月刊カノープス通信
2006年5月号

 目次 

・今月の勘違い
・近況報告『西伊豆・洞窟と廃墟の旅』
・読書録
(『パラケルススの娘 3』『図書館戦争』『西の魔女が死んだ』『アルコン』『狼と香辛料』)




 今月の勘違い

 またまた我が家のとんちんかん会話集です。
☆息子(ゲームをしながら)「ジョセフィーヌ(というキャラと出会うイベント?)の前に魔法を覚えなきゃ」
 夫「えっ? 女子便所の前で魔法を覚える? なんでまたそんなところで……?」

☆夫「『星の王子様』って本、知ってる?」
 息子「えっ、『牛の王子様』?」

☆息子「『野菜ふりかけ』、どこ?」
 夫「えっ、ロサ・ギガンティア?」(←『マリ見て』の話かと思ったらしい)
 私「えっ、うさぎ飯店?」(←どこの中華料理店かと……)

☆私「今日のカレーはニンジンが山ほど入ってるよ」
 夫「えっ、日本人ナマコ入ってる?」

☆私「あっ、ニンニクが一個落ちた」
 夫「えっ、ニンニク大根?」

☆夫「この道、マーガレット・ラインっていうんだよ」
 息子「えっ、漫画ヘッドライン?」(←オタク向け情報サイトとかにありそうですね)

☆映画『マトリックス』「もうすぐ預言者から連絡が来る」
 夫「えっ、養命酒?」 



 近況報告『西伊豆・洞窟と廃墟の旅』 

 ゴールデンウィークに伊豆に行ってきました。
 主な目当ては、去年も行った土肥金山の砂金取り体験!
 去年の8月号に書きましたが、息子が去年から砂金取りに大ハマりなのです。
 
 でも、今回の旅行で一番面白かったのは、思いがけなくめぐり合った洞窟と廃墟でした。

 前々から何度も書いていますが、私、なぜか洞窟が大好きなのです。ネット上で一年以上のお付き合いのある方の中には、私が去年の夏に入水鍾乳洞に行った後に、何週間も興奮が冷めやらぬまま、日記や掲示板でハイテンションではしゃいでいたことを憶えている方もいらっしゃるでしょう。
 この入水鍾乳洞体験(『月刊カノープス通信』2005年9月号に詳しく書いてます)のおかげで、私だけでなく、息子も洞窟愛好の同士となり、洞窟を取上げた紀行番組などは私と一緒に欠かさず見るようになり、今回の旅行では、去年も乗った堂ヶ島洞窟めぐりの遊覧船にもう一度乗るのを楽しみにしていたのでした。天窓から差し込む光が神秘的な海の洞窟『天窓洞』、良いですよ〜!

 そして、遊覧船は予定通り楽しみましたが、今回は、それだけではなく、ちょうど干潮時とあって、堂ヶ島海岸線沿いの小さな洞窟を徒歩で覗いて回れたのです。
 飛び石伝いに潮溜まりを飛び越えたり、岩場をよじ登ったり岩の隙間を潜ったりして小さな洞窟を見つけては覗き込んだり潜り込んだり、鳥の死骸や巨大なススメバチの巣などのちょっとデンジャラスな出会いも含めて、ちょっとした冒険気分!
 奥が狭くなっているので中には入れませんでしたが、覗きこむと向こう側が見える小さな洞窟も見つけました。あの場所は、たぶん満潮時には間に水が満ちて、歩いて渡れなくなる場所と思われるので、干潮時でラッキーでした。

 そして、さらにその後、堂ヶ島から石廊崎へとレンタカーで向かう途中、夫が、『室岩洞 ○km』という看板を偶然発見!
「なんか、洞窟があるらしいよ。ぜひ見なくちゃ! どこだ、どこだ!?」と、みんなできょろきょろ探しながら走っていたら、ほどなく、『室岩洞』の立て札のある小さな駐車場を発見。
 室岩洞は、その駐車場から海に向かう急な下り階段をちょっと下ったところにありました。
 ここは、天然の鍾乳洞ではなく、昔の石切り場跡でした。小さな洞窟で、入場無料で、受付もなく係りの人もいませんが、ちゃんと整備されていて、入口には案内版があります。
 その案内図によると、洞内の照明は時間によって自動で点灯・消灯するとのこと。もし洞内にいる時に照明が消えたら、慌てずにゆっくり歩いて出てくるように、とのこと!
 その日、その時間、室岩洞を訪れていたのは私たちだけ。まだ消灯時間じゃないけど、もし何か事故があって電気が消えたらどうしよう、と、ちょっとドキドキ。

