カノープス通信
2003年4月号−2

目次
・季節の便り
・今月の勘違い
・近況報告『蛇の抜け殻』
・読書録
(今月は『琥珀の望遠鏡』・『サブリエル』他です)




季節の便り

 今日、4月1日、東京では、桜がちょうど見ごろでしょうね。
 うちの周りは、昨日、咲き始めたばかりで、一分咲きというところです。
 去年は、桜が咲くのがすごく早くて、4月1日には、東京近郊の桜は、もう、すっかり散っちゃってたんですよね。
 『月刊カノープス通信』2002年4月号の『今月の詩』のバックに桜の壁紙を使ったので、よく覚えているんです。『東京付近では、もう桜は散っちゃったけど、東北地方ではまだ咲いてるからいいか』みたいなことを言いながらアップした覚えがあります。
 今年は、ちゃんと、桜の壁紙が、関東地方の桜の季節に間に合いました。



今月の勘違い

★夫と本の感想を語り合っていたときの会話です。
 私:「あの本の場合……」
 夫:「えっ、アルフォンヌ? 誰、それ」

★下の息子は軽い喘息持ちで、天候の変わり目などに、時々、息が苦しくなります。
 そんな彼が、ある日、学校から帰って、こう言いました。
「あのね、今日、学校でクロスケと会った
 『クロスケ』というのは、うちの犬の名前です。
 知らないうちに犬が逃げていて学校に入り込んだのかと思ってびっくりして、よく聞いてみたら、
「学校で苦しくなった」の聞き間違いだったのでした。

★夫が突然、ストッキングをはいた私の足を指差して、
かわいいおっちゃん!」と言いました。
 いったい何のことかと思ったら、ストッキングにシワが寄ってるのを教えてくれようとして、間違えて、
皮、寄っちゃってる」と言ったのでした。

★子供たちとアニメを見ていたときの会話です。
夫:「マイティ(アニメのキャラの名前)はどうなったの?」
息子:「マイティは死んだ
私:「えっ、マイティ・吉田?」

★前の夜に出来なかった仕事を、朝、出勤前にやるといっていたのに時間が無くて出来なかった日の夫と私の会話。
夫:「結局、朝、出来なかったんだ」
私:「え、タケバヤシさん来なかった?」

★息子がマク○ナルドのチラシを見てグリマスを指差し、名前を聞ききました。
私:「グリマスだよ」
夫:「えっ、ルリ・マスダって誰?」


 ……そういえば、うちの聞き間違えって、人名ネタが多いですね。
 ためしに今までの中から拾ってみると、『より刺激の強い……』→『森繁君の……』、『ひややっこ』→『平井アキコ』、『下がっちゃわない?』→『セバスチャン』、『献立表』→『本田トシオ』、『フェリシモのお皿』→『寺島ノリオ』、『梅田地下オデッセイ』→『梅田チカオでっせ!』、『フライパン』→『白井さん』、『第一弾』→『バイチマン』→『大地マオ』、『綿の国星』→『渡辺ヒロシ』など。このうち、『バイチマン』(母校の外国人教員の名前)と『大地マオ』以外は、みんな、特に知り合いにいるとかの心当たりの無い、まったくでまかせの名前です。
 『梅田チカオ』は、きっと大阪は梅田近辺出身のお笑い芸人の芸名だろうと想像して思い浮かべたんですけど、ルリ・マスダって、マイティ・吉田って、渡辺ヒロシって、森繁君って……誰なんでしょうねえ(^_^;)



近況報告・蛇の抜け殻

 息子が蛇の抜け殻を拾ってきました。前にも拾ってきたので、これで二回目です。
 が、今度のは、大きいんですよ〜!
 ほぼ完全な形で、伸ばすと、全長1メートルくらいあるんです!

