たけしのニッポンのミカタ!


ABO FAN


平成21年8月14日 22:00〜22:54 テレビ東京 たけしのニッポンのミカタ! 「占い」なしでは生きられない!

 この番組では、「占い」として、「血液型性格診断」が取り上げられてました。
 なかなか面白い内容だと思ったのですが…。

 驚いたことに、この番組では意図的な「データ操作」、もう少し強い調子で言わせてもらえるなら“データ改ざん”?が行われていると言ってもいいでしょう!
 まず間違いなく、否定的な内容にするように、どこかから"圧力"がかかったに違いありません。
 いやぁ、テレビ局がこんなことをするとは本当にビックリです。
 そのままデータを出しても、内容や視聴率が変わるわけじゃなし、特に問題ないと思うんですが…。

 ところで、いくらなんでも、“データ改ざん”とまで言ってしまうのは、私の考え過ぎじゃないかと思う人もいるかもしれません。
 確かに、テレビ局だって完全ということはないですし、チェックミスや単純ミスもあります。
 私も、人のことを責められるほど、データをキチンとチェックしているかというと…。f(^^;;

 しかし、番組を見ると、どう考えても意図的に“データ改ざん”をしているとしか考えられないのです。
 ということで、否定側の立場からしても問題だと思うので、あえて取り上げることにしました。

アンケートの“データ改ざん”?

 では、本題に移りましょう。

 さて、この番組では、「NTTナビスペース」調べとして、 血液型による性格の違いのデータを示していました。

血液型による性格の違いがある

  はい いいえ
男性 47.3% 52.7%
女性 63.1% 36.9%

「NTTナビスペース」調べ

 普通は、70%割程度が「はい」と答えているので、男性の「はい」がちょっと低めです。
 最近のデータは、否定的になったのかなぁと思って、念のため、実際のデータを調べてみました。

 なんと、「いいえ」に「わからない」が含まれているのです!
 普通のアンケートでは、「わからない」と「いいえ」は全く別の回答として扱います。
 この番組での扱いは、いくらなんでも酷いですね。
 単純ミスじゃないとするなら、他の部分の分析も疑ってかかる必要があります。

 #これについては後述します。

 ちなみに、オリジナルのデータは次のとおりです。

血液型による性格の違いはあると思いますか?

  あ る ない わからない
男性 47.3% 28.0% 24.7%
女性 63.1% 15.0% 21.9%

実施日2007年11月29日 総回答数74,733通
出典:http://www.research.nttnavi.co.jp/...

 #確かに、元の「NTTナビスペース」のアンケートは妥当な結果ですね。

 もっとも、この程度で“データ改ざん”というのは言い過ぎではないか、という考えもあるでしょう。
 しかし、必ずしもそうとは思えないのです。
 なぜなら、このテレビ東京のやり方が認められるといういうなら、同じデータで全く逆の印象を与えることもできるからです。

 ちなみに、私だったらこうします。

血液型による性格の違いはない

  はい いいえ
男性 28.0% 72.0%
女性 15.0% 85.0%

「NTTナビスペース」調べ

 やはりこれは、意図的な“データ改ざん”ですよね?
 
となると、番組のこの部分のデータは、どう考えても意図的な“データ改ざん”と言うしかないでしょう!

 これを裏付ける(?)のが、番組の解説です。
 血液型のところだけ調べて、時間順に並べてみると、

【番組ホームページ】
「血液型占い」を科学的に検証したり

【iEPG】
「血液型占い」を科学的に検証したり

【インターネットTVガイド】
血液型による性格診断を基にした占いの疑問点も検証する

【当日の新聞のテレビ欄】
血液型占いのウソ

 となっています。
 そして、実際に放送された番組では、「血液型性格判断は真っ赤なウソ!?」という大きなテロップで「血液型占いはマスコミが作り上げた真っ赤なウソということか?」ナレーションが入っています。
 ビートたけしも、コメントの冒頭で「俺もよくB型に間違えられるからな」とも言っています。

 このように、時間を追って、否定的なニュアンスが強くなっていることがわかります。

しかし、意外なことに、この後に、パンツのたたみ方や、部屋の散らかし方(O型vsA型)など、血液型トークが炸裂します。
総合的な印象としては、専門家は否定しているけど、実感としてはやっぱり関係あるジャンといったところでしょうか。(笑)

番組制作スタッフはデータの矛盾を知っていたのか?

