カノープス通信
2003年6月号−2

目次
・季節の便り
・今月の面白探し
・近況報告『猫がボケた』
・読書録
(今月は『砂の覇王1〜4』・『七王国の玉座・上』他です)




季節の便り

 野原にスイカズラの花が咲いています。クチナシに似た、いい香りがします。ノイバラも咲いています。
 去年も今時分に、この欄で書いたと思うんだけど、この季節に咲く花は白い花が多いですね。



 今月の面白探し

★夫の知り合いの絵描きさんが、『猫の建築家』という本を出しました。挿絵、というより、画文集の『画』のほうという感じです。
 で、その後、個展の会場で、お客様に、
「先生! 読みましたよ、『ケンネコチクのイエ(建猫築の家)』!」と声をかけられて目が点になったそうです。
その本の表紙には、タイトルが、縦書き二行で、下の図のように書いてあったのでした(^_^;)
建猫
築の
家 
(↑これ、ちゃんと見えてるかな? 縦書き二行で『猫の/建築家』となっているつもりなんですが、レイアウト崩れてたらごめんなさい)

★夫が、ある駅の公衆トイレの個室に入ったときの話です。
 洋式トイレに座った時、正面のドアの内側の、ちょうど座った時に目の高さになる位置に、

『良く来たな。まあ、座れや』

 ……という落書きがしてあったそうです(^_^;)
 夫は、心の中で、「言われなくても座るよ(^_^;)」と突っ込んだそうです。

★子供たちがアニメを見ていました。どうやら、正体を隠して人間界で暮らしている人魚のプリンセスたちが、学校に通ったり恋をしたり、美少女戦士に変身して戦ったりするお話らしいです。
 で、このマーメイド・プリンセスは、『ピンク真珠のマーメイド・プリンセス』や『ブルー真珠のマーメイド・プリンセス』など、何人かいるらしいのですが……。
 テレビに映った緑の髪の少女を見た悪役たちの、
「あ、あれは! まさか、不倫心中のマーメイド・プリンセス!?」というセリフに、びっくり。
 ……なに、それ? 不倫の末に心中を計って失敗し、人魚界を追放された悲劇のプリンセスとかでしょうか? 子供番組で、そんなのって、あり?
 不思議に思いながらしばらく見ていて、ふと気がつきました。その美少女は、『ピンク』・『ブルー』に次ぐ新しい仲間、『グリーン真珠のマーメイド・プリンセス』だったのでした。



 近況報告・ ショック……猫がボケた(T-T)

 先日、食卓の上に並べておいた夕食のおかずの焼き魚を、飼い猫に盗られました……(T-T)
 超ショックです!!
 いえ、猫を飼っている家の中には、そんなの日常茶飯事で、テーブルに置いた魚の皿から目を離すのがいけないという家もあるでしょうが、うちではいままで、そんなこと一度もなかったんです!! 食事の仕度の時、肉でも魚でも、早く出来たおかずから先にテーブルに運んでおいて、それからのんびり他のおかずを作って運んでも、ぜんぜんだいじょうぶだったんです!

 本当なんですよ、ウチの猫は、テーブルの上に魚が乗っていても絶対に手を出さなかったのです。まず、人間の食べ物は一切食べさせずに育てたし、さらに、食卓と台所の流し台には絶対に乗らない・手も掛けないようにしつけてあったのです。
 良く、猫にはしつけはきかないと思われることがあるようですが、そんなことはありません。とにかく、ウチの猫は、箪笥の上とかテレビの上とか洗面台には乗ってもいいけど食卓と流し台だけはダメということを、ちゃんと理解していました。また、人間の食べ物には、目の前にあっても決して手を出さなかったのです。

 ちなみに、人間の食べ物に手を出させないようにするのには、どうしたかというと、子猫のときからキャットフード以外の食べ物を一度も与えず、人間の食べ物の味を覚えさせなかったのです。
 食事のときに猫におねだりされるのが嬉しくてしょうがない人や、猫に晩酌の相手をさせるのが何より楽しみという人は、猫の健康に害のない範囲でそうすればいいと思いますが、私は、猫と一緒に生活する上で、人間の食事中にしつこく騒がれたり料理中に食材から目を離せなかったりするのは嫌だったので。
 人間の食べ物は味が濃いし、猫に有害な素材が混じっていることもあるので、その方が、猫の健康のためにもいいのです。
 これは、子猫の頃から単独で室内飼いだったから出来たことでしょうが……。

 この、キャットフード単独の食生活のおかげか、ウチの猫は、健康に長生きして、もう14歳半。猫としては、かなりの老齢です。
 そんなおばあさん猫が、突然、やんちゃ盛りの子猫の頃にもやらなかった食卓の魚泥棒を……!!