 前のは、ごくかわいらしい大きさで、縦長の空き瓶に入れて取ってあったのですが、今度のも同じ空き瓶に入れさせたら、うねうねとまげて押し込んである状態になって、瓶の中が曲がりくねった抜け殻でびっしりで、ちょっと気持ち悪いです。
 鱗(?)の一つ一つも大きくて、じっと見ると、すごく気持ち悪い……(じゃあ見なければいいんですが、つい、見ちゃう^_^;)。

 私、節足動物は苦手だけど爬虫類はそんなにきらいじゃないんですが(カナヘビなんか、よく見るとなかなか綺麗だし、かわいいです)、でも、こんな全長一メートルの大蛇がうちの回りにいるのかと思うと、やっぱりちょっと嫌かもです。

 息子は大得意で、「よ〜し、もっとたくさん抜け殻を集めて、大金持ちになるぞ〜!」と張り切っています(^_^;)
 前に抜け殻を拾ってきたとき、『蛇の抜け殻を財布にいれておくとお金が溜まる』という俗信を教えてやったので、抜け殻をたくさん集めれば集めるほど大金持ちになれると考えたらしいです。
 お金持ちになりたければ、抜け殻集めなんかじゃなく、もっと別の努力をした方がいいと思うのですが……(^_^;)



 読書録

(注・この読書録は、あくまで私の備忘録・個人的な感想文であって、その本を未読の人にマジメに紹介しようという気は、ほとんどありません(^^ゞ (……たまに、少しだけ、あります)。 ただ、自分の記録のためと、あとは、たまたま同じ本を読んだことのある人と感想を語り合いたくてアップしているものなので、本の内容紹介はほとんど無いことが多く、ものによってはネタバレもバリバリです。あまり問題がありそうな場合は、そのつど警告するか、伏字にしています。)

『まろうどエマノン』 梶尾真治作 (徳間デュアル文庫)
 先月読んだんだけど、書くのを忘れてました。
 こじんまりと、よくまとまった、センチメンタルな『いい話』系SFです。
 『こじんまり』といっても、実はいろいろな要素が絡んだ壮大な内容なんだけど、うまくすっきりまとめてあって、さらっと読めるので、やっぱり、『こじんまりした小品』という印象なのです。

 昭和44年に小学生の男の子が田舎のおばあちゃんの家で過ごす夏休みというノスタルジックな舞台設定も魅力的で、一言で言うと、往年の『NHK少年ドラマシリーズ』の一作としてふさわしそうな感じ。

 都会っ子のひと夏の田舎体験、昭和40年代の風俗、謎めいた年上の女性への淡い思慕、幼い頃に死に別れた母(しかも同じ年頃の少女の姿の)とのかりそめの再会と切ない別れ……、どこをとっても少年ドラマにうってつけ。しかも、話の本筋とはあまり関係ないけど空襲のシーンやもんぺ姿の少女が出てくるあたりが、ますますHNKの夏休みドラマに良さそうだ!
 これはもう、ぜひ、夏休みにあわせてNHKにドラマ化して欲しいものです!


『魔女も恋をする・海外ロマンチックSF傑作選』 (集英社コバルトシリーズ)……と、『私のファンタジー歴』。
 相互リンク先姫様御殿の姫様の『ずっと昔に読んだ、こういう内容の本を探している』というカキコをきっかけに図書館にリクエストして読んだ、古い古い『集英社コバルトシリーズ』の一冊(この本が出た1980年(昭和55年)当時は、まだ『コバルト文庫』じゃなかったんですね)。
 私は姫様の探している作品に心当たりが無かったんだけど、それを見ていた夢の湊のゆめのさんが、「これじゃないか」と教えてくれて、面白そうだったので私も読みたくなったのです。

 姫様が探していた作品は、このアンソロジー中の一編『ユニコーンの谷』(トマス・バーネット・スワン作)だったのですが、なぜこれが『SF傑作選』に入ってたのか……。明らかにファンタジーです。
 どうやら、このころはまだ、ファンタジーという分野が、あまり一般に認知されていなかったのですね。
 だって、よく考えてみれば、そういえばこのころにはまだ、富士見ファンタジア文庫も角川スニーカー文庫もホワイトハートも、今は無き集英社ロマン文庫も、何もなかったんですよね。コバルトも、ファンタジーじゃなく青春小説ばかりだったんですね。

 先日、ゆめのさんが、ご自分の掲示板で、ある読書関係サイト(ありさとの蔵さん)の『和製ファンタジーのルーツ』というコンテンツを紹介なさっていたのですが、それによると、和製ファンタジーの元年は、『角川ファンタジーフェア』があった1986年か、あるいは、ひかわ玲子や前田珠子がデビューした1988年前後ではないかと推定されています。
 前田珠子さんがコバルトでファンタジーを書き始めたのがその頃だということは、つまり、コバルトでのファンタジー隆盛はその頃にはじまったわけで、それまではコバルトはまだ青春小説メインだったわけで……。

