、一目散に掛け付け懸命に回収にと泳ぎだす。
コリャ凄いぞアポロマグナム、これにキマリ。
さっそくその足で鉄砲屋に向かい、弾の追加と好猟果を自慢しにモトイ報告しに行った。
「アポロは弾速が早いような気がするんですけど」と生意気なこと言った。
オヤジ曰く「人それぞれ自分にマッチした相性の良い弾がある
だから、良いと思ったら誰が何んと言おうと、それを使い続けるのが
良い結果が出る秘訣だよ」と言った。
「でもチョット高いよな」と付け加えた。
売ってる本人がそんな事言ちゃだめだろっ。

緻密な解析で衆人一致の定評があるジマ先生にも聞いてみた。
「32gと44gじゃ当たり前の事だが火薬量が違う。
だから一発あたりの弾のもつ残存エネルギー量も違って来る。
だから44gの方が圧倒的に威力はあるはずだから俺は使ってる」と言って続けて
「強装弾否定派の隊長はプロ級の腕前なので、32グラムの弾を使っても結果は出せる
その点、俺みたいな駆け出しではその腕をカバーする為にも
イッパイ弾が詰まっている重装弾を使うのだ」と。
そして「究極は3インチの薬莢を使える56gだな」と結んだ。

鴨猟も終わりに近づいたころ、一発撃つと二発目と三発目が一緒に
カートリッジホルダーから薬室内に出てきてしまい、スライダーグリップが固着状態。
ドライバーで未発射の二発目のカートリッジこじり出す事が2回3回と続いた。
そんな時に限って獲れたはずの射程内のカモが、ユウユウと低く飛んで行き
悔しい思いをした。
前みたいに目クラ滅法に力ずくで直すよりも、餅は餅屋で専門家に
聞いたほうが良いと思い、鉄砲屋に急ぐ事にした。
鉄砲屋のオヤジにレミのM870の排夾メカニズムを聞いてみたら
こないだのポロンと足元に落ちたカギ型の長い部品が
最初の排夾アクションをつかさどって、三発目を制御してるらしいので
これが作動不良の個所だと思った。
さっそく銃を分解し長い部品を取り出し鉄砲屋のオヤジがじっくりと鑑定。
あ〜だのこ〜だのっていじくって、カギ型の先端を曲げれば良いんじゃないかとのご神託。
「焼きを入れている部品なので、ペンチではそう曲がる物じゃない」と言いながら
万力にはさんで、トンカチで叩きながら修正を加える事になったが
鉄砲屋のオヤジが、いざ叩く段階になって「焼きが入っている部品なので
折れるかもしれない」と言い「保証は出来ないから」と言い叩き渋った。
仕方ないので自分のツケは自分で始末と、鉄砲屋のオヤジから
トンカチを受け取り、部品を容赦なく叩く事にした。
万力にはさんだカギ型の長い部品を見たら、右にあからさまにネジレていた。
俺は直感的にこのネジレを修正すれば治ると思った。
何たって、前に排夾口からポロッと落ちたこの部品を力ずくで
押し込んで組んだからネジレたんだなとも思ったからだ。
トンカチでトンガトンガ叩きネジレを修正した。
次の日撃ってみた。
治っていた。
良かった良かった。
ご教訓、部品は力ずくて組んだらイカンね、ねじれるから。







鴨猟期中笑ったな、あん時は。
いつもの北上川。
それは250メートルくらい上流にカルガモが二羽泳ぎながら
対岸から俺が歩いてる岸の方へと泳いで来るのが見えた。
ヨッシャ、このままのルートで泳いで来ると、こちらの気配を消せる
岸辺の林の前に来るなと思いヘッヘヘとホクソえんだ。
すると、こちら岸からも丸々と太ったカルガモが流芯へと泳ぎだして行くのが見えた。
そしたら、こちら岸に向かって来たカルガモ2羽はUターンして戻っていった。
そう、それは銀ちゃんの頭だったのだ、こちら岸から泳いでいった鴨みたいな物体は、、。
鴨は余裕で銀ちゃんとの距離を3メートルくらい取りながら、からかう様に泳いでいた。
銀ちゃんは必死で向こう岸に行ったり来たりで、ハタから見ていると可笑しかったなぁ。
このクソ寒い中、平気で泳ぐようになった水陸両猟犬銀ちゃんは
首輪からツララをぶらさげ、川幅が100mある北上川を縦横無尽に八面六臂の大活躍。
これで、自作かもキャッチャーは完全消去。

そんなあくる日ヒザまである雪をかき分けながら川岸に付くと
銀ちゃんはもう上流へと進んでいってしまって、足跡だけが点々と残っている。
と、タカブーの小編隊が上流からスピード遅く低く俺の目の前に着水した。
棚からボタモチって感じで、即射でダンとタカブーにヒット。
銀ちゃんは撃発音を聞いてか慌ててス飛んで来て、もがいてるタカブーを見るや否や
レトリバーじゃないから川にジャブンとじゃなく
ソロソロとお風呂に入るように入り、オレ的に初めてのタカブーを持って来てくれた。
こりゃ〜ラッキィラッキィとばかり俺は喜んだ。もちろん銀ちゃんも喜んだ。。
そんな事が3回続いてカモくんをサクっとゲットしちゃいました。
俺はここでフト思った。
これってもしかしたら銀ちゃんが川岸をラウンドして
カモを追出して来てくれてるんじゃないだろうかと。
犬だからカモも本気で逃げないで低く軽く飛んで来るのであって
これが人間だったら思いっきり全速力で高く舞い上がって
逃げて行くはずだよなと、密かに推測した。

4回目の時は銀ちゃんがラウンドしてるって意識をもって銃を構えた。
まさにその通りだった。
俺は心底唸った。
銀ちゃんはカモもラウンドする。

 





さてさて、カモくんのお味はと言うと、さすがに畑や田んぼが
雪に閉ざされちまい、喰いもんが無くなってしまっているのか
体の脂の載りはといえば、まったくもってカスカス、薄皮饅頭状態で最悪だ。
脂が乗っていれば、どんな鳥でも毛をむしって皮と脂を堪能する。
だから、一応は腰のあたりの毛を少しむしって脂の乗り具合を確認する事はする。
なかなか獲れないが、皮が厚くて美味いアオクビだけは毛をむしるが
他のカモの場合は皮が薄くて美味いとは言えないし
毎日の事で、めんどうっちぃから皮ごとヒッペガシ手間を省く事にした。

脂の抜けた赤身の肉はどんなもんかいなと、じっくりとカモを味わってみる事にした。
前にも書いたが、最初は内臓を食ってカモの全体像を味る。
まず心臓を食って、不本意に命を落としたモノに冥土へと引導を渡す。
それからレバーにうつり、脂のノリ具合を確認しつつ
その固体の健康状態を舌で知る。
最後は砂肝だ。
これは時間を掛けてゆっくりと味わうと、その砂肝固有のコリッコリッとした
歯触りの感食を楽しみながら、その味わいの奥から普段食っていた
餌が何かを知ることが出来る。
そして、正肉へと移りあの時の撃ち落した瞬間など思い出しながら
腹イッパイ喰って獲物を堪能するのだ
これが獲物を喰らうオレ流の儀式の順番だ。
と書いたが、まずは鴨猟お初のカルガモの雌を食べて見る事にする。 


ちなみにオレ流の撃ち落した鳥の処理は、現場ではやらないことにしている。
それは毛むしりが汚くなる事と、かえって血が体内で回り生臭くなるからだ。
たぶんこれは寒い地方だから時間が経っても出来る事かも知んないな。
マルのままの状態からちょっと腰の毛をむしり、脂の乗り具合をみて
毛をむしるか皮ごとひっぺがすか決める。
この鴨は脂がゼンゼン載ってないので皮を剥いで解体に移る。
そ嚢の中はコールタールのような川底のヘドロいっぱいだ。
だから、内臓の各パーツを破らないように慎重に取り分ける事にした。
そして、むしり終わった状態で、肉を各パーツごとに取り分ける。
それから腹を割り、心臓と肝臓と砂肝を取り出し、肺と腸と腎臓とボッチ
その他の血合いを水でしつこく流し、きれいに洗い流す。
このきれいになったガラはお鍋でコトコト煮て、お昼のソバツユに仕立てるのだ。

師匠がよく言うが、カルガモの事を泥鴨と言って相手にしない。
確かに、このカルガモの雌は内臓を開ける前に
肛門からタレ出たウンチは異様に臭かった。
心臓を食らう。
ん〜、うんまい、うんまい。
レバーを食らう。
さくさくさく、くっさぁ〜!思わず吐き出した。
なんていうか例えれば、晩飯に牡蠣フライとキムチを食って
次の朝起きたばかりの息子さんの口臭とおんなじ臭さだ。
これは北上川の夏の渇水時期の臭さとおんなじ匂いでもある。
さて砂肝は直接ヘドロを消化する所なので、いきなりは口に入れない。
用心しながら肉片をかじってみた。
これまた強烈に臭い。
ひょっとしたら、この匂いに慣れれば、クサヤやブルーチーズのように
たまらなく美味しく思われるかもしれない。
が、口の中にエモイワレヌ嫌味が残った。
さすがに泥鴨の真髄を、これで思い知らされたような気がした。
でも、胸肉とささみとモモとマガリは美味い。
脂の乗った鴨が前沢牛と例えるならば、この脂が切れてる鴨は
アカベコの噛めば噛むほど美味しさがにじみ出でてくる美味しさと同じだ。
この時期いろんな鴨を毎日食ってみたが、おんなじカルガモでも美味いのと
美味くないのといろんなものがいて、はげしく個体差があった。
魚でもそうなんだが、種による味の断定は出来ない。
とりあえず喰ってみなけりゃ分からないって事。
でも脂の載って無い鴨のなかで、掛け値無しに一番美味いと思ったのはタカブーだった。
他の鴨のように荒々しさがない、上品な鴨の味がして
オレ一押しの美味さの鴨だと舌で感じた。






今年は銀ちゃんの大活躍で、キジもカモも売るくらい獲れたので
店の裏メニュー「一瞬メニュー」のコーナーに毎日載せた。
ヤマドリは売るくらい獲れないので、マルトク印の常連さんに
日頃のご愛顧に感謝して、サービスにとご馳走した。
って、どっちにしろヤマドリは売り買い禁止だからメニューには載せれない。
そしたら、以外や以外一番人気はキジだった。
オレ的には、キジ、カモ<ヤマドリと順位を付けていたのだったがね。
それは鉄砲ブチの獲れる獲れないでの固定観念だったかなぁ〜と、深く反省。
俺らと違って獲物に思い入れが無いだけに、お客さんは素直な意見をのべてくれるのだった。
それと「キジ肉はあまり美味くない」って言う方がケッコウ多くいらっしゃいますが
これは単に包丁の入れ方が悪いっていうだけで、切り方に工夫を加えると
同じ調理方法でも、こんなに違う肉なのかとオドロキを持って再認識するはずだ。


激しくポイント、キジと呼吸が合いすぎてお見合い状態
雄キジの気迫の前に銀ちゃん、シッポが下がっちまってやや劣勢か。


これは魚でも言える事で、同体の魚からでもカンの悪いヘボ板が作る刺身と
手練のハナ板さんが造る刺身とでは、美味しい刺身とあまりそ〜でない刺身の
二通り出来上がってしまうのだ。
機会があったら食べ比べてごらん。
これが、俗に言う腕の差と言うものだろう。
だからこそ腕の立つ料理人は、お金が取れるのである。
マア早い話が、俺がど〜よとアンに威張ってるだけの話なんだが
実際の話、ソ〜だからしょうがない。
でも、ここんとこを分かって食べてる美食人は極めて少ない。




そんな店の営業にも貢献してくれた銀ちゃんと、今猟期を振り返ってみて
一番記憶に残った猟はと言えば、解禁から10日くらい経った
岩手山のキジの猟場でのことだ。
広い田んぼと広い牧草地と広いデントコーン畑に囲まれた笹薮と雑木林の小山。
このこんもりとした小山のスソ、田んぼの端を臭いを取りながら疾走する銀ちゃん。
しばらく姿が見えなくなって、ラウンドしながら戻って来た銀ちゃんの姿が遠くに見えた時。
そこは岩手山オロシがもろに当たらなくて暖かそうな南斜面。
笹薮だらけで雑木がまばらに生えている、絶対キジが居そうと思えるところに来た。
その斜面の2/3くらい上方には笹薮が窪みになって
細く長く続いてるキジが絶対に居そうな美味しそうなポイントがあった。
俺は銀ちゃんに向かって右手を上げ、ダメモトと思って聞こえるか聞こえないかくらいの
普通の声で「右に入り込め」と手を右に振りながら指示を出した。
そしたら銀ちゃんは首を伸ばして俺の方をジッと見てから笹薮の中に突っ込んで行った。
笹薮の斜面を見てると銀ちゃんが歩いてる所は笹がザワザワと揺れて
どこをトレースしているかは一目瞭然だった。
そんな銀ちゃんは俺が頭にえがいていた長く続いてるチョットした窪みの
キジがひそんでいるであろうと思われるポイントをトレースし始めた。
今か今かと思って見守っていたが、キジは出ずまいで、俺の指示が無駄だったなと思った。
そして銀ちゃんは俺の立ってる側の笹薮から出てきて「居なかったヨ」みたいな顔をした。
キジは飛び出さなかったが、それは銀ちゃんと以心伝心でわかり合えた
まさに人犬一体になって猟をしたという、思いっきり満足した決定的瞬間だった。
これが今シーズン一番記憶に残ってる猟で、この時はキジの猟果は無かったが
体中が満足感で溢れ、コイツとこれから一緒にやって行く心構えが出来た瞬間でもあった。







北上川ではドロガモ達を相手にバキュンバキュンと遊んでいた。
行くたびに思ってはいたが、ホントに釣り人的には許せない水の汚さで
嫌だな〜と思いつつも、鴨がたくさん居るのでツイ通っていたわけだ。
最終日ばかりはキレイなところで遊んで、今猟期をしめようかなと思い
もう一つの猟場、鴨の数は少ないが雫石川で有終の美を飾る?事にした。
何たって、奥羽山脈の根っこから流れ出てくるこの川は、
白ぽい透明な流れで、俺の大好きな美味しい鮎と
グラマラスな尺ヤマメが釣れる、掛け値無しにキレイな川だ。
そこへ盛岡を離れて秋田方面へと進んでいくと道路脇に雪が積もり始めて来た。
さすが奥羽山脈沿いだ、積雪量の多さは半端じゃないのだ。



雪屁

農家の軒先に車を置かしてもらい、輪カンジキを履き
1メートルくらい積もった雪をかき分け、川原までラッセル行軍。
銀ちゃんは体が軽い分、雪に沈む率が少なくいつもと変わらず元気ヨク跳ね回っている。
俺はといえば、輪カンジキを履いてるので、ゆっくりと確実に歩を進めなければならない。
何でかって言うと、急ぐと輪カンジキどうしが絡み付いて転ぶので
ややスタンスを広めにとって歩かなければならないからだ。
でも川岸に着けばこっちのもの。
川の温度によって川岸は1メートル位の幅で雪が解けかかっているので
輪カンジキをん脱ぎ、ゲームポケットにしまい、後は歩きで勝負だ。

銀ちゃんは下流に駆けて行ったが、俺はそれを無視して上流へと向かった。
何でかと言うと、上流の橋の下には淵がゆったりと流れていて
鴨が浮かんでいそうだなと、ふんでいたからである。
と、歩き始めてスグに、5メートルくらい前方から、いきなり鴨が五羽踊り出た。
あわてて挙銃し3連射。
モチロン当たらない。
何たってこのパターンで逃がしたキジ、ヤマドリは数知れず。
今シーズン、鳥のケツを何回となく悔しい思いで見送った事か。
ホント自慢じゃないがトラップ出しでは、まず当たったためしがない。
横に流れていくスキート獲物には自信を持って撃てるのだが、、、。
オフシーズンは5メートルのアメリカントラップを
みっちりとやらんきゃいけないネ。

そのカモ達は、川に流れ込んでいる用水路の溜まりで休んでいたらしかった。
この用水路の周辺にはアニマルスタンプも無いし、モチロン人の足跡も一切無い。
ただただ真っ白い雪原が広がってるだけだ。
だから鉄砲ブチにも狐にも脅かされていないらしく、焦って遠くには逃げなかった。
下流から跳んで来た銀ちゃんは、俺の脇でカモ達の行くへを見ていた。
鴨が着水したのを確認しててから、銀ちゃんは向こう岸へと泳ぎ渡り
岸から土手に上がり一直線に、カモの着水地点にブッ飛んで行った。


カモ見っけ。

そして鴨達が浮かんで居る所の上流から、土手を降り俺の方へと追いだした。
鴨は犬だと思って馬鹿にしたように、ゆっくり飛びだった。
俺はしゃがんで、なるべくでもカモ達に悟られないようにした。

ウマイ具合に俺がいる方向へと飛び始めた。
そして俺の事を確認したカモ達が、飛んで来たルートを変えようとした時
俺は挙銃したまま立ち上がり、三連発。
一羽がこちらの岸近くに落ちてバタ付いた。
銀ちゃんが来る前に、浅瀬で首尾よく回収。
あわてて飛んで来た銀ちゃんは、鴨を持っている俺に
「おう、ヨク落としたな」てな感じで一瞥をくれ
下流に飛んでいった鴨を追い、雪を蹴散らせながら跳んで行った。
俺はポケットからポリ袋を取り出して鴨を入れ、口を縛り背中のゲームポケットに仕舞った。
その時、下流から銀ちゃんに追い立てられた四羽の鴨が舞い上がった。
また俺の方へと飛んで来そうだったので、しゃがんで待った。
さっきと同じように俺の方に飛んで来た鴨が俺の事を確認したのか
そのルートを変えようとしたその刹那、またしても俺のレミ870が火を噴いた。
またまたポッチャンと、こちら岸近く落ちた。
急いで回収。
そんな俺を無視するかのように銀ちゃんは横目でチラッとだけ見て
上流のカモたちが舞い降りた地点へと跳んで行った。
三度は無いだろって見ていたら、巧く回り込んだ銀ちゃんが
またまた俺のほうにカモを追い出した。
またまた、俺はしゃがみ込んだ。
俺の方へと向かって飛んで来た三羽のカモ達
さすがに3度目はルートをずらして飛んで来た。
だが、44g3号ならどうにか狙える距離だなと思った。
でも、これ以上離れるとヤバイので切りがいいところで、まずは一発。
狙いどおりカモがグラ付いて落ち始めたので
「ヘッヘヘ、これで全部戴き」とばかりに残りの一つをカモにバッキュンと合わせた。
二羽目にもうまく弾が当たり降下し始めた。
ヨッシャとばかりに、残る三羽目を銃身のリブに乗せリードしてバッキュン。
が、そんなにウマく行くもんではない。
最後の鴨は体をひるがえし、向こうの林奥へと飛んでいった。
で、一羽目のグラ付きカモはバタ付きながら、戻って来た銀ちゃんの目の前
対岸に力尽きてストンと落ちた。
銀ちゃんは泳いで向こう岸へと行こうとするのだが
こちら岸は護岸で高くなっているので、、1.5メートルの高さから飛び込む勇気は彼には無い。
これが前飼っていたフラットコーテッドレトリバーなら、躊躇する事無く飛び込むのだが
銀ちゃんの場合、猟犬であるが回収犬じゃないので、そこまではしないのだった。
でも賢い銀ちゃんは下流に回りこみ、一段低くなった段差を利用して川に入り
対岸に落ちているカモを回収しに行ったのだった。
偉いぞ銀ちゃん。
いつもの事だが銀ちゃんは、持ってきた獲物を俺に見せびらかすように
嬉しそうにピョンピョン跳ねて、何回もバクバクとくわえなおしていた。
こうして三羽目のこのカモは、狩猟最後のご褒美として銀ちゃんが
気の済むまで噛ませる事にした。
さて、四羽目の半矢カモを回収しに行かなければならないので
ころあいを見て銀ちゃんからムリクリ鴨を奪取した。
モチロン歯形で穴だらけになった鴨。
ハンヤ鴨の大体の落下地点を確認していたので、山立てをしてから
車で向こう岸にまわり回収する事にした。
さてと四羽目を回収とばかり向こう岸を銀ちゃんと、汗が流れ出るくらい
サンザン探索したが見つからずで、しょうがなく諦める事にした。
キジの半矢は、ほとんど回収出来るのだが、カモの半矢の回収の率はホントに悪い。
落ちた場所も特定できずで、後ろ髪を引かれる思いで帰る事にした。

こうして2月の15日、銀ちゃんのカモの往復追い出し猟芸を思いっきり堪能したし
オレ的にも三羽鴨をゲットしちまったんで、射撃のウデにも大いに自信を持った。
そして何事も無く無事に今シーズンの狩猟を終了した。






体重150kgの熊のロース

2月15日、狩猟最後の日。
キコリのケンちゃんのお兄さん獲った、体重150kgを越える熊のロースを戴いた。

この分厚い脂を見よ、岩手の山奥でドングリやブナの実をタラフク喰った証だ。
熊獲り兄さんは言った「熊は脂を喰らう食いもんだ」と。
深山に降り積もる雪のような純白の脂身は、薄くスライスし刺身で喰らうといいと教わった。
それは、口に入れるのをモタモタしてると指先で脂身が融けてしまうほどだた。
口に含むとバターほどしつこくなく、舌の上で淡雪のように
ハラハラと融けていく様はたとえようがない舌触りの美味さだ。
しいて言えば、それは極上のオリーブオイルのような舌の両脇にまとわりつく美味しさでもあり
アイスクリームのように口に入れた時の優しい、そしてしあわせな味覚だ。
牛と違って、次から次と食べても食べ飽きない美味しさではある。
それは、いくら食っても体内で吸収されてしまうようで、便所のお世話にはならない。
食った後は体中が火照り、その晩は布団から足を出して寝たほどだ。

熊汁は、その体躯から想像するような獣臭さは無く、荒々しさも無い。
汁を口に含むと一見淡白な味わいで拍子抜けするほどだ。
が、後から圧倒するように迫って来る濃厚な味わいは、一陣の竜巻のように口中を駆け巡るのだ。
俺が常々言っている「食ってる物が良いのと、固体の健康状態が良いと極上の肉になる」
まさに、それそのものだった。
それは木の実が熊の体内で純白なそして極上の脂となり、えも言われぬ舌触りな美味となる。
そしてあまりにも、たおやかな味わいにヤラレタてしまった舌に思い付いたのが熊蕎麦。
それは枯淡の境地にも似た中に、煌びやかな滋味溢れる一杯の蕎麦に仕上がった。



一見ゲロゲロな脂に見えるが、一齧りすると激しい美味しさに絶句ものだ。




しかしあれだよなぁ〜、こうゆうのばっか食ってると
普段、取り立てて食いてぇなぁという物が無くなってくるよなぁ。。





今年の北上川の原っぱにいたキジ達は、モレナクこの芽吹いている植物の種でお腹一杯にしてしていた。
つまり、撃ち落したキジのそ嚢にいっぱい詰まっていた、酸っぱい匂いのするこの種を20粒ほどキープし
それが何の植物になるのか楽しみがてら庭の片隅に埋めてみたのだ。



20粒ほど埋めた種の中で唯一芽吹いた双葉ちゃん。
でも3日後、ナメクジ野郎にきれいサッパリと喰われちまった。
ガックシ。









レミントン870改と聞いて
ォオッと思ったあんたはレミの純正オタッキーであります。
世界中で一番多く生産されて、使用されているショットガンなそうで
今さら駆け出しの鉄砲ブチがインプレ書いたところで
新鮮味も、ありがた味もないのはジュウジュウ承知の上で
レミの870の事を書き垂れ流します。

この銃を手に入れた経緯は前にも書いたのでパス。
で、(改)という字が気になりますねぇ〜。
画像を見てなんかヘンだなとは思いませんか?
そう、先台が手前に長いんです。
だから、イッケン自動銃にも見えますが、れっきとしたレミのM870です。
これは譲って戴いた時点で、すでに改となってオラの手元に来ました。
その譲ってくれた方が言っていたのは
「先台の位置が遠くにあって使い難いから長くした」との事でした。


お先真っ黒けのケの一枚


ハレテこの銃の所持許可証が交付になって、師匠の教えを請いながら初めて
クレーの射場に行った時、「先台が遠いから、手元で掴めるように長くした」
というフレーズが、手足の短い典型的日本人体型のオラの頭の中で
ヘビーローテーションしていた。
だから、その長く改良された部分を持って「手の短いオラにも丁度いい長さだ」
なんて、いいように解釈してフィールドスキート場の一番射台に立っていた。
870改を構えプール・マークハウスから発射される皿を追っていました。
そんな窮屈そうな姿勢で銃を構えているオラを見ていた師匠は
「変に先台を手元に長くしてしまっているもんだから
その先台の手前端を持つようになってしまい、縮こまった挙銃になってしまっているな」
と言いながらオラの左手を掴んで、先台の向こう側へと左手の握りを矯正させられました。
それで何とか挙銃が様になったようなのでありますが、皿はいっこうに割れませんでした。
師匠が直してくれた挙銃姿勢で、狩猟解禁日までに6回ほど射場に通いました。
もちろん満射なんてのは一回もありません。
半分も当たればオンの字でありました。
射場の武藤場長が言いました。
「タマサカやるクレーの練習よりも、毎日の据銃練習を欠かさずにやっていた方が
鉄砲の腕を上げるには一番良い方法だ」と。
だからあれから、先台の向こう側を持つようにしての挙銃練習は毎日やってはいました。
と言いたいところだが「コツコツと地道に続ける」ってのが大嫌いなオラは
狩猟解禁が迫ってきた11月に入ってから慌てて挙銃練習を始めたのは言うまでも無い話。

去年の猟期中、横に流れていく獲物に関しては高打率で落としていたのだが
オラの足元から逃げて行くように飛んでいくヤマドリには
何回となく外していたので、今年はトラップの練習をやらなきゃならんと思い
トラップ場を中心居に射場に通いましたが、もちろんクソも当たりません。
それを見かねて場長の武藤さんが「そんなに早撃ちしなくて良いから、あんたの好きな
エアーライフルで獲物を撃つような気持ちで、じゅうぶん狙ってから撃ちなさい」そして
「リブで完璧にクレーを捕らえたら、銃口をクレーに被せながら引き金を引きなさい」
との助言を戴きました。

台座固定のクレーの発射角度位置固定、5mフィールドトラップという一番易しい撃ち方で
何とか12枚以上は当たるようになりました。
射場の最終日11月14日にトラップの総仕上げの意味でフィールドトラップに挑戦です。
今までやっても見なかった、タイマー有りのフィールドトラップに挑戦です。
その結果、驚くべき事にワンラウンドなんと!1枚しか当たりませんでした。
オラのワースト記録更新です。
プーラーさんも絶句です。
もちろんオラは半分涙目です。
今期ののヤマドリ猟も「絶望」と言う二文字が頭の中でクルクル回ります。
だが場長の武藤さんは言いました。
「クレーは小さいから当たらないのであって、ワッズを見ていた分では鳥なら当たってる」
っていう、慰めの言葉を掛けて戴きました。
この事を師匠に話したら「下手にワンラウンド5、6枚しか当たらないよりも
一枚しか当たらない方が潔くて良い。なんたって欠点がチャンと見えてんだから希望が持てる」
と、慰めてくれました。


11月15日狩猟解禁日とオラの誕生日

さて、晴れてショットガンを持っての狩猟解禁がやってきましたヨン。
最初に狙うは「キジ」です。
もちろんトラップはワンラウンド1枚の腕なので自信は有りませんが
キジの横流れのスキートっぽい獲物には、去年の貯金分がありチト自信があります
そして、こと銀ちゃんに関してはパーペキに完璧です。
昨年の初猟と同じく、今年の初猟もご一緒させて頂いた鈴木さんと高杉さんの熟年コンビ
それと、シカ狩りの先輩の斎藤さんと銀ちゃんとは腹違いの兄弟を飼っている
ハルさんとの4人の間に混ぜていただきました。
着いた乱場は銀ちゃんがもっとも得意とする広い田んぼに笹薮が点在する所です。
慎重にウロウロと嗅ぎ回る兄弟犬のラッキーに構わず銀ちゃんは
黙々と言うよりも自慢の高鼻を使い、スピーディーに乱場を狩って
キジを次から次と生産して行きます。

ハイライトは高杉さんが川の真中に撃ち落して、頭だけ水面から出し
もがいているキジに銀ちゃんは見事に泳ぎだして回収したのには
みなさんから万雷の拍手を戴きました。
ちなみに、イングリッシュポインターは川の中に入るのが苦手な犬種なそうですが
何故か銀ちゃんは水はヘーキで、猟一年目から大河である真冬の冷たい北上川でも
行ったり来たり泳ぎ渡ってしまうほどです。
これを見ていた鈴木さんは去年の銀ちゃんの生涯の初猟も見ているわけで
そんな今年の銀ちゃんの仕上がり具合を見て
「ダイナミックな狩り方をするようになったなぁ」と、感嘆のお誉めを戴き
銀パパとしては天狗の鼻が折れんばかりに鼻高々ではありました。


マグナムよりはレギュラー装弾

あっ、そうそうキジ・ヤマドリ猟は自分で言うのも気が引けるんだが
射場の皿に比べたら見違えるように当たった今シーズンが始まりました。
まぁ、狙いモノがクレーの10倍の表面積がある奴が相手だし
飛び出しもクレーに比べたらノロイからって言う話もあるんですが、、、、、、。
それよりも、射撃場の武藤場長から「銃に一発しか弾が装填されてないと思い
狙いは慌てずにしっかり取れ」と、言われていたのが良かったのか
獲物をしっかり見るようになったのが良かったかも。

それよりも、キジ・ヤマドリ猟に関しては、44gマグナム弾から
32gの装弾に替えたからかもしれないなぁ。
それは遠方から飛んで来る鴨を狙うんであれば、挙銃もしっかりできて
狙い越しと狙点に狂いは無いのですが、キジ・ヤマドリは一瞬のタイミングで据銃するわけで
据銃姿勢がカチっと決まってないオラの場合、不安定な据銃から繰り出す
44gマグナム弾は、その反動が強すぎてマズルがジャンプして
不安定な狙点になるからかなのかなとも自己解析。


改にはワケがある

そうこうしている内に、改良された先台が無用の長物だな〜と感じていた頃
師匠が「いたずらに先台を長くしたもんだから、弾を入れずらくなって
装填アクションが一回増えてしまっているな」と実践でのアドバイス。
だからオラは「この先台を切ってオリジナルの長さに戻そうかな」と言ったところ
師匠は「この先台を長く加工したってのは、大変なテマヒマものだぞ
こんなに良い仕事してるんだから、切ってしまうのはもったない」と、そして
「気にしないで、このまま使ってればいんじゃないのか」と言いました。
そういわれてみると、レミの870の先台の木の部分は5mmくらいの薄さで作られています。
これに10センチくらいの延長先台を更に頑丈に取り付けるってのは
誰が見たって至難の業には違いない事です。
だからオラは師匠の助言の通り、先台を切り取るなんてのは考えないようにして
先台の前方部を持つよな据銃を意識し鍛錬を積み重ねる事にした。

横に振れるパラレルな動きのキジ猟、そして行って来いの垂直な動きのヤマドリ猟と
両方とも銀ちゃんが大活躍したの言うまでも有りません。
どっちの猟が好きかっていうと、猟自体はヒネキジを追わせる時のキジ猟が
ゲーム的には一番面白く戦争ゴッコみたいで大好きな猟だが
オラ的食味評価はキジに比べたらヤマドリの方が脂のノリが格段にいいし
肉だってキジに比べたら厚みが段違いに良くて、癖がない滋味深い味がいい。
それになんたってヤマドリのガラで取った蕎麦の出し汁は
淡い脂がドンブリの表面に浮いて絶品ものだにゃ〜。
あの秋田のキリタンポ鍋はヤマドリの雌で作るのが正式なそうですが
それはかなわぬ夢と言う事で、ヤマドリの味に近いニワトリと言う事で
長年の改良の結果、比内鳥を作出したそうだ。
だからと言うわけでも無いが、今期はキジ猟よりもヤマドリ猟に精を出すようになったのだ。
なによりもテッポウブチにはキジを獲ったというよりヤマドリを獲ったと言った方がエバれるしネ。
それよりも一番決定的なことは、もともと心臓が小さいオラは、民家の近くで
「バッキューン」と大きな音を発てるのが、あんまり好きじゃないし
それに矢先を常に確認し、撃てる方向の角度を気にするのも
あまり好きじゃないと言うより、ついキジのケツを深追いし
ヤバイ方向にトリガーを引き、ドキっとして冷や汗が背中の筋を伝わるってのは
ほんと心臓に良くないからなぁ。
それに引き換え、いつ物凄いスピードで沢下りして来るヤマドリに出会えるかと
ワクワクしながら銀ちゃんの後を追いながら急な沢道をフウフウと登って行くんだが
実際に山の峰方向から銀ちゃんの追い鳴きがワンと聞こえると
2、3秒後にヤマドリがブ飛んで来て、それに合わせて挙銃し散弾をブ放すのが
快感で病み付きになったのだ。

そんなヤマドリ猟はええ加減な挙銃でも、峡谷ではヤマドリは撃ち取れたが
これが緩やかな谷間沿いでは、しっかりとした挙銃じゃないと
横に振れながら飛んで来るヤマドリに弾は当たらない。
だから、どうしたら瞬間的に良い挙銃ができるのか色々試してみることにした。

厚めに着込んでいる猟装でしっかりとした頬付けができる挙銃をするには、
銃床のリコイルラバーが引っ掛からないように、猟装の上をスムースに
頬まで移動させなければならないのだ。
だから、家の中での据銃練習時でも、猟装を厚く着込んで挙銃練習していた。
その時は、体から銃床をそんなに離さなくても上手く出きたのだが
何でか乱場では銃床のりコイルラバーが服に引っ掛かってしまう。
それは、ヤマドリを見た瞬間アドレナリンが噴出し慌ててしまうからかもしれない。
今は何羽か手にしてチョトは冷静なのに、なんで頬付けが甘くなるんだろうと疑問が湧いてきた。
そこで、実践形式にそって急坂での挙銃練習をしてみた。
いつも家でやっている据銃姿勢での銃床移動では、銃床のリコイルラバーが
猟装に引っ掛っかかり気味で移動していたのだった。
何でかとチェックしてみたら急坂では体が前傾状態なのであるからにして
銃床のリコイルラバー部を体から多く離さなくては
上手く挙銃動作の移動が出来ないのであった。
だから服に引っ掛からないように先台を移動させるには
今までのように先台の先のほうを持つような左手の位置じゃダメで
先台を持つ左手は改良延長した先台の手前端を持たなきゃ
スムーズな銃床移動が出来ない事を発見したのである。

つまり、この先台を長く改良した意図は「ヤマドリ猟」そのもに有ったのだった。
そう言えばレミの870を探してくれた秋田マタギの佐藤さんの口から
キジ猟の話は、まるっきり出てこない。
いつだったかキジの話になった時、家の周りにいっぱいキジが居て
近所の人たちが餌をあげているような話も出て、ほとんどペット状態。
鳥撃ちで出てくる話は「ヤマドリ」と「アオクビ」だけなのだ。
秋田マタギはヤマドリに比べたら味が落ちる鳥、キジは獲らないのであった。
ここでオラはツクヅク思ったな「師匠の言うとおり、先台を詰めなくて良かったなぁ」と。


青天のへきれきっ

と言うわけで、11月の解禁から順調に数を伸ばしていって
11月27日まで、目玉の周りが赤い、茶色の奴と青い奴を
獲れない日も有ったが、定量の日が三回あったから
毎日一羽づつはゲットした計算になった。(強引な計算だが)
このまま行くと1月の15日禁猟まで幾ら数が伸びるんだろうとホクソエんだ。
しかし28日の朝、乱場に付いてすぐに銀ちゃんに異変が起きた。
口から泡を吹いて、ケツの穴からから出た下痢便には緑色の粘液と血が混ざっていた。
こりゃいかんと、すぐに病院行きだと思ったが、今はまだ7時だから
いったん家に戻って様子を見る事にした。
だが、いっこうに良くなる気配はなく、口から泡は吐くは水便はたれるはで
オラ愛用のキャベジンじゃ到底対処できない病状になったのだ。
9時の開院に合わせて大学病院へと急いだ。

2年前に飼っていたフラットコーテッドレトリバーのしょうちゃんは
個人病院にいって、骨肉種を捻挫だなんてフザケタ診断を下されたのであった。
その挙句に癌細胞が転移しちまって亡くしてしまった経緯があるので
銀ちゃんの場合、なにかあったら専門の各科があり施設も人員もしっかりとしている
大学病院に行くと決めているのだ。

着いた先では、しょうちゃんに筋弛緩剤を打ち引導を渡した佐藤先生がいた。
そしてあの時の診察台だった。
その時なんだか知らないけど、目に涙が溢れてきて困った。
それは、しょうちゃんを亡くした悲しみが蘇ったのか
それとも銀ちゃんも又しょうちゃんみたいに亡くしてしまうのかと
思ったからだろうが、、、オラにはどちらかは分からなかった。

佐藤先生の所見は、野ネズミから伝播するレプトスピラじゃないかなぁと
いうことだったが、採取した便からはその反応は無かった。
その便検査の結果と血液検査の結果、アルカリフォターゼの値が高く
肝機能障害が出てるのと、カンピロバクターの腸内発生が認められた。
つまり、何か分からない化学物質を飲み込んでしまい肝機能障害がでたのと
弱った体内でカンピロバクターの活動が活発になり食中毒となってしまい
病気のダブル攻撃に遭ってしまったのだった。

そう言えば、昨日の昼に師匠と行った乱場は、今年の雪が消えかかる3月の中ごろ
キジにあてて、銀ちゃんの猟芸の向上にと行った田畑だった。
でも、リードを離して直ぐに「こりゃぁ〜〜!!うちの田んぼに犬を放すな〜!」と
姿は見えないが、どこからからとも無く大きな叫び声がした。
「早く繋げぇ〜!聞こえねのかっ!」と言う、姿無しの声がした所だった。

そういう嫌な所で嫌な予感がしたのだったが、その田んぼの脇にオスキジが
おっ立っているものだから猟欲が勝り、銀ちゃんを離してキジを追い立てたのだった。
上手い具合に師匠の目の前から飛び立たせた銀ちゃん!「イイゾぉ〜」と
高見の見物で見ていたら、師匠にしては珍しく二連発で大外ししてしまったのを
オラはしっかりと見てしまった。
「師匠とあろう方がどうしたんですか」と言ったら、師匠は「足が少し滑った」
なんて言い訳をしたのが可愛かった。
その飛んで行ったキジを追って川向こうに渡り着地した地点に急いだが
その着地地点に行くには、他人のうちの前を通らなくてはならないので
そこの家の人に挨拶してから行く事にした。
出て来たのはオバちゃんだったが、あまりイイ顔をしなくて
鉄砲ブチは来ないで欲しいような言い草と顔だった。
多分この辺の人たちはミンナこう思っているんだなという気がしてならなかった。
遠慮がちに、その場所を狩って見たが雌キジが三羽出ただけだった。

さっきの場所に戻り、そこから銀ちゃんを跳ばしながら田畑を狩って行く事にした。
思ったとおりデカいオスキジを出してくれたが、オラのおおぼけミスで撃てなかった。
そんな乱場を狩って行った途中、畑の窪みの水をガブガブ飲んでいた銀ちゃんを見た。
なんか嫌な予感が胸の内でグルグルした。
多分あの時の畑の溜まり水に農薬入っていたのか、はたまた犬を連れた鉄砲ブチを目の敵にして
農薬入りまんじゅうでも置いたのかもしれないなと思った。
とにかく、あの場所にはもう行かない。
ヤバイ。
でもナァ〜、キジが沢山いるところなんだがなぁ。


かまいたち

結局、良い色の便をたれるまでに18日間の静養がいるのだった。
この間は、しょうがないから空気銃をしばらくぶりに持ち出して
乱場巡りをしたが、なんかこう、いまいち気合いが入らなかった。
というより、エアーライフルの感覚を取り戻せなかった。
一人で散弾銃を持って山にも入ってみたが、ほとんど散歩状態。
師匠が言っていた言葉が身に染みた。
「猟野で犬が居なければ、人間ってもんはmekuraにtunbo」という言葉。
ホント、銀ちゃんが居なけりゃキジの尻尾さえ見えない。

便が固まり始めたころ、様子見がてら軽く猟野へと連れ出した銀ちゃん。
ヤマドリ猟には病後はチョト過酷かなと思い、里のキジを追いに岩手山の麓に行った。
嬉しそうに跳んで行った銀ちゃんは3羽のキジを出してくれたが
しばらくぶりの散弾銃にオラの感が狂ったか、でかいオスキジの尾っぱに玉が当たり
毛が散っただけ終わった。

次ぎの乱場にと呼び戻した銀ちゃんの足跡が付いた雪道に点々と赤い地が落ちていた。
いつもの肉球と肉球との間の柔らかい所を切ったのかなと右後ろ足を掴んで見たところ
ちょうど手首に当たる下の部分、親指の肉球から5センチくらい上を
幅3センチだが深さも3センチくらいあって白い肉が、カッターでスパッと切ったように
パックリと口を開けており、その奥には腱というか筋が見えていた。
不思議なことに血は流れ出てこなかったし、本人はケロッとしていた。
これが、噂で聞いていた「かまいたち」かなとも思ったが
とりあえず、近くを流れている川で傷口を洗い、イソジンガーグルを塗り消毒して病院へと急いだ。
その車中で「あ〜あ今期の狩猟も、これまでか」とガッカリしたのも本音だ。
それにしても、足の指の腱までは、紙一重という深い傷だったので、不幸中の幸いとはこの事だった。

家に帰ってから銀ちゃんに「静養明けで体調も戻り、今にでも山に行きたいだろうが
足におった深い傷が治らないうちは、猟には連れて行けないよ、もちろん散歩も無理だからね」
と、ご飯を上げるときは言って聞かせたの良かったのか、オラがエアーライフルを持って
猟に出かける時にでも、小屋の奥からつまんなそうにオラを見るだけで
「オラも連れてけ」とワンとも騒がなかった。


勝手にすればぁ

ホント、オラのの言葉を聞き分けて納得してるんだナと思うと、余計に不憫でならなかった。
師匠は犬の事で「犬は人間の言葉分かる。犬が喋れるんだったら
始終文句を言われっぱなしなのは、俺たちの方かもしれないな」とよく言う。


御気楽手軽山鳥猟

犬が言葉がわかると言えば、こんな技も開発した。
その名はロードランニング&スナップポイント猟っていうのだ。
って、誰かもうやってるかもしれないが、オラの知る範囲では誰もやってない。

古い狩猟界の本をオークションでゲットして読んでいたら
オーストラリアの小獣狩りかなんかの時、車のボンネットに毛布をずれないように
エンジンルームに巻き込んで固定した上に、オーストラリア犬を乗せて
ゆっくりと猟野を走っていくと、その獣の匂いがするとボンネットから
犬が飛び降りて、獲物を追い出すという件が、オラの薄いノー味噌に
その本からインプットされてあった。

狩猟解禁から5日目、日頃の不摂生がたったのか、連日の山入りで疲れが溜まった時
「あれなら楽で良いなぁ、銀ちゃんをボンネット犬にしてみようかな」と思ったりもした。
そんな銀ちゃんはと言えば元気そのもので、日に日に体力が増して来さえしてるようだった。
「そ〜だ、このくらい元気がよければ銀ちゃんを、車から降ろしてオラが後から
車で追っていけば楽で良いかも知れんな」などと、フラチな考えが閃いた。
さっそく、林道に入った所で車から銀ちゃんを降ろしてオラだけが車に乗り込んだ。
最初、銀ちゃんは「俺の事、山に置いていく気だな」って顔をして
車の前に出ようとしなかった。
しょうがないからオラは車から降りて、言って聞かせた。
「お前の事は何があっても、山には置いてきはしないから
お前が先頭に立って走って、ヤマドリの匂いを取ってくれないか?」と。
オラは車に乗り込みウインドーを開けて顔を出して「先行っていいよ」と言った。
銀ちゃんは「そんなに言うなら先に行ってやっか」てな顔して車の脇をすり抜けて
先に立って走り出した。
車のスピードメーターを見ると20キロくらいのギャロップ速度だった。
途中、二股に分かれる地点に来た時、銀ちゃんは左に行こうとしたので
車のホーンを二発鳴らしたら、「何だよう、ウルせいなぁ」てな感じで
戻ってきたので、ウインドウから顔を出して「そっち行けば保護区になっちまうから
右に行こうぜ」と言ったら「あっ、そうなの」と右に走り出したのだった。
ど〜お、犬は人間の言葉がわかるて事を、これで実証したでしょう。
とは言え、どこまで言葉の意味がわかっているのかは解らないが
オラが犬に言って聞かせる時は必ず、大げさな身振り手振りも交えているせいかもしれん。

5分くらいも走ったところで銀ちゃんは急に止まり、そして反転して高鼻を使い出した。
銀ちゃんの邪魔にならないように、車を林道の脇に寄せて様子を見る事にした。
その時、銀ちゃんはスナップポイントをした。
オラは焦って銃を持ち出し車から降りて、林道の左端に駆け寄った。
銀ちゃんは、すぐにポイントを解き林道のガードレールをくぐり沢に下りて行った。
オラも銀ちゃんに遅れまいとその後を付いていった。
一旦、沢の手前で躊躇した銀ちゃんだったが、沢を渡り向こう岸に上がり
高鼻を使って匂いを取り下流へと追跡していった。
その先には沢の本流に流れ込んでいる、滝とまではいかないが
それに近い急流な枝沢があり、そこを両手を使いながら「ヨッコイショ」てな感じで
上っていって見えなくなった銀ちゃんだった。
オラはその枝沢と本流の合流点に立って、ヤマドリの沢下りに備えた。
しばらくして銀ちゃんの「ワン」という一発吠えがあった。
「コリャ来るぞ」アドレナリン噴出、心臓がドキンドキンしながら据銃した。
するとヤマドリが「バ〜カな犬め、ここまでおいで」てな感じで
ゆっくりと沢の上を滑空しながら降りてきた。
そこにはオラがしっかりと据銃しているわけで、それを見たヤマドリ君
慌てて針路変更しようとした刹那、オラの銃口から仁丹粒が発射されて
ヤマドリ君のケッツに当たった。
そのまま右に切れていったヤマドリ君に負い矢を掛けたが、それは空振りに終わった。
銃声を聞きつけた銀ちゃんが「落とした?」てな顔をしたので
「落としたには落としたんだが、右側の杉林の麓に落ちてしまって見失ったから
探してきてくれないか」と言ったら銀ちゃんは「合点承知のスケザイモン」と言って
杉林に掛けて行った。
ものの1分もしないで、しっかりとオンドリを口にくわえて来て
「どんなもんだい」と得意げな銀ちゃんではあったな。

それからはこうして目的の沢に行くまでの林道は、銀ちゃんを先導にして車を走らせ
ロードランニング&スナップポイントで、ヤマドリ二羽をゲットしているのだ。
この事を師匠に話したら「車で追うようにして走らせると、スピードが付きすぎて
乱場でも走りすぎて犬に追い付けなくなるぞ」と言ったが、広い所はそれなりに
狭い所もそれなりにセルフにならずに狩っているから、その心配はないようだ。

銀ちゃんに関しては今まで飼ってきた犬たち以上に話し掛けているからか
オラの言う事をよく理解してくれる狩猟犬に仕上がったと自負しているのであ〜る。
が、師匠はまだ狩猟犬としてはアマイとおっしゃる。
仕上がった狩猟犬というものは、獲物の臭いを捕ってガッチしとポイントしたら
主人はおもむろに銃を肩から下ろして
銃袋を解き、銃に弾を込め据銃したのを見計らってから
獲物を主人の撃ちやすい方へ追い出して本当の狩猟犬と言うそ〜だ。
銀ちゃんは言ってみれば「パピー」の域をまだ出ていないそうだ。