 でも、これは、ある日突然始まったことではないのです。ちゃんと前触れがあったのです。しばらく前から、今まで興味を示さなかった人間の食べ物に興味を示し、非常にしつこくねだるようになっていたのです。

 そのきっかけは、糖尿病による食事制限です。
 高齢の我が猫は、去年、歯石取りの手術で麻酔を打つのための事前血液検査で糖尿病が見つかり、カロリーを制限することになったのです。
 それからです。人目を盗んで流し台に飛び乗って生ごみを漁ろうとしたり、人間の食事のときに隙を見て食卓に手を掛けようとしたりするようになったのは……。
 子猫の頃から食べたことがないとはいえ、魚や肉が食べ物であると言うのは、やはり本能でわかるのでしょう。そして、長年のしつけも、飢えには勝てなかったのでしょう(T-T)

 今日も、うちの老猫は、私が猫の餌皿の置いてある洗面所に出入りするたびに足元にまとわりついて、にゃーにゃーと激しく餌をねだります。もう、おもちゃにじゃれて遊ぶ気もなくなったので、楽しみは食べることだけで、一日中、食べ物のことばかり考えているようです。
 といっても、たぶん、本当にえさが足りないわけじゃないんです。だって、こんなに心を鬼にして食事制限しているのに全く痩せずにますますお腹の肉がだぶつく一方だし、うっかり食べさせすぎると吐くし。
 ただ、たぶんボケてしまって、食欲が異常になり、餌をやっても、食べたことをすぐ忘れてしまうらしいのです……(T-T) 『ウチの嫁はご飯を食べさせてくれない……』状態?



 読書録

(注・この読書録は、あくまで私の備忘録・個人的な感想文であって、その本を未読の人にマジメに紹介しようという気は、ほとんどありません(^^ゞ (……たまに、少しだけ、あります)。 ただ、自分の記録のためと、あとは、たまたま同じ本を読んだことのある人と感想を語り合いたくてアップしているものなので、本の内容紹介はほとんど無いことが多く、ものによってはネタバレもバリバリです。あまり問題がありそうな場合は、そのつど警告するか、伏字にしています。)


『流血女神伝 砂の覇王 1〜4』 須賀しのぶ作(集英社コバルト文庫)

 う〜ん、面白い! これは面白い! すらすら読めてノンストップ。
 はっきりいって、とんでもない展開なんですけど。犬も歩けば王族に当たる、みたいな。広いはずの世界の中で、同じ顔ぶれが何度もめぐり会ったり離れたり。奇想天外と言えば奇想天外、王道と言えば王道……?
 これが全部偶然なんだと言われたら、そりゃ、とんでもないご都合主義で、いくらなんでもありえないよ〜という無茶な世界なんですけど、「これらはどれ一つとっても決して偶然などではなく、すべて運命なんだ。すべての出来事が神の思し召しで、すべての出会いが運命の出会いなんだ」と言うことであれば、納得するしかないでしょう。何しろ、神様が本当にいて運命の糸を引いているらしい世界のようですし。

 というわけで、そりゃもう、とんでもない展開です。はらはらドキドキの連続。読み始めたら止まらない面白さ!
 さて、この先、超ネタバレです。四巻までを未読の方はご注意ください。

 しかし、逃避行中のヒロインたちが毒草に当たってダウンして……って、すごい展開ですよねえ。ギャグすれすれ。普通、ヒロインや二枚目剣士は、食中たりになんて、なりませんよね。シリアスなんだかギャグなんだか、リアルなんだかむちゃくちゃなんだか、よくわかんない世界ですね。
 しかも、皇子の影武者から一転して他国の後宮に奴隷として売られたヒロインは、いきなり本気でお手付き目指して女磨きをがんばりはじめちゃうし。なんて前向きで心の切り替えが早いんだ〜(@_@)

