§2  どたばたドライブ (ロンスエン)

朝6時、外のバイクの音で起こされます。ホテルのベランダから外を眺めると、すでに道路はバイクだらけでした。ベトナムの朝は早いですな。さっそく朝食をとりに外出です。前日とは異なる食堂でフォー・ボー(牛)を注文。前日のフォーとはやや麺が太めで、スープも辛めでしたが、こちらも負けず劣らず美味でした。

朝食後はまた街をぶらぶら。…しかしアレですね、ベトナムという国は本当に食堂やら屋台やらカフェやら、に関する店が多いですね。特に大通りをつなぐ小さな通りを歩いてみると分かります。10メートルおきに食べ物の店が見つかりますよ。

ベトナムコーヒーを飲んでみようということで、路上で経営しているカフェへ立ち寄ってみます。ここで、ミルク無しのアイスコーヒー(カフェ・ダー)を注文です。ベトナムコーヒーというのはドリップ方法が独特で、三層式のアルミ製フィルターを使います。コーヒーを注文すると、テーブルの前にこのフィルタ器具と氷入りグラスが出され、客はコーヒー液が全てドリップされるまでずっと待つことになります。ドリップが終わったら、適量の砂糖を入れ、それを氷入りグラスに流し込んで完成です(店によっては、すでに氷入りグラスに流し込まれたコーヒーが出される場合もあります)。豆の種類によって味が異なるので、ベトナムコーヒーがとんな味かという説明は一概にはできませんが、たいていは口に含んだ時に強い苦味を感じると思います。


独特なフィルター(左)でドリップし、
氷入りのグラス(右)に移し変える

ちなみに通常は、カフェ・ダーを頼むと、やや濃いコーヒーが出されます。ですからいきなり最初にそのコーヒーを飲んでしまうのではなく、溶けた氷によって少し液が薄まるまで、さらに待った方がいいとされています。わざと濃いコーヒー液を客の前に出すというのは、店でゆっくりとくつろぐことが習慣となっている、ベトナムならではの店側の配慮なのかもしれませんね。また、コーヒーを注文すると、たいていお茶がサービスとして付いてきます。お茶の入った小さなポットが1つのテーブルの前に丸ごと出されるので、何杯でも飲むことができます。そしてこのお茶を飲みながら、またゆっくりと時間を過ごすのです。私もしばらくの間、喫茶店でボーッとしてました。

8時ごろ、ホテルに戻ってチェックアウトです。さて、今日からいよいよ、メコンデルタの街へ向かいます。ホテル前でヘウさんと合流しますが……「あれ? ツアー客って私一人だけなんですか?」「ええ、そうなんですよ。このツアーに参加されるなんてなかなか珍しいですよぉ」「…そうですか、アハハハ」…どうやら私は結構マニアックなツアーを選択してしまったようですな。

それで今回のツアーというのはどんな旅程かといいますと、まずここホーチミンから、車で6時間ほど西に行ったところにある、カンボジア国境近くの街チャウドックに向かいます。ここで2日ほど滞在してから、次に4時間ほどかけて南下し、水上マーケットで有名なカントーで1泊です。そして最後に、以前私も行ったことのあるミトーでまたメコン川クルーズを楽しむという、4泊5日の濃い内容です。確かに、チャウドックに2泊もするというのはマニアックなのかもしれない…。

  
今回の旅行での訪問予定都市

参加者が一人なので、移動に使う車は普通のセダン車でした。私が後部座席に乗り込むと、ヘウさんとドライバーの他に、一人の若い女性が前部の助手席に座っていました。「彼女は誰ですか?」と私が聞くと、ヘウさんは照れながら、「実は私のなんですよ〜」と不可解発言です。…どうやら話によると、妹さんがたまたまホーチミンに所用で来ていたらしく、今から自分の家(ヘウさんの実家)があるロンスエンという街に帰るところなんだそうです。それで、一応ツアー用の移動車ではあるけれども、もし私がよければ、この車で彼女をロンスエンまで送らさせて欲しいということらしいです。一瞬たじろぎましたけど「構わないですよ」と私は了承です。ま、別に急ぐ旅じゃないしね。それに人数が多い方が会話も弾みそうだもの。……しかしそれにしても、会社の車をこれほど私的に使うというのもすごいもんだ。

さて、いよいよ出発です。まずは妹さんを送り届けるためにヘウさんの故郷、ロンスエンへ向かいます。ロンスエンは、最初の目的地であるチャウドックと同じ方向にあるため、ツアーのルートとしては遠回りはしないようです。ホーチミンから西へ車で約4時間の距離らしいので、そこまでずっと車を走らせます。車内ではドライバーさんのおすすめ(というよりは、ただ自分が好きなだけらしいけど)のベトナムのポップスを聞きながら、みんなでわいわいと会話してました。いよいよ私的度数がアップしてきましけど……でも楽しいから許すヨ。

