§4  水上家屋とチャム族 (チャウドック)

私が泊まったホテルはメコン河沿いに建てられています。そのおかげで今朝は、「ガガガガガ・…」とやかましいボートのエンジン音で無理矢理起こされてしまいました。オイ、まだ5時じゃねーか。

時間は経って8時ごろ、ホテルのロビーでヘウさんと落ち合います。今日はチャウドックの観光名所の見物に出発です。ホテル近くの船着場から小さなエンジン付きボートに乗り込んで、メコン河を渡ります。水の上はやっぱり涼しいですね。

船着場からしばらく河を上っていくと、でかいエンジン付きのボートやら、小さな手漕ぎ船やらが、河のど真ん中で停泊しているのを見かけました。チャウドックの水上マーケットです。チャウドックの対岸には小さな村があり、そこで収穫された野菜や果物を、ボートを使って水上で販売しているそうです。パイナップルやマンゴーなど、南国の果物もズラリです。

  
チャウドックの水上マーケット(閑散としてます)

ところで、小さな手漕ぎ船以外の大きな船をじっくり観察してみると、不思議なものを発見することができます。船の前部の方にサオのような長い棒を立てており、その棒の先に野菜や果物などをぶら下げているのです。…なんだこりゃ?

実はコレ、その船が一体何を販売しているのかを示すための店の看板なのだそうです。もし、パイナップルをぶら下げているのであれば、「ウチはパイナップルを売ってますよ」ということを遠くの人にも分かりやすいようにしているのだそうです。へぇ〜、なかなかユニークですね。


この船の場合は、トマトや人参やキャベツなど、
数種の野菜を売っていることを示す

しばらく水上マーケットの光景を観察していたのですが、残念ながら船の数がちょっと少なくて、それほど活気づいたものには見えませんでした。チャウドックの対岸の村というのは規模的に小さいため、そこから売りにやってくる船も少ないようです。やはり水上マーケットを見るのであれば、チャウドックよりもカントーのほうがおすすめらしいので、そちらへ行くまでのお楽しみということにしておきましょう。

さて、我々のボートはさらに河を上って行きます。すると、河川の上に建てられている家屋が多く見られるようになってきました。これは水上家屋(フローティングハウス)と呼ばれ、主に川魚の養殖をするための家なのだそうです。ドラム缶や竹をウキにして河川上に浮かべられています。これが単なる養殖場ではなく、実際に一つの家族が住む住宅であるというから驚きですね。

  
水上家屋

実際にこの水上家屋の中に入ってみることにします。水上家屋には、通常の住宅の建築様式を用いたものと、船をそのまま住宅として改造したものとの2種類がありますが、私たちが訪ねたのは前者の住宅でした。おじゃまして居間に行ってみると、部屋の真ん中には床をくりぬいたイケスがありました。床下の水中に金網のカゴを設置し、そこで養殖を行っているようです。この家に住んでいる人が、魚にエサをあげる光景をデモで見せてくれました。大きな音を鳴らして魚をおびき出すとで、餌付けを行います。そうして養殖された魚は、自家用の船を使って市場まで売りに行き、それで生計を立てているそうです。


魚の餌付け


魚のエサ

この水上家屋、意外と暮らし向きがいいように思われます。イケスと魚のエサ製造機がある以外は、ほとんど普通の家と変わりません。水上でもちゃんと電気が通っているし、テレビのアンテナも設置されているためにテレビ視聴も可能のようです。部屋は居間以外にも、寝室や子供部屋がちゃんとありました。…こんな生活ってのもアリなんですねぇ。初めて知りましたよ。

さて、再びボートに乗り込み、水上家屋を後にします。さらに川を上っていくと、続いてはチャム族が多く住んでいるという集落に到着です。チャム族はベトナムの少数民族のうちの一つです。男性でもサロンを腰に巻くという独特の格好をしています。私達を出迎えてくれたオジサンもかなり派手な色のサロンを巻いてました。

もともとチャム族は、中部から南部という広い地域にわたって、チャンパ王国と呼ばれる独自の国を形成するほどに活躍していた民族でした。しかし14世紀ごろから、北部に住んでいたキン族が占めるベトナム国と対立が激化、攻撃を受けたチャンパ王国は徐々に衰退していき、現在の子孫は、山岳地帯やこの南部だけに住むようになったそうです。

船を下りて集落の入口を通ります。どうやらこの集落は観光名所らしく、村に入った瞬間にいきなり外国人の群集と遭遇です。チャム族の人達もそれに便乗して、手織りのサロンを客向けに販売しています。さらに店の隣では、村の女性が手織りの実演をしています。私は店の人に捕まってしまい、強制的にサロンを試着させられてしまいました。もちろん購入は丁重にお断りしましたけど。


手織りの実演

お店からさらに集落の奥へ入ると、この土地ならではの得意な建築物が見えてきます。高床式の住居です。この集落はメコン河沿いに形成されているため、雨季の時期になるとこの河沿いの一帯は大洪水が起きます。それによる床上浸水を避けるために、このように床を高くしているのだそうです。住居の柱には、どの高さまで水位が上がったかが白墨で明記されていました。すごいな、乾季に比べて2メートル以上も上がるのか。


高床式の住居
(この集落に限らず、河沿いの家は全てこの様式)

集落をぶらついてるとなんとモスクを発見しました。実はチャム族はイスラム教を信仰しているらしいです。ベトナムでイスラム教なんて珍しいですな。明確には分かっていませんが、一説ではこのイスラム教、マレーシアから伝来したのではないかと言われています。他のイスラム国と同様、毎日5回のお祈りを欠かさないそうです。

隣に小学校があるので、このモスクのあたりは子供達でいっぱいでした。外国人慣れしているだけあって、客がやってくると近づいて来て「ペンをくれ」攻撃です。これはもう観光地の場所であればどこでもお決まりの光景ですね。…でも考えてみれば、それはチャム族の昔からの生活様式が観光によってだんだん廃れ始めているということであり、ズカズカと上がり込む観光客の私からすれば、申し訳がないような気もしたのでした。


集落にあった立派なモスク

しばらく散策して、その後は、先ほどの手織りのサロンを売っていた店で休憩を取ることになります(気付かなかったけど、実は路上の喫茶店を兼ねてるらしい)。私とヘウさん、ボートの操縦士、そして手織りの実演をしているチャム族の女性と4人で歓談です。ところでこのヘウ氏、どうやら根っからの女好きのようで、可愛い子を見つけてはニヤニヤ顔で会話をし始めます。きのうの海鮮料理店でも、大勢スタッフがいる中で一番可愛い子とだけ会話をしていました。そしてこのチャム族の女性も、何ともきれいな顔立ちなので、ヘウ氏のしゃべりが炸裂であります。彼と彼女が対話するときにはベトナム語なので何をしゃべっているかは分からなかったですけど、雰囲気的に口説いていたように見えていたのは気のせいでしょうか?


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