月刊カノープス通信
2004年7月号

 目次 

・季節の便り
・今月の勘違い
・近況報告『江戸っ子ですね?』
・近況報告『冷やし中華パン』
・読書録
(『ヒーラーズ・キープ』『崖の国物語1』、『マルドゥック・スクランブル』他)

お知らせ:来月から『月刊カノープス通信』は毎月20日更新になります。
次回、8月号のアップは8月20日の予定です。




 季節の便り

 今年はたぶん海に行かれないので、せめてここの壁紙で海の気分を味わってみることにしました。

 さて、今年も、我が家の年中行事、竹切りの季節です(詳しくは『月刊カノープス通信』2002年7月号参照(笑))。
 でも、今年から、私は、あの作業から開放されました\(^o^)/
 今年から、この仕事は、六年生の上の息子に引き継がれたのです。

 普段、我が家では、お手伝いにお駄賃を出すという習慣はないのですが、この仕事に限っては、とても大変だし、そろそろ一つの仕事を責任持って請け負って対価を得るという経験をさせてもいいのではないかと思い、ワンシーズン責任持って竹が生えないように保ってくれたらスペシャルボーナス500円に加えてコロコロコミック別冊号を買ってやることになっています。

 6月半ばから8月頭までの約二ヶ月のタケノコの季節、息子は無事に庭を竹から守り切って報酬をゲットできるでしょうか?
 あ、もちろん、実際にはちょっとくらい見落とされて竹になっちゃうタケノコがあっても、投げ出したりサボったりせずにシーズン終了まで見回りを続けてくれた結果なら、ちゃんとボーナスを出すつもりです。

 ところで、目次にも書きましたが、お知らせです。先月予告したとおり、来月(8月)号から月刊カノープス通信は毎月20日アップにします。次の『月刊カノープス通信』は8月20日アップの予定です。




 今月の勘違い

  毎度おなじみ、あいかわらずのとんちんかん会話集です。

★私 (一緒に料理をしているとき夫が鍋を不安定な場所に置いたので)「鍋が不安定で怖い」
 夫「えっ、鍋が育ってて怖い?」
 ……それはたしかに怖いですよね。

★息子(テレビに映った人を見て)「あ、タラコくちびる!」
 私「えっ、外国人ビル?」
 夫「えっ、サイコデビル?」
 ……ちなみに、『サイコデビル』という謎の悪役風の名前は、別に知っているアニメキャラの名前などではなく、全く心当たりのないでっちあげの単語だったらしいです。

★夫が額屋さんにシャドウボックス用というちょっと特殊な造りの額を注文したら、品切れで手に入らないかったときの会話。
 夫「額、手芸屋さんならあるかなあ?(シャドウボックスは手芸の一ジャンルとして扱われるので)」
 私「えっ、シベリア産?」
 ……額にも産地がいろいろあって、産地によって生産量や品質や人気度が違い、稀少な人気産地のものは売り切れていても、あまり人気のないシベリア産のものなら在庫があったりもするのかと、一瞬のうちにだだ〜っと想像してしまいました(^^ゞ

★夫「明日出る前に準備を……」
 私「えっ、ストーンヘンジがどうとかって言った?」
 夫「えっ、ストームけんじって誰?」
 私「えっ、ストーム原人?」

★新聞の見出しに「名古屋弁席の禁煙見送り」を書いてあるように見えたので、『なごやべん席』っていったいなんのことだろうと驚いてよく見たら、『名古屋枡席』、つまり大相撲名古屋場所の枡席の話でした。
 一瞬、名古屋の電車か何かには名古屋弁をしゃべる人の専用席か優先席があるのかと想像してしまいました(^_^;)




 近況報告『江戸っ子ですね?』

 以前、日記に『姪のお七夜に行ったと書こうとしておひちやと入力したら変換されなかった。一瞬どうしてだろうと思ったら、おひちやではなく、おしちやだった。母が関西の出身なので生粋の江戸っ子ではないんだけど、どうやら私には少し東京訛りがあるらしい』ということを書いたら、この間、その日記に、『おひちや』というキーワード検索でアクセスがありました。
 ……そんなあなたは、江戸っ子ですね?(^^) 探し物は見つかったのでしょうか。

