ロイヤルフィルハーモニック・コレクションを聴く

2006年2月5日(日曜日)ホームセンターコメリへ買物に行った。家内が買物をしている間、特にすることもなく店内をうろついていた。そうしたら売場の片隅のワゴンに遭遇した。「CD1枚298円より」という紙が貼ってある。ワゴンのなかを見ると、お子様向け音楽、演歌、歌謡曲、民謡、クラシックなど多種多様なジャンルのCDが、それぞれ中途半端と思われるような数ずつ並べられていた。クラシックのCDはロイヤルフィルハーモニック・コレクションというシリーズであった。イギリスのロイヤルフィルというオケが演奏しているみたいだが、指揮者などのデータはパッケージを見ただけでは判別不能。CDの帯には315円(税込み)とあった。魅力的な値段だが、直感的にこれは無視したほうが無難だと思った。大した演奏ではないだろうと思った。
まだ家内は買物を続けている。特にすることもないのでいくつかのロイヤルフィルハーモニック・コレクションのパッケージをチェックしていた。英語で書いてあるところは意味がわからない。デジタル録音らしいことがわかった。100円ショップにあるような何十年も前の演奏の編集ものではないようだ。
あれこれ迷った挙句、とりあえず1枚買ってみることにした。ワーグナーの管弦楽曲集。後で家内からレシートを見せてもらったら298円(税込み)だった。よく見るとケースの裏側にその値段のバーコードシールが貼ってあった。

コメリからスーパーサンエーへ夕食の調達に向かった。運転しながらさっそくカーステレオで聴いてみた。ワルキューレが鳴出した。この曲を聴きながら運転はしない方がいい。ボリュームを小さくして聴いていた。ローエングリンまで進んで「これは結構良いのでは」と感じはじめた。そして家内がスーパーで買物をしている間、駐車場でジークフリート牧歌を聴いた。冬の午後の弱い日差しとはいえ車内はだんだん暖かくなってきた。そしてここちよい演奏を聴きながら眠ってしまった。

帰宅してパソコンでロイヤルフィルハーモニックを検索すると、このシリーズはリスナーから一定の評価を得ているものであり、残念ながら現在はすでに売っていないものであることがわかった。(後で、まだ売っていることがわかった)各ホームページの情報は演奏について好意的なものがほとんどだ。特にロシア人指揮者シモノフのものは評判がいい。値段は1,000から700円程度が相場のようだ。駅の広場などでまとめて売られていて、皆さんけっこうまとめ買いをしているようだ。今回偶然発見した295円(税込み)は明らかに安い。(後で、他でもこの値段で売られているのを見つけた)

翌々日の火曜日。コメリの残りのCDのことが気になる。しごとを早々に切上げ、ロイヤルフィルハーモニック・コレクションが誰れにも買われていないことを願いながらコメリへ向かった。ワゴンをチェックするとお子様向け音楽、演歌、歌謡曲、民謡、クラシックなど多種多様なジャンルのCDは昨日と同じ状態であった。どうやらこのコーナーに注目している人はあまりいないようだ。(そりゃ〜そうですよね)
さっそく13枚購入することにした。このときに注意しなければならないのはけっして焦らず録音内容を冷静にチェックすることだということがわかった。変なカップリングをしてあるのがいくつかあるのだ。例えばドボルザークの新世界2、3楽章と他の曲の組合わせや、ヴィヴァルディの四季の春、夏、秋、冬のそれぞれ第○楽章と他の曲を組合わせたものなど、つぎはぎ状態のものがあった。帯のタイトルには曲目しか書いてない。裏をみて確認が必要である。ホームセンターのレジでクラシックのCDまとめ買いするのは初体験でありなぜか少し恥ずかしかった。レジの女の人はそんな私の思いなどとは関係なく普段通りバーコードシールをなぞった。

2月11日(日)またコメリへ。ワゴンは月曜日のまま。相変らずお子様向け音楽、演歌、歌謡曲、民謡、クラシックなど多種多様なジャンルのCDは無視され続けていたのだ。僕はまた2枚買った。

