§1  眠気と闘いながら観光 (テヘラン)

イランに行くことにしました。以前テレビ番組でイランの特集が放送されてたのを見て、綺麗な装飾のモスクや古代の遺跡やバザールの活気に感動し、ぜひ実際にこの目で見てみたいなーと思ったわけです。…ま、相変わらずフワフワした、明確さのない理由ですわ。

しかし、ここで問題が。運悪くもこの時期、私には連続した休みというのが最長1週間ちょっとしか取れなかったのですよ。…なにぃ? わずか1週間で、日本の国土の5倍もある国を巡れってか? イランの観光名所というのは各々が遠く離れているからそれはちょっとキツイんじゃねーのか。効率よく現地の交通機関なんて確保できるかなぁ? 

というわけで、いろいろ悩んだ結果、今回は久々にパックツアーに参加することにしました。結構高くついちゃいますが、まぁこれなら移動手段も簡単に確保できるからいいかもしれませんな。特にイラン国内線の飛行機なんてのは非常に予約が取りにくいって聞いてましたからね。団体旅行扱いで代理店通して予約すれば、航空会社側も優先的に席を取ってくれるでしょう。

そういえばイランのパックツアーなんて日本で催行されてるのかなぁ、あんまり聞かないよなぁ……と当初は思ってたんですが、調べてみると、実はこれが結構多くの代理店で行われているようで、逆に代理店選ぶのに迷ったくらいでした。それで数あるツアーの中から私が選んだのは、首都のテヘラン、世界遺産の街イスファハン、庭園の多い街といわれるシラーズ、沙漠の街ヤズドの主要4都市を、8日間で効率よく巡るというものでした。イランのパックツアーにおいて、どうやらこれは王道のルートらしいです。


今回の旅行での訪問予定都市

旅行当日。成田空港(実は成田の利用は初めて)からイラン航空で首都テヘランに向かうことになります。ウワサには聞いてましたけどやっぱりイラン航空ってのは独特の航空会社でしたね。女性乗務員は全員髪の毛をスカーフで隠していました。また男性乗務員もきっちりとした格好をしていますが、みんなノーネクタイでした。ネクタイは反イスラムの象徴だからだそうで、現地の人も含めてイスラム教を信仰する人はほとんどネクタイはしないらしいです。そして何よりもイラン航空がすごいのは、各フライトに銃を携帯した軍人が必ず同乗しているということなんです。どうやらハイジャック防止策らしく、このおかげでイラン航空は、機内のセキュリティランクがイスラエルの航空会社と同じくらいに高く評されているとか…。他の航空会社もここまでやってくれりゃあいいのにね。

15時前に離陸。私が搭乗した便は北京経由便で、一旦北京国際空港に着陸する予定なのですが、ここで早くもトラブルが発生です。どうやら現在北京の天候がかなり悪いらしく、しばらく寄航ができないとのこと。それで、手前の天津空港に緊急着陸することになっちまいました。北京の天候が回復し、管制塔の指示が出るまではずっと待機ということだそうです。…オイオイなんだよ、何で私の旅っていつもこうなるんだオイ? この停滞の間は何もすることがなかったので、私の隣に座っていた日本語ペラペラの在日イラン人の方とずっとおしゃべりなどして時間をつぶしてました。

そうして時間が過ぎること3時間、ようやく再離陸のOKサインが管制塔から出たらしく、無事北京に到着であります。北京でさらに乗客入れ替えや清掃を行うための1時間の待機をし、結局、最終目的地であるテヘランのメフラーバード国際空港に到着したのは現地時間で午前3時でした。つまり、機内に居座ってた時間の合計は、なんと17時間半。長げぇよアホウ。

パックツアーなので、空港では現地のガイドさんが迎えに来ることになってます。しかし、さすがに3時間も遅れて深夜に到着となると、おそらくもうガイドさんは帰っちゃったかもしれないなぁ、と私は感じてました。「もし帰っちゃってたらどうしようかなぁ。面倒だけど、流しのタクシー見つけて自分で宿泊するホテルまで移動しなくちゃいけないなぁ。」と、これからの対策のことをいろいろ考えてたのですが、なんと、入国して空港の外に出てみると、ガイドさんが私の名前のプラカード持って立っているのを発見しました。おーっ、なんと! 3時間も遅れたのにずっと待っててくれたんですか!? これはマジでうれしいぞ。

ガイドさんの名前はダリさん。1979年のイラン革命には積極的に活動をしていたという40歳くらいの男性です。顔はジーコに似てます。今日から8日間、この方と一緒に旅をすることになります。どうやらまたツアーの参加者は私一人だけのようでした。確かに旅行代理店側から「一人でも催行されるツアーです」とは聞いていましたが、本当に一人とは…。これは王道のツアーなんじゃなかったのか?

空港内の銀行でイランの通貨「リアル」(旅行当時の為替:10000リアル=約150円)に両替し、ダリさんの会社が用意してくれた車に乗ってホテルに向かいます。チェックインをしたころにはもう午前4時半をまわってました。ダリさんが、「明日は朝から観光を行いますので、8時半にロビーに来てください」と言い残して私の部屋を去っていきました。…ちょっと待って、それって4時間後じゃねーか。寝れねーぞオイ。

  
ホテルから見たテヘラン市内

翌日(というか4時間後)、ホテルをチェックアウトしてテヘラン市内の観光の開始です。テヘランの見所といえば、博物館が主となります。私も4ヶ所の博物館の見学をすることになりました。……しかしまぁ、なんでしょうかね。博物館には当たりはずれってのがあるもので、私の場合も、今回見学した博物館の中には正直言ってあまり面白くないものが多かったですね。他の人が見れば興味深いものもあるのでしょうけど、少なくとも私にはちょっと……という感じでした。