それにしても、早く傷が治らないかなと待ちどうしい山鳥猟ではあるが
キジ・ヤマドリ禁猟1月15日まで、あと半月と迫っている。。
というわけで聞き分けの良い銀ちゃんは、あれからず〜っと
小屋から出て来てゴネる事も無く、ご飯をあげる時だけ
かったるそ〜に小屋から這い出して姿を見せるだけだった。
だから我が家では犬など飼っているような気配が
ミジンも感じられない程で、こちとらとしても気が楽だった。
ほんとに聞き分けの良い子だね銀ちゃんは。

仕切りなおし

オラはと言えば年末の仕事が忙しく体力的にも精神的にもきつく
猟に行く元気もなかったが、仕事も一段した12月28日の朝
布団の中でウツラウツラしながら
「さぁ〜てと、今日から猟にでも行くべかな」と
急に思い立ったのだった。
二階の部屋からノソノソ起き出し、縁側のある部屋に
お目覚めのお茶を飲みにトントンと降りて行ったら
今日に限って銀ちゃんが縁側の足踏み台の上に
チョコンと座ってオラが来るのを待っていたのだった。
ヲォっーー、オラは感激したね。
オラの狩猟に行くという思いが、銀ちゃんにちゃんと伝わっていたから。

こうなると、オラも銀ちゃんもゆっくりとはしてはいられません。
出すのも出し、飲むのも飲んで福田の食パンの耳にベーコンを挟んだ
オラの大好きなホットサンド片手に車に乗り込んだのでありました。
目指すは山鳥ちゃんのいる、待ちに待ったあの山であります。
オオッと待てよ、12月24日から降り続いた驚異的な降雪で
記録的な積雪を観測した盛岡市。
山鳥ちゃんの住むあの山は、さぞ大変な事になっているだろうネ。
さっそく最終秘密兵器「スノーシュー」を、ボート小屋の
ゴミタメ状態の中からゴソゴソと探し出し、車に積み込むのでありました。

ハヤル心を押さえながら向かった山道は、湿った重い雪が木の枝々に降り積もり
その重みに耐え切れずに、杉の木を何本も折り曲げながら倒れて道をふさいだために
チェーンソーで切った杉の屍が累々とあって
何年か振りの大雪の凄さが分かるのであった。
着いた先の山の入り口には、誰一人として足跡がありません。


え〜と、ここはと、車の荷台にて。

さっそく車のバックドア−を開けたら
いつもの銀ちゃんの儀式が始まった。
それは鼻をクンクンさせて、これから狩って行く場所の確認と
自分の中にある記憶を一致させる作業だ。

「よしっ」の掛け声で車から降りた銀ちゃんは、お決まりの小便を長々とした。
オラがそれに構わず、スノーシューを履き歩き出したら
小便をおえた銀ちゃんは、ピョンガピョンガおらの周りを笑いながら飛び跳ね
今まで小屋に引きこもっていたウップンを晴らしていた。


ギャハハ

エンヤコラと歩きヤマドリの居る沢に行く途中のカーブミラーは
ミラー部分だけが雪の上に顔を出していたいたくらい深い雪だ。
これじゃクロスカントリースキーよりもスノーシューでなければ
勝負にならい山鳥猟なのだった。
銀ちゃんはと言えば、体全体をバネのように使い兎跳びをして進んで行った。
このカーブミラーを抜けた所で銀ちゃんに緊張感のある動きが出た。
そして小刻みに尻尾が振れた。
これはヤマドリの匂いが濃い事を表していて、この次ぎにくる行動が
ヤマドリ認定を表すポイントとなるのだ。
オラは銃を構えて「ゴー」の掛け声を掛けた。
してやったり、ヤマドリが良い具合に、杉木立の中からビトビトビトと飛び出した。
が、銃声を二発残して向こうの杉林に消えて行った。
銀ちゃんは、もう一羽トビビトビトビとヤマドリを同じ杉木立から出してくれたが
残り1発バッキューンの銃声を残して、またもや杉山に消えて行ったヤマドリ君。
オラも一ヶ月のブランクが効いたか「当ったりましぇ〜ん」
でもまあ、この調子なら銀ちゃんの猟芸は落ちていないようだから
あまりガッカリはしない事にした。
結局猟再開初日、銀ちゃんは四羽ヤマドリ君を上手く出してくれたが
ワシの猟果はゼロ。

次ぎの日、場所を替えてヤマドリ君に再挑戦。
雪の降り積もった山道をエンヤエンヤと登って行ったら銀ちゃんが激しくポイントしていた。
銃を構えて銀ちゃんの所へと急いだ。
そこは急に崖が崩れて穴蔵のようになった所だったので
オラはウサギかテンかイタチの四足動物だと直感的に思った。
「ウサギやテンは絶対に撃たないように」と師匠のアドバイスで
何故かと言うと「四足を獲ってしまうと、その面白さに犬は気違いになってしまい
鳥よりも獣犬になってしまう」なのだそうだ。
だから銃は構えず、とりあえず「行けっ」と号令掛けたらなんと
2メートル先の穴蔵からヤマドリがバピバピバピと2匹踊り出た。
オラは予想に反してヤマドリが二羽も出たもんだからビックラこいてしまい
訳も分からずメクラ撃ちに近い射撃でバッキューン・バッキューンと滅法撃ち。
目の前で派手に毛が飛び散び散り、バサッと落ちた山鳥君は無残にもボロ雑巾状態。
それは距離があまりにも近すぎたから、散弾の弾が全部モロに当たってしまったから。
まあ、落としたのは落としたのだからヨシとしたが、後味が悪かった。


おやっ

そいえばキジ猟の時も、雪の上に足跡がまったく無い倒木に向かって激しくポイントした銀ちゃん。
オラは「まさか、こんな倒木の下にイタチじゃねんだから、キジなんぞは潜んでいるわけが無い」と
高をくくって、銃をかついたまま「ゴー」の号令を掛けたら、見事なキジが飛んで行った。
そこは「キジの寝屋」と呼ばれる、狐や狸に悟られないように
足跡や臭いを付けずにヒッソリとお住まいになる所だったのだ。
いつも師匠が言っている「犬を信用しなきゃ駄目だ」という事ではあったナ。

こうして第二ラウンドが始まったわけだが、雪がこんなに積もってしまっては
ハッキリ言って機動力が大幅に削がれてしまう。
いつもならオラの時間帯では沢を四つ責められるのだが
ガンバって一つがイイところで、出会えるヤマドリ君も半減した。
猟の先輩方がよく言う言葉に「雪が積もれば峰で遊んでいたヤマドリが
沢の入り口に降りてきてなんぼでも獲れるようになる」と言うが
雪が例年の四倍ちかく降ったので、ひょっとしたら大猟かと
おおいに期待してはいたのだが、沢の入り口付近にも、その奥にも足跡さえ見かけない。
だから、あの話は昔の古き良き思い出だったのかもしれないな。
これなら雪が積もらなかった方が機動力が効き、ロードランニング&スナップポイントで
広範囲に捜索でき、ヤマドリとの出会いの確率も上がったな〜。
だから、ん十年もやってこられた猟の先輩方には申し訳ないのだが
ヤマドリやキジが住める環境は、もはやそんなに多くは無いという事だね。
こうゆうふうにオラ的にヤマドリ猟に関しては結論が出た。
それは「雪が無くても有っても、居る所には居る」というのが実感だ。
つまり、ヤマドリがシーズンを通して暮らせる好条件の所はそうは多くはない
だから雪が有ろうが無かろうが関係なく居るいという事だ。
そして「獲ってしまっても、その場所は日を置くと、また別なヤマドリが陣取っている」
と言う事も言えたのだ。
つまり、魚釣りと同じく「餌が楽に多く摂取できる好ポイントには時をあまり置かずに
次ぎの獲物が居着く」という事だな。

この調子で行けば何とか昨シーズンと同数量のヤマドリが獲れるかなと思った
1月15日のキジ類の禁猟が迫ってきた頃、ヤマドリ撃ちに行く渓流沿いの山道に
のんびりとしているアオクビ君夫婦を発見。
車をそのまま走らせ通り過ぎてから車を降りて、大きく回り込んで距離を詰めたその時
バヒバヒと舞い上がったアオクビにタンッタンッと連射。
ヒュ〜イと落ちてきたアオクビ君は元気の良い半矢状態。
それを見て取った銀ちゃんは、川に入り泳ぎだし
対岸でもがいてるアオクビ君に迫って行った。
そして岩盤の岸にガッシガッシと駆け上がって、上流に回り込み見事にアオクビ君を回収。
その時、ふと後ろ足に目をやったら
爪がぁあ、、、、。
なんと今度は左後ろ足の中指の爪を剥がしてしまった銀ちゃん。
岩盤に駆け上がった時に剥がしてしまったのだ。
これでヤマドリ猟も終わったなとガックリと来てしてしまった。

家に帰ってから足を洗いながら、じっくりと検診してみたら
爪を全部剥いだわけでは無く、6割くらい爪が残っていて
あとの四割の爪がブラ〜ンとなって血が滲んでいたのだった。
これならコロスキンを着ければ、回復が早いとふんだ。
だが、コロスキンは運動量が激しい犬に着けるには接着力が足りないと思った。
だから、アロンアルファで爪を固めてしまおうと思った。
傷口が乾いた頃を見計らって、アロンアルファを垂らし爪を押さえた。
そしたら銀坊は傷口にアロンアルファが染みたのか、ガウガウガウと
激しくオラの手に噛み付き抗議したが「うるさいっ!」と大声で一喝したら
「んうぅ」と文句を言って大人しくなった。
爪を押さえた指を離そうとしたらオラの指まで一緒にくっついてしまい
無理矢理はがしたらオラの指の皮が一枚はがれてしまい、銀坊の爪に張り付いてしまった。
やな事は「一度あることは三度ある」ってよく言う。
つまり、三度やっちまったから四度は無いって事だから
爪が早く治ればいいなぁ〜〜、と思う事にした。

そうこうしてるうちに、キジ・ヤマドリの終猟となってしまった。
残るはカモ撃ちだけだ。


岩手山がこんなに低く見える所

銀坊の傷もだいたい良いかなあと思い、1月17日から岩手山麓に広がる
牧草地の間を流れている、湧き水の小川に鴨撃ちに出掛けることにした。
ここはいつもヤマドリ猟に行く山より、もの凄い積雪量。
さすが奥羽山脈、半端でない。
スノーシューを履いていざ出陣と雪原に歩み出したら
小川は積雪で蓋をされたように、ほとんど流れが見えなくなっている。
そんな積雪の隙間からのぞく小川に、早くも銀ちゃんはカモ認定のポイント。
銃を構えて「ヨシ」の号令で、50cmくらいの雪の隙間にジャンプして行った。
したら、なんとアオクビ君が七羽踊り出たが、距離が近すぎ。
まえのヤマドリ君のボロ雑巾事件の事もあったので
間を置いてから一番デカイ奴にリブを合せてダンッでバサッ。
もう一つにリブを合せてダンッでバサッ。
ヒャッホ〜イ大猟。
出だしから縁起がいいワイ。


@ この割れ目の両脇は、1メーターのオーバーハング状態

銀ちゃんはと言えば、雪の小川の蟻地獄にはまってしまい這い上がれないでいる。
しょうがないなぁと、鴨が獲れた余裕でゆっくりと雪屁を慎重に進み
手を伸ばして首輪にリードを付け引っ張り出してやった。
「カモはイイねぇ〜、なんたって数がいる鳥だから、いつでも余裕で撃てる」てか。
それに、キジ猟に似たトラップ的な猟ができ、毎日ウンマイ鴨蕎麦が食えるのがウレピィ。
こうして鴨猟は順調に数を伸ばしていったのだ。
でも途中、毎日猟があるモンでツイさぼってしまい、先祖代々引きついてきたオラ所有の
「正一位太敷堂稲荷神社」と「山祗神社」に獲物のあげものを忘れたら
途端に鉄砲の玉が当たらなくなってしまった。



「正一位 太敷堂稲荷神社」

この「正一位太敷堂稲荷神社」は、南部藩お抱えの神主であった御先祖さんが
江戸時代弘化二年五月十九日に伏見稲荷神社に出向き
豊受の大神様より直々に分霊いただいたもので
盛岡では一、二番を争うくらい由緒正しき神社だ。
茶の湯とお花の家元だったうちの爺さんが景気が良かった頃
社は小さいが盛岡の八幡さんに負けず劣らず
ビックリするくらい盛大なお祭りが、お弟子さん達の手によって執り行われたそうだ。
その元々あった神社を取り壊して建てたのがKIKI-HOUSEなのである。
この神社を壊す時だが、氏子である町内の長老たちが集まって見ている前で
父とオラが神社の大事な物をドンドン火にくべるのに仰天し
「くわばら、くわばら」「やだ、やだ」とか言って
クモの子を散らすように逃げて行ったのがおかしかった。
そんなチョトばかりバチたかりな末裔のオラなのである。
そして今は店の脇に小さくなって鎮座しておりまする。
御利益は衣食住を司る生産の神様で、深く市中の人々に関わった神社なのだそう。
あ、そうそう子宝に恵まれない方々には、大変ご利益があるからね。



「山祗神社」

山伏修験者の流れを汲む祭祀「普明院」を名乗り受け継ぐ菊池家であるが
江戸時代末期に生まれた御先祖さんが、松尾神社(お酒の神様)の神主を兼任していた
明治三年三月十二日、霊山での修行中に降臨なされた山の神様を祭ったもが
「山祗神社」なのだそうだ。
そのご利益は山や海からの授かりものを司る神なそうだ。
こちらも店の脇に鎮座しておりまする。

だからオラは釣りと狩猟と酒と女が好きなわけだナ。
女と言ったのは、どちらも「女神さま」だからだ
誤解なきよう。。
 
てなわけで、この二つの神社に深くお詫びと、これからの猟のお願い申し上げたら
次の日からは猟があったというくらい、ごりやくの効果は高い神社なのだ。
あんたも一回お参りしてみたら「株で大儲け」するかもよ。






曇りのち吹雪は鴨日和


こんな地吹雪の日に鴨君たちは、小川にかぶる雪屁の下に潜り込んでいるのだ。


一晩で74cm積もった雪に隠れている小川を目指し
ワッセワッセと深雪を泳ぐようにラッセルする銀ちゃん。




@の画像の場所に更に雪が積もればこのようになる。
この開いた小川の割れ目に鋭くポイント。
「よしっ!」の号令で、この割れ目にダイブしてアオクビ夫妻を追い出した。




続いて、二つ目の割れ目に飛び込んでカルガモ君をフラッシュ!

ねっ、キジ猟と同んなじ感覚でしょ。
まぁ、銀ちゃんがいればこその猟なんですが。




続いて
大技を決めッ



有に100mの川幅がある北上川。
対岸のテトラポットに逃げ込まれた半矢のタカブー。
一回目の飛び込みで胸にツララを作っている銀ちゃんが嫌がりもせずに
マイナス5度の気温の中、やる気満々で泳ぎだす。
そしてこの日、2羽目のタカブーを見事に回収した。
雪屁に隠れている鴨猟なんていう小技も得意だが、こーゆー大技も難なくこなす。
ひょっとしたら、銀坊には縄文時代?の頃のレトリバー種の血が色濃く残っているのかも知れんナ。



しかしあれだな、ど〜も獲物を回収する画像が上手く撮れん。
バッヒューンっとぶっ放して、ヒュィーーンと獲物が落ちてくると
オラの脳からアドレナリンがズッキュンズッキュンと出まくり、体中をギュンギュン熱く駆け巡る。
だから獲物を落とした瞬間、カメラのことなんか全然頭に無い真っ白状態で(特に、ヤマドリ、きじ)
異常に興奮してるしてるからなんだ。(今だから冷静に自己分析。)
だからオラにしてみれば、この手の半端な画像でもシャッターを切っただけでもエライのだ。




お〜らす

狩猟最終日、この日は朝から気温が異常に高く3度も有る。
先日来の大雪で、への字にヘシャゲた雨どいからは、屋根の雪が解けて水がしたたり落ち
軒下でピチャピチャとスッパネをあげていた。
そして庭のうず高く積もった雪も少しへこんだような感じがした。
オーラスの今日は今年鴨猟で一番いい思いをしたポイントだけを巡ることにした。
まずは岩手山だが、この暖かさで小川ポイントが増水して状況が一変し
いつもの付き場に鴨の姿は見えない。
おまけに、自衛隊のドカスカドンの予行演習の砲弾の音がうるさい。
や〜めたっと。
さっさとケツをまくって、セカンドステージの雫石川へゴー。

車で移動中の橋の上から雫石川を川を覗き込むと、淵頭にアオクビとカルガモの群れをハッケーン。
有終の美はここに決まりっ。
と、ほくそ笑んだワ タ シ。
現場に到着、さっそく車から降りスノーシューを履き、銃を担いてから銀ちゃんを車から降ろし
後付けさせながら、あの魅惑のポイントへと、音を立てないように静かに忍者のようにスタスタと急いだ。
いつもそうなんだが、ここは必ず鴨が居つくところなので、心臓の音が高鳴ってしょうがない。
大きく息を吸って心を沈め「確実な頬付け、頬付け」と念じた。
なんたって、銃床に頬を付けるのが甘いと、微妙に照準がずれて
弾がそれて飛んで行き、鴨が獲れないからなのだ。
銀ちゃんに黙指でマテをさせて、川岸に一気に躍り出たオラだが
鴨の気配ってゆ〜か、生き物の気配はかんじられまっしぇ〜ん。
鴨だと思っていた淵頭の一群は、ペットボトルだの緑の狸やドンべえの殻だったのだから。
ガックシ。
急な増水で川岸のゴミが流されてきていたのだな。
銀ちゃんを呼び、護岸されているテトラポットを捜索させた。
上流部最期のテトラポットに差し掛かったころ、銀ちゃんが鋭くポイントした刹那
テトラポットの間に隠れていた鴨のペアーが躍り出た。
その鴨のペアーは上流へと飛んで行ったのだったが
今日の風向きは、南からの風で鴨にとっては飛びずらい追い風だ。
オラは思った。
「鴨は向かい風に向かって飛び揚力を得る、だから必ずこちらに向かってくるはず」だと。
オラは雪面にしゃがみ込み待ち伏せをすることにした。
案の定、鴨くんは反転し、こちらに向かって飛んできたのだった、ふっふ。
こゆう時のためにオラは赤いちゃんちゃんこと赤いてんてんは着てないのだ。
なにも「危ないのがここに居るよ」と、カモ達に教えることは無いのだ。
それとキャップってのも「危ないもの」という形としてカモ達は捉えるので被らない。
えっ、どうだったって、もちろん上手くゲットした。
捕り合えず有終の美は確保したのだった。

オラの集中力は、何事も多くて3時間が限度。
だから最後はあのポイントでアオクビ君をと場所移動。
車に戻り後部ドア窓に映った自分の顔を見て一瞬ビビッた。
天気のよい小春日和のような日差しだったので、余計にくっきりと窓に映っていたその顔は
狩猟焼けした人相の悪い「アルカイダの残党」みたいだった。
思わず苦笑した自分が居た。。
オーラストポイントに着きスノーシューを履いて、銀ちゃんを従えて歩き出した時
車のクラクションの音がブッブとして振り返ったら、釣の知り合いだった。
あまりの陽気の良さに誘われて、まだ解禁していない川を偵察に来たのだそう。
好き者ね。
そんな彼が言った「危ない人が居ると思ったらkikiさんじゃないか」と。
確かに先ほどオレ自身も自分のことを危ない人だと思ったもんな。
だから言われる前に言った。
「アルカイダの残党、ビン・オデンです」
まったくそのとおりだと大口開けて笑っていやがった。
記念に写真を撮ってやると言われて撮ったのがコレ。



今年の出猟回数は銀ちゃんの故障で半分の45日しか行けなかったが
17年度も無事故無違反、タラフクで終わったのだ。
げっぷ。










笑うミカエルくん

そろそろ待ちに待った狩猟解禁がやってくる。
その前に銀ちゃんの体調維持管理のため虫下しを3錠飲ませる。
「明日は下痢ピィだな」と思ったら、そんな事は無く
相変わらずカチンコチンの、雨に当たっても崩れない良いウンチが出た。
虫下しさえも消化してしまう驚異の胃腸だ。
前に飼っていた犬とは段違いで、まったく持って内臓が丈夫な子だ。
だが、耳は弱い。
耳の垂れ下がっている洋犬の弱点でも有るんだが
真菌症にやられてしまった。
狩猟解禁日までは一ヶ月あるので、なんとか完治させようと
テラマイシンを毎日塗って、真菌を殺す事に専念し
後は俺得意のオロナイン軟膏で、なんとか解禁日までには間に合って完治。


一年のうち九ヶ月は、たった一時間だけの散歩で
お茶を濁される面白くない日々。
残りの虎の子の三ヶ月間。
野に山に縦横無尽にガンガン駆け回る銀ちゃんの
待ちに待った狩猟解禁日の朝がやって来たはずなのだが、、。

俺はと言えば6時に目覚まし時計の
優しくも無い小鳥のサエズリ音に起こされて
出すのも出してイザ出発。
待ちに待ったはずの銀ちゃんを迎えに行くと
小屋の中でゴンゴンと爆睡中。
余裕があるんだか無いんだか、ほんとにもう。
 
小雨がぱらつく国道を、パシャパシャと東の方向へと車を進める。
車線を向かって走しって来る車の天井には
20cmくらい積もった雪が乗っかっている。
どうやら山は吹雪のようだった。
更に峠を登って行くと、小雨がミゾレとなり
雪と変わり始めたのだった。

いつもの事だが、狩猟解禁の日は荒れた天候で
猟果の期待が薄いのが、ここ何シーズンか続いている。
着いた先の一つ目の沢は、期間中ヤマドリが3羽は固い好乱場だ。
ミゾレ交じりの強風の中、身支度をして銀ちゃんを車から出す。
が「わーい・わーい山だ山だ」って感じで喜ぶと思ったが
いつもの散歩と同じで、ただ淡々と歩く出すだけだった。
ワクワクと喜び勇んでいるのは俺だけ?なんか気が抜けるなぁ。
という感じで狩猟シーズンがスタートした。

一つ目の沢も、二つ目の沢も、三つ目の沢も
結構奥まで詰めたのだが、銀ちゃん自慢の高鼻も効かなかった。
ラスト四つ目の沢も完全沈黙。
こうして、やる気の出ないままに狩猟解禁初日が終わった。
敗因は、ミゾレが木の枝枝に積もり、それが風に煽られ
バサッバサッと地面に落ちる音というか
その振動が四足の足音にもにて、ヤマドリは異常に
警戒しているのか、寝屋から出て来ないものだから
山鳥の歩いた臭線がまったく無く
空振りに終わったんだと解析。

二日目は初日よりは条件的に良かったのだが
ヤマドリとの出会いもまったくと言っていいほどで
仕方なく山をあきらめて川の鴨に狙いを絞った。
着いた先の北上川のアオクビポイントを見渡してみると
青首はもちろんの事、白サギ青サギと木には鷹まで止まって
野鳥の楽園と化していた。
そんなアオクビは昨日から狩猟解禁と知らずしてか
のんびりと川面に浮かんでいた。
そのアオクビに焦点を合せて、背の丈以上のススキ野原を突き抜け
川柳の林を抜け、そっと近づいたその時
警戒声を発しながらアオクビの群れが、いっせいにバサバサと飛びだったのだ。
そして一つ目の群れが、ヒュイーッと低く飛んできた。
一発二発ではアオクビ落ちず。
最後の三発目でアオクビがギューンと川の流れを又いだ
中州向こうの激流に落ちたその瞬間
後付けで大人しくしていた銀ちゃんは
パトリオットミサイルのようにドッキューンと飛び出して行った。
俺も負けじと、中州を目指して流れに飛沫をバシャバシャと立て渡った。
銀ちゃんは激流の中、半矢のアオクビを一発で仕留め
獲物を口に、どうだと言わんばかりに泳ぎ向かって来た。
岸に上がり一瞬くわえたアオクビを渡さないふりをしたが
「出せ」の号令で渋々アオクビを離した。
そういうやり取りをしている間にも、アオクビの群れは
バンバン向かって来るのだった。
弾を装填しては撃ちまくり、一箱25発を撃ち切ったところで
狂喜乱舞の鴨狩りは終わった。
銀ちゃんは久しぶりの、半矢鴨を噛んだせいか目がギラ付き
だいぶ興奮している様子だったが
何を隠そう、それ以上に興奮したのは
じつは俺の方だったりして。

祭りが終わって、鴨を回収と振り返ったら
辺り一面、鴨の毛が舞っているだけで
肝心の鴨は無かった。
そうなのだ。
木に止まって辺りを伺っていた鷹が漁夫の利ならぬ鷹の利で
舞い降りて来、脂の載った美味しい鴨をカッサラッていったのだった。
結局最初の一羽のみで、俺と銀ちゃんは「なんだったの?」
って感じで、うな垂れるのみであった。


走れエイトマ〜ン弾よりも早くぅ

三日目はキジを狙いに、雪浦に出猟。
ここは去年先輩に教えてもらった好猟場で
行く度にキジが獲れて、ヨダレモノの美味しい乱場だ。
が、キジの臭いがゼンゼン無く銀ちゃんの高鼻は空振りだ。
居るのは地元のハンターばかりで、後から後から来るは来るはで
盛岡周辺では考えられないくらいの鉄砲ブチ達だ。
絶滅寸前と言われて久しいハンターだが
田舎の鉄砲ブチは、シブトクはびこっているのだな。

「は〜あ」と頭をうな垂れながら、〆に堤に寄って見る事にした。
堤の縁から水面を見るとアオクビの群れが居た。
俺は猟友会の会服、赤いチャンチャンコを着ていないので
アオクビ達は飛び立ちもせずに、優雅に向こう側に泳いで行った。
ここで銀ちゃんに向こう岸に回るように指示し
銃を構えて待つことにした。

銀ちゃんは俺の指示をきっちりとこなし
アオクビの群れを俺の方に飛び立たせてくれた。
しかし向こう岸右側には農家があり
俺の右後ろ後方は農免道が通っており
農家と道路の間40度くらいの間隔しか発砲チャンスは無い。
農家を過ぎた群れにリブに乗せ、うまく腰を回転させながら
チャンスポイントで発砲、上手く引き止まりもせす流せた。
鴨はもんどりうって田の中に落ちた。
キジ撃ちに来て鴨か、と思ったが猟が無いよりはマシと思う事にした。

こうしてキジ・ヤマドリには、まったく出会えずでガッカリ。
笑うしかない状況だ。
いくらなんでも、そろそろヤマドリに出会えるハズだと
鴨だけが相手してくれた7日目が過ぎた。


8日目の朝、今日はカモに浮気心出さず
ヤマドリ一本で狙ってやると心に決めて出猟。
一本の沢ヤマドリの反応無し。マッこんなものか。。
二本目の沢もヤマドリの反応無し。ん〜、今日もダメか。
三本目の沢も又反応無し。ッハア〜〜と溜息しか出ない。。
こんなだと北上川に行って鴨撃ちしたい気持ちに襲われるが
ここはぐっとこらえて四つ目の沢を目指して車を進めた。
農道の狭い道を進み道路のふくらみに車を止め
銀ちゃんを下ろして慎重に沢を目指して進む。
なにしろ沢までの道のりには、キジも結構いるからだ。

でもキジの気配すらなく沢を登り始めたのだった。
しばらく行くと銀ちゃん姿が100m先に見えたが
それから先に進む気配が無い。
んっ、ひょっとしてポイントか。
銃を構えなおして、慎重にそしてゆっくりと進む。
と、その時だった歴史は動いたじゃなく
銀ちゃんが動いたかとその刹那
バサバサと言う羽音ともに燃えるようなエンジ色の物体が
ゆっくりと沢を下ってきた。
大きな木がその途中2本有り、一本目の木で姿が見えなくなり
すぐに2本目の木でも見えなくなり、そのまま銃身を送りながら
2本目の木からヤマドリが見えた瞬間、バッヒューンと発砲。
その時鳥体がグラッと来たが、構わず2発目を見舞い
首が折れて俺の体の脇2mばかり横をかすめ
もんどりうって、沢に落ちた。
銀が来ないうちにと、山鳥を回収。
その持った手に感じた重量感は今までに無い物だった。
推定1.5kgと思ったが、キジ.ヤマドリでは
どう頑張ったって1、3kgが上限の重量だから半信半疑。
尾っぱも、いつものとは違い長いなぁと思ったので
勘定してみると10っぷし。
やったぁ、夢にまで見た10ぷっしオーバーだ。
もちろん銀ちゃんは「俺にも噛ませろ」迫ってきたが
マテの号令で沈黙。
その姿があまりにも可愛いので、ポッケからチーズを取り出し
ご褒美。
最後に銀ちゃんとヤマドリの記念写真をとってハイポーズ。


フン、どんなもんだい

オレは破顔一笑でシャッターを切った。

そんな銀ちゃん、今年の夏に入るあたりから
おこちゃまな面が薄れてきた。
元々落ち着き払っているジジイくさい犬なのだが
ここに来て、余計に大人びてきた。
山を牽いてみたら、去年よりも動きがタイトになってきて
無駄な動きが無くなり小気味よく山を狩って行くのだった。
こうなると子分と言うよりはチームメイトという
目的を一つに突き進む同士となった感が強くなったと思った。




家に喜び勇んで帰って、検量。
ジャスト1.5kgの超重量級のヤマドリだった。
それをバラシてみると、皮下の脂といい
内蔵を取り巻く脂といい、とてつもなくコンデションが良い
全身フォアグラ並みの鳥体なのであった。
ニヤリと内心笑う。



何が旨いって、このモモ肉を蕎麦に乗っけて喰ったら
言葉が出ません。
ボッチを焼いて喰ったら、たまりません。
脂で覆われた砂肝を喰ってみると
かすかにヤマブドウの味が感じ取れヨダレが止まりません。

胸肉はと言えば、以前知り合いのソムリエに「ヤマドリって言う
幻の鳥を、そのうちに食わせてやるから、その時は
美味いワインを持ってきて」と言ったら
「ボルドーのグランバンですかね」と言ったので
「いや、ここはブルゴーニュの白、そうだなモンラッシェが
良いな」なんていう、会話をしていたので
「美味いワインを持ってきたらヤマドリを喰わせる」からと
ケータイして呼びつけた。
ニコニコして持って来たのがソゼのピュリニーモンラッシェ
それもコンベットを持ってきた。
もちろんプルミエクリュ、一等畑だ。

今回は「ワインしゃぶしゃぶ」で喰らう事にする。
コンベットと供に食い合わせてみた。
モチロン合うには合うのだが、繊細な味わいのヤマドリには
コンベットのほうがパワーがありすぎて
バランス的には良いとは言えなかった。
ヤマドリはヤマドリだけ喰らい
コンベットはコンベットだけで飲むと
たまらなく美味しい食事となったのだった。
最後に鴨の蕎麦を作って出してみたら
むしろ、鴨肉の方がピッタリと合ってしまい
ビックリした喰い合わせを発見してしまったのだった。

さて二日酔いの良い加減で出かけた先は
モチロン、やまちゃんが威張ってる一の沢
銀ちゃんは俺と一緒に後付けで上っていったのだが
緊張感のある尻尾を振って、スルスルと俺の脇を抜けて
掛けて行くので「よし、頼むぞ」と、その後ろ姿に声を掛けた。

見晴らしの利く、林の開けた所で迎え撃つ事にした。
5分待ったが上流からは赤いヤマちゃんは下ってこない。
10分待ったが、相変わらず小鳥だけがチュンチュンと
陽気に騒いでいるだけだ。
15分後、昨夜の痛飲が響いたのか、膀胱の膨張感を覚え
おもわず股間から自前のバズーカ砲(見え張りすぎ)を引き出す。
言っとくけど俺の鉄砲には、銃袋は被さっていない。
「ふぅっ」と溜息をつきながら、昨日のワインを垂れ流していると
真っ赤な目にも鮮やかな大きなヤマドリが
オッパを、これ以上広がらないくらい広げ
俺の鉄砲の目の前8メートルくらいの所に軟着陸した。
俺のチンコじゃ、8メートルは射精じゃなく射程範囲を越えている。
かといって、肩に担いている鉄砲を下ろして据銃するには
ずり下げたズボンやパンツに小便が掛かってしまう。
万事休す。
こうなったら、こちらの気配を悟られないようにして
次のチャンスを待つことにしたが、舞い降りたヤマドリを
おって、急な沢を飛び降りてきた銀ちゃんは
チンポを出している俺には目もくれずに通り過ぎた。
そしてヤマドリが舞い降りた地点を駆け抜けた瞬間
あのオッパの見事なオンドリやまちゃんは又飛びだって
遥か下の峰を越えていってしまった。
思わず自分で自分を失笑。

教訓・小便は犬が戻ってからするべし。

次は二の沢のヤマドリ狙い
相変わらず二日酔いのままだ。
が、そんな親父にはお構いなしに銀ちゃんは臭いを取ったか
あっという間に姿が見えなくなってしまった。
見通しが悪い沢道をひたすら登り、木々が開けた所で待つ事にした。

暫らくしてガサガサ ドドドッドの迫力ある音を立てながら
俺の目の前を横切って、沢の上流から降りてきたのは
アオ(ご当地ではカモシカの事をアオと言う、灰色の事を
英語ではブルーダンと言う、つまり洋の東西を言わず
灰色がかった色は青というのだね)だった。
そのアオのヤツはいきなり酒臭いオヤジと出くわしたものだから
鼻息を荒くさせながら「ビックリさせるな」と言わんばかりに
俺の方をジッと睨み付け、鼻息を荒くさせていた。
「な〜んだ銀坊が血相変えて上っていたのは
アオの臭いを取ったからだったんだ」と、気を緩め
さっさと沢を下ろうかと銃を担つごうとしたら
今度は上流からものすごい勢いで赤褐色の弾丸が飛んで来た。
「おおおッ」と思って銃を構えなおすまもなく
俺の頭上を通り過ぎたその瞬間、振り向きざまにババーンで
ぐら付きながらヒューィーンではるか遠くへ落ちていった
と思ったら、今度は銀ちゃんが血相変えて沢から落ちてきた。
俺ももちろん追いかけるが、二日酔いの体では思うようにならず
ヤマも銀ちゃんも見失って、万事休す。



気だるい二日酔いの体に鞭打って探し回り
ヨウヤク銀ちゃんの白い体を見つけたと思ったら
ヤマドリをムシャムシャと食べていた銀ちゃん。
取り上げても、もはや食えるところがないくらいバラバラだ。
今回は銀ちゃんの取り分だと、黙って食わしてやった。
銀ちゃんは主翼の先ッぽだけ残して完食。。
というわけで今回は顔で笑って、心で泣いた3羽目のヤマドリは
口には入りましぇ〜んでした。

で、今日はお日柄が御悪いようで
とっととお家に帰りましょ。
千葉からヴィスちゃんも来る事だし。


完璧にレストアしたJ56をバックにヴィスちゃんとパパ

銀ちゃんに食われた山鳥の代わりと言っちゃぁ〜なんだが 
ヴィスパパから、お土産に戴いたイノシシの生肉。
味の付いているのはモチロン、ヤ キ ニ ク 。
味の付いていないロースは味噌汁にして食った。
お味はって?
めっちゃ、うんまぁです。
黒豚の豚汁なんて足元にも及ばない美味さではある。
俺の住んでいる所にも、イノシシが居れば
イノシシを追ってヤマを駆けずり回るだろうなと
思うほどのお味でした。

という、解禁一週間のドタバタ失笑狩猟記でした。







痛痛2006 その2



一の沢を攻めようと、切り立った壁のような斜面を這い上がる。
ここは登り口だけが急坂で、そこさえ何とかクリアーすれば
後は、なだらかだとまでは言わないが、入り口ほど急な斜面ではない。
だから、俺は次回から楽に上り下り出来るように
この急坂沿いにロープを張っておいた。

この沢の特徴は雑木がドーム型になっている。
だから先に銀ちゃんに行かれ、ヤマドリを出したとしても
羽音だけをのこして、頭上の雑木ドームの
更に上を飛ばれ去ってしまうので
先に行きたくてしょうがない銀ちゃんを
ホイッスルでセーブさせながら上っていった。

この銀ちゃんが行きたくてしょうがない様子の時は
かすかなヤマドリの臭気を感じ取った時に起こす行動なので
こちらとしても、ちょっとした緊張を持ちながら上がって行った。

そして後付けさせていた銀ちゃんが、俺の横をすり抜けて
走った時は、必ずと言っていいほどヤマドリが出る。

ちょうどドーム状の雑木が少しばかり途切れた所で
後付けのコマンドを「ヨシ」の声符で解いた。
待ってましたとばかり、銀ちゃんは沢を駆け上っていった。
俺はと言えば、見晴らしのきく沢の土手に上がり
笹薮の林を越えて、沢宇津木の木と木の間をくぐり
峰方向から下ってくるヤマドリを一番良く捕らえる所に陣取った。

峰方向に上って行った銀ちゃんの様子は、うかがい知る事が出来ない。
その雑木のジャングルを上の方に眺めては
山鳥が現われるであろう方向に銃口を向けて
挙銃の構えとスタンスを何回も決めていたが
いっこうに現われないヤマドリと
その後を追いかけてくる銀ちゃんを
待ちに待って、待った、待った、待ちくたびれた。
そして飽きた頃、小便が詰まってきた。
ブッシュパンツンの固いジッパーを下げて
股間のバズーカ砲?を引っ張り出し、出すのを出すことにした。 

山には、まだそんなに雪が積もってなくて
散り残った雑木林の微かな紅葉と
そしてその上空に広がる乾いた空気の色と青空。
フウッと「気持ちいいねぇ」と気持ちよくシッコを出していたその時
雑木林の切れ目から真っ赤な大きな飛行物体が現われた。

それは体の割には広くない翼を思いっきり広げ
尾羽もこれ以上広がらないくらい広げ、空中に一瞬だけ止まった。
その姿はまさにフェニックス、燃える鳥・不死鳥だ。
そしてそのままゆっくり滑空し軟着陸した。

俺はと言えば、臨戦体制になっていないモノを出して放尿中。
赤い物体を撃ち落そうにも肝心の銃も肩に掛けたままで
まさに「どうにもならねぇ」状態だ。
しょうがないから自前のバズーカ砲で撃ち落そうとも考えたが、、。

空中でブレーキを掛けた赤い物体は、どうやら俺のバズーカ砲に
恐れをなして地面に降りたようにも思えた。
着地して二、三歩あるいた所で、「私の負けです」と
言ったかのように見えなくなった。

急いでオシッコを垂れ切って、バズーカ砲を格納した。
それから1分遅れくらいで、銀ちゃんが血相変えて降りてきた。
モチロン俺のほうを見て「きたでしょう?」って目をしたが
「いや〜、降りて来たには降りて来たが、小便してて撃てなかった」と
正直に報告した。

ヤマドリってヤツは降りた所からあまり移動しない場合が多いので
その場所の方へと指示した。
だって、先ほど二、三歩あるいて見えなくなったのは
ペタンと座ったようにも見えたからだ。

そんなヤマドリを解体してみると分かるが
体の大きさのわりには心臓が大きくない。
渡り鳥である鴨の四割減の体積しかない。
羽を動かす胸肉はヘモグロビンが足りない薄ピンクで
どうみても、空を飛ぶのに向いていない筋肉の質と翼の面積だ。
でも、モモ肉は赤身が強いピンク色だ。
そしてスネの腱は筋ではなく、軟骨になっている。
そんな構造だから、実際に走るのは速いし、とんでもない距離を走る。
だから、使えない胸肉を精一杯使った後のヤマドリは
息が切れてゼイゼイして、、休んでいるはずだとフンダ。

銀ちゃんに「あそこ辺りに下りたぞ」と指差しして
「行け行けっ」と指示した。
銀ちゃんがヤマドリの臭いを取る前に
俺はヤマドリが飛ぶであろう所に、場所取りをしようと移動始めたその時
気配に気付いたヤマドリはトビトビトビという音だけを残して
遥か向こうへと、また飛んで行ってしまった。
体力の有るヤマドリだなぁと思ったが
彼には命が掛かっているから必死なのだな。

警戒心が異状に強い鴨と違って
ヤマドリもキジも一度見かけて発砲したとしても
日を置けば同じ所に戻っている場合がほとんだから
一日置いてからまた攻める事に決めた。
「今日はカンベンしてやらぁ」と、捨て台詞を残して下る事にしたが
チョッと不機嫌な銀ちゃんではあった。
又やっちまっティンコ事件その二。

一日置いてから、俺のバズーカ砲を見て驚いて飛ぶ事を止めた
ヤマドリを仕留めるべく一の沢に向かった。
日を置けば同じ所から二度は出るヤマドリだが
3回目は無いので、失敗は絶対許されない。
ハヤル銀ちゃんを後付けさせながら慎重に歩を進めた。

飛行上空確保場所に着いてから「頼んだぞ」と、命令を解いた。
前回と同じくヤマドリの微かな臭いがするらしく
ぶっ飛んで行った銀ちゃん。
俺は同じ轍は踏まないように
今回はオシッコを車を止めた所で済ましてきたから
大丈夫だが、どうもウデのほうがねぇ。

斜め前方の雑木林の開けた部分は
前回のヤマドリが飛んで来た所なので
そこに銃のリブを持って行き、発砲の確認を何度となくした。

やはり待てど待てど待てど来ない。
辛抱して飽きてきた頃「今日はダメッポイ」と思ったその時
あの時と同じ飛行線をたどりながら赤い物体が舞い降りてきた。
が、今回は役のたたないバズーカ砲は格納したまま。
その代わり愛用のレミントン870がしっかりと獲物を捕らえているぞ。
870のリブに赤い物体を乗せて、銃口で隠したその瞬間
ドッキュ〜ンとマグナム弾発砲。
赤い物体は何事も無かったように飛んで行った。
でも羽毛が少しばかり飛び散ったようにも見えた。
さらに振り返りながら背越しにドッキュ〜ンと発砲。
それでも何ともなく飛んで行った。

ハアとダメポ。
力のない目で見送ったヤマドリだが
急にガクッと首が折れたかと思ったら、そのまま落下した。
奈落の底から、一気にアッパレきくちくん。

ヤマドリの落下地点は沢が左にカーブした向こうなので
多分、俺一人では発見不可能と判断した。
銀ちゃんが下りて来るのを待ち、銀ちゃんの鼻に掛ける事にした。
一分ほどして下りて来た銀ちゃん、前回と同じ帰還タイム。
今回も、かなり上の方から追い出したんだなぁ。

「早く見つけようぜ」と言う銀ちゃんに
先に発見されて喰われちまったら、元も子もないから
後付けの指示を出しながら下って行った。
多分、山鳥が落ちたと思われる地点に着たので
いっそう細かく探索するよう指示を出そうとしたその瞬間
俺の脇をスルリと抜けた銀ちゃんが、10m先で緊張。
姿勢を低くして胸から腕にかけての筋肉と
腰骨から太腿にかけての筋肉。
そして水平の延ばした尾を微かに痙攣させた。
それは獲物を捕らえロックオンした時の迫真の
レベルヘッド、レベルテールのポイント姿。
いつ見ても惚れ惚れするなぁと、いつまでも見取れてしまう。

このポイント姿を、ロダンの緊張感を発する彫塑と例えるならば
整然と植林され一寸くらいの太さになった唐松林。
冬の白い太陽が雲間からのぞき、薄く照らされた冬の木立の中を
獲物の臭いを追って疾駆する銀ちゃん。
一瞬、姿が唐松にさえぎられて途切れる。
そしてまた走る姿が見える。
それがまた断続的に見えないのが不思議だ。
それは、この季節のモノトーンの世界と
ポインター独特の白と黒のブチ模様がそうさせるのか。
ハタマタしなやかに、そして流れるように走る
女豹のような走りが、そうさせるのか。
それは北欧映画の幻想的なワンシーンを見ているようでもある。
出来る事なら俺もポインターとなって走りたい気分にさせられる。



この地で寒さに弱いといわれ、ポインターを飼う人が居なくなっても
高さんが30有余年に渡りポインターだけを繁殖させてきた理由が
この頃ようやく分ってきた。
それは純粋な鳥猟犬である英ポインター独特の
鬼気迫るポイント姿と、この流れるように疾駆し獲物を追う
しなやかな姿芸があればこそ、この犬を飼う意味があるのだと。

そのポイントした5m先で
長い尻尾を持った赤い獲物が、最後の力を振り絞って
ジャンプし飛び立とうとしたその瞬間
ポイントを素早く解除しロケットスタートを切った銀ちゃん。
3段跳びのようにホップ・ステップそして最後のジャンプを
ミサイルのように高くに飛んだ銀ちゃんは
ガッチリと獲物をくわえ空中戦を制した。
戦いの後には、フワン・フワンと羽毛が宙に舞っていたのだった。


満身創痍


そんな英ポインターにも困ったところがある。
それは赤外線追跡ミサイルが温度を感知し
標的をロックオンするように
いったん獲物の臭いを取ると、まわりの状況がどうであれ
それしか視野に入らず、イバラの込み入ったブッシュにも
モノともせず突っ込んでいくし。
下刈りしてブツブツの枝が刺さりそうな所も跳んで行くし。
ガレキで足場の悪い沢もカッ飛んで行くから
ご覧とおり耳はガムテープで修理して、足はアルミ強化ガムテープで補修しているが
耳は裂け、足は割れ、尻尾の先はいつも真っ赤な血で滲んでいる。
これがイギリスポインターの性と言われている
無鉄砲なバードワークなのだ。



オヤジが撃ち損じ無ければ、ご覧とおりエッヘンと威張っているが
これが撃ち損じた日にゃ「フンッ、下手糞」と
言ったか言わないかは分からないが
ギロッとオヤジに一瞥をくれて
トットト次ぎの仕事に取り掛かる銀ちゃんではある。


























食うなと言われれば、余計に喰いたくなるのが、犬情ってもんだ。

それにしても、脂が乗ってて美味そうだにゃ〜〜















群鳥2007


がんた〜〜ん

さてと、今年の運勢やいかに?
占いかねて、初猟にシュパーツ2007朝。

一の沢、臭いがケッコウ有るらしく
銀ちゃん忙しく嗅ぎ回り、あっというまに見えなくなったなと思ったら
遠くでヤマちゃんが飛び飛び飛びっ。
どう考えても、遠くて撃てましぇ〜ん。
ご苦労さん。

二の沢、これまた臭いがブンブンみたいで
銀ちゃん、忙しあまって日が暮れるぅ。
けど
これまた、峰のほうで平行飛行。
今日は何だかイイみたい。
撃てないけど、ヤマちゃんは見る見る見る。
しかしあれだよなぁ、遠くのヤマちゃんの臭い
よく獲れるよなぁ、銀ちゃんは。
エライッ

ホクホク予感で三の沢
入ってすぐ、イキナリ銀ちゃんが俺の脇飛び出して
ウロウロソワソワポイント。
あまり見ないポイント姿。
もしやと、やな予感。

ゴゥの一言でで突っ込んでい行った銀ちゃんの先から
トビトビトビトビトビトビトビと
四方八方にヤマちゃんの乱れ飛び。
ぐぐぐぐ群鳥だっ。
バンバンと二発だけしか入っていない鉄砲。
不不不不覚。

その数、10ッ羽はいたな。
ヤマちゃんの群鳥を見るのは2回目だが
前のときは10羽は居なかったなぁ。
しゃぁないね。
群鳥は当てれないって相場は決まっている。
銀ちゃんも、どれを追ってイイのか分からなくて
あっち行ったり、こっち来たりの
尻切れトンボの乱れ追い。
ま、群鳥を見れただけ良しとしましょうよ。

お次は四の奥の沢
先ほどの興奮が覚めやらないままに
銀ちゃんがポイントォーーー。
その時ヤマちゃんのカサカサという逃げ足の音で
銀ちゃんのお尻にロケット点火。
すっ飛んでいった銀ちゃんの鼻先から
ヤマちゃんがフラッシュッ!!!
これを撃ち損じたら、銀ちゃんに会わす顔がない。
でも心配ご無用。
ちゃ〜んと一発で仕止めたよ〜ん。
それも俺の足元にヤマちゃん落下。
あわてて来た銀ちゃんには、カスッとも触られませ〜ん。
ふふふふふ、記録更新。
新年早々、こりゃ縁起が良いわいな。

それと今日は元旦、お店は休業。
時間はたっぷり、暗くなるまで沢めぐり。

さてと五の沢
これまた入ってすぐに、ヤマちゃんの早タチ。
こりゃ撃てんわね。
奥に攻めあがるも、後はなし。

六の沢
ここは憎き、ヤマドリの健チャンが居る所。
健ちゃんには、2回ほどやられている。
なんたって健ちゃんは
ヒザカブぐらいの高さでしか飛んでこない。
つまり
金玉に直撃されるようで恐ろしいてな訳。
とてもじゃないが、銃を構えるも
ビビッて半端にしか構えられずに
発砲と同時に腰砕け。
なんたって突っ込んでくる健ちゃんから、大事な金玉まもらにゃならんし。
過去2回とも、行ってらっしゃ〜い。

今日は縁起がいいから、成敗成敗いざ成敗。
と念じながら入って、銀ちゃんの様子が変。
こりゃ居るね、間違いない。
銃を構え、腰引いて金玉隠して、さぁたいへん。
キョロキョロと慎重に沢を上がってく。

銀ちゃんが、ななな〜んと、さっきと同じ群鳥ポイント。
とびとびとびとびとびとびとびの見張り役の合図で
一斉に6羽が飛び立ちぃ。
うりゃぁぁぁ〜〜!
二度と同じテツは踏まないキクチくん。
目移りはもちろん、スケベ心出さずに
下って来る一羽の山ちゃんだけに焦点を合わせて
バッキューン
グラッとなりつつも、俺の金玉めがけてツ込んできた。
神風特攻隊長、ヤマちゃんから金玉守るのが精一杯でドン引き腰。
連射できずにお見送り。
でも、俺の後方10mでモンドリウッて落ちた。
これまた、銀ちゃんに触られずに回収。
でも、こいつは健ちゃんじゃない。
健ちゃんはモット大きい。
多分、最初上流へ飛んで行ったのが健ちゃんだろう。
というわけで、2007年2羽目ゲットッ!