結局、買ったのは以下の通りである。
@ワーグナー管弦楽曲集 Aチャイコフスキー作品集その1 B春の祭典と火の鳥 Cマーラー交響曲第1番「巨人」 Dヴィヴァルディ四季他 E展覧会の絵他 Fシューマン小曲集(これはロイヤルフィルの誰かがピアノで演奏しているのであろうかと不思議に思いながら買った) Gアイネクライネ他 Hモーツァルト交響曲第40番他 Iモーツァルト交響曲第36番(リンツ)他 Jアランフェス交響曲他 Kアルルの女組曲、カルメン組曲 Lグリーグ管弦楽曲集 Mドヴォルザーク新世界他(全楽章入っている) Nモーツァルトヴァイオリン協奏曲トルコ風他 Oガーシュイン/ラヴェル/ドビュッシー管弦楽曲集

ついに16枚となった。合計4,768円(税込み)使ってしまった。現時点で聴いたのは@からBまでだが演奏、録音ともりっぱなものだ。ハイコストパフォーマンスだ。

                みんなそろって記念撮影 (この後2枚買って合計16枚)

                        

ジャケットや解説書もきれい                  裏側の帯に注目
         


ケース裏側の帯にはこのように書いてある。
「エリザベス皇太后より”ロイヤル”の称号を贈られた名門オーケストラ」
「ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団は(RPO)は1946年、当時イギリス随一の指揮者であったサー・トーマス・ビーチャムによって創設されました。ロンドンの格式あるオーケストラの中でも、唯一その名称に”ロイヤル”を使うことを許され、エリザベス皇太后をパトロンにもつことを誇りとしています。その演奏は世界各地で絶賛され、独自の成熟した美しいアンサンブルとマイルドでエレガントな音色は、サー・トーマス・ビーチャムの時代から変らぬ名演に満ちています。」


太字のところおもしろいですね。エリザベス皇太后と思われる写真とサインも印刷されています。 (06.2.13)


@ワーグナー管弦楽曲集(指揮:ヴァーノン・ハンドリー
指揮者ハンドリーは初めて聞いた名前だ。詳細は不明である。インターネットで検索しても情報はつかめなかった。演奏はロイヤルフィルハーモニック・コレクションを聴くにあたり一発目として、大変に相応しいものだった。。ワーグナーの楽劇について僕は全然知らない。管弦楽集のCDはシノーポリ盤を持っている。ワーグナーの音楽はたまに聴きたくなるときがある。シノーポリ盤はきらびやかさ、つややかさが今一歩だと思っていた。この度、これを手にすることができてよかった。
(ワルキューレの騎行)
かなりの馬力で演奏されている。自動車を運転しながら聴くべきではない。
(リエンツィ序曲)
始まりは穏やかだ途中から爆発する。元気が良すぎて最強音のところでは音量を調整してある感じもするが、どうということはない。終わった後は満腹感に満たされる。
(ローエングリン第3幕への前奏曲)
この演奏もりっぱである。曲集の一演奏としては何ら不足はなく、逆にお釣りがきそうだ。華やかさが伝わってくる。
(ジークフリート牧歌)
僕がクラシック音楽のなかで好きな曲を10曲選べと聞かれれば、ひとつとしてこの曲を選ぶだろう。人はこんなに優しく暖かい曲を作ることができるのです。クラシック音楽に興味がない人でも、この曲を聴いてみてください。昔クーベリックのLPを持っていた。それがスタンダード版として記憶に残っていたが、弟から名盤と賞されているレーグナーのCDを借りて聴いたときには感激した。天空からやさしい光が次々に降り注いでくる様を音楽で表せばこうなるのだろう…変な表現。ものすごく繊細だった。ハンドーリの演奏はこの曲としては線が少し太いかも知れない。レーグナー盤には及ばないが特に不満もない。
(さまよえるオランダ人序曲)
この演奏もりっぱである。曲集の一演奏としては何ら不足はなく、逆にお釣りがもらえそうだ。
(タンホイザー序曲)
この充実した演奏をどのように言い表せばよいのだろうか。大した数を聴いてきたわけではないが、正直言って今までのどのCDより感動した。暗闇に曙光が差し込み目の前に巨大な空間が広がる、というような出だしのこの曲は有名だ。そんな雰囲気をみごとに描き出している。壮麗なオーケストラの世界が繰り広げられている。
(まとめ)
オーケストラは真面目に全力で演奏している熱演。ものすごい豪快な金管楽器の咆哮!!。これからロイヤルフィルハーモニック・コレクションを聴いていくのが楽しみになる。(06.02.19)

