「場面緘黙への理解促進と支援に関する要望書」(2021)骨子

令和3年○月○日

宛先○○様

場面緘黙(かんもく)への理解促進と支援に関する要望書

場面緘黙関連団体連合会 会長 金原洋治

 最近、発達障害者支援法に場面緘黙を残すことなど、場面緘黙の当事者、経験者、関係者に場面緘黙に関する要望をアンケート調査いたしました。それらのことをふまえて、要望を取り纏めました。宜しくご配慮いただけますようお願い申し上げます。
 前回の要望書では、2018年 (平成30年)、ICDの第11版 (ICD-11) で新しい大分類の「神経発達症」が作られたことに伴う危惧をベースに提出いたしました。自閉スペクトラム症(ASD)、発達性学習症(SLD)、発達性協調運動症(DCD)、注意欠如多動症(ADHD)、発達性発話流暢症 (吃音症)、慢性発達性チック症などは「神経発達症」へ入りました。一方、場面緘黙症、分離不安症、反応性アタッチメント症(反応性愛着障害)などの障害は、入りませんでした。「神経発達症」だけが発達障害者支援法の対象になると予測する識者もいる状況で、場面緘黙の当事者や家族、支援者は大きな危惧を抱いております。
 その危惧に基づいて、場面緘黙の当事者(以前、場面緘黙で現在では会話が可能になった「経験者」を含む)、家族、支援者等へアンケート調査を行いました。すると、発達障害者支援法の対象であることを全く知らない当事者、家族がいるだけでなく、本来専門家として周知されていなければならない精神科医、発達障害者支援センターの職員、情緒障害に詳しい教師にいたるまで、場面緘黙に関する理解が極端に乏しいことが明らかになりました。また、経験者においても、いわば後遺症のような適応上の困難があり、日常的な支援のニーズがかなりあることが分かりました。調査の概要については、別紙をご参照願いますが、医療、福祉、教育、労働の専門家においても場面緘黙は正しく理解されておらず、厚生労働省や文部科学省の公的ホームページやパンフレットでも場面緘黙に関する情報は示されておりません。これは、分離不安症や愛着障害についても同様の問題を抱えています。
 これら、いわゆる情緒障害については、一時的な障害で、いずれは治るというイメージが広がっており、なかなか福祉に結び着かないまま、不登校、引きこもり、学校や職場での適応困難、あるいは社交不安症やうつ病などを発症し、離職や引きこもりに陥っている例も少なくないのです。例えば、場面緘黙の場合、家では喋れるからいずれ問題が解決するとか、人見知りの強い性格で、大人になれば解決するだろうと専門家においてもイメージされていますが、そのように簡単な困難ではありません。。
 だらだらと出血する程の怪我をしても、声が出なかった事例や、生命の危機においても助けを求められなかった事例もあるのです。不安がベースという説が有力で、極端なあがりなどに似ていると想像されがちですが、レベルが違います。一日中一言も発する事が出来ず、うなずくことも困難な状態だったり、極度の緊張状態になり身体が動かなくなったりすることが、何年も続くことを想像すると、その困難の最中にいる場面緘黙者が抱える困難に思いを致せると思います。また、そのような困難を抱えつつ、社会に参加することの困難も容易に想像できると思います。
  前回要望させて頂きました「発達障害者支援法」の見直しに関する要望(添付文書)に加えて、場面緘黙の理解促進と支援の拡充について、以下のことを要望いたします。


(1)場面緘黙を発達障害者支援法の対象に含めることについて
 場面緘黙の多くは、発達初期から生じ、発達経過に大きな影響を与える障害で、不登校や引きこもりなどの原因の一つでもあり、成人になっても症状や後遺症を残す障害です。発達障害者支援法の対象として現行の通り、継続的な支援を要望します。
(2)場面緘黙の理解促進
 厚生労働省、文部科学省等の公的媒体における、場面緘黙の理解促進を積極的に行って頂きたい。医療、福祉、教育、労働の専門家に向けた理解促進プログラムの策定と研修を要望します。
(3)場面緘黙の支援拡充
 医療、福祉、教育、労働の各分野における支援を拡充し、特に重篤な例については手厚い支援の制度を確立するよう要望します。

(以上)

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