 中は、薄暗い照明が完備されていて、床は平らなので、サンダルとかパンプスでも不自由なく歩けそうな感じです(といっても、そこまでの急坂がかなりきついので、運動靴のほうがいいと思うけど)。
 ところどころに案内板があり、石切人夫さんの石像がいくつか飾ってあって、薄暗い中に突然現れるので、ちょっとびっくりできます。あと、湧き水がたまって出来た澄んだ地底の池や真っ暗な行き止りがあったり、コウモリがいたり。歩きやすいわりに、天然の洞窟とは違う人工の廃墟独特の空虚さ、荒廃感が漂って、なかなか良い雰囲気が味わえます。

 途中、順路が洞窟の外に通じているところがあって、そこが出口なのかと思ったら、頭上を覆う木立の緑に染まった深くて狭い切り通しの底を抜けた先は、海辺の断崖で行き止りになっていました。海辺の崖の中腹に張り出した、小さな広場のようなところで、案内板によれば、昔、穴から運び出した石を、そこから海に落として、船で運搬していたのだそうです。
 そこからの眺めは、なかなかの絶景です。海が一望。断崖の下を見下ろせば、小さな入り江の奥の、小さな小さな砂利浜。その浜は、たぶん道路の上からでは見えないところで、断崖の襞に隠された秘密の入り江という感じで、心をそそられます。たぶん、あの浜には、海側からしか行けないんじゃないかと……。
 そして、この、緑滴る絶景スポットは、たぶんこの洞窟を通ってしか来られない、外界から隔絶された場所なのです。他に誰もいなくて、海の景色も木々の緑も独り占め!(^^)
 行き止りを引き返して、もう一度洞窟に入り、入口に戻りました。

 私たちが来た時には他に誰もいなかったけど、帰りは、何組かの観光客とすれ違いました。
 最初にすれ違った家族連れは、奥さん、子供たちは普通の観光旅行の格好だけど、先頭のお父さんだけ、帽子の上からヘッドランプを付けていました! あっ、あのお父さん、きっと、洞窟マニアだ!
 この洞窟、手持ちのガイドブックには載ってなかったから、ろくに下調べしてこなかった私たちは何も予備知識なしで偶然立ち寄ったけど、きっと、洞窟マニアの間ではそれなりに知られた場所で、ネット上ではいろいろと情報が飛び交っている物件なのに違いありません。で、きっと、あのお父さんは、洞窟愛好家の情報交換サイトなどで調べて、ここに来たに違いありません……と、想像して、勝手に親近感。だって、洞窟目当てじゃなきゃ、観光旅行にヘッドランプは持ってこないでしょう……(あ、釣り人の可能性もあるかもしれないけど)。

 というわけで、意外な穴場(文字通り!)だった室岩洞。今回の旅行のハイライトは、偶然出合ったここでした! 息子も、「ここが一番面白かった」と大喜び。
 たぶん、偶然出合ったからこそ喜びが大きかったんですね。下調べして、期待して、ここをメインの目的にして行ったら、(なんだ、整備されすぎててつまんないし、コースも短くてあんがいあっけない……)と、がっかりしていたかもしれません。

 そして、これら洞窟の他に、今回、もう一つ、偶然出合った、素敵な物件。それは、廃墟。

 同じ伊豆でも伊豆高原方面は、いろいろな新しい観光施設があってそれなりに時めいているらしい様子ですが(本当のところは知らないけど)、交通の便の悪い西伊豆は、申し訳ないのですが本当に寂れた――『鄙びた』というよりは『うらぶれた』感じで、ゴールデンウィークだというのに道路もがら空き、観光施設も古びたところが多く、そこここに、廃墟と化した建物が散見されるのです。その、物寂しいうらぶれ具合がもののあわれを感じさせ、センチメンタルな旅情が盛り上がります!(いや、盛り上がってたのはたぶん私だけだったと思うけど……(^_^;))

 ことに石廊崎灯台付近は、近年、観光拠点が灯台から下の港のほうに移ったとのことで、非常に寂れており、閉店した土産物屋などが、実に荒廃した雰囲気を醸し出しています。
 そして、極めつけは、『ジャングル・パーク』跡地。1969年に開設し、2003年9月に閉園したという、一大熱帯植物園の廃墟です。
 私たちは、そこが既に閉園しているということどころか、かつてそういう施設があったということも知らずに、ただ、一緒に行った母が石廊崎の展望がお薦めだというので景色を見るために石廊崎に向かったのですが、その途中、レンタカーのカーナビの画面の石廊崎の付近に『ジャングルパーク』という文字が表示されているのに気付いて、(一体、これは何だろう? たぶん植物園?)と、一抹の期待を抱きつつ行ってみたら、そこにあったのは、廃墟と化した巨大温室だったのです。

