§3  ファッショナブル (マイソール、バンガロール)

6時ごろ起床。すぐにA君とまたマイソールの街をぶらつくことにします。「朝っぱらからまた歩くの?」と思われるかもしれませんが、喧騒に満ちた街というのは朝と夜とで全然違うものだと思ってますからね。朝と夜の両方歩いてこそ、その街の特性が見えてくるんじゃないでしょうか。(ちなみにS君はまだ寝ていたいそうなので居残りです)


スクエア近辺(朝は静かです)

ホテルを出ると、もうすでにこの時間から外はやかましいです。ゆうべたくさんの店が並んでいたマイソール・ガンジー・スクエアにまた行ってみることにします。…ところがこの場所、ゆうべとは全然雰囲気が違って殺風景です。まったく人がいません。車もほとんど通っていないのです。一応何か、インドの音楽らしき曲は大音量で流れているのですが、誰もいないので一体何のために流しているのかよく分かりません。

でもスクエアを抜けて、しばらく先を歩いて行くとだんだん人が多くなってきました。そしてさらに、周囲が柵やら壁やらで囲まれている路地裏を見つけて、なんだろうと思って入っていくと、そこではなんと朝市をやっていました。細い路地に沿って、野菜、香辛料、果物、染料を売る店がごったがえしています。おーっいいねぇ、こういうゴミゴミとした市民のバザールって大好き! 特に今週は、ヒンズー教の神様の一人であるガネーシャ神の誕生祭が行われるという記念的な週なんだそうです。そのため、食物の店のほかに、献花するための花を売るお店やガネーシャ神の像もたくさん売られていました。特に花売りの店の前ではせりが行われており、路地という狭い通路にも関わらず、何人もの人たちがもみくちゃになって値段交渉していました。もう押すわ押すわでなんだか乱闘気味。通行人がいるというのに全くどく気配なしです。でもこういう活気が私たちにとっては刺激的で、しばらくこの市場内をウロウロしてました。…しかし柵で囲まれている路地裏の市場なんて初めて見ましたね。宮殿のような神秘的な雰囲気とは一線を敷くというような意味合いなのでしょうか?

  
ディバーラージ・マーケットとその周辺
(花を売っている店が多い)

しばらくしてS君と合流し、近くの大衆食堂で朝食を取ることにします。ここはノンヴェジの食堂ということなので、せっかくだから肉入りのカレーを注文です。どういうことかといいますと、実はインドのレストランにはヴェジ(ヴェジタリアン)ノンヴェジ(ノン・ヴェジタリアン)の2種類があり、宗教的な理由で肉類を食べない人(例えばヒンズー教徒)はヴェジ専用のレストランへ、一方の肉類を食べることに制限のない人(外国人を含むその他の宗教の人)はノンヴェジ専用のレストランへ行くのが普通なのです。…この区別は思ったよりもかなり厳格なものであり、各レストランは自分の店がヴェジ専用であるかノンヴェジ専用であるかを、看板の表記等で明確にしておかなくてはなりません。もし、ヴェジとノンヴェジ兼用で営業をするのであれば、メニューはきちんと分けておく必要があります。しかもヴェジタリアンの中には、ノンヴェジとの同席を拒む人が多いため、店側にはそのような配慮も求められるのです。宗教に疎い私たちにはまったくもって考えられないことですね。

それで私たちはといえば、マトンカレーをチャパティと一緒に注文することにしました(25ルピー)。マトンカレーというと私自身、あまりなじみがないカレーなんですが、インドではノンヴェジの定番メニューなんだそうです。運ばれてきたカレーの中にはでかいマトンが1つ骨ごとはいっています。これがまたでかい! 朝からこんなモノ食うなんて、私の胃腸はこれから先、大丈夫なのかなぁ?

そういえば、まだインドに来てからチャイを飲んでいなかったのでそれも注文することにします。チャイというのは甘い甘いミルクティーのことで、インドの大衆的飲み物です。甘いのはやや苦手な私も、なぜこれだとすんなり飲めちゃうのでしょうね? おいしーぃ。

さて、そろそろ次の街に行くための列車が出発するということなので、マイソールをあとにすることにします。…もう1日くらい滞在しても良かったくらいの魅力的な街だったのですが、すでに切符を買っていたので、惜しみながら駅に向かいます。このマイソールという街、宮殿や教会という神秘的な感じと、それを取り巻く現地の人達の人間くささとがいいバランスを保っているようで、私の中ではぶらつくのにおすすめの場所でした。今度また来る機会があれば、そのときは長く滞在してみたいですね。

