■ニャウンシュエ

3日目は朝早くにバガン空港へ。今日は、さらに田舎のシャン高原に移動する。そこにはインレー湖という細長い湖があり、インダー族という少数民族が湖上に家屋を作って生活をしているそうだ。

バガンから国内線の飛行機でマンダレーという町を経由し、1時間半くらいでヘーホー空港に到着。そこから車に乗って50分、まずはインレー湖観光の基点となるニャウンシュエという町に向かう。

素朴な雰囲気の村と聞いていたが、すごくたくさんの人で溢れかえっている。カインさんによると、どうやら今日はニャウンシュエのお祭りだそうだ。これは、9〜10月にかけてインレー湖畔の村々で開かれるファウンドーウー祭というお祭りのひとつで、インレー湖上にあるファウンドーウーパゴダに奉られた仏像が、このお祭りの期間、パゴダから外に運び出され、湖畔の村々を巡るのである。その仏像がちょうど今、ニャウンシュエに運ばれて奉られているということで、この村はお祭りムードになっているそうだ。街中は日本の縁日のように、食べ物を売る屋台、おもちゃを売る屋台などでひしめき合っていた。


ファウンドーウーパゴダの仏像が奉られているというパゴダに行ってみるとすごい人の数に驚く。みんな中央に体を向けて座っている。そして中央では、男性達がワンサカと集まって、仏像に対して金箔ペタペタと貼り付けている。金箔を貼り付けるとご利益があるらしい。私も中央に出向いて様子を眺めてみたのだが……しかし、運ばれてきた仏像、もはや仏像の形跡がなくなってるな。金箔の貼りすぎで、まるで雪ダルマだ。そしてさらに男性達がその上にペタペタと金箔を貼り付けるのだから、一体このダルマ、どこまで大きくなっちゃうのだろうか?
パゴダ内
■インレー湖

ニャウンシュエから出ているボートに乗ってインレー湖散策に向かった。インレー湖上では面白い光景がたくさん見れた。まず出発して最初に目に入ったのは、たくさんの島。これらはすべて、インレー湖で採れた水草で作った浮島である。流されないように竿を使って固定しているところがなんとも面白い。インダー族の人達は、この浮島の上で畑を作り、野菜などの食料を確保している。

ちなみに水草で作った浮島は、れっきとした土地として扱われるそうだ。なので、遺産相続の際も遺産として扱われ、例えば兄弟で遺産を半分に配分する場合は、浮島も半分に割るとのこと。ユニークな相続方法である。


浮島の上に作られた畑
(島が流されないように竿で固定している)

湖で採れる水草
インダー族による漁の光景にも遭遇した。漁の方法も独特である。大きな釣鐘型の網を、湖に隠れるくらいまでドボンと沈めて魚を獲っている。あれで本当に獲れるのだろうかと思ってしまうが、今でも続いているということはそれなりの実績はあるんだろうなぁ。
ボートを走らせていると、インダー族が暮らす水上家屋が各所に見られる。これらは浮島の上に建てられているものが多い。普通の住居だけでなく、小学校の校舎までもが水上家屋だ。子供たちは学校までボートで通学するそうだ。
インダー族は主に、農業、漁業、そして伝統工芸品の製造・販売で生計を立てている。インダー族の伝統工芸品とは主に織物だ。湖上にある織物工場を見学する機会があり、製造している過程を見せてもらった。このあたりで採れるハスの茎から糸が作られるそうだ。触ってみるとかなり細い。完成品も見せてもらったが、本当に軽い。ちょっと欲しいかもって思ったが、観光客向けということでかなり値段が高く、やむなくあきらめた。
■ガーペー寺院

おそらくインレー湖観光で必ず訪れると言っても過言ではない寺院。普通の湖上の寺院なのだが、ここのお坊さんが、ジャンピングキャットといわれる、猫をジャンプさせて輪にくぐらせるというサーカス芸を披露してくれる。言ってみればミャンマーの歴史と何の関係もない見所なのだが、なぜか人気である。私が出向いたときもその芸を披露してくれた。残念ながらジャンプしている瞬間の写真は撮れなかったが、よく手なずけられていて感心した。


寺院内はネコだらけ
■ファウンドーウーパゴダ

湖上にあるパゴダで最も規模が大きいのがファウンドーウーパゴダである。あのファウンドーウー祭の貴重な仏像は、本来このパゴダに奉られている。ミャンマー国内では、聖地的な役割を果たすパゴダでもあり、インダー族に限らず、ミャンマーの他の地域からもお祈りにやってくる人が多い。そのせいか、パゴダの周りには、水上ホテルや売店がズラリと並んでいる。

本来仏像は5体あるのだが、ニャウンシュエをはじめ他の村々に運び出されていたため、ここでは1体だけを見ることができた。やっぱりこの仏像も雪ダルマだったが。
■軍事政権

インレー湖の観光も終わり、今夜のホテルに移動。今夜のホテルはなんと水上コテージ。目の前が湖で景色がすごくいい。部屋の中も雰囲気抜群。さすがツアーだといつも安宿住まいの自分にとってはゴージャスに見える。

ホテルのレストランで夕食をとっているときに、カインさんとの話題がミャンマーの政治的な話になった。 どこの国でもそうだが、現地の人とその国の政治的な話をするのはよくないとされているが、パックツアーのガイドによっては、自分からそういう話を切り出してくることがある。聞きたくても聞けないこちらとしては好都合だ。カインさんも、政治的な話をたくさんしてくれた。

「こういう話は、こういった人の少ないホテルでしかできないですよ」。というのも、ミャンマー軍政下では、政治的な話題をするのはすぐに逮捕、拘束の対象として目をつけられてしまうからだ。街中でも、軍人が庶民に成りすまして、人々が政治的な(特に批判的な)話をしていないかどうかを常に監視している…というウワサまであるそうだ。一般の人はむやみにそういう類の話ができないが、周りの人が理解できない日本語であるのをいいことに、カインさんはどんどんしゃべっていく。

カインさんが実は、民主化を目指す反政府の活動家で、少数民族の活動家とつながりがあるだとか、また最近ミャンマー国内で多発している爆弾テロは、解雇された軍人による謀反の可能性が高いだとか、ミャンマー軍政を倒す一番手っ取り早い方法は何だとか、唯一軍政を評価するならば、市場経済を導入したことだとか……まぁ、なかなか聞けない貴重な話をいっぱい聞けたんだけど……ちょっと深過ぎやしないか?(汗

しかしこうして聞いてみると、この国も混沌とした歴史を刻んでいるようだ。私は経験がないので、軍政の是非などはよく分からない。たとえ民主化してもそれが正解なのかどうかも分からない。ただ少なくとも、ミャンマーという国の将来あるべき姿を考察する権利は、決して奪われてはならないのだろう。

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