 実は、本当に問題なのは、2人の心理学者のデータなのです。

 たぶん、この番組では、血液型を否定するのに専門家(心理学者)の意見を聞きに行ったのでしょう。
 しかし、それが、中西さんと山岡さんの2人では、制作者(テレビ東京?)が人選をミスったのは確かです。

念のため、中西さんや山岡さんが悪いのではありません。
あくまで、この2人の組み合わせが悪いのです。:-p

 というのは、

中西さん→データに差がない→血液型による差がない
山岡さん→データに差がある→マスコミによる影響→本当は血液型による差がない

 と、データの解釈をめぐって、2人は正反対の立場を取っているからです。

 番組ではどうするのかなぁ、と思っていたのですが、結局は中西さんの主張(データに差がない)だけを放送していました。
 結果的に、山岡さんの(データに差がある)という主張は全く放送されませんでした。
 不思議ですね。

 たぶん、制作者側では、この矛盾に気付いていたと思われます。
 なぜなら、山岡さんの研究は、私が知る限りデータに差があるという内容のものしかないからです。
 番組の制作スタッフが、山岡さんに話を聞きに行った時点で、山岡さんが自分の研究を紹介しないなんてことは、99.999…%ありえません!

実は、別な証拠もあります。
番組では、山岡さんが2001年から2005年にかけて山岡さんが独自に調べた3,074人のデータを紹介していました。
この条件に当てはまる研究は、山岡さんの公式ページを見る限り2つしかありません。

1. 血液型差別の抑制要因 日本社会心理学会第43回大会日本社会心理学会第43回発表論文集 2001年
2. 血液型性格項目の自己認知に及ぼすTV番組視聴の影響 日本社会心理学会第47回発表論文集 2005年

出典:http://www.seitoku.jp/daigaku/...

そして、2.は後述するように週刊ダイヤモンド(平成20年11月8日号 使える心理学)で内容が公開されています。

 念のため、中西さんが番組でどう言っているか書いておきましょう。
 彼は、こう言っています。

もし、血液型による性格判断が正しいなら[番組のために彼が行った300人のアンケートでは、A型の性格特性を並べたため]、A型の得点が最も高くなり、B型、O型、AB型との得点に差が得られるはずです。

 しかし、実際にはデータに差がない[正確には、A型の得点が一番高かったのですが、差はわずかのため無視できる]ので、血液型による性格判断は嘘である、という結論になります。

 では、山岡さんの研究はどうか?
 読めばわかるとおり、データに差があると明確に書いてあります。

山岡講師は「テレビを見て楽しんだ層は、与えられた情報により暗示がかけられ、マインドコントロールされてしまったために、「血液型によって差が出た」と言う。それに対して、テレビを見なかった層は暗示にかけられないということだろう。テレビを見なかった層の結果を見れば、血液型によって性格の差がないということが実証されている。(週刊ダイヤモンド 平成20年11月8日号 使える心理学 54ページ 太字は私)

 血液型性格項目の自己認知に及ぼすTV番組視聴の影響(日本社会心理学会第47回発表論文集 2005年)の紹介

 山岡さんは、1365人の大学生を対象に調査を行いました。
 その結果、

山岡講師は「テレビを見て楽しんだ層は、与えられた情報により暗示がかけられ、マインドコントロールされてしまったために、「血液型によって差が出た」と言う。それに対して、テレビを見なかった層は暗示にかけられないということだろう。テレビを見なかった層の結果を見れば、血液型によって性格の差がないということが実証されている。(54ページ  太字は私)