 そうか、ジャングルパークが閉園しちゃったから、駐車場周辺の土産物屋や食べ物屋台もみんな閉鎖しちゃったのか……。

 石廊崎の灯台は、駐車場からジャングルパークの脇の道をずっと歩いていったところにあり、ガラス越しに、温室の中を覗き込みながら歩けます。
 これはすごい! 歩いても歩いても延々と途切れない廃温室のガラス屋根の波!
 在りし日のジャングルパーク、かなり巨大な施設だったらしいです。

 汚れたガラスの向こうには、手入れもされずに野放図に生い茂る熱帯植物や、物憂くも猛々しく咲き誇る熱帯の花々が垣間見えます。枯れ果てた木々や鉢植えも見えますが、けっこう元気のいい草木も多くて、高いところにある窓から、大木の枝がはみ出していたりします。
 閉園してるんだから、当然、水の供給も加温もしていないのでしょうに……。

 帰ってきてからネットで調べたところ、閉園後半年くらいで訪れた人の訪問記によると『水も暖房も止められて、殆どの植物は枯れ果てているが、一部、生き残った草木が花をつけていた』というような侘しい状況だったらしいです。ということは、その、一部生き残っていた草木が、その後、旺盛に繁茂し、成長して、枯れた草木を覆い隠してしまったということでしょうか。とにかく、季節のせいもあってか、内部は、意外と緑豊かなのです。手入れがされていない分、むしろ、ジャングルっぽさがアップしてるかも?
 水や熱の供給が止っても枯れなかった草花というのは、もともと、比較的乾燥に強い種類や、日本でも戸外で栽培できるような寒さに強い種類だったのでしょう。そういえば、ブーゲンビレアとかハイビスカスとか、日本でも、ちょっと温暖な地方なら、屋外で越冬できますものね。加温してなくてもガラスの屋根のある温室内なら、温度のほうは十分なのでしょう。
 で、散水はなくても、外に降った雨が地面に沁み込んで来るでしょうし、台風のときなどは、高い小窓やルーバーの隙間などから雨が吹き込んで来るのでしょう。

 温室の脇を通り過ぎると、今度は、閉鎖されたレストランもありました。ここは、廃墟というほど荒れてはいません。ただの空き店舗という感じ。中に放置されて健気に育っている巨大サボテンが哀れ……。
 あと、もう運行していないチューチュー・トレインの錆びた看板も哀れを誘います。

 同じ廃墟でも、殊に観光施設の廃墟というのは、昔日の賑わいや非日常の華やぎの幻がオーバーラップする分、より無常さを感じさせて、独特の趣があります。数々の文学作品や流行歌の中で『秋の避暑地』が繰り返し愛でられ続けてきたのも、きっと、同じような感傷からでしょう。
 打ち捨てられた巨大温室。その中で、愛でる人もないままに、気だるく咲き誇る熱帯の花々。猛々しく生い茂る緑……。う〜ん、ロマンです! 詩を、物語を、ファンタジーを感じます! 思わず、妄想が暴走!

 例えば、ここは、天変地異なり核戦争なりによる文明崩壊後の地球なのです。打ち捨てられた殖民惑星でもいいです。で、既に人の手による制御を離れた巨大ドームの中、かつての文明を忘れ果てて退化した人類が、厳しい環境になんとか適応して密林の中に隠れ住みながら新しい独自の原始文明を築き、ほそぼそと生き延びているのです。もはや、自分たちがなぜドームに閉じこもらなくてはならないのか、なぜ隠れ住んでいるのかを誰も知らず、幾世代も前の古い記憶から生まれた神話を拠り所にそれを当たり前の状況として受け入れ、日々、危うい均衡の中で過酷な生を生き、文字も持たず、ギリギリの命を繋ぐ人々。
 けれど、その中に、その状況に疑問を持つ子供たちも生まれています。この、閉じた世界の外には――世界の果てのその向こうには、なにがあるんだろう――。
 でも、大人たちは、その疑問を封じようとします。その、禁じられた疑問は、世界の破滅をもたらす。ガラスの外の世界の存在を想うことは、彼らにとって、根本的な禁忌なのです。汚れたガラスの外は、この世の果て。死者の世界。存在しないはずの場所。それでも、何人かの子供たちは、禁じられた夢を密かに見続けずにはいられません。
 そして、ある日、その、禁忌の外界から、汚染された砂漠を越えて、不思議な旅人が訪れる――。
 SF風味ファンタジーだったら、謎めいた吟遊詩人。もし漫画・アニメなら、美形であるべし。かつての大災厄の際の突然変異で生まれた種族である小型ドラゴンを肩に乗せてたりすると、ビジュアル的に、なお良し(^^) ファンタジー風味SFだったら、まだ文明が続いてる旧殖民惑星から廃墟と化した母星の調査に降り立った、銀色の防護服(防塵マスク付き)なんかを着た元地球人とかですね。そして、なにやら物語が始まるわけです。

