雪舟 −雪舟展の因みに-
雪舟等楊1420備中赤浜に生まれ、10代宝福寺の小僧に上がる、京都五山第二位相国寺に禅僧となり絵の修行をする。30代京都を離れ山口の大名大内氏の庇護を受ける、拙宗と名告る。40代より雪舟。遣明使に随行して中国に渡る。天童山より「四明天童第一座」の称号を受ける。50代より活躍し1506年80余歳没。
雪舟は身心ともに無しの現風景をまさにそのまんまに描く、どうぞ逐一に見て下さい。
1慧可断臂図=奇岩怪石という雪舟には特に曲がりくねって現実には到底ありえないような岩や樹木が描かれている、だがこれ雪舟の個性とか強烈とかを遙に越えている、今この面壁九年の洞窟も、たとい強烈とんでもないふうの造形も、まるっきりなんにもない、無というんでしょう、空というそれっきりになってしまう。
よく見て下さい、奥行きがあるようでない、まったいらのよううで底なしどん底です。
そりゃ遠近法などいう一神教の計算ずくじゃないです、遠近法という観察=疑いじゃないんです。
そのものそっくりです。
身心ともにない風景。
どうですか、達磨さんをよく見て下さい、取り付く島もないんでしょう、このとおり現実感生生しいばかりの達磨さん、とくにその顔と来たらそこらのおっさんと間違えるくらいです、しかも空です、このような目このような顔して座ってごらんなさい、すると自分という存在の失せるのを知る、消えてなくなっているんです。外から見るとは絵描きの仕事、見事に空じきるんです。座って知る感覚は呼吸とともに兀地にさえらるという、衣と体の触れあいのようなものなんです、あるっちゃあるそれが筆太の輪郭線です、で、自分というものそれっきりです。内と外から描くってもと内外なし。真髄じゃない皮袋っていうがごとくです。そうしてオーラのようにそのまわり墨のぼかし、うまく座ったやつを相見すると、どうっと吹き寄せる風があったりする、画面緊張の付録ですか、この絵と来たらたといお釈迦さんも道元禅師も手が付けられんです。
後学諸参の人よく見て下さい、これが仏教という仏という心の姿です。
思い込みの入る余地がまったくないんです、他の同類作品は情実です、こうあるべきとか理想とかです。
これは現実です。慧可大師血のにじむ腕をさしだし痛みを超えて問いかけるんです。これに対しただもう取り付く島もない空があります。これが本来です。
伝説なんぞない。
卑近をいえば大死一番慧可大師、大活現成達磨大師もって仏教辺終わるんです。
2天の橋立て図=(一カ所にとどまって描いたのではなく、名所での写生を頭の中で合成したらしい、実際にこのような風景を見ようとすれば、1000m近い上空から眺めるしかない。)という、そりゃそのとおりなんですが、身心ともにない風景まさにこのように見える、ちらっとも破家散宅してごらんなさい、清々ともなんともふわあっと広がるふうに、ものみなこうあるんです、そりゃ画家として天橋立は名所旧跡ことにも神社仏閣の聖地として、全体を網羅するんですが、心の風景一切に全体を網羅するんです。いっぺんにうなずけるからおもしろい。山も谷も個々別々というんですか、ほらこっちがわに仏足石があって、その上に如来が立つ、雪舟が絵筆をとる、虚空がです、そうですあなたです。こうやって風景おらあがんです。
3山水長巻他=人間は行くんじゃなくって帰って来るんですか、そうして山水長巻がはじまる、完成した技法を捨てる、身に付いてしかも囚われない、自由になるんです、するとほんとうにただの現実です、いいですかこのように見えこのようにあるっきりです、奇岩怪石も車軸松もうろこのような木の葉っぱも、なにどうってこたないです、これねえ空に対するに空にぼやけじゃなんにもならないってことですよ、ものみなアンチテーゼとして絵筆に乗ったぐらいに考えりゃいいです、それにしても80余歳没年までかくのごとくとは恐れ入る、なあなあとか情実の入る余地のない、自己を顧みるなし行け行けばっかり、絵描きの道具立て自家薬籠中のものが、てんでんに取り付く島もないんだから、こりゃなんともいってみようがないです。けだし正解です、雪舟に比べればレンブラントもセザンヌも形無しです。
ただこうあるっきり、この絵に他の意味はないんです、如来来たる如しというがほどに。
蛇足にいえばいわゆる雪舟節というのは、個々別々廓然無聖としてこうある、心のすがた一切に全体でしょう、それを横につなげようってときに必然に起こるんです、他の画伯の絵の構図おもんばかりを拒絶するんです。
管々しいほどに木や草や鳥や花を重ね会わせるように見えるそれも、まきだっぽうどうならべたら景色になるといわんかな、平面にものみなを写すのに憂き身をやつす絵描き風情じゃ届かんです。
それにしても群を抜いた技法です、涙ネズミの伝説もうなずけるわけです。
肖像画を見ると優しいんです、そうかあってね、末世のわしも安堵するってとこですか。
あっちこっち解説と思ったんですが面倒になってやめた、16日はどうぞよろしく、雨になるとかいってます。
戻る