カノープス通信 
2001年11月号−2

目次

季節の便り
今月の面白探し

夢の中で読んだ俳句?
読書録
(今月は松村栄子『紫の砂漠』、上橋菜穂子『虚空の旅人』他)



季節の便り

 いつも犬の散歩に行く丘の上に、とんぼがいっぱい飛んでいます。
 歩きながら人差し指を立ててみたら、赤とんぼが一匹、指に止まってくれました。しばらくそのまま、とんぼを指に止まらせて歩いてみたけど、そのうちふいっと飛び立っていきました。

 この季節、家の周りをちょっと歩くと、地面が、どこもかしこも栗だらけです。
 うちの敷地は小さな崖地に面しているのですが、そこは、ほんの数メートルの幅ながら、ちょっとした雑木林になっていて、野生の栗の木も生えています。それで、毎朝、庭先に栗が落ちてきます。
 それを子供たちがせっせと拾って来るので、一時期は、毎日のように茹でては食べさせていました。
 近くには放置された栗林もあるので、大粒の立派な栗もたくさん落ちているのですが、その大きな栗より、小さな山栗のほうが甘くておいしいのです。
 スーパーに行くと、高価な大粒の栗が売っていますが、買ったことがありません(^^)


今月の面白探し

今月の勘違い・その1

 先日、実家に行ったとき、「離れて暮らす家族が連絡を取りあうためのHPと掲示板を作ろう」という話になり、どこの無料スペースを借りるかという相談をしていた時の事です。
「ジオシティなら勝手がわかるから私が手続きしてもいい」と私が提案すると、夫が、
「でも、ジオシティのHPって、太ってる人とか、来ない?」と、不思議なことを言うのです。
 私はびっくりして、しばらく考え込み、
「……ねえ、何で太ってる人がHP見にきちゃまずいの?」と聞いてみたら、家族みんなに大笑いされました。
 夫の言葉は、『太ってる人とか、来ない?』じゃなく、『不特定の人が来ない?』だったのです。

今月の勘違い・その2

 テレビアニメの中で、ヒーローが、
「ランチャーモード、アクティブ!」と叫んでいました。
 それを見ていた8歳の息子がまねをして叫んだ言葉は、
なんちゃってモード、アクティブ!!」でした。

毎度お馴染み・夫と私のとんちんかん会話集

夫 「健太郎が献立票、もらってきたよ」
私 「えっ? 『ホンダ・トシオ』って誰?」

夫 「この絹さや、バターいためにする?」
私 「えっ、ワタリガニ?」

夫 「『ファイナルファンタジー』でね……」
私 「えっ? お花祭りって?」

夫 「『ユニクロ』がフリースの回収、始めるんだって」
私 「えっ? 古い椅子? なんでユニクロが椅子を?」

夫 「例のコーナーは(番組の)後半でしょ?」
私 「えっ、コマネチ?」

 ……何だか今月は私の勘違いばっかりになってしまいました(^^)
 いつもは夫も、私と同じくらい勘違いするんですけど。


夢の中で読んだ俳句?

 夢の中で、私、なぜか句集を読んでいたんです。
 本好きの私は、よく、夢の中でも本を読みます。時々、目がさめてからも、その本の内容を覚えていることがあります。内容そのものを覚えているというより、文章が、紙面にレイアウトされた活字の状態で、くっきり目に焼きついているのです。
 そして、それらは、前に読んだことのあるような本とか、いかにも自分が思いつきそうな内容の本とは限らず、まるっきり自分には想像もつかないような内容であることも多いのです。

 例えば、前に、『芸能人、有名人の夫婦のお宅にお邪魔して、おしゃれなインテリアや素敵な生活ぶりを披露してもらった上で奥様の得意料理を教えてもらい、レシピを紹介する』という内容の、グラビア中心の料理ムックを夢の中で読んだことがあります。
 まあ、そういう本が実際にあるかはともかく、テレビの番組なんかでは、いかにもありそうな企画ではあります。が、私はそんなものには全く興味が無く、そういうテレビがやっていたとしても、まず見ないと思うし、そういう本を読んだことも、読みたいと思ったこともありません。
 なんで、その夢の中でそんな本を読んだのかというと、『図書館で新刊の見本から購入する本を選ぶ』という夢だったからです(そのころ私は図書館司書をしており、実際に、全く興味の無い分野の本でも一応中を見て選書をしていたのです)。
 で、その本の中に載っていた料理は、夢の中では全く疑問に思わなかったのに目がさめてみるとすごく奇天烈な料理で、『芽キャベツの赤ジソ巻き』(しかも、ソースには生のマスカットが粒のまま加えられていて、味付けには梅酢と蜂蜜とワインを使う)というものでした。
 他にも何やら妙な料理がいろいろと載っており、今は忘れましたが、目がさめた時にはいくつか覚えていて、
「いくら夢の中とはいえ、何で自分はそんな妙な料理を思いついたんだろう」とびっくりしました。

