〒780-8074 高知市朝倉横町12-22 伊野部哲也方 勾玉発行所

  子規・虚子と続く伝統俳句「ホトトギス」の流れを汲む高知県の俳句結社です。毎月更新してゆきます。

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「勾玉」八百号記念 合同句集

勾玉社ではこの度発刊八百号を記念して、句友百余名による合同句集を刊行いたしました。

主宰橋田憲明の「まえがき」をご紹介します。

 A4判 444ページ 句友103名 物故者4名 句総数2,100句

 
刊行のことば  橋 田 憲 明
 「勾玉」は、昭和二十三年一月、川田十雨先生によって創刊。令和二年七月に通刊八百号を迎えた。記念句集をという企画は、
このたびが初めてのことである。令和二年のいま、集っている人たちの記録が句集という形で残ることになる。古くからの作家もいる。
最近、句の道に入った人もいる。この句集の句は、全て各々の作者渾身の自選のものである。読後のご感想を、それぞれの作者に
いただき激励を賜れば幸いである。さらに精進を続けることで応えてゆきたいと思う。俳句は、「座の文学」といい、連衆の文学と
いわれる。私たちは「勾玉」という座の中で高められてきた。この句集も一人一人の作者が集まって座を形づくった。互いの句が
刺激しあって、さらなる深みを志してゆきたい。
 「勾玉」の毎号に出て来る「磨甎」の語が改めて想い出される。「磨甎」、瓦をみがく。高知市五台山吸江寺の堂中、そこに結庵した
無窓国師の法嗣であり、五山文学の頂点に到る絶海の筆という一額が懸かっている。浦戸より吹き込む潮風に触れ、木目もあらわに
出て薄れた文字に、かすかに読まれるのは「磨甎」。禅の言葉で甎(かわら)を磨いて鏡とする。不可能なことを成しとげねば、修行
しても仏にはなれない意味だという。玉ならば磨けば光も出よう。瓦は磨いてもかがやきは得られぬ。己が凡俗の瓦と分っていても、
磨くことを諦めてはならぬ。その専心の果て、奇跡が訪れて、鏡と輝く時が来るのかも知れぬ。いつまでも輝かぬかも知れぬ。
瓦を磨く厳しさを日々の心として未来に立ち向かいたい。
 秋風や磨甎の額字消えなむと  十雨
秋風は、飄々と磨甎の堂まわりに吹きすさぶ。さらに想い出される「皋鶴」の言葉、春野町弘岡の十雨先生宅の表の間のなげしに
「十雨君のために」という為書のつく「皋鶴」の扁額が懸かっていた。虚子先生の書。これは「勾玉」の原点とも言える言葉。
「皋鶴」は沢のほとりに居る鶴という意味。「皋鶴の声」と言えば、身を隠していても名は顕れることのたとえ。虚子先生の十雨先生への
励ましである。それはまた、土佐の俳句に勤しむ私たちへの虚子先生からの激励と受け止め、いい句を残す事を目的としていきたいと思う。
「沢に光れ」「鄙に光れ」。風土に徹することが世界に通じる鍵である。八百号を迎えた「勾玉」の覚悟としてどこまでも心に留めていきたい。
「磨甎」「皋鶴」の言葉を掲げて、改めて句集刊行の言葉としたい。  令和2年12月10日