虫たちの不思議な世界 |
~海を渡って死出の旅を繰り返す~
ウスバキトンボの不思議な生態
~夕焼け小焼けの赤とんぼ 負われて見たのはいつの日か
~夕焼け小焼けの赤とんぼ とまっているよさおの先
赤とんぼは何トンボなの
赤とんぼという名のトンボはいません。広い意味では体が赤い色やオレンジ色など
赤みがかった色のトンボの全てをさす俗称です。
狭くはトンボ目トンボ科アカネ属に属するトンボの総称です。日本だけでも21種
いるそうです。
童謡「赤とんぼ」も、そこで歌われている赤とんぼはどの種なのか?
赤とんぼの代表である秋に真っ赤になるアキアカネは夕方にあまり飛ばないか
ら「夕焼け小焼けの赤とんぼ」という歌詞に矛盾する?
いやいや、夕焼が早く訪れる東北などでは、夕焼の時間帯とアキアカネの郡飛
が一致し、その様な風景が見られる?
西日本では、秋には群れをなして飛ぶのを見かけるのはウスバキトンボだから?
ウスバキトンボの弱点は「とまっているよさおの先」で、ウスバキトンボは物
にとまるとき何かの先端に体を水平にとまるのではなく、枝の途中や葉などに
お尻を下にしてぶらりとたれさがるから、歌のイメージと矛盾する?
~ 論争は終止符を打つようには見えません ~
ウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉)Pantala flavescens
津郷 勇氏
ウスバキトンボはトンボ科ウスバキトンボ属に分類されるトンボの一種。成虫の体長は
5㎝ほど、翅の長さは4㎝ほどの中型のトンボです。成熟したオスは背中側にやや赤み
がかるものもいる。
全世界の熱帯・温帯地域に広く分布する汎存種の一つです。分類上では「赤とんぼ」で
はないが、一般的な言葉のうえでは「赤とんぼ」と呼ばれている。
お盆の頃に成虫がたくさん発生することから、「精霊とんぼ」「盆とんぼ」などと呼ば
れる。「御先祖様の使い」として、捕獲しないよう言い伝える地方もある。
トンボの多くは成虫になっても水辺にとどまるが、ウスバキトンボの成虫は水辺から遠
く離れて飛び回るので、都市部でも目にする機会が多い。あまり羽ばたかず、広い翅で
風を捉えグライダーのように飛ぶことができ、長時間・長距離の飛行ができる。
食性は肉食性で、蚊などの小昆虫を空中で捕食する。小昆虫の有力な捕食者と考えられ
る。敵は鳥類、シオヤアブなどの他、、シオカラトンボ、ギンヤンマなど大型のトンボ
にも捕食される。
ウスバキトンボのメスの成虫の蔵卵数約 29,000は、ほぼ同体長のメシトンボの蔵卵数
約 8,800 の3倍以上である。メス成虫が一日に生産できる成熟卵は約 840個で、産卵
数の多さが日本における数か月での個体数急増を可能にすると考えられている。
<日本での発生>
毎年日本で発生する個体群は、まず東南アジア・中国大陸から南日本にかけて発生し、
数回の世代交代を繰り返しながら、季節の移ろいとともに日本列島を北上してゆく。
しかし、寒くなり始めるとバッタリと成虫が見られなくなる。現在のところ、南下する
個体群なども確認されていないので、寒さで死滅すると考えられている。(無効分散)
なぜ毎年「死ぬためだけのために」海から渡ってくるのか?
理由は分かっていませんが、ウスバキトンボたちはその旅の行程で害虫を食べ、また小
鳥たちや他の生物に捕食されて村里の生態系の一助となります。まるで、人々の農耕や
実りを助けてくれるように。こう考えて見ると、「赤とんぼ」の詩の中のトンボが、ア
キアカネの姿と重なって思い出されたウスバキトンボであろう、というのは、いかにも
日本の田園の原風景の歌としても、ふさわしいような気がしませんか?
抜粋(「サイエンス2016.8.22」ホシノユウヤ)
参照:フリー百科事典Wikipedia・サイエンス2016/8/22