冬を読む


  陽 鳥  冬を詠む


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   みならひの鬼と思しき里神楽
    吉報を額にのせて日向ぼこ
     思い出に独逸の落葉拾ひけり
      水遁の術水鳥を見失なふ
       夫の肩杖とも頼み落葉踏む
   やどり木のあをあをとして冬木かな
    わがままに宿り木のゐし枯木かな
     ちぎれ雲影を落として小春かな
      湯けむりの奥に湯けむり山眠る
       白鳥の頸ぞんぶんに活かしけり
   丹頂の恋の作法を見聞す
    趣の解る年頃石蕗の花
     一言も物言はぬ日や枇杷の花
      百歳の白灯台に帰り花
       前山に北斗触れゐし焚火かな
   各々はそ知らぬ素振り鴨の群れ
    朝刊の文字につまづく冬の蠅
     大根切る胸に一物なかりけり
      筋書きの序章銀杏落葉かな
       晩年を遊び上手に小春風
   おとうとの継ぎし山里枇杷の花       
    口づけのポーズの羅漢石蕗の花
     凩の耳の奥まで立ち入りぬ
      流されてまた逆らふて鴨の午
       凩に話の腰を折られけり
   水深を分けて寒鯉すれちがふ
    寒鴉頻りに話し掛けてくる     
     ブイのゆれカモメのゆれて冬ぬくし
      一羽離れて着水す鴨三羽
       冬ぬくし空の半分晴れてゐる
   鴨一つ音頭をとりて潜りけり
    鴨一つ加はり水輪弾き合ふ  
     他人めく十一月の風の声
      朝風呂につかる勤労感謝の日
       尻余るほどの切株日向ぼこ
   をりをりにゆるんでしまふ鴨の陣
    言ふことも聞かず出てゆく冬帽子
     年惜しむオルガンの音のセピア色
      女湯の下に男湯寒の月
       なるほどと思ふ添削春隣
   ただひとり風邪引かぬ身の怖さかな
    凩や苦き思ひを持つて行け
     寒鯉の水の濁らぬやうに来る
      大寒の臍凹ませて湯につかる
       野良猫に声かけられる寒茜
   声上げて気品そこなふ寒鴉
    リタイアの近し勤労感謝の日
     灯台へ道筋二つ花八手
      寒鴉心の内をふともらす
       熱燗の辞書の解説そつけなし
   筋書きの終章雪の降る夜かな
    時折にたが締めなほす鴨の陣
     桐一葉身を持て余す遊歩道
      送る人送らるゝ人日短か
       しんがりはC群の猿冬日和
   寺領まで猿降りて来し冬日和
    骨董の薀蓄を聞く鵙日和
     水仙の岬の空の広さかな              
      日脚伸ぶ橋を渡れば母の里
       たれ憚らぬ凩の高笑ひ
   物語始まる雪の降る夜かな
    大寒の社に朽ちし戦勝碑
     日脚伸ぶ留守番電話妻の声
      白菜を断ち割る妻の気合かな
       百歳の白灯台に冬萌ゆる
   蝶結び出来ぬ夫のクリスマス
    父の声母の合の手夜なべかな
     思い出のロシアの落葉挿みけり
      おとうとの継ぎし山里枇杷の花
       懐手してやじうまの一人なり
   拝殿の後ろ銀杏の大枯木
    裸木となりて気概を込めにけり
     風花や仰ぎまつりし磨崖仏
      日向ぼこ物干す妻の口ずさみ
       どんなもんだい白鳥の流し振り
     かたまりて心あはせる石蕗の花
    花八手夜は満天の星明かり
     駅伝のたすきをつなぐ石蕗の里
      湯けむりの艶めく町のしぐれけり
       空白を残して石蕗の花終る
   懐手解きて決意を示しけり
    ほくほくの土を冠りし霜柱
     冬の波瀬戸の小島を引き寄する
      三度目は存在感のある嚏
       寒禽の声一頻りみんな留守
   大橋の上から鴨に呼びかくる
    水仙花岬へ人をあゆましむ
     白菜をたち割り憂さの晴れにけり
      大根を抱へて妻について行く
       落葉降るひらりと返す光かな
   添ふ鴨の波長かさなる水輪かな
        姫治む岬伝説花八つ手
          こともあらうに真つ先に風邪を引く
            裸木も吾も身軽くなりにけり
               枇杷の花にぎり拳を解きけり
      寒風や吾が耳朶の存在感
        寒鴉空気ゆらさぬ歩幅かな
          大寒の地獄で貰ふ茹で卵
            枯れすすき風の素通りしてしまふ
         旧交をあたためてゐる落葉かな     
      着ぶくれて気遣ひ要らぬ二人かな 
        添鴨一羽陣を離れて見たくなる 
          葱刻むもらひ泣きしてしまひけり
           シートベルトに身を固め雪女
            風邪の夫手足たたみて睡りけり 
      手招きで柚子呼び寄する露天風呂
        滑り台すべつてもみる落葉かな
          裸木の満を持したる構へかな
           凩の煽る地獄の噴気かな 
             セーターの編目に妻の一苦心
     拝殿の賽銭箱に日脚伸ぶ 
    木漏れ日に十一月の風の色 
     黄落や乗合バスの反転場 
      C群の猿降りてくる冬日和 
       裸木の影のあやとり模様かな 
   慶長の社は五坪路地小春 
    長身の影にほれぼれ日脚伸ぶ 
     木枯しに話し相手をしてもらふ 
      落葉降る身のをきどころ惑ひけり 
       マスクして心の扉閉ざしけり 
   大寒の狛犬の歯の毀れけり 
    北風にへの字の口の写楽かな 
     落葉踏むひびきの誘ひ一万歩 
      懐手してたれかれによりかかる 
       冬ぬくし猫の隠せぬ笑ひ顔 
   しぐれ明るき水郷の小京都 
    石棺の中は空つぽ竜の玉 
         日向ぼこここぞ年貢の納め時
           木刀の素振り一心白山茶花
       寒雀群れ口々にもの申す 
    凍星や辻に鎮座の地蔵尊 
    万年筆皿にをさめて年惜しむ 
         せつかちな夫をたしなむ春隣 
      風に声かけられてゐる枯葎 
       少し遅れた言訳の冬夕焼 
   枯木みな風につれないかたちかな 
    缶蹴りの鬼の逃げ出す片時雨 
     木柵の渡る枯野の起伏かな 
           所在無き日々鬼柚子のしかめ面 
       石蕗咲いて崖に垂れたる命綱
   母さんが戻つてこない鬼やらひ           
    三寒に四温にぐづぐづゐたり 
     ジャケットに外れ馬券のまぎれ込む 
      晩鐘の余韻に燃ゆる冬没日 
       冬の鵙乳房をひとつ失ひぬ
   虫食の葉にある余白十二月 
    たましいの夕べに賜ふ冬紅葉
     さざ波の眩しさ避けて鳰潜る 
     彫像の影の割込む日向ぼこ            
      親である子である顔の焚火かな        
   行く末の見えて落葉の吹きだまる  
    水鳥の水輪に弾きだされけり  
     初雪の空に小さき覗き窓  
      鴨一つ鯉の興味を惹きにけり  
       是非もなき事のなりゆき日向ぼこ  
   寄合の顔触れ顔ぶれそろふ寒蜆 
    雪女シートベルトに身をゆだね  

   掲載した俳句は、俳誌・雑誌・新聞などに掲載された中から選びました。

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