§6  日の出を見よう (カニャークマリ)

6日目は早めに5時半起床です。日の出の時間は6時15分と聞いていたのですぐに外出です。まだ外が暗い中を歩いて、日の出が見える海岸(沐浴場)へ向かいます。

すでに海岸では、日の出を待つ現地の人たちでいっぱいでした。なかには、巡礼で遠地からやって来たヒンズー教徒の人たちもいました。さらには、私たちのような外国人観光客までいっぱいです。昼間あんなに閑散としてたのに一体どこに隠れてたんだアンタら? …それで当然、これに便乗してくるみやげ物屋や、お茶・コーヒー屋も店を構えています。せっかくだから、コーヒーを一杯もらってゆっくり日の出を待つことにします。

日の出の時間が近づいてきたようで、東の空が明るくなってきました。海面もだんだんきらきらと輝き始めています。海の向こうでは、地元の漁師たちが漁をしているらしく、漁船が点々となって並んでいました。

太陽が顔を見せ始めました。昨日の日没とは違って、雲が少ないからきれいにみることができます。おぉーっ! こういう日の出の瞬間なんてのは普段見ないだけに、すごく美しく見えちゃいますね! あまりのきれいさにあちこちから歓声が沸き起こっていました。またある一方では、ヒンズー教徒の方々は熱心に手を合わせ、太陽に向かって拝んでいました。…どちらかというと、私は日の出よりも、こちらの人々が祈る光景の方を頻繁に見てました。私たちにとっては当たり前の物理的存在である太陽に対して、神聖な存在として祈りを捧げる姿というのは、見てると何だかこっちまで心が洗われるような気がしますね。

  
太陽が顔を出したとき、人々は拝み始める

太陽が雲で欠けることなく完全に昇りきったとき、沐浴場では沐浴が始まりました(海だからほとんど海水浴と言ってもいいのかも…)。足のつま先から頭のてっぺんまで、きれいに3回水で清めてから、教徒は寺院に向かうようです。なかには親子連れで沐浴をしてる姿も少なくありませんでした。


朝日を望みながら沐浴

日の出の瞬間が終了したということで、海岸に集まっていたみんなは、その場をあとにしてぞろぞろと自分たちの家に帰って行きました。賑やかなひとときは終わり、またこれから穏やかな1日が始まろうとしています。…なんだか不思議ですね。こんな聖地ってのもアリなんですね。

さて私たちは朝食をとりに、昨日とは違う大衆食堂へ向かいました。最近はチャパティばっかりだったので、今回はプーリとワディ、そしてこの旅で初めてのイドゥリを注文です。イドゥリとは米と豆の粉で作った生地を発酵させて作る白い蒸しパンのことを示します。見た目はまんじゅうみたいな丸い形をしています。これも他の主食と同様にカレー(特に豆をベースにして作ったカレー)につけて食べるようです。なかなかおいしかったですよ。

朝食後はまた街中をぶらつきます。砂浜に行ってみると、さきほど漁を終えた漁師たちが、獲れた魚をさっそく売買していました。きっと安く売ってくれているんでしょうか、一部では「こっちにも」「こっちにも」と客が漁師と魚を取り囲み、暴動みたいな騒ぎになってました。なーんだ、穏やかな街だと思ってたら、こんな一面もあったんですな。

  
日の出のときと同じくらいに人が集まっていました


じっくりと値段交渉をする人も…

メインロードを外れて漁師の家族が住んでいると思われる所を歩いてみます。ここは先ほどの砂浜とはうって変わって静寂に満ちていました。道の上は、漁で使った網を乾かしているらしく、茶色で埋め尽くされていました。踏んじゃいけないなと思って、網を避けながら私が歩いていると、地元の子供たちは堂々と網を踏みながら「アハハ」と私を笑っていました。こっちも思わず照れ笑いで返したり。


道の上は網だらけ


穏やかに時が流れる

  

