雪の表情

 雪と共に暮らす津南の冬。厄介者の雪であると同時に、天からの恵みでもあります。雪が時折見せる様々な表情には、美しさや不思議さがいっぱい。ちょっと紹介しましょう。
雪まくり
 冬の森の中で出会った不思議な不思議なバームクーヘン。「冬のバラ」という人も。初めて出会ったときは、いったい誰の仕業かと本当にびっくり。
 古い雪の上に新雪が少し積もった晴れの日、日に照らされて表層の雪が湿雪に変わると、木から落ちた雪などをきっかけにできるようです。
 わたしは、直径1mにもなる大きなものも出会ったことがあります。
 クロカンのスキーで斜面を横切ったら、転がった雪から次々と雪まくりができました。
冠 雪

 樹木や電柱など、様々なものの先端に冠状に雪が積もることを冠雪と言います。
 これは、わたしの集落(割野)の火の見櫓に積もった冠雪。
 これは、初雪のころ、田んぼの稲の切り株にできた冠雪の模様。
 信濃川の河原の石にできた半球状冠雪。
 上流で発電用に水を取られるため、冬も信濃川は、こんなに水が少ないです。うちのじいちゃんが子どものころは、夏には泳いで対岸までたどり着くことが、男の子の度胸試しだったとか。今は歩いても渡れそうです。この水でおこした電気が、首都圏の電車を動かしています。
   強い風が吹くと、冠雪の頭が平らになって、かなとこのような形になります。
 割野のお宮さんの灯籠にできた冠雪です。まるで素敵な帽子のようですね。

 電信柱で成長していく冠雪。落ちて、下を通る車や人に当たったら大変です。気を付けて歩かないといけません。
  風下側に垂れて、烏帽子(えぼし)状になった冠雪。雪に粘り気があるため、こんな形にもなります。
 
 
雪紐(ひも) 

 
    さらさらとしていると思われがちな雪ですが、乾いた雪から湿った雪まで様々です。
 湿った雪は、結晶同士が結びついて粘り気が出てきます。そうすると、雪が紐のようになっても、落下せずに残ることがあります。それが、「雪紐」です。
 写真は、屋外の階段の手すりにできた「雪紐」です。
    これも、同じようにしてできたものですが、随分太い「雪紐」になってしまいました。
    

 近所の倉庫の鉄骨にできた「雪紐」。これまた、随分成長して太い「雪紐」になってしまいました。
 
 雪面にできる模様

    新雪が降った後、急に暖気が入ったり、雨や霙が降ったりすると、雪面にいろいろな模様が現れます。
 左の写真は、河原の石に積もった雪に霙が降ったために、亀の甲羅のような模様ができてしまいました。水が少しでも低いところを求めて、雪の中に水の通り道ができるためにこうした模様ができるそうです。下に紹介する「雪えくぼ」も同様です。
  
上の写真のアップです。
 
 山の斜面にも、雪の中で水の通り道ができた跡がありました。
 
 
 
雪えくぼ 

 雪はときどき、本当に不思議な模様を見せることがあります。ある朝目覚めたら、雪面にこんな模様が・・・。
 
 雪えくぼと言うそうです。
 新雪が降った後に、急に暖気が入ったり雨が降ったりすると、雪の中で水の通り道ができて、こんな凹凸を作るようです。

 春先によく見られます。春の訪れを告げる天使のえくぼでしょうか。
 朝霧が立ちこめる信濃川河畔にできた雪えくぼ。昨日暖気が入り、春のようなあたたかさになりました。
 
 
 屋根にできたとても深い雪えくぼ。とても湿った水っぽい雪がたくさん降りました。

 
 
波状雪(流れえくぼ) 
   土手に、筋状の模様ができていました。波状雪(流れえくぼ)です。こうした模様は、春先の雪解けの時によく見られるのですが、最近は暖冬のせいか、真冬でも雨が降ることがあり、こうした模様が現れることがあります。
    5月、山々の残雪に現れた波状雪。周りのブナが一斉に芽吹き、眠っていた森が目を覚まします。

 
 
巻き垂れ

 雪は、とっても粘っこいものでもあります。ゆっくりと屋根を滑り落ちた雪が切れずに内側に巻き込んでいます。先端のつららなどが、窓ガラスに当たり、ガラスを割ることもあります。
 体育館の屋根にできた巻き垂れ。
薄い15cmほどの積雪がゆっくりと滑り落ちていくときに、できました。3m以上も垂れ下がっていると思います。
   
