投げやり読書+音楽鑑賞メモ(新版)

せっかく読んでもすぐに忘れてしまいます。もったいないので印象などを書きとめておくことにしました。2006.2頃からのものです。前から持っていた古い本もあります。
それから本だけでは早晩行詰まると思うので、CDなどで聴いた音楽のことも記すことにしました。

満足度 ★(三つで満点) ☆は0.5 これは僕の満足度であり、あてにならないかも知れません…

氾濫する管理職 高杉 良 ★★☆
図書館の高杉良のコーナーに見慣れない本があった。なんと、新刊!!!ラッキー!!! 微笑みながら借りてきた。
世界的な金融再編のなかで、正義を貫こうとするミドルの勇気を描ききった高杉良12年ぶりの書き下ろし。
保険の解約が増大し、破綻の危機に晒された東都生命。メインバンクの援助打ち切りと風評による資金流出に拍車がかかるなか、ついに外資に売却されることが決まった。名門生保に次々と乗込んで来る外資幹部、弁護士チーム。解体され、ばら売りされ、職員たちは次々と去っていく。職員代表として「管財人室長」を命じられた友部洋平は、この、身売り劇の陰で謀略が進んでいることを知った。
友部洋平は外国語が上手な有能な社員。恋人、妻とのセックスの場面が何度か登場する。友部はたくましい男である。
文庫本で出たらほしい(古本で)。
2009.06.06


金融腐蝕列島 消失 完結編 第4巻 高杉 良 ★★☆
ついに完結編までやってきた。竹中はJFGの副頭取になった。杉本は頭取の夢かなわずホールディングスの社長となる。
不良債権処理をめぐって金融庁との対立を深めるJFG銀行。杉本の強引なやり方で一時は金融庁を抑え込むが、それが逆に金融庁の恨みをかってか、検査忌避による刑事告発されてしまう。大型増資のもくろみも失敗に終わり、貸倒引当金の大幅な積み増しを強制された結果、ついに赤字に転落。トップの引責辞任、信託部門の売却で再生を探るなか、ライバル行から巨大合併案が持ち込まれた。竹中、杉本とも引責辞任で銀行を去る。竹中は麻紀の住むイギリスへ旅だったが、その後、後輩が検察庁に逮捕される姿をテレビで見て涙する。
相変わらずのストーリーであるが、竹中の姿はサラリーマンの生きざまとして何らかの道標となる。
文庫本で出たらほしい(古本で)。
2009.06.06


盗まれた独立宣言 ジェフリー・アーチャー ★★★
アメリカの国立図書館に保存されている国宝「独立宣言」を、フセンインが湾岸戦争でやられた仕返しに盗み出し、アメリカを笑い物にしようとする。それを阻止しようとするCIAのスコットやモサドの美人エージェント、ハンナの数奇な出会い。贋作師やマフィア、図書館長など多くの登場人物で構成される。それぞれ個性的な人々で、読んでいて楽しい。楽しいサスペンス映画を見ているようだった。アーチャーはやっぱり面白い。


社長の器 高杉 良 ★★☆
兄は多国籍企業の総帥、弟は中小企業の二代目社長。冷徹で攻撃型の兄と柔和で温情型の弟。経営理念も器量も異なる兄弟社長が、ことごとくにぶつかりあう。なぜ、確執を続けるのか。経営とは、かくも厳しいのか。二人の経営者が織りなす壮絶な戦いのドラマを通して、社長の器とは何かを考えさせる経済小説。
兄のモデルはミネベアの経営者。それこそインチキさは、自分は強引な乗っ取りを他者に仕掛けながら、ミネベアが逆に乗っ取られそうになるや、あわてて、お役所に駆け込んだことでも証明された。
また、太陽自動車(日産だと思う)の労組のボス、塩野のいい加減さにもあきれる。こちらは労働貴族という言葉の語源になった人。
腹の立つ小説だが、高杉良の告発力はすごかったのだな、と感心させられる。