  
路地を歩いていると、現地の人達の生活が観察できる

ひととおり歩いた後は、また砂浜でボーッと座って日光浴してました。昼ごろになると、また現地の老若男女が関係なく海岸に集まりだし、昨日みたく水遊びをしたり、追っかけっこをしたりと、遊びに徹していたのでした…。

この街の人達の1日を見てると、早朝に漁をして、獲れた魚を売り、網を補修・乾燥させたら今日の仕事はおしまい、それ以降は海岸近くでボーッと座ってたり、水遊びをしてたりするのです。なーんかすごいゆったりしていていいなぁとも思うんですが、でも逆に考えれば、こういう生活をしているのだから、この国が貧富の差を生み出すのも仕方ないのかなという感じもしてきますね。当然、ゆったりと生きることにも限度があって、その一線を超えてしまうと、こういう現状に陥ってしまうのではないでしょうか? この街(あるいはこの国)の人たちは、良く言えば、貧しいけれど自然に全てをまかせ、心静かな状態を守る生き方をしています。しかし一方、悪く言えば、ゆったりしすぎていることで向上心を失いかけているような気もします。そのヒマな時間をさらに他の労働などに費やそうとすることで、ひょっとすれば、自国の問題改善にも繋げられるかもしれないのに…。

…さて、私が砂浜でくつろいでいると、一人の日本人旅行者を発見しました。一人旅で寂しかったのでしょうか、向こうから気軽に声をかけてくれました。彼の名前はケイジさんという大学生の方で、夏休みを利用して旅行をしているとのこと。話を聞いてみると、今回が初めての海外旅行で、しかもそれが40日間でインドを一周する一人旅だというのですから脱帽です! ひえ〜っ、度胸あるなぁ! 私も日本人と会うのは久しぶりということで、しばらく砂浜でA君と私と彼の3人で、お互いのインド旅での体験について談笑してました。

実はケイジさんも、インド人の向上心の欠落については指摘をしていました。「例えばある商品の小売店があるとして、それがこの国では同じ商品を売る店が何軒も隣接して営業をしていることが多い。その場合に、お互いがライバル意識を持とうとせずにのんびりと店を構えているのはちょっとおかしい。だから国自体が向上しないのではないのか。」と言っていました。…確かに言われてみればそうですよね。この街の写真屋さんも、3軒が隣接して営業していて、それでいてお互いが客を引き寄せようという努力を全然していないですもんね。このような態度でありながら豊かでありたいと願うのはさもしい了見と言えるでしょう。…そう考えると、観光客にとってはうっとうしいリキシャー等の客引きなんてのは、稼ごうと必死になっている分、まだマシな方なのかもしれませんね。(…ただやっぱり、ぼったくり行為なんてのをするからイヤなんですけど)

この街を発つ時間になったそうなので、ケイジさんとはここでお別れ。私たちも夕方頃に次の街へ向かう予定なので、準備のためにホテルに戻ります。そして近くのレストランで遅い昼食を取ったあと、駅へ向かって、16時発のマドゥライ行きの列車に乗車です。

今回、このカニャークマリに2日にわたって滞在してみたのですが、私は非常にこの街が気に入りましたね。…まあ、考えなければいけない問題などは多々あるかもしれませんが、少なくとも私たちのような旅行者にとっては、ゆったりくつろげる所でよかったと思います。もし喧騒に満ちた場所に飽きたときには、こういった所を訪れてみるのもまたいいかもしれません。旅行者にとってのくつろぎの場所なんてものは、別にリゾート地でなくてもこういうところで十分なんですよね。私の中では、また来てみたい街の一つにエントリーですな。

次のマドゥライという都市はカニャークマリより北東240kmのところにあります。5時間ほど列車に揺られて到着です。…さて、このころから、A君が体調を崩し始めました。どうやらゆうべ泊まった部屋が寒かったらしく、風邪をひいてしまったとか。そんなわけですぐにホテルの手配をしてA君を寝かしつけることにします。で、私とS君はというと、A君を放ったらかしにしたまま、ホテル近くのインターネットカフェでしばらくネットサーフィンを敢行、そして11時ごろ部屋に戻って就寝です。……A君、申し訳ない。


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