106回日本林学会大会

穂先八重彼岸桜の診断と治療

T 概要

 村松公園内に生立している穂先八重彼岸桜は、すでに絶種していあがるのではないかと言われている貴重な桜である。公園内には5本の穂先八重彼岸桜が可憐な花のでを咲かせていたが。数年前から衰弱、枯死するようになった。診断依頼を受けその原因の究明、治療を行ったので報告する。現在その経過等について観察中である。

U 診断結果

 調査の結果、ならたけ病と診断した。生立地は地表水が流入、耐水しやすい地形でならたけ菌の繁殖しやすい環境である。根および根株を剥ぐと形成層にならたけ菌特有のきのこ臭のある白色菌糸膜が認められた。また過去に枯死した根株も同様に侵されていた。

V 治療内容

 土木機械により掘削後、吊り上げてならたけ菌に侵されている樹幹地際部、根系部を健全部まで切断・除去した。切断・除去後殺菌剤を塗布し、乾燥を待って柵の中央部に移植した。柵内の土壌殺菌は、ならたけ菌罹病残根を除去後、透水性の改善を図るため川砂を搬入し、現土壌の一部と攪拌、さらにPCNB粉剤を散布・攪拌処理した。

W 今後の対応

 治療後は樹勢回復の観察を続けているが、今後さらに観察を続け、根系部の再診断を行い、切断病患部の発根状況等を追跡したいと考えている。

 

 

 

 

生物防除の試み      樹木医学会第4回大会

はじめに

 村松公園内に生立する『穂先八重彼岸桜』は、絶種しているのではないかといわれる貴重なサクラである。平成5 年11月、ならたけ病と診断、罹病根の切除で最終的に残った根が2本という大手術を受け、その後順調に樹勢を回復していた。平成9年7月、樹幹部に幹心材腐朽菌であるカワウソタケ(Inonotus mikadoi (Lloyd) Bondarzew)が発生した。このまま放置すればさらに腐朽は進展する恐れがある。さりとて現在のところ木材腐朽菌に対する特効薬はない。そのためトリコデルマ菌を用いた生物防除治療を行い、観察したのでその概要を報告する。

1実施内容

 (1)接種年月日 平成9年8月22日、23日、25日

 (2)トリコデルマ菌の培養方法及び使用菌名 ポリ容器に米ぬか50g、水600cc、トリコデルマ菌(Trichoderma lignorum)200ccを攪拌し、常温で30時間培養した。

 (3)接種方法・接種位置 接種は樹幹上部から50cm間隔、白テープで区画し、3mm径のドリルで穴を開け、注射針で注入した。接種位置は子実体の発生した樹幹部(南西側、東側の地際部)である。

 (4)接種量 接種は3日間に分けて600cc注入した。接種孔にはカットバスターで封をした。

2観察結果

  2か年の観察では接種部及び周辺樹幹部に新たな子実体の発生は認められなかった。

3問題点・検討課題

  接種部からカワウソタケあるいはトリコデルマ菌の再分離による確認はまだ行っていないので、防除効果についての科学的立証がなく今後の課題である。