§7  ひたむきに祈る (マドゥライ、カライックディ)

さて7日目の朝を迎えました。ゆうべ体調を崩したA君はまだ回復していない様子です。…というかむしろ悪化したらしく、夜中にを出したそうです。とりあえずA君の大事をとって外出せずに、ホテル内でしばらく滞在することにします。…でもやはりマドゥライの街中は一応散策しておこうということで、私とS君が交代で街中の観光とA君の看病を受け持つことで3人の意見が一致。それでまず最初は、私が一人で外出することにします。

ここマドゥライは、タミルナードゥ州第2の都市と言われ、南インド最大の寺院であるミナークシ寺院を中心として旧市街が広がっています。ガイドブックの地図で記されている道以外はほとんどが路地のような狭さで街全体が迷路のような感じになっています。路地が好きな私は、寺院へ向かうのにもわざとそのような狭い道を選んで歩いていくことにしました。…途中で道に迷ってしまいましたけどネ。

しばらくして街の中心であるミナークシ寺院に到着です。うわぁ、ここもまたスゴイや! 寺院を囲む正門(ゴプラム)は圧巻です! 他の寺院に負けず劣らずの繊細な装飾技術であり、何よりどこの寺院よりも巨大です。こんな高い門が東西南北に4つも作られているなんてすごいですねぇ。


ミナークシ寺院の巨大ゴプラム
(これは南門で他にも同じ門が3つある)

少々問題だったのは、この寺院の周りには客引きが多すぎるってことですね。リキシャーの客引きならともかく、「案内してやる」と自転車に乗って長時間付き纏われることもしばしばありました。とりあえず現時点では中に入らず、外観の写真だけを撮ってこの場を去ることに。

…しかしながら、逆にこの街はフレンドリーな人達でもいっぱいなんだなー、ということを同時に思わせてくれました。例えば路地を歩いているとき、前方から歩いてくる人が、すれ違いざまに私を見て「ハロー」とか「元気?」と声をかけてくれます。そして、別にそこで客引きを始めるわけでもなく、またすぐにその人は去っていくのです。へぇーッ、初見でもこんな気軽に挨拶してくれるんだなぁと嬉しく感じちゃいましたね。ホテルに帰る途中もチャイ屋さんに立ち寄ったのですが、そこに集まっていた現地の人達や店の人達とも気軽に会話ができましたよ(仲良くなったおかげで、その店でたばこを買った時に、売り物のマッチをサービスしてもらっちゃった♪)。

さて、一時ホテルに帰還。次はS君が外出するということで、私は部屋で寝込んでいるA君と居残ることにします。このとき、部屋にはテレビがあったのでチャンネルを探索してみると…「さすが南インド」といわんばかりにインド映画の専用チャンネルばかりです。なかには、日本で一躍有名になったラジニ・カントの作品も多数放送されていました。

夕方ごろ、A君が体調をある程度取り戻したようなので、改めて3人でミナークシ寺院へ向かいました。今度はちゃんと門をくぐって寺院の内部に入っていくことにします。靴を脱いで、まずは屋外の外周からくるりと一周です(ヒンズー教の寺院は裸足で入らなければならない)。そして中庭では、たくさんのヒンズー教徒でごったがえしています。どうやら礼拝が家族内での一つの楽しみとなっているようで、親子で寺院にやってきている人もいました。

寺院の中に入ってみると、大音量で音楽が流れており、所々には、ゴプラムと同様にきれいな装飾で作られた神像が設置されています。そしてそれに向かって熱心に信者の方々がお祈りをしていました。驚いたのは、まるでチベット仏教の五体投地を思わせるがごとく、おでこを地面に付けてまで祈っている人も見かけられたのです。手を合わせて拝む姿は今まで頻繁に見てきましたが、体で祈るという、何にもまして真剣なる姿などを実際に見たのは、これが初めてでしたね。

…それにしても、なぜ人はこれほどまでにひたむきに祈るのでしょう? そんなことを考えていると、その問いにA君はこう答えていました。「この国は貧困度と信仰度が比例しているのではないか」。つまり貧しい人ほど幸せでありたいと願うため、体を這ってまでもひたむきに祈り続けるのだということのようです。…うーん、苛酷な環境ほどより浸透するということですか。確かにそうかもしれないなぁ。でももしそうであるならば、これまでに述べたように、祈るだけでは当然ダメなような気がします。自らがそう動かなければ、何も変わらないと思いますよ。

まあでも、祈る理由はそれだけではなく、きっと他にもいろいろあるでしょうけどね。ヒンズー教徒の人達は、よき来世に生まれ変わりたいという観念を持っています。現世の環境の良し悪しに限らずに、その来世というものにこだわるのであれば、A君の考えは必ずしも正しいとは言えないかもしれませんな。

さて、辺りが暗くなってきたのでそろそろホテルに戻ります。ところで、このころから何だか私も頭がボーッとしてきて、咳が出始めました。…何だかまずい兆候だなぁ。A君の風邪でもうつっちゃったかなぁ? …でも夕食はきちんと食べることにします。A君はまだ食欲がわかないということで部屋に退却。S君と2人で、滞在ホテル内のレストランで食事となります。またチャパティ、ベジタブルカレーといった恒例のメニューを注文。そしてさらに、風邪気味になろうが飲みたいものは飲みたいということで、またビール(しかも大瓶)を1本ずつ頼んじゃいました。ちなみに酒を飲むということで、店の人がおつまみを出してくれたのですが、またもスパイシーでした。

インド滞在8日目。この日は、マドゥライ郊外で観光もせずにヌボーッと滞在してました。A君はもちろん、私もちょっと体調が悪くなりかけていたので、大事をとって休養することにしたのです。と言っても、別にホテルにチェックインして休んでたわけではなく、田舎駅のホームのベンチで、地元の人と一緒に1日中寝てました。カライックディという街にあるこのカライックディ駅、すごーく静かな所でしたよ。田舎の駅なのでそれほど列車も多く止まらず、そのせいかホームでは、ヤギやら牛やらが堂々と線路の上を歩いてました。のどかな光景ですねぇ。


カライックディ駅

で、そのまま夜を迎え、寝台列車に乗り込みます。翌朝6時には再び暑い暑いチェンナイに到着予定です。明日から最終日までの2日間はまたチェンナイで過ごすことにします。


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