 ちなみに、日記についている簡易アクセス解析を辿ってそのキーワードの検索画面に行ってみたら、私の日記の他にも数件ヒットしており、中にはれっきとした企業のサイトらしいところもありました。たぶん内祝いの品などを扱うギフトショップのサイトだと思うのですが、行事の説明コーナーの『お七夜』に堂々と『おひちや』と振り仮名が振ってある。……この会社の担当者さん、きっと江戸っ子なのですね(^_^;)(東京以外にも『ひ』と『し』が混同する地方はあると思うので、そちらの出身なのかもしれませんが)

 東京の地元民って、つい標準語をしゃべっているように錯覚しがちですが、実は、東京方言をしゃべっているんですよね。標準語は東京方言をモデルに作った言葉なので、東京方言と共通語はたまたまとても似ているわけですが、似ているだけで、同じじゃないですから。




 近況報告『冷やし中華パン』

 勤め先のスーパーの惣菜売り場に、不思議な食べ物が売っています。
 それは、冷やし中華パン!
 どんなものかというと、切込みを入れたコッペパンに具を挟み込んだ惣菜パンで、コッペパンの隙間から覗いているのは、千切りキュウリ、ハム、錦糸玉子、そしてトッピングの紅しょうがと、確かに、どう見ても冷やし中華の具材です。

 あの下には、麺も入っているのでしょうか? きっと、入っているのですよね。麺がなきゃ冷やし中華じゃないですもん。
 いったい、どんな味がするのでしょうか……(@_@) やっぱり酢っぱいのでしょうか?
 誰がそんな妙な食べ物を考え付いたんでしょう……。

 たしかに、やきそばパンやナポリタンパンがあるなら(実際、隣にはそれらが並んでいる)、冷やし中華パンがあってもおかしくないような気もするのですが、でも、やっぱり、やきそばやナポリタンと冷やし中華では、惣菜パンの具としての適性に根本的な差があるような気も……。
 だって、味もさることながら、冷やし中華は、やきそばやナポリタンと違ってツユがついていて水分が多いじゃないですか。それを普通にパンに挟んだら、べチャべチャになると思うのですが、その辺は、どうクリアしているのでしょうか。
 見かけるたびに、もう、気になって気になって……。

 ……そんなに気になるなら買って食べてみればいいだけのことなのですが、どうにも、食べる勇気がありません。話の種に食べてみようかとも思ったけど、一個198円もするし……。確実に美味しそうで、どうしても食べたいものなら、それくらい払ってもいいですが、悪いけど、198円払ってまであれを食べたいとは思えない……(^_^;)

 というわけで、自分では食べたくないけど誰かあれに挑戦してみる人がいたらぜひ感想を聞きたいと思いつつ、毎回、横目で見ながら通り過ぎています。ああ、気になる……。




 読書録

『ヒーラーズ・キープ 上・下』 ヴィクトリア・ハンリー あかね書房

 『水晶玉と伝説の剣』の続編です。続編といっても、独立した話ですが、ダブルヒロインの片方であるサラは、『水晶玉〜』のヒロイン、トリーナとその相手役ランドンの娘で、パパ&ママになったトリーナたちも出演しています。
 というわけで、同じ世界を舞台にしたお話ではありますが、こちらのほうがやや対象年齢が上がった感じ。
 そして、前回はトリーナとランドンのロマンスが軸で、背景となっていたのも、主に、一つの国の王位を巡る陰謀であり、世界全体がどうこうという話ではなかったけれど、今度は、世界そのものの危機を救うために『影の王』と戦うという壮大な物語で、枚数も多くなると同時に、スケールもぐっと大きくなってます。
 位置づけとしては、『水晶玉〜』のほうが、このお話の序章ないしは外伝にあたり、こちらが本編という見方も出来ると思います。
 もちろん、それは位置づけの問題で、価値の問題ではなく、『水晶玉〜』は『水晶玉〜』で、独立した作品で、独自の魅力があり、むしろあっちのほうが面白いと言う人も多いのではないかと思いますが。