出典:週刊ダイヤモンド 平成20年11月8日号 使える心理学

 よって、データに差が出ているものの血液型と性格は関係ない、という結論になっています。

 →詳しくはこちら

 しかし、現実問題として、このデータにまつわる矛盾が明らかになってしまうと、番組の制作意図(血液型と性格を否定する?)とは全く逆効果(?)の番組になってしまいます。
 いくらなんでも、そんな内容の番組になってしまったら、プロデューサーのOKが出るはずがないし、せっかくお願いした中西さんや山岡さんの顔にもドロを塗ることになってしまいます。 中西さんには、学生300人のアンケート調査もお願いしているのに…困った困った。(*_*)
 しょうがないので、制作スタッフは、(おそらく山岡さんの了承の下で?)、中西さんの主張だけを放送したのだろう…と勝手に私は推測しています。

 もしそうだとすると、番組中で血液型を「日頃もっともよく話題に上る」と言っていたのにもかかわらず、最後の方に持ってきたのも納得がいきます。
 制作者の意図を考えると、「日本で一番ポピュラーな占い」を否定するなら、番組の一番最初に放送しないとおかしいですよね?

 もちろん、以上は単なる私の推測だろう、という意見もあるでしょう。
 しかし、実は、私が知っている別のテレビ番組では、ほぼ同じような経過をたどったのです。

#その後どんな結果になったかは、皆さんのご想像にお任せしますが…。(苦笑)

 さて、普通の番組なら、否定的な主張は1つしかありませんから、専門家に聞いたままの内容にする、というならよくある話です。
 この場合、その番組の制作スタッフは、意図的な“データ改ざん”はしていません。
 声を大にして言っておきますが、この番組「たけしのニッポンのミカタ!」の最大の問題(?)は、どうやら番組の制作スタッフがデータの矛盾を知っていた(らしい?)ということです。
 しかし、それにもかかわらず、矛盾するデータは公開しないというなら、「科学的な検証」とは言えないどころではなく、トンデモということになってしまいます。

#まさかとは思いますが、番組の制作スタッフが、山岡さんの研究は全く調べなかったということなら問題外です!

 もちろん、物事には、いろいろな見方があり、否定的な内容の番組を放送することにも(その内容が正しいかどうかはともかく)意義はあると思います。

 しかし、今回のように、意図的な“データ改ざん”の可能性が高い、というのは非常に大きな問題だと言わざるをえません!
 まさに、逆『あるある』になってしまう危惧を抱いてしまうのは、私だけでしょうか?
 ひょっとして考えすぎ?

中西さんのデータの分析

 最後に、中西さんのデータについて、もう少し突っ込んだ分析をしてみます。

 中西さんとは、10年ほど前に随分頻繁にメールのやりとりをさせていただきました。
 いろいろと教えてもらったことも多く、素人の私と真剣にやりとりをしてもらったことには、今でも強い印象に残っていますし、現在でも感謝しています。
 ですので、ここに反論を書くのは、正直心苦しいのですが、「科学的な検証」で遠慮するのもナンなので、データに基づく反論を展開して行こうと思います。

 さて、

 冒頭に中西さんは「血液型性格判断は全く根拠がない嘘ですね!」と言ってましたが、これは私も全く同感です。
 「血液型だけ」で人の性格が判断できるなら苦労しませんから!(笑)

 ただし、「血液型と性格に関係がある」というなら、それはまた別の話です。
 番組では「血液型性格判断」の「性格特性」と言ってましたが、定義ははっきりしません。

 とりあえず、番組中のアンケートで使った、ある血液型の10個の性格特性を示しておきます。

@私は穏やかな人間である
A私は慎重派の人間である
B私は礼儀正しい人間である
C私は繊細な人間である
D私は思いやりがある人間である
E私は思い切りがよい人間である
F私は常識がある人間である
G私は疑い深い人間である
H私は自信がない人間である
I私は頑固な人間である

 これは、一応A型の特徴のようです[注:番組でもそう説明していました]が、正直それほど差が出る質問とは思えません。

 実は、経験上、もう少し本能や感情に働きかける質問の方が差が出るのです。
 例えば、恋人の浮気を許せますかとか…。(苦笑)

 そして、中西さんの勤務している広島修道大学の学生300人に、実際にアンケートを実施してみました。
 現実のデータで調べてみるというのはすばらしいことですし、300人というサンプルもなかなか頑張っていると思います。