こうなりゃ調子が良いんで、3羽目めざしてガッツ入れよう。
と思ったが、一日2羽のお約束。
断念だが俺は満貫、素直に喜んだ。
一羽も噛めなかった銀ちゃんは、ちょと不完全燃焼。

これで一気に記録を伸ばした俺様は
狩猟界のディープインパクト?
違うって、銀ちゃんがディープインパクトだから。


憧れのクロスのオッパ。


こうして狩猟期も半分まで来たが、出会ったハンターに
「アバラがガラついた痩せ犬だな」と言われてしまったが
「こいつには一升飯食わせているんだがね」と言ったら驚いていた。
そんな俺も、64kg有った体重が、今は59kgまで落ちている。
犬ともどもシェイプアップしすぎかなと思われる今日この頃
皆さんはどう元旦をお過ごしですか。









遠征2007


うちの店は年中無休。
となってはいるが、遊びのフィールドの状態がいい日に突然休む。
でも、近頃の不景気でソーも行かなくなった。
だから、釣りも、鉄砲も、山菜採りも、キノコ採りも
仕込みに間に合うように、近場にしか行けない。

うちの店で知り合ったand氏という
マルチでディープな本物の遊び人がいる。
彼に誘われて、川井村っていうトーイ所に久々の遠征決行。

いつも地回りしてる、家から15分の所とは景色が違い
この景色を見ただけでも、来てよかったな〜とホント思った。
さらに、ヤマドリも一羽獲れたので、さらに良かった良かったと思った。



いつもなら、銀ちゃんと獲物の画像になってしまうのだが
この日はand氏に撮って戴いたので
久々のヤマドリと銀ちゃんと俺のスリーショットが撮れた。
めっちゃ、サイコー有頂天。
遠征はこうでなくちゃね。

えっ、and氏の猟果はって?
新春蓄音器操作競演会(dj)の準備のために一足先に帰った俺を差し置いて
しっかりとヤマドリ定量を、やらかしておりました。
ギャフン。。





蓄音器操作競演会場
Maryちゃんじゃなきゃ出せない空気と空間



なんで山に登るのですか?

と言う問いに、登山家の野口氏は答えた。
「そこにゴミがあるからです」と。
ウソかホントかは分からない。

なんで毎日、鉄砲かついで山に行くのですか?
と言う問いに、きくちくんは答えた。
「そこにヤマドリが居るからです」と
言う答えを期待していた皆さん、はずれです。
「銀ちゃんが一緒にいるからです」と言うのが正解です。

二日酔い明けで、ダルッた体に鞭を打ちながら三本の沢を攻めたが
まるっきり、ヤマドリの反応が無く「今日はこれまで」と
銀ちゃんに言いながら車に乗せて、バックドアを閉めた。
帰り際5分ほど運転して「ふっ」と頭の中に
ある沢のイメージが湧いた。

急ブレーキを踏み、ハンドルを左に切って、その沢を目指した。
釣りでもそうなんだが、毎日その川や海に通うと
「今日は行ける」という、根拠の無い感が働き
それがまた不思議と当たることがある。
それは通い詰めた場所と一体となった
自分の第六感が研ぎ澄まされた結果だろう。

その、気になった沢に着いてバックドアーを開けたら
銀ちゃんが「え゙〜!?」って顔をし、目を丸くしていた。
そんな銀ちゃんは、もはやご帰宅モード全開で
専用のVIP・BOXでマッタリと横になっている最中。
やる気はコレッポッチも無い状態だ。
「頼むよ〜、この沢一本だけ付き合ってくれよ〜」と頼み込んだが
口をキッとむすんで「嫌なもんは嫌っ!」と言った。
「帰ったら、お前の大好きなヨーグルト、おごるからさぁ」と言いながら
首にリードを取り付け、車のリアボックスから有無を言わせず
むりくりと引きずり出した。

最初はベチャ雪に足を濡らすを嫌がっていた銀ちゃんだが
(鴨猟の時は、嬉々として泳ぐくせに
雨上がりの水溜りが嫌いだったりする銀坊)
しばらく歩いて微かにヤマドリの臭いがし始めた途端
猟モードに点火した。
そしてその姿勢はだんだんと低くなり、音を立てないような歩き方になった。
モチロン俺は挙銃体勢をとって「いつでもカカッテきなさ〜い」
が、ヤマドリに走られた音がしたのか銀ちゃんは
その姿勢から猛ダッシュして、杉木立の中に消えて行った。

しばし杉木立の方向を見ていると、真っ白い雪ウサギのような物が
左の杉林から沢をまたいで右の杉木立に走った。
それは銀ちゃんに追われたヤマドリなのだ。
薄暗い木立の中でヤマドリは、首筋から背中そしてオッパにかけての
羽の中の白い斑点が光るように輝き
それはまるで白い雪ウサギのように見えるのだ。

そしてその後を銀ちゃんが走り渡り、右の林に突っ込んで行く。
「ヤマドリに残った手は、沢下りしか無いだろうな」と確信し
いつでも向かえ撃つ体制を整えた。

右にカーブして行く杉林の切れ端から、真っ赤な十字架が
右に切れながら下ってきた。
一発目は投網を打つように発砲し、弾幕を張るが当たらない。
二発目の背越しの弾が当たったらしく、50m向こうの杉林の上で
毛がパサッと散ったのが見え、飛行体勢が崩れたのを確認した。

血相を変えて跳んで来た銀ちゃんの後を追いながら
今度は落下したヤマドリ捜索だ。
でも探すまでも無く、50m向こうで銀ちゃんが
レベルテール・レベルヘッドの、矢のような低い姿勢でガッチリとポイント。
カッコイイなんて見とれている場合じゃないので俺は
「待てっ!待て」の大声を出し、ヤマドリを噛み荒らすのを阻止した。
そして手にしたものは、ズッシリと重くそして
まばゆい赤い琥珀色をした山の宝石だった。


北国のヤマドリは白みが濃いのかもしれない。

なんで宝石かって?
その飛翔している姿は、真っ赤に燃え立つような炎の赤に見える。
薄暗い林の中では真っ白く光る。
そして逆行では色が沈んで黒い影となり
生命が途絶えた体は、息を呑むほど光り輝く宝石に見えるからだ。
これは実際に手にした者しか分からない感覚だ。

狩猟の世界に初めて足を突っ込んだ切っ掛けとなったのは
マグナムエアーライフルを所持してからだった。
その時点での究極の獲物はキジであった。 
キジはモチロン美しい鳥だ。
何たって国の鳥だもの。
キジは田畑にポツンと首を伸ばして、像のようにしている時があるが
この時、太陽光に照らされると
頭の赤い斑と
首周りのメタッリクグリーン
腰周りの流れるような斑毛が美しく見えるが
どうも俺にはそれが厚化粧した場末のママのようにか見えない。
だから手にした時、美しいなぁと言うより
一つの生命を奪ったという感覚でしかない。

エアーライフルの世界ではヤマドリは滅多にというか
ほとんど出会いが無いので、俺的には猟の対象外であった。 
散弾銃では犬を使役するのでヤマドリ猟は成立する。
って言うか、犬が居て初めて成立するのがヤマドリ猟なのだ。

ヤマドリとは山にしか居ないから、ヤマドリ。
だから、ほとんどの人は見た事が無い幻の鳥なはずだ。
そんな猟場の周りには人は居ないし、家はまず無い。
だから気兼ねなく猟に集中できるって言うのがうれしい。

ナゼかヤマドリは川に流れ込む支流の沢沿いに居る事が多い。
だから俺的はサワドリと呼びたい。
なんで沢に居るかと言うと、それは沢に来て小石を飲むからである。
家に帰り、解体しその砂嚢を調べてみるとその小石の量は
餌となる木の実と同じくらいかチョッと少ないくらい
多く飲み込んでいる。
それも不思議と白い小石が大半を占めている。
だから最初は米粒を飲み込んでいるとばかり思っていた。
多分、薄暗い沢では白い色が映えるから
その色を目当てに口にしているかもしれない。
つまり白い砂礫がある沢には山鳥が居付くのである。

陸上の鳥は、ほとんどが砂嚢と言うところに小石を蓄え
それを歯の代わりとして、餌と一緒に揉み砕くのである。
だから、臓器の中で一番硬い筋肉で出来ているのが砂嚢。
これを四割にして塩コショウし焼いて喰うと
喰っていた木の実の味が微かに感じられ
さらにその弾力あるコリコリとした歯ごたえが
たまらなく美味しく感じられる。


高鼻でサーチ開始

その沢筋にチョッとでもヤマドリの呼吸した臭いが漂っていると
銀ちゃんは鼻を上に突き出すように上げて
その漂ってきた方向を探るのだ。
これを高鼻と言う。
これでビックリするくらい遠くの臭いを嗅ぎつける。
(犬の嗅覚は人間の2000倍と言われている。
つまり犬はとんでもなく臭い匂いのする世界に住んでいるじゃないかな。)
ただ、これには条件があって、向かい風の微風もしくは
弱風という条件がいる。

これが追い風だと、まったく臭いが採れなくなるが
たまには逆戻りして、後ろから来る臭いを突き止めるなんて事はママある。
だから風を読んで犬を放す位置取りするのも猟の技術の一つなのだ。


地鼻で特定。

臭いが濃くなっていくと、今度は地鼻と言って鼻を地面すれすれに
擦り付けるようにして、その逃走進路を特定する。


中鼻でロックオン。

その臭いが濃厚となり居場所が確定すると
中鼻と言って鼻を前方に突き出すようにして
スピードを上げて追い詰めるのだ。
そして、ポイントとなりヤマドリと呼吸を合わせ
その場所に押さえ着けて置くのである。


獲物を捕らえたギンポドン、発射準備完了。

後はゆっくりと主人が銃を構えながら、いちばん撃ちやすいポジションを
とってから「ヨシ」の号令を掛けてヤマドリに犬を突っ込ませ
飛びだったところを、銃身で狙い定めながら流していき
良いくらいの所で撃ち落すのである。
ここで、飛び立ちと供に撃ち落すとカートリッジの弾が
全部当たってしまい、ズタボロになっちまって喰う所がなくなってしまう。
まぁ、こんな絵に描いたようなシーンはほとんど無いが
でも、シーズン中一回くらいは有る。
これが出来た日にゃ、自分の腕に酔いしれてしまうのだ。

これが、ひねたヤマドリになると早立ちと言って
犬にポイントを許さず、遥か手前で飛びだって
あらぬ方向へと飛び去って行くのだ。

人を拒むような絶壁に近いV字谷の沢に住んでいる
ヤマドリを狙う時は、犬任せでの猟となる。
沢の入り口で「頼んだよ」と、犬を解き離してやる。
すると犬は臭いを採り、どこまでも急な沢を自慢の4輪駆動で上り詰める。
追われた山鳥は、いくら早い足を持っていると言ったって
犬に追い詰められてしまいそうになる、三歩手前くらいで高く飛び上る。
そして全体重を乗せてV字谷を一直線に滑空し始め
徐々にスピードに乗って、サーフィンのように下ってくるのだ。
そのMAXスピードは一説によると120km/hとも言われているが
俺は今期、猛スピード下って来るヤマドリには全敗している。
っていうか、ヤマドリ猟を始めて今までに
そんなシーンでは3回しか当たってない。
その3回もマグレ当たりだけだ。

先輩達に聞くと、豆粒に見えた瞬間から
撃ち始めないと、当たらないとも言うし
空を撃たなきゃ当たらないとも言う。
つまり散弾で壁を作るような感じらしい。
 
つい鳥を見てしまう俺は、永遠に向かえ鳥は撃ち落せない。
だから、ヤマドリの生活に幾らかでも近づて
その裏をかいて、猟をしようと考えた結果
同じ時間、同じ場所に通い詰めて、ヤマドリの生態を探ろうと決めた。
いわゆる定点観測ならぬ定点出猟。

ヤマドリ猟に関しては、先輩諸氏からいろいろと教えを戴いたが
山を歩いてみて「違うな」と思う点が幾つかあった。
つまり、いくら長く猟をやって来た先輩方でも
個々の思い込みと独断があるので、鵜呑みには出来ないなって事だ。

これは釣りでも言える事でって言うか
釣りを長くやって来て言える事なのかも知れない。
それは、つり雑誌の思い込みと偏見の記事に惑わされたり
周りの釣り人の一言二言を鵜呑みしていまい
えらい回り道をして、たどり着いた世界を経験して来たからだ。
だから今、釣りでも猟でも仕事でもまして人生の歩み方にしろ
人それぞれのスタイルや考え方があるし
ウソを言ったり書いたりしている訳でないから一応は参考にはするが
実際に見て感じた物しか自分中に取り込まないようにしている。

だから定点猟をヤマドリの猟期中50日間毎日やってみた。
後の11日は?って。
それは他の場所に行ったり、銀ちゃんの怪我がひどくて休んだり
俺が風邪をひいいて休んだりしたからだ。

俺の行動パターンは、朝9時に家を出る。
猟場には9時15分に着く。
ここから一つの沢を30分くらいの時間で探って
12時のお昼をもってあがる毎日だ。
雪の無い2006年はだいたい1日に5本くらいの沢を探る事になる。
でも2005年のような積雪の年は、がんばっても2本が限度だ。

ヤマドリは朝早く沢の入り口に下りて来て
日が上がっていくと同時に、峰の方へと上がって行くと
言われているが、9時に山の上斜面から
沢に下りてくるヤマドリを見てるし
12時近くでもヤマドリを沢の入り口で見てるし、獲っている。
また一回見かけた場所には同じ時間に居るとも言われているが
これは違う時間でも見ている。
だから、時間に関係なく居る時は居る。
が、確率としては高い言い伝えだとおもう。


天候は晴れて風の強い日は、鷹や鷲が飛ぶので警戒して出て来ない。
と言われているが、風の強い日に群鳥を見たり獲ったりしてる。
無風で小雨の日は鷹や鷲が飛ばないから
ヤマドリやキジは警戒しないで安心して出て来ると言われているが
そんな日に限って、一羽も見なかったりする。
だから、これに関して確率は低い言い伝えだと思う。

でも、こうゆう日だけは姿も見えないが
臭いさえも無いって言う日がある。
それはベタ雪が木々の枝枝に積もっていて
それが太陽の日を浴びたり、風でバサバサッと落ちて来る日は
その音が四足動物の足音に聞こえるのか
息を潜めて寝屋でジッとしているらしい。
これについては異議が無く100%当たっている言い伝えだ。
こんな日はトットと場所を替えて、鴨猟に変更すると吉と出る。

居場所だが、沢なら何処にでもいるかと言うとそうでもない。
撃てなくても、ヤマドリを見た場所に全部マーキングをしてみたところ
一回見たところには必ず後日にはヤマドリを見る事が出来る。
山の斜面で転げ落ちている木の実など食べてから
沢の小石を飲み込むに来るのだろうか
そのルートが、どうやら決まっているようだ。
それはヤマドリにとって安全で歩きやすいコースなのかもしれない。
そこで一羽獲っても、日を置くと又ヤマドリが居たりするから
そのルートはかなり良い条件が揃っているのではないだろうか。
でもビックリするような悪条件な所にも、そのルートはあるから
何の条件がそうさせるのかは分からないってのが、今現在の感想だ。

雪が降り積もったら、ヤマドリは峰から降りて里にくる。
と言われているが、2005年の大雪の時でさえ沢の入り口に
ヤマドリの足跡がいっぱいなんてことは、ゼンゼン無かった。
スノーシューを履いて、汗をダラダラ流して
沢筋沿いの山道を上がって猟をしたのだが
雪が無い時と同じ場所には、ちゃんとヤマドリは居た。
だから、この言い伝えは聞かなかった事にしよう。

まぁ、ハッキリ言って、俺が通っていた沢だけの話なので
その他の山はどうなのか?っていうのは分からない。

あれだな、今シーズンみたいに雪がまったく無い年のヤマドリは
砂嚢の中身は、木の実でいっぱい。
これが先シーズンのように大雪の年は、木の実を拾い食い出来ないので
沢筋に生えているシダの葉でいっぱいだった。
だからか、どれもこれも腰周りからモモにかけての脂の載りが凄く
内臓周りの脂もコッテリで体脂肪率は大変な事になっていたな。
だから今年のヤマドリは、コッテリとした旨味が凝縮していた。
そのガラでとったスープで蕎麦のだしを取ってみたが
蕎麦と言うよりも、ラーメンにしたほうが良いくらいのスープで
常連さんに黙って出すとトンコツ?って顔をされるくらいだった。

というわけで、ウデは相変わらずのダヘだったが
銀ちゃんの猟芸は、確実に進化していて
こちらとしては楽なヤマドリ猟ではあった。
こうして2006年、ヤマドリ猟は幕を閉じたのであった。

をい、をい、ヤマドリっばかりで、キジはどーした?って
キジとは基地と書くそうだが、平たい場所に居るからなのだろうか。
そんな所のキジ猟はと言えば
銀ちゃんがポイントする。
俺が銃を構える。
その銃口の先を確認する。
チョッとでもその先に民家や建造物があれば
たとえそれが弾が届かない距離であっても
引き金から指を離し、銀ちゃんに「よし」の号令。
キジが飛び立つ。
銃身をキジに合わせながら流し、キジを追いこしざまに
口で「ダン」と言って、おわり。

これが出来ている内はいいが、焦っている時や
指が勝手に反応してしまう時だってある。
一歩間違うと、いわゆる流れ弾となって民家の屋根や
車のボンネットにパラパラパラと落ちて
スグに110番「鉄砲で撃たれた」となる。チャンチャン。。

これが今の10倍の狩猟者人口が居た15年前くらいは
キジが2、30羽単位で畑に来て、マメや雑穀を喰い荒らすのだそう。
だから地元では害鳥扱いで、テッポウブチは大変重宝がられた。らしい。。
ついでに「おらほの、婆婆ぁも撃ってけろ」っても、言われたらしい。
そんな昔の岩手はキジの王国と言われていたそうだ。

今はなんでもそうなんだが個人の権利主張がむやみやたらと激しい時代。
鉄砲持って畑を歩いていると「畑に入るなっ」って言われてしまうから
平身低頭でお百姓さんに了解を得てから
畑の隅を歩かさせてもらっている状態。
まぁ、俺が畑の持ち主だったら
パラパラ落ちて来る散弾の玉には、コレッポッチも威力が無いと
言われても、やっぱりテッポウブチには、ご遠慮願いたい。

犬はと言えば、リードを付けて散歩しましょう。
てな条例が出来たりしていて、厳密に言えば犬を使った猟は出来ない。
警察犬と狩猟犬に付いては除外となっているところもあるが、、、。
もし俺が犬嫌いだったら、リードを付けていない飼い主を見た途端
嫌味の一つでも言うだろうが、相手が鉄砲持っているハンターだったら
多分恐くて泣き寝入りするだろう。
だから人の目を気にする里のキジ猟には、神経が擦り減る。

つまり、昨日今日始めたばかりの新米猟師には
キジ猟ってのは、ビクビクしながらするものだっていう
認識があるから、小心者の俺はヤマドリ猟なのだ。


名人だべ。








おやぁ


去年のカモ猟は毎日猟果が有って、美味しいカモオレンジや
鴨鍋をタラフク食べたり、食べさしてあげたりしてエガッタァなぁ。
今年も、ヤマドリ猟が終わったら
ウッシッシと目論んでいたのだが
今シーズンのカモ猟は、まったくと言って良いほどのド不猟。

最低気温が低くてもマイナス2度とか3度
昼にはプラスの5度なんて言う、真冬日が一日も無い暖冬。
だからダム湖に氷が張らず、ワカサギ釣りもできないでいる。
カモ達は、この手の届かない安全なサンクチュアリーに
悠々と浮かんでいる。
これで低気圧が来てくれると、サーマルウィンドが
発生しないので、カモ達は猛禽類達からの脅威をおぼえる事無く
川のアッチコッチで、サーフェスフィルムを破りハッチする
ユスリカを食べに出てくるのだが、これまた今シーズンは
高気圧だらけで、カモ達は集団で固まってしまい
鷹や鷲の脅威から逃れているが原因の一つだ。

それと何時もなら雪が積もって川岸はクローズドになるのだが
今年は雪が無く、川岸ギリギリまで車が入って行けるので
足を使わない横着ハンター達に、たえず虐められている
ってゆうのも、原因の一つだ。
だから、キジ・ヤマドリ猟が終わってから1月の15日以降
散弾銃でのカモ猟が成立でき無い日が続いた。
俺にとっても、銀ちゃんにとっても消化不良の毎日。

なので、今シーズン後半は、エアーライフルで
キジバトやヒヨドリ狙いに、とっとと切り替えたのだった。
もちろん銀ちゃんも車に乗せて行くのだが
出番はほとんど無く、朝一の農道を車で追いかける
散歩で終わってしまう事が多く
銀ちゃんにとっては運動不足がたたり体重が見る見る増えていった。
なんたって冬の間は一升飯を食わしてるからなぁ。
だから首輪がビチビチとなって、長い首輪に交換したっていう
笑えない話もあった。

それでも毎日出猟していると、たまには鴨に出会う事もある。
でもその距離は短くても60mで、それより詰めると
バイバイされてしまうってくらいカモ達は虐められていて
非常にナーバスになっていたのだ。
でもマグナムライフルでは、射程距離が散弾銃より長いので
80mくらいの獲物まではOKだが、それ相当のウデはいる。
だから、たまにカモに弾が当たっても
竿で投げて回収する自作カモキャッチャーでは
回収できる距離じゃないので
この時ばかりは、銀ちゃんに出動してもらった。

銀ちゃんは半矢の鴨だと勇ましく川に突っ込んで行くのだが
クリーンキルのカモは、ただのゴミと化して
川面に浮かんでいるだけなので、いたって反応は鈍い。
俺がそっちの方向に石を投げて、確認させて取りに行かせる
っていう儀式が必要だった。
エアーライフルと犬っていうコンビネーションは
猟犬でも、半矢の獲物も探し出すのが上手いと言われている
お拾い屋専門のレトリバー犬種がベストパートナーだと思う。

ガッチリとしたポイント後に、エアーライフルで狙うっていう
英ポインターとエアーライフル猟ていう手も考えたが
散弾銃を持ってしまうと、エアーライフルに
持ち替えるのには、かなり勇気がいる事だ。







口が堅い。

30日前に戻る。

〇〇羽目のヤマドリを撃ち落した。
俺のキャナが悪いので、コレがまた元気のいい半矢。
ブッシュの中を遁走したヤマドリくんだった。
これを見て取った銀ちゃんは、左斜面のイバラの中を
素早く駆け上り追跡した。
俺は下から一部始終見ていた。
くわえた瞬間を見計らって、呼び戻しのホイッスルを吹いた。

ブッシュからバリバリという音ともに出てきた銀ちゃんの
鼻の頭や、肩が盛り上がった筋肉の所に
イバラのトゲがブツブツと刺さって血が滲んでいたが
そんなのはどうって事が無いゼと言わんばかりに
目を輝かせ、ヤマドリをしっかりとくわえていた。

「出せっ」の一声で、口から落としたヤマドリは
まだ元気がよく逃げ出したが、すぐに銀ちゃんに御用となった。
受け取ったヤマドリは最後のワルアガキで
俺の手の中でバタバタと抵抗していたが
喉の付け根を絞り絶命させた。

俺は軽く驚いた。

どうしてかって言うと、今まで銀ちゃんが持ってきたヤマドリは
全部が全部すでに絶命していて、生きてる事は無かったからだ。
初めての活きの良い獲物の運搬だ。

今までならば家に帰ってヤマドリを解体すると
一番大事な胸肉に、ズッポリと歯形が付いていた。
穴が開いているのはまだ良いほうで
グシャグシャとなって、ミンチになってるのもあった。
一番ひどいのは、腹に穴が開いて腸が
グシャグシャになっているヤツだ。
ヤマドリの腸は臭いなんてもんじゃなく、オエップの劇臭だ。
この腸が破れると匂いは体中に回ってしまう。
だから肉は、スパイスを効かせたヤキニクにしかならない。
ガラもモチロン臭くてブイヨンにできないし。。

それが、今回に限って活きの良いままで運んで来たから
俺は驚いたのだった。

こんな夢にまで見た日が、何時かは来るのじゃないかと
ポケットにチーズを入れていたので、コレを取り出し
「エライ、エライ」と、オーバーに誉めながら上げた。

家に帰ってから、この活きのいい?ヤマドリを解体してみたら
銀ちゃんの歯形は、一切ついていなかったのだ。


シーズンに入る前に、猟の先輩とか、いろんな方に相談した。
「俺が黙っていると、1羽マルッと食べしまうし
運んできた鳥は、もれなく歯型付くほど口が堅いんですけど
どうしたらいいものですか」と聞いた。
ある先輩は言った。
「口が堅いって、出せの号令で放すだけ良いぞ。
口が堅いってのは、くわえた獲物をスッポンみたいに
金輪際離さない犬のことを言んだ」
そういう場合どうするのですか?
「そういう犬はだな、耳の穴に息を吹きかけて離させる
それでもダメなら鼻の頭にタバコを押し付けて離させるんだぞ」
と言った。
ある先輩は「強く噛んだり食べてしまった時は、歯が折れるくらい
思いっきり口を蹴り上げて叱る」と言ったし
ある先輩は「電気ショックをビリンと掛けて懲らしめる」と言ったし
ある先輩は「鳥の羽をバラ線でグルグル巻きにして
堅く噛んだら血が出るように工夫して、それで持来の訓練を毎日する」
と言った。
でも、ある先輩は「血統が確かな猟犬ならば、口が堅かろうが
なんだろうが、犬の好きなようにさせてればいい
そのうち大人になれば、ちゃんと獲物を生きたまま
運ぶようになる、持って生まれた本能が出て来るから
そう、カリカリせずに気長に付き合えば」と言われた。
そして「口が柔らかいってのが、名犬と言われる条件の一つだな」
と、その先輩は話を結んだ。

俺は歯が折れるくらい蹴るのには賛成しかねるし
鳥の羽とバラセンで毎日訓練ってのも、日記と同じで
俺の方が続かないと思ったし
電気ショックってのが、手軽でいいなぁとも思った。
でも、最後の血統頼みっていうか、楽天的に気長に待つ
ってのが、エエカゲンな俺のしょうに合ってるかなとも思った。

だから今シーズンは、生きたまま獲物を運ぶなんて
無理だろうな思っていた矢先、今回みたいにヤマドリを
生きたまま運んできたので、飛び跳ねるほど嬉しかった。
で、結局この活きのいいヤマドリが
今シーズン最後のヤマドリになった。
だから、この一羽だけが、たまたま生きたまま
運んできたかもしれないので
本当のところ、口が柔らかくなったかどうかは分からない。

シーズン後半にエアーライフルで狙ったタカブーは
当たり所が微妙に外れて、半矢にしてしまった。
その距離、63m。
自作のカモキャッチャーでは、とうてい届かない距離なので
車の後ろでマッタリとしている銀ちゃんを下ろし
川面でバチャバチャしている半矢のタカブーに指差したら
「よっしゃ、まかしときぃや」と言って
銀ちゃんは威勢良く川に入っていった。

バチャめかすくらい、活きの良いタカブーだったので
銀ちゃんの追撃をかわし、何回も川の中に潜って逃げた。
ようやく苦労してタカブーを捕らえ、岸に上がった銀ちゃんに
「カモ、出せっ」の号令で、ポトっと口から離した。
そのタカブーを拾いに行ったが
口から落とした地点にタカブーは見当たらなかった。

仕事を終えた銀ちゃんはといえば、すぐさま川岸に戻り
「もう一匹いないのかなぁ」と川面を見詰めていた。
そんな銀ちゃんに、もう一回出動してもらわなければと呼び戻した。
銀ちゃんは「ヤレヤレ世話が焼けるゾ」とは言わなかったが
そそくさと捜索を開始し、5mくらい離れたブッシュから
タカブーをくわえて持ってきてくれた。
もちろんバタバタと活きの良いままで。
これで二羽目の生きたままの獲物の運搬になった。 
そして3羽目と4羽目のエアーライフルで仕留めたカモも
生きたまま運んできて、なんとなく
そ〜だなぁ、65%の信頼感が持ててきた。


風林火山

2月14日、台風並みの低気圧が日本列島を襲った。
ようやくショットガンでのカモ猟が成立する日が
やって来たな、これでドラマが始まるぞと確信した。

その晩、飲み友達のアッキラちゃんが来て
「一緒に飲みましょうよ」と誘われたが
明日は猟の最終日それも、低気圧の真っ只中
つまりカモ猟にはもってこいの日なので
アルコールは遠慮しようと思ったが
やはり、なんていうか、そのぉ、つまり
つい飲んじまったのだ。
次の朝、かる〜く二日酔いではあったが
気付けに濃〜い煎茶を飲んで、気合いを入れた。
外に出でみると雪が30cmくらい積もっていて
こりゃワクワク気分だわさ。
やる気が満々と出てきた。
銀ちゃんを積み込み、久しぶりのレミントン870を
肩にかつぎ、いざしゅっぱ〜つ。

着いた先の北上川の川原は、雪がコンコンと振りイイ感じだ。
でも、いつもとは逆方向から風が吹いていたので
攻め下りじゃなく今日の風は攻め上がりだなと計算した。

ヤッパリいますねぇ。
最初はコガモの群れを発見するも
矢先の対岸に農家が見えたので、これは見逃す事にした。

次はツガイのマガモを発見。
銀ちゃんに先に行かれて、場を荒らされないように
後付けで忍者のように、見る人が見たらオカシイ光景で
コソコソと一人と一匹が川岸に近づく。
その瞬間、レミントンから久しぶりに号砲が3発。
したら、対岸から一群れのマガモがぁぁぁ。
モチロン最初に見たツガイのマガモも、何事も無かったように
バババァ〜イ。
まっ、こんなもんでしょ、久しぶりのショットガンは。
と、銀ちゃんに言い訳しながら先に進む。

しばらく行くと、北上川が蛇行する好ポイントに着く。
そこで、マガモの一団が、こちら岸に飛んで着いたのを確認した。
その場所をしっかりと覚え、こちらの殺気を悟られないよう
大きく迂回して、そのポイントに真っ直ぐにダイレクトに出て
不意を襲い攻める、風林火山の戦法でいく事にした。
俺と銀ちゃんの怒涛の攻めが津波のように開始された。
が、川岸に着いてもマガモの群れを発見できず。
おっかしいなぁと思った瞬間、銀ちゃんがマガモの群れを
追い出し「グエッ、グエッ、グエッ」と警戒音を出しながら
マガモの一団が飛びだった。
その一団めがけてダンダンダンと3連発。
パサッともいわないで、逃げ去って行った。

テッポウの師匠曰く。
「散弾銃とライフルは、狙い方が違うのでシーズン中は
どちらか一つに絞って使わないと、痛い目に合うぞ」と
言っていた事が、フと頭に浮かんだ。
そうぅだね。
狙い込みと狙い越しは、柔道で言えば立ち技と寝技くらいの
差はあると思う、失中の一撃だった。
でも、突然の事で下流へと逃げ出したマガモは絶対にまた
このルートを通って、上流に飛んで行く今日の風だ
と計算した俺は、蛇行している北上川の突端の岬部分で
待ち構えるべく、降り積もった岸の土手を駆け足で急いだ。
そしてその突端部分の立ち木の陰に隠れるようにして
待ち伏せしたら、うまい具合に、この立ち木を目指すように
マガモの一団が低空で飛んで来た。
読みは当たった。
コレが最後のチャンスなので、慎重に一羽のマガモを
銃身のリブを乗せて、狙い越して引き金を引いた。

飛び去ったマガモの一団から、その狙った一羽だけが離れ
北上川の真中に落ちた。
元気のいい半矢のようで、こちらの岸に向かって必死になって
泳いできたが、その到着地点には急がず静観して
そのポイントを把握してから、銀ちゃん共々いそいだ。
そこは北上川が蛇行して、流芯がこちらの岸にぶつかりながら
流れているとこで、こちらの岸は川の流れでえぐられていて
さらに、笹薮やら低木で覆われカモの身を隠すのには
もってこいの所だった。

カモの潜んだであろうポイントを指差し、銀ちゃんに捜索させた。
カモの息の匂いがしているのだろう
銀ちゃんはその笹藪で覆われてエグれた岸で
川に下りるべきかどうか悩んでいた。
が意を決して、エグれた岸から川にダイブした。
そして、流れに押されながらもエグレに突っ込んで
見えなくなった。
その時、カモは最後の逃走を試みようと
流芯に向かって、平べったくなって泳ぎ出てきた。
それを追って、銀ちゃんも泳ぎ出てきて追いかけた。
と思ったら、その流芯のすぐ下は絞り込まれた一本瀬。
それも、昨日の昼過ぎからのミゾレ混じりの雨で増水していて
白泡が立ちゴンゴンと流れが、急加速している所にだ。
その吸い込まれるよう流れていく瀬の
頭の手前でカモに追いつき、くわえた。
が、そのまま白泡に飲み込まれてしまい
鴨をクワえた銀ちゃんの姿は見えなくなってしまった。
そのうちに水面から出て来るだろうと、タカをくくって見ていても
その姿は浮かんでこず、俺はイライラしながら焦ってきた。
「鴨なんか離して、岸に戻って来い」と、心の中で強く叫んだ。
この一本瀬は蛇行している岸が、だんだんと高くなって崖になっている。
だから下流50m先は崖の陰になって
流れの先は見えなくなってしまっている。
この一本瀬、50mも姿が見えないって事は
白泡の流れの底流れに捕まってしまい
もがき苦しんで溺れたかもしれないっていう
不吉な予感がした。
その時間、エラク長く感じた。
「あ〜、もうダメがなぁ」と、つぶやきながら下流へ歩き出した。
崖の上に出ようとした時、笹薮を漕ぎながら走ってくる
銀ちゃんが見えた。
「はあ〜良かった」と、思わず口から出た。
その銀ちゃんの口は、カモをしっかりとくわえていた。
あの窮地の中でも鴨を離さなかったんだなと思うと
猟犬としての血の濃さを感じられないわけにはいかなかった。
俺の足元でポロっと落としたカモは、仰向けになって
足をバタつかせて最後の抵抗をしていた。
パニックになったのは俺だけで
銀ちゃんは「ナンモだ」と言って笑っていた。

この一件で完全に「口が柔らかくなった」と確信したのだった。
こうして一年一年と進化し続ける銀ちゃん
来シーズンのヤマドリ猟が、更に楽しみになった
猟期終了日の、フーリンカザンな一日だった。

という訳で、今までなら銀ちゃんが殺して持って来る獲物は
大事な食材って言う認識しかなかった。
だから生きたママ運んでくる獲物を絶命させるのは俺の仕事となった。
喉仏の辺りをググッと押さえつけるようにして締め付け
窒息死させる。
その間、獲物は最後の断末魔の叫びはあげようないが
目を剥き体中を痙攣させ、最後の抵抗で命が終わる。
それが俺の手の中で行われる。

こうして命を奪った物は、食材となる。
だから、美味しくなるように、いたわりながら調理し
ありがたく食べたり食べさしたりする事が大事だなと
余計に思えるようになった。
今さらながら遊びとはいえ、命を戴いて俺が命を永らえる。
そんな命のやりとりの連鎖の中での食材だと思えばこそ
どんな食い物でも、有り難い物だなと、切に感じたのである。


もう猟期、終わりかよ。










こだわるのには訳がある。

オレのテッポウの師匠はトーイトーイ昔、地元の猟友会に
会費の使途不明金について問いただしたんだが
訳の分からない、うやむやの話にされて
切れた師匠は「こんな訳の分からない会とはオサラバ」と
見切りを付けて以来、猟友会との付き合いは無いという。
そんな師匠に師事した俺も、モチロン右にならへで入って無い。

猟友会会員は猟期以外にも「有害駆除」という名のハンティングができるらしい。
そんな猟友会にはチョッピリ未練は有ったが
話をよく聞いてみると、新米ハンターは悲しいかな
そうは簡単に許可を交付されないらしい。
だから今となっては、まったく猟友会には興味が無いのである。
っていうより今現在のオレは、猟友会の会服である
赤いチャンチャンコを、いかなる場合でも着なきゃならない決まりなので
そっちの方が嫌なので、多分このまま一人気ままに猟をしていくだろう。
というわけで、赤いチャンチャンコじゃない
コダワリのハンティングジャケットのうんちく。



バーブアー


狩猟界に入った最初のシーズンは車で流しての
エアーライフル一辺倒だったので
これといって、猟のための服は考えなくても良かった。
なので、サクラマス釣りの時の正装と同じ
だいぶ着古した英国製のバーブァのビデイルを着た。
このジャケットは長綿で有名なエジプト綿に、ビーコンオイルを
たっぷりと塗った、オイルドジャケット仕様なので
その独特のテカリかたの生地と風合いは、マニアの間では絶大な人気を誇っている。

今みたいにゴアテックスなんていう透湿防水性に優れた生地は無かった
100年くらい前に開発されて、その当時は透湿防水性で
このジャケットの右に出るものは無いと言われ
英国陸軍などに採用されたほどの高性能を誇ってたらしい。
まぁなんていうかゴアテックスと比べる事自体、可愛そうなんだが
今となっては、その性能は大した事は無く
オイルドとうたってるので、ドレほどの物かと期待してた割には
撥水性能が、さほどよくないのにはガッカリだ。

猟装にとって肝心なポケットは表に二つと、ハンドウオーマーが有るだけなので
車で流すエアーライフル猟には問題はまったく無いが
散弾銃での猟には、ポケットの数がカナリ足りない。
まぁ、イギリスの貴族たちが、馬の上からテッポウをブッ放すだけで
あとは従人が後始末をするから、そんなに多くのポケットを
必要とはしない訳で、なにからなにまで一人でまかなう、俺みたいな自転車操業の猟には向かない。


エリザベス女王、エジンバラ公、チャールズ皇太子それぞれの
三つの英国王室の紋章を戴いているのはバブァーだけで
これだけとってみてもかなりエライのである。
さらにエライのは永久保証書が付いていて、死ぬまでっていうか
孫子の代まで、補修やオイル加工など面倒見てくれるのだ。
だが、我が家の評判は、まったくと言って良くない。
オイルド加工独特のテカリ方が、小汚く見えるらしく
「ホームレスのおじさんみたいで貧乏くさいっていうか、臭そう」と言われている。
まぁ、そんな俺は魚を求めて歩く川原乞食なんだからしょうがないけど。

ちなみに俺が飼っている英国皇室ご用達のイギリスポインターの正しい使い方。
イギリスの貴族、王族たちは、犬の面倒を見る専門の徒人がいて
何10頭という犬を飼っているらしい。
その中から、5、6頭づつ引き出し、ローテーションを組みながら使役するらしい。
おれんちの犬は一匹だけで90日間毎日、コキ使われるのを考えれば
「生れ落ちた所を恨んでください」ってしか、銀ちゃんに言えないなぁ。

お狩り場にも、フィールドキーパーという専門の徒人がいて
獲物の適性頭数を管理しているらしい。
そんな、だたぴっろい原野を7、8頭のポインターで
波状攻撃のように狩り込んで行く。
英ポインターは獲物が隠れているブッシュなどの手前で、ガッチリとポイントする。
他の探しそびれた犬たちは、バッキングといって
ポイントした犬に敬意を払って、その犬の後ろで微動だにせず
ポイント姿勢をとるまでが、ポインターのお仕事だ。

あとは従人が鞭や枝などで獲物を飛び立たせ、そこを主人が撃ち落し
落とした獲物は、ラブラドールレトリーバーやゴールデンレトリバーの
回収犬が捜索し獲物を運んでくるのが、ハンティングの正しい行い方らしい。
だから、俺みたいに何から何まで銀ちゃん頼りのハンティングは
厳密にはハンティングとは言わない、ただのキジ撃ちと言うのが正しい。
なので俺の事はハンターとも言わない、テッポウブチと言うのが正しい呼称だ。

ちなみに米国では、四足の猛獣狩りをハンターと呼び
俺みたいなヤマドリ撃ちは、アップランダーと言うらしい。
鴨撃ちは何てぇかと言うと、ウオーターファウラーと言うらしい。
という訳で、今となってはエアーライフルと散弾銃猟を両方ともと
考えると考えると、まったく出番が無いポケット不足のビデイルは
やっぱり、サクラマス釣りの時しか活躍の場が無い。








SAFTBAK
次のシーズンから、犬を使っての散弾銃を始めたのだが
その頃のドシロウトなオレは猟装には赤色が入ってなきゃダメかなと思い
地元の鉄砲屋で赤系統の色が入った猟装を探して見たが
どれもこれもデザインが悪いし、値段の割には出来が悪いので
どうしようかなと買い留まっていた。
そこで「困った時のYAHOO頼み」で、検索していたら
ヤフーオークションで探してみるっていう手があった。
さっそく検索してみると、有るは有るはで
いろんなハンティングジャケットが出品されてあった。
どうやら、都会の若者たちの間では「アメカジ」という
ファッションのカテゴリーの中の一つのアイテムとして
あえて街の中で着こなすハンティングジャケットという
ファッションが確立しているようだった。



その中から、まずは手ごろな米国製のSOFTBAKというジャケットを買ってみた。
ちなみに落札価格は5000円だった。
1960年頃の、ちょいビンテージ品だそうだが
オレには、そんなもったいぶった話はいらない。
とりあえず、猟に使用できればいいのだ。
着心地はいいのだが、ちょいビンテージだけあって
獲物を入れるバックポケットの内側の
血漏れ滲み対策のゴムのコーティングが劣化して
ボロボロと剥げ落ちて来るのには閉口した。
そんなこのジャケット、今は銀ちゃんの小屋の敷物になっている。








YOREYORE
次に買ったのが中国製の新品同様品で、いっけん立派に見えたのだが。
泥足の銀ちゃんと戯れて遊んだので、洗濯機にほおり込んだら
一発でヨレヨレになってしまい
見るも無残なボロキレ・ヨレヨレ状態になってしまった。
ちなみに価格は3000円。



よく巷で言われる「安物買いの銭失い」の典型的な買い物だった。
来シーズンの冬、銀ちゃんの敷物になる予定だ。




FILSON
次にチョイとおごって買ったのが、フィルソンのオイルドハンティングジャケット。
安物買いに懲りていたので、新品で19800円スタートで
オークションに出品していたのを、始まり値のまま誰とも競合せずに
そのままの価格で落札した。



デザインといい、機能性といい、透湿性といい、なかなかのものだ。
が、フィルソンのオイルドジャケット独特のオイルの匂いが
鼻に付き、どうにもこらえ切れないっていうか、頭が痛くなる。
だからドライクリーニングに出して、オイル抜きをしてもらい
撥水加工してもらった。

実際にハンティングに使用してみると
前に大小のポケットが3個あるが、下の大きなポケットは
2重になっていて、脱包したカートリッジと
未使用カートリッジを分けて入れておくのには便利だ。



更に弾を入れておく専用のカートリッジ差しのポケットが
両方の胸下に2個あり、合計10発の弾を整然と並べられ
外部からもそのカートリッジが見えないので二重丸だが
その収納数が少ないので鳥撃ちには使えないので
鹿の巻き狩りの時と、今は銀ちゃんのお散歩用と
山菜とキノコ採りの時に使っている。

シャレでクラブに、これを着ていったら
「馬に乗って来たの?」とか「カッコいいっすね」とか
若者たちのウケがミョウにいいので、ミッドナイトカウボーイを気取り
夜の町で着ることにしている。



それと、キレイなオネェさんがいるスナックやバーに着ていくと
「その赤いジャケット、もしかしてテッポウブチがぁ?
おらの爺ちゃんが雉撃ちの時、着ているのにてんなぁ」と
キレイなオネェちゃんや、そうでないオネェちゃんによく言われる。
それは、盛岡の夜の町で働いている、おネェちゃん達は
岩手や秋田の山奥から都市にあこがれて、稼ぎに出ている娘が多い。
だから彼女らの小さい頃、テッポウブチは当たり前に
身の回りに居たわけなので、猟話のとおりは至って早いのだ。
なのでヤマドリ猟のディープな話をしても完璧に付いてこられるので
おおいに話は盛り上りアルコールも進み
「お店が終わったら飯でも食いに行こう」なんて言う話に
なんかなったりして、お財布はえらく軽くなるのだった。
そんなフィルソンはシャレ込みようのジャケットになってしまった。




CARHARTT
フィルソンのオイルドジャケットに満足していたが
その頃はもっぱらキジ撃ちばかりだったので
汗をかくまでの運動量じゃなかったので
もっと保温性が高いジャケットが欲しいなと思った。
お次はハンティングジャケットの世界では、フィルソンと双壁をなす
カーハートのハンティングジャケットを
YAHOOのオークションで24000円で落札した。



ナゼこれにしたかと言えば、裏にネルが張ってあり
フィルソンの一枚仕立てのジャケットより保温性が高そうだし
俺が考えていたポケットの大きさと数が一致したからである。
それは、右下のポケットには脱砲したカートリッジを貯めておくところ。
左下のポケットは、ハンティングナイフと犬の救急薬一式と
レミントンM870用の修理ドライバーを入れておく。
右上の大きなポケットには犬の引き綱とラバーグローブ。
左上の大きなポケットには、双眼鏡とトレーニングプロポ。
内側のポケットには、猟銃等所有許可書と狩猟許可証。
着脱式のバックポケットには、ビニール袋とロープでポケット。
惜しい事にカートリッジホルダーポケットが無いのが、唯一の欠点。
これは弾帯をする事でカバー。
実は人生初めてのヤマドリを撃ち落したとき着ていたのは、このジャケット。
カーハートのジャケットで猟装選びは終わったなと思った。