 それにしても、その、『1986年または1988年』という数字に、私は大ショック!!
 だって、1988年なんて、ついこのあいだじゃないですか!
 実は1963年生まれである私は、その頃、もう、社会人になってましたよ!
 ……でも、よくよく考えてみれば、例えば今、高校生くらいの方にとっては、そんなの、下手すると自分が生まれる前の大昔なんですよね。
 それ以前から翻訳国産問わずファンタジーばかり読んできた私って、もはや、和製ファンタジーの歴史の生き証人!?
 ついこのあいだのことだと思っていた私の学生時代って、和製ファンタジーの有史以前? うわ〜、ショック。

 でも、確かに私は、その前から、ファンタジーばかり読んでいたんですよ。その中には、当然、日本のものもあったはずなんです。子供の頃のことだから、あんまり、日本のだとか外国のだとか深く考えずに読んでいましたが。
 だから、和製ファンタジー元年が1986年頃なんて言われて、一瞬、えっ、そんなバカな……と思ったのですが、そう言われてよく考えてみれば、たしかに、ライトノベル系の国産ファンタジーの隆盛は、その頃からのことかもしれません。

 そういえば、それまで、ファンタジーといえば、まず例外なく児童書でした。
 そして、国産の幼年童話などには、空想と現実がないまぜなった幼児の内的世界をそのまま描き出した、日常生活と地続きの、何でもありの流動的な夢の世界を描いたものは非常に多かったけれど、そういう不定形な夢の世界じゃなく、それなりの法則性に貫かれた確固たる別世界を描きだす異世界ファンタジーは、ほとんどが翻訳ものだったような気がします(神沢利子さんの名作『銀のほのおの国』(1972年刊)などは、国産の本格的な異世界ファンタジーのハシリだったと思いますが、他にはあまりそういうものはなかったように思います。子供だったのでよくは覚えていませんが)。

 そんなわけで、子供の頃、私は、『自分は翻訳モノの、外国のお話が好きなんだ』と思っていました。また、中・高校生になってもSF以外の大人向けの小説を読む気が起きずに児童書ばかり読んでいて、それを、『自分は大人の本には興味が無く児童文学が好きなのだ』と思っていました。
 だって、『ナルニア』に『ゲド戦記』、『ホビットの冒険』に『コーンウォールの聖杯』、『床下の小人たち』シリーズに『グリーン・ノウ』シリーズなどなど、私を夢中にさせた面白いお話の多くは、翻訳ものの児童書でしたから。

 が、本当は、別に、私は『子供の本が』好きだったわけではなく、今思えば、『ファンタジーが』好き――中でも特に『異世界ファンタジーが』好きだったのです。ただ、当時、異世界ファンタジーというのは、ほとんどが外国産で、しかも、まず例外なく児童書だったために、ぼんやりものの私は『自分は翻訳ものの児童文学が好きらしい』としか認識できずにいたのです。

 そもそも、子供の頃、私は、自分が好きな分野が『ファンタジー』というものであるということにもあまり気づいておらず、自分はただ『冒険のお話』が好きなんだというくらいにしか認識していなかったような……。

 つまり、まだ、その頃、ファンタジーという分野は、やっぱりあまり一般に認知されていなかったのでしょう。
 もしもあの頃に、コバルトシリーズでファンタジー作品がたくさん出ていたり、ライトノベル系のヤングアダルト向けファンタジーが量産されて身近にあれば、中・高校生の頃の私は、きっとそれを読んだはずです。そして、それらが『ファンタジー』と銘打たれていれば、いくらぼんやりものでも、自分が好きな分野はファンタジーというらしいと、気づいたはずです。
 が、当時はまだ各種ライトノベル文庫のほとんどが創刊されておらず、コバルトでも、ファンタジーは扱っていなかったのです。

 そういえば、脱線しますが、ちょっと思い出話を。題して、『私とコバルト』(^_^;)
 私は中学時代に、コバルトについての良くない思い出がありまして……。
 たしか中学一年の時だと思いますが、休み時間に本を読んでいたら、突然、クラスのツッパリ男子(……死語?)が寄ってきて、
「あ、知ってるぞ! それ、コバルトだろう! や〜らしい〜!」と囃し立てられたのです。

