第14話 球体

この話は再びにきさんから掲示板に寄せられたものです。恐怖体験とは違うかもしれませんが、不思議な体験です。

よく晴れた土曜日の午前中、ボクは何か用事があってバス乗り場に向かいました。
バス乗り場は高台にあって、てっぺんの下りかけた所にバス停があります。そして進行方向に景色がパノラマのように広がっているのです。見下ろす形になるので、バス停で4つ先くらいまでの範囲が見渡せます。

つまりとても視界が良く、さえぎる物はないという事なんですね。で、バス停に並んだ所でさっそくソレは目に入りました。「銀色の球体で、見た目スーパーボール大の、パチンコ玉。」という感じでしょうか。60度くらいの斜め上空。
あれ?と思って観察してたんですが、ソレは動き出さないんですね。飛行機なら角度によって圧縮されてこんな風に見えるかもしれない。移動していくうちに形を変えるだろうと見てました。

しかし飛行機ではないかもしれない。あまりにも近すぎるから・・・。
「バス停で4つ先くらいの地点」と「ソレ」と「ボク」の位置は三角形を作っていて、ソレはその頂点にあるのです。(かなり低く、そして近い)
空を飛ぶ物で高度、距離的にはヘリコプターでしょうか?丸く銀色に見えるかもしれません。しかし音がしない・・・。気球かアドバルーン?しかし球体に付属する物がない。
ボクとしては広告用の飛行船が一番可能性があるんじゃないかと、目を凝らしました。とにかく見ていれば角度を変えるか、大きさが変っていくはず。そう思って、それこそ目を見開いて、瞬きして、目をこすって、深呼吸して(笑)、ソレを凝視してたのですが、・・・・空に浮かんだまま動かないんですよ!

それ以上にボクを困惑させたのが、他のバス待ちの人々の無反応ぶり!!ボクの前には5〜6人がすでに並んでいたのです。「誰も気がつかないの〜?」そんな訳はない。むしろ見えているのに、無視を決め込んでいるかのようなのです。・・・誰一人として、空を見ている人はいない。
そこは高台でバス停は進行方向を見下ろしてるのです。空は見上げなくたって、視界に入るはず。
ボクはもうそこまで声が出かかってました「あれ、何ですかねえ?」って。
(人は心の中でUFOだと思っても、周りに対し非常識な行動はとれないって思うのですかねえ?)

あいかわらずソレは場所を変えずに銀色の球体のままでした。丸いものではありません。球体なのです。立体感も質感もあるのですね。「カメラがあれば」と思いました。・・・今思えば、少し移動した所にコンビニがあるから、使い捨てカメラでも買えば良かったのです。
しかし不思議なもんで、その場を離れたく無い、目を離したくないという気持ちの方が強いのですね。半ば「早い所、角度か大きさを変えて、飛行船なりヘリコプターなりの正体を見せてくれ」とすら思っていました。

気持ち的にはバス停に10分くらいいました。実際はもっと短いでしょう。
ボクの用事はたぶん郵便局に行くのだったと思います。午前中で取り扱いが終了するのかもしれないと思い、バスが来てボクはそれに乗り込みました。進行方向を下るので、バスの中からはもうソレは見えませんでした。

第15話 眠りを妨げるもの

これは学生時代からの友人のMIOさんの体験。彼女は霊感体質で経験豊富なのですが…

あれは私がまだ東京で一人暮らしをしてたとき・・・。
その朝、私は徹夜仕事を終えやっとアパートに帰ってきて、さぁ、一眠り・・・というときでした。
布団にもぐりこみウトウトしかけた時、突然の金縛り!
(あちゃぁ・・・、徹夜したからちょっと神経過敏になってるなぁ・・・)
とか思ってると、ふすまの陰に黒い影がいるのがわかりました。
目はつぶってるのですが周りの様子が良くわかるんです。
(変なもん拾っちゃたかな?)とか考えながら何とか金縛りをとこうと指を動かそうとしたりおまじないを唱えたりしたんですがなかなか解けません。
そうしてるうちに影の方からガチャン、ガチャンと大きな音が聞こえてきました。それが私のほうに近づいてくるのがわかりました。
その音はまるで重そうな鎧を着た人が歩いてくるような、そんな感じでした。
そいつは私の布団の周りをグルグルと歩き回っています。
・・・私は最初は怖かったんですが、なんかだんだん腹が立ってきたのです。
徹夜仕事を終え、やっと眠れるというときになんでこんな目にあわねばならんのか?
とうとう恐怖よりも怒りの方が勝ってしまいまして、ついに私は・・・。
「このやろー!いいかげんにしやがれ!!いつまでもガチャガチャ、うざったいんだよ!ばかやろー!!」
・・・などと怒鳴ってしまったのです。
その瞬間金縛りは解け、周りにあった人の気配は消え、それまで遮断されていた外の音が聞こえてきました。
しかし、霊に対して怒鳴るとは・・・、我ながら危険だったかも。
逆襲でもされたらどうするつもりだったんだ、自分・・・。

