宇宙は「無」から生まれたっていいますよね。「無」って何もないっていう意味の無でしょ。何もない所から何かが生まれるってどういうことなの?
この宇宙が「無」から生まれたという理論は1983年にビレンケンというウクライナ生まれの物理学者の先生が発表した理論です。また、あの車椅子のホーキング博士も同じようなことを言っていますね。
では、この「無」とは、どういったものなのでしょうか?
量子論において、「無」とは「何にもない状態」ではないのです。むしろ、ゼロ、まったく何も存在しないといった「無」は物理的にありえないと考えます。
実験で真空中に大きなエネルギーを与えると何もない「無」から電子と陽電子が生まれることが確認されています。つまり、真空といっても何もないわけではないんですね。真空でも電子と陽電子が生まれたかと思ったら、一瞬で合体してしまって打ち消しあっている、つまり、有と無の状態を繰り返しているそんな状態が量子論における「無」なんです。
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量子論における真空とは
電子と陽電子が生まれたかと思うとすぐに衝突して消えてしまう。
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このような「無」の世界から「トンネル効果」という現象によって宇宙は生まれます。普通なら「無」の状態から宇宙を誕生させるにはエネルギーが全然足りないので無理です。
ものすごく高い壁を越えてボールを投げなければならないようなもんですね。人間の力では、とても越えられないほどの高い壁に向かってボールを投げるのです。しかし、量子学においては、あたかも壁に穴が開いて(トンネルのように)ボールがすり抜けていってしまうようなことが想像できるのです。まぁ、ボールでは、さすがに可能性は0に近いですね。しかし、ミクロな世界。半導体などの電子機器では、このトンネル効果は無視できません。ですから、家電製品など我々が日常使っているものでもトンネル効果というのは深い係わりがあるんです。
このように、揺らいでいる程度の小さなエネルギーである真空からボールが壁をすり抜けるような奇跡を得て「ポロッ」と宇宙が生まれます。その宇宙は最初はとても小さなものです。その直径は10のマイナス34乗センチメートル。0.0000000000000000000000000000000001センチってことです。この小さな宇宙はインフレーションという現象を起こし急激に膨張していきます。そして、ビックバン!です。
ビックバンの後の宇宙は、緩やかに膨張を続け、密度や温度は低くなっていきます。そして、密度の揺らぎから銀河や星が形成されていくのでした。
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