オーストラリア訪問記 1996
カウラ日本庭薗の昼食会 北山 武志
 
窓越しに広がる"眩しい春の庭園"は私達に、ゆっくりとした昼食の時を与えてくれる筈だった。サンドイッチと飲み物、幾人かの人達の歓喜を誘うデザー卜の甘さ、スタッフの人達の優しさと親近感・・・。 

しかし、半世紀前の歴史の事実と、その後のこの地の人達の努力を思う時、私にとって、「複雑で重い」昼食会であった。 

平日にも拘らず、沢山の人が食堂に、庭園に入ってくる。私達は、そんなこともあって、早めに席を立ち、庭園へと出て行った。

 


 
オーストラリア訪問記 1996
カウラの大地と歴史 北山 武志
 
売店に並べてある本のうちの一冊、タイトルは「VOYAGE FROM SHAME」。実に良く管理された庭園の美しさと比べ、何と沈うつな!カウラヘの行程は、全てこの対比の中に位置づけられていた。 

今、収容所跡地には、緑の牧草が生え羊たちが放たれているが、立木は殆ど当時と同じであり、見渡す限りの風景も又同じであった。 

この大地から、私達は、しっかりと歴史の真実を学ばなければ、実は何も見えてこない。カウラを知ったオートラリアはきっともっと素晴らしい大陸として、日本人の脳裏に残り続けるだろう。 

日本のガイドブックに地名すら載っていないこの地に立って、私はこれからの事を、静かに考え続けることが出来た。