マスターズとは


 「フィギュアスケート・マスターズ・チャレンジカップ」とは「銀盤サテライト」というフィギュアスケートクラブが主催する大人のためのスケート大会である。
 少し長くなるが、この大会の理念としてクラブが記しているものを引用すると、

  • 大人になってから趣味として滑られているかたが、気軽に成果を発表し、ご家族・ご友人に新たな1面を見ていただく機会に・・・

  • 以前にスケーターとして活躍していらした方が、再び観衆の喝采の中で興奮を呼び起こしていただく場として・・・

  • リンク友達の輪を広げていただくきっかけとして・・・

  • 社会人として多忙な生活の中で、年齢・体力の壁に負けず、心からスケートを愛好するスケーターのために

行われる大会であるとしている。

 そのため、参加者の技術レベルはビギナーから元選手(ときには全日本選手権レベル)まで、さまざまだ。しかし、当大会では、個々のレベルの違いは無視して、十歳区切りの年代別、男女別にしている。
 男女とも20・30代が人数が多く、ふたけたの参加者がある。女子は40代でも13名の参加者があるが、男子は8名。50代から上は男女とも参加者が少なくなる。最年長者は女性78歳、男性79歳だ。

 大会は今年が10回め。私は昨年までは他人の演技を見るだけで自分は出場しなかった。自分の「曲」がなかったのである。



 フィギュアスケートには、日本スケート連盟のバッジテストという試験がある。最初に受けるのが初級、次が1級と順番にあがっていく。試験の内容は、コンパルソリー(後述)や、スピンやジャンプなどの、滑る技術の認定テストである。私は現在1級で、2級に向けて取りくみ中である。
 2級からはテストの項目に「フリースケーティング」が加わる。これは音楽をかけ、定められたスケートの技術を入れつつ「演技力」と呼ばれる要素を、曲にあわせて体で表現するものである。受験する者はみな、各自オリジナルなプログラムを用意しないといけない。

 今年から自分の「プログラム」を持つことになった私は、見ているだけでなく、人前で滑ってみようと思ったのである。 



 試合会場は西部新宿線「東伏見駅」の近くの「東伏見アイスアリーナ」だ。自宅の横浜からは遠いので、リンクから電車で2駅の「田無」にホテルを確保した。
 前日の金曜日は、有給休暇をとった。
 宿に到着し荷物を置いて、アリーナに練習に出かけた。アイスリンクの氷は、リンクごとに微妙な感触の違いがあり、本番の氷を知っておくことは大事なのだ。



 午後4時。リンクには明日の大会に出るであろう大人の選手たちが、練習を行っている。リンクに降りてみると氷が悪い。ざらざらだ。スケートリンクの氷は「整氷」(専用の車が氷上のゴミとデコボコを削り取り、薄く一面に水を張る処理)を行った後が、もっともきれいでよく滑る。そのあとみんなが滑るにつれ、表面がだんだん傷んできて、同じように蹴っても流れなくなる。そんな状態のなか、練習を続けていた。





練習は続く