 その頃、コバルトシリーズは、当時としては大胆に性の問題を扱っていたのでPTAには受けが悪かったらしく、彼は、たぶん、その悪評をどこかで聞きかじったのでしょうが、どう考えても、コバルトシリーズの実物は一冊も見たことがなかったんですね。
 だって、この出来事のせいで今でも覚えているのですが、その時私が読んでいたのは、『講談社ブルーバックス』の一冊で、『タイムマシーンの話』という本だったのです。両親の本棚から拝借した、相対性理論の入門書です。確かに背表紙は青いけど、ブルーバックスは文庫ではなく新書版だし、本物のコバルトを見たことがあれば、ブルーバックスをコバルトだなんて言わないでしょう(^_^;)
 彼はただ、『コバルトというのはなにやらヤラシイ本で、名前からしてきっと表紙が青いんだろう』ということしか、知らなかったに違いありません(^_^;)

 そういう私も、当時、まだ、コバルトシリーズの名を聞いたことが無かったので、、その子の言っていることが、全く意味不明でした。が、何がなにやらさっぱりわからないなりに、ツッパリ男子に理由も分からず『や〜らしい〜』と囃し立てられたことは、なんとなくちょっとショックでした。
 そして、なんとなく、『そうか、まだ見たことがないコバルトとかいう本は、私のようなマジメな女子中学生が読んではいけないヤラシイ本なのか……』と、コバルトに対して、いわれの無い悪印象を持ってしまったのでした。

 別にその事件のせいというわけじゃないんですが、私がはじめてコバルトを買って読んだのは、社会人になってからです。大好きなシンガーソングライターの谷山浩子さんがコバルトで小説を出したので、思い切って……(^_^;)
 いい年して生まれて初めてコバルトを買うのは、すごく恥ずかしかったです。レジに行くとき、顔が赤くなってないかと、どきどきしましたよ。今では平気でがんがん読んでますが……(^_^;)

 まあ、昔のコバルトは、確かに私が読むようなものじゃなかったんですね。当時、ファンタジーがメインだったら、あんなくだらない理由で悪印象を持って読まずにすごしたのは大損だったと思いますが、当時のコバルトだったら、その悪印象がなくても、やっぱり読まなかったでしょう。
 今回読んだ『海外ロマンチックSF傑作選』の巻末の広告を見ても、当時のコバルトって、確かに、富島健夫先生など、後にポルノ小説の大御所(……でしたよね?)となったような人が書いていて、私の乙女心を傷つけたツッパリ君の『や〜らしい〜』発言も、まるっきり見当違いというわけではなかったのかもしれません。とにかく、私が読みたいと思うような内容ではなかったようです。

 でも、私が高校生の時には、そろそろ、こういう、ファンタジーも入ったアンソロジーが出ていたんですね。これを見逃して読まなかったのは、損でした。
 同じ時期に、偶然、あの作品に出会っていた姫様は、幸運でしたね。私も、もし高校生の頃にあれを読んでいたら、とても印象深かったんじゃないかと思います。

 高校生の頃、私、何を読んでたのかなあ。児童書以外では、ほとんどSFばかりですね。創元推理文庫SFとか、ハヤカワ文庫とか、今は無きサンリオSF文庫とか。あとは、あいかわらず講談社ブルーバックスなどを読んでいて、大人向けの『普通の』小説というのは、ほとんど読まなかった気がします。

 そういえば、ゲーテの『ファウスト』は面白かったですが、今にして思えば、私の場合、『失楽園』(渡辺淳一じゃないですよ!)や『ファウスト』は、ファンタジーとして楽しんでたんですよね。たまたま『ファウスト』を読んだ私が、(大人の本、特に名作といわれるような本はたいていつまらないのに、これはなぜか猛烈に面白いぞ)とわくわくしたのは、『ファウスト』はファンタジーだったかららしいのです。
 それなのに、私は、まだ、そのことに気がつかず、もしかしてゲーテの本は面白いのかもと思って他のものを読んでみたら、ぜんぜん面白くありませんでした(^_^;)
 で、やっぱり本は子供の本に限るや……と思いなおしたのでしたが、ほんとは『子供の本に限る』んじゃなくて『ファンタジーに限る』だったのですね……。