Aチャイコフスキー作品集その1(指揮:ユーリ・シモノフ)
このCDの解説書には録音曲目と作曲者の簡単な生い立ちしか書いてない。指揮者が誰なのかは書いてない。だがインターネットで検索すればシモノフの指揮であることがわかるし、シモノフについても情報をつかむことができる。彼の根強いファンも多いようだ。最後の四季のピアニストはローナン・オーラという人だということはなぜか記載されている。
(くるみ割り人形より&白鳥の湖より)
バレエのことは全く知らない。この音楽にあわせていったいどんな舞台が繰広げられるのか知らない。この曲を買ったのはクラシック音楽を聴き始めて初めてだ。くるみ割り人形はフィギアスケートの浅田真央選手の曲だ。このくるみ割り人形はともかく、白鳥の湖は何というか、曲自体の甘ったるさと熱演が合体して、あまりにも露骨であり運転のBGMでも厳しい。チャイコフスキーのバレエ音楽は踊りと一緒に鑑賞してこそ真の存在意義が理解できるのかも知れない。
(弦楽のためのセレナーデ)
恥ずかしい話しだが僕はこの曲を知らなかった。クラシック音楽に縁のない家内ですら聴いたことがあると言っていた。何かのコマーシャルにも使われているとのことだ。スポンサーや使われ方にもよるが、コマーシャルに使うにはもったいないと思う。心のこもった大変に良い曲、良い演奏だった。通勤のときカーステレオで1週間聴き続けた。
(メロディー作品42)
きれいな曲です。
(四季)
この演奏はロイヤルフィルハーモニックの演奏ではなく、ピアノニストの単独演奏だ。昔、スヴェトラーノフのオーケストラ番を持っていた。1月から12月までの12曲あった。そのLPの解説にはヴィヴァルディの四季と対比させて「もう一つの四季」と書いてあったことを記憶している。今回のピアノによる演奏はよくわからない。スヴェトラーノフの演奏が懐かしくなった。
(まとめ)
シモノフのディスコグラフィーをみたらベートヴェン第9(合唱付き ロシア語)というのがあった。ロシア語のベートーヴェンか。なお今後はロイヤルフィルハーモニックという名称は長いのでロイヤルPOと記すことにしよう。春の祭典でのシモノフとロイヤルPOの熱演が楽しみだ。(06.02.19)

Bストラヴィンスキー 春の祭典 火の鳥(1945) (指揮:ユーリ・シモノフ)
(春の祭典)
僕がクラシック音楽を初めて「聴こう」と思いながら聴いたのが「春の祭典」だった。今から25年くらい前のことである。アルバイトの先輩の部屋で聞かせてもらったのがきっかけであった。僕はクラシックは「運命」とか「田園」とか、そういうものだと思っていたのでショックを受けた。買ったレコードはデービスのLPだった。その後クラシックを聴き始め、ショルティ、マゼール(テラーク盤)、ムーティなどを買ったがこれらはLPであり今はない。CDではデュトワを買った。デュトワの演奏は軽くそして色彩的ではあるがハデハデという感じではない。清潔感があり上品なので好きな演奏である。シモノフとロイヤルOPの演奏はどうか。インターネットで情報収集したところ極色彩でロシアの香りが強烈に漂う演奏、というような評判である。デュトワとは正反対なのかも知れないと思いながら聴いた。遅めの速度を維持しつつひとつひとつの音がはっきり聴こえてくる演奏である。強奏のときの馬力はかなりのものだが荒っぽさはなく、丁寧なしごととなっている。今まで聴いた演奏ではマゼール(テラーク盤)と似ているような気がする。マゼールはゴリゴリ、ガリガリといった感じで押付けがましかったような記憶がある。しかしシモノフは自然に受入れることができる。クライマックスの盛上がりはこの曲の場合はどの演奏でもそうであろうが、やはり凄まじい。要するに全体的に柔軟性があり筋肉質でバランスのとれた体型の力士といった感じである。予想通り僕にとってはデュトワとは正反対な演奏であり、ダブルスタンダードができあがった。
(火の鳥(1945))
この曲には春の祭典を聴いて同じような曲だろうと勝手に思い込み、刺激と興奮を求めてデービスのLPを買ったらしぶい曲でありがっかりした思い出がある。実はこの曲はほとんど聴かないが、聴くと眠ってしまい「カスチェイ王の魔の踊り」というところの爆発で目が覚める。今、あらためて聴くと美しい。しかしやはり眠くなる。美しさが心に安らぎを与え眠くなる。眠い。眠い…ここで爆発!! おお、びっくりした。この演奏も丁寧で余裕を感じさせるものである。
(まとめ)
悠然と構えた巨匠シノモフに出会えた。ロイヤルPOも指揮者の意図を汲み取ろうとしながら一生懸命に演奏し、そしてそれが実現しているような気がする。蛇足ながら録音もすばらしい。(06.02.25)