実際に平野を歩くキジ猟で使ってみると、その保温性の高さから
寒気を感じる事はまったく無く、ありがたかったが
この頃からヤマドリ猟に本格的に目覚め、平野から山岳地帯へと猟場が変わって行った。
そんな猟場は急な沢を登ったり降りたりで、運動量の多さから逆に暑くて汗をかき
体温が奪われ風邪を引いたりしたので
下着の替えは必需品として持ってなきゃならなかった。

キジ・ヤマドリ猟が終わって1月15日過ぎ
これを着て猟野を歩くと、鴨がどうも俺を嫌って
飛んで行くような気がしてならなかった。
ひょっとしたら前後に大きく蛍光橙色の入ったジャケットを
着ているせいかなと思い、車に積んであった
濃いベージュ色のウインドブレーカーを
ハンティングジャケットの上に、羽織ってカモ猟を続けてみたら
やはり鴨の警戒が薄くなり撃ちやすくなって猟果も伸びた。
だから、そのとき以来カーハートのジャケットはハンティングに着なくなってしまった。
それにこのジャケットは、蛍光オレンジの色の入り方が半端じゃなく多い。
だから夜間パトロール隊や児童保護委員に間違えられるのも嫌なので
夜の町にも着ていけないから、今はタンスの肥やしだ。 



黒ジャヶ
という事で、ハンティングジャケットには赤色の入っていない
地味な色合いのモノが良いなと、この時点で結論付けた。
という事で、オークションをのぞいていたら
黒色のハンティングジャケッが出品してたので
始まり値のまま8000円で落札してみた。



さっそく、これを着て北上川の鴨狙いに出かけてみた。
ななな〜んと、鴨が高度を上げて避けていくんじゃあーりませんか。
って、よ〜く考えてみたら回りは、ススキの枯れ木立で
地面には雪が積もり、どう見ても薄色の冬景色。
そんなかで、黒い濃い色がポツンと動き回っていたら目立つ事
このうえなかったのだな。
なので黒色は逆の意味で目立つ色なのであった。
買ってしまったのは仕方がないので
タンスの肥やしにするのは悔しいから
普段着のジャケットととして、むりやり着用している。




OTAKU
またまたオークションをのぞいていると、赤色が入っていない
濃いベージュのハンティングジャケットが出ていたので
後先考えずに4500円で落札。



ここまで来ると、オレはハンティングジャケットおたくか?
そんなオークションに、ハマリにハマってしまっている自分に呆れてしまった。
このジャケット、画像を見る限りではフィルソンの分厚い生地に見えていたが
実際に送らさって来たのを手に取ると、ヘナヘナの生地で頼りが無いモノだった。
ヤッパリそれ相当のお金を出さなきゃ、良いものは手に入らないのだなぁと
またまた実感し、これからは有名ブランド以外のものには手を出さない事にした。



FILSON

とうことで、失敗を繰り返して、ようやくオレの目指している
ハンティングジャケットの条件は整ったので
この条件に合うモノを探す為「ハンティングジャケット・カーハート
フィルソン」とオークションのアラートに入れておいてウオッチした。
前に買ったフィルソンのオイルドンジャケットとは
機能がまったく違うのオイルドハンティングジャケットが
5000円スタートで出品になった。
それも色合いが、濃い目のベージュで冬のカモフラージュには
ピッタシのカラーだ。
これはユーズドだったが、新品に近い状態のこのジャケットは
値がドンドン吊り上がり、最終的には18500円まで上がっちまいやがったが
きっちりと落札してやった。


なまら使い込んだ一品

届いたハンティングジャケット、柔道着のような生地の厚さは
総重量2キロをかるく越えて2.2キロもある超重量級だ。
これまたフィルソン独特のオイルの匂いがして
どうにも我慢がならないので、またしてもドライクリーニングに
すぐにだしてオイル抜きをし、防水加工をしてもらった。
このハンティングジャケットは、前に大小のポケットが3個あるが
更に弾を入れておく専用のカートリッジ差しのポケットが
両方の胸下に2個あり、その合計は14発の弾を整然と並べられ
その弾が踊る事もないスグレモノのジャケットだ。



カモ猟には足りないが、ヤマドリ猟には必要にして充分で
このジャケットにしてから、弾帯を締める事が無くなった。
だから腰周りが大変楽になったし、腰に締めた弾帯から
カートリッジがポロンと抜け落ちる事故が、たまにあったのだが
そんな心配事も、これで解消された。
まぁその分、ジャケットが重くなったのはしょうがないが
着こんじゃえば案外苦にならないものだった。
このジャケットを居間に脱ぎ捨てていたのを持ったバアチャンは
「こんなに重い服を着て山を歩き回るとは、ご苦労さんなこって」
と呆れて言った。
ちなみに、この時の全装備の総重量は3、5kg。



更に、このジャケットのナマラあずましいのは
左の前身ごろが2重になっていて
そのままバックポケットと一体となっている点だ。
だから、双眼鏡とか色んな物をホイホイと入れておける。
試しにリールと、竿をセットしたカモキャッチャーと
双眼鏡と、距離計を入れてみたがゼンゼンOKで
お昼の弁当と水筒までも入る。
まるでドラエモンのポケット並みの収容力にぶったまげた。
撃ち獲った獲物も前身ごろの入り口から入れることが出来るので
いちいち脱がなくても獲物を収容できるって言う点でも優れている。

このジャケットを着て猟中に鹿に出会ったら
一発ぶっ放そうと思って、6粒弾を5個
カートリッジポケットに差しておいたのだが
なぜかこのカートリッジから火薬がジャリジャリと知らないうちに漏れ
それがジャケットの生地に擦り込まさって真っ黒になってしまった。
猟期終了とともにクリーニング出したが
クリーニング不能と言う事で、キレイにならなかったのは大変悔しい。



猟期中87日間こればっかり着ていたせいか擦り切れ部分も出来てきた。
やっぱり、生地が厚くゴワゴワしているせいなのか
しわが寄って畝になった部分が、イバラのブッシュとか枝との摩擦で弱ってしまった。
だから、このジャケットにはオイルド加工した方が
摩擦抵抗が少なくなって、擦り切れは少なく済むと思ったので
今は嫌な匂いのしないっていうか、好きな匂いのミンクオイルを
たっぷりと刷り込んでオイルド加工としているが
このオイル塗り作業が、これまた大変な仕事で、たっぷり3時間は掛かる作業である。



こいつにエラク惚れてしまったオラは、新品同様で同じサイズのジャケットが
一年後にオークションに出品になった。
だから一撃必殺2万円で落札して、さらにもう一着ゲットし
スペアーに取って置く事にしたくらいの、オレ一押しのジャケットだ。


オイルの匂いが強烈な新品


このジャケットを買ってしまったものの、持て余してしまい
オークションに出品し処分した方々のように
このジャケットはアメカジのファッションアイテムにはウルトラヘビーすぎて
シティー派のワードロープの一つにはなりきれない、ゴワゴワのジャケットなのだ。
狩りに使うのでなければ、カーハートのジャケットもしくは
バブアーのジャケットを、黙って買ったほうが絶対にいいと思う。



ハンティングパンツ


フィルソンではハンティングパンツもラインアップしていたので買ってみた。
これまた、分厚い生地で出来ていて、慣れないうちは小股が擦り切れそうになる違和感がある。
着たきりスズメの俺の性分で、洗濯無しにワンシーズン履きこんでも
ヒザカブの部分がボコンと出て、くの字にならないのには驚きもののへービーデューティー仕様だ。
だから一年を通して愛用するほどの、お気に入りのパンツだ。
それに、アーリーアメリカンを感じさせる小物、サスペンダーでの使用できるように
ボタンが6ヶ腰周りに付いているディティールにも泣かせる。
ちなみに、このパンツの正式名称はシングルティンパンツと言うらしい。




シングルと言ったら、ダブルもあるのかと思って
しばらくYAHOOのオークションをウオッチしていたら
ダブルティンパンツと言うのが出品になっていた。
これの説明によると、股下からの部分が二枚仕立てのズボンの事を言うらしい。
獲物を追いかけてイバラなどのブッシュを、ものともせず漕ぎ分けていく
ハンティングブッシュパンツ仕様だな、これは。



フィルソンにはダブルマッキーノという、赤と黒の格子柄で
二枚仕立ての、これまたウルトラヘビーのウールジャケットが有名なのだが
それのパンツ版みたいなもので、シングルティンパンツでもゴワついているのに
この生地で二枚仕立てにしたダブルティンパンツは、更にゴワ付いている
なんてもんじゃなく、ガキンガキンのパンツだ。
買ったばっかりのこのパンツの足の部分を
丸く広げて立ててみると、そのまんまの状態で
自立してしまうんじゃないかというほどの硬さだ。
ちなみに米国では、スタンダップパンツと言った方が通りが良いパンツなそうだ。


二枚仕立てがお分かりかな

当然、股は擦り切れて大事なキャン玉袋を痛めてしまうので
買ってから10回ほど洗濯してから履くのが常道なのだそうだ。
そんなこのパンツの重量は1,1kgもある。
ちなみに現在では、生産中止になってしまったパンツなのだ。



おニューのフィルソンの自立ジャケットと右は3年フル使用クタクタのジャケット


これぞ、スタンダップフィルソンの極み
笑っちゃうくらい固いので着こなすのが辛い。
さらに、塗りこんであるオイルが臭い。
家の中に持ち込むと、家族のヒンシュク買うこと請け合いだ。



カベラスのハンティングブッシュパンツ

これは頑強な420デニールのナイロンを、アウターとして縫合した
ハンティングブッシュパンツと言って、引き裂き強度も高いし防水性も高い。
それに汚れに強いし、なんたってあまりゴワつかないのがいい。
このパンツの出現で、機能的に負けてしまう分厚い綿を二重にしたダブルティンパンツが
製造中止になってしまったのは分かるような気が知る。

でも、このダブルティンパンツを現代版のハンティングパンツと
比べる事自体が間違っているような気がしないでもない。
思い入れと思い込みを持って、このパンツを履きこなすもカッコイイと思うのは俺だけか。
と言うことで、このフィルソンのパンツもエラク気に入ってしまい
シングルティン2本とダブルティン1本集めてしまった。


ボタンフライの社会の窓も泣かせるダブルティン




子づくり村

銀ちゃんの活躍ぶりをっていうか、銀の自慢話を毎度聞かされている高さん。
ここんちで代々飼われ続けている実猟系の血統を
30年間受け継ぐビスちゃんに発情が来て
いの一番に白羽の矢が立ったのが銀ちゃん。
種付け候補の筆頭にあがった。

さっそく日取りを決め、初体験の段取りを整えた。
銀ちゃんも初体験なら、ビスちゃんも初めての体験。
初体験どうしで、うまくいくのかチョト心配。
って、人間も早くイっちまったなんてのは別にして、結構うまくいくもんだから
原始の野生を切らしてない犬なら、モット上手くいくはずだ。
って、俺の初体験を喋ってどうする。

犬にも女顔男顔があって、その中でもハンサム、美人ってのもある。
銀ちゃんはお世辞にもハンサムとは言えないが
長州力(小力じゃないからね)とか、蝶野タイプだと言える。
ワイルド派の男の価値は、顔じゃね〜よ仕事だよって感じかな。
ビスちゃんはと言えば、色白の美人タイプの犬だ。
だから美女と野獣のこのお二人、果たして馬は合うのか?
じゃなく犬は合うのか。
前に何回か会ってはいる幼なじみだから、たぶん大丈夫であろう。
 
朝7時、高さんからのケータイで「まだ来ないのか」の催促。
「今そちらに向かってます」なんて、蕎麦屋の出前のような
トボケた返事でかえし、ビスちゃんの家に向かった。
今日の朝はといえば、ザンザン降りの雨模様。
雨降って地固まるって、言うじゃないですか。
この良き日、お日柄がよろしいようで。

さて御対面のご両人、銀ちゃんはと言えば
お下品にもビスちゃんの、オマタの匂いをクンクン。
ビスちゃんは「フン、お下品な殿方ネ」と言ったか言わないかは分からないが
無関心を装っている。
これまた、お高く自分を売っている人間の女みたいで失笑だが
こんな女に限って、あっちの方は激しいとは世間一般のジョーシキだ。
はてさて、フカフカのお布団ならぬフカフカの行者ニンニク畑で
コトはおこなはれることになった。


これまた美しい姿でございます。

ヴィスちゃんに軽く前戯を施した銀、いよいよSAT。
体位はもちろんドッグスタイルだ。
が、ビスちゃんは「そんなに急いじゃイヤッ」と言ったか言わないか
尾っぽを股に挟んで、蓋をして拒否。
ここで銀ちゃん、慌てず騒がず紳士的な作戦に出た。
さっさとマウンティングを解いて、おもむろに畑の隅に行き
長々とショーベンをして、一呼吸おいた。
そしてビスちゃんの耳元でピロートークを交えながら
ペロペロと体中を舐め回し、ペットだけに懇親のペッティング。
これで心を開いたか、ビスちゃん。
次のマウンティングには尻尾を横にずらしてウエルカム。
さすがです銀ちゃん、女の扱い心得てます。
こうして無事に合体。
勢いよく腰をミシンのようにグラインドさせた銀ちゃん若気の至り。
勢いあまって画像のとおり後ろにズリ落ちて
ビスちゃんのウンコ状態になったのには、全米が笑った。
それでもこんな状態でも、ガッチリと結合したまんまだから
痛さのあまりギャインギャインと鳴いたビスちゃんは処女ですから。


あまりの痛さにテンパっているヴィスちゃんとウンコ銀

そういえば、俺がちっちゃい頃の昔々の話
町内の犬は、ほとんどが放し飼いでそこらへんにフツーに居たものだった。
そんな犬たちに春が来れば、そこらへんでヤラカシていて
それに水を掛けたり、柴でペシペシと大人も子供もカラかっていたものだ。
それでも離れない犬の細っこいチンポの根元にはビックリするほどの
大きな亀さんの頭が付いていて、コレが雌犬の中に入って充血して
更に大きくなるからメスの狭い入り口がストッパーの役目をし
オス犬の興奮が収まらない限りは抜けないようになっている。
なんでそうなるのかと言う理由は分からないが
犬だからとしか答えは無い。
まっ、そんな抜けない話に理由を付けてもしょうがない。

その後はお互いおケツ付き合わせるような体位に移り
子作りも終盤を迎えるのである。
こんな変則体位、人間だったらチンポの根元が折れてしまうと思うのだが
高さんの話によれば、犬のチンポの根元は180度折れ曲がるように
チョウツガイのようなものが付いているのだそうだ。

10分くらい経って、ようやく血が引けた御両人は離れたのだが
それからの銀ちゃんはビスちゃんの体を優しくナメナメして
アフターフォローをちゃんと入れてます。完璧です。。
こりゃ稀代の竿師の素質を感じます。
こうして一回目の子作りタイムは終了。
次回は一日置いて2回目の子作りで、完全受胎を目指します。

62日後、無事に赤ちゃんが生まれるといいですねぇ。

ヴィスちゃん、想像妊娠でした。
次のチャンスに期待です。
でも、銀ちゃんはあれ以来チャラチャラした部分がなくなって
いかにも大人の男という感じで、落ち着きを払ってどっしりとした風格さえ漂っています。
私くしめも50を過ぎたので、身ならわなけらばと思うとります。











またまた、狩猟の季節がやって来た。

狩猟解禁初日は、誰にも邪魔されずに自分の思ったとおりに
愛犬を動かしながら、っていうか愛犬の邪魔をせずに付いて行き
誰にも邪魔されずに、自分自身納得できる猟がしたいと思っていたから
知り合いには声を掛けず、ひとりダンマリを決め込み
来たる日のために思いを貯め込んでいたのだ。
って、いうか
オイラは「なにごとも早く済ます」っていうのが身上だ。

だから、目覚まし時計が鳴る前に起きる。
ご飯を食べる前に、歯を磨く。
ホットサンドが焼ける前に、おかずを食っちまう。
お茶を煮出す前に、お湯を飲む。
糞をする前に紙で拭く、ってのはサスガに無いが
とにかく、先へ先へと事柄を進めないと落ち着かないのである。

料理を作る時でも、フライ返し等の道具や鍋などの洗い物は
料理を作りながら、平行してドンドン洗って行くし
料理を食べ終わった皿なども、間髪いれずにドンドン洗って行く。
それはある種、職業病かもしれない。

そんな早い昔の話で一席。
って、皆さん期待の早漏の話しじゃないからね、釣りの話し。

店で一緒に働いてもらっていた釣り友達の花さんと
「来週は鷹高川の天然ヤマメを狙いに行こうぜ」と
厨房でヤマメ釣り話しに盛り上がり
「じゃぁ、明日の朝6時に迎えに行くから」と
県南の沿岸河川にヤマメ釣りに行く約束をした。

その頃は、一応ランチなんていう事もやっていたので
一週間に一度の貴重な休みは、岩手県と言わず秋田県もふくめて
一度行った川には二度と行かないというポリシーのもと
いろんな川を歩き回ったもんだ。

で、その日は大変待ちどうしくて、ワクワクウキウキ気分で床に就く。
が、やっぱりウレシクテ嬉しくて、これまた早くに目がパチッと覚めちまうんだな。
それが約束した時間の2時間前の朝4時。

俺的にはゼンゼン問題が無いのだが
幾らなんでも2時間前に行たんじゃ申し訳ないと思い
床の中でモンモンとマンジリともせず、時間が経つのを待つ。
1時間前なら大丈夫だろうと布団を蹴って、花さんの家に行ったわけ。

寝首をカカレタのがシャクに障ったのか
とてつもなく不機嫌でというより怒った顔で
「何時だと思ってる、早すぎるっ!」と、怒られたわけ。

オイラはビックリしたね。
何を言っても、カラかっても怒らない「仏の花さん」が
マジで怒っていたもんだから。

まぁ結局は40分くらい待たされて出発となったんだが
釣り場に急ぐ車中で「俺は低血圧で起きるのが滅茶苦茶弱い
だから、約束した時間より早く来られると困るからね」と
穏やかに言った。

そして、間を暫く置いてから意を決したようにっていうか観念したように言った。
「知っているように、俺は痔持ちだから朝のウンコタイムは
なるべく血を出さないように、気張らないように慎重に
神経をすり減らしながらするから時間が掛かる。
だから、その貴重なウンコタイムを削られると
いつなんどき便意をもようすかと思うと
ゾッとして一日の行動が出来なくなるから、頼むね」と言った。

「そんなにヒドイ痔なんだ」と言ったらコクリとうなずき
「俺の痔は痔は痔でも痔ろうというヤツで、肛門の周りに
更に穴が開いて、直腸と貫通しているくらいヤバイ痔なんだ」と言った。

本人の名誉のために言っとくが、現在は大手術を経て治ったらしいが
20年前くらいの話しだから、またぶり返しているのかもしれない。

それがトラウマになったのかどうかは知らないが
ヒトとの待ち合わせは、どうも苦手なのだ。
だから、単独猟が多い。

さてさて、やって来ました解禁日。
朝5時には起きる予定のはずだったが
昨晩は妙なテンションで寝付けず、浅い眠りだったのか寝起きは最悪。

だから目覚まし時計で一度は5時に目を覚ますのには覚ましたのだが
脳みそが開店せずに又寝てしまい、結局起きたのは7時という
初猟初日から遅刻という事にになっちまったという羽目になった。

昨晩、俺の店によく来てくれて
今では弟にみたいに思っいる、お客様である雉雄くんが
「僕、結局ヒヨちゃんと別れることにしました」という話から
始まった、浅き眠りのお話。

この話の発端は、ちょうど一年位い前になるのかなぁ。
(はやいなぁもう、一年は。)

いつも「僕、今年はまだ童貞なんです」というキャッチーなフレーズで
店のカウンターを盛り上げてくれる雉雄ちゃん。
会社の飲み会で意気投合した定年間近のオバちゃんから
「あんたにピッタシな、ロックな娘がいるから会ってみないか」と言われたんです
と、その飲み会の帰りに、ニコニコ顔で店の扉を開けて
カウンターのいつもの席に座ったのだった。

はてさて、今年の童貞破りになるのだろうかという話。

で、その話はトントントン拍子に進み、3日もしないうちに
定年間近のオバちゃんの計らいで初デートに
難なくこぎつけたのだった。

赤レンガがグランドマークの銀行の前で待ち合わせ。
そのあと、俺の店でカクテルなんぞ飲みながら、初デートする事になった。

そんな初デートの夜に現われた御両人。
雉雄くんは背はチッコイが、チンコはデカイというのが自慢だが
そんな彼以上に背がチッコイ娘を連れてきたのだった。

気になる御面相だが、吊り上り気味の切れ長でキリリとした目と
顎がシャープで小さな顔が、子狐っぽい印象的な顔だ。

そうだなぁ、落ち着いた柄の着物を着させ帯をキリリと締めあげてて
目元をキリリとしめたアイラインなんか入れたりして
その目の輪郭にアイシャドーをグラデーションっぽく入れる。
そしてアップに結った後れ毛なんかのスソからのぞくウナジに
思わずゾクッとするようなイイ女になりそうな
下地は整っているので、育てがいがあるっていうか
いじりガイのあるような娘にマスターの目には映った。

雉雄ちゃんから相手の娘の歳を聞いていた。
だから、年上だとは知ってはいたが
歳を感じさせない雰囲気はある「残りもには福があるのか」的な娘だった。

年からすると、想像してたよりよりイイ娘だったので
気分がヒジョーにいい雉雄ちゃんは
調子に乗ってウーロンハイをグビグビとハイピッチであおった。
酔いが急に回りすぎたのか、漢としての勢いがあまったのか
カウンターの椅子から、ガタンと落ちそうになった。

その時「大丈夫」と雉雄くんの顔を覗き込んだヒヨちゃんの仕草をみたマスターは
「なんとなく気持ちもイイ子じゃないの」なんて、ちょこっと思ったりもした。

「11時には帰らないと」うぶな女の子が言うような台詞を言う
かまととヒヨちゃんを送ってから、舞い戻ってきた雉雄くんは自信たっぷりと言った。
「マスター、どうですかあの子、俺より一つ上の32歳って言ってましたけど」と。

マスターは言った。
「32歳かぁ、そうは見えないなぁ
宝くじに当たったようなもんじゃないかと言えるなぁ」と
大盤振る舞いの誉め言葉を言った。

でも本当のところは「ちょっと釣り上がり気味の目が
サゲマンのような気もしないのではないのだがねぇ」
とも思ったりもしたのだが。

さらに雉雄くんは言った。
赤レンガの銀行前の交差点を渡ろうとした時
「あの娘だったらイイナぁ」と思いながら
「赤信号が早く青にならないかなぁ」と、心の中で強く思っていたらしい。
だから、マスターの誉め言葉を聞くまでも無く
心の中で「ヤッター」と叫び、直感でこの娘しかないと思い込んだらしい。

それに、なんたって「今年はまだ童貞なんです」の雉雄くんだから
「穴があれば何でもいい」とは思ってはないだろうが
もはや結婚という言葉さえ出てきそうな勢いではあった。

会って3日もしないうちに「やりました」って言う報告をもらったマスターは思った。
32歳の出遅れ女と、31歳高学歴家付き男の利害関係は一致したのかね、と。
それにしたも早い合体だネェと思った。

でも、その内容が大変面白かった。

「脱がしたら、足が短いし怪獣みたいな足でした」と
日ごろ、デブは社会から抹殺的な意見を述べる
ジムに通ってエアロビクスで体を絞っている雉雄くんは
チョとげんなりしたらしいが
チンコはビンビンだったらしいってぇのが若者らしくて
たいへんよろしいじゃ御座いませんか。。

でも、でかいティンコが自慢の雉雄くんに対してヒヨちゃんは
あんたのティンコよりデカイ男とホテルに行った事があると言ったらしい。
そして、いざSEXに突入の段階で、あまりにも太くてでかい一物に恐れ戦いて
思わず腰を引いて拒否したって事も有るとか無いとかっていう話をしたらしい。

せっかく雉雄ちゃんがチンコ自慢しているのに「でかいわねぇ、素敵」の一言でも
言ってやれねぇのかよヒヨちゃんと、マスターは思ったりなんかしたりしたが
喧嘩両成敗じゃないけど、どっちもどっちイイ勝負だなと思ったマスターではあった。

それにしても、今まで何人と寝たとか、不倫を何回してきたとか、、、、。
合体初夜にして、そんなヤリ自慢話大会だったそうだ。
って、これから結婚する予定も考えられるカップルがする話かい。

それからもう毎日となく雉雄くんちに来ているヒヨちゃんだが
セックスもマンネリにならないくらい上手いらしくて
あの手この手を使うテクニシャンなヒヨちゃん、らしい。
特に、フリスクを含んだお口での、フェラーりは絶品らしい。

さらに、事あるごとに「僕はエムなんです」と言っている雉雄くんで
攻められるの大好きときて、ヒヨちゃんはドエスと来たもんだ。

なんと最強な利害関係が、良くもまぁ一致したもんだと
えらくマスターは感心したのだった。

雉雄くんカップルは、やった後かコレからかは分からないが
二人して飲みに来るようになった。

でも、付き合い始めて3ヶ月も経たないうちに
ヒヨちゃんの甘やかしっ子でワガママで理不尽な性格と
誤変換だらけの脳みそに、このまま付き合ってもイイのだろうかと
心配になって来た雉雄くんが東京に出張した日の晩
会社の飲み会の帰りだというヒヨちゃんが一人で、マスターの店に飲みに来た。

ちょうど時間がかかる料理を作らなくちゃいけないオーダーを抱えていたので
厨房の脇にあるカウンター椅子に腰掛けてもらって
ちょっとイカレタ発言を漏らすヒヨちゃんの
雉雄くんに対する思いの本当のところを探ってみようと思った。

どうしてそうゆう事をしたかと言うと
それは、なんかこの頃付き合い初めのような勢いが無くなって
ヒヨちゃんの話をする時に、沈んだ顔さえするようになった雉雄ちゃんに
このまま結婚を進めてもいいものか
それとも止めた方がいいかの助言を決めるためにも
それを計るためにジワリジワリとヒヨちゃんに誘導尋問をしてみた。

こんな店でも30年近くやっていると
親しい常連さんの縁を、うまく結びつけたカップルも何件かはある。
そのほとんどの場合、なかなか女を落とせなくて困っている場合が多い。
「結婚しても良いのだろうかとか」と、煮え切らないでいる女には
こう言って結婚話を煮切るのだ。
「男にも好かれる奴や、惚れられる○○君のような男はね
あんたの結婚相手として間違いないと思うけどなぁ」と。

でも、本当に今の彼女で結婚を勧めるには、事前の審査がいる。
だからマスターが工作員となって、女の正体を見極めるのだ。
それは酒の魔力を使った誘導尋問に合格した女だけで
そん時は、親しい常連さんに結婚を強く勧め
合体させるのだ。

そんな、くっ付け話を幾つか扱ってきた仲で
「コレは上手く行くな」というカップルもあったし
「結婚しても駄目だろうな」というカップルも多々いた。
そういう悪い気配がある場合は、何気なくサラッと
結婚に対して否定的な意見を述べてあげるが
あまり深追いをするような事は言わない。

なぜって?それは熱くなっている男ってもんは
熱く熱した石の上にジュッと小便を掛けるようなモンで
何を言っても無駄だからである。

かえって反対すればするほど燃え上がってしまうのが
男の性っていうもんだ。

精神的に的に「3歳児なみの駄々っ子」らしいヒヨちゃんで
家の中では暴君のように振舞う「内弁慶」らしいヒヨちゃん。

そんでもって母親がベッタリと娘に干渉して
生理日まで管理しているらしいオカンがいるヒヨちゃん。

そんなオカンにベッタリとくっ付いているパラサイターらしいヒヨちゃん。

高学歴な雉雄くんに大乗り気で、自分が結婚するような勢いで
さも宝物でも扱うように、散らし寿司なんか作ったりなんかして
雉雄君の部屋まで一時間も掛けて付け届けを繰り返しているらしい
必死なヒヨちゃんの母君。
と、それを許している、他力本願なヒヨちゃん。

雉雄くんをゴルフの練習場に連れて行き、やさしい親を自己演出して
あわよくば婿養子にしちゃえっていう魂胆が見え見えらしい
痛〜いヒヨちゃんのパパ。
と、お家断絶阻止を一身に請け負っているヒヨちゃん。

パパ、ママ、ご両人が、それぞれの思惑でグルグル回っているヒヨ家。

そんな重荷も背負っているヒヨちゃんに
カクテルを濃い目に作って飲ましつつ本音を探り
パンパンパンとフライパン振りつつ、ナイフをシャキンシャキンと操りつつ誘導尋問。

面と向かって対面で話をするより、料理を作る勢いそのままに話す方が
相手の口が滑りやすいってもんだ。

まずは、昔の彼女と今なお連絡を取り合っている雉雄くんの悪口話で
大いに盛り上げて置いてから、彼女の本心を探ってみると
「もともとは雉雄くんがあんまり好きでないと言うヒヨちゃん」

更に、アルコールを進めると
「実は私、社内不倫をしている」とヒヨちゃん、カクテルを更に勧めつつ
さらに突っ込むと「実は社内不倫、二股のヒヨちゃん」
つぅ事は三股?
はっきり言って「性豪ですなヒヨちゃん」と言ったら
自信たっぷりと首を縦に振った。
コレが噂の、やりまん自慢か。

と言うことで、今回の審査結果はモチロン×
今回のこの件については無かった事にしてあげましょうか、どうしましょ。


次の日、東京に出張に行っている雉雄くんから電話があった。
「もうアンタとは会わない、お別れね」と、ヒヨちゃんが言ってましたけど
「マスター、何か言いませんでした?」という内容だった。

散々、雉雄くんの悪く口を言い合いながら「この事は内緒ね」と
ヒヨちゃんから言ったくせに、アンタ自らブチこわしかい。

帰り際なんか「また、雉雄くん話で飲みましょうね」
とまで言っておきながら、ホンマにもう分からん女や。

「俺はしらないなぁ」と、スットボケて携帯電話を切った。

そして次の日、いつもよりドアを荒く開けて入って来た雉雄くん。
こりゃ、しらを切っても無駄だなぁと思った。
そんな雉雄くんは言った。
マスターに「家の財産を狙っている雉雄くんだ」と
言われてショックで、ヒヨちゃんは別れ話を切り出したらしい。

あのねぇ。

あんたんちも雉雄くんちも、どっちも親の経済状態がイイので
老後の心配は無いし、一緒になったら「一人口より二人口」といってね
経済的に楽になるから、二人で稼げばもっと楽な生活が出来るよね。
くらいにしか言ってないのに、いきなり誤変換もハナハダシイ財産目当ての結婚?

ハアァ?

それはヒヨちゃん一家の思惑「婿養子前提の結婚」に絡めての
被害妄想話じゃないのかい、とおもった。

そんな、あまりにも飛躍しすぎた話に唖然としたマスターだった。

今思えば「昔の彼女と連絡を取り合っている雉雄くんだ」と言ったのが
彼女のWindows98ワード並みの脳みそをグルグルと掻き乱したらしい。

それに「そんな事、承知の上で付き合っている」と言ってたくせに
第三者のマスターに言われて逆上し、暴走したと言うのが本当のところだろう。
コレが噂のヒヨちゃんの誤変換ってやつか。


ワカランなもう、糞たれっが。

結局のところコレって対抗心で、雉雄くんの愛情の深さを測る魂胆じゃね〜の?と
マスターは心の中で最終変換した。


あとコレは言おうか言うまいか迷ったが
コレを逃したら言う機会が無くなってしまうような気がしたので
「これから言う事は彼女の口から直接聞いた話で、脚色なしの話だから
冷静になって最後まで聞いてね」と、念を押してから雉雄くんに話をした。

「ヒヨちゃんに酒をガンガン勧めて、酔わしてから聞き出した事なんだけど
「社内不倫をしている」と言っていたぞ。
あの日、ウチに来る前に「や?会って来た」と言っていたぞ。
それに信じられんだろうが「社内のもう一人と二又不倫している」とも言っていたぞ、と。

こんな事を聞いた雉雄くんは狼狽してしまうだろうなと思ったが
「あぁ、それね、みんなウソ」と言った。
「えぇ、そんな事ないと思うけど、、、」とマスター。
「ヒヨちゃんはね、自分に自信がないから、虚勢を張って
そんな誰にでも分かるようなウソを付くんだよ」と言った。

まだモトカノと連絡取り合っている事と
今回の東京出張で、モトカノとSEXしてるんじゃないかという思い込みから出た
対抗意識全開の虚勢話だよと雉雄ちゃんは言った。

「ぇえぇっ、そ〜なの」と、半信半疑ながらも
力がヘナーと抜けていったマスターだった。

解析不能な、おんな。

それ以来、ヒヨちゃん一家は
「非道なマスターの店には行かせない」という宣言を出したらしい。
「おぅ、上等じゃネェか」とチョト怒り狂ったマスターではあったが
一家揃って誤変換ファミリーなのね。
と思ったら、バッカじゃね〜のと
カッカカと笑いがこみ上げて来たのだった。

雉雄くんは、そんなヒヨちゃんに少しでも自信を持たせようと
エアロビックスのジムに誘ったり、簡単な国家試験を受けさせたりしていたんだが
やはり無理っぽいヒヨちゃんに、雉雄くんの愛情は薄れていくのだった。

そんな経過報告だけは雉雄くんから逐一受けていたので
雉雄くんの心が日が経つにつれてドンドン冷えていくのが
手に取るように分かるのだった。

結局、相手の両親からも結婚の催促が強まれば強まるほど
心が離れていく雉雄くん。

しまいにゃ「ヒヨちゃんと一緒にいても寂しくなるのは何故だろう」とまで
言い始めた雉雄くん。

最終的には「いつ、私の姓を名乗るの」と
養子扱いにしたヒヨちゃん発言に雉雄くんが切れたのに発した具体的な別れ話だが
相手に期待をされれば、それに応えなくちゃと思っちゃう雉雄ちゃん。
その葛藤の中でモンモンとしている雉雄ちゃんを見るのが辛くもあったマスター。
結局、自分の中で葛藤しつつも解決するしかない話なのだがね。
と、ちょいと逃げこしのマスター。

雉雄ちゃんのオカンは「一点の曇りでもあるのなら結婚は止めとき」と言う言葉と
このまま、相手の家の期待に応える自分の苦しさとを天秤に量り
別かれる事を決意したってぇ事だたのだ。

12月に結婚の返事をするというのを
事もあろうに狩猟解禁前夜の11月14日に
マスターの店で「結婚破談」の宣言するのであった。

マスターの店で予行練習もしてからヒヨちゃんをマンションに呼び出して宣告。

あまりの事で逆上し飛び出していったヒヨちゃん。

ラチの明かないメールのヤリトリの末に
トチ狂ったヒヨちゃんは、雉雄くんが居るマスターの店に雪崩れ込んで来て
「アンタなんか最初から好きでも何でもないから
私の方からバイバイ」みたいな事を言って
さらに「私、本当はドエムなの」と言い放ちながら?
店から出て行ったのだった。

えっ、ドエスじゃなかったのね。
それって、どうゆう意味なんだろ?
ワカンネェ〜な。

でもそんなヒヨちゃんの精一杯いっぱい虚勢を張った態度だったんだなぁと
マスターの目には、悲しく映ったのだった。

そう思えたら、ちょびっこヒヨちゃんが不憫で
涙が止め処も無く溢れてきたって言う事にはなかった。

そして次の日と言う事は11月15日解禁日の夜
雉雄ちゃんがマスターのところに来て「今日の昼にヒヨちゃんのお父さんから
怒りの電話が職場まで来て「うちの子同然に接して来たのに、何で裏切るんだ」
みたいな事を言われたそうだ。
あのね、それって「ウチの養子になってくれると思っていたのに
何で逃げるんだ」と言う事だよねと、マスターは心の中で変換した。
ん〜この一件で、オイラの脳みその変換能力はパワーアップしたな。

「いいんだ、言いたいやつには言わしておけ、取り合うな」と、一言だけ雉雄くんに言った。

結局、ヒヨちゃんを再度呼び出して、穏やかに協議した結果
親父の暴走だと言う事が分かって、円満に別れ話が出来たとの事らしい。
「どうして納得させたの?」と、聞いたら
「結婚するには100%完璧じゃないと後悔するから
1%でも欠けていたら、俺には無理だし自信が無い」と言う事で納得してもらったそうだ。

「何で今まで結婚話を伸ばし伸ばしていたの」と聞いたら
「僕、相手に期待されると、その期待に応えようと頑張る性格だからですよ」と
雉雄くんは困った顔で、自己分析を語った。

最終的に聞いた相手に求める雉雄ちゃんの結婚観によると
「丁々発止に意見を戦わせられる知的で利発な手応えがある女」が
いいのだそうだ。

さすが、高学歴のドエム。

最後に「マスターの店で始まった恋は、マスターの店で終わったワケで
いい思い出になるか、苦い思い出になるのかは
これから、いい女に出会うか出会わないかだよ」
と、言って綺麗にまとめたマスターであった。

そんなこんなで理不尽なドタバタ劇の前夜だったので
眠りが浅く狩猟解禁からノレなかったマスターだったのだ。




綺麗どころよりも、ヤマ2羽

普段は9時過ぎじゃなきゃ目が覚めんのですが
猟が始まると、日の出前に嫌でも毎日目が覚めちまから
オイラの体は不思議です。
てっ、鮎釣りも同じようなモンですけどね。

解禁日のツマヅキが、ちょっと後が引き加減ではあるが
とりあえず、山に入らなきゃヤマドリは獲れんからな
と思いつつも、昨晩は綺麗どころのお客様に囲まれて
下心がない分ヘベレケベレ寸前まで飲んでしまい
11月15日解禁から2週間ぶりに
二日酔いで猟を休んでしまいました。

だいたいにして、毎日の山通いに体力が落ち始めてきていた頃でもあり
膝関節にも疲労が溜まってきていたので
丁度いいと言えば良かったかもしれない飲み曜日だったね。

銀ちゃんにもいい休養日になって
明日からの猟にリフレッシュになるだろう。
って、彼には そんなのかんけんけーねぇ 。

さて、一日置いての猟には大きな期待と、やる気はマンマンではあります。

今年は車での流し猟、ランニング&ポイントに磨きが掛かった銀ちゃんは
車の挙動を逐一確認しながらのギャロップで軽快に
林道を左右に振れながら臭いを感じ取りながら走って行きます。

大きな沢沿いに銀ちゃんの後を追いながら進んでいくと
銀親分、急ブレーキ。
そして杉林のスソでガッチリとポイント。
パキュンと車から降りたオイラは、銀ちゃんの後に付き挙銃体制を整える。

その時25m先の杉林の中の、羊歯が揺れたのを見たオイラは
遁走し始めた、ヤマドリを見つけるや否やバシッと銃を構え
躊躇せずにバンッと一発見舞い、あとはバタバタと転げ落ちるヤマドリ。
あまりの早い速射に、あぜん気味の銀ちゃんは我に帰り
転げ落ちてくるヤマドリを回収して、戻ってきた。

体が全然暖まっていない内に、ヤマドリをゲット。
お気楽でんな。
ラン&ガン。

その沢とは、対面にある別の沢に入ります。
途中何本かの実績のあるヤマドリ沢は無視してズンズン進んでいきます。
最後の車の反転地手前の小さな沢の入り口に差し掛かると
一瞬立ち止まり高鼻を使いウロウロし始めた銀親分。

コリャイケルかなと思ったが、すぐに認定動作を解いて
又林道に戻り走り出し、ターンポイントで車を反転し
今の来た道を戻る事にした。

先ほどの薄い臭いの有った沢に差し掛かると
またサササっと突っ込んで行ったが、それっきり姿が見えなくなった。
ん、こりゃ風向きの関係で臭いを完全に捕ったに違いないと思ったオイラは
パキュンと車から降りて、沢の入り口で挙銃体制を整えて待つ。

この瞬間は何事にも例えようのない緊張感と期待感で
体中にアドレナリンが回り始めるのである。
まもなくして、燃えるようなレンガ色の十字架が
すんごい勢いで沢を下ってきます。

コリャ速すぎて無理かなぁと思った瞬間、左に切れたヤマドリ。

アンタネェ、おいらの得意なレフトスイングに切れるとは
大した度胸だなと思いつつ、一発ぶっ放すとガクンと首が折れて落下。

一丁あがりてなもんで、ヤマドリ回収に走りますが
沢上から素っ飛んできた銀ちゃんも走ります。
競争です。
まっ、走り負けるのは分かっちゃいるけど走る走るオヤジ。

バタつくヤマドリをシッカリとくわえた銀ちゃん
持って来いの掛け声を掛けたが、なにをトチ狂ったか
そのまんま、ヤマドリを置いて戻って来た銀ちゃん。
???と思いつつ、ヤマドリを回収しに行ったオイラでした。

よしっ、この調子で次はあの沢だと、感が働くも
をっと、いけない、2羽定量でした。

その沢を車で降りて行くと、見覚えのあるワゴンが止まってます。
山窩衆の長と副長に違いありません。

車から降りると、やはり師匠と副長が向かいの沢からやって来ました。
その後ろには銀ちゃんの師匠、アイリッシュセターのバロン君が来ます。
そのお顔を見ると、すっかりと白くなって動作もゆったり
お歳を召されたようです。
好々爺って雰囲気が漂って、いい感じです。

「菊池くん、何羽獲った?」と、副長。
「定量で〜す」と元気よく、お返事。
「居なくなるよ〜、一羽にしとけ」と副長。

いつも一人猟なので、なかなか自分の写真を撮る機会がないので
写真を撮ってもらった。


隣が副長「一羽にしとけぇ」

車での別れ際「うらやましいなぁ」と師匠。
40年もヤマドリを獲って、もう飽き飽きして
微塵もそうは思っていないくせに
ホント、人を喜ばせるのがうまいんだから、師匠は。

2発発射で2羽定量。
俺にしては出来が良すぎ、っていうか快挙。

次の日、朝起きると銀ちゃんの小屋の周りは
べチャ糞で汚れてます。
更に小屋の入り口付近には吐いた跡もあります。
ひょっとしてアレカ。
一昨年やったプレトスピラ。

糞をヨク観察してみると、血便の跡はありません。
プレトスピラではないな。

ただの食あたりかと思いつつキャべジンを飲まして
今日はお休みです。
大事にならなきゃいいんだけど、、。

仕方がネェ〜ナ、今日は今猟期初めてのエアーライフルでもやるかと
弾を準備し、リザーブタンクにエアーを詰めて出猟です。

車に乗って一つ目の交差点に着く間に
今日はアソコだなと、根拠の無い感が働きます。

さて根拠の無い感の所です。

田んぼと田んぼの間の狭い農道を進みます。
居ませんねぇ、やっぱりと今来た道を引返すと
田んぼの縁を走る黒い影が視野の端に見えました。

丁度、稲ワラを干してある柵があったので
そこに車を止めて、そ〜っと車から降りて銃を構えながら
キジ君に見つからないように
その柵沿いに隠れながら距離を詰めて行きます。

あらかた40mも近寄った頃。
(今年からジマさんの指導で40mにゼロインしたので)
銃を構えたら、キジ君はVの字になって、ギャロップ走行で走り出します。

とりあえず銃を構えたら、一発でスコープを覗く頬位置が決まって
レンズの中にキジ君が入りました。
オイラにしては奇跡に近い挙銃体制です。
 
そのままスコープを平行移動し、キジを追い越した所で止めて
キジ君がレンズに入るのを待ちます。
一瞬レンズにVの字が見えた刹那、銃が火を噴きます。
じゃ無く、エアーを吐き出します。

つんのめり状態で転んだキジ君。
ヤッターです。

ランニングキジ君を撃取ったのは初めてです。
ホント奇跡です。
もう二度と出来ないだろうと思うくらいの、凄技です。
なんて、自分に酔っているオイラです。

ちょと待てよ、なんか怪しいなぁ
このまま回収に行くと、逃げられそうな予感がしたので
倒れて、頭を持ち上げているキジ君の赤丸にレチクルを合わせて
トドメの一発です。

やっぱり、激しくバタつきましたね。

家に帰って解体してみると、左モモ貫通の銃傷。
下手こいたら、逃げられたパターンだね。
感は大当たりぃ。
致命傷は2発目の後頭部に当たったヤツです。

次は、そのまま田んぼの中の農道を流して
トウモロコシ畑に近づくと
ササッと黒い影がトウモロコシ畑に入っていきました。
キジ君ですな。

そのまま何事無いようにトウモロコシ畑の脇の道路を通り越し
いったん本道路に出て車の向きを変えて車を止めて
キジ君が又出てくる時間を稼ぎます。

FMラジオを聴きながら15分も経った頃、いよいよ勝負を付けに行きます。

キジ君が逃げ込んだトウモロコシ畑を横切らないように
今来た来た道を引き返し、遠くで双眼鏡を取り出し監視です。

トウモロコシ畑の縁で、落ち実をついばんでいるのが見えます。

その畑の30m手前に、背の高い笹薮があるので
そこまで気づかれないように辿り着けば、あとは獲ったも同然です。

エアーライフルは、そこまでの段取りを組むのが難しいのですが
反面、体中に吹き出るアドレナリンを抑えながら作戦実行も楽しいんだな。

うまく気づかれないように笹薮まで行ったつもりですが
キジ君はそそくさと、トウモロコシ畑のなかに入って行きました。

でも丁度いい具合に、トウモロコシ畑の畝はこちら向かってます。
 
ひとつ、ひとつ、畝と畝の間を確認しながらソーっと移動します。
いましたいました、4段目の畝と5段目の畝の間に隠れるように
うずくまっています。

まさに頭隠して尻隠さず状態ですが
キジの場合は尻隠して、頭隠さずですネ。

すかさず赤丸にレチクルを合わせて、プシュンと速射一発。
頭がガクンと沈みました。
これに追い弾は必要ないでしょう。

と思った瞬間、もう一羽キジ君が次の畝から遁走して行きました。
ん〜、気を抜いてしまったな、と思ったが2羽で定量ですよね、2羽で。



久しぶりにエアーライフルを持ったが、あの獲物に命中した瞬間
ドスッという手応えがたまりませんな。
デモなんでだろ?
音が聞こえるワケでもないのに、ドスッという手応え音は。

今日も定量、やったねと自分に酔いつつ縁起を担ぎ
年末ジャンボ宝くじを買って帰ったオヤジではありました。







臥薪嘗胆のガンタ〜ン

さてと、晴れ間ものぞいてきた事だし
ヤマに行くかと時計を見ると10時20分
チョと出遅れた感があるが
今日はお店はお休み、うれしいナ。
と言うことで、後を考えなくても良いから余裕で出勤。

車を走らせながら、2008年初猟の場所を考える。
なかなかイメージが浮かんでこないなぁ。

増沢を過ぎたあたりで、ようやく薄い脳みそに浮かんできた場所が二の沢。
まずは、その場所めざしてレッルラゴッ!と。

それにしても雪が深い。
林道に入った途端、車の前面から雪煙が立ち上る。
これがラジエターグリルに張り付くと
大変な事になるなと考えながら
4WDのLOWにぶち込んで、ラッセル、ラッセル。
もちろん、銀親分が先頭だ。
いつもなら、盛岡営林署が除雪してるから楽なのだがねぇ。
まっ、こんなシュチエーションも楽しいってか。

二の沢の入り口で車が詰まって終着。



車を降りて、二本足でエッチラオッチラとラッセル。
去年からひきづっている足首の痛みが襲ってくるので
ゆ〜くりユ〜クリとソロソロ歩き出す。

銀親分はもはや視界からは消えちまった。

つぅ事は、ヤマドリの気配が濃いんですな。
弾を詰めて、据銃しながら沢を上り詰めていくが
雪が膝カブまであって大変。
まっ、足首も痛いことだし急がないで
ゆっくりと登ることにするか。

降り続いた雪で、雑木がイラッサイとうな垂れている。
そんな沢からチチチチチッとヤマの声。
前方15m付近の唐松の幼木が騒がしくなり雪煙が立つ。

出たっ!

