§1  酷暑の地 (チェンナイ)

今回は一人旅ではなく、友人と3人での旅行となりました。しかも今までのようなツアーではなく、初めての個人旅行なのでワクワクです。でもその反面、一人旅ばかりしてきた私にとって、みんなとうまく適応していけるか不安ではありますけどネ。それでどこの国へ行こうかについて数ヶ月前から議論してきたのですが、これがまたモメにモメました。モロッコから始まり、オーストラリア、トルコ、ミャンマー、マレーシアとどんどん意見が変わってきて、結局インドに行こうということに落ち着いたわけです。今から思えば、なぜインドに決定したのかよく憶えていません。

さらにインドのどのあたりに行くのかということについても話し合った結果、南インドに行くことになりました。普通インドといえば、タージ・マハルガンジス河での沐浴なんてのを思い浮かべますが、それはみな全て北インドのことであり、一方の南インドについては、私達もそこに何があるのかサッパリ分かりません。…なぜそんな所に行くことになったのか、これもあんまりよく憶えてないんですよ。おそらく「南インドの人達は北インドの人達よりも穏やかだ」という勝手な噂を鵜呑みにして、「じゃあトラブルなんかにはあんまり巻き込まれないで済むんじゃねーか」という安易な発想をしたんだと思います。相変わらず適当ですね。

今回の旅行のメンバーはA君とS君と私の3人です。旅行当日は早朝から一緒に名古屋空港へ、そこからマレーシア航空の便に搭乗して、まずは乗り継ぎ地であるマレーシアのクアラルンプール国際空港(KLIA)に到着です。

KLIAのシャトル乗り場付近で乗り継ぎ便を待っているとき、ある中年の女性バックパッカーに出会いました。彼女はインドに何回か旅行経験をもっているらしく、私達がそこへ行くということでいろいろアドバイスをくれました。でも彼女は、S君の顔を見るなり「君は騙されそうな顔をしている」だとか、「インドでは必ずと言っていいほど下痢になる」だとか…ほとんどアドバイスというより脅してるだけでした。でも私達はその話を思いっきり信じ込んで、「うわっ、インドって怖え〜」と同調しちゃってましたけどネ。

……オバちゃんの話は搭乗時間間際になってもまだ続きます。テンションがだんだん高くなってきたのか、「アタシは風呂に入るときとレイプに遭うとき以外は、クレジットカードは絶えずブラジャーの中に隠しておくのよ」とまで発言してました。←オイオイ、それは自分が以前レイプに遭ったってことか?

夜11時過ぎの乗り継ぎ便に搭乗。どうやら機内で日本人は私達だけで、他はインド出身と思われる方ばっかりです。「あーインドに行くんだなー」という実感がだんだん大きくなってきました。4時間半のフライトを経て、深夜0時過ぎにチェンナイ(旧マドラス)チェンナイ国際空港に到着です。「深夜のインドの空港は怖いから気をつけろ」ということを以前から言われてましたが、いざ空港の外に出て見ると、出迎えの人がちらほらいるだけで閑散としておりました。あれぇ? デリーではなくてチェンナイだとやっぱりこんなものなのかなぁ?

ここで、私達の出迎えに来てる人を探して合流です。…実は、深夜に到着してそれからホテルを探すというのは、時間的にも安全の面でも困難であろうということで、1夜目のホテルだけはあらかじめ日本から送迎付きで予約を入れていたのです。空港からホテルの車で30分ほど走って、チェンナイ市街のホテルに到着。もう夜も更けているので本日はどこにも外出しないでそのまま3時ごろに就寝です。

で、翌日は8時ごろ起床。さっそく街をぶらつこうということで、ホテルで朝食を取った後はすぐに外出です。平日の朝なので道路はオートリキシャーをはじめ、たくさんの車がクラクションをやかましく鳴らしながら走っていました。その脇の歩道では、フルーツなどを売っている小さな屋台、何をするわけでもなくボーッと路上で寝転んで煙草をふかしている人、私達日本人を見つけてすぐにバクシーシ(恵んで)攻撃を仕掛けてくる物乞いなどで溢れかえっていました。私以外の2人はこの光景にややビビっているようでしたが……イヤイヤ私にしてみれば、この混沌とした雰囲気が、いつもながら面白くてたまりませんよ。


ホテル近辺 (黄色い車がオートリキシャー)

しばらく歩いてチェンナイ中央駅に到着。チェンナイ以外の街にも行ってみたいので、ここであらかじめ列車の予約をすることにしたのです。…しかしこの時点で、具体的にどこの街へ行くのかということはまだ全然決めていませんでした。そこで急きょ列車の時刻表を購入し、それを片手に3人が駅の中でミーティングを開始です。周りの大勢のインド人から奇特な目で見つめられる中、「ここにしよう」「イヤ、ここはやめよう」などという熱い議論を交わしてました。

そこで決定した今回の旅のルート。まずはここチェンナイから内陸部(カルナータカ州南部)の高原都市へ向かいます。そこからは途中で街に立ち寄りながら西海岸(ケララ州)の路線を辿って、インド亜大陸最南端のカニャークマリまで行きます。そして最後は東海岸(タミルナードゥ州)の都市を通ってチェンナイに戻ってくるという、簡単に言うと南インドを小さく一周するというものでした。……この結論に至るまでに実に4時間もかかってしまいましたよ。予約を受け付ける係の人も相当待ちくたびれていたようでした(…というかちょっと怒ってました)。

  
今回の旅行での訪問予定都市

無事に列車の予約が完了したので、軽い昼食をとり、その後はまたチェンナイ市内をぶらつきます。そういえば、現時点で私はまだインドのお金を持っていませんでした。そこで両替商を探すことに。中央駅以南の道を歩いていきます。

