月刊カノープス通信
2006年7月号

 目次 

・季節の便り『ふたつのノウゼンカズラ』
・今月の勘違い
・読書録
(『アブホーセン』『キーリ9』『生霊わたり』)




 季節の便り『ふたつのノウゼンカズラ』

 今年もまた、私の大好きな花、ノウゼンカズラの季節がやってきました。
 就職で千葉に来て初めてこの花を見た私が、そのエキゾチックでノスタルジックな美しさに感動し、通販で苗を購入したところ、花の色や形が近所のものと微妙に違った……という話を、以前、『月刊カノープス通信』2002年8月号に書きましたが、その、二つの品種の写真を携帯カメラで撮ってみたので、載せてみます。

 下の写真の、左側のが、この辺の古いお家で良く見かける土着の(?)ノウゼンカズラ。
 右のが、うちにあるのと同じ品種。
 通常は、高木に絡ませてツリー仕立てにしてあったり、高い塀の上にこんもりと溢れて咲き零れていたりして、空を背景に高いところに咲いていることが多い花ですが、この写真は、たまたま低い位置に咲いているものを選んで撮影しました。なので、花の形は分かりやすいですが、雰囲気的にはちょっとノウゼンカズラらしくないです……。

    

 左のの方が、色が淡く、花が全体に大きく、花筒が短く、花びらが開き気味のおおらかな花姿です。
 それにくらべて、右のは、写真では分からないと思いますが花が全体に一回り小さく、花筒が長く、色が赤っぽくて濃いです。

 もともと私が欲しかったのは、左のやつだったんです。こっちのほうが、花も一回り大きくて、花形も花弁が平らに開いているので可愛らしく、何より、ちょっとぼやけたような、淡く微妙なパステルカラーが好きなのです。悪く言えば『薄ぼやけた色』なんですが(笑)、まるで、よく晴れた夏の夕方に、青さが薄れかけた東の空に浮ぶ小さなちぎれ雲みたいな、柔らかく熟れた杏の実のような、甘く優しいアプリコット・オレンジが郷愁を誘います。

 その点、右のやつは、色合いが、よく言えばトロピカルで情熱的、悪く言えば、ちょっと暑苦しいですね(^_^;)

 このへんではあちこちの家に普及している、あの、アプリコット・オレンジの品種は、みんな、どこで入手したんでしょうか。近所の家からの株分けによって家から家へと広まっていったのでしょうか。
 私の見た通販カタログでは、ノウゼンカズラは一種類しか載ってなくて、選択肢が無かったし、その後、園芸店で苗を見かけるのも、赤いものばかりなのです。(他にピンク・ノウゼンカズラもよく見かけますが、あれは、名前はノウゼンカズラだけど別種の植物です)
 最近では高速道路の防音壁などにもノウゼンカズラが伝わせてあることがありますが、それも、色が赤くて花筒が長い品種です。うちにあるのと同じ品種らしいこともあるし、もっと花が小さくて細長い品種も見かけます。

 というわけで、今回、ずっと漠然と気になっていたノウゼンカズラの品種について、検索で調べてみました。
 その結果、オレンジ色のは中国原産の古くからある在来種で、うちにある赤っぽいのはアメリカ原産のアメリカノウゼンカズラとの交配で生まれた園芸品種(おそらくは『マダム・ガレン』)らしいということが分かりました。なるほど〜。
 あと、高速道路で見かけるもののうち、うちのともまた違う、もっと花形が細長いやつは、たぶんアメリカノウゼンカズラだと思われます。アメリカノウゼンカズラやその交雑種は在来種より生育が早く樹勢が強いそうなので、防音壁の緑化に向いているのでしょう。
 でも、園芸種より在来種のほうが花が大きかったり花形が華やかである花も珍しいですね。




 今月の勘違い

 またまた我が家のとんちんかん会話集です。
☆テレビ(ボウケンジャー)「ネガティブ・シンジケート(←悪の組織の名らしい)に攫われたら……」
 夫「えっ? 手書きのシンジケート? なんだかショボそうな組織だなあ……」

☆テレビ(ボウケンジャー)「僕と握手するちびっこ募集! 応募はがきはスカイ・シアターで
 夫「えっ? 応募はがきは使っちゃったので?」

☆私「ねえ、○○ブックセンターが移転するんだって。店の前に『××駅前に移動します』って貼り紙してあったよ」
 夫「えっ、『××駅前にいとう・しのぶ』? 誰、それ?」

☆私「このシロップ、黒蜜の味がするよ」
 息子「えっ、動物の味?」

☆息子ニ号「ねえ、お兄ちゃん、ぼくの筆箱知らない?」
 息子一号「えっ、大きな黒い箱? そんなもの見なかったよ」

☆テレビ(天気予報)「明日は梅雨の中休みになるでしょう」
 息子「えっ、冬の夏休み?」

☆夫「このふりかけ、海苔の量が多いよね」
 私「えっ、もりもり王が多い?」





 読書録


『アブホーセン 聖賢の絆(古王国記3)』 ガース・ニクス 主婦の友社

 三部作、完結。面白かったけど……、三部作全体読み通しての感想は、『やっぱり何となく私には親しみにくい』だったかもしれません。良し悪しじゃなく、個人的な向き不向きで。
 もしかして、私、頭が固いので斬新なアイディアとか奇抜な設定に順応できないのかも。
 ちょっと古風だけど比較的現実世界に近い、科学技術中心で大統領制の近代国家『アンセルスティエール』と、魔法の王国『古王国』が壁を隔てて隣接し、しかもそれなりに交渉を持っていて、古王国では代々王位継承者を壁の向こうに留学させたりしている――、でも、二つの世界は、地続きでありながら、季節から天候から世界を支配する法則まで、壁を隔てたとたんにがらっと違う――という、斬新な設定が、私には馴染みにくく、面白いとは思いながらも物語にどっぷり感情移入するまでは行かなかったんじゃないかと思います。

