§4 来世への旅立ち | (チャングナラヤン、カトマンズ) |
4日目は朝7時ごろ起床です。本来なら、今日は何のオプショナルツアーも組まれていないので、終日フリーの一日でした。ですが、どうせならこの際、他の街並みや寺院も見てみたいと思ったので、急きょガイドさんにお願いして現地の旅行代理店のツアーに参加させてもらうことにしました。ガイドさんも「ガイド料を上乗せしてくれるなら」と快諾です。それで、彼が紹介してくれたツアーというのが、パシュパティナート、ボーダナートなどの世界遺産を巡るというもの。おお、パシュパティナートに行くのか! あの寺院には私も興味があり、一度行ってみたかったところでもあるので、そのツアーに即決定です。松木さん夫妻も一緒に参加です。 出発までまだ時間があるということなので、またオールドバザールをぶらつくことにします。アサンやその隣のインドラチョークという通りでは朝市をやっていました。普通のアスファルトの道にゴザを敷いて、その上に旬の野菜や香辛料入りの壷などを並べ、現地の人向けに商売をしてるようです。なんだか、日本の田舎で見る朝市にそっくりでしたね。ネパールって一体どんな野菜が取れるのだろうと眺めていると、日本と同様、結構いろいろなものが生産されてるようですな。ジャガイモ、にんじん、キャベツ、とうもろこし、なす、菜の花、トマト、カリフラワーなどなど…。
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インドラチョークの朝市 |
野菜や香辛料の販売だけでなく、調理された食べ物なども売られてました。ここでおいしそうな揚げパンを発見したので、熱いチャーと一緒に購入です(8ルピー)。これを今日の朝食にしました。チャーというのはインドにあたるチャイと同様のもので、ネパールのお茶の葉から作られたミルクティーのことです。ほどよい甘さで非常においしかったです。現地の人の間では「朝起きたらチャーを一杯」というのが習慣のようで、みんなが商売の合い間に飲んでました。 10時ごろホテルに戻ってツアーに出発です。まずはバクタプルの街へ行き、そこからさらに北上した所に位置する世界遺産の村、チャングナラヤンに到着です。この村は標高がドゥリケルと同じくらいあるようで、ここから眺めるカトマンズ盆地の景色はなんともきれいですよ。入村料を払って門をくぐるとすぐに上り坂や石段が現れます。それはチャングナラヤン寺院の本堂までずーっと続いていて、道沿いでは観光客向けにおみやげ屋さんが軒を連ねていました。でもあんまり商売にやる気がないみたいで、堂々と店の前で昼寝してましたけどね…。
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チャングナラヤンの街並み (一部ガードレールが無いから怖い) |
石段を上って行くとチャングナラヤン寺院に到着。話によると、ネパールにおけるヒンズー教寺院の建立はここから広まったらしいです。つまりここが最も古い寺院だということですね。……おーっと、しかし残念ながら修復の真っ最中じゃないですか! 寺院の周りには足場が組み立てられており、大工さんが集まっていていろいろと作業してやがります。うーむまたもツイテナイ。でも幸いなことに修復は外壁の部分だけで、本堂の中では、住職による説教がきちんと行われていました。ちっちゃな子供までちゃんと説教を聞いているっていうのはすごい光景でしたね。 この寺院、よーく見ると屋根や外壁の装飾がすごいきれいなんですよ。ところどころに神様や蛇(ヒンズーにおける聖なる動物)が彫られており、色付けまで細かく施されています。これは圧巻ですな。こういうのを見てしまうと、なんて日本の寺院は味気ないんだって感じになっちゃいますね。……まあ、私ってこういうことには単純ですから。 1時間ほど悠久(?)の思いに浸って次の街へ。次は再びカトマンズに戻って、先日のスワヤンブナートと同様に仏教の寺院であるボーダナートへ。やっぱりここのストゥーパにもブッダの目が描かれています。ここはスワヤンブナートと違って僧侶の皆さんがいっぱいいらっしゃいました。おそらくカトマンズ盆地のストゥーパのなかで一番交通の便がいいからでしょうな。なかには実際にここに住んでいるという人もいるらしいです(チベットからの亡命者がその多くだとか)。ストゥーパの周りにはマニ車があって、僧侶さん達がそれを回しながらストゥーパの周りを歩いてました。私も興味本位で車をクルクル回してみたり。
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ボーダナートのストゥーパ (スワヤンブナートと違ってストゥーパの上を歩ける) |