 では、結果はというと、

性格特性に関する調査結果…10問中で「はい」と答えた質問数

  質問数
A型 6.47
O型 6.03
B型 6.31
AB型 5.75

※血液型の色は番組と同じにした

 結論としては「ほとんど差がない」とナレーションが入りました。
 実は、この結論には少々問題があります。
 なぜなら、どのぐらいの差なら「差がある」と認めるのかの基準がはっきりしないからです。

もっとも、300人のサンプルなら、この程度の差では統計的に差がある(有意)とは言えません。
そういう意味では、ほとんど差がないというのは正しいのです。

 しかし、既に書いているように、元々こういう質問では、あまり差が出ない可能性も少なくありません。
 というのは、「血液型性格判断のプロ」に作ってもらったわけじゃないからです。
 ですので、多少は血液型どおりの差が出た(これは事実)と考えても、特に実験の結果とは矛盾しません。
 また、山岡さんのデータでも、差の大きさは似たようなものです。

 念のため、中西さんが番組でどう言っているかもう一度書いておきましょう。
 彼は、こう言っています。

もし、血液型による性格判断が正しいなら[番組のために彼が行った300人のアンケートでは、A型の性格特性を並べたため]、A型の得点が最も高くなり、B型、O型、AB型との得点に差が得られるはずです。

 結局、「差があるとはいえない」のは正しいのですが、これで「血液型と性格」が否定できるとは思えません…。
 なにしろ、山岡さんのように、1,000人以上の大サンプルなら統計的に有意な差が出ているのですから、300人では足りなかったのかもしれません…。

ところで、どうしても、大きな差を出したいならどうすればいいでしょうか?
番組でも言っていた、有名な性格特性(「几帳面」「我が道を行く」「大ざっぱ」「変わり者」…といったイメージ)を採用すればいいはずですよね。v(^^)
簡単でしょう!(笑)

 ところで、最後の説明で、中西さんは「なぜ血液型占いを信じるのか?」に対して「血液型というのは4種類ですから覚えやすいし特徴も出しやすい!」と結論付けています。
 しかし、最初の部分では、「血液型性格判断で述べられている性格特性は、誰にでも当てはまるような特性であることが多い!」とも言っています。
 あれ〜〜????
 常識的に考えて「覚えやすいし特徴も出しやすい」性格特性が「誰にでも当てはまる」というのは矛盾します。
 具体的には、「几帳面」「我が道を行く」「大ざっぱ」「変わり者」…といったイメージなら、どうなのでしょうか?
 「覚えやすいし特徴も出しやすい」のか「誰にでも当てはまる」のか、どっちが本当なのでしょう?

 このように、この番組の内容は、かなり矛盾しているように思えます…。

私の意見についてコメントをいただいたので紹介させていただきます。
ありがとうございます。

1. 中西さんのブログ
 http://www.shudo-psy.net/nakanisi/...
2. FSMさん「ほたるいかのかきつけ」でのエントリー
 http://ameblo.jp/fireflysquid/...

最後に

 繰り返しますが、「血液型と性格」に関する反論自体はいいことだと思いますし、どんどんやってほしいことです。
 そして、中西さんや番組のスタッフが、手間を惜しまずに、きちんと300人のデータを取ったのはすばらしいことだと思います。
 私も賛辞は惜しみません。
 しかし、それにもかかわらず、(番組制作スタッフが?)矛盾するデータは公開しないというなら、決して「科学的な検証」とは言えないでしょう。

 しつこいようですが、この番組「たけしのニッポンのミカタ!」の最大の問題点は、番組制作スタッフがデータの矛盾を知っていた(らしい?)ということです。
 また、「NTTナビスペース」のアンケート結果を意図的に“改ざん”?した可能性もあります。
 それが、他の番組とは違うところです。

 これでは、せっかくの「科学的検証」や中西さんの努力も水泡に帰してしまいます。

 願わくは、この私の推測が間違っていることを望みます。
 しかし、残念なことに、その可能性はかなり低そうです…。(T_T)  -- H21.8.16


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最終更新日:平成21年8月16日 [H28.10.2モバイル用に微修正]