 で、今回は、夢の中で、なぜか句集を読んでいたのです。
 そして、目がさめた時、最後に開いていたページの一句を、印刷された字面のレイアウトや紙の質感ごと、はっきりと覚えていたのです。

 それは、

卵ひとつ 抱く誇りや 窓の秋

 と言う句でした。
 これだけだと何のことかわかりませんが、どうも、これは、抱卵中の鳩をうたった俳句のようです。
 そういえば、私の実家の二階のベランダから、隣の家のこぶしの木に鳩が巣をかけているのが見えました。そんなふうに、窓の向こうに木が見えて、鳩の巣がかかっている、そういう光景を詠んだ俳句と思われます。鳩という言葉は一言も入っていませんが、私は、この俳句の中で卵を抱いているのは鳩であると、夢の中で、ちゃんと知っていました。なぜそれが判るかというと、多分、その句に、詞書がついていたのでしょう。夢の中の句集の著者は、決して私ではないはずなので。

 でも、この俳句、一見なかなかもっともらしいのですが、解説なしには意味が通じなくて、独立した俳句としては成り立ってないですね。
 『窓の秋』と言うのは、『ゆく春』とか『今朝の秋』みたいな、ひとまとまりの季語なのでしょうか。それとも、『秋』が季語なんでしょうか。でも、どっちにしても、鳩の繁殖期は、秋じゃないと思うんですよね。あと、たぶん、鳩が一度に抱く卵は、ひとつだけじゃないでしょう。
 やっぱり、夢の中の料理同様、夢の中でしか成り立たない俳句なのでした。

 それにしても、私は、詩は書いても俳句はあまり作ったことが無いのですが、なんで俳句の夢なんかみたんでしょう。しかも、妙に具体的に。
 一応、新聞の俳句欄は見るので、どこかで、これと似たような俳句を見たことがあったのでしょうか?
 どなたか、この俳句と似た俳句を見たことのある方、いらっしゃったら教えてください。

おまけ
 これを書いたあと、パート先のクレープ屋の前で女子高生が大声で話しているのを聞きました。
「あたしね〜、こないだ、春雨サラダ入りのクレープが新発売された夢見たの。で、注文したところで目がさめた」
 ……だそうです。どうせなら、食べるところまで夢に見て、お味の方の感想を聞かせて欲しかったものです。


読書録

 私が最近、行き当たりばったりにたまたま読んだ本の感想を、自分の備忘録を兼ねてだらだら綴る、いいかげんな『行き当たりばったり読書録』(?)、第4弾です。

松村栄子作『紫の砂漠』(新潮社)
 ああ、私はなんで今までこの本に出会ってなかったんだろう……! ちょっと昔に出た本ですが、名作です! なんたって、芥川賞作家が書いたSFですよ。それを見逃してたなんて。 
 でも、上の疑問については、奥付の出版年を見て納得。子供のころからずっと本好きだった私も、長い人生(^_^;)、山あり谷あり草むらあり、時には、ほとんど本を読まなかった時期というのが、これまでに何度かあります。これはちょうどそんな時期の本だったのですね。ちょうど、異様に手のかかる赤ん坊だった長男の育児中。乳飲み子を抱えて図書館にも本屋にも思うように行けなかった引きこもりの時期。まとまった睡眠時間は一日ニ、三時間、本どころか新聞も読むヒマが無く、出版情報をチェックする余裕も無く、読む暇が無いのに情報だけ収集してもかえってストレスがたまる一方だし……と、そんな時期に見逃してた本でした。

