■カトマンズ散策

タメルは看板だらけでどこに何があるのか分からない状態である。いろんな店が揃っているので、ここに滞在していればとりあえず不自由することはない。ネットカフェがたくさん増えていたのが時代の流れか。日本語を使える端末もたくさん用意されていた。

私はよく憶えていないのだが、他の旅行者によると、レストランの数も格段に増えたのだそうだ。以前は欧米旅行者のための欧風レストランやカフェが多かったが、最近はネパール料理店の数も多いらしい。やはり観光客に地元の料理を味わってほしいという思いから来ているのだろうか。

タメル地区からタヒティチョークを通ってアサンチョークまでの道は、お店はなく住宅地だけが軒を連ねる。このあたりまで歩いて気付いたのだが、以前と比べてバイクや車の量が多くなったような気がする。もともと道が細い旧市街なのに、平気でたくさんのバイクが入ってくるものだから渋滞が発生してしまう。さらに車まで入ってくるものだから、歩行者は、ただでさえ狭い路地のさらに端っこを歩かされることになる。路地なんだから車なんか入ってくるなよ、まったく。

住宅街ではミニストゥーパも見かける
そして何よりも空気が非常に排気ガス臭い。はっきり言って前回のメキシコシティを超える酷さである。このカトマンズを訪れた当時、世界中で新型インフルエンザが流行していて、カトマンズの市民もマスクをしているのを多く見かけたのだが、…イヤイヤそれ以前に排気ガスから身を守るためにマスクが必要なんじゃないかと思ったくらいだ。マスクを付けていない市民も、ハンカチで口を押さえながら歩いていた。車を持てる程度に市民の経済状況が発展したのはいいことなのだろうが、反面、得られる代償も大きいものである。

アサンチョーク。私がカトマンズの中で最も好きな場所である。カトマンズの喧騒を味わいたいのであれば、まずここにくれば間違いない。6本の路地が交差する場所であるが、交差点というよりは小さな広場のような形になっていて、路上の物売り、買い物客、さらに寺院が傍にあるためその信者でごった返している。この喧騒がたまらない。




アサンチョーク
インドラチョーク。アサンチョークからダルバール広場までを結ぶ通り。ここはいわゆる現地の人のための商店街。たとえば女性が身に纏うサリーを作るための色とりどりの布が陳列されていて、カラフルな光景が見れる。服飾関係の店だけでなく、生活雑貨、靴屋などの店もあった。また中には、観光客向けのタンカ画の店もあったが、こういう類の店は言い値がはびこるものなので、いつも怪しい気がしてならない。






インドラチョーク
ダルバール広場。ユネスコの世界遺産に登録されている場所である。たくさんのヒンズー教寺院や宮殿が並ぶ。どの建物も見事な装飾が施されており、見応えがある。中でもシヴァ寺院と呼ばれる最も高い建物は、階段状の基壇の上に建てられた寺院であるため、ここに上れば広場を見渡すことができる。私が訪れたときも、たくさんの人がこの寺院に上り、街の様子を眺めていた。




ダルバール広場とその周辺
ダルバール広場の南側にはクマリの館がある。生き神である少女クマリが拝見できる所だ。もちろん生きている神とは言っても、元は生身の人間である。クマリは数年に1回の割合で、仏教の僧侶の家族の中から選ばれる。その選考基準は厳しく、頭がいい、血の汚れがない(今まで一度も出血をしたことがない)、身体的障害がない、活発な性格である、聖性がある、そしてもちろん美人である…といろいろな基準がある。そのような厚い選考の壁を超えて選出された女性は、以降、この館に住んで女神クマリの化身として崇拝される身となるのである。そして初潮を迎えるとその任務を終え、新たに選出されたクマリと交代する。
クマリの館
私が8年前に拝見したときには、クマリはすでに13歳だった。ということは、おそらくもう2代は交代していることだろう。クマリを拝見したい場合は、クマリの家族に拝観料を支払う必要がある。残念ながら、今回は個人で来ている身分なので、さすがに払うのには抵抗があって拝見することはあきらめた。

しかしながら思うのだが、クマリというのは国王に対して予言を与える立場であり、王宮と密接なつながりがあるはずである。前述したように、この国はもう王国ではなく共和国になってしまった。王室がなくなったことでこのクマリの立場は今後どうなるのだろうか。王室の対象だったことから廃止させようとする動きがあるのだろうか。あくまで信仰の対象のみの存在となり続けるのだろうか。今後が気になるところではある。

カーラ・バイラヴ。ヒンズー教にまつわる像で、破壊神シヴァの化身を表したものだと言われている。ダルバール広場にある偶像の中でデザイン的に私が一番好きな像である。恐怖の神という割にはあまり怖い表情には見えず、愛嬌がある。信者は赤い染料をこの像にたくさん付けて祈っていた。
クマリの館の隣にはバサンタプルという広場がある。ここでは土産物の露天商がたくさんいたのだが、お店の数が少なくなったような気がする。以前はこのあたりも外国人観光客向けのホテルがあったのだが、それも少なくなってしまったようだ。やはりみんなタメルに移ってしまったのだろうか。

ちなみにこの広場の脇のお茶屋さんで、8年前にお茶の葉のお土産を買ったことがあるのだが、そのお店がまだ存在して営業していたのが何だかうれしかった。


バサンタプル
以上、このタメルからバサンタプルまでがいちおうの散策ルートである。ツーリストエリアのタメル、現地の人々の生活が垣間見えるタヒティ周辺の路地、活気が味わえるアサンチョークやインドラチョーク、世界遺産のダルバール広場など、旧市街観光のメインがこのルートに凝縮されていると言ってもいいだろう。

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