§3  まさに中東っぽい (トリポリ)

2日目は早めに6時に起床し、7時にはもうホテルをチェックアウトです。今日からベイルートを後にして、他の街へ向かうことにします。

最初の移動先はベイルートから北に85kmの場所にあるトリポリ(アラビア名:トラブロス)です。このトリポリという街、はっきり言って観光名所なんてのはあまり存在しません。しかしガイドブックを読んでいて、旧市街、スーク、オリエンタルな街並み…などという言葉に魅せられてしまい、勢いでここを訪問地の一つに選んでみたわけです。

ベイルートからトリポリに向かうにはいろんな交通手段があるのですが、今回は手軽にタクシーで行くことにしました。85kmも離れたところではありますが、交渉すればなんとか行ってくれるようです。「市内だけなら走ってもいい」というタクシーに乗車し、まずは長距離タクシー用のタクシースタンドまで向かいます。そこから車を乗り換えて、トリポリへ移動しました。運転手さんからもらったタバコを吸いながら雑談という、何だか楽しいドライブでした。時間が早いせいか道路はガラガラで、トリポリへは1時間ほどで到着しました。トリポリのシンボルと言われる時計塔の前で降車です。


時計塔があるトール広場

さっそく今夜宿泊するためのホテルを探すことにします。これまでの海外旅行では、個人旅行であっても、ずっと中級以上のホテルばっかりに泊まってましたが、今日は初めて安宿に泊まってみることにしました(予算の都合があるので)。…しかし、どうも日本人にとってはマイナーな街であるせいか、某ガイドブックにはあまり安宿の情報が載っていませんでした。仕方ないので、英語は苦手ですけど、アムステルダムの空港で買ったロンリープラネットを見ながら探索することになります。あー、読むの面倒くさい。

すると、トール広場近くの路地裏みたいな所に家族経営の安宿があるとの情報を発見したので、もうそれに決めちゃうことします。さっそくそこへ向かい、中に入ってオーナーらしき人と交渉です。

でもどうやらチェックインする時間が早すぎたようで、まだチェックアウトしてない前日の客がいるために、シングルの部屋が用意できてないとのことでした。そりゃそうだ、まだ朝の9時前だもんな。で、トリプルの部屋が今空いているから、そこを使ってくれとのこと。そんなわけで、シングルの値段でありながら、トリプルという広い部屋に泊まれることになりました。おおっ、これはツイてるぞ! しかもなかなかきれいな部屋で何よりです。エアコンもあるし、お湯もちゃんと出るし、これで30000ポンドなんだからお得でしょう。初めての安宿探しは成功と言ってもいいのではないでしょうか。ただ、私のこの部屋のすぐ隣が家族の方々のリビングになっているというのは、いささか変な感じを覚えましたけどね。

さて、荷物を置いたらさっそく街中をぶらつくことにします。トリポリという街は、大別して2つの地区があるらしく、1つはこのトール広場を中心に古い街並みが残る旧市街、もう一つは地中海を望む港があるアルミナと呼ばれる地域だそうです。私は迷わず旧市街の散策の方を選ぶことにします。直感で、何となくこっちの方が面白そうに思えましたからね。

旧市街の方にズンズンと入り込むと、古い建物群が目に付くようになります。この街は、ベイルートほど大きな戦争の被害は受けていないらしく、こういった建物がちゃんと残っているのだそうです。

  
トリポリ旧市街 (古い建物が残る)

しばらく歩いていると、建物と建物の間にある狭い路地から人がたくさん出入りしているという不思議な光景を発見です。「狭い所なのに一体何なんだこの道は?」と思い、実際にそこを歩いてみると、なんとそれはスークでした。おーっと、私の大好きなものですよ。スークとはアラビア語で市場のことを指し、中東の旧市街における伝統的なスークは、こういった狭い路地で形成されていることが多いのだそうです。ここトリポリの旧市街にもいくつかのスークがあり、現地の買い物客で賑わっていました。


