§2  生活臭のある古鎮 (西塘)

すぐにでも西塘の水郷古鎮を観光したいところですが、背負ってる荷物が邪魔なので、まずはホテル探しから始めることにします。前回の旅で、「これからはちゃんとホテルは前もって予約しておこう」みたいなことを述べましたが、結局今回も何もせずに中国に来てしまいました。だめですねぇ私。

ちょうど古鎮近くに「旅館」って書いてある建物を見つけたので、もうそれに決めちゃうことにします。中に突入してオーナーらしき人と交渉です。まずは英語で部屋は空いてるかを聞いてみましたが…うーむ、やっぱり通じない。仕方ないので、ガイドブックに載ってた中国語を指で差したり、筆談をしたりしてコミュニケーションをとることになりました。ああもう、効率悪い…。で、どうやら部屋は空いてるらしく、値段も150元とリーズナブルだったので、今夜の宿はここに決定です。

部屋に荷物を置いたらすぐさま観光です。先ほどの狭い道を通り抜けて水郷古鎮へ向かいます。おーっ、すげぇいい雰囲気です。休日なので中国人観光客は多かったですけど、それでも古鎮は穏やかさを感じることができました。複雑に入り組んだ水路、迷子になりそうな路地、無数の古い建物群と水路に架かる石橋、もう私がテンションが上がるものばっかりです。観光地としての俗化が進んでおらず、人々の生活というものがいまだ強く残っているのがイイ感じです。


とても穏やかな雰囲気です


土産物屋が並ぶ路地もあるが
それほど観光地ズレしていない


現地の人の生活が残っている


観光客向けの飲み屋もそれほど目立たず、
西塘の街並みにとけこんでいる

ところで水郷古鎮ってそもそも何なんだ? 何でこんな街が形成されてるんだ? と、ここに来るまで何も知識がなかったので調べてみますと、もともと上海、蘇州、杭州などを含むこのエリアは、長江という大河が運んだ土砂の堆積によってできた土地なんだそうで、この西塘のような水郷古鎮の街というのも、そのひとつなんだそうです。つまり今私が見ているこの水路はもともとは長江というデカイ河だったということですね。それで、この運んだ土というのが肥えた土だそうで、そのおかげでこの一帯は農業が栄え、さらに水路の存在が物資の交易としての役割も果たし、現在の街の発展にまで至ったのだそうです。なるほど、知らずにこの地に来てしまいましたが、結構歴史あるんですね。

まずはメインストリート(って言っていいのか分からないですけど)の長廊をぶらぶらと歩いてみます。水路沿いにこのような道が作られているのは古鎮の中でも珍しいのだそうです。さすがに、この道は観光客向けの店が軒を連ねてましたが、観光客がいようといまいと一向に構わないといった感じで、オバちゃんが椅子に座って昼寝してたり、水路に流れる水を使って洗濯したりしてました。まさに生活臭プンプン状態。

  
長廊 (ここは土産物屋が多い)

長廊を歩いた後は、いろんな水路沿いの道を歩いてみます。水路が入り組んでいるので、その分だけ橋が数多く架けられています。この橋というのもいろんな形状のものがあり、小船が通りやすいように大きく作られたもの、また人間一人がようやく渡れるほどの幅しかない橋など、多種多様です。時代のある古い橋のようで、それがいっそう趣のよいものとなってますな。

  
多種多様な橋

この街はまた、路地が多い街でもあります。お店がたくさん並んでる路地だけ歩くのならいいですが、私はというと、民家が立ち並んでいて現地の人の生活が垣間見える路地、あるいは誰も通らないひっそりとした路地など、いろんな道を歩き回るのが好きなのでそっちのほうもずんずんと歩いてみました。案の定、途中で迷子になりましたけどね。でもこうやって敢えて道に迷ってみるというのも、路地の醍醐味ですよね。