ヤマが出たが、下りはせずに唐松林の上を峰の方角に飛ばれて
射的角度としては最悪条件。
まっ、元旦だし今日は勘弁してやろう。

その後、銀親分が唐松林から出て来て「出ただろう?」と言った。
「まっ、出るには出たが方角が悪い、俺の方に追い込むように出してくれよう」
と言い返したが、聞く耳持たずで銀親分は踵を返して林の中にトットト消えた。

すると、間もなくして出したのがメンコ。
はは〜ん、林の中でデート最中の熱々ヤマドリだったんですね。

一群を回ってきた銀親分。
いつもそうなんだが、入った地点からは絶対姿を現さない。

ココの地点から入った銀親分、だから出てくるのはあの方角だなと
見当を付けて銃を構えて待っているんだが、なかなか出てこない。
山の5分待ちは里の30分の長さに感じる。

笛を吹いて呼び戻そうかと考えていると
俺の後ろで、プシュッと言う鼻息音。
振り返ると銀親分が退屈そうに座っている。
いつの間にやらって感じ。

いつもながら、どっから出て来るのか予想が付かない
ラウンダー銀親分ではある。

そんな銀ちゃんに「付け」の指示で
後付けをさせながら上って行くことにする。

なんたってコレからの沢登りは急坂でV字になっている。
なので早く先に行かれ、ヤマドリをフラッシュさせられると
猛スピードに乗ったヤマドリを生産する事になる。

ヤマドリに幾らでも近づきたいから銀ちゃんを「後付け」させながら上り
俺の近くから飛び立たせスピードに乗る前に確実に撃ち獲りたいから「後付け」だ。

さてドンズマリのこの場所からは、あとは銀ちゃんまかせの行って来いに任せる。
オイラは銃を構えて、飛行線を予測しながらスタンスを決め
銀ちゃんに「ヨシ」の号令で、沢を上り詰めさせる。

ほどなくして、スピードに乗らないヤマドリがデタッー!

上手くリブに乗せて、バッと一発目でグラつき降下。
今日のようなフカフカの雪が山一面に積もっていると
散弾の檄発音は雪に収音されてしまい
バァンのバしか響かないのだ。

雑木の枝や、それに絡まった山葡萄のツルに絡まっては
まるでバンジージャンプのゴムロープが伸びきっては縮むような
バウンドを見せながら、木々に降り積もった雪とともに落下した。

ヘイ一丁あがりぃ、ときたもんだ。

慌てて駆け下りてきた銀親分より、雪を蹴散らし落下地点に急ぐワシ。
やりましたね、ワシの勝ち。

チョと、不満そうな銀親分をパチリと撮って
2008年も、景気良く発進じゃあ。




エッ、そんなに雪道を急いで足はいたくねえのかって?
あ、そうね、痛かったんだね足首。
忘れてたね。
 
忘却とは、ヤマドリ撃ち獲りなり。

ということで、お気楽モード全開で今年も発進〜ん。













きょうび、猟銃事情。

事あるごとに、なんやかんやとイロイロと言われて続けている猟銃所持。

そんな銃を持とうかなと思った時、ホントのところ
やろうかな、やっぱ止めようかなと、迷いに迷ったと前にも書いたが
銃を持ってみて改めて、チョッと間違いをおこしたら「危ない遊び」
それも下手すると「命」にも関わる遊びだなと実感。
それにもまして世間から、あいつは変態危険人物と言われかねないナっていう事などなど。

そんなにしてまでも、持つ意味って?

厳寒の前人未到の氷壁を登るアイスクライミングとか
たった一人で希望崎を回って世界一周とか
南極大陸単独横断とか、月への旅行とか、絶壁バンジージャンプとか。
平凡で無事な毎日も良いが、非日常的で危険な遊びに男は燃えるのだ。
だからという訳でもないが、まぁ結局のところ
危険極まりないなっていうより、鉄砲を持って飛ぶ鳥を撃ってみたいという
好奇心の方が勝っての、狩猟っていう名の遊びを始めたわけだ。

そんな狩猟でワンシーズンの間には、必ずどこかである猟銃事故。
そのたびに、吊るし上げられるのが悲しいかな銃砲所有者。
交通事故の死亡率から見たら、パーセンテージの上では
屁みたいな数なモンなんだけどねぇ。
なんせモノがモノだけにねぇ、マスコミ受けもする事件になりうるし。

はるか遠い地で起こった猟銃事故じゃなく事件。

動機が分からず、事件の真相は闇に葬られた。
って、誰でも「そう」思っているんじゃないのかなぁ。

「そう」


ナルシストで気の弱い根暗で結婚できない男が居たとする。
その男には秘かに憧れていた女がいたとする。
そして、その男とは小さい頃から仲良く一緒にズーっと遊んでいて
今では幸せな家庭を築き、優しい父親にもなっている
気心も知れた親友だと思っていた男もいたとする。

その親友に、男は根拠の無いプライドをかなぐり捨てて
恥を覚悟で憧れている女の事で相談するわけ。
小さい頃からの親友も、親身になって相談に乗ってあげたとする。

気の弱い男は日に日に妄想ばかりが膨れ上がってしまい
憧れの女に告白すると、今スグにでも自分のお嫁さんになると錯覚し
そして盲信してしまうのだった。

いざ、その女に告白すると「私には結婚を前提とした彼が居るのでゴメンナサイね」と
ヤンワリと断られてしまう。

しかし、根の暗い男は自分の心の中で、こう誤変換してしまうワケだ。
「毎日ココに来てはウラウラと時間を潰す
定職も持ってないようなグウタラなストーカー男は大嫌い」と
言われてしまったかのように思い込んでしまうワケだ。

気は弱いがプライドだけは高い男は
自分自身、男としてのアイデンティティを確かめるためにか
自分を唯一無二の男として確立してくれると
勘違いしている猟銃を、握りしめたってワケだ。

さらに屈強な大型四輪駆動車をも手にして
男は小さい頃から通っていた教会の神に近づけたか
それをも超える存在になったと思い込んでたワケ。

そんな男が自分の男としての理不尽なプライドを守り切る為
発作的にでは無く、計画的に猟銃を手にするわけだ。

ターゲットはもちろん「神」の冒涜に触れた女と
その事情の果てを知っている、チッチャい頃からの知己の友となるワケ。
さらに、その事を知っている知人たちも含まれた。

計画は少しミスったが、この二人を抹殺する事によって男は
男としてのプライドが保たれ
そして唯一無二の神になっていられると思い込んでしまったのだ。

「自分が否定された女」と、それを相談した「男」を
散弾銃最強のスラグという凶暴極まりない弾で葬ったあと
「否定された」事柄を全部知っているのは
自分だけになっている事に愕然とし
それさえも葬むってしまえと思い込んでしまったのだ。

そして、小さい頃から連れられて行った馴染みの教会に出向き
猟銃を手にし、己が口の中に銃口を差し入れて
引き金を絞り、カチッと撃芯を落としたのだった。

そうして、この事を完全抹殺した男は
教会の神と供に、永遠に神になったと勘違いしたまま
散弾銃最強のスラグ弾は血の鮮やかな赤色と、脳みその灰色をまといながら
己が後頭部を吹っ飛ばし、宙に拡散した。
やがてそれは黒褐色に変色し、大地を薄ら汚くしただけだった。




この事件にタンに発して「猟銃を世間から追放」
という世論っていうかマスコミの論調が、更に強行に高まって行くのだった。

でも、それは違うとおもう。

だって、猟銃が無ければナイフだって
野球のバットだって、ゴルフのクラブで叩き殺せるし
バカ高いお金を親に出してもらって買った米国製の四輪駆動車で
ひき殺してもいい訳だ。

米国経済界、政治界にも大きな影響力を持つ全米ライフル協会の親分が言った。
「銃が人を殺すんじゃなくて、人が人を殺すんだ」という話し。
だから、そんな話しに「そうだ、そうだ」と盲信してしまう
「猟狩とは無関係な事件だ」と思い込みたい人たちがいるワケだ。

そんな人たちのインターネットの狩猟関係のサイトやブログ
はたまた新聞の読者投稿などで、猟銃所有者の反論として語っていた。

それは「猟銃は日本の文化だから絶やしてはいけない」
って、職猟師なんて今現在居ないし
世間に受け入れられない文化は、廃れていくのが世の常だし。

それと似たような話しに、ギャル言葉とかの若者の日本語が乱れていて
日本の言語文化はオカシナ方向に流れ、美しい日本語が無くなって来ているって
ワケ知り顔の学者とか知識人が言っておられるけど
文化って、どの時代でも滅んでは新しい文化が創造されてるし
文字、言葉だって、江戸時代の文字や言葉が今現在に続いているワケじゃないし。
言葉も文化も廃れるものは廃れ、どんどん変化してくものじゃないの
とか思ったりなんかして。

また、猟を行う人たちが減少の一途で、有害駆除もママならない現在
それで里山が荒廃して行ってるワケだが
そんな中で有害な獣や鳥を無報酬で駆除に貢献しているのは
ハンターだとか言ってるのも、俺には???
「金にならなくて渋々やっているのなら辞めりゃ〜いいのに
最後に慌てるのが行政なんだから」と思ったりなんかして。

更には深山に分け入り、山の神からの授かりモノを大切に頂いてる。
とか言っているのには、アンタどこの宗教なの?
仏教徒の殺生はダメに決まってるでしょうって。

ちなみにオイラは神道なので生魚はモチロンの事、獣もOKなのね。

と言うわけで猟銃所有者である俺から見ても
違和感があるっていうかなんていうか
狩猟者の自分勝手な論法が展開されているなと思った。
だから、世間一般人には余計に銃砲所有者の都合の良い
言い分けにしか聞こえないと思ったに違いない。

俺なら胸を張ってこう言う「鉄砲で獲物を撃ち落すのが面白いから猟をしている。」
「獲物を殺して喰う。それのどこが悪いの?」ってね。
分かりやすいでしょう?





俺が小さい頃、親父は夕焼けで、お袋は朝焼け、お姉ちゃんは胸焼けで
オイラは日に焼けて真っ黒だった頃。

夕焼けが紺青に代わった刹那、その空をバックにして
スイスーイと飛んでいる赤トンボに
「オイラも空をスイスイとあんなにして飛びたいなぁ」とあこがれ。

それよりもデカくて尻尾がシマシマで、目が青いオニヤンマを見た日にゃ
なんで羽根をバタつかせないで
あんなに遠くまでスイスイと飛べるのだろうとか。

ピーヒョロロ、ピーヒョロロと輪を描きながら空高く飛んでいるトンビに
オイラもあんなに空高く飛べたらなぁ、と思ったりして。

稲刈りが終わった田んぼに、雀たちが落ち穂をついばんで
近づくとパアッーっと飛んで、家の屋根に止まったり
電線に止まったりして、空中を自由自在に飛べてイイなぁと思ったりした。

だから、手っ取り早く空を手にしたいと思い
お袋に手縫いで作ってもらった昆虫網を両手に
竹ひごで出来た虫かごを肩から提げて、腰には皮の三角紙入れを取り付けて
ご近所を飛び回っている蝶々やセミやトンボを捕まえては標本。
夏休みの宿題にしては膨大な量をコレクションしていた。

5年生の夏には、ありきたりの標本じゃ物足りなくなり
標本にしたカブトムシの頭をもぎ取り
クマゼミの頭をもぎ取った胴体に、無理やりセメダインでくっ付けたモノや
トンボの羽をむしり取って、アゲハ蝶の羽根をくっ付けモノや
胴体からVの字に伸びた二つ頭のカマキリにして一人悦に入りニンマリ。

始業式の当日意気揚々と持って行くと、「こんな虫、どこで捕ったの?」とか
「気持ち悪〜い」とか言いながら級友たちが覗き込む標本箱。
こうして教室中を震撼させ、得意になったキクチくんは一人ニンマリ。
先生からは「そんなデタラメな可愛そう事をしてはダメ」って言われ
夏休みの宿題の二重マルを貰えなかったり。

違う日には、庭の垣根やマメ柿の枝に止まっているスズメを
パチンコにそこら辺のイシコロをを挟み込んで撃っていたが
弾道が右に行ったり左に行ったりドロップしたりして
まったくスズメに当たらないので
ビー玉にチェンジして命中率を高め、小鳥を追い掛け回していた。

この豆柿って渋い柿なんだけど、雪が降り積もって根雪になる頃
カギ棒で豆柿の枝を引っ掛け、折り落としてから
真っ黒に変色したレーズンみたいな柿を口に含んで噛み噛みすると
渋さはすっかり抜けて、口の奥でほのかな甘味がして
いいオヤツになったもんだったよなぁ。

更に進化した菊池くんは、庭木に添え木として差し立ててあった
水道の鉛管を適当にぶった切り、片方に木片を金槌で打ち込んだあと
蝋燭を流し込んで固定。
それに、新築現場からチョイと失敬してきた木片で銃床を切り出し
鉛管にビニールテープで取り付けて作ったお手製の鉄砲を作ったもんだ。

使い方は、2B弾という爆竹よりも発火時間が長い
時限爆発花火に火を付けて、鉛管の奥にトントンと落とし込み
鉛管に合ったビー玉をコロコロと奥まで入れて
やや銃口を上に鉛管銃を構えて息を潜めて待っていると
ズンという音と反動を伴いながら、ビー玉はトンデモナイ速さでスッ飛んでいく。
そして15mくらい先の塀の上に立てて置いた一升瓶を次々と壊して悦に入っていたもんだ。

近所のオヤジに「そったな危ない事しちゃダメだべ」って怒られながらも
「俺にも貸してみろ」って言うもんだから貸してやったら
近所のオヤジは銃口を上向きにして構えなかったから
ビー玉と2B弾がコロコロと落ちて
自分の足元で爆発してしまったもんだから、ビックリして飛び跳ねてやんの。
そのオヤジはて顔を真っ赤にし、バツが悪いもんだから
ワケの分からない怒られたりしたりもしたが
それにも懲りずに、いろんな危ない遊びをしていた。
あの頃は鷹揚な良い時代だったなぁ。

それから、もっと空高くと思ったキクチくんは
冬には凧揚げに狂ってしまい、夏でもタコを揚げる変な少年キクチくん。
どこまでも遠くまで糸を伸ばし、挙句の果てに糸が手元で切れてしまい
バイバイと無くしたりしても、懲りようともせずに改良に改良を加えて
微風でも高く舞い上がるタコを作ったりもしていた。

それにも飽き足らない、チョイ大きくなったキクチくんはスピードも欲しいくなるわけ。

だからビーンビーンとやけにうるさいユーコン飛行機に大いに狂うわけ。
2本のワイヤーに繋がったエンジン飛行機。
そのプロペラを指でまわして始動するのだが、勢いが足りないと逆回転し
人差し指を強烈に打撲し涙を溜めながら手元のドライバーで角度を変えながら
上昇させたり下降させたりして、近くの校庭でエンジン音を轟かせていた。

さらに、ニトロ燃料を入れてジェット噴射させるカプセルを手に入れて
それをバルサ飛行機に取り付け飛ばしたのは良いが
あまりの速さと、高さと、その長さで見失って泣いた事もある。

こんな遊びばっかりしていたキクチくんは、
工作だけが得意で、宿題なんぞマッタクしない
廊下に立たされっ子の外遊び少年だった。

春近い頃、中学校からの帰り道、暗くなった川べりを歩いていくと
クォクォクォーとへの字に編隊を組んで空高く白鳥が
シベリアと旅立って行くのを見上げながら
心だけは白鳥となって、地上で空を見上げている自分を
鳥瞰図のように見下げている自分が居たりもした。

ガガーリン大佐が始めて地球の大気圏を脱出して
「地球は青かった」なんて言っていた日にゃ
オイラも一緒になって、心の中で青い地球を見下げていたりもした。

19才の春、人生初めて飛行機なるモノに乗った時の興奮は
今もハッキリと思い出せる。

とにかく、空を飛ぶものに興味がモクモクと沸いてしまうっていうか
目が無いっていうか、トニカク空を飛ぶモノが大好き。

だから、友人がウルトラライトプレーンに手を出した時
オイラもヤリタイなぁと思ったりもしたが
お袋が泣くのでダメだった。

ツイこの間も、モーター付きのパラグライダーを購入しようと
真剣に考えていたが、その関係のネットのコピーをカミサンに見つかってしまい
「そうゆう危ないのは、子供たちにお金が掛かる大学を卒業してからにしてちょうだい」
と言われてしまい断念っていうか、よく考えたらそんな金も無いし。

こないだは航空自衛隊の視察に行った小泉首相がF15戦闘爆撃機に乗った。
なんて聞いた日にゃ「いいなぁ、首相は。俺も死ぬまでに一回でいいから乗ってみてぇなぁ」
なんて嫉妬したりもした。

名コンポーザー、コールポーターのビギンザビギンを
フリオイグレシアスが編曲して歌っているのを聞くと
オイラの心は地球の成層圏を脱出し
月の裏側まで一気に飛んで行くような感じにさせられる
コズミックで浮遊感あふれるジェットな歌になっていてさ。

竜飛岬の断崖から海に飛び込むようにジャンプし
海岸に怒涛のようにぶつかり、白泡砕ける波の上昇気流に乗って沖に向かうと
日本海と太平洋の波がぶつかり合い盛り上がった海の稜線がコンモリと出来ている。
その先をたどって波頭をかすめて飛んでいくと、それは函館の七重浜へと続く。
そんな低空飛翔感がある、さゆりちゃんの津軽海峡冬景色もいい感じだべさ。

近頃では、シェルター系ディープハウス
Dj KAWASAKIのMELODYなんか聞いていると
サンゴ礁で出来ている島の上空を飛んでいるような感じがして最高さ。
それにPVのリナちゃんの仕草なんかメッサ可愛いしな。

ついこないだは、ご難続きのNHKでやっていたスペシャル番組
「飛行士から見た地球」を見ていて
「俺も大きくなったら宇宙飛行士になりたいなぁ」と、強く思ったりした。

なんて、話しはかなり外れてしまったが
空を飛んでいる鳥っこを撃ち落すっていうことは
俺の中では空を制するものを手中に出来たという満足感があり
至極快感極まりないワケ。



更に犬好きにはたまらないのが猟。
原始の時代から犬は人間と伴に暮らしてきたワケだが
ただ餌を貰っていたわけではなく、人間の猟の手助けをしての
そのご苦労賃として餌をもらっていたギブアンドテイクの間柄だったらしい。
だから、盲導犬にもなる大人しいラブラドールレトリバーにしろ
ご婦人方に大人気のダックスフントにしろ
どんな犬でも本能的に持っている狩りをするという
猟芸の向上を楽しみながら山を駆け巡るっていう事自体
犬好きにはエラク楽しいものである。

そんな猟の中で、特にヤマドリは最高だねぇ。

初めて一人で山を歩き、銀ちゃんが追い出してくれたヤマドリを
見た時はスゴカッタァ。

ヤマドリの沢下りと言えば、犬に追い立てられたヤマドリは
時速100kmを越す目にも止まらぬモノ凄いスピードで
沢を滑空して下ってくるので勇名を馳せている。

でもこの時はオイラと銀ちゃんがド素人だと
ヤマドリに見破られていたのか、ヤマドリは馬鹿にしたように
ゆっくりとした飛翔で沢下りをした。
その胴体は太陽の順光に照らされ、あまり大きくない羽根は
赤い光を撒き散らしながら拡散し
まるで手塚治虫先生が描く不死鳥そのものだった。
そして2mにも届く長さのオッパはをこれ以上広げられないくらい広げ
黄金の白い光をまとった胴体の大きさを、倍には見せていた。
もちろん、銃口を向けるのを忘れ呆気に取られるように見入っていた。

あっけに取られてみていたと言えば
前にも書いたが、沢の奥に突っ込んでいった銀ちゃん。
待てど暮らせどヤマドリが下って来る気配はゼンゼン無いし。
それに沢奥に駆けていった銀ちゃんも戻ってこないし。
いいかげん待ちくたびれたキクチくんは、尿意をもようして
鉄砲を下ろし近くの木に立てかけ、ズボンのチャックを下ろして
自前の鉄砲を出し垂れ流しの最中
音もなく沢奥から舞い降り来た赤くてデカイやまどり。
オイラにはゼンゼン気が付いていないようで目の先15mくらいの所に降りようと
長いオッパと主翼を思いっきり、これ以上広がらないくらい広げ
ホバリングし空中に留まったその姿は、まさにフェニックス降臨の様だった。
もちろんオイラは出すのは出したがチンポはビローンと出したまま
滴振りもしないままアッケにとられボーゼンと立ち尽くしていた。
そんなヤマドリだから、これを手中に収めた時の興奮は覚めること無く
いまでもズーっと続いているのだ。
もちろん銀ちゃんもだ。

それとオイラは撃った後の空薬莢を拾いあげ
爆発した後の酸化したチョと酸っぱい残り香を思いっきり深呼吸しながら
じっくりと鼻の奥で味わうのが大好きな「発火薬匂いフェチ」だし。
って、ちっちゃい頃、ブリキで出来たコルト型の黒いピストルに
巻き紙火薬をセットして、連射した時の発火薬の匂いとか。
少し大きくなって夢中になったモデルガンのガーバメントマグナム。
それの弾に詰める競技用ピストルの火薬を、カミソリで切り取り
真鍮製の弾の先端の窪みに、その火薬をセットして
撃った後の火薬匂いなんか、もうたまりません。

をっと、話を元に戻すと、更にマスコミは図に乗って大声を出す。
「こんなに食い物が有り余っている世の中で、なんで銃を使って動物を殺して食うんだ」
と鉄砲所持のウンヌンを離れて、違う方向でヤイノヤイノ言っているマスコミには
正直なところチョと「カチン」とくる。

愛犬と深山で雪まみれになってクタクタになりながら
動物を追い詰め撃って殺ろす、っていう遊びを真剣に真面目にするわけ。
その後は毛を丁寧にむしって、各部位にワケながらバラす。
そいてバラシ終わって残ったガラは二時間ほど煮込み蕎麦の出汁に。
ヤマドリのガラの腰骨内側には脂が多くあり
それで取ったスープはそばの出汁というよりは
ラーメンの出汁にしたほうがいいくらいだ。
だから猟期中のお昼ご飯は、ヤマドリの蕎麦かラーメンが毎日。
そしてガラの首や腰骨にに引っ付いている肉をきれいに剥がしホグして
「ヤマドリのパスタ」として、喰らいつく。

残ったガラ骨は銀ちゃんのオヤツ。
鳥の骨は犬に上げちゃあイカンという話しもあるが
ウチの場合「そんなの関係ねぇ」です。
っていうのを、ひっくるめて「猟」と言う遊びなんだぜ。
そして自分の手で殺せる生き物だけを食べる喜び。



夏になるとオイラが馬鹿みたいに萌える遊びが、鮎釣り。
その鮎がいっぱい居る川に行く途中にあるのが食肉処理場。
いわゆる屠殺場。
そこの脇を通っている国道を川に急いで車を走らせていると
たまにだが大型トラックに載せられた牛と、よく並走する事になる。
そのトラックの荷台は大きなスリットが入っていて
このスリットにロープでつながれた牛の顔が見えるわけ。

その牛は、名前を付けて手塩に掛けて育てられたワケ。
ほんらい牛たちは草を食う草食動物なのだが
そこを無理強いして、高タンパクの輸入穀物飼料を与え続け肥えさせる。
そして病気にかからないよう、抗生物質やらの薬品も与え続け
ろくに運動もさせず部屋飼いと言う名の座敷牢に閉じ込めると
本来入るはずの無い赤身に、サシといわれる脂がコッテリと付いて
強制的に糖尿病的メタボリック脂身にさせられた黒い牛達は
元々殺される為に生きて来た様な存在だからか
はたまた世間の酸いも甘いも、まだ経験してない幼い牛だからか
ノー天気にスリットから鼻面をだして、モッーとか言っている。

これが白黒のホルスタイン牛は、スリットの影から覗くその顔はひきつって
口からよだれを流し糸を引いて荷台に落としている。
そして、目は白目を剥き虚ろな状態なワケ。



十数年間、子を育てるわけでも無く、ただただ乳を搾り取られて
乳の出が悪くなると、ホルモン剤を打たれたりして
血の滲むような乳を骨の髄まで搾り取られる。
いよいよ持って乳が出なくなると、食肉として屠殺場に送られれ来るわけで
歳をくってる分、イロイロと聞き分けが出来るのだろうか
自分のこれからの行く末を分かって、恐怖におののいているように見える。

オイラが小さかった頃の歯医者は
よっぽどの事がない限り麻酔注射は打たなかった。
ユニットに座るか座らないうちにチュチュチューンと
神経に触ろうが触るまいがお構いなしに
タービンでキキキーンと歯を削ったもんだ。
だから歯医者さんに行く5日くらい前から
食い物の味さえしなくなり、食欲もガクンと落ちたもんだ。
で、その当日は恐怖心からか、朝から心臓がグレウングレンと不整脈。
そしてチンポは縮み上がり、医院まで行くのが嫌で嫌でしょうがなかった。
たぶん白黒の牛さんは、この百倍くらいの恐怖感を感じてるのだろうな。
モチロン、歯医者帰りの開放感は今でも爽快に覚えているが
悲しいかなホルスタイン牛には、死でしかそれが無い。

だから、荷台の牛と目が合った日にゃ嫌ぁ〜な気持ちになり
これから始まる楽しいはずの鮎釣りに、縁起でもないナと思ったりもする。

そんな牛を他人が屠殺場で首をちょん切り、後ろ足のアキレス腱に
ステンレス製のカギフックを引っ掛けて、逆さに吊るして血を抜き
腹を割いて内臓を取り出し、身を半分に割ってから熟成してバラバラにする。

そして薄くスライスされて、白や黒の発泡プラスティックトレーに綺麗に並べられ
ラップで包まれているのを、当たり前だが、お金を出して買う。
それを焼いてエバラの焼肉のタレを付けて食べる。
そして「さすが前沢牛のAの5だな」な〜んて、ウンチクを語りながら
さっきまで俺たちと同じ地上で同じ空気を吸って
生きていた動物を食っているのが「グルメなあんた」なワケだ。

さぁ、どちらがイイ子ちゃんでしょう。

ドッチモドッチでしょう?
生き物を殺して喰うという現実は。
自分の手を血で汚して喰らうか、そうでないかという違いだけで。

ちなみに白いトレーに乗っている肉からは
ほとんど血が滲み出ていない。
それに対しマグロの刺身とか魚類は血が滲み出て
トレーの上に敷いている血滲み取りシートが赤くなっている。

それはなぜかと考えると
食肉の場合は、生きている間に動脈を切断
バクバクと動いている心臓の押し出し力を利用し
体中の血を放血していると考えられるわけ。

オイラは釣りも、三度の飯より大好きなので
釣った魚は生きているうちに、エラを外して放血する。
すると、磯臭いと言われているアイナメだって美味しく戴けるし
生臭くてオエッとなるブラックバスだって
スズキに負けないくらい美味しく戴ける。

簡単に言えば、神戸牛だって田原牛だって黒豚だってブロイラーだって
声にならない断末魔の叫び声を出しながら血を吹きだして
命が絶えていくのが想像できる。

気の弱い人はクリックしないようーに。
気の弱い人はクリックしないようーに。
気の弱い人はクリックしないようーに。

狩猟は法に守られていて、それを遵守して上での
オッカナイ国家公安委員会に「公認」されたマットウな遊びなわけ。
狩猟反対、イルカ漁反対、捕鯨も反対って声高々に言ってるヤツが
「自動車にも乗らない、電気も使わない」
そんな菜食主義者なら、言ってる事に道理も通るが
そうでないヤツに、ヤイノヤイノ言われてもなぁ。

つまり、そうゆう事なのよ。
全部ひっくるめて、他人(ヒト)の趣味ってモンは
っていうか、そうゆう所まで来てしまっているんだな、我々は。


巷の小学校では食育なんていうのがあるのだそうだが
ワシはつい最近まで知らなかった。
それは箸の持ち方とかの礼儀作法の事、健全な食生活の実現
そして食文化の継承、健康の確保等などなどらしいが
お笑いだね。
食の根源っつうのを忘れているんじゃあるまいか。
そんな薄っぺらい食育なんかよりも
子供達に生きているニワトリの首をちょん切らせ毛をむしり
給食のオカズとして唐揚げにするまでのプロセスを、是非体験してもらいたいと思う。
(自称グルメとか、PTAのヒトたちも含めて)

赤い血が流れ、暴れまくる生命体を自らの手で絶ってから
それを戴いていると言う現実を初めて知る。
それで他の命を奪ってまで食べる事の意味が見えて来るとおもうぞ。
今まで「美味くない」とか言って、給食のオカズを残して捨ててしまっていた事の
自戒の念が生まれると思う。
そういう事で、他の生命を奪って自分が生かされている事を知り
感謝しつつ食べる事の本当の有難さを分かってくれれば良いと思うんだがね。


































(副題)
薄情と非情の狭間で眠れぬ夜は踊れ!脳みそ。



禁日前夜。
雉雄くんが酔っ払って店にやって来た。
そして開口一番「僕、ムクちゃんと別れてきました」って
去年とマッタクおんなじパターンやんけ。
なんでやねん。

雉雄くんは西日本ではトップの大学に進学した秀才。
そんな雉雄くんの学生時代の性活は
学校へはロクに通いもせずに、ホテルでのアルバイトにくれていたそうだ。
そのホテルのバイトが終わって、どんなに疲れていても
毎夜のクラブ通いは、欠かした事がないと言っていた。

そんな雉雄くんが生まれた関西の町には
大きな繁華街でもない、こじんまりとした商店街にも
ちょっとしたディスコみたいなクラブが存在するらしい。

そんな秘かなクラブと言う名の踊り場は
夜の11時半には早々と閉まってしまうらしい。
つまり、お客さんの終電に間に合うような営業形態らしい。
なので、5時間くらいしかないディスコ営業時間内は
メチャクチャ濃密な時間が流れていたそうだ。

そこは今どきのクラブDJにアリがちな
「こんなのは知らないだろう、えっへん」てな
誰も分からないような、独りよがりのセンズリレコードは回さないそうで
アースウインド&ファイアーとかビジーズとかシェリルリンとかの
まったくもってベタなレコードを回してくれ
老いも若きも、男も女も一緒になって
ワッショイワッショイ的なハネト状態で
踊り狂ってしまうのだそうだ。

そんなかで意気投合した男と女は
ラストダンスのメロディーを背に聞きながら店の扉を押し開き
街の電柱のやけに明るい蛍光灯から逃れるように
夜のシジマに溶け込み紛れ、終の棲家へと傾れこむ。
そして快楽の波に漂いながら時間を忘れ
ふたり大きなうねりとなって、黄色い朝を迎えるのだそうだ。

さらに凄いのは、街の中にある美容室とか理容室なんかも
夜には洗髪台のシンクにビールやらワインなんかを氷と一緒に冷やし
それを飲みながら踊り狂ったりもするらしい。
そんな関西は、ラテンなお方たち。

そんな雉雄くんは学生最後の夏、アジア放浪の旅っていうか
性遊の旅に出たほどの、我慢汁がいつも満タンのチンポコ野郎だったらしい。

その中でも「タイはセックスパラダイスだ」と
ウーロンハイを一気に飲み干し、懐かしむような目をして言っていた。
タイのセックスカルチャーのなかでも
オカマちゃんワールドはかなり凄いらしい。
さらにその中でもオカマキャバレーは性錯誤の妖艶な
一種独特な世界で、雉雄くんは一発でトリコになったらしい。

その混沌とした性のカオスワールドでは
オッパイを膨らましたオカマちゃんが、チンポを勃起させながら
ポールダンスを踊っているのには、ビックリしたらしいが
それを見て負けじとギンギンに勃起した雉雄くんは、もっとすごいなと思った。

さらに、その勃起したオカマちゃんを抱いたと言うのだから
ウブな私めは開いた口がふさがらない。
「ひょとして、お尻の穴に入れたのか?」と聞いたら
「モチロン、あの穴は美味しかったなぁ」とまで言い切った。
「どう美味しかったの?」聞いたら
「マスターもタイに行って試してきたらいい」と言われてもなぁ。
エイズが怖いしって、をいっ。

そんな雉雄くん、大学を卒業してからの進路だが
このままホテルに残って働いてくれないかとの誘いも有ったそうだが
それを断り関東の金融会社に就職したそうだ。

見知らぬ土地でも自慢の嗅覚を駆使して、踊り狂える所を探し当てたのが
ロッテマリーンズの応援という名のスタジアム通いだそうだ。

そこではビールをシコタマ飲みながら
出会いの広場っていう、ねるとんクジラ団のインスタント版みたいな
有料サークルで拾ってきた彼女のオッパイを揉みながら
マサイ族のダンスのように、飛び跳ね汗を流し大声を上げて
ロッテの応援という名の、ある意味ディスコで踊り狂ったらしい。

そんな雉雄くんのオトンが会社を定年退職してオカンを連れ
生まれ故郷の岩手に戻ることになった頃
会社の営業職も上手く行かなく、成績が伸びず悩んでいた雉雄くんは
いったん関東での生活にピリオドを打って
両親に一緒に付いて行き、岩手で再出発したってわけだ。

オトンの強力なコネのおかげもあって
潜り込んだ会社では異例の10月の中途入社であった。
この会社はガチガチのタテ社会が残っている旧態全とした職場で
今まで働いていた、関東の金融会社と比べられないほど
職員はもとより仕事自体も非常に生ぬるく
毎日の仕事進行もノロくてイライラが積もったらしい。
だから関西人の雉雄くんは「みんな、もっとロックな仕事ををしろよなっ」って
いつもひとりで怒り散らかしていたそうだ。

そんなネムタイ環境のケダルイ職場で溜まったストレスのハケグチは
スポーツジムのエアロビックであった。
そこではディスコの激しいビートに乗って激しく踊れ
雉雄くんの周り半径2mは汗の水溜りができるくらい暴れてたらしい。
だから職場での付き合いも逃げるようにして
一週間に最低でも4回はジムに通ったらしい。

翌年の4月、新入社員が入ってきたなかで
学生時代にヒップホップ同好会に入っていたという
新入社員と意気投合していまい、エアロビダンスの勢いのままに
旧態全とした会社内にダンス部を創設してしまった雉雄くんであった。

総務部に部開設の届け出を願い出に行ったが
「風紀上問題がある」と、認めてくれなかったらしいが
エアロビの勢いそのままに頑張ったおかげで
なんとか、会議室を開放してもらったらしい。

そして、職場周囲の好奇の目が集まった水曜日の夕方
会社の会議室でヒップホップ部が胎動し始めるのであったらしい。

最初の頃は、北海道の旭山動物園の円柱の中を泳ぐイルカ並みに
会社じゅうのヒトが集まって、雉雄くんのダンスを好奇の目で見られても
マッタク動じない雉雄くんと新入社員二人組は踊り狂っては
会社の皆から生暖かい目で見守られて
ちょっとばかし盛況を博していたそうだが
その内だんだんと見慣れてきた会社の連中は見物にも来なくなり
今日この頃では、ハムスターの水車のようにカラカラと
二人寂しく踊っているそうだ。

2時間の部活が終わった後は、クラブで反省会という名の飲み会。
この飲み会にだけは、部員で無いヒトも集まって来て盛況だったそうだ。
だから、土日だけは忙しいが、平日は暇なクラブの店長には
たいへん有難がたられたそうだ。

その二次会でのクラブで知り合ったのが
一人で踊りに来ていたムクちゃん。
そして首尾よくメールアドレスをゲットてなわけ。
あくる日「イイ店知ってるんで、飯でもどうですか」って
さっそくメールで呼び出し、オイラの店で初デート。

雉雄くんは背が低いの自慢だが、ムクちゃんは雉雄くんより
20センチくらい高くてスラッとしたモデル体型のいかしたおネェさん。
雉雄くんは背の高いおネェさんが大好き。
更に、そのおネェさんの職業が保育士と来たもんだ。
雉雄くんはプチ幼児プレイが好きなMなので
まさに願ったりかなったりとはこの事。
有頂天になった雉雄くんは、この場を盛り上げる盛り上げる。
その勢いのまま2次会へと流れて行った。

次の日、会社の帰り飲みに来た雉雄くんに
「やったか?」と聞いたのは当然の事。
「はい、もちろんです」だってさ。
あい変わらず女に乗るのが早い雉雄くん。

昨日のデートで帰り際に、カウンターでムクちゃんが
ブレストケアーを飲んだを見た雉雄くんは
いきなしチンポに血が回ったのだそうだ。
「ん?」と言ったら「口臭を消すってことは、合体を想定してる事でしょうよ」だってさ
「そんなんでチンポに血がまわるのかぁ?」と、
呆れてしまう50歳も半ばのマスターではあったが
なんせ、雉雄くんはオイラより25歳も若いから、しょうがねぇか。

それからの雉雄くんは毎夜のお励みで
キャンタマ袋が満タンになる事が無くなったので
戦闘意欲が、まるまる喪失し
会社でのケダルイ仕事についての愚痴を言わなくなった。
肉体的にも性格的にも何もかもウマク合うムクちゃんとの半同棲肉欲性活。
幸せの絶頂ってな感じで、うちの店に来る回数もめっきりと少なくなった。

昼でもダイブ冷え込みがきつくなって来た頃
雉雄くんは、ムクちゃんを連れず一人で店にやってきた。
「どう、うまくいってる?」とオイラ
「うまくいってるんですけど、、、、」
「なにその、、、、、は。」
「ムクちゃんが、子宮癌検診で引っ掛かったんですよ」
「引っ掛かったって、まだ確定じゃないんでしょう?」
「ん〜、そうなんだけどムクちゃんは、かなり落ち込んじゃって暗いんですよ」
さらに「近くの神社に、癌じゃありませんようにとお百度踏みにいってるし」
先祖代々のお墓参りに付き合わされ「オバァちゃん、良い子にしますから
見守ってください」っていうのにも付き合わされるし
酒もタバコも止め、ジムもクラブにも行かなくなったんですよ」だと。
そんなネガティブなムクちゃんに少々ゲンナリ気味の雉雄くんではあった。
今は再検査の結果待ちなそうで「何もなければいいね」という話しだった。

そうゆう話しで11月の14日夜遅く
かなり酔っ払って雉雄くんは店にやって来たってわけだ。
そして開口一番「ムクちゃんとは昨日別れました」だって。
「え〜、あんなに仲がよかったのに」とオイラ。
再検査の結果はクロで、子宮全摘出が宣告されたのだったそうだ。
そこでムクちゃんが吐き出した言葉は
「子宮を取ってしまったら、子供は作れないない。」
「そんな私とでもいいか、それともここで別れてしまうかどちらか選んで」って
鬼の形相で迫られたんだそうだ。

雉雄くんといえば、その日の午後に40分も掛けて
親知らず抜いたばかりで、左の頬がメロンパンくらいに膨らみ
ズキズキとした痛みに耐えている最中だったので
「その答えは後にしてくれないか」と言ったそうだが
「後じゃなく今返事して」とムクちゃんが怒ったように言ったらしい。
それで雉雄くんは歯茎の痛みに必死に耐えて回らない脳みそが逆噴射して
「別れよう」って答えたらしい。
モチロンその後ムクちゃんは、かなり動揺してウロたえたらしい。

「この話し、マスターはどう思いますか」って問われた。
「そりゃダメだろ」なんては言えないよなぁ
最終結論を出した本人を目の前にしては。
だから「ん〜、雉雄くんがこの先、絶対に子供を欲しいって思ってるんだったら
ココは非情なんだけれども、別れるって選択の方がいいのだろうな」
と言ってやったが内心は、常日頃ロックな生き方を模索している雉雄くんなら
迷うことなく石女になってしまうムクちゃんを受け入れ
これからの人生を一緒に歩むのが漢だろって
オイラの中で青臭い恋愛感情が暴走したりもしたんだが。
でも、そう言いちまったオイラもオイラ自身を納得させるためにも
こう続けて言った。
「時代錯誤な考え方かも知れんが、オイラもそうなんだけど
長男って家督を継ぐ使命を帯びて生まれて来ているわけだし
まぁそれは、使命じゃないにしろ周りからは期待はされているワケで
それにはやはり確実に子孫を残さなければならないってことだ。
それにさ、オイラも雉雄くんも、いい歳こいたマザコンなわけで
孫をあやし喜ぶ、おふくろさんの顔も見たいし
やはり、子供は作れないと分かっている石女とは一緒になる事は出来ないな」
と付け加え、オイラの無責任な発言を、自分自身で正当化したりもしたが、、、、、、、、。

男として、人間としてあまりのも大きな問い掛け
それからのオイラの脳みそは自問自答でフル回転で焼け切れそうになった。

さらに同じカウンターに座ってた涙もろい熊は
焼酎の酔いも手伝って「あまりにもムクちゃんが可哀そすぎる」
少し間を置いて「彼女がそう言ってきたって事は
いっしょに、この病気と戦ってくださいって事だろうに」と言ってはオイオイ泣くし。
雉雄くん帰った後、熊は「なんて非情で薄情だ、人間としてクズ」とか
「今まで散々ロックだ、ロックだと言って置きながら、どこがロックやねん」
「もうあいつにはロックって言う言葉は使わせない」とか言って荒れるし。
そんな事オイラに言われたもなぁって
ゴラァ! 明日は待ちに待った狩猟解禁日だぞぉ。
そんな面倒くさい話しは持ってくんな。

家に帰って「さぁ明日の朝は狩猟だ狩猟だ、早く寝なくちゃ」と
横になって目を瞑ってもオイラの頭の中は、ピカーッと変に覚醒してて
やっぱり眠れない夜、頭蓋骨の中では脳みそがヒップホップダンス。
なんとなく眠れたのは明け方のカラスが鳴きはじめる頃。

ちっとも覚醒してないモウロウとした頭で朝遅く出猟するも
2年連続狩猟初日は獲物は無しってかorz。

もう嫌だってぇの、毎年こんなパターンはっ。。








オイラのなかなか鳴らないケイタイのベルが鳴った。
それは以前テレビ取材でお世話になった
ディレクターのワタナベさんからの電話だった。

今回のお願いは「犬とヤマドリと猟師と調理師」?という
年末に放映するテレビの特集番組作成の件だった。
「それは構わないけど、下手糞なオイラでいいのかぁ?」と聞いたら
「ちあきさんじゃなきゃだめだ」という製作部長じきじきの指名なのだそう。
なんという嬉しくなるオファー、くすぐりでしょう。
オイラはモチロン尾羽をフリフリOKOKの返事。 

でもちょっと、鉄砲ブチへの風当たりが厳しい今日この頃だから
大丈夫かなぁとも思ったが
「え〜い、いっちまえ〜」という事で、安請け合いした。

それには確実に番組が成り立つよう、場所を確保しなければならないので
調査を開始する事にした。
なんて言うと、仕事人みたいでカッコいいのだが
その実は普段通りのヤマドリ撃ちだっつうの。

さてヤマドリのネンコが、うじゃうじゃ居る沢を詰めて行くことにする。
脇を歩いていた銀親分が高鼻を使ったと思ったら
薄暗い杉林の中を、矢のような稲妻パシリが始まった。
居ますね、ヤマちゃん。
オイラはというと、しばらく上った所
右の枝沢と本沢の合流点でバックアップ待機。
 
山での待機5分って、里の20分には感じられるが
挙銃練習をしつつ辛抱つよく待つと
峰方向奥から銀親分の悔しがる吼え声ワンワンと聞こえたその後
ツバメが飛来、じゃねぇよヤマちゃん。

オイラは高度を保ったままの迎え矢はヒジョーに苦手。
なので、180度回転してからのケツ狙いの背後トラップ射撃に賭けるが
オイラを確認したヤマちゃんは急に右にそれ、右の林の斜面に着地。

あわてて駆け下りてきた銀親分に、指差し「右右右っ」と指図。
雑木の中に、まばらに生えている杉の林斜面に突っ込む。

ヤマちゃんが着地した地点から20mくらい離れた付近で
銀親分に追い立てられたヤマちゃんはたまらず
近くにある30mくらいの高い杉の木の枝に飛び移った。
やりましたね銀ちゃん、またまた きあげ ですぅ。

ヨッシと自分に掛け声を掛けて射程内に寄った。
そして、きあげした杉の多分ポイントに一発。
すると、その木の後方15mくらいの所に立っている
コナラだかミズナラだか分からないが、そんな太くない木が
風も無いのにユラユラと揺れた。
変だなぁと見ていると、その木の裏側を落ちるような早さで黒い物体が
地面に着いたと思ったら、笹藪を揺らしながら峰方向に消えてしまった。

オイラは一瞬の事で、なんなのか把握できなかった。
が、ワンテンポ遅れて「くま」だと理解。
「あ〜良かった、ヤマドリと間違って樹上の熊に弾を掛けなくて」と、フーっと溜息を付いた。

一応は熊弾を5発ばかし胸ポケットにしまってはいるんですが。
これは、ほとんどオマモリみたいなもの。
命のヤリトリしなければならない熊との対決だけは避けたいと
常づね思っているから、できれば使いたくないモノなんですけどね。

もしあの場所で、間違って熊に撃って当たっていたら
熊が斜面の上、オイラが斜面の下って事は
マタギでも撃たない危険な位置関係。
熊に100パー有利な場面なのだ。
だからオイラはホッと胸をなでおろしたのであった。

銀ちゃんはといえば反対斜面を捜索中で
熊の匂いは取らなかったのが山鳥猟中の幸いだと思った。

気色悪いこの沢はさっさと諦めて、次の沢を攻める。
程なくして銀親分の激しい動きが始まったので
それに負けじと付いて行く。
沢の上流、左にカーブした所で銀親分を見失ったので待機。

するとスグに左に切れながらヤマちゃん登場。
一発掛ける。
が、グラっと来ただけで、そのまま飛び続けるので
もう一発撃とうと思ったが、あまりにも位置関係が近すぎる。
ここでマグナムフォティーフォーをモロに撃ち込むと
ボロ雑巾になりそうなので、飛翔するヤマちゃんの少しばかし下に
銃身のリブを外し一発撃ちこむ。
ヤマちゃんはモンドリうって、深い笹藪に落ちた。
こういうマークハウスからの飛翔は、オイラのもっとも得意とするパターンで
我ながら落ち着いた処理だったなと、撃ち落とした自分に酔ってしまった。

さて回収だが、オイラの目の届かない笹薮とかの深いブッシュでは
知らない顔して、落とした獲物をマルッと喰ってしまう銀ちゃんなので
競争で笹薮に入るが、急峻なうえに深い笹薮にオイラは
ジタバタと、もがき苦しみ行く手を阻まれる。
銀親分は、そんなの関係ねぇとばかりに深い笹薮をガサガサと突き進む。

こういう時の対処法は、銀ちゃんがガサガサと
突き進んで行く音が途切れたところが、獲物が落ちているポイントなので
オイラは笹薮の中で息を潜めて、耳に入る音に集中。

ガサガサと言う音が消えたので
オレンジホイッスルの高周波のピッーを力込めてを吹く。

また、ガサガサ言わして銀親分近づいてくる。
このオレンジホイッスル音の呼び戻しだけは完璧に躾けているので
どんな場合でも強力だが、魅力的な匂いのする雌犬に遭遇した場合だけは
笛吹けど銀ちゃんの耳には入らずで、マッタク効き目が無い。
まぁ、しょうがねぇなオイラだって似たようなもんだからな。