さてツアーはここで中断して、みんなで昼食をとろうということでストゥーパ近くのレストランへ。私はゆうべ食べたダルバートが妙に気に入ったのでこの店でもそれを注文です(170ルピー)。うーん、やっぱりおいしい。昨日の店よりもこっちの店の方が味がいいかも。 ツアーの続き。次はボーダナートから2kmほど南へ。現在のヒンズー教寺院の中で最大の寺院と呼ばれるパシュパティナートに到着です。ガンジス川の支流であるパグマティ川の川岸に立てられたこの寺院では、日本人の感覚からすれば信じられない、ある光景が見れるということを聞いていたので、私も一度行っておきたいと思っていたわけです。 まずはパシュパティナート寺院の本堂に行ってみます。実はここもヒンズー教徒しか立ち入りが許されていません。したがって我々外国人は、入口の前に立って、本堂を遠目に見ることしかできないのです。本堂の前には金色に光った象の石像が飾られているのですが、この入口からだとお尻しか見えませんよ…残念。
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パシュパティナート |
で、次はパグマティ川に架かる橋の方へ行ってみます。実はこの橋のたもとには火葬場があります。亡くなったヒンズー教徒がこの火葬場まで運ばれ、その場で葬儀が行われて身を焼かれるのです。普通、日本での火葬というと、棺桶の中に遺体をしまい、焼却炉の中に入れられて焼かれます。そして焼け残った骨を骨壷に入れてお墓の中に安置しますよね。しかしネパールの場合は違います。遺体はただ単にシーツに包まれているだけ。そして焼却炉に入れられるのではなく、まくら木を作ってその上に遺体を置き、わらをかぶせて火をつけるのです。そうです、つまり、遺体が燃えていく様子がはっきりと観察できるのです。そして灰になるまで焼き続け、その灰はそのままパグマティ川に流してしまいます(←但し厳密には、灰にならずに焼け残ってもそのまま流す)。ガンガーに還ることにより、来世へ生まれ変われると信じられているのです。ですからヒンズー教徒の場合、お墓なんてものは存在しないわけです。おそらくお墓があると、現世への未練が残って、輪廻転生が妨げられると考えるからでしょう。……この光景は、初めて見る者にとってはかなり衝撃的ですな。
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火葬ガート (現在火葬中) |
…そう、実は私が見てみたかった光景というのはこの火葬の光景なんです。ヒンズー教徒による来世への旅立ちの瞬間を実際に見ることで、彼らの生死に対する考え方を少しでも理解できたらなあと思いましてね。で、実際に見てみた結果ですが、私としては彼らの考え方には一部共感できますね。死=来世に生まれ変われるということは、死ぬことに対して全く恐怖感などを持たないってことじゃないですか。その点については前向きですばらしいと思いますよ。ただ、「来世を信じるか」と訊かれれば、まだ何とも答えられませんけどね。
本日のツアーは以上で終了です。なかなか本日も濃厚な日程でした。ホテルに一旦戻りますが、またいつもの賑やかなところをぶらつきたいので私はすぐに外出です。ガイドブックの地図にも載っていない、アサン周辺の路地たる路地をいろいろ歩いてみました。でもあまりにぐるぐると巡ってたので終いには迷ってしまいましたけどね。おまけにちょうど日没で周りが暗くなってたので、よけい大通りへ出る道が分かりづらくて思わぬ時間をくってしまいました。…うーむ、この方向音痴だけは何とかして直したいもんだなぁ。 ニューロードを歩いているとモモの専門店なるものを発見したので、今日の夕食はここに決定です。数あるメニューの中から私はチキン・モモを注文(35ルピー)。テーブルの前に出されたのは、お皿に10数個盛り付けられたシューマイ形のモモです。さっそく食べてみると……うーん、とってもおいしい……けど……、あれ、なんだかだんだん辛くなってきたぞ………ヒ〜ッ、辛い! 香辛料が効き過ぎて辛いゾ!! 何だこれは!? …うげっ、皮の中の肉は真っ黄色じゃないか!! イタタタ、舌が痛い! …でも残すのも失礼なので汗をかきながらどうにか完食しましたよ。……そうか、昨日の昼に食べたモモは、おそらく外国人向けに作られたから甘いのであって、現地の人が食べるモモってのはこれくらい辛いのが普通なのか。なるほど。恐るべしモモ! 恐るべしネパール人! ネパール最後の夜ということで、夕食後もふらふらと散策。通算で3時間くらい歩いたせいか、ホテルに着いた頃にはヘトヘト。すぐに爆睡です。
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