B 神経質の先天的は性格特徴(素質の部分)


 特 徴

長所(生かすべきもの)

欠点(自認すべきもの)



欲求が強い

・完全欲が強い

欠点を許す心が足りない

・人間的な向上欲求が強い

現状に感謝する心が足りない

・努力家である

のんびりしておれない

・負けず嫌いである

勝とうとしすぎる

・几帳面である

融通がきかない



自己内省的である

・注意が内向しやすい

外向的な面が足りない

・反省心が強い

前向きな姿勢が足りない

・意識的である

自然な態度がとれない

・理知的である

感覚的な面が足りない

・真面目である

柔軟に対応できない



心配性である

・感受性が豊かである

鈍感なところがない

・細かいことに気がつく

大雑把なところがない

・取り越し苦労をする

楽天的なところがない

・用心深い

大胆なところがない

・欠点を探して苦にする

長所を認める心が足りない



執着性が強い

・粘り強い

簡単にあきらめることができない

・物事にこだわる

あっさりした態度がとれない

・慣れるのに時間がかかる

すぐになじめない

・やりだすと長続きする

臨機応変な切り替えができない

      このように整理してみますと、長所は活かさなければならないものであり、
     欠点 は自認すべきものであることがわかります。そして、両者を合わせたも
     のが私たちの特徴となるわけです。 表現の仕方は人により違ってもいいの
     ですが、ここでは、 長所を活かすというのはどういうことか、欠点を自認する
     というのはどいうことか、が 問題になると思われます。

     まず、長所としてとりあげた各特性についてですが、はたしてこれらがす
     べて長 所といえるかどうかが問題になると思います。たとえば、「注意が内
     向しやすい」 とか 「取り越し苦労する」 とか 「欠点を探して苦にする」 とか 「
     物 事にこだわる」 というのが、はたして長所といえるかどうかです。ちょっと
     考えますと、これらは長所ではなくて欠 点ではないかと思われるのですが、
     よく考えてみますと、そうではありません。
       注意が 内向するから、自分で自分を知ること、すなわち自覚することがで
     きるのです。 取り越 し苦労をするから、事前の準備ができるのです。 欠点
     を探して苦にするから、物事を 完成させることができるのです。 物事にこだ
     わるから、ものの真相を見極めることができるのです。

      このように、 要はそのものの使い方いかんにかかっているのであって、 も
     のは何でも使い方次第で役に立つものになるのです。 そういう意味から申し
     ますと、 前記の長 所なるものを役立つようにしていくのが、 私たちの務めだ
     と言ってもいいと思います。 「かみそり」と「はさみ」を同じように使ってはいけ
     ないのであって、 それぞれ用途に応じた使い方をすればみんな役に立つも
     のになります。   
     ですから私たちとしては、先に 長所として掲げた特性が役立つような生き
     方をしなければならないということです。 そのためにどうすればよいかという
     と、プラスの行動をすればよいということになります。

    私たちは一般に、 健康や建設に役立つ行動、即ち努力すればするほど
     結果が良くなる行動をプラスの行動と言い、結果的にそれに反する行動、即
     ち努力すればするほど結果が悪くなる行動をマイナスの行動と言っておりま
     す。 そういう視点で、もう一度前記の長所を検討してみますと、役立たないも
     のは一つもないという気がします。

       要するに、プラスの行動をすれば、長所が全部プラスの行動を徹底させる
     方向に働き、マイナスの行動をすれば、長所が全部マイナスの行動を徹底さ
     せる方向に働くのです。 したがって、性格特徴そのものの中にプラスとマイナ
     スがあって、プラスの行動をすればプラスの部分が働き、マイナスの行動をす
     ればマイナスの部分が働くというのではないのです。 性格特徴に長所と欠点
     はあっても、プラスとかマイナスがあるわけではないからです。 実際に検討し
     てみればすぐわかるように、 前記の長所をプラスとし欠点をマイナスとするの
     は適当でないことは明らかです。 ただ、行動には今述べたようにプラスとマイ
     ナスがありますので、行動の仕方によって性格特徴がプラスに働いたり、マイ
     ナスに働いたりするまでのことです。