広報室沈黙す 高杉 良 ★★☆
長期ワンマン体制で会社を運営している会長。甥が副社長で次期を狙い、現社長は会長による会社の私物化を批判、陰湿な内紛が続いている。そのさなか、経済雑誌によるスキャンダル報道で車内は大揺れ。社長追い落しを狙った内部リークだとわかったときから、新任の広報課長木戸は企業の矛盾を一身に背負いこむこととなった。損保業界の名門企業を舞台に広報マンの哀歓を描く。
木戸の上司はろくなやつがいない。孤軍奮闘に木戸が気持ちを休めることができるのは玲子と一緒にいるときだけである。


裁判官の爆笑お言葉集 長嶺超輝(nagamine hasaki) ★★☆
題名はお笑い本のようだが、実際に読んでみると笑えない。
「死刑はやむを得ないが、私としては、君にはできるだけ長く生きていてもらいたい」(死刑判決を言い渡して)
というように、法廷でのちょっと変わった裁判官の言葉が集められている。どの言葉も結構感動的だった。
ひとつひとつの言葉に対して著者がコメントを書いて進められる。言葉とコメントがかみ合わないと思うところもあった。コメントより裁判官の言葉の方が、やっぱりずしりとくる。


名もなき勇者たちへ 落合信彦 ★★★
この本、前も書いたことがありますが、最後の感動の場面を、また読みたくなり図書館から借りてきました。
容姿端麗、才色兼備、文武両道、スーパー女性、政界最強の情報機関モサドから、CIAに送り込まれた女性刺客〈レイチェル(コードネームはカリプソ〉。
日本の特殊警備隊のエリート藤岡は、姉を強姦したヤクザに復讐のために殺害。逮捕寸前にCIAに拾われる。CIAの上司を絶対的に信頼していた。
重要任務遂行のためモサドからレイチェルのリースを受けたCIAは予定を変更。
藤岡はノルマを達成してCIAから解放されることとなる。
冷酷なCIAは藤岡の口を封じるべく、レイチェルを刺客に送る。
最後の藤岡とレイチェルの決闘の場面は感動的だ。
上司の裏切りに失望した藤岡は、レイチェルに自分を早く殺すよう懇願する。
レイチェルはピストルの引き金を引けない。
お互い冷酷な殺人マシーンとして数えきれない人間を抹殺してきた。
そんな二人の砂漠のように乾いた心のなかに、人間の温かさが蘇生し始める。
「心があったら勝ち残れない」
「心がなければ生きられない」


ロスノフスキ家の娘 ジェフリー・アーチャー ★★★
これは「ケインとアベル」の続編といえる。ポーランド移民でホテル王のアベルの愛娘フロレンティナは、アベルの宿敵だったケインの息子と結婚し、アベルからホテル事業を継ぎ、ホテル事業、銀行事業とも成功させる。そして、アメリカ大統領の座を目指して政治活動を開始する。政敵らは執拗にフロレンティナを妨害する。成功したり、失敗に終わったりを何回も繰り返しながら物語はクライマックスへ。結局は副大統領までしか届かなかったが、大統領の死で目的達成。一番迫力があったのは、ソ連のパキスタン侵略に対する、ソ連の指導者との電話でのやり取り。かっこいい。最後はラッキーな形ではなく、目的を達成できればなお面白かったように思われる。
上、下巻があり、ブックオフで各105円で購入した。下巻の前半は少し退屈だが、アーチャーの小説はやはり面白い。


椿山課長の七日間  浅田 次郎 ★☆☆
浅田次郎さんの本を初めて読む。脳溢血で突然死したサラリーマン椿山があの世から思い残したことを遂げるために7日間の期限付きでこの世へ舞い戻る。自分が死んだあと家族や会社はどうなっているか…
気持があたたまる、ふわっとした小説だ。空想の世界とサラリーマンやヤクザの日常が面白くかみ合わされている。笑ったり、悲しくなったり、不思議な感じのする小説だ。特に前半から中盤にかけて面白い。終盤は動きが少なく盛り上がりがいまいちだった。筒井康隆さんをちいさくしたような印象だった。