それで、これからインドの南西部に向かう予定なのですが、実は時間や路線の都合上、いったんマイソールよりも東(チェンナイ方向)のバンガロールというところまで戻って、そこから乗り換えなければならないのです。というわけで、バンガロール行きの列車に乗車です。

2時間半ほどかけてバンガロールに到着。ここはマイソールと同様、デカン高原南方の都市であり、南インドの中でチェンナイの次に大規模な都市と言われています。実際の南西部行きの乗り換え列車まではまだ時間があるので、改札をおりてバンガロールの街中をぶらついてみることに。確かにこの街は大都市のようですね。駅の構内もデカけりゃ、路線バスのターミナルも巨大です。


バンガロール駅前

実際の街の中心部は駅から4km先らしいのでそちらへ徒歩で向かいます(途中で道に迷ってしまったので実際は6kmほど)。中心部に近づくにつれて、駅前よりも雰囲気がさらに賑やかになってきました。なんだか今まで見たインドの街並とは大違いです。一言でいうなら「若者が集う流行の街」といった感じでしょうか。通りのお店も欧米からやってきたブランドの店が多く、そこへ足を運ぶのは若い人達ばかりです。驚きだったのがその人達のファッションですよ。同じインド人でありながらも民族衣装のサリーを着ている人は少なく、Tシャツにジーンズというカジュアルな服装ばかりであり、まるで欧米人が歩いているみたいでした(私たち旅行者の方がよっぽど貧相な格好をしてたりして…)。なんだか私が思っていたインドのイメージとは全然違う雰囲気だったので、これはかなり不思議な光景でした。やっぱりインドも都市の近代化は着々と進んでいたんですね。変な固定観念を持っていて失礼しました。


バンガロール中心部

ちなみにこのバンガロールは、インド人にも大人気の街だそうで、生活の快適さを求めて北から南からこの街へやって来るらしいです。確かに、この街は気候も涼しいし、物流も進んでいるのでいろんなものが手に入ります。住むには最適な場所でしょうね。ただ私たち旅行者にとっては、特に観光をする街ではなさそうのですぐに飽きちゃうかもしれません。…まあ、映画が好きな人だったら不自由はしないでしょうけど。


南インドはインド映画の中心
だからバンガロールにも映画館がたくさんある

ここで、インドのファーストフードがどんなものかを一度試しておきたいという案が出たので、昼食として、KFC(インド・バンガロール支店?)に立ち寄ります。やはりファーストフードであってもここはインド、メニューはきっちりヴェジノンヴェジに分かれていました(←でもヴェジタリアンがわざわざチキンの店に来店するとは思えないですけどネ)。ここで私はノンヴェジメニューからハンバーガーとチキンのセットを注文です(89ルピー)。私には味の違いはよく分からなかったんですが、ファーストフードフリークのA君によれば、日本のKFCよりもおいしかったらしいです。←でもそれは支店によるでしょ。

食後は街中でショッピングです。買い物をしていて気付いたんですが、インド人の話す英語というのは、まぁ聞き取りにくいったらありゃしませんね。私の英語の能力不足もあるかもしれませんが、英語が得意と豪語する友人達でさえ「分かりにくい」と言うんですから、これはもう私のせいだけじゃないでしょう。何よりも私が印象的だったのが独特の発音ですね。よく現地の人から、インドへ来た目的に関しての質問として、「お仕事のために来てるの?」と尋ねられることがあります。これは英語に訳すと「for working?」になりますよね。発音すると、「フォー ワーキング?」ですが、なぜかインド人が話す英語は、母音の後のサイレントを発音してしまう傾向があるため、インド人が発音すると(この場合、母音の後の r が発音されて)「フォル ワルキング?」となってしまうのです。ですから最初この言葉を聞いたときは、何言ってるのか全然分かりませんでしたよ。「…なんだよ、ワルキングって?」 ……まるでインド方言というべきこの英語、習得するにはかなり時間がかかりそうですな。

時刻は夜8時ごろ。そろそろ乗り換えの列車が出発するということでバンガロール駅に直行。夕食用の弁当を購入して南西部(ケララ州)行きの列車に乗車です。今回も乗る列車は寝台列車ですが、グレードはおとといよりも1級低いヤツです。そのせいか、前回は2段ベッドだったんですが、今回は3段ベッドですよ。おかげで天井が低すぎます。ですから一度ベッドを組み立ててしまうと、あとは単に座ることさえもできず、まだ眠くもないのに横にならざるを得なくなります。それでまた早くも車内の電気を消されたので、本を読むこともできずに、ずっと真っ暗な中で目をパチクリパチクリさせてました。実際に就寝した時刻は……あんまり憶えとらん。


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