 あはは、ベタですね〜(^^ゞ
 でも、ベタなものっていうのは、みんなが好きだからベタなんですよね! 大勢の人が、そういうシチュエーションに、詩情を、ロマンを感じるから、ベタなんです。

 というわけで、一言で言うと、ジャングルパーク、萌え〜!!



 読書録


『パラケルススの娘 3』 五代ゆう MF文庫

 面白かったです。今回の見所はみんなのコスプレと婚約者嬢のツンデレぶり? だんだんライトノベルっぽさが板についてきたような気がします。
 私の個人的な『ライトノベル』の基準というのは、自分の頭の中でキャラが漫画・アニメ調のイラストに変換されたり、文章を読んで漫画・アニメの類型的な映像表現が思い浮かぶかどうかなんですが、今回はそこここで漫画チックなお約束の場面やアニメ的な映像が鮮明に思い浮かびました。


『図書館戦争』 有川浩 メディアワークス

 面白かったです。これはお薦め! 特に図書館員にはお薦め!(笑)
 だって、中小レポートとか図書館の自由宣言とか新刊見計らいとか伝説の日○市立図書館とか……。図書館員や元図書館員、そうでなくても司書課程取った人なら、随所でニヤニヤできるかと。
 ニヤニヤ出来るだけじゃなく、検閲から本を守るシーンなんか、ちょっと胸が熱くなるものがありましたよ。忘れていた熱い想いが蘇えるというか……(^^ゞ

 この人、良く調べているな〜。読みながら、途中で、(この人、司書資格持ってるのかなあ……)と思いましたもん。そしたら、後書きに、たまたま近所の図書館に掲げられていた『図書館の自由に関する宣言』を見て思いついたと書いてあって、へえ、そうなんだ〜と、感心。さすが。良く調べてあるので、荒唐無稽な設定の中にもそれなりのリアリティが出てます。
 図書館界のみなさんの間でのこの本の評判が聞きたい気がしますね。特に○野市立図書館の人の反応が!(笑)

 ぜんぜん関係ないんですけど、たまたま、前に『図書館戦隊ビブリオン』という本を読んだことがあるので、読んでる間についそれと混同して、いつのまにか頭の中で『笠原ピンク・堂上レッド・玄田ブラック・手塚ブルー・小牧(だっけ?)グリーン』みたいに、出てくる隊員を指折り数えて色を当てはめては(おっと、違う違う、これは別の話だよ……)と我にかえってました(^^ゞ
 でも、出てくる隊員たち、メインはちょうど5人で、個性のバリエーションも、ちょうど戦隊もの的な5人のパターンに当てはまるんですよね。紅一点のピンクに熱血レッド、ちょっと年上の頼れるブラックに、優秀だけど冷たそうなブルー、癒し系のグリーン……って、ちょうどぴったりはまってるんですけど。まあ、ブラックがメインの5人の中に入るのはやや変則パターンだけど、名前が『玄田』だから、やっぱりブラックでしょう。確か、ギンガマンやメガレンジャーなんかは、ブラックが、お兄さん格の助っ人ヒーローじゃなく、メインの5人の中に含まれてましたよね。
 戦隊ものって、やっぱり、キャラ配置もよく考えられてて、バランスのいい王道なんだなあ……。
 以上、脱線でした(^^ゞ

 一番笑ったのは熊のエピソード。あと、柔道(?)の練習のシーンも笑った〜。程よいラブコメ要素も楽しかったし。いや〜面白かったです。


『西の魔女が死んだ』 梨木香歩 新潮文庫

 この作家さん、私の知り合い(ネットでもオフでも)の間で大変人気が高いようなのですが、私はこれまで、今ひとつ自分には合わない気がして、それで、これも読んでなかったんです。最初に読んだ『裏庭』は好きだったんだけど、『りかさん』とか『からくりからくさ』が肌に合わなくて。どこが合わなかったって、特有の女臭さと繊細さが苦手だったんです。
 でも、これは良かったです。食わず嫌いしてて損した。
 おばあちゃんの古風でスローなカントリー・ライフのディテイルには、『大草原の小さな家』的な魅力がありました。