 ああ、当時、富士見ファンタジアやホワイトハートがあれば、どんなにか夢中になれたでしょう! あと十年遅く生まれたかった!
 でも、まあ、そういうものがなかったおかげで、二十歳過ぎまで児童書のファンタジーを読み続けて、かなりたくさん読めたわけなので、それはそれで得したのかも。


『琥珀の望遠鏡 ライラの冒険シリーズ・3』 P・プルマン作 (新潮社)
 3部作の完結編、やっと読みました。
 やっぱりイオレクがいい! イオレク、素敵!
 リー・スコーズビー氏の○○を食べちゃったときは、さすがにびっくりしたけど(『えっ、た、食べちゃうんですか……(@_@)』と……)、でも、そんなところがまた、人間とは違う異質さを感じさせて魅力的(*^_^*)

 でも、全体を通して見て、白くまのイオレクと『ダイモン』という設定は魅力的だったし、面白いことは面白かったんだけど、物語自体は、あまりにも奇想天外すぎて、私にはちょっと親しみにくかったかも。
 私は、もっとオーソドックスな、古風なファンタジーが好きかもしれません。
 ちょっと、なかなか没頭できずに、読むのに苦労しました。ライラというヒロインにも、ボーイフレンドのウィルにも、最後まで、いまいち感情移入できなかったし。
 でも、かなり面白かったですけど。(←結局、どっちなんだよ!)

 しかし、これ、よくキリスト教の国で出版できましたね。
 イギリスの本だけど、アメリカでも出たんでしょうかね? アメリカって、地域等によっては、こういうものにかなり抵抗が強そうな気がするのですが……。
 あらゆる宗教の神様や天使や悪魔を好き勝手に使えるのが日本でファンタジーを書く人のラッキーな点だと思ってましたが、キリスト教国でも、こういう話、書けるのですね。天使のこういう扱いって、日本人にはわりと普通だけど、あっちでは、たぶん、珍しかったのでは?
 そういう点で、向こうでは、日本での受け止め方以上に斬新でショッキングな内容に受け止められたかもしれないと想像するのですが……。まあ、私、外国の事情はぜんぜん知らないので、偏見かもしれないですが。

 ところで、後書きによると、これ、アニメ化の話があるらしいんですが、三部作全体を一本のアニメ映画にするのでしょうか? まさかね。でも、もし、アニメも3部作になるとしても、それでもそれぞれ二時間やそこらでまとめられる内容とは思えないんですが……。

 どっちかというと、私は、アニメにするなら次の『サブリエル』のほうが向いてそうな気がしますが。
 こっちなら、二時間くらいの映画に収まりそう。というわけで、次は……


『サブリエル・冥界の扉(古王国記1)』 ガース・ニクス作 (主婦の友社) 
 これは面白かったです! 冒頭からぐいぐい引っ張りこまれました。薄暗い冥界の水の匂いがして、水の音と、暗い水の上を渡るベルの音が聞こえるよう……。
 そうそう、こういう薄暗さこそ、私がファンタジーに求めているもの(のひとつ)なのです!

 上に書いたように、私、これ、アニメにするとすごくいいような気がするのですが……。いや、アニメというより、実写にCGを合成した特撮映画かな? (最近、CGの発達によってアニメと実写の境界がぼやけてきてますよね。)
 一見、いわゆる『アニメ的』とは正反対な重厚な世界なんですが、描写が非常に視覚的で、次々出てくる化け物たちの描写など、頭の中でCGアニメが見えるんです。セルアニメじゃなくて、あくまでCG。どの化け物にはどんなCG効果を使っているか、それぞれ動きが目に浮かぶんです。
 ペーパーウィングでの飛行シーンなども、映像化すると見栄えが良さそうだし、双子の美女が出てくるあたりも、見せ甲斐がありそう。

 この方、頭の中に映像を思い浮かべながら書くタイプなのでしょうか?
 きっと、少なくとも各種の化け物や『チャーターの精』などを描くときには、頭の中で、これまでに見た映画などのCG映像を思い浮かべていたに違いないという気がします。でなきゃ、ああいう、CGが目に浮かぶ描写にはならないと思う。