もちろん興味が持てた博物館も中にはありましたよ。市内の中心部にあるイラン考古学博物館という所はなかなか良かったです。ここでは、イラン全土から集められた歴史的に重要な美術品が、紀元前500年ごろから19世紀まで年代別に展示されています。興味深かったのは、その展示方法でした。この博物館、旧館と新館に分かれており、旧館ではイランにイスラム教が普及する前の時代の展示が、一方の新館ではイスラム教が普及してからの時代の展示がされています。そうすることで、イスラム文化の影響の大きさが明確に分かるようになっているのです。なるほど、確かにかなりカラーが異なりますな。で、個人的に好きなのは新館でしたね。絵文字のような特殊な文字で書かれた珍しいコーラン(イスラムの聖典)や、色彩豊かなモスクのタイルの一部など、見とれてしまう展示物がたくさんありましたから。

ゴレスターン宮殿もよかったですね。ビル群の中に静かに佇む、緑の多い宮殿です。すでにイスラムが普及して1200年ほど経ったガージャール朝という時代に王宮として使われていたものです。ここの博物館は大したことなかったのですが、何といってもここは建物の装飾の美しさに興味が惹かれました。きれいでしたよー。私は写真ばっかり撮りまくってました。

  
ゴレスターン宮殿のタイル

ところで、いろいろな博物館を見学してる最中に、イランの大衆的飲み物であるチャイを頂ける機会に恵まれました。インドやネパールのチャイとは違い、イランの場合は最初からミルクや砂糖が入っているということはありません。日本と同じように、何も入ってない状態で客の前に出されます。ただし別添えで付いてくるのは砂糖だけで、ミルクは付いてきません。そしてイランでは、独特のチャイの飲み方があります。別添えで付いてくる角砂糖はチャイの中に入れるのではなく、いきなり自分の口の中に含めてしまい、チャイで溶かしながら飲むというかなり高度な飲み方をするのです。ですからイランでは通常、かき混ぜるためのスプーンなんてのは付いてきません(たまに例外もあるけど)。ためしに私も角砂糖を口に含ませてお茶を飲んでみましたが、熱いチャイが口の中に入るとすぐに溶けてしまい、かなり難しかったですよ。そんな苦戦してる状況を見かねたのか、店の人がわざわざスプーンを持ってきてくれました。どーもスイマセン。

さて、テヘランの観光が終了したのは午後2時ごろ。ツアーの予定では、今日はこの後からシラーズという次の街へ向かい、そこで宿泊するということになっています。テヘラン〜シラーズ間は約650kmくらいの距離があるということで、移動には国内線の飛行機を使うことになるのですが、実は我々が予約しているのは、午後9時出発のフライトなのです。つまりまだ7時間も空き時間があるわけですよ。意外と観光が早く終わったのでこのような状況になってしまいました。(というか、4ヶ所しか行ってないんだから早く終わって当たり前なんだけどな)

私が、「他の観光スポットってないんですか? 市場(バーザール)とか行ってみたいですね」と聞いてみると、ダリさんは「いやぁ、でも今日は金曜(イスラムの国では公休日にあたる)なので閉まってるんですよねー」。うーん、そうかぁ。だったら8時半から観光なんてせずに、もっとゆっくり寝させてくれりゃよかったのに…。イランに着いてからまだ2時間くらいしか寝てないんだよな。

そこで、今日はこれからどうするかということを、ドライバーさんも含めて3人で議論することになりました。ダリさんが「テヘランなんて街はそれほど見どころがないから、もう早々にシラーズへと移動しちゃいましょう。いのうえサン、あんまり寝てないでしょ? 目が赤くなってますもん。フライトを早めの時間のものに変更して、今日はすぐホテルにチェックインして休んだ方がいいです」と提案です。うーん、そうねぇ、確かに私もそのほうがいいかなー。「でも、フライト変更ってそんな簡単にできるんですか? イランの国内線だと、いつも予約がいっぱいだからかなり難しいって聞きましたよ」と尋ねると、ダリさんは「そうですね、でも頑張ってみますよ」。

ドライバーさんと別れて、急きょ国内線のターミナルへ向かいます。ダリさんがチェックインカウンターの職員と交渉すること数分、見事に午後4時30分発のシラーズ行きチケットを2人分ゲットです。すげぇ、ホントにできた。しかも意外とあっさりと。

そんなわけで、予定から4時間以上も早いフライトに搭乗し、1時間半くらいでテヘラン以南650km、ペルシア湾近くの街シラーズに到着です。以前の王朝では一時期首都にもなった所だそうです。

タクシーで空港からホテルへ直行。車窓から街並みを見てみると、なんだかインドやベトナムを思い出させるような街並みです。先程までいた首都のテヘランはこれまでのアジア諸国とは違って、道端にゴミが落ちておらず、きれいに整備された道路がたくさんあったので、比較的ヨーロッパに近い街並みだなぁ(←ヨーロッパ行ったことないけど)と感じてましたが、ここに来て、「おー、アジアに戻ってきた」という感覚がありましたよ。

ホテルにチェックイン後は、眠気がありましたけどすぐに外出し、一人で街中をぶらついてみます。休日で閉まっているバーザールのすぐ近くの広場をぶらついてみると、家族連れをたくさん見かけることができました。今日は特別な日でもなんでもないただの休日なのですが、芝生の上にゴザを引いてお茶を飲んでいたり、ゲームをしたりしているのです。どうやらイランでは、このようにピクニックのような感じで家族と余暇を過ごすことが多いようですな。穏やかな光景を見ることができました。


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