■サアチーラ

サアチーラは、オアハカから15km南西にある、先住民サポテコ人が多く暮らす村である。1万人ほどが住んでおり、スペイン人に占領されるまでは古代サポテコ人の居住区として栄えたそうだ。

ガイドブックによると、市内のバスターミナルからサアチーラ行きのバスが毎時数本出ていると書いてあるので、まずはそのバスターミナルへ行ってみる。しかしこのバスターミナルがバスだらけで、どれに乗ったらいいのか全く分からなかった。いや、バスが多いのはターミナルだから当たり前なんだけど、行き先が書いてある乗り場なんてものが全く見当たらない。車掌と思われる人が、バスから身を乗り出して、行き先を叫んでいる。自分のいきたい所と合っていれば、おそらくそのまま乗り込めばいいのだろうが、どのバスを見てもサアチーラ、あるいはサアチーラを経由すると思われる行き先を叫んでいる車掌がいない。あれ? サアチーラ行きはここのバスターミナルとは違うのだろうか?

そんなわけで、10〜20分ほど、そのバスターミナルをウロチョロしていた。うーん、早く行かないと、市場が見れないではないか。仕方ないので、バスはあきらめてタクシーで行くことを決意した。まあ15kmくらいの距離だから、そんなにバカ高くはならないだろうと高を括ったわけだ。

で、ターミナル前でタクシーに乗り込み、運転手に「サアチーラ」と告げる。すると運転手は、何やら身振り手振りを交えて喋ってきた。スペイン語で喋ってくるから、何言ってるかさっぱり分からん。サアチーラは遠いから、バスに乗って行けと言ってるのだろうか。でもその割には、車は私を乗せて走っているので違うようにも思える。はて…?

するとしばらく走ること数分、タクシーは広い交差点のそばで停止した。運転手は前方を指差してまた何か言い始めた。やはり私の推測からするに、ここでサアチーラ行きのバスを捕まえられるから降りたほうがいいみたいなことを言っているようなのだ。…確かに交差点にある看板には、矢印と「ZAACHILA(サアチーラ)」の文字が書かれている。なるほど、ここでバスを拾った方が安く済みそうだ。そう、この運転手、わざわざバスを拾える場所まで乗せてきてくれたのである。おお、なんて親切な人なんだ! しかも下車するときに代金を払おうとしたら、それもいらないと言われた。わーい、オアハカ市民ってステキ☆

その場所で待ってたら本当にバスが来た。自分の前で停車すると、車掌が何やら叫んでくる。そのとき私が「サアチーラ?」と尋ねると、車掌は「Ya!」と言いながら、バスのボディをバンバンッと叩く。おお、まさにサアチーラ行きだと思い、私はバスに乗り込み、こうしてサアチーラ行きの移動手段が確保できたのである。いやあ、よかったよかった。かなり古いバスだったが、5ペソで目的地に行けるんだから言うことはない。

30分くらいでサアチーラに到着。バスはちょうどティアンギスが開催されている広場沿いに停車した。早い時間帯であったが、市場はすでに賑わいを見せていた。


屋根付きの市場

青空市場はその隣にある
村の市場と聞くからそんなに規模は大きくないと思っていたのだが、売り物の豊富さに驚いた。野菜、果物、肉、魚、パン、スパイス、豆などの食料だけでなく、花、衣類、日用雑貨、薪など、この市場で買い物すればたいていの物は買えるほどの品揃えだった。市場のそばにはちゃんと食堂もあった。

このティアンギスで気になったのは、売り手の人数が多いということだ。店を開く場所は前もって決められているのであろうが、そのようなスペースを持っていない人たちは、立ちながら籠を持って物を売り歩いている。その人数がかなり多いのである。ある人は、果物を複数個だけ籠の中に入れてそれだけを売っている。またある人は、生きているニワトリを1羽だけ手に抱えて立っていて、それだけを売ろうとしている。おそらくこのエリアの人々は、みな農業や畜産業などをやっていて、モノができれば、たとえ個数が少なくてもこうして市場に売りに出ているのだと思う。

ただ、ニワトリを売るエリアが決まっているからだろうか、ニワトリを一羽だけ抱えている人がある一角にずらっと並んでいたのだが、これって買い手からすると非常に買いづらい気がするのは私だけだろうか? あれだけ同じ売り手が一箇所に固まっていると、どの人からニワトリを買っても、他の売り手から「何でウチで買わずにそっちを選ぶんだ」とヒンシュクを買いそうな気がするんだけど…。










サアチーラの青空市場の隣には屋根付の市場(メルカド)がある。こちらは主に肉とパンを売っているエリアである。肉のエリアでは、やけにうるさく鳥の声がした。でも肝心の鳥の姿が見当たらない。なんだかそれがやけにシュールに感じた。…なるほど、鳴いてる鳥たちは店の後ろの方に集められていて、解体される寸前なんだなぁと。
くどいようだが、活気のある市場を見るのはやっぱり楽しいものだ。このような風景には、そこに暮らす人々の生きる力というものが滲み出ていて、旅行者に刺激を与えるのだ。

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