ブログ「福島泰蔵大尉の実行力を訪ねて」の切り口

 最初の投稿「福島大尉のなしたことを思う」(2011.08.02)から150稿目の「福島泰蔵大尉の実行力を訪ねて―この旅の結び、終りではなく中休み、に思うその三」(2014.09.10)まで、冊子にする区切りまで、を範囲として旅のあらましを述べたい。
旅の本筋
 本筋は福島大尉に直接迫る旅であり、本筋では四つの切り口で四度八甲田山を行き来した。切り口は最初からあったわけではなく、旅の途中で湧いてくる疑問や迫って切る思いを掘り下げる内に次の切り口を見つける繰り返し、これが福島大尉だという確信に辿り着くまで前へ、という福島旅全般を貫くスタイル、であった。最初の切り口は「非常の困難」、2番目は「沈黙」、3番目は「リーダー福島大尉の実行力」、4番目は「塾者《ことを為すリーダー》」5番目は「もののふの心を受け継ぐ心」である。「立見師団長との心の交流」も関連切り口として重視した。
 #1切り口「非常の困難」
 ブログをスタートさせるに当たり、「八甲田山雪中行軍実施報告」(以下実施報告)の中の中央山脈と八甲田山の探討という任務に対し可能であったが非常に困難であった、と報告している点に注目し、その実相を掴むことを狙いとして切り口を「非常の困難」として、4つの成したこと・生い立ち・立見師団長等の導入の後、一番目の成したこと八甲田山へ取り掛かった。八甲田山への道のり・何故八甲田山か、シリーズを始め、一連の演習・実験行軍の実施報告を読み解いた。よろくを挿み、「非常の困難を思う」シリーズ、は雪中行軍のスタートから帰営までを雪中行軍手記と実施報告を読み解き、その後手記公表に到るまでを、13編投稿した(以上冊子(一))。
 
 #2切り口「沈黙」
 「非常の困難」シリーズの最後に「伝えたかったもの」シリーズで手記公表と沈黙について3編投稿した。上記流れの必然として、手記公表に到る篤い思いと沈黙の葛藤について掘り下げるため、「成し遂げたかったものと第5連隊遭難」シリーズを、6編投稿した。後に論文「一慮」シリーズの訴えたかったもの(続・続)及び「塾者(ことを為すリーダー)」シリーズの論文「一慮」総括」では論文における福島大尉の沈黙を下敷きと表現した。
 
 #3切り口「リーダー福島大尉の実行力」
 次は本ブログのメインテーマと当初は考えていた実行力を取り上げたいと思いつつも範囲が広すぎてどう手を付けるかに迷ったが、よろく旅を挿み、新田義貞ではなく足利尊氏の助けを借りて、実行力の定義をして、よろく・よろくのよろくを含み、「リーダー福島大尉の実行力」について前回の切り口「非常の困難」シリーズの歩みに対応させつつ、本切り口の特質を加味して、20編投稿した。
 
 #4切り口「塾者《ことを為すリーダー》」
  次は2番目の成したこと、論文「降雪・積雪の戦術上に及ぼす影響」を、遺された原稿と偕行掲載記事を読み解いて、掘り下げるシリーズを、11編投稿(以上冊子(二))し、最後立見師団長がこの論文で福島大尉を碑文で「塾者」と評したことに天啓を受け、前「実行力」シリーズの最後弘前到着時に為したことの本質を考えたことを合わせて次のテーマ決定に到った。即ち「塾者《=ことを為すリーダー》」としてシリーズを始めた。初級幹部以来毎年課された戦術課題とその回答(註)を紐どきながら、中隊長以降では、すでに述べてきた、歩みを区切って、総括(ことを為すという点に焦点を当て)し、途中で成したことの3番目の論文「露国に対する冬期作戦上の一慮」(遺された原稿及び偕行掲載記事を読み解き、7編投稿)、4番目の黒溝台会戦の掘り下げ(9編投稿)を挿み、19編を投稿した(以上冊子(三))。
  
  註:明治20年代、尉官には統一テーマで、毎年12月頃戦術課題が出され、3月頃提出して、部隊長の批評・指導を受けるという形式の研鑽を行っており、福島大尉は暦年の記録を残している。
  
  よろく編
  愈々八甲田山、を充実させる狙い
  福島旅の中で、本筋から離れたり、余分の儲け的なものに多く出会ったがカットせざるを得なかったものが多々あった。それらのうち、埋没させてしまうには惜しいもの、今後に役立ちそうなものを集めたものが本【よろく】篇である。第2稿目の「林子平」(2011.08.10)から始め、「非常の困難」シリーズで八甲田山に取りかかる前に「勝海舟・高山彦九郎」シリーズを7編、「福島泰蔵碑」シリーズを4編、「幹部候補生学校遺品寄贈式関連」シリーズ9編、「目指したもの」シリーズ3編を投稿し、八甲田山周辺を充実した(以上冊子(一))。
  #5切り口「もののふの心を受け継ぐ心」も実行力では?の思い
  #2切り口「実行力」を始めるに先立ち、よろく編「もののふの心を受け継ぐ心」シリーズ11編を投稿した。戴いた幹部候補生学校作成の寄贈品便覧に刺激をうけ、軍旗祭祭文で彼が考える武人は律令制が成った奈良時代の武人であることを掴み、彼が漢詩や雪中行軍の最も厳しい局面で思いを寄せていた坂上田村麻呂・新田義貞・加藤清正などに思いを巡らした。
  そして「実行力」シリーズの最後、山場を越えて、同(続き)で今に続く連綿性や極地におけるもののふの心について思いを纏めた。「拓く福島泰蔵伝正伝」の続編「福島泰蔵大尉に学ぶ武人の心ー連綿と続く顧みずの心」発想に大化けする大きなベースとなった。

福島大尉の心 - 福島大尉から武人の心探求記念館