いやー、霊を圧倒してしまうとはさすがMIOさん。相当迫力あったんでしょうねえ(^_^;)まあ、誰でも眠いところを起こされると不機嫌なものですが。

第16話 お婆さん

これも掲示板に寄せられた、看護婦をされているyumicさんのお話です。

私は病院務めなので怖い経験があります。ある個室の患者さんが「ほらココはお墓ですか?あの白いものをどけて」と意味不明なことを叫んだんです。そのときは気にせずにいたのです。その後2時ごろでしたか、女子トイレで清拭車に水を入れていたら、ふっと誰か来たと気配を感じたので邪魔になるので清拭車をどけたんです。その時目に白い(今となっては記憶があやふやですが)ものを見た気が・・そのときは背の低いおばあさんと感じたんですけど・・。何かをを見た気がしたのですが、今となってもはっきりしたことは分かりません。その夜は病棟の巡視が怖くて、特にその個室は怖くてお部屋に入れませんでした。あとで仲間の看護婦も女子トイレで白いお婆さんを見たと言う話を聞きました。
その時はゾゾーっとしましたね。

あと恐怖と言うのが、亡くなった患者様を綺麗に拭いたり着替えをして差し上げるとき、普通は看護婦2人でするのですが、同僚が呼ばれたりして、たまたま一人になる瞬間ってありますよね。そんなときは怖いですね。息をしていないとはいえ、体は温かいしじっとお部屋のどこからか見られている気がします。

yumicさん御自身の補足として、上記の個室の患者さんはその後、病院で亡くなられたとのことです。

第17話 霊視

某掲示板でお世話になっている田吾作さんの不思議な体験談です。御本人さんがこういったとことに慎重な方であるため、かなり説得力ある話です。

あれは10年以上前のことです。
私は、世にいう霊能力者のほとんどはまがい物だと解釈しています。
まれに当たる時があったり、なかには高い確率で超感覚を発現する方もいることは認めます。
でも、それは極例外的な人たちだと思っています。
なぜなら、当たり前のことですが、彼らが、第三の目で、見える、わかる、というのであれば、なにゆえいつも曖昧な表現しかしないのでしょう。
先祖の霊がついているのなら、その方の固有名詞なりを当てればよいわけです。
で、でなんです。
堅苦しくなりましたが、私が体験したのは、その例外的な霊視についてなのです。

そのころ、私の母は重い病をわずらい、病院でもほとんどサジを投げられた状態でした。
それで、病気治しというわけではなかったのですが、私の知人の呉服屋さんの奥さんが、大層霊視の強い方だったので、こういう人もいるよって感じで、うちの母をその奥さんの自宅に連れて行ったんです。
で、いろいろ世間話したあとに、ほんと帰り際に、その奥さんは母の肩あたりを見ながらおもむろに、こう、おっしゃったんです。
「この方は比較的新しい人なので、わかられるかも知れませんね」
つまり、俗にいう守護霊の素性がそう昔の人ではないので、うちの母にもわかるかも知れないというのです。そして、
「明治時代の和服で、丁度『ハイカラさんが通る』にでてくる女の子のような身なりをしたひとですよ」
まあ、ここまではわかります。
誰でも当てずっぽうでも言えることですから、でも、
「その方は、つやさん、といいますよ」
「肝臓のあたりが黒く写ってますから肝臓病でなくなられたんでしょうね」
と、おっしゃるんです。
私は何のことか、誰のことかわからず横でキョトーンと聞いていました。
母もただうなづくだけで、別段驚いた様子はありませんでした。
しかし、それから、その奥さんの自宅を出た直後に、母が震えたような声で、私に
「しんちゃん、つやさんは私の祖母の名前よ」
というのです。
そのとき、ゾーーーッと鳥肌が立ちました。
つやさんは、私からすると、ひいばあさんにあたります。
ズボラな私は、つやさんの名前はうろ覚えで、それまでまったく記憶から消えていました。
母は疑い深い性格でしたので、あの時は感情を押し殺していたといってました。
でも、内面では、ガタガタ震えていたそうです。
で、そのつやさんは明治時代に青春を謳歌した人で、まさに『ハイカラさんが通る』の時代の人だったのです。
そして、確かに肝臓の病気で亡くなっていました。
つやさんは私の実家とはだいぶ遠くに御住まいの方でしたので、事前に呉服屋さんの奥さんの耳に入るような情報ではありません。
見事に固有名詞を当てられたんですね。
いまだに不思議に思います。