 
 
雪の色

 晴れた日に森に入ると、白とブルーの世界。木々の影が白いキャンパスに様々な濃淡のブルーを染み込ませています。

 ついさっきついたと思われる野ウサギの足跡がありました。
 雪はけっして白だけでは表現できません。雪の色は、100色、いや1000色、もっともっとあるかもしれません。
 朝日に輝く一瞬の色。
 激しい寒波が過ぎ去った朝のモルゲンロート。
    朝日が、新雪の積もった山里を染めていきます。
    凍てついた朝。漆黒の空が、パープル色に染まり、雪面や川面を染めていきます。
 
 

 青い雪です。
 雪の中が青いのです。スコップを入れると、雪の奥が、深い水色に染まっているのです。神秘的な美しさでした。
 
 この日、平成26年2月16日、関東地方にも記録的な大雪が降りました。この青い雪は、関東地方でも広く見られたようです。
   これは、ある条件が重なったときに見られる現象のようです。とても湿った雪がある程度の量、まとまって降った時に見られるようです。私自身、青い雪には、何度か出会いましたが、これほど美しいものは、初めてでした。
 
 
屋根の雪

 トタン屋根のトタンの切れ目にそって、切れて滑っていく雪。
 雪が水を多く含んでいるときに、このようになりやすいようです。
 体育館の屋根から滑り落ちる雪が山になり、2階の窓も隠し、屋根とつながってしましました。重機を入れて、下の雪をどかさないと、窓や屋根が壊れてしまいます。
    3mを超す雪となりました。近所の家は、1階部分がすっぽりと埋まってしまいました。
    降りしきる雪の中での雪下ろし作業。降ったばかりの雪で1㎥あたり150kgほど、しまった雪では1㎥あたり400~500kgほどになると言われています。
 また、スコップ一かき(約30cm立方)の重さは、約8kgもあると言われます。それを何十回、いや何百回とやるわけですので、雪下ろしは重労働です。
    スノーダンプを使うと作業が楽です。波板を敷いて、雪を流していきます。
 
 
雪庇(せっぴ)

    雪が降り続くと、風下側に屋根から雪が大きくせり出してきます。これが危ないのです。雪下ろしで屋根に上った人が知らずに踏み抜いて落下することがよくあります。
 また、暖気が入ると大きな固まりになって落下します。そのときの爆風のような風が、一瞬にしてガラス窓をやぶり、家の中の人たちがけがをしてしまうこともあります。
    18年豪雪の時の雪庇です。すでに2m近くせり出しています。この年の豪雪では、屋根の除雪が間に合わず、大きな雪庇の落下で建物などが壊れる被害がたくさんありました。
    これも2m以上、せり出しています。
 
 
着雪                                                          

 
 
     湿り気が多い雪が降ると、着雪が起こります。電線にもご覧のとおり。
 ときには、雪の重さで、電線が切れたり、鉄塔が倒れたりすることもあります。
     
 随分太くなってしまいました。   青空に雪のついた電線が交差すると、とてもきれいです。   工事用のポールに着雪が起こりました。
 
    一つの方向から湿った雪が降り続いたため、こちらから見える側だけ、枝先まで真っ白になっています。
    夜になって湿り気の強い雪が降り出しました。街路樹にも付着して、幻想的な雰囲気を醸し出しています。

 
 雪の結晶

 津南は湿雪が多い上、わたしがいる割野は標高が230m位なので、なかなかきれいな雪の結晶を見ることができません。

 それでもときどき冷え込んだとき、六角形の結晶がそのまま降り積もっています。
 
   
見れば見るほど不思議です。どうしてこんな形になるのでしょうか。自然の神は偉大です。
 
 スプーンカット
   

 春が近づいた頃、雪面にスプーンですくったような模様が一面に出ることがあります。日差しで解かされた雪が、風などの影響でこのような形になるのでしょうか?こうした模様ができる日は、夜間に冷え込む日が多いように思います。風と雪の湿り気と気温が微妙に関係しているようです。
 夏に山の雪渓でもっと大きなものを目にしますね。 
 
さざなみ雪
    
 新雪が降った翌日に暖気が入り、日も差しました。そうしたら建物脇の斜面に、さざ波雪が現れました。
 斜面の解けた雪が、その重さで少しずつ滑り落ちるときにこうした模様を作るのでしょうか。
   まるで、岸辺に打ち寄せるさざ波のように見えます。 
 