 話は変わって、キャラ話。
 お気に入りのキャラはモゲット! モゲットはいい! なんたって、猫!
 魔法少女の肩にはやっぱり猫でしょう! う〜ん、これもアニメ的に美味しい絵柄だ……。
 もしかして、次回からは白黒二匹の猫がお供につくのでしょうか?
 そしたら、さらに魔法少女の王道だなあ……。
 お父様も素敵。チャーターの精霊召使もちょっとヘンなヤツらで好き。特に、門番さん。なぜか好き。あ、そういえば、私の好きな顔無しキャラだからかも。

 でも、ヒロインの相手役のタッチストーン君は、カッコ悪かった……(^_^;)
 いきなり素っ裸で登場だし、筋肉フトモモがつっかえてズボンが穿けずにぴょんぴょん跳んでるし、なんだかとってもオマヌケ……(^_^;)
 最初は意図的にオマヌケに描いてあって後からだんだんかっこよく見えてくるのかなと思ったけど、やっぱり最後まで、なんかオマヌケ……。
 確かに、ここ一番、やるときゃやるんだけど、ほとんど危ない薬物被投与状態で、口から泡吹いて形相変えて人間離れした速さで爆走したあげく昏倒するし。
 あの大爆走には何か魔法の仕掛けがあるのかと思ったら、ほんとにただキレてただけらしいですね。いくら火事場の馬鹿力といっても いくらなんでも、あそこまで限界を超えて暴走しては、身体が持たないでしょう……(^_^;) 人間は無意識に力をセーブすることで身体を守ってるんだって言うじゃないですか。
 この先、二度と火事場に遭遇することの無い平穏な人生が送れればいいけど、たまたま危機一髪の多い波乱の人生を送る羽目になって、そのたびにあれやってたら、たとえ窮地は脱しても身体に負荷がかかりすぎて、そのうち死ぬよ、君。
 まあ、とりあえずいいヤツではあるようですが……(^_^;) くれぐれも身体は大切にネ。

 というわけで、大変楽しかったのですが、ちょっと不満だったのは、『フリーマジック』とか『マーク』とかの、英語そのままの魔法用語。『ネクロマンサー』も、できればやめて欲しかったなあ……。なんか軽々しくて、これじゃ萌えられないです〜(T-T) 魔法用語は、もっと神秘的じゃなくちゃ……(T-T)
 意訳でも誤訳でも捏造でもいいから、もっと何かファンタジーの香りのする、神秘的で重々しい日本語をひねり出して欲しかった……。


『グインサーガ 星の葬送』 栗本薫・作 (ハヤカワ文庫)
 まだ読んでない人はネタバレ注意!
 まあ、出版されてからずいぶん経ってるし、その前まで読んだ人にとっては表紙とタイトルだけで内容の見当がついてしまう巻なので、そんなに気にすることはないと思うので、文字反転はさせません。

 ……というわけで、表紙とタイトルを見たとき、嫌な予感がしたんですよ(^_^;) まさか、まるまる一冊○○○のお葬式では?……と。
 でも、その予想は、半分合ってたけど半分はずれました。
 どう外れたかというと、まるまるお葬式どころか、丸一冊費やして、まだお葬式までたどり着いてない!! なんと、お葬式の段取りだけで丸一冊……(@_@)
 まあ、○○○は、結婚式のときにもたしか丸3冊くらい費やしてもらってたから、それとのバランスでいえば、お葬式にだって丸三冊費やしてぜんぜん不思議は無いですが……(^_^;)
(でも、そのわりに主役のグインの結婚式は妙にあっさりしてたぞ! 私はそっちがもっと見たかったぞ!)

 でも、なんだかんだ言っても、やっぱり読ませるんですよね。まさかこんな話で丸一冊分終わってしまうなんて、普通なら我慢できないところですが、グインサーガなら、引き込まれちゃう。
 愛する人を喪った人々の心情があまりにも真に迫っていて、不覚にも、貰い泣きしてしまいました……(T-T)

他に、妹尾ゆふ子作『真世の王(上・下)』(エニックス)を読みましたが、だらだらと語っているあいだに時間がなくなってしまったので、そのプロローグにあたる作品『異次元創世記』と合わせて、来月、感想を書きます。とりあえず、ひとことだけ……すっごく面白かったです! 本格ファンタジーファンには超オススメ! もうすぐ品切れになるかもしれないから、買うなら今のうち!! ……いや、ほんと、この方の作品はなぜか幸薄く、ほとんどすべての旧作が現在入手困難なのです(T-T)


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