第18話 風穴

長年の友人である桑山さんからの投稿です。彼女は霊感が非常に強く何度も不思議な体験をしているのですが、またまた一風変わった体験です。ちょっと長いですが、ほぼ原文を掲載します。

先日、9月22日の日曜日のことです。
名古屋から、友人(女)が遊びに来ました。
その友人は、私の同居人(女)との共通の友人で、年は離れてますが、時々一緒に遊ぶのです。
で、女3人、かしましく伊勢の方までドライブしました。
二見、伊勢神宮、天岩戸と回って帰宅予定だったのですが、あいにく三連休の中日のためか、お伊勢さんがすごい人出でして、道は渋滞するわ駐車するのも時間食うわで、最終目的の天岩戸についたのが、午後5時。
ここは、秋田さま、ご存知かも知れませんが「日本の名水百選」に選ばれた場所で私は当然ながら、ステンレスの水筒を持参しておりました。お水を頂戴しようとね。
ここは、山深い道を昇って行きますと、いわゆるアマテラスオオミカミがお隠れになったという洞窟のようなものがありまして、そこから素晴らしくうまい水が湧いているわけです。
横にはお祀りしている神社も、あります。
以前一度、訪れたことがありますから、大体雰囲気はわかってますが、とにかく鬱蒼とした場所です。とても空気の綺麗なところで、どでかい樹もたくさんありますし森林浴にはもってこいの場所なんですが。
しかし、それ故に、暗いんです、あたりは。
この日の日没は17:52。早く上まで昇って水を汲んで帰ってこないと、山奥ですからすぐに真っ暗になってしまいます。
街燈などは当然ですがありません。民家のないところですから。
そういう山奥で夜を迎えた方は、おわかりになると思いますが、いったん闇になってしまうと、本当に何も見えないんですよね。
手を伸ばしてみて、自分のその手が見えないんですから。
そういうコトには、なりたくありません。懐中電灯など持ってきてませんから。
神社に至るまでの灯篭はありましたけれど、おそらく蝋燭を灯すのは年末年始か特別な行事の時だけと思われます。宮司さんの姿すら見かけないのですから。
狭い駐車場に車を停めたのが、ちょうど17時過ぎ。片道15分とすれば、まあ、何とか間に合います。
往路は何事もなく、無事に水の場所まで行けました。
これでお参りして、戻れば充分余裕です。
ところが、戻ろうという時になって、同居人(仮にKとしておきましょう)が更に昇りの道を指し、
「風穴だって」
私も看板を見て、「本当だ」と言い、「次はそこまで行きたいね」と言おうとしましたら、
「行こう!」
と何のためらいもなくKが言って昇り始めるではありませんか。
もうすぐ、日が暮れるというのに!しかもその道はこれまでの水場への道とは違い、舗装すらされてない、本当の山道です。人のすれ違いも出来そうにないくらいの細い道。
おまけに右側は崖っぷちです。暗くなって足を踏み外したら、ひとたまりもありません。
私は心の中で「おいおいおい!」と叫びましたが、名古屋から来た友人(Tとしておきます)も、後から昇り始めます。
(T、お前パンプスじゃないか!)と思いましたが、彼女らは私よりも若い。
はるかに若い。無謀さを咎めても旅情がしらけるだけかも知れない、と思って仕方なく私も昇りはじめました。
往路をよく覚えておこうとゆっくり歩いたため、大分遅れてしまい、彼女らはすぐに見えなくなりました。
途中、左手に鳥居がありました。道は、まっすぐ、前に伸びています。
そして、鳥居の横にあった「風穴」という看板も、まっすぐの矢印を示しています。
私は、鳥居を見て、前の道を見て、ということを何度も繰り返している内に、妙な看板を発見しました。