 
ロール状の雪の層  
      

 湿った雪が薄く積もって、車のフロントガラスにこんなおもしろいロール状の雪ができました。
 

 
雪の層
 
    雪は、そのときの気象条件によって、湿った雪、乾いた雪など、様々な状態で降ります。また、積もった後に雨が降って、ざらめ雪になることもあります。
 そうした様々な雪質の雪が、積もる間にきれいな層になってきます。
 ざらめ雪の層の上に新雪が積もると、雪崩が起きやすくなります。
 雪の層は、そうした雪の状態を知る上でも、大切なサインです。
   
 
 風雪紋(シュカブラ) 

 
    風雪紋(シュカブラ)とは、山岳用語で言う「波状の雪面」です。猛烈な強風によって雪面に、様々なでこぼこや模様が現れます。かつて私も冬山に登っていたとき、巻機山の雪原などで、目にしました。強風の中で、その美しさに目を奪われたことを覚えています。
 
  これは、峠を越えるトンネル内にできたシュカブラの一種です。トンネルに吹き込んだ雪が、強風で波状になっています。
    この日、暴風雪が吹き荒れ、視界がほとんど効かず、とても怖い思いをして、峠を越えました。 
 
根開き 
 
      春が近付くと、森の木々が太陽の光を浴びて、その体温を上げていきます。そして、木の周りの残雪をどんどん解かしていきます。
 その木の根元にできた丸い窪地が、「根開き」です。
 
   
 
 
雪の力   
    軟らかそうに見える雪ですが、積もった雪は、とても大きな力を持っています。
 特に雪解けのときの力は、想像を超える場合もあります。
 左の写真は、斜面の雪がゆっくり滑り落ちながら解けていくため、グライドという大きな力が働き、ガードレールの支柱が、みんな引き倒されてしまいました。
    これもガードレールが、グライドと雪が沈み込むときの力(沈降力)によって、無残にも引き倒されています。何トンにもなる大きな力です。鉄棒さえも曲げてしまいます。
    雪解けの力は、森の木々にも大きな被害を与えます。
春先の陽光に照らされて、昼間は表面が溶けた雪は、夜の冷え込みで再び凍りつき、鉄板のように固い氷雪になります。その雪が沈み込む沈降力によって、木々の枝がもぎ取られてしまいます。
    沈降力でもぎ取られたコナラの枝。雪国の森では、積雪が木々の生長を阻害する大きな要因となります。雪に押しつぶされ、幹を折られ、のたうち回りながら成長していきます。
 そして、幸運にも、何とか雪に折られずに雪の上に抜け出せた木(雪抜け)だけが、まっすぐ上へと生長していきます。
    苗木に添え木をしましたが、このとおり。沈降力とグライドによって、苗木と共に根元から何か所も折れてしまいました。切るしかありません。
 
 赤い雪
   残雪期、雪が赤く染まることがあります。「赤雪」「紅雪」と呼ばれる珍しい現象です。世界中の高層湿原や山で確認されています。平成12年には、NHKで尾瀬の赤い雪が放送されていました。
 この赤い雪の正体は、「氷雪藻」「雪上藻」と言われる藻類の仕業であることが分かっています。冷たい雪の上で大発生すると赤く見えるのだそうです。
 
 
  しかし、その発生のメカニズムなど、まだ分からないことがたくさんある不思議な現象なのだそうです。
 この写真は、平成13年4月20日に撮影したものです。1枚の田んぼの残雪にだけ、赤い雪が発生しているのです。
 ここ津南では、苗場山の高層湿原(標高約2100m)で発生することが知られています。この写真の田んぼは、標高約400mなので、苗場山などに見られるものとは、別の種類かもしれません。
    毎年発生するものでもなく、この田んぼで赤い雪を見たのは、初めてでした。
 いづれにせよ、不思議な現象です。
 

 
雪、その他にも

 雪原で見つけた模様。どうしてこんな模様ができるのでしょうか。
これも雪えくぼのように、雪の解け方に関係があるのでしょうか。





 電線についた着雪




 ぐんと冷え込んだとき、近所の木々に霧氷がついていました。
 あまりの美しさに思わず息をのみました。
 何日も雪が降り続いた後の冬晴れの日。こんなに空は青かったのかと感激!
 この美しさがあるから、降り続く雪にも耐えられるのかもしれません。