 でも、そうでなくても、この本、私の目に止まらなかったかもしれません。
 だって、この本、今はどこかから文庫本で復刊されているはずですが(今調べたら『ハルキ文庫』でした)、私が読んだ新潮社の単行本は、装丁、書名、著者名、出版社、どこを見てもSFだったりファンタジーだったりするようには見えない、ただの『普通の大人の本』にしか見えない本なので……(新潮社はファンタジーにも力入ってるけど、早川とか創元とかと違って、出版社見ただけで『あ、SFだな』とは思わないじゃないですか)。
 とても美しい装丁で、読み終わってみればすごく内容にもあってると思うのですが、何というか一般向けで、『おしゃれな都会派恋愛小説ですよ』といわれても信じてしまいそうで、オタクを引き寄せるSF・ファンタジーのオーラが出てないんですよね(^_^;)

 が、これが、読んでみると、良いのですよ〜(うっとり)
 ちょっと菅浩江さんみたいなタイプの、一見ファンタジーのような顔して始まるSFです。こういう、一見ファンタジーに見えて実はSFというの、好きなんです。しかも、こんな、隅々まで美しい清冽な文章で書かれていれているとあっては……。

 何とも美しい、美しくて悲しい物語です。
 美しい禁断の地、<紫の砂漠>を取り巻いて村や町が点在する世界。
 主人公は、その中のひとつの小さな村に住む七歳の子供、シェプシ。『少年』でも『少女』でもない、ただの『子供』です。その世界の人々は、生まれた時は男でも女でもなく、一生にただ一度の<真実の恋>に出会ったときに初めて<生む性>と<守る性>とに分化するのです。
 そして、この世界では、子供たちはみな、七歳までを、何の役割も持たぬただの子供として生みの親に育てられた後、<聞く神(メモリ)>の神殿のある<書記(プログラマ)の町>に集められ、各々の定めにしたがって、世界のどこかにいる<運命の親>のもとに引き取られてゆく。毎年、<死の月>の祭りの後で<運命の旅>に出る子供たちを<書記の町>まで引率し、そこで告げられた<運命の親>の元に送り届けるのは、旅の詩人たちの役目。
 旅立ちの時を迎えたシェプシの前に現れたのは、謎めいた、美貌の詩人。どこか憂愁の翳りを帯びて月のように美しいその人は、大人なのに、まだ真実の恋に巡り合っていないので、男でも女でもない……。
 ね、ね、良いでしょう? ツボです、ツボ!! 耽美です!
 この、詩人さんが良いのですよ〜! 美しいとはこのことだ!って感じ。
 大人の本なので、マンガイラストはついてないんですけど、かえって、その方が良かったかも。どんな美しい絵も、香り高い文章の中から立ち上ってくる詩人さんの美しさには到底かなわないと思うから。
 詩人さんだけじゃなく、シェプシが巡り合う砂漠の子ジェセルも、また美しい。砂漠も美しい。<真実の恋>なんて言葉も、他のところで聞いたらきっと笑っちゃうけど、ここでなら、美しい。世界中、すみからすみまで美しい!

 後半、SF的な設定が明らかになってからの展開には特に目新しさは無いんだけど、ちょっと懐かしくセンチメンタルで、古き良き少女漫画SFの香りがします。
 ツボです、ツボ!!(←そればっかり(^_^;)
 続編があるので、今度借りよう。楽しみです〜♪

上橋菜穂子作『虚空の旅人』(偕成社)
 国産児童書ファンタジーの近年の大収穫のひとつである(と、私は思ってます)、『守り人』シリーズの外伝。期待にたがわず面白かった!
 私がこのお話の舞台である世界に慣れたせいか、光明るい南国が舞台だからか、少年少女が主人公だからか、今までになく親しみやすかった気がします。
 美しい王女様たちや魅力的な若き王子様たち、花咲き乱れる南国の海辺と、登場人物も舞台もこれまでとは一味違う華やかさで、娯楽性が高く、もちろん娯楽だけでは終わらない深みもあって、たっぷり楽しませてもらいました。 

『伝説は永遠に3』(早川書房)
 海外ファンタジーの伝説的な名作の外伝ばかりを集めた面白い企画です。
 1と2は読んでないんですが、3巻だけは、もともとゲド戦記の外伝が載っているので読もうと思っていたところ、相互リンク先『ロマン倶楽部』の響子さんから同じ巻に入っている『灼けゆく男』を薦めてもらって、これはたしかに、薦めてくれるだけのことはある作品で、ほの暗い幻想世界を堪能しました。

