§5  最南端へ (カニャークマリ)

目が覚めたとたん、トイレに直行です。やべっ、下痢の症状だ! …うーん、昨日までの食べ過ぎや飲み過ぎがたたったかなぁ。まだ旅程は半分以上あるんですから、これからは少々抑えていかないといけませんネ。それで、朝食はホテル近くの食堂へ行ったのですが、このような事態になったものですから、ここではカレー等は避けてトーストとチャイで済ますことにします。

午前中は朝のトリヴァンドラムを楽しむために、また3人で街中を散策です。マハトマ・ガンジー・ロードでは、もうすでにリキシャーやバスがけたたましく走っていました。朝の場合も同様に、やかましいのはこの通りだけで、少し道を外れるとすぐに静かな街並みに変わってしまいます。…面白いなぁここ。

さて、そろそろ次の街への出発の時間になったので、ホテルをチェックアウトして駅に向かいます。次の目的地は、いよいよインド亜大陸最南端の街であるカニャ−クマリです。実はこの街こそ、他の2人を説得してまで私が一番行ってみたかった所なのです。特に観光するような場所ではないのですが、ガイドブックに掲載されていた朝焼けの写真、沐浴の写真、海で遊んでる写真、日の出に向かってお祈りをする人々の写真などを見てたら、何だか無性に行ってみたくなっちゃったんです。11時半発のカニャークマリ行きの列車に乗車して、いざ出発です。

トリヴァンドラムからカニャークマリまでは100km弱の距離。その間は、また車窓からの風景を大いに楽しみます。……ところがここでちょっとしたトラブルが発生です。この列車、カニャークマリの直前の駅で停車したのですが、それ以降、数十分経っても全然動かない状態になってしまったのです。「あれっ? なんか事故でも起きたのかな?」と3人とも困惑状態です。それからまたしばらく待ってみたのですが、それでも全然動かないので、仕方なくその駅のホームに一度降りて駅員さんに尋ねてみます。すると、「今乗ってるこの列車は、急きょカニャークマリには行かなくなった。あきらめろ」と言ってきやがります。…オイオイいきなり何言ってんだアンタ! 「急に行かなくなった」ってなんだよソレ? こんな所で降ろされてどうしろってんだコラ!

でもどうやら、代わりの列車を反対側のホームに用意してあるということらしいので、そちらに乗るよう指示をされます。何だか納得いかないながらも3人はそちらの列車に乗り換えです。…まあいいや、何にせよ、これでトラブルは解消できたわけだ。もうすぐ、あと数分でカニャークマリだ〜っ! …ところがその直後、駅員さんがやってきてこう言い放ちました。「出発は30分後だ」。 ………。

でも現地の人たちは、そういったトラブルがあったにも関わらず、いつものようにのほほーんとしてます。出発がさらに30分延びたことで、これをチャンスと思ったのか、駅のホームで洗濯をし始める者も出てきました。…どうやらこんなトラブルは日常茶飯事なので、みんな慣れてしまっているようです。うーむ、さすがインド。

午後3時ごろ、ようやく最南端のカニャークマリに到着です。100km弱の距離で3時間以上も費やすなんてスゴイ乗り物だなぁ、と皮肉をこぼしながら下車です。駅の外に出てみると、そこはかなり閑散としていました。バクシーシ攻撃をする子供が2人いるくらいで、客引きのリキシャーもたった1台だけというガラガラの状態です。車内で会った駅員さんは「駅ではスリが多いから気をつけろ」と言ってましたが、スリどころか人そのものがいないですヨ。雨季でシーズンオフだから、観光客もこんな所には来ないんですかね?


これでもメインロード

しばらく南へ歩いていくと、きれいな海岸が見えてくると同時に、ようやく人の気配も感じられるようになりました。さらに海岸沿いの路地を歩いていくと、大きな砂浜に到着です。どうやらここは漁業が盛んであるらしく、漁を終えた漁師のみなさんが、砂浜で網の補修作業をしていました。


のどかな漁村といった感じ

砂浜を通り過ごしてさらに南の方へ進むと、クマリ寺院と呼ばれるヒンズー教徒の寺院にたどりつきました。この辺りまで来るとようやくこの街の活気を感じ取ることができます(…それでもこれまでの街と比べたら全然規模が小さいですけどね)。ここで寺院近くの適当なホテルにチェックイン、そして荷物を置いてまた外出です。

