モルゲダール日記16
木製スキーの滑走 (H18.1.14)
このページでの木製スキーとは、スキーのコアだけでなく、滑走面やエッジも全て木製で制作されている「オスネス・ベテラン」というレア・スキーの事を指します。
木製スキーとの出会い
東京神田にあるというタマキ・スポーツを発見したのは、東京3ヶ月出張中のある夏の日の事でした。噂に聞いていた以上に店内にはクラシカルなスキー板が所狭しと並んでいて驚かされましたが、その中でも特に異彩を放っていたのが、オスネスのベテランという木製スキーでした。
飾り物のスキー板かと思い、店長に話を聞くとノルウェイでは日常の足として使用され、テレマークスキーとしても使用可能とのことで、気が付くとそのスキー板を肩に担いで、ニヤニヤしながら電車に乗っている自分に気が付くことになります。
この板のデータは「60−49−53」(実測)で長さがちょうど2m。サイドカーブも僅かながらあり、木製エッジも付いているのでクロカン専用の板ではないことが分かります。
滑走準備
滑走面も木製なので、この板で本当に滑るのであればワックスは必須です。どんなワックスが必要かと尋ねると、コールタールを塗るとのこと・・・・。
「・・・・。え〜、そんなの何処で手に入れれば・・・・?」
と尋ねると、テムポ化学(合資会社)のBLACK(KLISTER:3)というクロスカントリーワックスで代用できるらしく、一緒に購入しました。
このワックスの説明には「気温0℃以上の融解軟雪及び極度の湿雪に適しています。また他のワックスのベース用としても有効です」と書かれています。
このチューブ・ワックスを滑走面に付けて炎で炙って全面に伸ばし、それからベース・ワックスを塗って滑走ワックスを塗れば完成です。私は炎で炙るのは怖いので、スキー用アイロンで伸ばしました。
「く、くせ〜〜!」 このワックスの臭いは半端ではありません(さすがコールタールの代わりというだけはあります)。かわいスキー場で使用するため、前日の夜に作業しましたが、猛烈に臭くて頭がガンガンしました。次の日の朝は4時の出発なのに臭いが部屋に充満してちゃんと寝ることもできません。
ワックスの塗布作業は屋外で行うことを声を大にしてお薦めします。上の写真は滑走後の写真なので、かなり落ちていますが、塗った当初は上にベースワックスを重ね塗りしてもベトベトして触っただけで汚れが付くくらいでした。
本当にこんなWAXで滑れるのでしょうか?
驚きの性能
全国テレマーカーの集いが実施されている飛騨かわいスキー場で初めてこのスキーを使ってみました。当日はあいにくの雨でしたが、柔らかい雪は板にも優しいし、湿雪ということはワックスの条件にも合うので、逆に好条件とも言えます。
緊張の初滑走!・・・・あっけなく、簡単に滑れました。板が軽い分、逆に軽快なターンが出来るような気がします。ワックスの滑りもよく条件さえ揃えば普通のスキーと変わらない滑走性能かも・・・。さすがノルウェイ人の下駄!と呼ばれる(想像)だけのことはありました。
「あ〜、昔の人は偉かった!(意味不明)」
が、家に帰って滑走後の手入れをしていると・・・・・
「ん、ぎゃ〜・・・え、エッジが〜・・・か、滑走面が〜・・・」
木製のエッジが削れていたり、滑走面のワックスが1/3くらい無くなっていたり、とても酷い状態でした。いくら堅い木を使ってもメタル・エッジにかなうはずもなく、3回くらい滑り降りただけでこれだけワックスが落ちてしまうのであれば、ゲレンデスキーとしては失格です。やはり軽量を生かしてクロカン板として使うか、部屋のインテリアとするのが良いのでしょう。
雨の中の使用により、表側の板もパサついてしまったため、アマニ油を塗って整えました。滑走面はまたくさい思いをするのは嫌なのでホットワックスをもう一度かけて綺麗に伸ばすだけにしました。
終わりに
木製スキーでの滑走は可能ですが、現代のスキー場には適しません。イベントやインテリア用として使うのが本来の使用法でしょうが、もうこの板でゲレンデを滑ることは無いでしょう(もったいない)。ただし、テレマークの技術をマスターすれば、こんな板でも普通に滑ることが出来るようになることを証明することはできました。
アルペンスキーやってたら、こんな芸当は一生出来なかったでしょう。
ネイチャー・スキー・バンザイ!
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