 また、前回は予言の水晶玉などのファンタジー的な小道具は出てくるものの、架空歴史物に近く、ファンタジー色は薄かったのですが、今回は神秘的な要素が重要な役割を果たし、よりファンタジー色が強くて、ウェンの原など、幻想的な描写も楽しめました。

 読み始めたら止まらないストーリーの面白さは健在ですが、濃い口なファンタジーが好きな私にとっては、ファンタジーとしてはちょっと物足りないところも相変わらず。
 でも、面白かったです。『水晶玉〜』でヴェスピュートがランドンより印象的だったように、今度もまた悪役の存在感が光ってました。


『崖の国物語1 深森を越えて』 ポール・スチュワート ポプラ社

 舞台となる世界の設定がユニークで面白いです。世界の姿や、そこに住む生き物たちの姿形、習性などが、いちいち奇想天外、奇奇怪怪なのです。

 世界はユニークだけど、ストーリーは王道一直線の超正統派。
 みんなと容姿や心性が違うために周囲に溶け込めずにいた孤独な少年が、実は捨子だったことを育ての親から告げられ、育った村を離れて旅立ち、様々な試練の中で本当の自分を探してゆく――という、非常に典型的な探索と成長の物語です。

 骨格が持つ物語の黄金パターンの安定した魅力と、ディテールの持つ思いもよらない奇想天外さの魅力の、二つの魅力を併せ持ち、はらはらドキドキ楽しめて、最後にはほうっと満足のため息をついて本を閉じられる、いいファンタジーだと思います。
 固有名詞の訳し方が好みなのもポイント高かったです。
 最近は、英語のファンタジーだと英語の固有名詞をそのままカタカナにしてしまうことも多いですが、どうも私はあれが苦手で。その点、これは、『崖(がい)の国』とか『深森(ふかもり)』などと味わいのある日本語に訳してあるのが、ちょっと瀬田貞二訳を思わせる古風な雰囲気を醸し出していて、好みでした。

 ただし、出てくる動植物や、主人公が乗り越える冒険の内容が、ふんだんに飾られたイラストの画風(日本人の感覚では、かなりグロい!)そのままに、かなりグロテスク系。
 腐ったものとか臭いものとかグロいものがやたらと出てきます(^_^;) 苦手な人は苦手かも。というか、食事中には読まないほうがいい本かも。私もけっこう『げっ……』と思うシーンがありました(^_^;)

 一番好きなシーンはホフリ族のご馳走のシーン。とにかく全体にグロテスクなので、食べ物が出てきてもあまり美味しそうじゃないんですが、あのシーンの食べ物だけは美味しそうでした(^^)
 あと、オオハグレグマのエピソードは泣ける……(T-T)


『マルドゥック・スクランブル』 沖方丁 ハヤカワ文庫

 あちこちで評判の、日本SF大賞受賞作です。
 そんなわけで、読むのに出遅れた私は、あらかじめあちこちで皆さんの感想を見聞きする機会も多かった作品なのですが、実際に読んでみての印象は、思っていたより稚気のある作品だなということでした。
 もちろん、良い意味での稚気です。洒落っ気、茶目っ気があって、カッコつけてて、子供っぽいわくわく感があって。
 この、子供っぽいわくわく感って、SFには大事なものだと思うんです。

 そして、なんといってもウフコックが魅力的! ネズミだしv バロットもいいです。二人ともいじらしくて、切ないです。

 それにしても、SFなのに全体の約三分の一がカジノでのゲームシーンというのがびっくり!
 しかも、ゲームのルールなんか何も知らない私でもけっこう引き込まれて読んでしまうような異様な緊迫感があって、なんか知らないけどすごかったです(@_@)


『シュプルのお話』 雨宮諒 電撃文庫

 本が大好きな小さい男の子が、物置で見つけたおじいちゃんの『宝箱』の中身のひとつひとつについて物語を考えて、それをおじいちゃんたちに語るという、入れ子構造のオムニバス短編集です。
 語られる物語自体には、特に新味はないのです。もちろん、わざとだと思います。全体に、『古き良き懐かしの名画』的なセピア色気分なのです。特に最後のギャングものは、あきらかに往年の名作映画をイメージしていると思われます。

