知人と会う



 少しすると知人がやってきた。Shark島さんである。彼とは歳も近く、中年になってからスケートを始めた点も私と共通している。普段練習しているリンクは別だが、数年前から顔見知りだ。
 彼はマスターズには「コンパルソリー」のクラスに4年連続して参加している。

 私は声をかけた。
「こんにちは、ごぶさたです。今年はついに私も参加します」
「そうですか。がんばってください。私は今年もコンパルです」

 コンパルと略されることもある、このコンパルソリーとは、氷上にスケートのエッジで図形を描く種目である(フィギュアスケートのfigureとはこの氷上に図を描くことから来ている)。 
 現在はバッジテストの項目として残っているコンパルソリーだが、昔は競技だった。そしてマスターズ大会は、ゆかしきコンパルを競技課題にしている。今回、彼が挑戦するのは、フォアアウトとバックインのサークルである。




 周りがフリーの練習をしている(飛んだり跳ねたり回ったりしている)中で、このコンパルの練習をするのは結構難しい。Shark島さんも大変だ。しばらくして彼が休んでいるところに、声をかけた。
「どうですか調子は」
「まあまあですね」
「今年もリポートを書くのですか」
「もちろん」
「そうですか。私も書きます」
 Shark島さんは、自分のスケートのホームページを持っており、そこでいろいろな体験記、観戦記、意見を公開している。過去4回のマスターズ大会の参戦記があってこれが出色だ。

 じつは私も自分のホームページを作っており、スケートの楽しみ、その理由などについて書いている。その中で、以前あるテーマに取りくんだとき、彼のホームページを参考にさせてもらったのだ。そういったこともあり、彼には世話になっている。




 お世話になりっぱなしのShark島さんに、今日もまた質問。
「Shark島さん、私は本番のこのリンクに来てみて、大問題に気がつきました」
「何ですか」
「周りの景色が全部いっしょなのです」

 私が普段練習しているハマボウルは、片側はお客が入ってくる側で明るく、反対は壁になっている。リンクの周りの景色が180度でまったく違う。
 スケーターは演技をするとき予定通りの動きをする必要がある。問題は、スピンを終えたときだ。回転し終わったとき、正しい方向に向いている必要がある。私の演技は最後がスピンで、止まってポーズを決めて終わる。そのときジャッジ側を向いていないとまずいのである。
 高速で回転しているとき景色は流れているが、ハマボウルだと周りの明暗を見ていれば自分の向きが分かるのだ。

 東伏見のリンクは四方が観客席になっており、見た目がみな同じだった。ところどころの壁に貼ってある広告まで完全にシンメトリックになっていた。

 Shark島さんは、
「私の場合、コンパルソリーだからあまり関係ないのですが、確かにそれはありますね。でも、明日の本番では、ジャッジの側にお客が集まりますから、多少は分かりやすくなりますよ。あちら側です」
と教えてくれた。少し安心した。

 スケート場営業終了の午後6時までしっかり練習した。 





ぐっすり眠って、一夜明けて・・・・