涙 


 飯食って囲碁見て、ベトナムの子に絵描かせるテレビちらっと見たら、絵見せて恥ずかしいって女の子−不意に涙が出る。
 五十年前のわたしら、ど田舎の子そっくりが、恥ずかしいって。
 だれか涙のこと書き込んでいた、坊主一番涙もろいっていったら、笑われるから黙っていたけど、刃にぐさっとやられたように、涙することあります。
 歌を聞くと涙が出るっていう、いつだったか、ブラジルのどっか奥地で、若い女の子が歌手になりたいといって、歌う−へたっくそ、そいつが涙溢れてどうしようもなくって、こっそりトイレ行って拭って来た。

 なぜかって、そんなことわからない、
(人がいるんだよ。)
としかいえない−砂漠の旅にとつぜん。

 オ−ストラリア行ったとき、インドネシア航空に乗って、とつぜん目のやり場に困った、クバ−ヤという花を描いた民族衣装のスチュワ−デスが、
(優しいあのむかしの心。)
を持つ、彼女らの−胸のふくらみの中へ、ぽっかり入ってしまう、そんなことしちゃだめだって、どうしようもない、仕方なくずうっと寝たふりしていた。
 向こうにはそっくり残っている、どうして日本にはなくなった。

 帰りのステュワ−デスはクバ−ヤを着た日本人だった、いやなものを見た、NHKの視聴料払えってのに、童話マンガあった、なめくじが金ぴか衣装着たの、そんなうすっ気味悪さ。
 夢の島ルックみたい、つっぱり化粧したほうがまだ正直だ、だらしない−ナントカ丸出しってとこが取り柄っちゃ取り柄。
 インベイド、異星人に乗っ取られたら、かくもありなんていう、守るべきものがない、売っちまった、心を売ったんです、そうして何が残った、銭金とグッツと暮らしっていう、無惨=なんにも残らないってことに、気がつかない。
 どうですか、そうは思いませんか。

 わたしどものささやかな試みがなんであるか、無心。
 糸の切れた凧って、恥ずかしいっていうがきんちょ、生まれついてに返ること。
 伝統であり文化とはこれ。
 心とは着ている着ものまず脱いでみる。


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