こういった路地がたまらない

お店の並ぶ路地を歩いていると、よく目に付く食べ物がありました。それは粽(ちまき)です。味付けしたもち米を葉っぱで巻いて蒸したり煮たりしたものです。中国の屋台などでは頻繁に売られてる食べ物らしいです。で、せっかく中国に来たのですから食べてみることにしました(1個0.5元)。何の粽なのか、中身がさっぱり分からなかったので適当に2つ選んでみると、ひとつは小豆入り、もうひとつは牛肉の燻製入りでした。豆のほうはともかく、牛肉の燻製は美味でした。


中国では「粽子」と呼ぶ

さて、長いことぶらぶらと歩いて、時刻は6時過ぎになりました。水郷古鎮での夕暮れの光景が非常にきれいだとのことでしたが、この日は曇っていて見ることができませんでした。うーん残念。次回に期待しましょう。

古鎮の景色を望める観光客向けレストランなんてのがいくつかあるようなので、せっかくだから今日の夕食はこの古鎮内でとることにします。適当に選んだ店は江南料理の高級店らしいです。江南料理というのは、長江流域で取れる食材を使った料理の総称だとか。…まあ、具体的にはよく分かりませんが、とりあえず古鎮の景色が最もきれいに見られそうだったので、この店に決定です。


適当に頼んだらこれらが出てきた

メニューを見せてもらいますが、予想通りさっぱり分かりません。「江南料理」と書かれたカテゴリから適当に2品頼むことにしました(←しまった、さすがに食材の中国語表記くらいは学習しておくべきだった…)。それで、出てきた料理は、比較的小さいサイズの魚の揚げ物と、牛肉の燻製でした。恐る恐る食べてみると…おおっ、かなり美味いぞコレ。お酒のおつまみにすれば最高ですね。ああ、食べてるうちに呑みたくなってきましたなぁ。

というわけで結局、誘惑に負けてビールを注文することにしました。さすがにビールっていう単語は知ってたので、店の人に口頭で頼んでみたところ、また何か聞き返してきました。…はい、ごめんなさい、調子に乗った私が悪かったです。やっぱり筆談での会話になっちまいました。店の人は何やらいろんな漢字を書き出していきます。どうやらビールの銘柄のことを言ってるのだなと悟った私は、店の人が書き出していったリストの中から、三得利と書かれたものを試しに指差してみました。すると、店の人は瓶ビールを持ってきました。その瓶のラベルには「三得利」と書かれ、その下に英語表記で「SUNTORY」という文字が…。あっそうか、三得利ってサントリーのことだったんですね。すいません、全然知りませんでしたヨ。

飲み食いしているうちに、外は暗くなり始めました。すると、それぞれのお店では提灯に明かりが灯されます。その明かりは水面にも映し出され、夜の古鎮は昼とは違う煌びやかな光景に変わります。夜の古鎮ってのもなかなか雰囲気がいいですね。この水郷古鎮は上海市から近いせいか、観光客の多くは日帰り旅行でここにやってきます。そのため、夜になるとみんな帰っちゃって人が比較的少なくなってしまうのですが、いやいや、ぜひ日帰りとは言わずに、この街に泊まってみて、夜の古鎮の光景を堪能してみるのもいいのではないかと思いますね。ちなみに私が飲み食いしてた店では、完全に陽が沈んだころに中国民謡の生演奏が行われました。確か二胡って言ったと思いますが、あの楽器の音色がこの穏やかな水郷の街に響いて、なんとも言えない風情を作り出していました。


夜の西塘

結構長居して、店を出たのは午後8時くらいでした。酒に酔いながらいい気分でホテルに戻ります。いやあ、この街、来てよかったですね。こうして中国の第1日目は、ここに来るまではしんどかったですけど、最終的には大満足で終えることができたのでした。めでたしめでたし。

…と言いたいところですけど、部屋に戻ってシャワー浴びようとしたら実は水しか出なかったという仕打ちがありました。うーむ、やっぱ私の旅って何かオチがありますなぁ。


CHINA TOP     JOURNEY TOP     HOME