Cマーラー 交響曲第1番「巨人」(指揮:ユーリ・シモノフ)
本格的な春が近くなってきた今日この頃である。これは桜が満開となった春を思わせるような、おおらかで明るいマーラーだ。随処に個性的な表現が見られる。これを美しいと受け止めるか、甘ったるく安っぽいと受け止めるかは聴く方の勝手である。僕としてはこれはこれでいいのではないかと思う。こんなにこってりとした葬送行進曲を聴いたのは初めてだが、このこってりさとは対照的に他のほとんどの部分は颯爽としていてさわやかに進む。徹底した演出を堪能???しているうちに、あっという間に終盤へなだれ込み、壮麗なクライマックスに至る。聴き終わった後は不思議な満足感を覚えた。
僕はシモノフのことを全然知らなかったのだが、シモノフについてインターネットから得た情報では豪快な大業師である反面、観客への小さな心使いを忘れないサービス精神が旺盛な指揮者であるとのことだ。この演奏を聴くとそのことがわかる。マーラーの聴き方にもいろいろあり、悩まず健やかに聴きたいというのであれば推薦盤となる。ロイヤルPOは相変わらずの力演であり気持ちよく聴ける。(06.03.04)

Dヴィヴァルディ 四季  パッヘルベル カノン 他 (指揮:ジョナサン・カーネイ)
ロイヤルPO・コレクション5枚目は今までとは趣が異なりバロック音楽である。今回は肩の力を抜いてリラックスして聴くことができると思っていた。しかしこの四季は衝撃的な演奏であった。かなりハデハデでケバケバである。春は春の祭典のようである。ものすごいバイオリン・ソロ。(夏)の3楽章や(冬)の1楽章の盛り上がりは凄く、聴く僕も演奏に合わせて身を揺らしてしまいそうになった。非常に大胆で個性的な演出が多々見受けられる。真面目にやっているのか、と思わせるところもある。だから、難しく考えないで楽しく聴こう。ロイヤルPOは例によって指揮者に忠実に合奏を続ける。時には我々の腕のよさはどうですか、と言わんばかりにがんばっている。自分達も羽目をはずして楽しまなければ損であると思っているのかも知れない。数多くの四季の録音のなかでも異色と言えるだろう。僕はこれはこれでいいと思った。凡庸な演奏よりいいし、徹底したサービス精神を感じさせるのであるから。
カノンはパイプオルガンで始まる。ボリュームを上げて聴くとバックには演奏者の息づかいが聞こえ、期待を持たせる。しかし四季を聴いた後では正直言ってこの平凡さは物足りない。
指揮者ジョナサン・カーネイの情報はつかめない。(06.03.12)

Eムソルグスキー 「展覧会の絵」 ラベル 「ダフニスとクロエ 第二組曲」 「ラ・ヴァルス」 
                                      (指揮:ジャン・クロード・カサドシュ)