 特に印象的だったのは、明るい世界にふと翳が差す時の描写。
 それまで楽しく美しいところだった森の空き地がふと表情を変える瞬間とか、日盛りの小道を蛇が横切る瞬間の、ちょっとぞくっと来るような描写が素晴らしかったです。

 ぜんぜん関係ないんだけど、読んでいて、途中で、いぬいとみこさんの『木かげの家の小人たち』を思い出しました。あれに出てくる小人(妖精)の姉弟は、主人公の英語の先生だったイギリス人の老婦人が日本につれてきたんだったのです。
 なので、このおばあちゃん(=西の魔女)がイギリス人というのに、なんとなくすごく納得してしまいました。この人も、子供の頃に、『木かげの家の小人たち』とか読んでたのかなあ。


『アルコン サソリの神2』 キャサリン・フィッシャー 原書房

 『オラクル 巫女ミラニィの冒険』の続き。三部作の二作目。
 面白かったです。(どの本でも『面白かった』とばかり書いてますが、基本的に面白かった本についてしか取上げてないので……)
 将軍の陰謀に立ち向かうミラニィの政治的・現実的な冒険と、『歌の泉』を探索するアルコンたちの幻想的な砂漠の冒険が、時々交差しながら同時進行。夜の砂漠に花が咲くシーンとか、鳥の都とか、不思議なイメージの連続でした。


『狼と香辛料』 支倉凍砂 電撃文庫

 あっと驚く、マネーゲーム・ファンタジー(笑)。
 何が驚きかって、ライトノベルで、この渋い題材、この地味さ!(笑)
 面白かったんですけど……。行商人が主人公と言うのも新鮮で、行商に関するうんちくも面白かったし、ライトノベルでファンタジーで経済が題材というのも、「なるほど、そういう題材もありか〜!」と唸らされる斬新さだし。
 ……でも、地味。 タイトルからして、よくこんなタイトルで出したなあ、というシブさで、導入部も地味。
 これ、悪いけど、表紙にイラストが入ってて冒頭にイラスト入りキャラ紹介のある本じゃなかったら、かなりの割合のライトノベル読者が、20ページ目くらいでやっと全裸の獣耳美女が出てくるまでに、途中で読むのを止めてしまうのでは?

 しかし、ライトノベルやマンガ・アニメでは方言を話したり一人称が変わってる女の子というのは定番だけど、一人称『わっち』ははじめてだ〜(笑)。

 経済関係のお話も面白かったけど、私は民俗学関係の方が好きなので、農耕儀礼や宗教絡みの話の方をもっと読みたかったです。狼の姿をした、麦に宿る豊作の女神という題材は、とても魅力的でした。

 ↓以下、ネタバレにつき反転。
 ところで、ロレンスたちがミローネ商会に情報を持ち込んだ帰り道、これは絶対後ろからミローネ商会の刺客が二人を消しにくるに違いないと思い込んでいた私は、心が穢れているんでしょうか(^_^;)
 だって、ミローネ商会にしてみれば、二人を生かしておく必要、ないじゃないですか。すぐに殺さないまでも、とりあえず拘束監禁しておいたほうがいいのでは? ヘタに出歩かれて情報を漏らされたり敵対する商会に接触されると困るし。ロレンスがプロの情報屋だったら、情報を持ち込んだ後で不審な消え方をしたりしたら裏社会でのミローネ商会の信用が落ちて情報屋に相手にされなくなって困るだろうけど、彼は何のしがらみも後ろ盾もないただの行商人で、ミローネ商会に情報を持ち込んだことも誰も知らないんだから、後腐れもないし。
 しかも、ロレンス、ミローネ商会に助けを求めた後、『裁判で不利な証言をするかも』なんて脅してるけど、自分の身柄がミローネ商会の手中にある時にそんなこと言っても、それ、脅しにならないって。むしろ自分の身を危険に晒すだけだって。だって、ミローネ商会にしてみれば、不利な証言されて困るようなら、彼をその場で拘束して、口封じに消すなり、別の場所に移して監禁しておくなりすればいいだけなんだから。彼がミローネ商会にいることは、敵対商会の人たち以外、誰も知らないんだし。
 ……なんて、どんどんそんな腹黒なことを考えついてしまう自分が、ちょっとイヤ……(^_^;)


☆その他メモ:『グインサーガ』は、まだ後回し中。『流血女神伝 喪の女王3』読了。今回はドミトリアスが出なくて残念だけど、いつもながら面白かった! 続きが楽しみ! 他、『まだ見ぬ冬の悲しみも』(山本弘)、『空ノ鐘の響く惑星で 10』(渡瀬草一郎)、読み途中。


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