クマリ寺院には外国人は入れないらしいので、その寺院の裏の方へ歩いていくことにします。するとそこには沐浴場がありました。沐浴場といってもそれは池や河ではありません。海水がそのままその沐浴場に流れて来ているので、この場合、海で沐浴をするということになっているようなのです。…へぇ〜っ、海岸で沐浴なんて初めて聞くなぁ。まあ確かに、そもそも沐浴というものは身を清めるための行為であるので、海でも河でも、どこでやってもいいのでしょうけど…はじめて見る者にとっては何だか不思議な感じがしますね。

沐浴場のすぐ近くにはまた砂浜がありました。ガイドブックによると、ここが日の出がきれいに見えるスポットのようですね。明日は早起きしてここに来なければなりませんな。

実はこのカニャークマリという街、ヒンズー教の聖地の一つとされている街です。ここの海岸はアラビア海、インド洋、ベンガル湾の3つの海が1つに合する地点であるらしく、そのことから貴重な場所とされているのです。またここは大陸の最南端ですから、太陽が海から昇り、海に沈むという両方の光景を見ることができるインド唯一の場所でもあります。太陽を重要視しているヒンズー教徒にとってはこれほど神聖な土地はないわけなのです。

そうであるからこそ、私はその太陽が昇る光景をぜひ見ておきたいと思うのです。朝焼けの美しさももちろん見たいですが、それと同時に、ヒンズー教徒の方々が、真っ赤な朝日に照らされながら、神聖なるものに向かって、手を合わせ、祈るその姿…これについても私は目に焼き付けておきたいのです。なかなかこういうのは普段見れないですからね。

さてこの砂浜、現地の人たちの間では唯一の憩いの場とされているようで、親子が水遊びをしていたり、若い人たちが岩場に登っておしゃべりをしていたり…などといった光景を見ることができました。なかには、中年のオジサンたちまでもが砂浜で鬼ごっこをしてる始末です。真っ昼間から、いい年こいた連中が何やってるんだ? 仕事しろよ仕事! ……と最初は思っちゃいましたが、時間が経つに連れてだんだん慣れてきて、しまいには私も現地の人たちに合わせ、しばらく砂浜に寝転んでボーっとしてました。「こんなに落ち着いた気分でいるのはいつ以来だろうなぁ」、などと黄昏の気分になっちゃったりもして…。

  
みんな遊んでます

時刻は夕方ごろになり、日没の時間が迫ってきました。すると現地の人たちはみんな砂浜から移動して西の方へ歩き始めました。どうやらおすすめの日没の展望場所があるようです。というわけで、私たちもその人たちについて行ってみることにしました。

…ところが、この展望場所ってのがまたとんでもない所にあったんですよ。近道をするには、どこかの家の裏庭を通らないといけないらしく、さらにイバラみたいな植物でできた、未舗装の道の上を歩かないといけないのです(草のトゲで足をちょっとケガしちまったじゃねーか)。こんな道を2kmくらい歩きました。しばらくすると、小高い丘が無数に並ぶ場所に到着です。ここで現地のみんなと日没を拝むことになったのですが…残念ながら、今日は雲が多くてきれいな日没が見れませんでした。なんだよー、せっかく足をケガしてまで来たのにぃ。ついてないよ。…でもせっかく来たのでとりあえず写真をパシャパシャ撮っておきました(←後日現像したら、予想通りあまりきれいに映ってなかったんですけどね)。

すっかり暗くなってしまいました。またあのイバラの道を通らなきゃいけないのかと思ってたのですが、現地の人によると、近道をしないんであればアスファルトの道がちゃんと近くにあるらしいです(最初からそれを言えっての)。また現地の人たちの同行を頼りにホテル方向へ帰ります。通ってきた道は真っ暗でしたが、ホテル近くではまだ店が開いてて賑わいを見せていました。

夕食はそんな賑わっている中でのレストランでとることにします。ここで、この旅初めての本場タンドーリ・チキンを食べることに(160ルピー)。見た目は真っ赤で辛そうでしたが、店の人が気を利かせてくれたのか、マイルドな味に作ってくれたのでおいしかったですよ。…ちなみにS君は店の人にチキンを作ってるところを見せてもらっていました。素早い手つきに感動したとか。

夕食後はホテルに帰ります。明日は早くから日の出を見ようと思うので、今夜はすぐに就寝です。…明日は今日みたいに曇ってなければいいんだけどなぁ。


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