いよいよこの試聴記も6枚目となった。素人の僕がこんなことを始めて、いったいどこまで続けられるか不安だったが何とか持ち応えている。これからも張切って行こう。ところで残念なことに先日コメリへ行ったらCD315円シリーズのコーナーが撤去されていた。買いだめしておいて正解でした。
このCDはジャン・クロード・カサドッシュという僕は全然知らない指揮者の演奏である。*後でピアニストと判明
(展覧会の絵)
今まで聴いたロイヤルPOコレクションシリーズは奇想天外、個性的な演奏が多かった。Dの四季とかシモノフの演奏など。しかし、これは標準的、優等生的な演奏だと言えるであろう。だが、ただの凡庸な演奏ではない。「ビドロ」の異様な音響効果にはハッとさせられるし、他にもバッシとメリハリの効いた演出がみられる。優秀な録音もプラスになり、雄大でノスタルジックな世界が展開される。この曲は色彩感とか華々しさが魅力だと思うが、僕のDVDレコーダーでは、この演奏はモノクロームの明るさと暗さ、彫り深さ、浅さのコントラストで勝負をしているかのように聴こえた。白黒の展覧会の絵のどこが面白いのかと思われるかも知れないが、逆に落ち着いて聴くことができる。渋みの効いた、大人の「展覧会の絵」だ。
(ダフニスとクロエ 第二組曲)
湧出る泉のように始まる。湧出るというより、勢いよく噴火すると言った方が適切かもしれない。渋い「展覧会の絵」の趣から逆転し、かなり躍動的な表現になっている。それがツボにはまっているので大変楽しく聴くことができる。ロイヤルPOも乗ってきてクライマックスはスリル満点だ。
(ラ・ヴァルス)
演奏は益々盛り上がり、ロイヤルPOはエンジン全開!!。ティンパニーの強烈な打込み。金管の雄叫び。パワフルなだけではなく、繊細さも備え合わせている変幻自在なオーケストラの世界。
(まとめ)
このCDは聴き応えがあった。カサドシュがどんな指揮者か知らないが、職人的な人なのではないだろうか。ロイヤルPOは相変らず熱演だった。3曲ワンセットのコンサートを聴いたような充実した気分。こんな気分が300円足らずの出費で味わえるとは。(06.04.02)

Fモーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 他 (指揮:ユーリ・シモノフ)
久々の更新。挫折してしまうのかと気がかりだったが、何とか再開しました。
(アイネ・クライネ・ナハトムジーク)
この一連のCDは封を切らないと誰が指揮者かわからない。開けてびっくり、なんとシモノフだった。
シモノフらしい重厚な演奏である。重厚さにもいろいろな状態があると思うが、この場合は、テンポが遅めで、音は一かたまりで響くというような感じ。普通、この曲は羽毛のような軽やかさ、ふわふわした感触で進むのだと思うが、これは全然そんなふうではない。例によってシモノフらしい演出が所々にみられる。@A楽章は聴いていて特に不満はないのだが、これでいいのかや、と感じてしまう。ところが、第B楽章になると重さ、スローさから一転、爽やか、軽やかな演奏に変身を遂げる。第C楽章に到達。終盤に向かって、しっかりとした建築物が構築されていくような、建設的な演奏。重厚さと軽やかさが変な感じでマッチしている。短いがシモノフの時間を楽しめる。
録音が大変によい。響きが美しい。
(ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲)
なんだこれ。こんなん、あったん。
インターネットで調べたら指揮はシノモフらしい。ただ、監修、ジョナサン・ナーネイってある。あの抱腹絶倒の四季のジョナサン・ナーネイ。さすがカーネイ。これがモーツァルトの曲なのか…。四季と同じく、ヴァイオリンが跳ね上がり、躍動していてる。難しいことは考えないで、あくまでもBGM的表現を徹底して追及した演奏。シモノフやカーネイの目指すのはそういう演奏なんだ。そう思いながら聴いていたら、しだいに違和感は薄れ、妙に納得させられました。(06.05.28)

Gモーツァルト 交響曲第40番 41番「ジュピター」 フィガロの結婚序曲 (指揮:ジャン・クローヴァー)
またまた、久々の更新。挫折目前。がんばらなくっちゃね。
今回はモーツァルトのゴールデンプログラム。指揮者ジャン・クローヴァーについての情報は皆無です。
演奏は、どれもあまり特色がなく書くことがないです。このシリーズの聴きものは、やはりユーリ・シモノフなのか、と思ってしまいました。ただ、聴くに堪えないダメ演奏ではなく、もし、演奏者を教えてもらわないで聴いたら、普通に聴こえるといった感じです。
というわけで、書くことがないので、今回は僕が好きな演奏を。
この曲はスウィトナー/ドレスデンとクーベリック/バイエルン放送のCDを抜きには語れないと思っています。あと、アバド/ロンドン交響楽団の若き頃の演奏が、前2者とは全然違うアプローチの仕方で、アバドには珍しく感情豊な出来上がりとなっていて、好きです。スウィトナーとクーベリックは穏健な演奏。でも、何もしないのではなく、自分のスタイルで表現したら、こうなったという感じ。自然に表現しているとか、地味とか、そうではなく練り上げたらこうなったという感じです。長く聴き続けることのできる、本当の芸術だと思います。
アバドは何でも平均主義みたいで、あまり心に残らない演奏が多いですが、これはそうではありません。若さの躍動を渋く表現した傑作です。(06.08.02)


(続く)

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