 が、もともとのお目当ての『ゲド戦記』外伝のほうは、魔法の気配に満ちて土の匂いのする世界の濃厚な描写といい、魅力的なヒロインといい、途中までは実に面白そうだったのに、ラストは、「へっ? なに、それ?」という感じでいきなり終わってしまって、なんかよくわかりませんでした(^_^;) でも、まあ、きっと、私が本編の内容を忘れてるから結末の意味が理解できなかっただけなのでしょう。

 全体として、久しぶりにディープな海外ファンタジーの世界にどっぷり首まで浸れて幸せでした。
 やっぱり、翻訳ものには翻訳ものの独特の香りがあって、一味違います。

その他、読んだ本、読みたい本、それからオンライン小説のこと
 そうそう、夫が毎度借りてくるので回し読みさせてもらってるSFアンソロジー『SFバカ本』の新刊(『人類復活編』)も読みました。でも、わたし的には今回の目玉のはずだった高瀬美恵さんのが、今回はマージャンネタだったので、マージャンを知らない私には良くわからなくて残念。前回の『われはナマハゲ』は大爆笑だったんだけど(特に『萌え萌え』には、死ぬほど笑ったんだけど)。
 ギャグをやりながらも実はわりと根が暗いものをお書きになる高瀬さんですが、『バカ』や『ヘン』、奇人変人を書かせたら、やっぱり天下一品です(^^)。今回も、『なんかしらんが超バカバカしい』ってことだけはよ〜くわかりました(^_^;)

 そういえば、今回は入ってなかったけど、『SFバカ本』に何度か書いてる岡本賢一さん。これまでも『SFバカ本』ではとんでもないシモネタのお笑いをやってましたが、あれは、「『ディアスの少女』などを書いた岡本とは別人」だったんじゃないんですかぁ? とうとう、文庫本で丸々一冊、お下劣ギャグをやってしまいましたね。『それいけ薔薇姫様』、これも夫が借りてきたもんで、つい魔が差して読んでしまいました(^_^;) 何と申しましょうか、お下劣でございました。ああ、私、なんでこんなもの読んじゃったんだろう……(-_-)
 でも、読んじゃったもんね。で、笑っちゃったもんね。今も思い出し笑いで口元ひきつりそう(プフッ^_^;)

 あと、楽しみに取ってあった『十二国記』の新刊(もう『新刊』じゃないかな(^_^;)2冊、読み終わりました。面白かった!
 五冊も溜めてた『グインサーガ』も、少しずつ読み始めました。でも、また次が出ちゃった! 嬉しい悲鳴です。しかし、グインサーガは、やっぱりすごい! あの圧倒的な長さと、紡がれ続けてきた歳月の重みがあってこその、他のものには絶対真似できない凄みです。
 早く続きも読みたいんだけど……、借りたのではなく買ったり貰ったりして手元にずっと置いておける本って、ついつい後回しになるんですよね。しかも、たまたま入手したけど面白いかどうか分らない本というのは、とりあえず面白いかどうか見極めるためにざっと読んでみますが、最初から確実に面白いことがわかっていて、あとで必ず読みたいと思っている本に限って、なおさら後回しになる。

 これって、オンライン小説でも同じで、ダウンロードしたものは読むのが後回しになりがちなんですよね。
 しかも、面白いと思ったものほど、後になる(その作者さんと常日頃からお付き合いがあったり、そのサイトさんと急いで相互リンクしたいとかいう場合は別として……)。
 面白いかどうか分らないけどとりあえずダウンロードしてみたものは、自分にとって面白いかどうかを見極めるまではとりあえず読んでみようとしますが(で、今までのところ、ダウンロードしたけど途中で読む気を無くすほどつまらなかったものなんてひとつも無くて、結局みんな、そのまま最後まで読むか、後で読もうと取っておくかのどちらかになるんですが……(^_^;) だいたい、最初から面白そうだと思わなければダウンロードなんかしませんものね)、『これは確実に面白い、傑作である、読み終えてもデータを消さずに取っておこう!』と思ったものほど、『どうせ保存版なんだから後でゆっくり読もう』と、後回しにしてしまうんです。そういうのが、いっぱいたまってます。
 面白い作品がいっぱいありすぎて、困っちゃう。ああ、早く全部読みたい。本も読みたいし、オンライン小説も読みたい!

 でも、この前、図書館で、超分厚い『ネシャンサーガ』の第二巻を、どうしようかなあと思いつつ借りてしまったので、遅読の私は、当分、他の本やオンライン小説には手が回りそうもありません(T_T)

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