 人買いに捕まって奴隷として売られちゃうなんて、普通に考えたら暗〜い展開なのに、この辺から、なんか作品のトーンが妙に明るくなりますね。内容的には、すっごい過酷な展開なんですけど、暗い、どろどろじめじめした要素もたっぷりなんですけど、にもかかわらず、この、妙〜に開き直ったような明るさはなんなんでしょう。ヒロイン・カリエの、突拍子もないほど前向きな、ふっきれたキャラクターのおかげですかね。あと、砂漠の風土と、スケベ王子バルアンのふてぶてしい変人ぶりと(^_^;)

 う〜ん、カリエ、いい子だなあ……。
 皇子身代わりだろうと後宮の女奴隷だろうと馬屋番だろうと死刑囚だろうとお小姓役だろうと、何でもそのつど本気で頑張っちゃう、一種突き抜けた前向きさがいいですよね。死刑囚を頑張るというのも何かヘンですが……(^_^;)
『鳥肌を気合で止めます』には笑った……。そりゃあ、さすがのバルアンも、ソノ気が失せるでしょう……。
 エドもちょっと可愛くなってきて、ちょっといいかも。

 それにしても、やっぱりドーン兄様は素敵だ〜!!
 市販小説のキャラにここまではまったのは久々かも。
 私、前シリーズ『帝国の娘』でドミトリアス皇子に惚れた時、彼は今回限りの脇役で、惚れ甲斐の少ない、先々の追っかけ甲斐のないキャラに惚れちゃったのかなあと思っていたのですが、とんでもない。その後もこんなに重要なメイン・キャラだったのですね。てっきり、カデーレ編以降は表舞台からは退いちゃうのかと思ってましたよ。

 というのは、キャラクター紹介のイラストの彼の顔が、あんまりにもどうでもいい顔だったから(^_^;)
 全般に美形度の低い絵柄ではあるんですが、彼の場合、いくら美形と言う設定じゃないにしても、顔で読者を釣ってあげようという気が全くなさそうなイラストだったんで、萌え対象外の脇キャラとして軽んじられているのかと……。
 なんていうか、ただの、目つきの悪い横柄そうな男にしか見えなくて(^_^;)

 でも、あれは、目つきが悪いのではなく、『鷲のような鋭いまなざし』だったのですねv 横柄そうなんじゃなくて、辺りを払う王者の風格に溢れていたんですねvv
 四巻の表紙の結婚式の晴れ姿は、白い軍服が良く似合って凛々しくて素敵でした……vv たしかにキャラ紹介ページと同じ、設定通りの顔なのに。(ここまでしっかりキャラ設定どおりに、どの絵でもキャラの顔が一定している絵描きさんってすごいと思う……)

 いや〜いいです、お兄様ステキ……v(って、別に誰も私のお兄様じゃないけど(^^ゞ)
 グラーシカとも、何気にラブラブだし。
 さすが我らがお兄ちゃん(←だからあんたのお兄ちゃんじゃないって……)、そんじょそこらの軟弱男じゃ歯牙にもかけてもらえない(だろう)男装の美女のハートも余裕でゲット(笑)で、なかなか似合いのステキな若夫婦ぶりv
 そう、本物のいい男は、顔で釣る必要なんかないのよ! 中身で勝負! 知性と包容力で、グラーシカ、ゲットだぜ! いいぞ、お兄ちゃん、いけいけ、お兄ちゃん!

 でも、新妻にいきなりビンタはいけませんことよ、ビンタは。グラーシカはバカじゃない。言葉が通じる、話せば分かる、ビンタは不要。熱い真心は、真摯な言葉と力強い眼差しで伝えてあげてねv そしてその後は熱い抱擁を……キャッv(←バカです(^^ゞ)
 でも、そういえば、グラーシカ、ぶたれてもぜんぜん気にしてませんでしたねえ。彼女も軍人だから、そういうノリに、あまり抵抗がないのでしょうか……(@_@)

 そして宮廷でも、お兄ちゃんは、ただ高潔なだけじゃない、なかなかやり手なところを見せてます。
 私、本来、やり手な人とか策士は、あまり好きじゃないんですが(どちらかというと、『ぼんくら』が好み(^^ゞ)、でも、ドミトリアスはOK!
 いいぞ、お兄ちゃん、頑張れ、我らがお兄ちゃん!