都市を離れ、メコンデルタの街に近づくにつれて、風景がだいぶ変わってきました。水田地帯や果樹園が多くなり、道路沿いのお店でも果物を売る店が多く見られるようになってきました。途中のトイレ休憩では、路上の喫茶店に立ち寄り、そこで売ってたマンゴーをヘウさんにごちそうになります。甘くておいしいですね。


マンゴーだらけの店

さて、またしばらく走って、今度は昼食をとることになりました。メコン河の支流を渡る手前の小さな街で下車して、レストランに入ります。地元では最も人気があるという海鮮料理屋さんだそうです(…でもその割には客がいなかったですけど)。海鮮料理屋らしくイケスがたくさんあり、その中に食材となるたくさんの魚介類がいました。イケスの中にはも泳いでましたよ。へぇ、ベトナム人って亀も食べるんですね。

何が美味しいのか分からないので、注文はヘウさんに任せることにしました。それで注文したメニューは、牛肉と玉子のスープ、エビの網焼き、チンゲン菜の炒め物、イカの米粉揚げ、ライギョのヌックマム煮込み、魚のつみれ団子のスープなどです(←量が多くないか?)。どれも美味しかったですが、私が一番気に入ったのはライギョのヌックマム煮込みですね。ヌックマムというのは、ベトナムでは定番の魚醤のことです。この料理、見た目はグロテスクですが、ご飯のおかずには最高ですよ。

…そういえば、以前私が初めてベトナムに来たときは、「ベトナムの米はマズイなぁ」という印象を持ったことがあります。しかしながら最近では、必ずしもそうであるとは思わなくなってきました。理由の一つとして、当時は初めての海外旅行だったから、ということが挙げられるかもしれません。最初のベトナム旅行の後、他の国にも旅行してみて分かりました。とある国に比べればベトナムの米はよっぽどマシですよ。現に、ここのレストランで食べた米は、特にまずいという印象は持ちませんでした。確かに、慣れ親しんだ日本の米との違和感はいまだにありますけど、こちらの米だって慣れてくればどうってことないかなぁと思いましたね。

またヘウさんが言うには、ベトナムにも米の種類はたくさんあるので、一概にマズイとは言えないとのこと。それに、米を食べるのであれば、都市部よりも稲作がさかんなメコンデルタで食べた方が美味しいのだそうです。…なるほどねぇ。

さて昼食後は移動の続き。ヘウさんの実家であるロンスエンに到着です。ロンスエンはアンザン省の省都で、ハウザン(メコン後江)流域に作られた街です。「あっ、けっこう都会じゃないですか」と私が言うと、「そんなことないですよー、すごい田舎ですよー」とヘウさんは謙遜。そして、ここでとうとう妹さんとはお別れです。楽しい時間をどうもありがとうございました。お別れした後は3人で再び車を走らせます。


ずっと砂利道です

ロンスエンの街を出ると急に道路がアスファルトから砂利道に変わります。実はロンスエンから目的地のチャウドックまでの道は、現在は道路が工事中であるとのこと。通行止めというわけではないのですが、このデコボコ道を通らなければならないというハメになります。ううっ、こんな道があと70kmも続くというのはうんざりだなぁ。

このころから、私は睡魔が襲ってきたので居眠りをし始めてしまいます。………………で、目を覚ますと、なぜか車は砂利道沿いの小さなガソリンスタンド内で停車していました。そしてヘウさんとドライバーさんが、車の外に出ており、神妙な面持ちで車のエンジンを眺めているという、何だか異様な光景が目に飛び込んできました。

…??? 何だ? 何が起きた? 私も車の外に出て、何が起こったのかヘウさんに尋ねてみます。すると、「車が故障しちゃったみたいなんですよ〜」「…はぁっ!?」

どうやらロンスエンに来た辺りから、ドライバーさんがエンジンに違和感を感じた始めたらしく、さらに砂利道を走り始めたころから「こりゃちょっとまずいかも…」と危険を感じたようで、急遽ガソリンスタンドに立ち寄って、修理屋にみてもらうことにしたそうです。「そういうことなので、いのうえサン、ちょっと待っててもらえますか?」「うーん、まぁこればっかりは仕方ないですよね。いいですよ」。まあ、危険だと感じて停車したんだから仕方ないですけど、でもこんな辺鄙なところで足止めを食らうとはツイてないですな。

チャウドックまではまだ50qも先だそうです。はたして今日中に無事に着くのかねぇ…?


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