■聞いたことがある名前

オアハカの街の近くには、モンテ・アルバンと呼ばれる遺跡がある。ここオアハカには紀元前から、サポテコ人と呼ばれる民族が生活していたそうで、そのサポテコ人が造った祭礼場なのだそうだ。

「モンテ・アルバン」という名前はどこかで聞いたことがある。確か某飲料メーカーが、缶コーヒーの銘柄として使用していたような気がする。だから私も当初、コーヒー豆の種類かと思っていたのだが、どうやら名前の由来はこの遺跡から来ているようなのだ。

オアハカ歴史地区と共に世界遺産に登録されており、ぜひオアハカと併せて訪問したいと思った場所である。私は、オアハカにやって来たその日の午後に行くことにした。

モンテ・アルバンへは観光バスの利用が便利だ。オアハカ市内にモンテ・アルバン専用のバス発着所があり、朝から夕方まで30分間隔で遺跡と市内を往復している。私がそのバスに乗ったときには5〜6人くらいしか乗客がいなかった。さすがに日差しの強い午後の時間帯には行く人は少ないかもしれない。

勝手なイメージながら、モンテ・アルバンって標高の低いところにあると思っていたのだが、実は山の頂上を平坦にして造った遺跡らしい。だからそこへ向かうには山道を上らないといけない。勾配が大きく、道幅の狭い坂道を、でっかい観光バスがずんずんと上っていく…。この山道、ガードレールがないのでちょっと怖かった。

出発して20分くらいで頂上に到着。やはり暑い時間帯だけあって、遺跡内は人はそれほどいないようだ。しまった、帽子持ってくるの忘れた…。

■モンテ・アルバン

中米の遺跡と聞くとマヤ文明のイメージが強いが、このモンテ・アルバンはそれよりも前の時代であり、中米最古の遺跡なのだそうだ。現在残っている建物も、多くがその時代に建てられたものである。考古学的に貴重であることから、1987年、世界遺産に登録された。

サポテコ人は850年ごろまでこの地にいたとされる。全盛期は25000人もの人々がここに住んでいたらしい。それ以降はミトラなどに新たな都市を築いて移り住み、モンテ・アルバンは徐々に放棄されていった。高地のため、水の確保が困難であったことが理由のひとつとされているが、詳しくは今でも不明である。その後、この地へはミステコ人と呼ばれる新たな民族がやってきて、モンテ・アルバンを埋葬場として利用したそうだ。

まずゲートを通って道を歩いていくと最初に現れるのが、H型に造られた球戯場である。このような形の球戯場はマヤ文明などの遺跡でも見られるそうだ。元来、宗教儀式の一環として球戯が行われていたらしいが、こんなヘンテコな形のフィールドでどうやって球戯を行ったのだろうか? ルールを知りたい。
球戯場から先に進むと、神殿や基壇が建てられた大きな広場が出る。かなり広い。写真の右隣が大神殿、真ん中が天文台、左側の奥がこの遺跡最大のピラミッドである南の大基壇だ。

さっそく南の大基壇に上って、絶景を楽しんでみた。

おお、遺跡全体が見渡せていい眺め! 手前にあるのが天文台なのだが、他の建物と比べて違う角度で建てられているのが分かる。その先に見えるのは北の大基壇とよばれるピラミッドだ。一方、南の大基壇の反対側に回ると、オアハカ盆地の絶景が楽しめる。意外とこの盆地は緑が少なかった。


南の大基壇からのモンテ・アルバン全景(手前が天文台と神殿、後方にあるのが北の大基壇)


南の大基壇(頂上)

オアハカ盆地
南の大基壇を下りて、広場の西側を歩いてみる。西側には天文台や大神殿よりも大きな建物がある。「踊る人々のピラミッド」と呼ばれるピラミッドだ。モンテ・アルバンの中で最古の建造物のひとつである。ここへは一部内部に入ることができ、踊る人々を描かれたレリーフを見ることができる。内部だけでなく、外にもレリーフがずらっと並べられていた。かなりユニークな画風だ。…ただ、「踊る人々」と言われているが、噴出す血が表現してあるため、捕虜の拷問や死体を意味しているのではないかとも言われている。

踊る人々のピラミッド
広場の北西には第103号墳墓、第104号墳墓と呼ばれる墳墓がある。前述したように、サポテコ人がこの地を棄てた後はミステコ人が埋葬場としてこの地を利用したため、これまでたくさんの墳墓が発見されている。これらの墳墓からは、多くの宝石や財宝が出土し、現在、オアハカ文化博物館に展示されているそうだ。


第104号墳墓

第103号墳墓
最後に北の大基壇に上ってみる。南と違ってこちらはいろんな所に階段や壁が造られ、複雑な構造になっている。頂上に辿り着くためにはどの階段から上ればよいのか、若干迷ってしまった。こちらもいい眺めだ。

北の大基壇

北の大基壇からのモンテ・アルバン全景

■サボテン

日本人にとってメキシコと言えば、サボテンのイメージが強い。でもそれってもっと乾燥した地域でないと見れないかもなぁと思っていたのだが、なんとモンテ・アルバンでも見ることができた。育てているようには見えない。野生で生えているようだ。でもすごく小っちゃい。2枚だけチョコンと生えているのがなんだか可愛らしい。

■豪快な遺跡

今回初めて中米の遺跡を見た。モンテ・アルバンはそれぞれの建造物自体はそんなに目立ったものはないが、それらを全てひと括りにした見たときに、豪快さがあり、壮大さを感じた。モンテ・アルバンはおススメできる遺跡である。

何度も言っていることかもしれないが、その観光地に行くのはおよそ夢の話だろうと思っていたのに、いま自分がこうしてその場所に立っているという感覚…、これにはたまらなく感動するね。モンテ・アルバンなんて、まさか自分が来れるとは思わなかった場所だ。そんな場所にいま自分がいる。そしてその遺跡がこれだけ豪快で見応えがある遺跡ときている。来てよかった〜と心から思う瞬間だ。この瞬間を味わえるから、旅はやめられないんだよね。

モンテ・アルバン遺跡の観光には2時間もかからなかった。それだけあれば十分に見て回れる大きさである。 そろそろ閉門時間の5時になったので、モンテ・アルバンを後にする(このときはサマータイムだったので、通常より1時間閉門が早い)。モンテ・アルバンのゲートの外には、お土産を売っている現地の人たちがいる。この人たちも今日はここで店じまいである。駐車場には、私が乗ってきた大型バスが停まって待っていてくれたのだが、なんとその現地の人たちも大型バスに一斉に乗り込んできた。でもドライバーは特に何も言わず、そのままバスが発車。…なるほど、これは普通の光景のようだ。行きと違って満席になった大型バスは、もと来た坂道を下り始め、オアハカ市内に戻って行った。

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