福田貴日の”教育のことあれこれ”
■紹介文
■福田貴日のコラム
・受験に関するコラムです。併せてご参照くださいませ。
AIに負けないだけの学力とは?
皆さんはAI(人工頭脳)に対してどんなイメージをお持ちでしょうか? ご存じのように、最近のAIの進歩は目覚ましいものがあります。特に将棋や囲碁において、その世界の頂点を極めたプロ棋士達が、次々とAIの前に敗北していく様子が新聞で報じられたことは記憶に新しいと思います。こういった事実から、2045年にはAIは人間の頭脳を超えるのではないかとさえ囁く者もいる程です。
一方、AIを使い東大に合格できるかどうかにチャレンジしたチームが遂に不可能だという結論に達したことも明らかになりました。
つまり現在のAIにはすでに、人間の能力をはるかに超えて実力を発揮する分野が確かに存在するのですが、全ての知的活動の面で人間を超えたわけではないのです。
とはいえ、AIが一定の実力を持ち始めてきたことは否定の出来ないことですし、将来人間の仕事の多くがAIに奪われることになるのも間違いありません。
ではAIに仕事を奪われないようにするためには我々は学生時代にどのような学力を身に着けておく必要があるのでしょうか?
それはAIの長所と短所から判断できるのです。AIによる東大合格が可能かどうかのチャレンジからわかったことは、AIは数学や世界史では高得点を挙げられる場合がある(偏差値60を超える)一方で、国語や英語ではどんな工夫をしてもいい成績を上げることができない(偏差値60を超えられない)ということでした。
このことから予想できるAIの長所は、
① AIはコンピューターなので当然、計算は速くて正確である。
② AIは情報処理能力に優れているので、暗記科目は得意である。
③ AIはマニュアル通りの作業を最も得意とする。
といったことだと思われます。
一方、予想できる短所は、
① 言語の種類に関係なく、文章を読んで理解するのは苦手である。
② 型にはまらない作業はなかなかうまくいかない。
といったことだと思われます。
AIの短所を踏まえればAIに負けない学力とは、確かな文章読解力と柔軟な思考力を兼ね備えていることだと考えられるのです。
二年後にセンター試験の制度が変更されるのも、こうした時代の要請が背景にあるからだと思われます。
私もAIに負けないだけの学力を持った学生を一人でも多く育てるため、指導に様々な工夫を取り入れていきたいと考えております。
最後に指導中に私が心掛けていることが一つあるので、ご紹介致します。
私は読解力の重要性について強調しましたが、この力を付けることは国語力の向上にとって鍵となるだけではありません。あらゆる科目の基礎となります。
例えば、算数や数学を苦手とする学生が問題文の内容を正確に理解できないために、結局不適切な解き方をしてしまうというケースを私は実際に目にしたことがあります。
そのため私は普段の指導の中で科目のいかんにかかわらず、問題文中にその学生にとって内容理解の妨げになっていると思われる文章を目にした場合には、可能な限り国語的な説明を加えることにしています。
そしてこのことはそれぞれの科目の専門家にとってそれ程簡単なことではないはずです。