       長所を活かすということを説明するとそういうことになりますが、私たちは日
     常、そんなことをいちいち意識して生活しているわけではありませんから、 実
     際には気分の良し悪しにかかわらず、 「今しなければならないこと」や「やりた
     いこと」を粘り強く工夫してやっていけばいいのであります。 そうしていれば自
     然に、 性格特徴がさきほど述べたような形で役立ってくるのです。

  
        
  次に、欠点部分を自認するということについてですが、これが簡単なようで、
     実際はむずかしいところがあるように思います。 たとえば、「几帳面である」
     という特徴の欠点は、「融通がきかない」 ということですが、几帳面であれば
     融通がきかなくて当然なのに神経質の人は、几帳面でしかも融通のきく人間
     になろうとするところがあります。さきほども述べたように、それは不可能なこと
     なんです。 いつも融通をきかせていては几帳面にはなれないのですから、ど
     ちらかを生かせば、どちらかを犠牲にしなければなりません。
       現実には、几帳面であることは仕事上プラスになることが多いけれども、一
     方では融通がきかないという形で、それが障害になってくることもあります。 
     そういう場合に仕事をうまく進めようとすれば、 几帳面さを多少犠牲にしても
     融通をきかさなければならない場合が生じてきます。 実際には、実情をよく
     見たうえでなければ決められない問題ですが、そのように事実に即して目的を
     達成するために、自分の特徴をある程度犠牲にすることができればよいのであ
     ります。  
      そういう客観的な必要性もないのに、 あらかじめ融通のきく人間になってお
     く必要はないと思いますし、また、そんなことが簡単にできるものではありません。
      そんなことをしようとすれば、そのことがまた新しい神経症の原因になってしま
     うだけです。

      さらに次のようなことが言えます。「欠点を許す心が足りない」という点につい
     ていうと、そういう心が足りないことを素直に認めて、それを恥ずかしく思ってい
     れば、これ以上そういう傾向を助長することは忍びがたいという気持ちが自然
     に出てきて、そういうことを上積みしないようになってきます。 それに反して、欠
     点を許す心の足りないのは、人間ができていないからだと考え、できた人間に
     なろうとすれば、かえって許さない回数を増やしてしまうものです。 なぜかという
     と、それは現在の自分の心のなかの事実を無視して、ただちに理想的な状態を
     意識的に作りだそうとするからです。

       実際に自分の心のなかに存在している 「欠点を許す心が足りない状態」 は、
     自分の特徴の一面ですからどうすることもできないものです。 嫌だからといって、
     それを自分の思うように変えようとするのは間違いです。 そのようなときに必要
     なのは、その事実をありままに認めたうえで、現実をよく見て、それが実際に他
     人に迷惑にならないようにすればいいのです。 つまり、自分自身を良くしようと
     するのではなく、他人に迷惑をかけないようにすればいいということです。 そう
     いった自分の欠点をなくしてしまう必要はないわけです。 そこのところを勘違い
     して、無理に許す心をもった人間になろうとしますと、そのことがまた神経症を作
     りだす原因になってしまいます。

      いずれにしても私たちは、こういった長所や欠点をありのままに自分の特徴と
     して認めていかねばならないと思います。 たとえ嫌いであっても、それらをなくそ
     うとしてはいけません。 仕方なくそれを受け入れ、長所を活かすように、前向き
     に建設的に生きていかなければならないのです。 それがいかに困難な道であっ
     ても、それ以外に生きる道はないわけです。 そこに神経質者の生き様の容易な
     らざるところがあると言ってもいいと思いますが、その点については、他の性格特
     徴の場合にも言えることであって、そういった厳しさについてはみな同じだと思い
     ます。 人間が生きるということが、そういった厳しさをもっているということです。



    

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