そうして戻ってきた銀ちゃんに「つけ」をさせてから又「探せ」と号令を掛ける。
モチロン銀ちゃんは、さっきの獲物のポイントに戻るわけで
それを何回か繰り返している間に、オイラと獲物の距離を詰めて行く戦法なのだ。

そんなオイラが知らん所でヤマドリを喰っちまう銀ちゃんを殴りたくもなるが
彼が居なければヤマドリにも会え無いし
ましてや、行方不明な落とした獲物を探す事すらできないので
ここはジッと我慢して、銀ちゃんのケツを黙って追うしか無い。


地鼻は獲物との距離が近い証拠

この回収の件なんだが
犬無しのエアーライフル猟では撃った獲物を探せない事は往々にしてあった。
あのハデハデなキジですら枯れススキの中では、なかなか見つけ出せないし
これが牧草地とか笹薮だと、ほとんど見失う。

いつぞやは、川原のキジをエアーライフルで2羽撃ったのいいが
どうしても、もう一羽が見つけられなくて困っていたところ
上空から舞い降りてきた漁夫の利鷹に見つけてもらい
この盗人鷹を追い払らって無事に回収、てな笑い話もあった。
この時の鷹が舞い降りた地点は、何度も何度も捜索したはずなんだがね。

だからヤマドリなんかは、体自体が林の中で同化する保護色なので
犬無しだったら回収率はかなり低いとおもう。

そんな笹薮にもがきながらも、獲物の落下地点に着いた。
拾い上げたヤマちゃんの頭は有りましぇーん。
なんたって銀親分の大の好物は、ヤマドリの頭だからなぁ。
銀親分の取り分か、しょうがねぇな。

オイラが見渡せる開けた場所だと、完璧に持って来るんだがなぁ、、、、。
まぁ、身のほうは無事だったので、今回はヨシとするか。

これが鴨だったら、どんな見えない所からでも完璧に生きたまま持って来る。
やっぱりヤマドリと比べたら美味くないんだね鴨は。

と言う事で、本番当日は銀ちゃんに完璧な持来をさせなければ
いい映像と言えないので、ある程度ヤマドリの落としポイントを
考えながら撃ち落とさなければと思ったしだい。
なんてプチ余裕ぶっこいているキクチくんではありました。

さてさて撮影当日の朝、オイラの腕はグイングイン鳴ってます。
が、撮影隊は白鳥の絵を撮ってから来るから遅れるって電話があった。
鳥撃つ前に白鳥の美しい絵かぁ、合わねぇなぁ〜と思いつつ待つ。
その撮影クルーと合流して山に向かったのが7時半。
社長出勤である。

まず一発めは、今まで一番実績のあるピノキオ沢。
以前にも銀ちゃんを連れて山を歩いてる映像を撮った所でもある。
ホントは百姓屋の沢を攻めたかったが
まだ、お百姓さんは出勤してない時間だから、それまでの時間潰しである。

チョッとは期待して上り詰めていったピノキオ沢だが
ヤマドリの匂いは皆無。
早々に引き上げるも、お百姓さんの出勤時間にはまだ早いので
向井の沢に入る。
ここはホトンド期待薄なので、こここそホントの時間潰し沢だ。

さて、そろそろ出勤時間に近くなったので、本命の百姓沢へと向かう。
ここの沢はシドケやタラボウの宝庫なので
沢の入り口には、立ち入り禁止の札が立っている。
なので、全然関係ないテッポウブチのオイラでも
お百姓さんに挨拶してからじゃなきゃ、入沢は大変心苦しいのだ。
それに本日は大所帯で沢に入るので、なおさら仁義を通さないといけない。

現地に着いて、クルーが支度をしている間に
オイラは百姓屋に行って了解を得る。

カメラマンとか音声さんなんか居るので
お百姓さんは珍しがって寄って来て、あれやこれや根掘り葉掘り聞く。
後から婆さんがやって来て、畑には入らないように釘を刺される。
これだから、鉄砲ブチは小さく謙虚な行動を取らなければならないのだ。

お話しも一段落した所で、沢を上がることにした。
しばらく歩き、百姓屋からだいぶ離れた頃
銀ちゃんの感度が一気にあがった。

ちゃんと映像を撮れるような意味も込めて
「ヤマドリが出るぞ」と、撮影クルーに声を掛けた。

右のブッシュをかきわけていた銀ちゃんがポイント。
「出る!」と、静かに低く撮影隊に声を掛け
上手く撮影しろよと心の中で指令を出した。

その時、トビットビットビットビッとヤマドリがフラッシュ。
それに合わせるように、銃をスイングしてバン、バンでドスン。

これで銀ちゃんが落ちた獲物をくわえて持ってきたら
今日の撮影は完璧だなと思っていたら
獲物にすばやく近寄った銀ちゃん
笑いながらヤマドリをくわえて持って来てオイラの足元に置いた。

ほんとに絵に描いたような、そして流れるような一場面。
思わずオイラは心の中で叫んだね。
「完璧っ」と、そして映画監督のようにカチンコを心の中で鳴らした。

これでサッサと録画完了。
なんたって、オイラの身上は『仕事は素早く片付ける』だからね。

後ろを振り返り、撮影クルーにOKサインをだしたら
「最後の犬が獲物を運んで来るシーンが撮れませんでした」と。
「なにぃ、最後のクライマックスシーンが撮れなかっただとっ」と心の中で怒鳴った。
「あんなに良いシーンは、狩猟シーズンでもなかなか無いんだよ、どうして撮れなかったの?」
と感情を押し殺して聞いたらカメラマンが「バッテリー切れでした」と笑った。
「なんだとっ、銀ちゃんに謝れ」と言いたかった。


フンっ、俺はやだよ。

しょうがねぇから、獲物の落下地点に再度ヤマドリを置いて
銀ちゃんに持って来させようとしたら
「お拾い屋のレトリバーじゃね〜んだし、オイラの仕事はとっくに終わったもんね」と
銀ちゃんはテコでも動きません。
そりゃそーだ。
ほんとだったらポインターは獲物を捜索し
それにポイントした時点で仕事は完了なのだからな。
無理やりなんでもやらしている日本のハンターが
ポインターとしてのプライド損ねている部分がかなりあるからなぁ。
と言う事で、良いところを撮り切れない糞詰まり撮影だった。


店に戻って、オイラのノリがタイヘン悪いなかでヤマドリの料理撮影。

解体する所から撮ったのだが、これは多分カットだね。
なんたってディレクターが、剥いたヤマドリを見て
「眼が合った、気持ち悪い」なんて、ほざきやがったからな。


今回の料理はヤマドリのファルシィである。

ところで、ヤマドリは狩猟法では売買禁止なので
撮影の中で「今回のヤマドリの料理は無料サービスです」強く喋っておいた。
このテレビを見て、変に突っつく奴が出てくるとも限らんからな。

撮影中に県の鳥獣保護課に電話かけて聞いたら
「無償で食べさせる分には構いません」とのお墨付きをもらった。
念には念を入れて、警察の生活安全課にも問いただしたところ
「無償の場合は問題ありません」と、二重のお墨付きをもらった。
と言う事で、スカッとしない糞詰まり便秘な撮影であった。

クリック↓
 銀ちゃんの一番良いところを撮り損ねた証拠のカット











明けて次の日
便秘を解消すべく、山に向かう。
沢の入り口から、銀ちゃんがソワソワして怪しい動きを見せるが
決定的な残臭じゃなく、かなり薄い臭気とみた。
そんな銀ちゃんを、後付けで制止ながら奥へと進むと
ゴムパチンコを放った時と同じような感じで銀ちゃんは
オイラの脇をパンとすり抜け、左のまばらな杉林に突込んで行った。

銀親分は杉の木の枝払いが終わった残枝の山を
200mハードル走のように、前足をピンと伸ばしジャンプしながら
速度を上げる矢のような姿には、いつ見てもホレボレする。
それに負けじと、オイラも林道をスピードを上げ追従したが
モチロン、付いてはいけない。
こういった場合は、銀親分の姿が見えなくなった所で銃を構え
ヤマドリの沢くだりにそなえ、迎え撃つ態勢を備えるのだ。

30mくらい向こう左ての杉林から、赤い十字架が飛び出してきた。
これは完全に戴きだなと、構えた銃身のリブに赤い十字架を載せて一発。
あれぇ〜、完璧な捉え方だったのにぁ、落ちましぇん。

完璧に撃獲ったという驕りからか、二発目、三発目は焦ってしまって当たりません。
しかし一発目を撃った付近で、ヤマドリの尻毛がフワリフワリと浮かんでいたので
半矢だったかもしれないなと、銀ちゃんを呼び戻し捜索させたが
銀ちゃんの臭い感度は上がらないのであった。

半矢じゃなく、カスリだったのかもなぁと思いつつ
ここは潔くあきらめて沢の奥へと詰めたのだったが
ヤマドリの臭線は無く、ションボリとして帰路に着く銀親分とオイラ。

先ほどの一戦を交えた場所近くで、一羽の熊鷹が地面から飛び立ち
シマシマの尾ッパの残照を残して、空高く舞い上がって行った。

ア〜、これがヤマドリだったらなぁと思っていると
後に付いてきている銀ちゃんがオイラの脇をスルリとすり抜け
15mくらい先で、何かをくわえた。
オイラは?を抱きながら小走りに寄って行った。

そこには紛れも無い、赤い十字架 ヤマドリ。
「おぅ〜、これが噂の鷹落としかぁ」と、銀ちゃんからヤマドリを取り上げた。
チョッと不機嫌な銀ちゃんには、大好物の魚ソーセージをあげ納得してもらった。

儲けもんのヤマドリは、右太ももの毛が綺麗に剥かれ
これから本体の毛むしりに移ったところで熊鷹に喰われるところだった。
まだ生暖かい体を、手袋を脱いだ素手で触りながら
「ん、まてよ」これってオイラが先ほど三発打ち込んだヤマドリじゃないかと思った。

体全体を眺めてみても、銃創の傷は見当たりませんって
普通に撃獲った奴でも、フワフワの毛に覆われたヤマドリの
銃創は見当たらないモノだから、帰ってからの解体で検証だなと思った。

なんとなく、モヤモヤした気分で車を運転しながら店へと向かう。


完全にお休みモード

銀親分は車の後ろに積んだバリケンの中で寝ています。
彼はバリケンの中が大好きで、家に着いて車のバックドアーを開けても
まったく降りる気配は無く、バリケンの中でマッタリとしているのが常である。
なので、このままの状態で何時間でも大人しく収まっているので
オイラとしては気兼ねなく時間を使えるので気分的に大変ラクだ。
そんな銀ちゃんを車の中に残したまま、店の厨房でヤマドリの解体。

ありましたね、銃創が。
それは右ボッチからショットが一粒入り内臓部位で止まっていました。
これでオイラは、モヤモヤを晴らしスカッとした気分になったと言いたいところなのだが
最後は漁夫の利的な回収だったので
これでまた今日も糞詰まり気味の便秘猟なのであった。

なんか面白くないまま、収録の日から三日目の朝。
遅ようから山に出かけたのであった。

一つ目の沢では、遠くでの飛び立ちがあっただけ。
狩猟解禁から2週間も経つと、なかなか近くには寄らせてもらえなくなってきた。
二つ目の沢には、山仕事の作業道で一つ目の沢と繋がっているので
銀ちゃんを先等に、車で付いて行く事にした。
これで行くと、途中の道沿いで臭いがあれば銀ちゃんが感度を示すので
そん時はスグに臨戦態勢には入れる。
ある意味手抜きの猟でもある。
オイラはこれを「ラン&ガンショット」とよんでいる。
これは、雨の日とかは自分が濡れなくても済むので
かなりイケテル猟だと思うのだが、銀ちゃん的にはどうでしょう。

そんな銀ちゃんは下り坂を更にスピードを上げ35kmで走っていく。
オイラもまけじと付いて行くが
チョッと運転を間違えば谷底に落ちてしまうので
脇の下はビッショリとなりながら、なんとか付いて行く。


脅威のジャンプと走力を生む筋肉

見通しのよい直線の下り坂。
さらに加速して行く銀ちゃん。
すると、銀ちゃんのすぐ目の前をギジ君がノウノウと
この作業道を、まさに横断するところ。
とっさの事で銀ちゃんは、このノウノウ雉をポーンとジャンプしてかわしてしまった。
そして、四本足を全部使って急ブレーキを掛け落ち葉を散らした
漫画によくあるようなシーンに、オイラは思わず笑ってしまった。
それを知ってか知らずか、銀ちゃんはテヘッみたいな顔をして戻ってきたが
すぐに真顔になり笹薮に消えた雉くんを追って銀ちゃんも笹薮に消えた。
オイラは銃を持って車から降り、銃袋を外し弾を込めて待機。
ほどなくして笹薮かなり上空を滑空し左に大きくそれて行った雉くんには発砲できなかった。
それに続き笹薮から出てきた銀ちゃんには「アホだったねぇ」と声を掛けてやった。


ホレボレする上腕筋と胸筋

またラン&ガンショットの続き
二つ目の沢の入り口に着いたと思ったら銀ちゃんの感度が一気に上がった。
素早く車から降りて銃の準備をして、それに続いた。
オイラは銀ちゃんの臭線を特定するスピードに遅れないように付いて行く。
上流、大きな岩をかわして上に出たところで潜水艦ポイント。
それにしてもこの姿、いつ見てもシビレますねぇ、完璧にいますねぇ。
オイラはポイントしている銀ちゃんの上に出て待機するが
銀ちゃんはポイント解いて、沢を猛スピード駆け上がっていった。
ハハーン、ヤマちゃん上にハイスピードで這って行ったな。

しばらく待っていると沢の上流右カーブから突然
赤い塊がオイラの目の下くらい位置でジェット飛来。
ハイ、オイラは銃を構える事すらできませんです。
ですが、オイラ得意の180度回転、背後トラップ射撃。

沢の下流、右カーブに入る手前に、どうにか銃身のリブに載せる事ができバン。
右にチョッと傾いたままカーブの向こうに消えたヤマちゃん。
絶対に一粒くらいは当たってるなと、確信しているところに銀ちゃん登場。
「あっちに行った」と指図しながら沢を下って行った。

ヤマちゃんが消えたカーブを過ぎた辺りから銀ちゃんに弱い感度。
地鼻を使い必死に臭線を追う銀ちゃん。
その体制のまま、しばらく沢を下るが
実は一粒も当たってなかったのかと、頭をひねりながら沢を降りていった。
銀ちゃんは下り沢の右斜面の若い唐松林にスルスルと消えていった。

ダメなんだろうなと思いつつ、銀ちゃんが消えたポイントで一応待機。
しばらくして、若い唐松林の間からチラチラと銀ちゃんの姿。
やっぱり探せなくて戻ってきているようだなと思いつつ銀ちゃんの頭部を見ると
ななななんと、その口には長いオッパのヤマドリ。
エエエエェッ、と思いつつも銀ちゃんの帰りを待っていると
ヤマドリをくわえた銀ちゃんは笑いながらオイラの足元に置いた。
それは、まだ絶命していないらしく
大きな足で落ち葉を蹴って5歩6歩と逃げ出したが
銀ちゃんが再度取り押さえてジエンド。
そして今度はガブリと噛んで息の根を止めた銀ちゃんはさらに喰らいつき
羽根をむしり始めたので「まて」でヤマドリを取り上げた。
もちろん、面白くない銀ちゃんには、ご褒美の魚ソーセージ。

ほとんど諦めかけていた半矢のヤマドリを回収し持来してきたのには
おおいに嬉しさが込み上げ大感激したのは言うまでも無いこと
更に魚ソーセージを追加。
こうなると、更に愛おしくなってくるってもんだ。


このヤマドリにして、この巨漢。

犬の鼻感度は人間の2000倍と言われているが
それにしても、銀親分のそれは原子力潜水艦の
魚雷ソナー並みの高感度だなと、深く感心したしだい。


砂肝でさえこの状態

店に戻ってヤマドリを計量してみると1.45kgかかったほどの最重量級だ。
だから、高くは飛べないでオイラの目の下を滑空してきたのだったと納得。
このぐんだとたぶん脂の載りが良いのだろうと腰の毛をむしってみる事にする。
こうする事によって皮を剥ぐか、毛をむしるかを見バロメーターにしているが
そこにはバターのような黄色い柔肌がみえたので毛をむしる事に迷わず決定。
この毛をむしっている間にも皮膚から、バターのような脂が滲み出てくるほどで
近年に類まれなるブツに、感激のあまりヨダレが流れてしまうほどだった。


このガラでとったブイヨンは、ラーメンでもいけるほどの脂

こうしてやっと、この一件で昨日・一昨日の糞詰まり便秘状態が解消されたってワケなのだった。













挙銃練習の謎
今年は今までやってきた狩猟の中で、一番多く挙銃練習をやった。

先シーズンは狩猟を甘く見「今年もバリバリ行くぜ」と気合だけで
挙銃練習は全くせずに狩猟解禁に突入したのだが
出るヤマドリ、出るヤマドリに、まったく当たりましぇん。
「なんでこんなに当たらないのかなあ」って、原因は我に有り。
だから、よ〜く自分自身を観察する事にした。

銀ちゃんが風に載って来る薄い匂いを捕って、臭線をたどって行く。
そして、杉林に突っ込み姿が見えなくなる。
ヤマドリが飛び立つ方向を定め、今か今かと銃を握る手に力が入たまま
緊張感をはらみながら待つ。
そして自分の考えていた方向では無い方から
ヤマドリが突然、ものすごいスピードで自分がいる方へと滑空して来る。
そしてオイラはいつものように、泡を喰って銃を構え発砲する。
もちろん当たりません。
ヤマドリ自慢の長いオッパを見送り、そして銃を降ろし
「やっぱしダメだったかぁ」と、ガッカリしてしまうのだ。
だが、今回は銃を降ろさず、その撃った構えのままフォームチェック。

まぁ、それはデタラメな事この上ない酷い挙銃。
まず99%、自分の右頬に鉄砲の銃床が付いてません。
ひどい時は、顎で銃床を抑えているありさま。
もっとひどい時は、胸で銃床を押さえている。
つまり、銃身のリブを通して獲物を見てるのじゃなく
ただ単に獲物その物を目で見て、撃っているだけのビックリ射撃。
っていうか、暴発だなコリャ。
当たらなくて当然。

山窩衆の特攻隊長、大桜親方は酔っ払うと
いつも右手の親指付け根を自分の頬に当て
「射撃で一番大事なのはな、頬付け、頬付け」と
呪文のように唱えながら酒を飲む。

矢巾射撃場の武藤場長が言った。
「射撃場に毎週来るくらいなら、家で毎日挙銃練習を50回やった方が腕は上がる」

「そうだよなぁ、挙銃練習だよなぁ」という事で
前年はシーズンなかばで、挙銃練習をし始めるテイタラク。
やがてヤマドリシーズンが終わりになる頃、ようやく当たり始めたのであった。

だから今シーズンは狩猟に対する気持ちを入れ替え
夏の鮎釣りシーズンも終わり、残暑が終息し涼しくなった頃から
毎日挙銃練習を始めたのであった。

最初、一日200回2セットとか、挙銃練習をやっていたが
筋力が元々弱いオイラの右二の腕の筋肉が腱鞘炎になってしまった。
だから回数を減らし、フェルビナクを二の腕に塗り塗りケアーしながら
一日60回に絞って、シュチュエーションを考えながらの
回数よりも中身で勝負の練習にチェンジした。
その甲斐あって今シーズンは、解禁日ショッパナからヤマドリが面白いように落ちます。

それより凄いのは、狩猟4シーズンめに入った銀ちゃんの猟芸が一気に向上した事。
銀ちゃんは常にオイラの位置を意識するようになり
こちらの方にヤマドリを追い出すは、追い出すは、その確立9割。
あらぬ方向に飛び立たせるのは、数えるくらい。
それにもまして、いろんな猟芸を見せ始めた事が挙げられる。


木あげの謎
鉄砲屋のオヤジは「ポインターは木揚げ出来ねぇから、ヤマドリ撃ちには赤犬が最高だな」
「それはよ、ヤマドリは常日頃から狐を馬鹿にしてて
近かくまで寄って来ると、ピョンと木の枝に跳び載り狐をからかうんだ。
だから狐に見間違う色の赤犬が、ヤマドリ撃ちには最高だ」なんて言っていたが
トコロがドッコイ銀ちゃんは白黒まだら模様で、まったく狐には見えないのだが
木揚げをするようになったんだな。
最初はタマタマ偶然に木揚げになったのだなと思っていたのだが
それを何回かするようになって、ポインター銀ちゃんは
確実に木揚げをするのだと確信した。

オイラの近くで木揚げをした場合、吠えないで木の下で獲物を睨んで待っている。
だから、オイラは急いで木揚げした木の近くに行ってサクッといただき。

このとき「木揚げしたヤマドリに幾ら発砲しても落ちては来ない」
と言うのが鉄砲ブチの定説。
「何故なら、木の枝と葉っぱが邪魔をして弾がヤマドリに当たらないからだ」
と言うけど、オイラのカートリッジはフォーティーフォーマグナム。
だから発砲した途端、杉の枝とともに一緒にヤマドリが落ちて来る。



44マグナムの謎
「32gのカートリッジも44gのカートリッジも
 鉛弾が多いだけで、たいして威力は変わらない」って言う方もいますが
「弾を1/8oz増量するごとに有効射程は2〜3yd伸びる」と
ウインチェスター・スーパーXの説明書きにあるという。
これが少ないとみるか、多いと見るかは意見が分かれるところだが
これを基にして計算してみると、44gの装弾は32gの標準装弾より
7〜10ydくらい伸びる計算となるので
オイラ的には馬鹿にはできない数値だと思うんだが。

実際、鴨猟では小さいと言われている5号クラスの弾を
26incスキートチョーク銃身を使って、50mくらいの遠射でも充分効く。
その射程範囲は驚異的だと思うのだ。
それに32gの鉛弾を押し出す火薬パワーと
44gの鉛弾を押し出す火薬パワーは
素人考えでも大きなエネルギーの差が有ると分かる。
だからフォーティーフォーマグナムは
とんでもないエネルギーを鉛弾に内包しているので
枝ごとヤマドリを撃ち落すなんていう、そんな荒業も平気でこなすのだ。
だから、これなくしてはオイラの猟は語れなくなってしまった。

ただし、欠点は他の装弾より価格が高い事。
反動がものすごい事。

価格が高いと言っても、遊びに金が掛かるのは周知の事実。
ヤマドリシーズン中250発撃っても44000円。
2ヶ月44000円でドキドキ感を味わえれるなら
キャバクラで、おねぇ〜ちゃんをからかって遊ぶより、はるかに安い!
それと鮎竿なんか、競技スペシャルクラスになるとほとんどが30万円以上。
それに比べりゃ、鉄砲ブチはいかに安い遊びかと。

フォーティーフォーマグナムの反動は、ものすごいと言われている。
確かに撃っている自分の姿をビデオで見ると
撃つたびに上半身がガックンガックンと衝撃を喰らってて
「大変な事になっているな」と思うけど
撃っている本人は「獲物を撃取りたい」っていう一心で撃っているので
そんなに衝撃は感じないものなのだ。

それよりも、射撃場の28gの装弾でのクレー射撃している方が反動はある。
風呂に入るとき、鏡に映った自分の肩の付け根に青アザが出来ているくらいだから。
なんで、軽装弾の方が反動が凄いの?

重装弾はパターンが乱れて危ないっていう都市伝説、じゃなく山伝説がある。
クレー射撃専門の方も言う
「ショットカップにスクエアーチャージされた装弾じゃなければパターンが乱れる」と。
もちろんフォーティーフォーマグナムは
ショットカップには入り切れないほどテンコ盛りに入っている。
なんったって2・3/4incのカートリッジに、詰めるだけ詰めた結果が44gなのだから。
そのショットカップの下のダンパー部も申し訳無い程度の物しか付いてない。

でも普通に考えてみると、カンパニーコンプライアンスがうるさいこの御時勢。
それにもまして鉄砲っていう危険きわまりない飛び道具で
これ以上「危ない」なんていうものは
企業の責任賠償問題を考えても作らないし、売らないはずだ。

結果検証だが、鴨撃ちで半矢にしてしまい
川幅が100m以上ある川の中ほどに落ちた鴨が
対岸に向かって泳ぎだす前に、止め矢を撃つわけなのだが
この時使用する弾が7.5号28gのカートリッジを使うのが猟師仕込みの小技。
持ち合わせが無いとき、フォーティーフォーマグナムで間に合わせで撃つ。
その時の水面のパターンと、止め矢に使う7.5号のパターンを比べてみると
ほとんど変わらない感じだ。
モチロン、あらぬ方向に飛ぶ暴れ弾も見当たらない。
反対に7.5号28g装弾の方がパターンが散らばるような気がするのだが、気のせいか。

と、話しはだいぶ逸れたが、木あげの謎 その続き
オイラが行けないって言うか、行く気も無い遥か遠い峰方向で木揚げした場合
「ワンワンワンワンワン」と、山じゅうに響く良い声で吠える。
それを合図に緊張して待っていると、やがてヤマドリが飛来して来る。
迎え矢に弱いオイラでも、事前に来るぞと分かっている場合だと
峰方向に銃を構えで待っているだけで済むのでラクチンである。
が、思ったより獲れてないのは、オイラのキャナが悪いから。

ポインター飼い暦40年のマゴさんに言わせると
「ポインターは、セターと違ってポイントしてから
フラッシュさせる時の瞬発スピードがエラク速い。
だからヤマドリは、飛び立つ用意はしているんだが、瞬発的に突っ込まれるので
慌ててしまい、近くの木に飛び載る」のだそう。


まっ黒い謎
狩猟解禁してすぐ、一の沢を詰めていったら、銀ちゃんの木あげが炸裂。
ぴょんとヤマドリが飛び乗った、ミズナラの若木に急いだら
その近くにある、コナラの若木が、大きくユーラユラと揺らいだ。
おかしいなぁ、風が吹いてもいないのにと
コナラの若木を凝視していたら
なななななんと
コナラの後ろ側を、真っ黒い熊が落ちるように降りてきたのであった。
そして、あっというまに笹薮を揺らしながら峰の方へと駆け上っていきました。
もちろん、ツキノワグマはオイラの対象とする獲物ではありません。
銀ちゃんを呼びつけて、触らぬ神には祟り無しとばかりに、そそくさと山を下りました。

以前にも、刈り残したデントコーン畑で雉を狙おうと下手から畑の中に入ったところ
ガサガサガサという音がして「人でもいるのかなぁ」と
音がした方を凝視していると、まっ黒い熊が畑を駆け上ってガードレールをくぐり
山向こうに逃げ上っていった。
銀ちゃんはオイラの制止を聞かず追いかけていった。
「あ〜あ、熊にやられるぞ」と見守っていたら
山の中腹あたりで盛んにワンワンワンと吠えていた銀ちゃんだったが
しばらく待っていると、何事も無かったように降りてきたのでホッとした事があった。
そのデントコーン畑の逃走経路を辿ってみたら
ベッチャリとした黄色い熊の脱糞が途中途中にあった。

マァ、どちらにせよ、熊を撃ち獲る自信はまったく持ってないので
熊を見たらトットと山を降りるっていうのが、オイラの中での鉄則だ。
熊撃ちの猟師が言うには、心臓を捉えた弾を撃ち込んでも
熊のアドレナリンが湧き上がっている状態だと
間違いなく反撃に出てくるという話は、ほうぼうで聞くからだし
「自分より上手にいる熊を撃ってはならない」っていう、山の鉄則もあるからだ。
それは手負いじゃ無く、致命傷を喰らった熊は、重力を味方につけて
坂を落ちるように猛スピードで駆け下り、最後の反撃に出て来るからだ。
これで命を落とした鉄砲ブチは数知れず、だそう。

だから意気地なしのオイラは「熊イコール逃げる」なのだ。



ヤマドリが陣取っている一の沢


ヤマドリの匂いの謎
遠くに居るヤマドリの匂いは、ヌルリ、ヒョロリ、ピャワーンワーンと
山肌を這って縫うようにやって来る。
だから銀ちゃんが跳んで行った方向からヤマドリが飛び出して来るとは限らない。
筋向かいの峰から飛び出してくる事はよくある事だ。

このヤマドリの匂いは「水の流れと同じだ」と言えば分かりやすい。
水の流れ出しを、ヤマドリの居る場所に例えると分かりやすい。
ヤマドリの匂い流れは、木に当たりフタマタに別れ
石に当たり又、フタマタに分かれを繰り返し
臭いが分散し、希薄して行くものだ。
この匂いの本流を確定し追い詰めていくのが
ヒトの2000倍の嗅覚がある犬の鼻なのだ。

今年の銀ちゃんは更に磨きが掛かって、かなり遠くからでも風に乗ってやって来る
ヤマドリの薄い臭いの本流を即座に確定し、一直線にその匂いの源流に跳ぶ。
その時、オイラのほうをチラッと見て
「オヤジそこで待ってろよ、追い出して来るからな」
「分かってんだろうけど、くれぐれも外す事は無いように」
と言い残し、林の中に消えていく。

そして待っていると、確実にオイラの居る方向に向かってヤマドリは飛んで来るので
目の前120度全方向に神経を集中していなければならない。
銃を構えるオイラは、視野が一番広くなる所
(飛んで来るヤマドリの飛行線が一番長く見える所)を確保し、立っているだけでいい。
が、待ちくたびれて気を抜いた頃、突然飛んで来るヤマドリに
「えぇーッ」と慌ててしまい、見送りが多いのも事実だ。


ラウンドワークの謎
今シーズン一番の猟技はと言えばコレ。
猟犬の世界には、ラウンドっていうグランドワークがある。
教えたわけじゃないが、これを本能的にこなしてしまうのが銀ちゃんだ。
昨シーズン、山の中の牧草地を横切っている作業道を
銀ちゃんの走る後姿を追って車を飛ばしていた。
ちょうど牧草地の端に来て、ちょっとした崖沿いの道に差し掛かる頃
銀ちゃんが感度を示した。

この牧草地ではキジを見かけていたので
「な〜んだ、キジかぁ」とも思ったが
「コリャいかん、差別は」と、気を取り直して車から飛び降り
銀ちゃんのポイントしている後ろにピタっと付いて銃を構えた。
その時、銀ちゃんはオイラの顔をチラッと見て
「黙ってソコに居ろよ。」と言った。

そして10mほど作業道を下り、崖下のボサを掻き分けるように静かに降りて行った。
「なんだアイツ、偉そうに」と思っていると
オイラの足下からベチベチベチっと音がしたかと思ったら
目の前に赤いほっぺのヤマドリがチチチチッと舞い上がって来た。

キジだとばかり思い込んでいたオイラは
突然出てきたヤマドリに驚いてしまい銃を構えるのが遅れた。
かえってそれが幸いしたのか、ソコソコの距離を飛ばしてから撃ったので
散弾の弾が広がり、弾幕が荒くなってから当たったので
肉が荒れることなく射穫できた。

その音を聞いていた、ここの部落では顔役のニイサトさんがやって来て
「一発しか聞こえなかったから、キジを落としたべ」と言ったが
「いいや、ヤマドリだった」と言ったら
笑ってはいたが、ちょと悔しそうな顔をしていた。

そんな獲物の居場所を突き止め、獲物に遁走されないようガッチリとポイントをしてから
大きく回り込んで、オヤジの居る方へ獲物を飛び立たせる猟技が「ラウンド」
これが出来ないと、イングリッシュポインターや
イングリッシュセターの世界では、威張っては生きて行けないらしい。

もう一つ。
大きな林道を銀ちゃんを先導に車で走っていると感度が上がった。
素早く車から降りて、銀ちゃんの後を追って杉林の中に突入。
10mばかし入った所でポイント。
「よ〜し」と思ったが、この植林地は緩い傾斜なので
どこに飛ばれるか分からない、見当を付けるには難しい地形だ。
などと考えているうちに、銀ちゃんはポイントを解き
オイラの方に8mばかし戻り、オイラの目の前を右に曲がって
円弧を描きながらソロソロと進んで、ヤマドリとの間合いを詰めながら
一気にジャンプをしながら突っ込み、オイラの方へヤマドリを出してくれた。
これが先シーズン確認したラウンドワーク2例だ。

今年は出るヤマドリ、出るヤマドリ、その9割がたオイラの方に向かって出て来るから
オイラの見えない所で、ラウンドワークをしているに違いないと思っていたその日は
メンチョばっかり飛び出しヤル気が喪失した、お昼過ぎ。
「店に戻って、ヤマドリ蕎麦でも食おうかな」と、お気抜けモード。
オーラスの大きな沢を目指しドンドン進んで行った。

とうとう最後の車止めまで来てしまったが、銀ちゃんの感度は上がらず。
で、「帰ろ帰ろ」なんて、車をユーターンするかと思ったその時
銀ちゃんの動きが、モンローです。
「むむむっ、居ますね」

この谷は真ん中を沢が流れ、その左側ゆるい斜面に背の丈くらいの低い唐松のまばらな林。
そして、右側斜面は、谷から10mくらい上に木出しの作業道があり
全方向380度100mは見渡せる絶好な作業道から外れた膨らみの所には
オイラが銃を構えて立っている。

銀ちゃんが沢をスルスルと上って、左斜面の唐松林に突っ込んで行く。
その先にはツル植物が絡らみあっているブッシュ。
そのブッシュに向かってビシッとポイントが決まった。
「出るなぁ、完璧に」でも、だだ広い開けた場所なので
どこに飛ばれるか分かりません。
なのでオイラは四方八方どこに飛ばれてもいいように
ツルが絡み合ったブッシュに向けて集中していた意識を
いったんズームアウトさせ、広範囲に意識を巡らした。

その時まさに銀ちゃんはポイントを解き、大きく円弧を描くように回り込み
上の方に駆け上がります。
そして、重力を味方に付けブッシュめがけて落下三段跳びで突っ込み
ヤマドリに逃げ道を考えさせ無い】スピードでフラーッシュ。

ヤマドリが勢いよく飛び出したのは、まさにオイラに向かってドンピシャの角度。
まん前に舞い上がります。
ここで外したら銀ちゃんに何言われるか分かったモンじゃない。
チョト緊張して銃身のリブに、そのヤマドリを載せてバッキュン。
見事に、オイラの立っている斜面下の雑木に絡まってる
ツルのかたまりの上にドスンと落下。











叉鬼の佐藤さんからの頂だいたガーバー2丁。



回収の謎
先シーズン、鉄砲屋のオヤジに
「犬に回収を徹底させるにはどうしたら良いべ」って聞いたら
「バンと撃って鳥を落とし回収したら、 犬にマテをさせ
鳥の腸を取り出し、御褒美にそれを食わせる」
「これを何回も続けると、落とした鳥の腸を喰いたいがため
チャンと持ってくるようになる」とオヤジは断言したので
今シーズンからソーセージの御褒美は止めにし、腸を与える事にした。


師匠からの頂だいた、レミントン・バードナイフ

それはこーだ。
撃獲ったヤマドリの肛門にY枝を深く差し込み
グリグリとY枝を3回くらい回し、Y枝の半分くらいを引き抜く。
もしくはレミントンのハンティングナイフに付いている
U字型のガットフックでもいいが、汚れたまま折り畳むと気分が悪くなるので
オイラは使い捨てのY枝を使うことにした。


自信作のY木

そして、肛門の周りにガーバーのピキシーで、グルっと切込みを入れてから
腸をそっくりと引き抜き、これ以上引っ張れない所で切り離す。

そんなヤマドリの大腸を取り出している作業を
銀ちゃんはジィッと、オイラの手に穴が開くほど見詰めている。
そして銀ちゃんの目の前に、ヤマドリ本体と大腸のテンコ盛りを並べて置く。
ちょっと間を置いてから「よし」と号令。
どうなるかと見ていると、大腸のテンコ盛りを一気喰いする。
次はヤマドリ本体に行くのかと見ていると
ヤマドリ本体には目をくれず、大腸のテンコ盛りを置いた雪面をペロペロしている。
「そっかぁ、銀ちゃんはヤマドリの大腸を喰いたかったのかぁ」


硬度が高すぎて研ぐのに苦労するピキシー

んでも近頃は適当な枝を探し、削り出すのも面倒くさくなってきたので
肛門にナイフを入れ胸骨まで切り裂き、親指と人差し指を入れて
グニュっと腸を引っ張り出し、小さな胃の所でカットしている。
このほうが、ヤマドリ独特の胆汁の匂いが残らないし
新鮮な体液はそんなに臭くなく、我慢できる範囲内だから
体液が付いた指は、雪を一掴みにしてザラザラと擦って終わりにしている。


物持ちの良いオイラの所蔵品は、小学校の帰り道にあった10円クジ屋から
50円で買った肥後の守





モンローウオークの謎
今シーズンの印象に残った場面、その2。
まぁ、いつ見ても感心するんだが
「なんでこんなに遠くの匂いを捕れるのか」って言う事だが
これが時として邪魔をする。
鼻が利き過ぎるので、獲物から遠くでポイントをしてしまう事がある。
だから、ポイントしたままソロソロとモンローウオークで歩きだし
延々と20mくらい進む事もある。
こちとらとしては、緊張の糸が、はち切れそうになりながら
心臓ドクンドクンで、歩くのも辛いっていうのが難点だが
このモンローウオークが出たときは、アラジンUのドラムが
ニュルン、ニュルンと滑ってBIGが確定した時と同じ興奮を覚える。
って例えが、かなり古すぎたな。

と言う事で、銀ちゃんのモンローウオークが出た時のオイラの射穫率は低い。
何でかって言うと、あまりにも近くから飛び立つので
ヤマドリを見過ぎてしまい、ズバリそのモノを撃ってしまうからだ。
この場合も、ちゃんとリード(狙い越し)を取ってスイングしなければ
オッパの後方を弾が通過してしまうって、分かっちゃいるけど
いきなり目の前5mくらいの至近距離で、ベチベチベチと羽音高く飛び立たれて見ぃ
ビックリこいて、そのモノしか目に入らなくなるからって言い訳。

そんな銀ちゃんがポイントして、モンローウオークに移った時
ウンコをポタンポタンと垂れながら進んだのには
「そこまでするか」と、ひとり笑ってしまった。




ポイントが固い犬の謎

神経質で臆病体質のポインターに有りがちな話として
「ポントが固すぎる」というのがあって
ガッチリとポイントしたのはいいが、そのまま微動だにしないで
(まるで、彫刻のように)
オヤジが「ゴー!」とか「行け!」とか号令を掛けても
飛び込みのタイミングが計れないのか、いつまでも獲物とニラメッコ。
オヤジはコレで、いつもイライラし声を枯らす。
最後の手段で愛犬の尻を蹴って飛び込ませる。
だが、あまりにも至近距離すぎて、飛び出した獲物は落とせなかったと言う話し。

さらに、こーゆー話もある。
オヤジの見えない遠〜くでポイントしたのはいいが
そのままヤマドリと永遠にニラメッコしてしまい
両者そのままの状態で、凍死してしまったと言う話。
雪が解けて、春の山菜採りに来た山の商売人が
にらみ合ったままの状態で横たわっている
ヤマドリと狩猟犬を発見したという。



セルフハンティングの謎
今日も来ました一の沢。
そんな沢の中腹あたり、1mくらいの岩がゴロゴロしている枝沢に差し掛かった時。
銀ちゃんは、そのゴロゴロしている岩の腹を蹴って左右にジャンプしながら上っていく。
まるでヤマシギの稲妻緊急逃飛行みたいにだ。

そして3mくらいある岩に差し掛かると
そのスピードに乗ったまま、一気に真直角な岩肌を蹴り上がり
岩の頂点で、裏側に飛び込みジャンプした。
もちろんオイラは、ヤマドリが居る事が分かっているので
銃を構えて「いつでも、いらっしゃ〜い」の体制を整えているのだが、、、、。

その大岩脇から出てきた銀ちゃんの口にはオッパの長いヤマドリが。
「あれぇ〜」やる気マンマンのオイラの気勢は、見事に砕かれてしまいやした。
銀ちゃんは、この時ばかりは「どうだ」と言わんばかりに
(猫がネズミを捕らえて家族の元へ持って来て見せびらかすように)
オイラが立っている所まで持って来て「エッヘン」と威張ったのであった。
「ハイハイ、あんたは偉いよ。」


持来してきたものの、ほんとはマルッと喰いたい銀親分

銀ちゃんの口から出したヤマドリは、まだピクピクしていた。
そんなヤマドリの胸を、足で圧迫し息の根を止め
大腸を取り出し御褒美に与え、本体はポリ袋に詰めて次の沢を目指します。


ラン&ガンの謎
ここの沢は一の沢とは違い、かなり大きい沢なので林道が付いている所です。
だから沢の入り口で銀ちゃんを下ろし、オイラは車で後を付いて行きます。

そうです「Ran&Gun」略して「ランガン」です。

はい、とっても楽チンな猟です。

途中、何回か感度を示しましたが認定には至らず。
さらに奥へと進むと、枯れた枝沢の所でスルスルと入って行きます。
でも、迫力ある進み方じゃないので?付きの薄い臭線とみたオイラ。
が、「犬を信用しろ」とは、鳥撃ちの格言です。

枯れ沢を広く見渡せる場所を確保し、銃を構えて待ちます。
しばらくすると、峰方向遠くからから小さく見える十字架が
速度あげてオイラの方へと飛来
だんだん大きな十字架となって、更にスピードを上げてきます。
このままオイラの方に来るのかなと構えていたら
本沢をまたいで右の杉林の方向に切れて飛んでいきます。
距離
その距離40m、射穫にはチョト無理があるかなと思ったが
鴨撃ちの時の事を思うと、これくらいの距離でも充分だろうと踏んだ。

推定40m先を横切れして行く赤い十字架の前方3mくらいが狙い越し点だなと推定。
リードしながらの発砲一発でガクンと首折れ落下。
そしてドスンと言う派手な音が、本沢じゅうに響いた。
こうして、今日も定量?となった一日もありました。


半矢鳥の行動の謎
そんな多穫した今シーズンの中から得たモノは
「撃ち落したヤマドリは命が途絶えても
力の有る限り勾配の下の方へと突っ込ん込んでいく」と言う事。
とにかく撃ち落したヤマドリの十中八九
まだ息をしている間は、とにかく「下へ下へと逃げて行く」ものだと分かったのは
テッポウブチの義務、半矢回収をする上で大きな知恵の収穫であった。
これが鴨の場合は、半矢状態で泳げなくなると陸に駆け上がり
岸辺の身を隠せる所でうずくまっているというのも分かったのだ。


多穫の謎
こうして、61日あるヤマドリの猟期、出かけた日は57日。
でも、店の仕込があるので、一日あたりの実動時間は長い日で3時間
仕込みが立て込んでいる日は、30分てな日もあったが
それでも通った。

そうまでして毎日通うのかっていうわけは
今年の銀ちゃんはヤマドリ追い出しマシーンと化して
獲れた獲れないは別にして、ヤマドリを見かけない日は
ほとんど無かったからである。
ヤマドリだけ数字で示せば、37/57での日割り計算6割4分のイチロー超えの高打率。
とは言え、弾を大量消費した割には獲れて無いっていう下手糞話しも有る。

でも、なにがエライって、そんな鳥猟に特化したイングリッシュポインターを作り上げ固定した
英国の王候貴族たちの、権力財力を注いだ情熱には頭が下がります。

と言うと「猟は数を争うものじゃない」って話しもありますが
それは、ごもっとも。
んでも、数を獲ってこそ見えてくるものがあります。
釣りでもそうなんだが、鮎釣りなんかソレの最たるモノです。。

オイラの職業、調理師も又然りです。
繁盛店で昼飯も晩飯も食えない程の忙しさの中で働くと
後から見えて来るものがあります。
そんな経験も無い、テレビに出てくる自称調理師の手際は
まったくもって見てられません。

かなり前だが「料理の鉄人」って番組。
同じ調理人として、ビデオに撮って興味深く見ていた。
まぁ、この番組はプロレスと同じ出来レース。
キッチンスタジオには、常時6人くらいのヘルパーが居て
指示も受けていないのに流れるように作業をしている。
だから、台本の有る料理だとバレバレ。
いいかげん飽きてしまっていた頃、記憶に残る戦いが一つあった。
その時の挑戦者はヘルパーを付けず
最初から最後まで、一人での対決を仕掛けてきた。
受けて立つ鉄人も面子に掛けて、コレもまた一人で受けて立つ。
この番組、稀に見るガチンコ勝負。

いざ決戦が始まると鉄人のコック帽子は色も変わるほど額から汗が滲み出て
四苦八苦し、焦りの模様が映し出される。
片や、挑戦者は淡々と調理をこなして行く。
だが、時間がたつほど鉄人の手さばきが軽やかになって芸術的な手さばきを見せます。
そして挑戦者を徐々に追い詰めていく行く。
さすが昔取ったキネヅカです。
最後には昔の感と手際を取り戻した鉄人の勝利に終わった。

調理という職人の世界で、師弟制度が色濃く残る昭和初期。
そこでフライパンや包丁の背で頭を叩かれながらも、頭角を現しただけの鉄人ではあった。
このことでも分かるように、何事も数をこなしてこそ
手際が洗練され、美しささえ醸しだし芸術の域に達するものなのです。



だから私めも早く、そ〜ゆ〜ふ〜な狩人になりたいものだと思っている今日この頃なのだ。






今は無き2009年アメーバブログ「DNAが縄文人」 アーカイブ
《面倒くさがりのオイラには、日記というものが性に合わないということが今更ながら分かった》







11月15日狩猟解禁

4月の上旬、雪解け水によって湖が満水近くになり始めると
その上げ水に乗って、普段は手の届かない沖めを周遊している
40センチ以上の大ベラ巨ベラが、手前の岸沿いを回遊してくる。
それは、産卵準備に入るためのスクーリング行動だ。

そして産卵場所が定まると
巨ベラ達の乱交パーティーが始まるのだ。
それをヘラブナ釣り師は「タタキ」という。


ブラックバス釣りに凝りに凝っていた時。
小さな入り江に流れ込む沢のチャネル沿いの駆け上がりを
ミディアムディープクランクで攻めようとボートを進めた時
その小さな入り江の水面が騒がしいのに気づいた。

そーっと近づいていくと、それは見たことも無い
巨大なヘラブナの盛大な乱交パーティー。
ざっと見積もっても50センチオーバーの巨ベラが
水面上に半身をさらけ出し、派手にバシャバシャと騒いでいた。

そこへボートで近寄っても、その騒ぎは収まる様子はまったく無く
ましてやボートに乗った人間を警戒することも無く
乱交パーティーはエスカレートするばかりで、水しぶきが宙を飛ぶ。
更に近寄っていくと、その小さな入り江はオス汁で白濁してて
生臭ささえ漂ってくるようだった。


そんなタタキに入る前の巨ベラ狙いに今年の春先、湖に巨ベラ狙いに出かけた。
岸辺の水面スレスレにジュラルミン製の「スーパー銀閣」(ヘラ釣りをする時に
座る1m四方の折り畳み式の台)を設置し、それに乗ろうとした時
「スーパー銀閣」の折り畳む時の蝶番が壊れてしまい
派手にキャッパリ(水没の事)。
早春の湖の水は冷たすぎ。
チンポコとケツの穴は縮み、濡れネズミで撤収。

それにも懲りずに次の日にリベンジ。って、何にリベンジ?
この日は、あまり出番が無いっていうか
今は出番がまったく無い「ミニ銀閣」で参戦。

コレはミニと言う名の通り、非常に狭い小さな鞍馬式の台なので
この上でアグラをかいて、ゆったりと釣りをすることができない。
なので、普通にイス座りになる。

当然足は長靴を履いたままなので
冷え性のオイラには、寒風がつらい「ミニ銀閣」

エサを打ってヘラを寄せようとしていた時
両膝にピキンと電流が走ったような痛みが発症。
恐る恐る立ち上がってみると、やはり痛みが走る。
でも、膝関節の骨の痛みでは無いような気がした。

それは自転車のペダルを強力に踏み付け
気合を入れて漕ぐ動作に入った時に感じる
膝カブの皿の上部に感じる痛みを、大きくしたような痛みだった。
「こりゃアカン、歳も歳だし止めとこう」と、はたまた撤収。

昨シーズン熊猟を休んだ秋田のマタギ佐藤さん。
膝の痛みを感じながら熊を追いかけて山歩きを敢行。
痛みがドンドンひどくなってきて
結局次のシーズンまでに膝の痛みが引かなくて
21年度の狩猟免許を申請できなかったという話を聞かさていていた。

「膝の痛みだけは、無理してはダメだぞ」と佐藤さんに言われていたので
ここは潔くヘラブナ釣り止めたのであった。

んで取って置きの秘薬。
ギックリ腰の妙薬「ロキソニン」貼ってみる。
も、まったく効果無し。
天下御免の「ロキソニン」も、まったく効かない痛みは存在するのだな。

6月、膝の小さな痛みを抱えながらサクラマス狙いに米代川に行った時。
川原を歩いていて、何気ない石の上に左足を掛け体重を移動し
乗り上げようと右足を蹴り上げた瞬間、左足にグキっと激痛が走った。
「やっちまいました」ビッコを引くまでの痛みが、膝カブ上部に残ってしまった。

夏の鮎釣りシーズンまでには、絶対に治そうとネットで検索すると
「膝の痛みは、冷やすのが一番良くない」と言う意見が多かったので
膝サポーターを買って、暖めてみる事にした。

中でもアンメルツの膝関節サポーターが効果ありそうなのでアマゾンで購入。
コレを巻いてみたが、一向にヨクはならず。
だが、これ以上悪くもならないので着用したまま鮎釣りに突入。

川の中の滑る大石に乗っかってズルっと行くと
痛みが治りそうになっていた膝カブにピキッと痛みが走る。
なので、大石ゴロゴロの川は特に注意をして鮎釣りに専念した。

鮎釣りも終って、しばらくしてマツタケ採りに山に入ってみた。
慎重に歩いてみるも、山の坂道で激痛は発生しなかった。
ヨシと思ったが、慎重に養生する事にした。
そんな不安を抱えたまま、11月15日狩猟解禁日を迎えた。

用心には用心を重ねて、ヒートテックのタイツを履き
桐灰の冷えない不思議な靴下をを履き、膝には関節サポーターを巻き
その上に更にニーパッドを巻きつける。
それから420デニールのブッシュパンツを履いた完全防護仕様で出発。


狩猟は究極の犬の散歩、たまらないねぇ。



悦木沢の入り口に着き、恐る恐る一歩を踏み出す。
なんだか調子良さそう。

車から降りる時には、膝カブの上に痛みが少々あるが
山歩きの分には痛みが感じられない。
マ、こうして無理はしないように山々を攻めていった.