 腐敗した廷臣たちに牛耳られて沈滞しきった宮廷に、高い理想を胸に新風を吹き込み、きれいごとだけじゃない有能振りを発揮して強引なまでに着々と勢力を伸ばしていく様は、なかなか爽快です。
「さすが我らがお兄ちゃん、やるじゃん!」という感じです(←だから誰もあんたのお兄ちゃんじゃないってば……)。

 でも、その姿は痛快だけど、実は、彼のやってることは、けっこうきわどいことなんですよね。
 ドミトリアスは、実は、一歩間違うと独裁者にまっしぐらの危険な道を、確信を持って、あえて選んで歩みはじめている。
 北公の弱みを握って恫喝して、『これでもう北公はドミトリアスの奴隷、一生彼に尽くすしかない』……って、お兄ちゃん、それを諸公一人づつ順にやっていったら、最後には、完全無欠の独裁皇帝の出来上がりでしょう(^_^;) そうやって着々と抵抗勢力をつぶしていって、行き着く先は権力の一極集中でしょう。
 あの国の『四公』制度というのは、現状では腐敗してうまく機能していないけれど、実態はどうであれ、制度としては決して悪い制度じゃないわけで、彼はそれを骨抜きにして皇帝の実権を強めようとしているわけで……。

 もちろん、英明な皇帝であれば、自分に集中させたその権力を用いて善政を敷くでしょう。腐った貴族を排除した後には、身分は低くても有能なブレーンも集めるでしょう。そして、彼は、間違いなく英明な皇帝になるでしょう。……でも、ねえ。

 彼がその道を選んだのは私利私欲のためじゃなく、国のため、民のために我が身のすべてをささげる滅私奉公の覚悟で、理想を実現するための手段として権力を得ようとしているわけですが、正しい理想と高潔な人格を持った人でも、むしろそれゆえにどこかで何かを間違えて独裁者になりさがってしまうことがないとはいえないわけで……。

 だから、そういう時のために、作者は初めからドミトリアスにロイを付けているのですね。
 ドミトリアスが道を誤ったときに彼を殺させるために。
 王の失道を戒める麒麟みたいなものですね(BY『十二国記』)。
 そのロイを、ドミトリアスが先に排除してしまったら、ロイの言うとおり、その時は、ドミトリアスはもう終わりなのですね。
 そして、今後の彼にとって、政治生命の終わりは、即、自己の存在理由の終わりになるでしょう。

 ……今、ふと思いついたんですが、ちょっとヨコシマなこと言っていいですか?
 これでロイが、飄々とした言動はそのままに見た目はちょっと身体の弱そうな青白い美青年とかで、ふたりの間に時折ふっと微妙に妖しげな雰囲気が漂ったりしたとしたら、ドミトリアスとロイって、実はすご〜く萌え〜な関係かも……? ……以上、ゴメンナサイm(__)m

 ……って、ヨコシマ話はさておき(^^ゞ
 このさき、ドミトリアスは、皇帝としてどんな道を歩むのか。
 どう考えても、『人格高潔な上にやり手なお兄ちゃんは立派な英明君主になって、腐れ貴族たちが傾かせた国を思い切った刷新で立て直して、国は末永く富み栄え、戦争はなくなり、民は幸せになりました』で終わるとは思えないんですよね。
 バルアンがいうには、あの国は、もう、末期の迫った老人で、今更名医が現れても少し死期が遅れるだけなんだそうだし、ストーリー展開から言っても、これからは、各国入り乱れての戦乱時代に突入すると思われます。

 そんなわけで、どう考えても、彼は、この先、苦悩するでしょう。
 人格高潔で理想が高ければ高いほど、国と民に誠実であればあるほど、皇帝としての彼の苦悩は深くなるでしょう。
 眉間に皺を刻んで重責に懊悩伸吟するドミトリアスを見るのが楽しみです。
 道を踏み外して堕ちるところまで堕ちてロイに暗殺されるドミトリアスというのも、それはそれで、ちょっと萌えかも……って、やっぱり私はサドなのか……!? (いや、ちょうど、最近、感想掲示板でそういう話をしてたもんで……(^^ゞ)


『七王国の玉座 上』 マーティン作 (早川書店)

 これはすごい! 読み応えたっぷりの、ずっしり重厚長大な、スケールの大きい超本格異世界ファンタジー。今のところ表面的には架空歴史ものに近いけど、それだけじゃなく、背景には壮大なファンタジー的要素が見え隠れして、さらに、ちょっとSFの予感も。
 世界も人間も、ずっしりと書き込まれています。