…それにしてもこの街は暑い! 実はインド4大都市の1つといわれるこのチェンナイは、年間の最高気温が30℃を下回ることがあまりないそうなんです。これじゃあ日本の夏とあんまり変わんないですね。もう3人とも汗だくですよ。さらに私は熱中症の初期症状みたいに頭がだんだんボーッとしてきました。チェンナイの空気の汚さも相乗して歩くだけで疲労困憊です。常に水分を取り続けないと、とてもじゃないけど外をぶらつくことさえできませんな。でも聞いたところによると、これでも暑さは十分に和らいだ方で、もし6月に私達がこの地に来ていたら40℃を軽く超える炎天下の中を観光しないといけないハメになってたとか。…オイオイ、都市部の気候とは思えないネ。

で、ようやく両替商を見つけたので、さっそくインドの通貨「ルピー」に両替です。今回は旅行の日程が普段よりも長いので多めに200ドルを提示、両替後は9260ルピーとなりました。インドの紙幣は500ルピーが上限なので、紙幣の数は20枚以上に上りました。しかも500ルピー紙幣なんてのはあまり世間では流通していないらしいので(通常500ルピー紙幣で物を買っても「おつりがない」と言われてしまう)、そこからさらに小さいルピー紙幣に両替しなければなりません。結局、財布の中の紙幣の数は莫大なものになってしまってました。(旅行当時の為替:1ルピー=2.8円)

両替後はさらに南の方へ歩いていきます。するとアンナ・サライ通りと呼ばれる大きな通りに出ました。暑さによる体力消耗は限界に来ていたのでクーラーの効いてる涼しいところへ行こうということになり、流行の店がたくさん入っているらしいチェンナイ随一の大型ショッピングモール「スペンサー・プラザ」へ向かいます。

  
アンナ・サライ通り (スペンサー・プラザ付近)

中に入ってみると、あ〜涼しい〜ッ! 私達と同じように現地の人達や外国人観光客も涼しさを求めてここでたむろってました。このショッピングモール、今まで私達が歩いてきたチェンナイの街並みとは大違いで、有名なブランドショップ、ファーストフード店、その他ゲームセンターやインターネットカフェ、スーパーマーケットなどのテナントが揃っています。どうやらインドの流行の最先端を担っているようで、若い人達でいっぱいでした。ここに来て初めてきれいな女性をたくさん発見できたので、3人とももう興奮状態でしたよ(…イエ、別に変な下心はないです)。…しかしこういう賑やかな明るい所でも、やはりこの国の陰の部分は鮮明に外に表れているようです。トイレでは白昼堂々と麻薬の売買がされているみたいでした。

スペンサー・プラザでは夕方までずっとショッピングをしてました。そして日が完全に沈んだころ、夕食を取るために付近の食堂を探索です。すると、プラザ付近のとあるホテルの最上階に安いインド料理のレストランがあるとの情報を入手、さっそく行ってみることにします。

店に入ってメニュー見せてもらうと、北インドのカレーの定食と南インドのカレーの定食があるということなのでそれに決定です(定食のことを俗に南インドではミールス、北インドではターリと呼ぶ)。A君とS君は南インド、私は北インドを注文します。

しばらくして、バナナの葉の上に盛り付けられたミールスが運ばれてきました。北と南のメニューの違いは主食だそうで、北は小麦粉をこねて薄く焼き上げたチャパティ、南はそれを油で揚げたプーリとよばれるものらしいです。お互いの主食を交換して食べてみます。うーん、すごくおいしい。個人的にはプーリの方が好みですね。カレーがかなり辛めでしたけど、なかなか満足できました。


北インドのミールス
(中央の白いものがチャパティ)


南インドのミールス
(中央の白いものがプーリ)

このレストラン、ミールスというよりはフルコースみたいな扱いで、この後も次々とスパイシーなライスやらデザートやらを運んできてくれました。とてもじゃないけど一人じゃ食べきれない量です。これだとかなり値段が高くつくだろうなぁと思っていたら70ルピーで済みました。高級レストランといえども安かったですね。

2時間ほど長居して、その後は中央駅の方に戻ります。実はもう今夜のうちに、チェンナイを後にして次の街へ発つことにしていたのです。旅行期間が短い分、早めに早めに移動しないといけないというのはなんともツライですが……ま、仕方ありませんね。駅に到着してすぐさま今日の午前に予約した列車に乗り込みます。

次に向かう先は、内陸部に位置する王都マイソールです。マイソールに到着するのは翌朝の10時ごろということで、今回の列車は寝台車となります。結構上等なクラスの座席を予約したので、さぞかし快適な車内なのかなーと思いきや……さすがインド、見事に期待を裏切ってくれます。列車内は横幅がかなり狭く、そこにベッドが窮屈そうに縦やら横やら配置されており、さらにたくさんの乗客が一斉に自分の座席を探そうとしているので、もみくちゃの状態になってます。私達も自分の座席を探そうとするのですが、どこが何番の席なのかさっぱり分かりません。駅員さんを通じてやっと発見できましたが、そのころにはなぜか汗だくになってました。

午後10時45分に中央駅を出発です。すると列車が動き出すと同時に、現地の乗客は早くも寝る準備をして、車内の電気を消してしまいました。いきなり真っ暗闇です。「インド人って案外規則正しい生活してるんだなー」と思いつつ、私も現地の人に合わせてベッドに横になることにしました。寝てる間に荷物を盗まれないだろうかと心配しながら、そのまま深い眠りへ…。


INDIA TOP     JOURNEY TOP     HOME