結論として「なんとか今シーズンの山入りに間に合ったかな」って言う感じ。

で、ヤマドリだが、都合3羽ほど見たが、射程範囲には届かずで見送り。
っつか、オイラの取って置きの乱場(猟場)
森林伐採で、跡形も無く禿山になっていた。

もう一つの乱場は、ただいま伐採中で禿山に進行中。

あ〜あです。

今シーズンの目標猟果は大幅に縮小せねばなりません。
そーだな、昨シーズンの四割減っていうところでしょうかね。


んで、今日の獲物は、砂防ダムにいた沢鴨一羽。
まっ、ボーズでは無かったという事で、初猟は良しとしましょうかね。


地元のおっさんに撮ってもらった一枚。

2010・11・15






起動完了

沢鴨で始まった22年度の狩猟。
でも「チーム銀」は、ヤマドリを追い求めるのがテーマなのだ。
初日でコケるっていうのは、ここ数年当たり前になっているので
気落ちはしないのだが、やはり面白くないのは事実だ。

チョッと、気乗りがしない朝の目覚めだが
そうも言ってられないので、気を取り直して「エイヤ」っと起きる事にする。
いつものように、カリッカリのホットサンドを頬張り、薄い紅茶で流し込みながら
栃の木沢めざしハンドルを握る。

国道4号線の電光表示板には3度と、オレンジ色に鈍く光っていた。
 
まだ零下になって無いだけましだが、山が近くになるにつれて
空から白いものが、ハラハラと落ちてきている。
マ、積もるような雪ではないが、晴れることを祈りながら急ぐ。

一発目の栃の木沢、入ってすぐ銀ちゃんの感度が上がりポイント。
朝一から外すわけにはいかないので、銀ちゃんがフラッシュするまでの間
銃身のリブ越しに、獲物を捉え流すシャドースイングを繰り返す。

腰の振りも滑らかになったところで「ヨシ」の号令で銀ちゃんを
ポイント先のブッシュの中へと飛び込ませる。
んで、飛び出してきたのがメンチョが一羽二羽三羽と続く。
最後にオンタが飛び出すかと待ち受けるが、メンチョ3羽で終わり。

そうだよなぁ、先に驚いて飛び出すのがオンタと相場は決まってる。
まぁ、人間でもそうなんだがメスのほうが肝がすわっている。
慌てまくる小心者はオスという事になる。

お次は岩下沢。
車が通れなくなった林道口に止め置きテクテクと歩いて上っていく。
銀ちゃんの感度は上がらず、暴走気味に駆けるので
ピィーっとホイッスルを吹き、呼び戻しを掛けながら慎重に上っていきます。

10年くらい経った杉の植林地の脇で銀ちゃんの感度が上がります。
でも、オイラからの距離は80m。
一旦呼び戻しを掛け、「ツケ」で一緒に上って行きます。
杉の植林地脇で、やはり銀ちゃんの感度が上がります。

「ヨシ」の号令で植林地へ突っ込ませます。
杉林の間40m先から、銀ちゃん独特のレベルテールのポイント姿が
チラッとチラッと見えます。
銃を構え、突然来るフラッシュにそなえます。

しばらくの間を待つとヤマドリが舞い上がります。

いったん空高く舞い上がった紅色鮮やかなオンタは
水平飛行に切り替えてオイラの方に向かって来ます。
「ヨシっと」こりゃ戴きです。
が、向かってきたオンタは左右に体を傾けながらフェイント掛けてきます。
「こんなオンタも居るんだなぁ」と、思っていると腹を見せながら左に急旋回。
ここで弾を仕掛けますが、当たりません。

今シーズンも10月の終わりから、狩猟が始まるまでの期間
射撃場に通い射撃の腕を磨きましたが、どうも射台2番と3番の
プールハウスからのお皿に当たりません。

オイラ、時計回りのスイングに弱点が有るのは前々から分かっていましたが
これほど当たらないのでは、今年度の猟期に期待は持てません。
そこで、場長の武藤さんに無理を言って、徹底的に2番、3番に限定し
それもプールハウスからだけのお皿撃ちに専念します。
それが裏目に出ました。
5番マークハウスからの飛翔だったのです。

ま、それから二発撃ち掛けますが空振り三振アウト。

オンタに掛けたのが今シーズン初めてなのに、このありさま。
駆け寄って来た銀親分は「ま、そうね」と、流してくれた。
こうなると「次は絶対に外してはいけません」っていう
銀親分無言のプレッシャーが襲います。

次の沢里に突入です。
ここの沢はまったく銀親分の感度が上がらずで、どん詰まりで引き返します。
次の杉里までは林道続きなので、銀親分を走らせてオイラは車で付いていきます。
と、金比羅の杉林で銀親分の感度が上がります。
ザザっと車を止め降りて、金比羅の脇を通り杉林の脇で挙銃体制です。

銀親分の鋭い突っ込みの後、飛び出してきたのがキジ。
「な〜んだキジか」と、いったん銃を下ろし掛けますが
「をっと」で思い直し挙銃体制を作り銃身のリブでキジを追いかけますが
もはやキジは短いオッパを見せ、射程範囲外に飛んで行きます。
なんとした事か、キジを狙いそこなうなんて。
オイラの頭の中は「ヤマドリ・ヤマドリ・オンタ・オンタ」一色になってたんです。
もうこうなると重度の「ヤマドリ病」です。

もうそろそろ昼時間です。
朝から何となく気になっていた明沢で終わりにします。

ずん止まりに車を置き、そばの百姓屋に行き挨拶をしてから明沢に入ります。
上っていくと、伐採跡地の集積場に着きます。
ここでグーンと銀親分の感度が上がります。

レベルヘッド&レベルテールの「モンローウオーク」で
獲物との距離を詰めて行きます。
 
これは絶対に外せません。
シッカリと銃床を頬付けし、銃身先の照星を見据えます。
と、銀親分の鋭い突っ込みの後
オンタがトビトビトビと二羽同時に舞い上がります。

確実に手前の一羽だけに、銃身のリブを合わせ一発。
ストンと落ちます。
続けて二羽目に照星を合わせ二発撃ち掛けますが
雑木に回り込まれて当たりません。

その方向に銀親分が回り込んで行きます。
その間に弾を3発込めなおし、次の飛翔に間に合わせます。

少しの間を置いて、下り降りてきたオンタ。
まさに今シーズン徹底的に練習した2番射台、プールハウスからの飛翔です。
綺麗に腰が回りこみ、銃身のリブがオンタを捉え、軽く銃口を先送り激発。
見事にストンと落ちます。
オイラ会心の射撃、2羽定量で本日終了。

これで、心置きなく22年度の狩猟発進ができたというわけです。





どうせオイラの口には入らないだろ。

2010/11/16




自然薯

ファレルの「フロンティン」をジェイミー・カラムがカバーした曲をヘビーリピートしながら
今日の朝食、マルハの魚肉ソーセージを挟んだホットサンドをほおばり
東方面の猟場を目指して車を走らせる。
この機械的な作業している間の時間が
今日の猟場を巡る順序を決める大切な時間なのだ。
一つ順番を間違えると、まったくヤマドリとの出会いの確立が悪くなるからだ。

邪推な心を落ち着かせ、頭の中に仕舞ってある猟場のシーンを
本のページをめくるようにパラパラとめくっていく。
それを何回も繰り返していくうちに、頭の中に幾つかの猟場のシーンが
浮かんでは消えていき、浮かんでは消えていく中で
突然一つの猟場がピンと浮かぶ
それが「大沢内沢」
今日最初の猟場が決まり、フラグが立った瞬間だ。
オカルトっぽい話だが、自分の感を信じていればこその話だ。

とは言え、過去のデータを踏まえての事でもあって
獲った獲らないにしろ、ヤマドリと出会ったピンポイントは
その出会った時間に合わせて、同じ場所に再出猟すると
また出会う確立が高いってのもあるし。
まっ、スケベ心っていうか欲を捨てて、さらに要らない考えも捨てて
無の境地で構えるっていうのが、何事も大切だな。

その大沢内沢の入り口に、田舎ならではのドセンスが光っている
銅版吹きの小屋根が重なった、大そうウヤウヤしい家がある。
ここ大沢内沢の林道管理を委託されている、ざわさんの家だ。

ちょうどその家の前を通りかかった時
ざわさんが手を振ってオイラの事を呼び止めるわけ。

なんじゃらホイと車のブレーキを掛け止まると、ざわさんが近づいてきて
大きなマタイ袋の口を開き見せてくれたのが自然薯。
細いのやら、曲がったものやら色とりどりの自然薯が入っていた。
聞くと、これから産直に持って行き並べるところだと言う。

ざわさん曰く「自然薯を食べてみろ、味が濃くて濃くて美味いぞ〜」
「スーパーで売っている長芋なんか水っぽくて食えたもんじゃないぞ」
「それにバッキンバッキンに精が付くぞ〜」と自慢した。
そんなに自慢されると喰ってみたくなるのが人情と言うもんだし
なんたって「精が付く」って言う言葉に50代の男盛りは激しく反応するのだ。

のぞき込んだマタイ袋の底に入っていた、寸詰まりの自然薯に目が留まった。
オイラはマタイ袋の中に手を入れ、それを掴み取り出した。


どや。


それを見ながら、ざわさん曰く「こんなにゴロっとした自然薯は
なかなか採れるもんじゃない、安くても500円はするな」と言った。
「買ったっ!」とオイラは思わず口走ってしまった。

確かにこんな形の長芋、もとい自然薯は見たことが無い。
自然が作り出した造型だ。
それを手にしながら眺め「今日の昼飯は、自然薯をかけた山鳥ウドン」に決定。

まぁ普通なら「蕎麦」と言うところなんだろうが
どうもオイラは蕎麦が、あんまり好きくないのだ。
とくに暖かい蕎麦はどちらかというと苦手の部類だ。
冷たい蕎麦は何とか食える程度の好きさ加減だ。

それに蕎麦は蕎麦でも十割とか二八蕎麦は、思いっきりダメだ。
かなり前の話だが、蕎麦打ちが趣味という友が打ってきてくれた十割蕎麦。
それを昼飯に「盛り蕎麦」にして喰ったわけ。
そしたら次の日、ピューっとお尻の穴から蕎麦が噴出すわけ。
だから余計にダメになったのだ。

オイラが食べれる蕎麦は更科系の白い蕎麦だが、値段がねぇチョット。
それより小麦粉がたくさん入った白い色の蕎麦が好きなのじゃ。
だから蕎麦よりウドンの方が大好きなのである。
その中でも日清の冷凍讃岐ウドンは腰があって大好きだ。
それに茹で時間が1分と短いのも、セッカチなオイラの性格に持って来いだ。
だから、冷麦とかソーメンも大好物だ。

さてと大沢内沢に入って攻めに入りますが
どうも「自然薯の山鳥ウドン」が気になって集中力が途切れます。
これじゃイカンイカンと自分に言い聞かせるも、自然薯がチラつきます。

と、銀親分が地鼻を使い忙しなくなってきました。
「ヤマドリ、いますねぇ」
急に走りだし大沢内沢の左斜面の岩場の裏に走り回りこんだ銀親分。
まもなくして飛び出してきたのが真っ赤な頭のヤマドリ。

沢下りでオイラのまん前に、矢のように飛んできます。

こういう場合は待った無しで、弾を掛けないと飛び去ってしまいます。
2発目が頭に当たったのか、頭をガクンと曲がり、くの字になった胴体ごと
オイラの方へ向かって飛び込んで来ます。
最後の抵抗、特攻隊「桜花」です。

オイラはとっさに左斜面の落ち葉の吹き溜まりに跳び逃げます。
間一髪で正面衝突から逃れます。
落下してくるヤマドリの放物線の先を考え、あのままぶつかっていたらと思うと
間違いなくオイラの股間直撃です。
ゾーっとします。
こんな山奥で金玉潰して悶え苦しみ死ぬなんて嫌です。
と言う事で、九死に一生を得たので、今日は早めに上がることにします。
っていうか、自然薯を早く喰いたいからです。

店に戻り、ヤマドリの解体処理をパッパと済ませ昼飯に取り掛かります。
今日は手打ちと言う名の機械打ちの生ウドンが手に入ったので
それを茹で、ヤマドリのスープを温め、青ネギとヤマドリの肉と卵を投入。

ネギは青い部分を切り落として白い所を食べるのが普通なんだろうけど
オイラは皆さんと逆で、ネギの青い部分が大好きなのである。
だから、この青い部分が多くて健康そうなネギを好んで買うんだ。

ウドンが煮上がるまでの間に自然薯の皮を剥き、おろし金ですりおろします。
自然薯をすっているそばから白い色が濃い茶色に変わり始めます。
ん〜、さすが過酷な深山で生きてきた自然薯、灰汁が強いですねぇ。

さてと煮あがったウドンの椀に、自然薯を流し込むとしますか。
これがまた、粘りが強すぎてすり卸した自然薯が落ちません。
更におろし金を反対にひっくり返しても
自然薯は落ちる気配がまったくありません。
すごい粘りのパワーです。
まぁ、しかたないので指でコソゲ落とします。


落ちる気配がありません。

さぁてと、戴きますです。
あんぐりと口の中にほお張ります。
なんたって、この自然薯、箸で持ち上がりほどモッチリとしてますから。

ほうばった自然薯は舌の上の両脇中央部寄り部分に
ジンワリとした旨味がいつまでも残ります。

何と言いますか、その〜、滋味深いという言葉しか浮かんできませんね。
それに、ヤマドリのスープとヤマドリのモモ肉、深山の生き物同士
相性はバッチシです。
うまか〜。


たまりまへん。

家に帰って「こんなに美味いのなら、オイラも自然薯堀りをするかなぁ」と
おばぁちゃんに言ったら
「自然薯を掘るのは、時間と根気がいる仕事だから
セッカチで飽きやすいアンタには無理」
「それに腰痛持ちなんだから止めた方がいい」と、言われてしまった。
よ〜く考えたら、まったくその通り。

地中深く根を伸ばし、それも折れやすい自然薯。
それを足場が悪い山の中、不自然な体制で泥っくるめになりながら
注意深く掘るってのを考えたら、金出して買ったほうがいいわな。
と言う事でみなさん、産直で自然薯を見かけたら是非買って喰って見てください。

そうそう例のヤツ「90度にバッキンバッキンに精が付く」っていうのはね
まったく兆候すら起きませんです。
2010・11・20





銀でも金



オイラの鉄砲の師匠は、その狩猟歴40ウン年の大ベテランだ。
さらに自衛隊にも所属していたという経歴の持ち主で
鉄砲のみならず、やたらと兵器や戦術に詳しいお方だ。
持っているライフル銃も猟銃仕様ではなく、兵式のホーワのカービンだ。

師匠50代の半ば頃の年。
目を真っ赤にして眼底出血状態の師匠に
「大丈夫ですか、AVの見過ぎですか」と聞いたら
「バカ言うんじゃないよ、総合ビル管理士の免許取得の勉強中だ」と言った。

そんな師匠の書斎に、お邪魔した時に見た数ある分厚い教科書の
1ページをめくると、目がくらむほどの難しい法令とか
電気配線図やら配管図そして数式の乱列。

40代中頃、4級船舶免許を四苦八苦して
ようやく取得したオイラでは、とうてい考えられない勉強家というか努力家。

そしてまもなく、その合格率17%という難関の総合ビル管理士を
一発で取得したと言うから、その秀才ぶりには「恐れ入りました」と
頭を下げたオイラです。

そんな師匠は4年前に犬を亡くしてから、鳥猟の意欲が減衰してしまい
 インポ状態 まったく、やる気が無い。
今年の狩猟も11月15日から始まったというのに
未だに「狩猟許可申請をしてない」と言うのだ。
「本当に困ったものだ」と感じてる、不肖の末弟子であった。

そんな師匠を無理やり誘ってヤマドリ猟に連れこうと
電話をガンガンしたら、ようやく重い腰を上げ
鉄砲は持って行かないが、後を付いて行くと言った。
そして師匠の一番弟子、鉄砲歴30ウン年だが、今は猟犬を飼っていない
「佐藤さんも誘っていいか」と言うので、「モチロンです」と答え
久しぶりに共猟する事に漕ぎ付けた。

その一番弟子の佐藤さんは、矢巾総合射撃場の場長の武藤さんが言うには
年に一回か二回しか現われないのに、スキート射撃をやらせると
満射(パーフェクトに当てる事)を連発する、こまった名射撃手であると言う。

なんでそれまでして師匠を誘うのかと言うと、去年の猟の後半あたりから
ヤマドリ猟に銀ちゃんを連れて行くと
ヤマドリの薄い匂いを捕り、獲物との距離を詰めて行き
ヤマドリの位置を確認し追い詰め、至近距離での睨みを利かせたポイントで
ヤマドリをその場にクギ付けにする。
そして親方であるオイラが来るまで、ヤマドリとの呼吸を合わせ
完璧に、その場に押さえつけて置く。

オイラが到着すると首をオイラの方に傾げて
「頼むよ父ちゃん、シッカリと頬付けしヤマドリをリブに載せ狙いを定めてから
引き金を引き撃ち落としてくれよ」と言ったか言わないうちに
ヤマドリ目掛けて跳び出し、父ちゃが撃ち易いようにヤマドリを舞い上がらせる。
そしてオイラは毎度の事ながら、ヤマドリの大きな羽音に驚きつつ
暴発気味に撃ち出したショットコロンは、標的から大きく外れ跳び去っていく。

そしてヤマドリはその長いオッパをシューっとなびかせながら
「バ〜カ」と言いながら遠ざかって行く、っていうシーンが多くて
銀親分は「あぁ、またかよ。ホントにもうやってらんねぇよ父ちゃん」と
オイラにあきれた顔をし一瞥する。
そしてまたヤマドリの匂いを探しに、アッチコッチとゼイゼイ言いながら
山肌を這いずり回るってわけだ。
と言うパターンが多かった。

あまりにも飛び立たせた獲物が落ちてこないものだから
銀親分は自分なりに考えた。
ヤマドリをポイントしてから突っ込んでフラッシュ
というパターンじゃ、父ちゃんの鉄砲は当たらないと思ったのか
ヤマドリを突き止めポイントし、そのポイントしている間に
ヤマドリとの呼吸を合わせる。
と、そこまでは同じなんだが
それからヤマドリとの呼吸を一瞬外しフェイントをくれ
ヤマドリが躊躇した瞬間に突っ込む。
そんなヤマドリは舞い上がるタイミングを失ってしまうわけだ。

飛び立ちのタイミングを外され、慌てたヤマドリは
その健脚に物を言わせて、這って逃げ始める。

そんなオイラは這って逃げる山鳥に、銃身のリブを合わせるワケ。
這って逃げて行くヤマドリの狙い方は
飛び去っていくヤマドリを狙うよりは簡単だ。
とは言っても、お約束通り一発目は外れるには外れるんだが
ショットコロンが地面に着弾し煙が上がる分、着弾点が分かるので
直ぐに修正を効かせたショットコロン撃ち込めるからで
軌道修正した2発目でヤマドリがもんどり打ってひっくり返る。
って言うパターンが何回か昨シーズンあった。

銀親分は、その「ハワセ」の技に磨きが掛かってきたのか
今シーズンの獲れたヤマドリの半数以上が、このパターンなのだ。

この事を店のカウンターに座った師匠に話したら
「数ある英系イングリッシュポインターの中でも
銀ちゃんのようなアイル オブ アランの血を濃く引いた犬特有の猟芸が
この究極技「ハワセ」なのだそうだ。

ちなみに英系のイングリッシュポインターっていう表記は
ダブル英国でオカシイが、米系のイングリッシュポインターっていうのもある。
こちらの血統は、アメリカの広大な原野を馬に乗って犬に指示を与えながら走り回り
ボブホワイトという鳥を追いかける為に作出した犬種なので
日本のような狭い土地で使うのには、走りすぎて使い難いのだそうだ。

数ある英系のイングリッシュポインターっても書いたが
英国の王侯貴族達は、それぞれの犬舎を持ち数十頭もの犬を飼い
名犬を輩出するためにだけに、良い猟芸を持った犬の血を掛け合わせる。
時にはインブリードと言って、親子や兄弟で掛け合わせたりして血統の固定を図る。
そして生まれてきた駄犬は即抹殺。
良犬のみ残していくという犬にとっては過酷な状況下で繁殖される。
そうして貴族のたしなみであるハンティングで自慢しあったり
それをゲーム化したトライアルという競技で争うのだそうだ。




これまでのヤマドリ猟は、犬と鳥との一騎打ちなんだが
どちらかと言うと、山鳥が支配しているパターンだったのが
このハワセの猟芸によって、犬が支配するパターンになったのだと言うのだ。
なんだか分からないが、このハワセを見せたくて師匠を山に強引に誘っているのだ。

さて当日は、ゆっくりと8時出発なのだそうだ。
「遅いっ」と言いたい所だが、強引に誘った関係上そうも言えないので
「8時にお迎えに向かいます」と我慢して師匠に言ったら
「佐藤さんには8時と言ったが、まぁ決めた時間に来た試しが無いから
8時半か9時っていうとこかな」だってさ。
まったくヤル気の無さ全開のお方たちだ。

時計の針は9時近く。
ようやくご両人に車に乗ってもらい、いざ出発。
今日のオイラは黒子に徹して、佐藤さんを先頭に山に入りますが
ヤマドリの気配が感じられません。
当ったりまえです。
ヤマドリの朝の採餌時間には、大幅に遅れているからです。
マ、仕方ないね、と思いつつも山を巡りますが匂いすら有りません。
師匠はと見れば、銀ちゃんのワイパー捜索の動きを鋭い目付きで追っています。

仕方ないので、里に下りてキジ狙いに変更です。
その移動中に「今年は何羽獲ったの?」と、佐藤さんに聞かれたが
「そこそこです」なんて、誤魔化していたのだが
(数を言うと妬み嫉みに合うので、釣りでも何でも数は言わない事にしている)
「両手で間に合うくらい?」「それとも両足も使わなきゃなんないくらい?」と
あまりしつこく聞かれるので「○○羽です」とキッパリと言い切ったら
「日にちと数が合わないじゃないか」とか言われるし。
「いや、一日2羽獲った日もあるし」なんて言いワケしたりして。

という訳で、オイラ取って置きのキジの乱場に行く事にしますって
ここも師匠から教えてもらった乱場ですけど、ナニカ?

この乱場は川に掛かっている吊り橋を渡って行く、耕作放棄してる田畑です。
例の減反政策では有りません。
ここ数年増え続けた本州鹿の食被害に、根を上げた百姓が放棄した田畑です。

周囲の国土開発に取り残されたようにある
ここの田畑はキジ達の最後の楽園です。
ここに遠慮なくズカズカと踏み入るわけですな。

そこに放たれた銀親分は、さっそくキジの薄い匂いを嗅ぎ捕ります。
さっきまで山々を歩いて疲れたのか、佐藤さんの足取りは重いです。
が、銀親分の感度が上がったので、佐藤さんを急かして
銀親分の後を追う様に合図します。

オイラは後方支援でバッキングです。
佐藤さんと銀親分が枯れたススキ林に入り見えなくなりました。
師匠はと言えば、オイラの後方の小高い位置に陣取って全方向に目を配っています。

しばらくして、キジが2羽飛び立ちます。
それと同時に、爆裂音が山すそに2度鳴り響きます。
その内の一羽がツンのめるように落ちます。
もう一羽は、山すそ向こうの笹薮に舞い降ります。
その後を追って銀親分が山すその笹薮に突っ込んで行きます。

オイラは銀親分の更なるポイントに期待して
山すその笹薮脇駆け寄ってスタンバイします。

その間に、佐藤さんは撃ち落したキジの捜索に掛かります。
が、見付けられないのか、後方で右往左往してます。

オイラの脇に師匠が駆け寄り
「山すその笹薮に降りたキジに、弾は当ってないので深追いは禁物だ。
 銀ちゃんの追いを止めて、撃ち落したキジの捜索するように」と指示を受ける。

笹薮深くキジを追って入って行った銀親分に、ホイッスルを吹き呼び戻します。
そして、撃ち落したキジの捜索を指示します。

もの凄い勢いで捜索を始めた銀親分。
そのスピードを保ったまま、左側の山すその笹薮に突っ込んで行きます。
半矢の脱兎状態のキジの遁走です。

20メーターほど上った所で、キジと銀親分の追いかけっこがに
始まったが分かるように、笹薮が激しく揺れてます。
その揺れが止まった所が、キジを押さえ付けた所です。
佐藤さんを急かしてキジ回収の指示を出します。

そして満面の笑みをたたえた佐藤さんと銀親分が降りてきます。
「いや〜、久しぶりに見た綺麗なポイント姿、ホレボレするなぁ」と、佐藤さん。
そして「このポイント最中に俺の方を見て、踏み込む合図をしてくれと
言うような顔をしたのには参ったなぁ、たいしもんだ」だと。
誉めて褒めて、もっともっと褒めて。
この子は褒めて伸びるタイプの子だから。

オイラの鼻は折れんばかりに勃起します。
「ん〜、あんたが獲った数は分かる」と納得したよう。
そして「こんな犬なら何羽でも獲れるなぁ〜、名犬だ」だと。
もうオイラの鼻はますます高くなり、鼻の穴は広がり放題です。
更に「銀ちゃんが居なけりゃ、半矢で逃げて行ったこのキジも手に捕れなかったなぁ」ですと。
そこまで褒め称えられると「犬飼冥利に尽きる」ってもんです。
至福です。

すると、オイラのそばに居た師匠が、つぶやくように「面白くねぇ」と、一言。
「何でです?」と聞いたら
「だ か ら、こんなに良い猟犬を目の前にすると
同じ鉄砲ブチとしては面白くねぇのは当たりまえだろ」
「え”〜」とオイラ。
「だ か ら、お前と一緒に山に行くのは嫌だって言ってんだろ」だって。

そうだったのかぁ、オイラは鼻くそ程も気が付きませんでした。
ここまで逆説的に誉められたら、ハイそうですかとは簡単には引き下がれません。
「でも、これからも山に誘い続けますから、早く狩猟許可証を申請して下さい」
と追い討ちを掛けるのでした。



家では「オヤツだ」って呼んでも出て来ないでこの通り。
一応、不審者が来ると吠えるには吠えるが、小屋の中で仕方なく吠えていると言う脱力系。




外に居るなと思うと、この通りひっくり返ってヒナタボッコ。
あんがい、家庭犬としてもヤッテケルかもしれないな。
2010・11・30

さらに

ヤマドリをハワす技を繰り出し始めた銀親分。
それでもやっぱり射撃がへたくそなオイラは
思ったようにヤマドリを獲る事が出来ませんです。

それに業を煮やした銀親分は考えました。(たぶん)
そしてハワセる技に、もう一つウルトラススーパーデラックスな技を付け加えました。
それは、ただハワセるのでは無く、ハワセる方向をコントロールし始めたのです。
もちろんオイラの方にへとです。

一昨日は口谷の沢を攻めてみましたが、マッタク銀ちゃんの反応が高まりません。
最終的にズン止まりまで歩くこと1時間20分。
ただの散歩で終わりました。
その帰り道、テクテクと歩く肩に担いだ鉄砲が重く感じます。

止めてある車まで、あともう少しという所でオイラの後ろを付いてきた銀親分が
スルスルとオイラの脇を抜けて、目の前20mの所でグーンと感度が上がります。

必殺のポイント。

そこは右側が牧草地で、左側が笹薮の崖っぽくなっている獣道です。
そこを左側の笹薮に顔を向けて、低い姿勢でシッポをピーンと伸ばしポイントです。
しばらくそのままの体制で、なにやら考えているようでもあります。
オイラの方をチラッと見たかと思ったら、スルスルと笹薮に入って行きます。

「こりゃぁ、でますねぇ」と銃を構えて緊張していると
ナナ、ナント
オイラの足元の笹薮からヤマドリが、紅い頭を出してピョンと出てきます。
びっくりしたオイラは銃を構えるも、アッと開いた口がふさがりません。

ヤマドリもビックリしたようで、急に立ちアッと口を開き立ち止まりオイラと目が合った途端
チチチっと鳴き、その場でジャンプをしたかと思うと
ビタビタビタという羽音の轟音を轟かせて、右側斜面の牧草地の上を飛び始めます。

そのヤマドリが出てきた所から銀親分がギューンと跳び出してきます。
ヤマドリが、あらまし15メーターくらいかな
飛んだところで、オイラは気を取り直し銃身のリブに山鳥を載せてバン。
メデタク一羽ゲットです。



「フーン、オイラの足元に狙いを定めてヤマドリをハワセ追い出したのかななぁ」
なんて思ったりもしたが、それはたまたまであろうと買いかぶる事はやめて冷静に考察してみることにする。

今までのシーズン中に、オイラが鉄砲の引き金を引かないのに
いつのまにやら銀親分がニコニコした顔をして、ヤマドリを持ってくる事が多々有る。

つまり、ヤマドリの匂いをとってポイントする。
そしてヤマドリと呼吸を合わせるが一瞬タイミングを外しヤマドリが戸惑った瞬間に突っ掛け
前足で叩きつけるように地面に押さえ付け、くわえて持って来る。
これを何回か繰り返して行くうちに、その技が洗練されていき
ヤマドリにポイントしてから、飛び立たせないハワセ技を常時繰り出せるようになったからなんだな。



昨日は自称「自然派カメラマン」を連れて
「山の中のバカ、一人と一匹」というお題目で撮影会。
まぁ、自然派カメラマンがどれほどの健脚を誇っているのか
試しに最初は、山が険しくない所から行きます。
とは言え、ヤマドリ撃ちに行く所はハイキングコースとはいきません。
道無き道というか、沢を登るような所なので、最初の沢は勾配が緩い楽な沢をチョイス。
でも、沢なので滑る苔むした岩肌とか、ガレキ石がゴロゴロしてて足元がいたって不安定。
慣れてないと、足裏に掛ける重心移動がスムーズに出来なく、ヨロめいたり転んだりもする。

沢道をそれて獣道をトレールしていても、途中でその道が崩れて
滑ったら最後、10mは真っ逆さま気味に滑落する場面もある。
だから、ヤマドリ猟は、けっこう恐い思いもする。

一発目の沢は、良い具合にオイラに付いて来れるようなので
徐々に勾配のキツイ沢を巡ってラストの一本は
強烈な勾配と不安定なガレキ沢を選んで、秘境のヤマドリを攻めに入った。
オイラはとくだん早足で登ってはいないのだけれども
徐々に自然派カメラマンは遅れをとって姿が見えなくなってしまった。
行き止まりの鳥屋で待っていると、真っ赤な顔をして3分後に遅れで来た。

ここで銀親分の感度が上がらず、ヤマドリの気配が無いようなので下る事にしたが
この沢下りでは、自然派カメラマンは、まったくオイラに付いて来れず泣きが入っていたようだ。
沢下りは、片方の足裏に掛かる重力が登る時よりも3倍以上は掛かるので
その分、石や岩に乗り上げた時、不安定になりやすし滑りが増すからだ。
ましてや、うっすらと雪が積もっているから余計に滑るし。

山を降りて、疲れきった自然派カメラマンが最初に言った言葉は
「いつかは死ぬな」だと。
オイラもそう思う。

この日は雪が降り積もったばかりで、ヤマドリの動きが無く
一羽も見かけない日ではありました。



そして今日。
朝目覚め薄暗い空を眺めると、快晴までは行かないのだけれども
風も無く絶好のヤマドリ日和です。
マァ取るのも取りあえず、山に出かけます。



兼備の沢に突入開始です。
意外と今日は暖かく感ずる日。
とは言えマイナス2度ですが、風がまったく無いので
体感温度的にはプラスの2度っていうところ。

兼備の沢は今期一番のヤマドリとの出会いがある沢の合流点ポイントです。
と、気づくと銀親分の気配がありません。
ふと後ろを振り向くと、後方20mでポイントです。



あわてて銀親分の元に駆け寄ります。
そこは右側が杉林で、向こう側に兼備沢の本流が流れています
左側が杉林を伐採された跡地です。
伐採される去年までは、この左側の杉林の中に生えているシダ群が
格好のヤマドリの餌場だったので
かなり良い思いをさせてもらった所なんですがねぇ、、、。

その兼備の沢沿いにある杉林に沿って平行にポイントです。
で、銀親分に「行け」と掛け声を掛けます。
すると、スルスルと杉林沿いに進み始めます。

この「行け」の号令一発で銀親分が進む時は
ポイントした地点とヤマドリとの距離が遠い場合が多い。
そりゃそうだろ。
オイラは銀親分のポイントした地点から20mも先に行ったのだから。
近くにヤマドリが居れば、オイラの足音を感じた取った時点で
飛びだっているはずだから。

これが「行け」の号令を掛けても、なかなか銀親分が突っ込まない場合は
いつ飛び立とうかというヤマドリが、すぐそこで構えている場合が多い。


オイラがとって返した地点あたりで、銀親分は兼備の沢に
スルスルっと降りて杉林の中を進んでいきます。
オイラは歩るくスピードを落とし、銃を構えユックリと歩んでいきます。

銀親分の緊張した白いシッポの先が、薄暗い杉林を通して沢向こうに見えます。
ヤマドリを突き止めた時に出る尻尾の表情です
オイラは歩むのを止め立ち止り、いつ飛んで来てもいいように迎撃の態勢を整えます。


これがヤマドリを迎え撃つ正しい待機姿勢

すると杉林の間を通して紅い頭がチラッと一瞬見えます。
ヤマドリです。
と、その時、オイラの足元から紅い頭のヤマドリが慌てて登場です。
上を見ていたオイラも慌てて下に銃を構え挙銃します。
が、あまりにも近すぎるので、引き金に人差し指を送るのを止めます。
ここでヤマドリに散弾の弾が当たってしまうと、木っ端ミジンになってしまうからです。
っていうのもあるが、撃った散弾の弾が高速で地面にぶつかって跳ね返ってしまい
自分に当たってしまうからでもあります。
これが「跳弾」といって、事故るばあいが多いからです。
当然新聞に載ります。
「狩猟中に自分の撃った弾に当たり失明したバカな狩人」とかってね。


目線と銃身のリブ(上部分)が一直線になるように銃を構えるのが正しい挙銃姿勢

で、そのヤマドリは一昨日と同じく、オイラと目が合った途端
ビタビタっと轟音を発てて飛び立ちます。
オイラは慌てて銃を構えなおし、銃身のリブにヤマドリを載せて撃ちますが
慌てた分、挙銃時の頬付けが充分ではなかったのか外れます。

が、2発目は回転不良で停弾です。
ヤマドリは紅い長い尻尾をビラビラとなびかせながらバ〜カバカと飛び去ります。



昨日、オイラが持っているレミントンM870、二丁の分解掃除したんだが
ついでに先台を交換してみたのが、アダとなってしまった。
これが原因で回転不良をおこしたみたいなのだのだ。
同じレミントンM870でも製作年代が違うと
微妙に先台のレールの部分の切り込み長さが違うので
こういう事がおきてしまったのかなぁ。

まっ、それを確認しないで撃ったオイラが悪かったワケで反省。

停弾した弾を取り出そうとしている最中に、もう一羽がとびだしますがメンチョです。
そして息せき切ってハァハァと銀親分が杉林から跳び出してきました。
完璧なWハワセです。
が、爆裂音がしたのに、ヤマドリが落ちないのでチョト面白くない銀ちゃんではあります。

そんな今シーズン磨きの掛かったハワセの技。
それから一歩も二歩も進んで、今度はオイラの方へとヤマドリをハワセ追い出す。
そんなコントロールする技を磨き始めたんだなと、ここで確信。


幅広い胸と厚い肩は見る人が見れば唸るほどだ。

銀ちゃんは7歳にしてウルトラスパーハンティングドッグの域に達してきたんだなぁ。
と、感無量の父ちゃんではあるが
でもなぁ、相変わらずオイラの鉄砲の腕のほうが、、、、、。


今日も一日無事に終猟、ナデナデし労わる。

2010/12/11






スペアリブとピカタ

また年が開けてしまった。
去年の不景気を考えたら、まったくメデタクもなんとも無い。

管総理の年頭所信演説。
我が同士それも政権交代で、お世話になった大恩人の小沢氏を
徹底的に排除するような発言「エッ、お前は野党だったか?」というような内容。
それはいいとしても「2012年、消費税10%」って、これ以上景気を悪くする気か。

伏目がちな演説態度は「ウソツキ」そのもの。
顔を上げたかと思うと、オドオドした目付きはバレやしないか「小心者」そのもの。
アレは誰かに背後から脅かされて、「洗脳され演説」しているって感じそのもの。
あんな実体が無く頼りない「アホカン」じゃ、今年の景気も先行き期待できない。
早く総理の座を明け渡して欲しいと思うのは俺とはいわず国民みんなの意見だ。
と、思っている俺は今年で満57歳。
周囲からは「アラカン」なんて言われるのだが
自分自身、そー言った感覚は、まったく感じてはいない。

今年は5年ぶりに、気合を入れて創った息子二人がそろった新年を迎えた。

大晦日に降った、ヤケに湿気っぽい重い雪が盛岡で50センチも積もり
店の前の除雪の事を考えたら、持病の腰痛が疼き出した。
そーだ、こんな時こそ息子たちをコキ使う絶好の機会だとおもい
「店の前をキレイサッパリと除雪をしたら、お前たちの好きなものを食わせちゃる」
と、粉を掛けたら二人とも「スペアリブとピカタ!」と声を揃えて言った。

遠慮っていうものを知らない、傍若無人な長男は更に
「ミートピザは外せないな」だと。
ハイハイ仰せのとおり、お造りいたします。
っていうわけで、除雪しに店に向かったわけだ。

最初の段取りを組む為に、俺が見本を示し除雪したわけだが
スノースコップを一振りしただけで、左腰部に「ムリッ」とくるわけ。
こりゃ、ダメね。

今回の雪はオニ重い。
と言う事で、俺はサッサとスコップを手放し
「お料理を作らなくちゃ」なんて言い訳しながら引っ込むワケ。

除雪が終った二人の息子達は「メチャクチャしんどい、腰が痛いヨー」
なんて言いながら、店の中に入ってきた。
それを聞いた俺は内心「息子二人、創っておいて良かったな〜」と初めて思った。

お待ちかねの「スペアリブとピカタ」そして「ミートピザ」
餓鬼のようにムシャムシャと噛り付く息子二人。

俺は息子達の喰いっぷりを見ながらシェルター系の皿を回し
ローズヒップ酒を飲んで、頭でBPMをカウントしていたら
次男が「父ーちゃん、歳いくつ?」だって。
ハイハイハイハイ。

無心で喰っている長男は「ベーニエが喰いたい」と、更にのたまうワケ。
「ハイハイ、造ります、作ります」とスコスコとつくる。


え、アンタは一緒にスペアリブとピカタを喰わないのかって?
ヘヘヘ、コイツらにサンザン喰わしておいて腹一杯なったのを見計らって
マダラのキクと牡蠣と、津志田の柔らかネギの味噌汁を飲みながら
生ウニの手巻き寿司を喰うっていう算段なワケ。
モチロン息子達に「ウニ喰うか?」なんて聞くわけだが
「腹いっぱいでイラナイ」っていうワケ。

「コザカシイおやじだ」なんて自分でも思うのだが
そのとおりっ!
新年しか喰えない重茂産の生ウニは俺一人で味わうのだ。
というわけで、息子達も俺も満足の正月。



開けて2日。
暖かい店内で、エランのXCスキーにシュウガクソウの1万2800円もする
カンダハーを取り付けようと、ひとり「ウッシシ」と浮き浮きしながら
電動ドリルで取り付けていると「チーッス」と熊鷹が登場。
「ゥイーッス」と俺。
をいっ、「開けましてオメデトウ」の挨拶は無いのかよ。
無いな。
まっ、熊鷹だから許してあげよう。

で、それから熊鷹の仲間が集り宴会が始まるわけだが
スペアリブとピカタジャンキーの熊鷹。
今日は珍しくピカタとスペアリブのオーダーは無し。
「喰わねぇのかよアレ」と言ったら
「歳とったら野菜の方が好きになった」だと。
「ハイハイ、ビオトープね。」
まっ、いいけどね。

宴もタケナワ、エンエンと続くが「明日も狩猟だから、そろそろ閉店ね」と言ったら
熊鷹は「俺も行く」だと。



と言う事で次の朝。
熊鷹を迎えに行く途中イロイロと考えたワケ。
前にも自然派カメラマンを狩猟に連れて行って
「疲れた」だの、「キツイ」だの文句を言われたし。
今回は「都会派カメラマン」の熊鷹なので、キツイ傾斜の谷はムリだなと思い
軽めの「ハイキングコースにしよう」と、車の中でプランを練ったワケ。
「そーね、ピノキオ沢あたりがいいか」と、最終的に「プランB」に落ち着いたワケ。



ココは雪が積もってなきゃ、ピノキオ沢の根っこまで車で10分で行けるのだが。
この積雪なので国道から谷の根っこまで行くのには、スノーシューで40分いや一時間は掛かる。

国道沿いに車を止めてから、俺はスノーシューを履く。
熊鷹の分のスノーシューは持ち合わせていないので輪カンジキを渡すも
輪カンジキを手にして「どーやって履くのか分からない」って言んで
俺が下僕のように熊の足元に膝ま付き、足に輪カンジキを履かせてやるわけ。
まっ、しょうがねぇーな「都会派カメラマン」だからなと思いつつさ。



と言うわけで、ピノキオ沢に突入するわけだが
まったく俺の歩くスピードに付いて来れないワケ。
こちとらは、深雪を漕いで道を作りながら歩いているし
俺は別段、熊鷹を虐めようとスピードを上げて歩いているワケでもないのだがね。
むしろ、熊鷹に気を使ってユックリと歩いているんですがねぇ。
まっ、毎日雪原を歩いている俺と、初めての輪カンジキの熊鷹じゃ
スピードを求める方が「ムリ」っていうもんですか。

しまいにゃ「ウンコしたい」だと。
「糞紙あるか?」って聞いたら
「雪で拭きます」だって。
しょうがねぇな、もう。
「ホレ、ティッシュ」と、東北電力の「高圧線注意」のティッシュを渡す。



ピノキオ沢に到着して攻めるも、ヤマドリの気配はまったく無し。
結局、この谷は銀ちゃんの感度が上がらず「ノーサイド」
しょうがないので「ちょいとキツイ所だけれど、取って置きの場所に行くか」と言ったら熊は
「この辺でカンベンです」と、バテバテ白旗状態。
しょうがねぇなぁ。

でもな、これがオイラにサーフィンやれって言われたら
パドリングで上半身バキバキ「波を越えれな〜い」みたいなモンだろうからな。



帰りの元気を付ける為に「ヤマドリのスープから取ったダシがあるから
ヤマドリの蕎麦を喰わしちゃる」と労わってやることにした。
それを言ったら、足取り軽く「帰りは楽やなぁ」だと。
ハイハイ、いつもニコニコ現金払いってか。


帰りの車中、俺のMIX・CDを掛けたら
思いっきりツナギのBPMが狂ってやがんの。
あ、そっか30日の営業最終日に、しこたま飲んでヨイヨイで繋いだヤツだから
ほんとにメチャクチャ、ガチャガチャ。
シラフで聞くと、顔から火が吹くほどのデタラメさ。
熊鷹は「20くらい合ってません」だと。
分かってるって、、。
この晩は、家とは真逆の方向をフラフラと
吹雪の中転びながら歩いて帰ったみたいで
四ツ家の教会を過ぎた陸橋の手前で
フト我に返って引き返したっていう激ヨッパ。
ターンテーブルのストロボに針を引っ掛けて
先っちょを折らないだけましだったか。



店に戻り、お約束のヤマドリの蕎麦を食わしてやった。
「うめ〜〜」と、がっつく熊鷹。
「んだがした〜ん」と俺。
ヤマドリの蕎麦を食い終わった熊鷹が「ピカタ喰いてぇな〜」だと。
ハイハイ作ってあげましょう。
特別ですよ、お年玉。
それを喰い終わって更に「スペアリブも喰いてなぁ」ですと。
え〜「金取るぞっ」とも思ったが
やさしい俺は黙って喰わしてやった。
さらに、エビスの生ビールも飲ましてやったら、この上ない満足した顔で
いっちゃった様子。

ほんとにもう、ドイツもコイツもスペアリブとピカタかい。




というワケで、まったくスカ状態の2011年の初日の猟だったが
あくる次の日は、まったくのラッキーデー。

今も昔も、その姿を見ることが稀な「ヤマシギ」をゲット。
さらに、オッパが10節のヒネオンタもゲット。
ちょと、出来過ぎじゃない。
でも、それでいいんです。
今年は飛躍の年ですから。



銀ちゃんと鉄砲とヤマシギ、オンタ10プシ。



DNAが縄文人
自分の口に入らない獲物の前でうなだれている銀ちゃん。
その前で
この嬉しそうな顔を見ればわかるべ。





ヤマシギのロティ、平たく言えば「焼き鳥」


普通一般的には、タシギの方が有名。
っていうか、個体数が多いので簡単に手に入りやすいのがタシギ。
ヤマシギは狩猟暦40年といったベテランの方でも
岩手県では滅多にお目に掛かれない珍鳥。