 ウィンターフェルの一家はみんな普通っぽくて好感が持てるけど、宮廷でねちねちと陰謀が繰り広げられる話は性に合わないので、今のところ、私は、デーナリスのパートが一番楽しいです。
 私は、無力で世間知らずだけど芯は強い少女が自分の運命に逞しく力強く立ち向かっていくタイプの話に、感情移入しやすいみたいです。

 デーナリスは、一見、おとなしそうで、横暴な兄にいいように利用されているようですが、実は、与えられた環境の中で、思いがけない順応性を発揮して逞しく自分の人生を掴み取りつつ成長していきます。全くの異文化の中に放り込まれても、そこでしっかり自分なりの居場所を獲得してしまうしたたかさと柔軟さが好もしいです。

 横暴な兄に怯えてひたすら受身に唯々諾々と流されているように見えても、彼女の中はやっぱりドラゴンの血が流れているんですね。そんな彼女には、果てしない空の下を駆け巡る騎馬民族の生活が、本気で性に合ったのかもしれません。騎馬民族に嫁いでからの彼女は、鳥かごから放たれた鳥のよう。最初は戸惑っていたけれど、やがて自分が飛べることに気づく。草原で、暴力兄貴を馬から下りさせたシーンは、痛快でした。

 でも、この、しょうもないダメ・バカ・サイテー兄貴も、私、実はそんなに嫌いじゃないかも。なんか、ここまでしょうもないと、それなりに味が出てるような……(^_^;)
 そして、そのサイテー兄貴を、それでも庇おうとするデーナリスの優しさ――というより吹っ切れなさも、ある意味普通っぽくて好きです。なんていっても、何もかも失ってただ二人きり冷たい世間に放り出されて身を寄せ合って生きのびてきた兄妹なんだし、そう簡単には見切りをつけられない気持ち、分かる気がするんです。
 でも、この先、彼女が、幼い頃から支配され虐げられることで植えつけられてきた恐怖に打ち勝って、あのダメ兄貴をばっさり切り捨てたら、それはそれで痛快でしょうね。

 あと、注目キャラは、『小人』のティリオン。なんというか、とにかく、独特の味を出してて、気になる存在です。

 しかし、あの騎馬民族(ドスラク人でしたっけ?)の結婚式は、とんでもないなあ。
 いえ、野蛮なのは別にいいんですが――、人前でセッ○スするのが平気なのもそういう文化なんだから別にいいんですが――、死人の少ししか出ない結婚式は退屈で死人が出れば出るほど祝福された結婚式なんだとかいって、さすがに本気で人死にを出すのは――それも、貴重な戦力であるはずの現役戦士たちを無駄に殺し合わせて戦士の人数を減らすのは、もったいないでしょう。人的資源の無駄遣いでしょう。不合理でしょう。生活様式から言って乳幼児死亡率もかなり高そうだから、そこを生き延びて戦闘&繁殖年齢まで育った男というのは、むやみに浪費できない部族の人材なのでは?
 ……なんて、私が心配することじゃなかったでした(^^ゞ

 さあ、次は下巻だ! 楽しみです!

 他に、『百鬼夜翔 蒼ざめた森の怒り』『同・暁に散る翼』 (角川スニーカー文庫)『グインサーガ 夢魔の王子』 栗本薫作 (ハヤカワ文庫)『ここは魔法少年育成センター2 どうしろと?』久美沙織作(エニックス)等を読みましたが、『どうしろと?』では、途中で出てくるちょい役の女装じいさんがあまりにも強烈で強烈で、もう、話の本筋そっちのけで、彼のことが最後まで気になって気になって……。
 なのに、一箇所で出てきてあまりにも強烈な印象を残したきり、もう、最後まで出てこないんですよ!
 いえ、たぶんそんなことだろうと覚悟はしていたのですが。久美先生、たまにそういうことしますから。ちょい役のやられ役を、延々と紹介して、その容姿、その人生、その思想、その秘めたる想いなど……さんざん掘り下げて描きこんだ挙句、次の瞬間には何かの巻き添えで意味もなく殺してしまってそれっきり、とか(^_^;)
 だから、(ああ、この人もそのクチなんだろうな)と、覚悟はしてましたとも。
 でも、でも、久美先生! 女装じいさんのことが気になって気になってしょうがない私のこの行き場のない気持ちを、いったい、どうしろと?(^_^;)


『月刊カノープス通信6月号』前ページ(今月の詩)
『月刊カノープス通信』バックナンバー目録
→ トップページ