§3  山岳オアシス (マトラウィ、ミデス村、タメルザ村)

数十分ほど走って、車はマトラウィという街に入り、レザー・ルージュの出発駅に到着です。どうやら間に合ったようです。列車はすでにホームで待機状態でした。

レザー・ルージュとは赤いトカゲという意味だそうです。なるほど、全身が赤いですね。いかにも峡谷を走るのにマッチしたような雰囲気の内外装です。ドライバーは終着駅に先回りして待っていてくれるとのことなので、列車には我々3人だけで乗り込みます。列車内は日本人団体客やヨーロッパの観光客ですでに満席状態となっており、結局我々はデッキで立ち乗りすることになってしまいました。…そうか、ドライバーが急いでいたのにはこういう理由もあったわけですな。Tさんにも立ってもらうことになるとは申し訳ないことしましたけど、デッキの方が車窓がより広く見れるので、これはこれでよかったかもしれません。(←勝手なフォロー)


レザー・ルージュ


出発駅のマトラウィ駅

しばらくして発車です。石ころがゴロゴロと転がっている沙漠をガタゴトと横断していきます。この観光列車、セルジャ峡谷の写真を撮るのに適したパノラマスポットが途中で2ヶ所あるわけですが、そこでわざわざ停車してくれるんだそうです。

  

  
世界の車窓から (チュニジア・レザールージュ編)

まずは1ヶ所目のパノラマスポットに到着。ドでかい岩が2つに割れており、その間を泥の河が流れるという光景が飛び込んできました。


1ヶ所目のパノラマスポット

泥の河ってのは何とも不思議なものですね。何でこんな色してるんでしょうか? こういう細かいことに興味を持つ私としては、やっぱり今回のツアーはドライバーだけでなく、ガイドも雇っておいた方がよかったかもしれませんな。(帰国してから調べてみたところ、どうやら上流で、掘りだした鉱石を洗っているためにこんな色をしているそうです)


泥の河

列車は再び走り出し、峡谷の中を進んでいきます。周りはもう地表むき出しの赤茶けた岩山ばかりとなってきました。しばらく同じ光景が延々と続いていたので、ちょっと列車の中でも探索してみることにします。すると、最後部の車両では飲み物を販売していました。どうやら缶ビールも買えるそうです。チュニジアはイスラムの国なんですけど、お酒がたやすく飲めるというのは珍しいですね。そういえば前日いたチュニスでも、現地の人が普通にお酒を飲んでる光景を見かけました。ヨーロッパの影響が強いんでしょうか。まあ何にせよ、お酒が好きな私としては嬉しいものです。そんなわけで、缶ビール1本を即行購入。

2ヵ所目のパノラマスポットに到着。列車の右手にはまるで壁のような岩がドーンとそびえ立っていました。このスポットには写真を撮りやすい平らな場所が存在していたため、乗客はこぞって列車を降り、写真を撮り始めます。私もこの壮大なスケールの岩山に目を奪われて、何枚も撮っちゃいました。すごいです、あまりに壮大なスケールに列車もちっぽけに見えますね。


2ヵ所目のパノラマスポット


列車もちっぽけに見えます

列車はまた走り出して、終着駅のセルジャ駅に到着しました。これでレザー・ルージュの遊覧は終わりです。短い路線でしたけど、なかなか面白かったですよ。駅ではドライバーが待ってくれていました。再び4WDに乗って、今度はタメルザ峡谷に移動です。

しばらく移動してミデス村に到着。アルジェリアとの国境の村です。切り立った渓谷の上に集落が存在します。ここはチュニジアのグランドキャニオンとも呼ばれる峡谷の絶景が有名だそうです。おーっ、確かにこれはスゴイです。なんでしょうか、この独特な地層の模様は、まるでデニッシュみたいです。あまりにも深い谷なので、写真撮るときは足がすくみましたよ。

  
ミデス村の峡谷(圧倒的です)

この深い谷はアルジェリアまで続いています。この地域では何年も雨が降っていないため、現在谷底の河は涸れていますが、しかし降ったら降ったで、鉄砲水となって一気に流れてくるんだそうです。この地域で降らなくても、アルジェリア側で降れば、その被害を受けるのはチュニジア側のこの村らしいです。事実、1969年には長雨による洪水に見舞われ、この村は壊滅状態に陥ってしまったんだとか。うーん、この辺りの人たちはなんて大変な自然環境で暮らしているんでしょうか。

ところで、南部の地域では、まるでチョコフレークみたいな形の硬いモノが売られているのをよく見かけました。どうやらこの一帯で取れる砂漠のバラと呼ばれる鉱物らしいです。砂の中のわずかな水分が乾燥した地表付近で蒸発する際、溶けていた硫酸バリウムが結晶化することでできるそうです。どこのお店でも雑然と並べられて売られているところを見ると、それほど貴重なものでもないようです。しかも、まるでゴミを捨てるように、地面に放置されている場合もあります。だったらお店で買わなくても、転がっているのをパクっちゃえば済むような気がしますけど…?


砂漠のバラ

ちなみにTさんの奥さんは、このミデス村の売店でスカーフを購入してました。お店の人が上手に彼女の頭に巻いてくれます。なかなか似合ってすね、アラブ人みたいです。でも一度解いちゃったらもう自力では巻けないっぽいネ、結構テクニック要りそうだし。

車はタメルザ村に入ります。観光スポットに移動する前に昼食を取ることになりました。一応ツアーなので、昼食場所は決まっているようです。タメルザ・パレスというホテル内のレストランで取ることになります。レストランに入ってみると日本人だらけでびっくりです。ここではケバブなどを頂きました。羊料理なんて前回のレバノン旅行以来です。なかなか美味しかったです。ところで、このタメルザパレスの隣には、廃墟と化した石造りの建物がズラリと並んでました。集落のように見えます。ひょっとしてこの辺りも40年前の洪水の被害を受けたんでしょうか?

タメルザでは、グランド・カスカドと呼ばれる滝に行きました。いたって普通の滝ではありましたけど、これまで涸れた河ばかり見てきたので、新鮮な感じを受けますね。地元の人達でしょうか、水浴びを楽しんでます。いいなぁ、暑いから私も入りたいなぁ。


グランド・カスカド
(グランドといえるほど規模のデカイものではない)

滝もよかったですが、ここに棲息する生物にも興味を惹かれました。カエルがいっぱいいましたよ、カエルが! その他オタマジャクシやメダカらしき小魚もたくさん。生物の種類そのものは珍しいものではないんですけど、普段見かけない大きなカエルを久しぶりに見たことでテンション上がってしまいました。それは同時に、こういった当たり前であるはずの光景を見なくなってしまっている私の現在の生活に対する疑問というものも持ってしまったわけですが…。イヤ、これは多分私だけではないはずです。Tさんもやはり滝よりそちらの方に興味を持ってましたから、みんな同じだろうと思います。日本でもこのような光景はまだたくさん残っているはずです。普段の生活をしているときも、こんなふうに自然に触れてみるという行動はしてみた方がいいよなぁと感じたのでした。


すごいね、生命って

それにしても苛酷な環境ながら、いるところにはいるものですネ、こういった生物。生態系の根強さには驚かされます。アフリカ大陸は砂漠化が進んでいる地域の一つとして以前から問題になっています。この光景をいつまでも残せるようにするためには、我々個人レベルでは一体何ができるのでしょうか? このタメルザは、そういったことも改めて考えさせてくれる機会を与えてくれた場所でした。

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