運良く出会ったとしても、稲妻型のジグザグ飛行曲線を描いて飛翔するので
撃っても当たらない鳥の第一筆頭候補だ。

だから俺のほかにヤマシギを獲ったっていうハンターに出会ったことがありません。
なので可猟期間90日、毎日山を歩いている俺でも、滅多出会えない鳥がヤマシギ。
んで、今回の獲物で生涯3羽目のヤマシギです。(自慢w)

料理人の世界でも実際に手にとった事があるシェフは、日本でも5人とはいないだろう。
だから幻の食材だと言い切る。

タシギは骨が柔らかく余すことなく全部食べれるらしいが
ヤマシギは骨が硬い部分もあって、そう簡単に食べれない。
が、この長いクチバシだけは、ほんとに柔らかくて、香ばしくて
めっちゃ、うんまい。

頭を噛むとグシュっとした歯ざわりの後から、濃厚な旨みが口の中に広がる。
そんなオイラは骨肉食系男子。

ヤマシギは、この長いクチバシでトンボの幼虫ヤゴを啄ばんで食べているので
砂嚢と胃の中はヤゴでいっぱいだ。
俺がガキのころ、川の中のヤゴを捕まえて口の中に放おりこんで齧った事がある。
エビのような味がした事を覚えている。
んだからエビを常食をしている鳥が不味いわけがない。

一方タシギは田んぼが主生息地なので
ミミズやオケラが主食なそうだ。

タシギ料理の本場フランスでも、出される皿の上はタシギだ。
これをローストしてジュのソースを掛けて温野菜と供に戴くわけだが
俺的には、ヤマシギの味をトコトン味わいたいので
塩と胡椒のみでロティールする。

そうだなぁ、鴨の胸肉いや、キジ鳩の胸肉を2段階くらい上品にした
上品(じょうぼん)な味だ。

これに合わせるとしたら、山田錦で醸した淡い「久保田」の大吟醸酒なんかが良いだろう。
ワインを合わせるとしたら、そうだなぁジュブレシャンベルタン。
それも孤高の醸造師が醸し出した「フィリップバカレ」などもいいかもしれない。
あっ、それよりも弱めのバローロ、それもエレガントさがなんともいえない
アコマッソのバローロ「ロケッティ」がベストだろうネ。

ん〜、こう書いている間にも口の中は唾液でいっぱいになる。

2011・01・07


さてと、明日もヤマシギ狙いだお。






2010/hight Season

2月15日。
去年の11月15日に幕を開けた、ハンティングシーズンに幕を下ろした日だ。


狩猟が始まる前の事。

オイラよりずっと若いのに、余裕で仕事をリタイヤ。
誰よりも鉄砲が好きで好きでたまらなく
どちらかと言うと、ガンマニアなお方。
一日のほとんどの時間を、射撃場に居たというほどのお方。

筑波大学を出た、その頭脳もハンパじゃなく
弾の弾道計算までしてしまうほどのお方。
理詰めでエアーライフルを極めたお方。
オイラのエアーライフルの先生でもある。

その先生が脳梗塞に当たって、半身の自由が利かなくなってしまった。

その体で、年に一度の銃砲所持検査会場。
銃の分解組み立てができずに
公安当局から鉄砲を取り上げられたそうだ。

これからの彼の人生を考えると、オイラも人事では無いなと思った。


もう一人の知人は、毎年出ていた鮎釣り大会で
何とは無しに仲良くなった人。
鉄砲が好きで好きでという程のマニアではないが
狩猟そのもの自体が大好きな、猟師と言った方がいい30代。

その若さゆえの脚力を生かして、野山を疾風のように走り回り
狙った鹿とか熊を追い越してしまうほどのスピード&タフネス猟師。

どんな経緯かは知らないが、自分の銃で自分の足を撃ってしまった。
その発射された弾は、鳥を撃つような仁丹粒のような小さな弾ではなく
熊を撃ち取る為の弾だから、ビックリするような巨大な弾だ。
その名を「スラッグ弾」という。
大の男の親指大の弾だ。
これを極至近距離から、自分の足に打ち込んでしまった。

これからの長い彼の人生を思うと、人事では無いなと思った。


オイラの鉄砲の師匠が常日頃から言っている。
「狩猟とはな、朝暗いうちに玄関の戸を開けて行って来ます。」
そして
「夕方に玄関の戸を開けてタダイマと、何事も無いのが狩猟って言うんだ。」
だから
「雉を何羽とったか、鹿を何頭獲ったっていうのが狩猟じゃないんだぞ。」
と、何事も安全第一の慎重派なのが、オイラの鉄砲の師匠だ。

そんな師匠は山に入って猟が始まっても、銃に弾を装填しない。
獲物の気配を犬が感じ取って「コレは出るな」と感じた時だけ
おもむろに銃に弾を込める。
もちろん、引き金が引かさらないようにセーフティーロックは掛けて置く。

そして、鳥が飛びだって、鳥を視認してから
セーフティーロックを解除して、引き金を引くという徹底ぶりだ。

それで獲物が落ちなければ、すぐに脱包と言って弾を銃から抜く。

そこまで徹底的に、安全にこだわる師匠だから
いいかげんでチャランポランなオイラには、ちょうど良い師匠なのかもしれない。

そんな師匠はいつも言う。
「鉄砲が危ないんじゃなく、安全に気を配らない人間が危ないんだ」
で、「鉄砲に弾が入ってなけりゃ、タダの鉄の棒」と。

というわけで、今猟期も師匠の教えを守りながら
何事も無く、無事に終えた。

その今期の猟果は、キジ・ヤマドリは、師匠から教えて戴いた乱場が
ハゲ山になっちまったので、去年の三割引きの貧果。

鴨は銀ちゃんを輩出したブリーダーでもある鉄砲の先輩が
脊椎狭窄症から、一時間以上の歩行に耐えられなくなり
鉄砲所持免許証と鉄砲を警察に返納した。

その先輩の鴨の乱場を譲り受けたので、三割増しってところだが
その乱場で獲れた鴨の内訳は、マガモもがほとんどだったので
鴨猟の中身としては、今までに無く、とっても濃い。

この先輩から教えていただいた鴨の乱場である湧水池。
この周りが雑木林で囲まれ、秋の栗やドングリがその湧水池に転がり込み
底に沈んでいるのを常食としている。
そこは湧水の池なので水温が高いので、氷点下12度の日でも氷が張らない。
湧水池の浅瀬には、青い水生植物が繁茂しているという
カモ達にとっては、一面雪の原でオアシスのような所だ。

だから最初に行った時は「な〜んだ笹の原じゃねぇか」と思ったら
それは池面を覆いつくしているアオクビの群れだったという凄さ。
というわけで、総合的には差し引き前年度と同じかなぁ。

で、22年度の猟期を終えての技術的収穫はといえば
銃の中に弾が3個あると思えば、鳥を見た瞬間から反射的に
だいたいの見当で暴発気味に、景気良く3連発。

もちろん一発目は外れる。
それは、しっかりと銃身のリブで鳥を捕らえていないから外れる。
でも、あと弾が二発残っているからと慢心しているからだ。
で、結局3発全部外れて地団駄を踏む。

なので猟期中盤、あえて一発だけ銃に弾を装填してみた。
その一発で鳥に当たらなければ鳥の勝ちというイサギの良さ。
その名の通り、男の一発勝負だ。

そうする事によって、一発目のメクラ撃ちが当然ことに少なくなった。
しばらく鳥を飛ばせて、銃身のリブにしっかりと載ったところで
引き金を引くというか、そうせざるをおえないのだ。

反対に狙い込みすぎて、狙い越し(飛んで行く鳥のスピードにあわせて
飛んで行く鳥の頭から1mとか2m先の空間を撃つこと)を
どのくらい取れば良いのか分からなくなってしまう事も、、、。
正直な話、ままあった。
でも、撃ち急ぐ悪い動作が減ってきた。

が、一発だけ発射して外れる。
次が無いんで、悠々とヤマドリ・キジがチチチチッっと飛び去って行く。
それが悔しくて悔しくて、一発勝負は直ぐに止めにした。

だから後半の鴨撃ちは、面白いように落ちた。
というか、雉とかヤマドリと違って
突然にっていう飛び立ち方が、鴨の場合まったく無いってのもあるんだがね。


そうそう銀親分は、的確な鳥の微臭を追う技に磨きが掛かって
無駄な動きをしなくなった。
それこそ「いぶし銀」の領域に入った。

オイラの猟期も二桁代にのってるんで「いぶし銀」の腕前になりたいんだが
腕のほうは、まだまだ若い。
オイラの性格も先を急ぐ、せっかちな性格なので
こればっかりは仕方が無いのかもしれないな。



狩猟点描









































































PHOTOS by TAKASHI KUMAGAI

2011・02・18






ボンカレーとカツカレー

オイラが中学の2・3年
いろんなデパートの屋上にあるゲームコーナーを
次々と遊び回っていた頃の事だ。

M正デパートの屋上にあるゲームコーナーには
悪がきどもが、早く大人になってやりたいなぁと憧れていた
パチンコ台があった。

本物のパチンコ台なのだが、10円で未成年者が遊べるパチンコ。
それはそれは、大人の悦楽世界をかいまみる事ができ
夢中になって遊んでいた。

そこには盛岡じゅうのチョイワル中学生が集り
青いビニール製の箱に、どのくらい玉を出せるか競い合っていた。

出玉が少ないとパチンコ台のポケットに玉が通過する瞬間
パチンコのハンドルと受け皿を持って激しく台をガタガタと揺らし
無理やりポケットを通して、チューリップを開く荒業を駆使するワケ。

当然「コリャー」な〜んてゲームセンターのオバサンに怒られるんだが
その当時は鷹揚なもので、そんなもんカルーく聞き流しながら遊んでいた。

かえりには、青いビニール製の箱一つに対して
フルヤのウインターキャラメが一箱もらえた。
その箱の半分くらいだと、サイコロキャラメル一個の景品がもらえた。
が、ゲームコーナーいるオバサンの、裁量でどうにでもなった景品。

俺的には、このゲームセンターの隣にある動物園?の方が大好きだった。
小ちゃなゼニガタアザラシが居たし、山奥の盛岡ではチョッと珍しい
ガラパゴスペンギンがいたからである。

こいつらは、生きの悪いイワシだのサンマだのが常食だったので
夏なんか生臭くてゲロちゃうくらい臭い連中だった。
でも歩く姿がメチャクチャ可愛いので、見てて飽きないのである。

そんなペンギンの頭を後ろからポンと叩いたりして怒らせ遊んでいた。
こいつらに噛まれると、かなり痛いが
ちっちゃな羽根をバタつかせるのが面白くて、からかっていた。

M正デパートのパチンコに飽きると、お次はMドリヤに行く。

このデパートの地下にあるボーリング場の片隅に置いてあるピンボール。
こちらはワンプレーが50円と高いが、その当時としてはピンボール自体が
珍しいかったので、よく2次会で遊びに行っていた。

だが、パチンコ台を揺らして玉を操作するクセが抜けず
ピンボール台も、つい揺らしすぎてCHILL OUTでゲームセット。
うなだれる、中学生だった。

こうして一通り遊ぶと腹が減る。
パチ仲間が「ハンバーグを食うべ」と誘ってきた。
んじゃと行ったのが、盛岡の東大通のサンビル2階にあったレストラン。
オイラは初めてレストランという所で、食す事になったハンバーグ。

そこで生まれて初めてナイフフォークを使って食べるハンバーグ。
これがまたパチンコ台を引っ剥がすように揺らすスリルよりも
大いに緊張するわけなんだけれども
肉のクセに、噛み応えが無いグチャとしたハンバーグは気持ちが悪かった。
これならマルシンの固いハンバーグの方が美味いと思った。

そんな俺らの世代の洋食といえばライスカレー。
それから年代が若くなるとハンバーグとなるから
だから当時としては、ハンバーグは、まだ新しい食べ物だった。

また別の日に誘われたが、今度は緊張しないライスカレーを追加注文する。
こちらはと言えば、白い紙のナプキンに包まれたスプーンだけ
セットされるワケで、ハンバーグのようにナイフフォークに気を使わない分だけ
食べる事だけに集中できるので大満足。

と言うわけで、俺的に洋食といえば
やっぱりライスカレー(カレーライスでは無い)に
とどめを刺すアラカンなのだ。


さて、今年も猟も終って、気が抜けたセミの抜け殻状態のオイラ。
そんな自分にカツを入れるために
大事に取って置いた、千葉の佐藤さんから戴いたイノシシのモモ肉を
冷凍庫から取り出す。
これをカツにして喰らう、カツカレー。





このカツカレー、大学の受験で本州受験地の八戸に行った時のこと。
出されたテスト用紙。
これを見て俺は絶句。
まったくもってチンプンカンプン。
そりゃそーだ。
後から聞いた話では、北海道大学工学部と同じ内容のテストだってさ。
分かるわけ無いじゃんか。

そこで午後からの面接にイチルの望みを掛けた俺。
その前に腹ごしらえをするわけだが
その時、隣同士になった大人な人と仲良くなって
「昼飯、一緒に食いに行こう」と誘われて行った港町の洋食屋さん。

その大人な人が頼んだのが「カツカレーとコーヒー」
俺も何がなんだかわからず「おんなじの」と注文。
出てきたのが、ライスカレーの上に載っていたのがトンカツ。
な〜んだ、ライスカレーにトンカツが乗っかったのがカツカレーかと納得。

そのカツカレーを食いながら、大人な人と話しをする。
「この学校に入るために4年間働き、金を貯めて受験しに来た」と言った。
俺は親のスネ総丸かじりで、遊び半分で札幌を目指したワケで
そのフラチな考えの俺と、大人な人の考えに大いに引け目を感じつつ
普通な味のカツカレーを食したってワケだ。

食後のコーヒーを飲んで帰り際「俺がおごってやるよ」と、大人な人。
「札幌に行ったら仲良くしようぜ」と言われ「うん」と言った
とっても恐縮したカツカレー。


で、話はもどるが
西日本のハンターは鹿なんぞには目もくれず
ただひたすらイノシシを追う。
犬も「紀州犬」とか「ブルーチックハウンド」「プロットハウンド」とか
イノシシの鋭い牙にも、ひるまない勇猛果敢な犬種を飼う。

なので、イノシシの牙に掛かってしまい、腹をを引き裂かれたりして
犬の消耗(戦死)も激しいのだそうだ。
だからイノシシ狩り専門の猟師は多頭飼いをして
補充しながら猟にでかけているらしい。

犬好きの俺には耐えられない話だが
そのくらい血湧き肉踊る猟だという。

それまでしてもイノシシを追うのには
美味いイノシシの肉の味を求めての事なのだ。
だから俺もイノシシを追ってみたい気は大いにあるが
残念ながら、雪深い岩手にはイノシシがいないとされている。

岩手県には推定3000頭の熊がいるというが
そのくらいしかいない熊の数なら、この広い岩手の広葉樹林が落とす実が
山々に有り余っているっていう事だ。
ここにイノシシが加わっても、充分に食わして行くくらいのキャパはある。

この広葉樹の実、ドングリやブナの実をタラフク食べて
脂の乗ったイノシシなんて考えたら
イベリコブタなんかお呼びじゃないくらい美味いイノシシに育つ事だろう。
でも短足で体重が重いイノシシは、積雪地帯では身動きが取れないので
繁殖は難しいだろう。

だから岩手にイノシシが居たとすれば、間違いなく俺は猪猟師になるだろう。
というくらい美味い肉だ。

岩手に多いアオ(カモシカ)も、メチャクチャ美味いと聞いているが
残念ながらコチラは天然記念物。
喰っちゃいけないのである。


そんな頂き物の貴重な野生イノシシのモモ肉を揚げて
大塚のボンカレーを掛けて喰らう事にする。

ん〜、イノシシのトンカツはメチャクチャ美味いっ。

という事で、大塚のボンカレーの普通の味が
あの頃の郷愁をおおいに駆り立てられ
40年前にタイムスリップしながら、カツカレーを食したのだった。



2012/11/5







鹿のお刺身

鹿肉いる?って言うと90%の確立で「いらない」って
言われてるらしい岩手県。
そーゆー俺も、そー言われたら
「あんまり欲しくないかな」って思う。
なんでかって言うと「臭い」からだ。
その臭さってのは夏の暑い日に脱いだズック靴から
立ち上る臭いに、鹿特有のケモノ臭い匂いが混ぢった
オエッとする臭いだからだ。

なんでそーゆー臭いがするのかって言うと
鹿を撃つでしょ。
その場で内臓を取り出すでしょ。
その鹿をブルーシートに包むでしょ。
時間が余っているときなんか、また猟を再開するでしょ。
で、そのまま鹿を包んで帰るでしょ。
そしてブルーシートの包みを解いて解体に入るでしょ。
皆でアーダのコーダの言いながら楽しく解体するでしょ。
そしてブルーシートに置かれた肉を
各自ビニール袋に入れて持ち帰るでしょ。
持ち帰った鹿肉は臭くて喰う気になれないから
知人に配るでしょ。
っていう流れの中で臭くなるのだ。

で、分かりやすく鹿を精肉にするまでの解説をする。
狩猟人生で最初に誘われたのが鹿の巻き狩り。
誘ってくれた山窩集の隊長が簡単に説明してくれた。
それは「自動車が現場に着いてドアーを閉める音だけで
鹿は猛烈な勢いで現場から逃げ出す」のだそうだ。
だから鹿を追い出す勢子は二山先の所まで車で移動し
そこから待ち受けの壁まで追い出すように大声を上げながら
歩き始めると、鹿は逃げて来た道を引き返すのだそう
そして待ちの狩人の壁まで来ると
鹿の群れは人間を察知して霧散するのだそう
そこで挟み撃ちにあう鹿がいたり
勢子達の壁に突っ込んで行く鹿がいたりして撃ち殺される
それが鹿の巻き狩りちゅうものだそうだ。

とりあえず僕は新入りだからって
鹿が来さそうも無い山の麓に
保険の意味で配置させられるってワケ。
無線機を持たされて、そこから流れる勢子たちの
鹿を追う威勢のいい声を聞きながら
待つ待つ、ただひたすら待つこと2時間。
あまりにも暇なもので、ラヂオ体操とか始めたら
山のてっぺんで指揮を取っている隊長から
「動くなっ!音立てると鹿が寄ってこない」と
お叱りを受ける。
しゅんとなって待つ事2時間半もたったころ
勢子たちが「あっち行った」とか「こっちに回ってきた」
とか、にわかに騒がしくなる。

そんな会話が無線機に流れてくるやいなや
勢子に追われた一頭目の鹿が僕の目の前を
ザザザっと大きな岩が谷底めがけて落ちるが如く疾走していく。
初めて見る鹿に驚いてしまい銃を構えれないまま見送る。

ちょっと間をおいて二頭目の鹿
デッカイ角を木々の枝にバシバシッと打ち付けながら
これまたマッハの速さで疾走し谷へ落ちていく。
あまりのド迫力に、鉄砲を構えられないまま
2頭目の鹿も見送ってしまう。
これが鹿の巻き狩りっちゅうもんか
エライもんだなと大いにビビった新米猟師。

鹿が獲れないまま、お次の山を巻き狩りすると隊長は言った
次の山でも2時間待ちか〜と腹をくくることにした
でもあんがい早い時間でパパーーンと銃声が聞こえた
その後から無線機には「獲れたのかっ」
獲れたのかっていう声がバンバン流れてくる。
しばらくして「獲ったぁ〜」という
勢子の声が無線機から流れてきて鹿の巻き狩り無事成立

ばんざーい ばんざーいで鹿の角にロープを引っ掛け
ズルズルと山から引きずり下ろして
おもむろに鹿の腹にシュパっとナイフを入れて開く
そして気道食道を切り離してから内臓を一気に
開いた腹からドバっと出す。
そして、無造作に畳まさったブルーシートを広げると
これがまた、いつの使いまわしのブルーシートなの?
っていうくらい血と泥まみれの汚らしいブルーシート。
あんまりなのでペイペイの新入り猟師の僕が隊長に
「ブルーシート汚いんで毎回替えませんか」と進言したら
「いままでこーやって来たから大丈夫だ」と
ウルサイっ!みたいな口調で一言。
僕は黙るしかないペイペイ猟師

そのブルーシートに鹿を乗せてグルグルっと巻き
自動車のキャリアに乗せた。
そして時間も時間だし今日の猟は終了と隊長の宣言。

その鹿を獲った所は三陸町っていう自分が住む盛岡から
2時間半くらい離れている所
ちゅことは2時間半ブルーシートに
鹿が包まれているちゅう事。

鹿の体温は40度と言われている。
そんな鹿をブルーシートに包んで2時間とかしたら
当然蒸れて臭くなるし、さらにばい菌の繁殖最適温度
ってのは35度くらいと言われている
その速度は15分で1細胞が2細胞に分裂てことは
一時間で16細胞に増殖するって事を考えたら
当然食あたりになっても不思議じゃないっていうより
普通に当たるでしょ。

で、長距離ドライブで持ち帰った鹿の解体が
隊長の庭で始まるわけ
その広げたブルーシートの上を会の皆様全員土足で
ワイワイ楽しく解体ってことは
おぢ様たちの歯槽膿漏の唾が飛び散っているってこと
汚いな〜ではなく、まぢ不衛生だと思った。

さらに言うと、土足の解体現場の衛生観念の無さに
ゾッとしたというより
あきれ返って吐き気がしたのが本音。

貰った肉を見ると鹿の毛がサワっと張り付いているし
チョー臭いし。
このまま煮込んで犬の餌にしようかとも考えたが
隊長に「どうだ、初獲物の鹿は美味かったか?」と
聞かれた時を思うとそうもいかないので
腹をくくって食べることにした。

だから僕は水道の水をジャンジャン流しながら毛を洗い流し
さらにカメノコタワシでゴシゴシと表面の肉を
削り流してから、貰った肉全部赤ワインでコトコトと
徹底的に煮込んだ煮込んで3時間半。
まるでマリーアントワネット時代に
潜り込んだような錯覚に落ちいった。

そんなマリーアントワネットのころのフランス料理ってのは
流通体制が整っていなかったので
臭くなった肉や魚が当たり前だったらしい
だからそれらの肉は充分以上に熱を通し
バイ菌を殺したらしい煮込み料理が主。
そして臭みを感じさせないようなソースを
作らざるおえなかったから
手の込みすぎたソースを発案していくわけだ。

ヌーベルキュイジーヌって言う日本料理に触発された
近代おフランス料理
食材本来の味を生かす手法は
流通形態の発達で可能になった。
それは近年1980年に入ってからの話だ。
そんなことを思い出す初体験だった。

まあぁこのくらいグツグツと煮込むと鹿か牛か何の肉か
分からなくなってしまうってのが本音。
旨いかって言うと、柔らかくてホロっと崩れる肉質加減が
たまらないちゃあ、たまらないかな。

そんな隊長は案の定、次の日に焼肉して喰ったら
2時間もしないで、家族全員ピーッのゲロゲロで
一晩中便所の取り合いだったそうだ。
さすがにそれからはペイペイの新米鉄砲ブチの俺の進言を
聞いてくれ、次から新品のブルーシート使うようになった。

そんな鹿の巻き狩りなのだが、2時間も寒い中ジーっと動かないで
待ち続ける我慢強さと辛抱がいる猟は自分的には合わない。
やっぱり犬と一緒に山々を駆け巡るのが楽しいし面白い。
でも一番は不衛生な肉を貰ってもしかたないなと
おもったので、なんのかんの理由を付け
なるべく参加しないようにした。

それに比べてユウチューブを見ていると
北海道の鹿猟は衛生観念がしっかりと根付いている
だから行政一体となって食肉としての価値を
高めようとしているから
汚らしいと思うとこはまったく感じない映像。

それは大間のマグロと同じ戦略だ。
大間のマグロは捕ったらすぐに腹を割き血抜きを完璧に行い
すぐに氷詰めにしてしまうという事を船上で完結し
品質の向上と維持を示すことによって
ブランドが確立したのだそうだ。

それに内地の日本鹿より北海道のエゾシカの方が
美味いという品種の違いもあって
昔から商品価値があって全国流通してるってことも
多分に影響しているとおもう。

で、ヘタッピィな俺にも弟子が出来
その弟子が鹿狩りしたいというので
その弟子の言うがままに手探り状態で鹿狩りを始めた。
二人なので巻き狩りは成立しないので
コール猟を手探りではじめたが
これもまたユーチューブを見て弟子が真似をしたのを見て
僕も真似てみた。

鹿の繁殖期にはオスがメスを何頭も従えてテリトリーを宣言する。
そこへ雌鹿にあぶれた雄鹿がやってきてバックで雌鹿に乗ろうととする。
が、そうはさせんとばかりにボス鹿が出てきて
メス鹿争奪の戦いが始まるのだ。
チンポに地が昇ったオス鹿、あの凶器満載のツノでバシバシと戦う。
で、角でグッサリと刺された方が敗退。
まれに喧嘩角が折れたまま刺さった
負け鹿がいるくらい、壮絶な戦いらしい。

その前兆戦として雄叫びの鳴き声を発するのだが
それに似せた笛を使ってテリトリーが出来上がっていそうな所で
この鹿笛を思いっ切り吹くと
俺のシマに無断で入ってきたヤツは許さんとばかりに
角をブインブイン振りながら出てきた
ハーレムのボス鹿を仕留めるって猟なのだ。

それと鹿の角を短く切って何本か、自分の腰にぶら下げて山を歩くと
カンカンとぶつかる音がし、鹿同士の戦いの角合わせの音が出る
それに釣られて、チンポに血の昇ったオス鹿が忍び寄って来る。

その猟を始めるにあたって俺は思った。
一昨年だが、秋田の西木村マタギの佐藤さんから
電話があって「大口径ライフル射撃大会仲間の
岩手のAさんから連絡が合ったんだが
忙しくて鹿を貰いに行けないから代わりに貰ってくれないか」
という内容の電話だった。

なのでヒマしてた師匠を誘って
佐藤さんに教えられたとおりの
落ち合う場所に行き、鹿をくれると言うAさんという
鹿ハンターと初対面。

その方は早池峰山の麓でククリワナを掛けている狩人。
鹿の有害駆除に掛かっている賞金稼ぎみたいな
プロのディアハンターだった。
今回は3頭もらってくれないかという事で
さっそく現場に連れていかれた。
水量のある沢に腹を割った鹿がロープに繋がれ
冷たい流れに浸っていた。

それを丘に引き上げ解体が始まった。
「今回は3頭も解体しなければならないから背割りで
肉を取る」と師匠は言った。
そのシカたちは腹が割かれ内臓が取り去られた状態で
沢の水に浸されていたので肉の冷却と血抜きが完璧だった。

切り分けていく肉の綺麗な事この上なし状態。
もちろん臭いなんかしない、初めて見る綺麗な鹿肉だ。
更にホンシュウシカにあまり見られない
分厚い脂肪の層があって
まるで牛のロースに見まごう肉が取れたのだ。

一般的に熱を通して、鹿の脂肪は口の中に入れると
口蓋の上に張り付き、溶けないので食感がこの上なく悪い。
なので、鹿の脂は徹底的に取り除くのが精肉方法だ。
だから、綺麗なロース脂なんだけど
あまり嬉しくはない鹿肉の脂なんだよなと思いながら
切り取っていった。

この3頭の鹿は下顎と尻尾はバッサリと切り取られて無い。
なんでかって言うと、鹿を獲った賞金をもらう為の
証拠提出品なのだそうだ。
それと下顎で推定年齢とか生活状況などが
見る人が見れば分かるのだそうだ。

で、持ち帰った鹿肉 臭くないし血も滴らない極上品なのだが
切り分けた時の解体手順が悪く毛が張り付いていて
衛生的にはどうなの?って感じだったし
清冽な沢水に浸っていたんだけど、しょせん沢水
信用はならない。
これまたジャンジャン水道の水をかけまくり、洗浄した。

その肉の塊を切り分けていくと
鹿の脂の割には牛の脂のように
手のひらの温度でサラサラと溶けていく感があった。
これなら鹿肉の脂でも美味いんじゃないかと
期待したりなんかして、、、
脂が付いたままのサーロイン部分を切り分け
塩コショウでジュっと焼いて喰ってみた。

その鹿の脂は口の中でへばり付く事もなく口の中で
スーッと溶けた。
あまりの美味さに絶句した。
この事を西木村マタギの佐藤さんにお礼かたがた報告した。

農繁期が終わって秋の終わりに北海道に渡って
プロのハンターとして活動していた秋田マタギの佐藤さんは
獲ったエゾシカを内地のホテルや旅館などに
卸していたのだそうだ。

中でも北海道の十勝地方のエゾシカは特に一級品で
「食い物が違うと肉も美味くなる」と言った。
そりゃそーだ。
俺らが喰っている牛ってやつは本来、草を食っている草食動物なのだが
その牛に無理やり栄養価の高いトウモロコシを
食わせると美味しい脂となって
旨い肉になるのだから
鹿も高カロリーのドングリとか食べてたら
当然イベリコ級に旨くなるよな。

一般的に冬場の本州鹿は千島笹の葉を好んで食べる。
なので解体すると、四つある胃の中は
千島笹の葉やらでパンパンだ。
体重の半分は、この胃じゃないかというくらい
超膨らんでいる。
そーやって貧小な千島笹の葉から微量の栄養を取るのだ。
まぁ狩猟期は冬場なので笹しか青い植物が無いので
それしか食い物が無いので仕方なく喰っていると
言った方が正解なのかもしれない。

冬場以外の季節には百姓が育ててた畑の野菜
米、牧草などを好んで食べるから有害駆除獣に指定獣なのだ。
四つもある胃だから、その食いっぷりは
想像をはるかに超していて
せっかく作った畑や田んぼは、ほぼ全滅なのだそうだ。

キジ撃ちに里山に行くと、畑や田んぼの周りに
ネットを張り巡らし、場合によっちゃあ電柵といって
高圧電流が通っている線を張り巡らして鹿の侵入を防いでいる。
そんな百姓に「鳥っこじゃねぐ、鹿を撃ってけろ」って
よく言われるから
鹿の被害にはそーとー切羽詰まっていると感じる岩手県。

と、大幅に話がそれたので修正すると、電話向こうの佐藤さんは
「十勝地方のエゾシカは、ドングリなどの木の実を
主食としているのでその身の脂が美味くなるのだ」と言い
続けて「早池峰山の麓の本州鹿も木の実を食べているから
脂が美味いんだと思うよ」と言った。
まさにイベリコ級の鹿になっているのだ。

そんな戴いた鹿の肉は上等品の上に
Aさんの処理が適切だったのだが
その後の我々の解体処理に難があって毛が付いていた。
だから弟子と俺とがやる以上は
それ以上の鹿肉にしたいと思った。
なんなら刺身で食えるくらいまでの肉に
仕上げたいなと思った。
それには、撃ち殺してから徹底した衛生観念を持って
精肉にするまでの時間短縮だ。

僕が調理人として現場に入った40数年まえは
肉の部位で頼んで配達される時代ではなく
チキンといえば丸のまま一羽くるし
牛とか豚は半割りといって、縦に半分にされた体がくるし
牛の頭とか豚の頭も普通に厨房のテーブルに転がっていて
その頭から肉をこそげ取って、ハンバーグの種にしていた時代だ。
だから鹿の解体は、ちょー楽勝。

あとは、ユーチューブでいろんな方の解体の仕方をみて
衛生的に肉に切り取る方法を組み合わせ
最良の方法を考えてみた。

倒した鹿の血抜きだが
人間で言うと耳の下の頚動脈を切れば
ドバドバと出るんじゃないかと弟子がやって見たが
期待したほど血が出ない。
なのでユーチューブで、またまたお勉強すると
人間で言う鎖骨と鎖骨のくぼみのとこから
心臓に向かってナイフの刃を差し込み
グリグリとすると左右の頚動脈とか大動脈あたりの血管が
破壊されドバドバと出ていたのでコレで行くことにした。

まぁ一番良いやり方は、ヘッドショットと言って
頭を狙い撃ち倒すと心臓はドクドクと動いたまま
鹿の動きだけは止まるので
心臓のポンプ効果で頭から血が素早く大量に放血する。

コール猟で初めて獲った鹿が弟子のヘッドショットで倒した鹿
この時の肉は、まさに完璧な肉だったのだ。
なので、いつもヘッドショットでやりゃ〜いいじゃん
となる訳だが、そこまで腕が良いわけじゃないので
とりあえず鹿の体に当てることに集中する。

2年目のシーズン、またしても弟子がヘッドショット。
杉林を疾走する鹿の頭に見事に命中
なんなの?弟子、凄腕ぢゃないの!
てな感じで俺のほうが弟子ちゃいまっか。

あとyoutubeで見ると撃ち殺した後、鹿の後ろ足にロープを掛けて
木に吊るして頚動脈を切り血を抜き出すっていう
方法もあるみたいだが
こもまた、あまり現実的じゃないので
せいぜい鹿の頭を斜面下に向けるくらいか。

北海道のプロ猟師はピックアップの自動車の荷台に
X字の鉄骨を組み、滑車を使って鹿の両後足をくくり
放血している人もいるみたい。
それにしてもエゾシカハンターの美味しい肉を取るっていう
執念はすごいねぇと
ユーチューブを見てるといつも感心する。

てなわけで我々の血抜きは鎖骨と鎖骨の間のくぼみに
ナイフを入れ、グリグリとかき回し放血する手段を採用。
それからの解体手順はこーだ。

まずゴム手袋をして、肉を入れるビニール袋を6枚
口を広げて鹿の周りに置く。
そうしてから鹿をうつ伏せに四肢を開いて置く。
そして背中の真ん中に一本ナイフで切り込みを入れ
いわゆる背開き状態にする
この時、背開きに使用したナイフと手袋は廃棄する。

なんでかって言うと鹿の体表面にはマダニが付いていて
それを取るために泥の溜まり、業界用語で言うヌタ場で
転げまわってダニを落とすから毛皮は、めっちゃ汚いのだ。
どのくらいマダニが付いているのかというと
鹿の死体を放置して体温が下がると
ポップコーンの大盛
ホウキではくくらいゴッチャリ出てくる。
そりゃ〜鹿さん、体が痒いはずだよ〜。
ちなみにマダニの越冬は鹿だの熊だの猪の毛皮に取り付き
寒い冬をやり過ごすのだ。

その一番鹿の汚い毛皮を触ったナイフと手袋を
肉をはがす時にも使ったら
ばい菌繁殖の元にもなるし、鹿の毛も付いて汚らしいから廃棄するのだ。
オット、手袋は廃棄するがナイフは持ち帰って
キレイに洗って、次回の猟のために準備するのだよ。

そしてからにゴム手袋とナイフを新しいものに替えて
肉の切り取りに入る。
絶命したはずの鹿から肉を切り取るとき
肉が痛いようってビクビクと動く。
だから余計に、綺麗に切り取ってやらねばと思うのだ。

部位ごとに切り取るのだが切り取り始めたら
絶対に地面に触れないように
慎重に且つ丁寧に切り取り、そのまま脇に置いてある
ビニール袋の広げた口に
そっと部位ごとに収納する。

注意して切り取って行くんだが
間違って地面に付いた肉や毛の付いた肉は
別の袋に仕舞うのは言うまでもない。

そうして鹿肉を切り取り終えたら、次は肝臓と心臓を取る。
その時、膀胱と大腸小腸を傷付けないように
慎重に肋骨下の腹膜を開く。
膀胱を間違って傷付けると繁殖期のオスの小便は
縄張り誇示のためチョー雄臭すぎるし
大腸小腸は大腸菌やらの菌の塊だから
特に気を付けなければならない。
肝臓と心臓を取り終えたら、ゴム手袋を廃棄して完了。

ここからが一番のキモ。
僕はここで猟から一旦離れ、切り分けた肉が入った
ビニール袋を持って、一目散と自分の店へと向かうのだ。
この時クーラーボックスに肉を収納してはならない。
なぜなら鹿の40度近くもある体温で蒸れて臭くなるからだ。
なので肉が入った袋を風にさらせる軽トラの荷台なんかは最高だ、
車を飛ばして走る走る、時間にして30分以内限定勝負。

急いで帰ってきた店の厨房の馬鹿でかいシンクに水を満たし
製氷機からたっぷりの氷を入れる。
そこに切り取った肉をビニール袋から取り出し入れる。
これには訳がある。
とにかく体温を落とすと言うことは勿論だが
同時に血抜きも出来るからだ。
氷水が血で赤くなったら、氷水を入れ替える。
これを半日かけて5回くらい替えると
綺麗で衛生的なお肉となるのだ。
お肉が水でブヨブヨにならないかって?
心配無用の介
肉の表面5mmくらいだけが白くはなるが中は赤いままだ。
そして新品のパンパースに包んで水気を完璧に取ると
白くなった肉の表面は赤く戻り水っぽさは感じなくなる。
ここでようやく食材となるのだよ〜

ここまでして精肉したんだから生でも大丈夫とばかりに
鹿肉を刺身にして食ってみた。
鹿臭さがまったくなく「鳥さし」みたいに
幾らでも食える感覚で
赤身の肉なれど赤ワインよりも白ワインを合わせたい
上品な一品になった。

あの早池峰山の麓で鹿猟をしているAさんの訃報が
突然舞い込んできた。
それは「山で猟をしていたハンターが暴発させ
自分で自分を撃ってしまった」
という新聞の記事。
崖を下っていて足を滑らせ、ずり落ちていく途中
猟銃の引き金が物に当たり暴発し
Aさんの胸を直撃したらしい。
そこから気丈夫なAさんは自ら軽トラを運転し山をくだり
町の知人宅に助けを求め駆け込み病院に搬送されたが
次の日未明に出血性ショックで死亡したらしい。
享年80歳というから、その負傷して運転したという精神力には驚きだが
死んだら元も子もない。

岩手で最近あった鹿猟での話 その2
鹿猟を終え車で帰宅しようと、何気に軽トラの荷台に置いた猟銃が
置いただけのショックで暴発し、運転室後部の鉄板を貫き
助手席に乗っていた猟友の背中を貫通し即死。
撃たれたのは若い猟師だったので余計に悔やまれる事故だし
間違って撃ってしまった老猟師は鮎釣りの顔見知りだったので
余計にこの事故の事を思うといたたまれない。

オイラの師匠はいみじくも言っていたが
「狩猟とは行ってきま〜すと言って玄関を出て
獲物が獲れなくても、ただいま〜って無事に帰るのが
狩猟というものだ」と。

ハンティングは野山を駆け巡る生き物を殺して
旨くなくても料理し食べてやる遊びではあるのだけれども
常に死と隣り合わせの危険なものと
常に認識してなければならないと
この事もあって、明日は我が身と己の胸に確と刻んだ。


鹿のお刺身

2019・11・30




鹿のお刺身 その後

でっ、お前、鹿とって威張ってる写真がねーじゃん
って言うお方 安心して下さい。
獲れてません。
み〜んな弟子が獲ってます。

2018年の初頭、なんだか物を見るときボヤけるっていうか滲んで見える感覚
なので、家から近くのちあき眼科っていうお医者様に見てもらいました。
いろんな検査をした結果 加齢黄班変性っていう診断結果。
それは網膜の一部分に新たに血管が生じて水脹れ状態になった結果
効き目である右目の中心がポッカリと穴が開いたように見えなくなる症状。
原因は色々ある見たいだけど、俺に当てはまるのが日光直射による網膜損傷。
そりゃそーだわな365日、外で遊んでるわけだしソーなるのも不思議ではない。
あとは日本の欧米化による食生活の影響ってのもあるとネットに書いてあった。
それも当てはまる。
俺は基本魚は食べないっていうか、嫌いではないけど好きでも無い。
なので肉主体のオカズを食べている訳だが
その肉自体に含まれている物質がヤバイらしい。
それは豚だの牛だのを病気にしてしまわないように抗生物質の激しい投与
なんたって、お金である家畜をみすみす殺すわけには行かないからな。
あとは成長スピードを、うながすためのホルモン剤投与に至っては
ホルモンカクテルと陰で言われているほど。
なんたって、お金である家畜の成長を早めて回転回収率を稼ぐ。
そーゆー事を聞くとそりゃそーだなと思う
素人考えでも「新生血管による網膜の水脹れ」
まさに成長をうながす薬なんだから、網膜に新生する血管、当てはまる。

ちゅうわけで夏、大好きな鮎釣りが始まったわけだが
川原を歩いて、鮎がいっぱい釣れるポイントに行くわけ
そこでよくけつまずいてオットトトとなり転ぶ。
それは歳から来る足腰が弱る現象じゃないかと言われたが
そーではない、右目の中心が見えない
だから左右のバランスが悪いので、川原の石の高低さの把握が出来ないので
けつまずくのだ。
そー説明するのも歳を喰っているのを否定するみたいでカッコわるいので
ハイハイと言ってかるーく流して置きましたけどね。

 それと、友鮎がどこを泳いでいるか把握するために
赤だの黄色だのの目印を糸に結び付ける。
あの黒光りしている石には縄張りを持った野鮎が絶対いると
確信し、囮の友鮎を泳がせて挑発するのだが掛からない。
で、いいかげん泳がせても掛からないないので
囮鮎の位置を変えようと、糸を張ると狙った黒光り石じゃない所を
泳がせ続けていたりして、ガッカリもした加齢黄班変性。

さらに、自動車を運転するのも怖くなって
今じゃ、規定スピードよりノロノロ運転なので煽られまくり。
でも、あおり運転罰則規定ができたので、俺の後方車両はジリジリしてるのがわかる。

じゃあ左目で獲物を捕らえれば、いいじゃんってことになるのだが
長年右目で獲物を捕らえて銃を構えていたんで
今更、左目で獲物を見て銃を左で構えればと言ったて
そう簡単にチェンジできるものじゃございません。
なんたって俺のマスターアイが右目だから。

マスターアイ つまりどっちの目で物を見ているかちゅうこと。
試しにやってごらん?
両目で、10メーター先の電柱を見て人差し指で指す。
そーしたら片目をつぶって、両目で見たときの指先位置と
同じ位置で見えたなら、それがマスターアイ 利き目ちゅうこと。
だから
左目で獲物を捕らえるっていっても、挙銃自体が左になるので
銃を構えれるかっていったら無理。
なので、2018年レミントン870の銃身のリブ越しに鹿を見ても
ポッカリと穴が開いたように中心が見えないんだから
メクラが鉄砲を撃っていると同じなわけで、当たるわけがない。
鹿2頭を射程範囲50メーターに収めたのだけれども
撃てども撃てども、これじゃあたる訳がございません。

じゃあ、お前の得意なヤマドリ猟も当たらないのかちゅうと
鹿は標的射撃で的に当てる射撃
ヤマドリは動的射撃でいわゆる、クレー射撃
分かりやすく言うと鹿が走っているところを撃つわけじゃなく
鹿笛に乗ってユッサユッサと寄ってきて立ち止まった所を撃つ
それでも加齢黄班変性では、鹿自体がぼんやりとしか見えないので
撃っても当たらない。

ヤマドリは犬にポイントされ追い出され飛んできたところを撃つ。
なので、鉄砲の銃身は流れるように飛んでいるヤマドリに合わせながら
銃身もスイングして、ヤマドリの先に銃身を先走りさせ撃つから動的射撃
だから俺クラスのへタッピは、あいまい射撃になるので何時かは当たる。
なので猟果ゼロちゅうことは無いのよね。

え〜、おかしいだろって?
そこは、弾の種類が違うので、当たる当たらないが出てくるのよ。
鹿には直径2センチくらいあるスラグと言いわれる一発弾
ヤマドリには5号弾といわれるが、俺てきには3号弾をつかうのだ。
なんでかって言うと、ヤマドリは臆病なので人が歩くような開けた所は
めったに歩かない。
だから普段はブッシュ絡みの藪の中を歩いている。
そこを猟犬に追い立てられて飛んだとしても
林の中の込み入った所を飛んだりするので、5号の小さい弾じゃ
そのブッシュに阻まれて、ヤマドリまで到達しないっていうか、
到達したとしても、ブッシュを貫通するのに使った弾道エネルギーが
無くなっているので、ヤマドリに当たったとしても
弾がヤマドリの体に入って行かないのだ。

これが3号弾だと、5号弾より一回り大きいので弾道エネルギーも大きい。
ブッシュのなどの障害物もなんのそので葉っぱとか小枝も貫通し
ヤマドリに一直線に向かって行き、更にヤマドリの体に弾が浸透するのだ。
大きい3号弾っていっても直径が仁丹くらいしかない弾で
それがワンショット、200発くらい。
それが鉄砲の銃口から出た直後は直径2センチの集弾なのだが
30メーター先だと霧散しながら飛んでいくから
直径2メートルくらいの弾幕となって広がって行く。
投網みたいなもんだな。
なので2メーター山鳥から外れた、いいかげんな挙銃からの発砲でも
当たるちゅうわけだ。

2019年、弟子と一緒に行けない時は一人で鹿探しに行ったわけだが
目の前50メーターで鹿に出合ったこと3回あった。
もちろん効き目である右目で銃身のリブに鹿を乗せたツモリなのだが
3匹ともナンなのってな感じで、白い毛のお尻をひるがえし最後っ屁
林の奥へと帰っていきました。
目が見えても、銃身のリブだけの狙いは駄目みたいだし。
弟子はドットサイトで、獲物を狙って100発100中なので
そこは光学系のものに頼らなければと、今更ながら思う訳けであります。

で、これじゃアカンちゅことで、頼りになる秋田マタギの第一人者
サトーさんに助けを求めたら、2倍とか4倍のスコープを乗せれば
なんとかなるんじゃないか、との助言。
そこでサトーさんお勧めのスコープ
Vortex Crossfire II 1-4x24が安い割にはトンでもなく良い
という助言をいただいたのでアマゾンで買うことにした。
なんてって秋田マタギのサトーさん、大口径ライフルの標的射撃の
日本チャンピョンだからね、間違いない。

購買時の困ったときのアマゾン。
なんでかって言うと
即、明日配達だしネットで見る銃砲店価格より安いからだ。
で、考えてみると俺の買い物のほとんどは
ここんところアマゾンで買っているな〜
さすがペゾス先生、消費者の心理を完璧にくみ取った商売してるな。
だから世界大富豪の一人なわけだ。

ということで、スコープを買ったはいいが
レミントン870には、そのままではスコープ乗せれません。
なので、スコープレールというアダプターが要ります。
サトーさんが余っているスコープレールが有るというので
譲って貰うことにして、譲ってもらったスコープレールを
レミントン870のレシバーにネジで取り付けます。

スコープレールの穴の位置と同じ所に
レミントン870のレシバー部分に穴を開け
タップバイスでネジを切ります。
ねじ切り途中、タップが入らなくなくなります。
CRC556を吹いてネジきり進行をうながします。
思ったよりレミントン870のレシバーは薄く出来てるんで
ネジでスコープレールを取り付ける時は
締めすぎないようにしないとネジ穴がバカになるんちゃいまっか
慎重にやらないと、とおもった。

ねじ切りも終わったレミントン870のレシーバーには
CRCが吹きかかっているので
パーツクリーナーで油分除去します。
スコープレールも同様にCRC吹きかけ油分を取っておきます。
そこに二液性の接着剤を塗ってから、スコープレールを乗せ
付属のネジを慎重に締め込んでいきます。

二液性の接着剤が固まる丸一日、負荷を掛けないように養生します。
そして
二日後スコープを乗せて完成ですが、照準が合ってませんので
ゼロインといってスコープの照準を合わせます。
この時役に立つのがボアーレザーサイターです。
簡単にいうと、弾の代わりにレザー照射する弾。
これを薬室に装てんすると赤い光レザーが伸びて行き
僕の場合は50メーターゼロイン照準なので
距離計を見ながら50メーター先の標的にレザーを当てて
スコープのクロスポイント合わせます。

これで準備万端と思いきや、鹿のコール猟は終わった12月初旬。
まぁ、来シーズン期待です。
乞うご期待。

2019/12/12