「林内、立ち入り禁止」

…この道は林の中に通じているように見えるんだが。
行ってもいいんだろうか。

A:このまままっすぐ進む
B:やはり危険だ、引き返そう
C:「おお〜い」と情けない声を出してみた

…こんなトコロで、サウンドノベルごっこをしている場合ではありませんね(笑)。
はい、私が選んだのは「A」でございます。
まあ、恐る恐るでしたが、とりあえず進みました。右側の谷底に注意しながら。
昇ったり降りたり、という山道がしばらく続きましたが、時刻はそろそろ17:40。
日没まであと10分くらいしかありません。今更のように、携帯をポケットから出してみましたが、当然のように「圏外」です。
ちょっと途方に暮れかけていたころ、前方で、二回、拍手の音がしました。
よく見てみると、はるか上のほうに、Kの茶髪が見えます。
どうやら、彼女らは無事に風穴まで到着し、そこを拝んでいるようです。
私はほっと胸を撫で下ろしました。
無事が確認できたなら、私はわざわざ行くこともないや、ここで待っていよう、と思いました。
そうしている間にも、どんどん日は暮れていきますから。
やがて二人ともの無事な姿が見えたので、
「おーい、大丈夫かー」
と、私は声をかけました。
「ごめーん」と二人は降りてきます。
私は、ぬかるみの場所などを教えながら、今度は私が先導して下りました。
水場に降りてきたのが、17:50。日没まであと2分。ギリギリです。
まあ、水場まで来れば、あとは駐車場までは一応舗装されてますから、安心です。
「どうだった」
との私の問いに、二人は
「すごかったすごかった」
「うん、あれは常世の入り口だ」
「何か、亡者の声、聞いちゃったよ」
「風の音とは思えないよね、あれは」
などと、矢継ぎ早に物凄さを語ってくれました。
そして、彼女らは更に「古事記」や「あの世」の話をしつつ、私の前を歩いて行きました。

私は彼女らの後ろから、話を聞きつつついていったのですが、その時、妙なモノを、先ずはTの左肩に発見しました。
私から見ると、Tが右側、Kが左側を歩いていましたが、その妙なモノは、Tの左肩で少し「わしゃわしゃ」と動いたかと思うと、ふいにKの右脇腹の辺りに移動(というかジャンプ)しました。
それは、黒くてぼんやりしたモノで、知ってるヒトは判ると思うのですが、「ケムンパス」のようでした。「トトロ」に出てきた「まっくろくろすけ」がもう少し大きくなったカンジです(ドッジボールより少し小さいくらい)。
でも、羽根っぽいモノもありまして、それが時々「わしゃわしゃ」と羽ばたくように動くのです。
はっきり見えたわけではなく、ぼんやりとしか見えませんでしたので、顔とか目とかそういう具体的な部分はわかりませんでしたし、あったのかどうかすら判然としません。
そういう、「ワケわからんモノ」が、よく見ると数体、Kの腹から肩に登ったり、またTの頭に飛び移ったり、とにかくひっきりなしに二人の間を、行きつ戻りつ、ぴょんぴょんしているのです。
「妙なモンがいるなあ」と思いましたが、あまり恐怖感を感じませんでしたので、あえて黙っていたところ、駐車場に出るところの鳥居をくぐった途端、それは見えなくなってしまいました。
多分、あの鳥居の外には出られないんだな、と私は判断し、そのまま何も語らず車を走らせました。
別に事故にも遇わず、無事に鈴鹿まで帰って来られて、幸いです。

で、名古屋の友人Tが帰宅してから、私は初めてその話をKにしました。
すると、Kの話によれば、風穴は確かに気味が悪く、自分でも今思うと何故あんな無茶な時間に行こうとしたのか、わからない、とのこと。
Kは普段、かなり怖がりなタチで、そのくせ取り憑かれやすく、普通の神経状態ならまず行かない筈なのです。それは、Kも認めました。
「なんか、よばれてたのかも」
お賽銭を入れる箱があったので、そこに手を伸ばしたところ、穴からの風を直接浴びてしまったのだそうで、「腕が気持ち悪かった」。
注連縄もあったそうですが、「あんなの、いつ取り替えたかわかんないくらい古いよ」だそうで、役に立っているのかどうか。
それと、これもあとでわかったのですが、私もTも見ている、途中の鳥居を、Kは「全く記憶にない」のだそうです。
風穴の看板を見た途端「行かなければ」という思いが働いて、昇り始めた。
風穴についた途端、今度は「日没までに戻らなきゃ」と必死に山を下った。
Kは、そんなふうに語ってくれました。

…なんか、怖い話になってますかしら、これって。どうも語るのが下手なものですから。
今度は、ちゃんと日のあるうちに、私も風穴まで昇ってみたいと思います。
でも、Kったら、あれから遊び過ぎで疲れたのか、微熱が下がらないんですよね。
月曜も病院行って、点滴とかしてもらって、医者は
「新しい風邪かなあ」
と言ってたそうですが。
明日も、病院行くそうです。下がらないから。
「風穴の風にあたったから、『風邪』」なんて、洒落になりませんよねえ。
きっと遊び疲れです、うん。私はそう思っています。あははは。

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