 そんな中で、新鮮なのは、それぞれの物語の中で毎回違う主人公である『シュプル』が、語り手の子供の『シュプル』君そのままの、子供の姿で主人公をやっていること。
 主人公は、そのつど、兵士だったり井戸掘りのボランティアだったりギャングだったりして、一応、大人の役をやっているのですが、見た目は子供のままなので、そのギャップがほのぼのなのです。文章だけでも、服が大きすぎて引きずっているなどの描写があって、ほのぼのした絵が目に浮かぶし、挿絵もあるので、なおさらです。
 シュプル君憧れの冒険小説のヒーローが常に主人公の傍らにいるのも微笑ましい。

 もう一つ、新味があるとしたら、舞台が異世界であること。シュプルが語る物語の舞台が異世界なのではなく、シュプルとおじいちゃんが住んでいる外枠の世界そのものが異世界というところが、ちょっと変わった仕掛けかも。別に、是が非でも異世界である必然性があるわけではないと思いますが、そこをあえて異世界にすることによって、より浮世離れした、おとぎ話的な雰囲気が強調されていると思います。

 というわけで、どうってことないといえばどうってことない、控えめなたたずまいの小さなお話だけど、いい味出してたと思います。挿絵も可愛かったし、肩肘張らずにさらっと読めて、ほんわか和めて、最後のささやかなどんでん返しには、ちょっとニヤリとさせられました。


『七姫物語』 高野和 電撃文庫

 これも、ストーリーそのものがどうというより、独特の語り口がいい味出してる、雰囲気で読むお話でした。短いシーンを淡々と切り替えて積み重ねていく手法が映像的。
 女の子の一人称で語られるのですが、キャピキャピ系じゃなく、淡々としてるとこがいい。空気感というのでしょうか、全体に漂う茫漠とした雰囲気がいいのです。

 よく考えてみれば、けっこう大胆不敵な、大それたことをしている人たちのお話で、一応、危機一髪の緊迫した場面などもあるのですが、そのわりに、ぜんぜんそういう感じがしなくて、大人ばかりの中にぽつんと置かれた少女が黙ってひっそりと空を見上げているような、どこか空漠とした印象ばかり残ります。そこに独特の味わいがあります。

 特に、冒頭、孤児院(?)にいる九歳の少女の前で二人の詐欺師(?)が足を止めるシーンは、とても好き。パターン的にも、普通の少年少女の前に突然特別な運命が訪れるという、私のもっとも好きなパターンだし、少女の視点から見える世界の描写がすごくいい。
 その後の、少女と詐欺師たちの交流もいい雰囲気。
 もしかして、少女と詐欺師って、黄金の組み合わせでしょうか。

 ただ一人称なだけでなく、ちゃんと、視点が子供の背の高さにあるところもいいです。世界が、ちゃんと、子供の目の高さから見えているのです。
 背の高い大人たちの間で、隙間から世界を見まわりたり空を見上げたりしている、少女の視線。大人たちの顔はいつもずっと上のほうにあって、建物は大きくて、窓から見える世界は見知らぬもので満ちていて。

 このお話、もし視点人物が違ったら、ぜんぜん違うものになっていたかもしれません。

 でも、ヒロインの名前『空澄』は、悪いけどヘンだ……。いえ、字面は別にいいんですけど、意味も素敵なんですけど、『カラスミ』という読みが……(^_^;)
 カタカナで『カラスミ』と書かれるたびに、さだまさしの『朝刊』という曲が頭の中で鳴るんですけど。(おっちょこちょいの新妻が、頂き物の珍味『カラスミ』を、食べ方を知らずに全部煮込んで台無しにしてしまい、『♪ごめんなさいって言いながら〜、一番笑いこけたのはキミ〜♪』という歌)。

 ストーリー的には、長い物語の序章の部分だけ、みたいな感じなのですが、実際、後から続きが出たようなので、続きも読みたいと思います。七人いることになってるお姫様、まだ空ちゃん入れて三人しか出てきてないので、あと四人の登場も期待。あと、空ちゃんがもうちょっと大きくなったら恋愛要素も希望!


★その他、読書メモ:『キターブ・アルサール2』読み中。上遠野浩平『機械仕掛けの蛇奇使い』読了。『部族の物語』読み中。グイン・サーガ近刊3冊分くらい積読中。



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