「『発達障害者支援法』に場面緘黙を残すことに関する要望書」(2018)骨子

「発達障害者支援法」に場面緘黙を残すことに関する要望書書骨子

平成30年4月18日

宛先○○様

「発達障害者支援法」に場面緘黙(かんもく)を残すことに関する要望書

場面緘黙関連団体連合会 会長 金原洋治

平成16年の発達障害者支援法の成立は、それまで法律の谷間に置かれていた様々な障害児者にとって革命的なものでした。また、平成29年の改正は、障害者の権利条約を大幅に取り入れた改正でした。
さて、発達障害者支援法の対象は、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」であるWHOの国際疾病分類の第10版 (ICD-10) における「心理的発達の障害 (F80-F89)」及び「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 (F90-F98)」に含まれる障害とされていました。後者に分類されていた「選択性緘黙」 (Elective Mutism) は、家庭ではごく自然に話すことができますが、園や学校など特定の社会的場面では、話せないことが続く障害です。発達障害者支援法の成立当初から支援の対象となっていました。
本年 (平成30年)、ICDの第11版 (ICD-11) で大幅な内容の改訂が予定されています。ICD-10の「心理的発達の障害」のほとんどは、ICD-11の「神経発達障害」に移行しました。ICD-10の「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害」のうち、ADHD、発達性発話流暢症 (吃音症)、慢性発達性チック症などは「神経発達障害」へ入りました。これらについては法の対象者として残されるものと想像しておりますが、それ以外の障害がどうなるか危惧しております。
選択性緘黙についてですが、ICD-11では、"Elective Mutism" という英語の名称が "Selective Mutism" へ変わり、恐らく和名も「場面緘黙症」になると予想されます。この場面緘黙症は「不安及び恐怖関連症群」に分類されます。神経発達障害の範疇ではありませんが、未診断や発見しにくい神経発達障害との合併も多い障害です。
場面緘黙は、脳性まひやダウン症の約1.5倍(注)の出現率なのですが、それらの障害に比べると早期発見・早期療育の場を探すのに困窮しています。また、入園や入学の時期など、通常低年齢において発現し、早期の特別支援によって、症状の改善が見込まれると考えられています。しかし支援が遅れた場合、成人になっても症状が継続し引きこもりに至る事例や、緘黙症状そのものは軽くなっても、社会性や社交性などの社会適応に大きな影響を及ぼし、うつ病や社交不安障害を併発する事例も少なくありません。
ここに、「発達障害者支援法」の見直しについて、以下のことを要望いたします。


(1)「場面緘黙」を発達障害者支援法の対象に含めることについて
場面緘黙の多くは、発達初期から生じ、発達経過に大きな影響を与える障害で、不登校や引きこもりなどの原因の一つでもあり、成人になっても症状や後遺症を残す障害です。発達障害者支援法の対象として現行の通り、継続的な支援を要望します。
(2)「場面緘黙」という名称の使用について
「選択性緘黙」という用語では、当事者がわざと主体的に話さないことを選択しているという誤解を受けやすいため、公に「場面緘黙(症)」という用語の使用を要望します。
(3)場面緘黙の周知・社会的認知の向上について
発達障害者支援法の対象とされていることを含めての場面緘黙の周知・社会的認知の向上と、場面緘黙についての調査、研究の強化を要望します。

(以上)

 注:場面緘黙の出現率は諸説ありますが、以前は0.15%というデータがありましたが、最近の大規模研究では小学生の0.2%程度と推定されています。したがって、脳性まひやダウン症の2倍程度の出現率になります。

緘黙関連団体連合会 加盟団体 (五十音順)当時

かんもくグループ北海道

かんもく 富山

かんもくネット

かんもくの会

かんもくの声

さくらんぼの会

信州かんもく相談室

つぼみの会 (場面緘黙親の会 関東)

日本緘黙研究会

場面緘黙親の会ひろしま あゆみの会

宮古島 緘黙っ子の親の会

 





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