 今回、三部作全体を読み通してみて、相互リンク先の管理人さんが読書録で第二部『ライラエル』の内容を『脇道っぽい』と書いてらした、その言葉に改めて納得しました。
 私は、その時点は、全体の構成が全く見えていなかったので、それを聞いても(えっ、そうだったの? 私には分からなかった……)としか思わなかったんですが、全体通して読んでみると、確かに、言うとおりだ……。私がどれだけ木を見て森を見ない読み方しか出来ていないかが、如実に現れてますね(^^ゞ
 でも、私が一番面白かった、楽しめた巻は、第二部『ライラエル』なんですよね……(^_^;)

 どうしてかと考えるに、『ライラエル』は、近代国家アンセルスティエールが出てこない、古典的でオーソドックスなハイ・ファンタジーだったからじゃないかと思います。
 まあ、アンセルスティエールだって異世界なので、本当は、あそこが出てきても異世界ファンタジーだったりハイ・ファンタジーだったりすることに変わりはないのですが、一つの物語の中に『文化の違う二つの国』ではなく、『全く違う法則に支配された二つの世界』が共存しているという斬新さについていけない私にとっては、ほぼ完全に古王国の中でだけ話が展開する『ライラエル』の、その中でもさらに『クレア族の氷河』という閉ざされた小世界の中で展開する前半部分が、従来から慣れ親しんできた古風なファンタジーに近くて親しみやすかったようです。

 というわけで、どうやら私は、斬新なものよりも、どっぷり古風な正攻法の王道異世界ファンタジーが好きらしいです。でも、今、流行ってるハードカバーの児童書形態のファンタジーって、この手の、『新感覚ファンタジー』が売り文句になるようなタイプのものが主流っぽいですね。『ライラの冒険』シリーズとか。

 とはいえ、面白かったです。第三部では、お気に入りの不評の犬がますます大活躍で、ますます彼女が大好きに。犬はいいなあ……。ラブ!
 あと、パパ・タッチストーン。王子様時代はどうにも冴えなくて別に好きじゃなかった彼が、パパになってから、いい味出してますね〜。サムに『生きててくれてよかった』みたいなことを言われて『まったくだ』(だったかな?)みたいなことを答えるところが特にウケました。もう、パパってば、お茶目なんだから!(笑)


『キーリ 9 死者たちは荒野に永眠る(下)』 壁井ユカ子 電撃文庫

 最終巻。ああ、良かった……。
 『良かった』っていっても、別に『ハッピーエンドだったから良かった♪』という意味じゃなく(あれをハッピーエンドと受け取るかどうかは人によって微妙?)、最後まで好みの雰囲気の作品あってくれて、シリーズ全体として「ああ、いいお話だった……」という余韻を残してくれて良かった……。
 シリーズ途中で、一巻目の雰囲気は良かったけど途中でマンネリ化しちゃうかも……という危惧を抱いたこともあったけど、最終的には、このシリーズ、私にとって『すごく好きな、とても良かったお話』の一つになってくれました。

 この巻、中盤の内面世界のシーンで、ついにモロに『銀河鉄道の夜』をやっちゃいましたね。
 特にレベッカとヨアヒムが幼い姉弟の姿で列車を途中下車するシーンとか(笑)。
 ついつい、途中までは列車が地面を走ってたのを忘れて、最初から宇宙を走ってるものだとばかり思ってしまいましたよ(^^ゞ

 ハーヴェイとキーリは、なるほど、ああいう決着か……。私は満足です。いい着地点だと思いました。具体的な状況については予想してなかったけど、恋愛要素の決着についてはほぼ私の期待通りだったし、なるほど、これなら、いろんな面で納得がいきます。

 最後に、やっぱり、兵長さん、好きだ〜(T-T)


『生霊わたり クロニクル千古の闇 2』 ミシェル・ペイヴァー 評論社

 面白かったです。はらはら、どきどき。
 ただ、前巻に比べると、こちらが慣れたせいか、キャラたちが現代人とは違う思考様式を持った古代人なのだという違和感が薄れた気がします。そのせいか、はたまた空が開けた海や島が舞台であるせいか、古代の闇の深さがちょっと薄らいで、前巻と比べてわりと『普通』な感じがしたかも。一方で、その分、キャラたちへの感情移入はしやすかったかもしれません。
 全6巻予定とのことで、続きが楽しみです。


☆その他メモ:『魔法物語(下)』読み途中。


ご意見・ご感想はこちら
『月刊カノープス通信』バックナンバー目録
トップページ