旧市街のスーク

それでまたこのスークってのがすごいんですよ。イランのバザールでもそうだったんですけど、迷路になっているために少し歩いただけで、いま自分がどこにいるのかさっぱり分からなくなります。一応ガイドブックの地図を持っていたのですが、地図上に載っている道は比較的広い道だけで、スークの基本である路地は全く載っていません。はっきり言って役に立たないのです。来た道を戻ろうと思ってあっちへ行ったりこっちへ行ったりしてるうちに、さらにどんどん迷ってしまって、しまいには旧市街を通り抜けて、街中を流れる川の所に辿り着いてしまいました。うわっ、ここってトール広場とは正反対の方向じゃないか。あーだめだ、方向音痴がいまだに治ってないなぁ…。

で、ようやくトール広場まで戻ってきた頃には、もうへとへとです。…イカン、旧市街をちょっとあなどってましたね。今度は地図に載ってる道を通りながら散策したほうがよさそうですな。改めて、地図をじっくり見ながら街中をぶらついてみます。

トリポリの旧市街は、高台の斜面に建物が建ち並ぶという構成になっています。高台にあるセント・ジル要塞という建物からトリポリの街並みが一望できるということらしいので、そこへ行ってみることにします。入場料(7500ポンド)を支払って、要塞のてっぺんに上ってみると……おぉ、いい眺めですな。要塞の西側からは、スークのある街並みと地中海が望めます。一方、東側からは、先ほど私が間違えて着いてしまったアブアリ川とさらに高い場所に建つ古い建物群が見られます。


要塞の上から見た旧市街(西側)

時刻が正午になったからなのか、どこぞのモスクからアザーン(礼拝の呼びかけ)が聞こえ始めました。それを聞きながらこうやって街を眺めていると、何だかいいものですねぇ。古い建物があって、狭い通路があって、スークがあって、モスクがあって、階段でできた道があって…。まさに私がイメージしてた中東の街そのまんまですよ。もちろん、中東っぽい街なんてのは、このトリポリに限らず他の国でも見られるのでしょうけど、初めてアラブ圏にやってきた私としては、この街が一番印象が大きいですね。


要塞の上から見た旧市街(東側)

午後からは、ついでにアルミナの方へも寄ってみました。旧市街が住民の居住区であるのに対して、このアルミナはレジャーの場となっているようで、レストラン、カフェ、遊園地などがありました。残念ながら、私が行った時には、天候が悪くなり始めていましたが、それでも釣りを楽しんでいる人がいたり、近海のクルーズの客引きをしている人がいたり、遊園地では親子が乗り物で遊んでいたりと、それ相応の活気はありました。…でもやっぱり旧市街よりは欠けるかな。


アルミナは釣りをしている人がいた。
何が釣れるんだココ?

夕方からはトール広場周辺をぶらついてました。日が暮れるとこのあたりには屋台が出始めるので、いつもの食べ歩きです。結構いろんなものがあるもので、生ジュースやコーヒー(1杯250ポンド)、ナンを酸味のある豆に付けて食べる料理(←名前分からん。2000ポンド)、そしてファーストフード店ではシシケバブとチキンのサンドイッチ(1つ2000ポンド)などなどを堪能です。どれもおいしかったですよ。意外とレバノンの食べ物ってイケますねぇ。ホテル帰還は7時ごろです。

…そうそう、ちょっと補足。以前インドに行ったときもそうだったんですが、ここレバノンでも、一部アラブ人のしゃべる英語は発音がひどいです。ですから、買い物等の際には相当苦労しました。やはりここでも母音の後のサイレントを発音する傾向があるようです。例えば、「これはいくらですか?」と尋ねると、「トルッティーファイブ」という答えが返ってきました。…何のことか分かりますか? そうです、35(thirty five)のことを言ってるんですよ。…分かんないよねぇ、こんなの。


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