辞令 高杉 良 ★★☆
読みたい本がなくなってしまい、身の回りをごそごそしたら出てきた。高杉 良の昔の小説。確か、昔ブックオフで買ってきたもの。筋書き、忘れてしまったので読み直しをした。
左遷人事が大手音響機器メーカー宣伝部副部長広岡修平に唐突に下された。得点こそはあっても失策などは思い当たらない。むしろ、正義感と仕事への情熱にあふれた広岡は同期中の出世頭として次期部長の逸材と目されていたのだ。不可解な人事に広岡は自ら調査に乗り出した。やがて様々な思惑と陰謀が見えてくるのだが。
組織内出世の足の引っ張り合いでごちゃごちゃだ。三田常務というまともの上司も登場するが、他は自分の出世しか頭にない人ばかり。広岡の正義感も組織の中では通用しない。最後は関連子会社へ出向させられてしまう。
古い小説だが、テンポが良いので面白く読める。


金融腐食列島[完結編] 消失 第3巻 高杉 良 ★★☆
東京に戻り、人事・総務担当常務となった竹中治夫は、老害顧問退治のため、頭取から「Xプロジェクト」を任される。一方、あからさまな裁量行政でJFG潰しを狙う金融当局の締め付けは、日々厳しくなるばかりであった。BIS規制割れを回避して生き残るには、もはや大増資しかない。奔走する竹中らの前に立ちはだかる行内抗争の壁。そんなとき、最大案件である巨大スーパーダイコーの不良債権に関する隠蔽資料がリークされた。(以上、本の紹介書きより)
前に図書館へ入荷注文していた本。いつまで経っても入荷の連絡がなかったので、もういいやと思っていた。先日図書館へ行ったら新刊コーナーにあった。なんで連絡くれないんだろうか。
消失第3巻…正義派竹中は行内の双方の派閥から頼りにされてきた。利用されているともいえそうだが。いつも嫌な役回りばかりさせられる。
危機感なきトップの存在、合併行ならではの内部対立、問題は尽きない。
竹中の銀行への金融庁の厳格検査が迫る。第4巻の発売が待たれます。


ケインとアベル<上・下> ジェフリー・アーチャー ★★★
「1906年、ポーランドの片田舎で私生児として生まれたヴワデクは、極貧の猟師に引きとられた。時を同じくしてボストンの名門ケイン家に生まれたウィリアムスは、祝福された人生を歩み始めた。ドイツの侵攻で祖国も肉親も失ったヴワデクは、数奇な放浪の旅の果て、無一文の移民としてアメリカに辿りつき、アベルと改名した。
ずば抜けた商才と頑張りで社会の底辺からのし上がったアベルは、全米に広がるホテル・チェーンを作りあげた。一方、出世コースを突き進むケインは、その確かな判断力を認められて大銀行頭取の地位をつかんだ。
ホテル王と銀行家、ポーランド移民と名門出のエリート。
いずれも典型的といえるふたりのアメリカ人の、皮肉な出会いと成功を通して、20世紀のアメリカ史が蘇る大ロマン。」
昔、アメリカでテレビドラマ化されたものをNHKで放送したことがあった。それをを見たので小説は読まなくても良いなと思っていて、長い間J.アーチャーの代表作であるにもかかわらず手を出さなかった。
J.アーチャーの小説でまだ読んでいないのに「ケインとアベル」、その続編「ロスノフスキ家の娘」があった。両方とも大作だ。
最近、「チェルシー・テラスへの道」を読んでアーチャーの小説の面白さを再認識。
興奮が冷めないうちにこの際未読の作品も読んでおこうと、ブック・オフで古本を購入した。
ケインとアベルが生まれてから亡くなるまでを描いた大河ドラマ。両者、とにかくまっしぐらに突っ走る。やられたらやり返す。J.アーチャーらしい小気味の良いテンポ、展開が楽しい。
文句なく楽しめる。
これらは一冊105円で売っていた。4冊で420円。
これで数週間楽しめるのだから本は古本を買うか図書館で借りるかに限る。
なお、J.アーチャーの短編、この頃読み直しています。


チェルシー・テラスへの道<上・下> ジェフリー・アーチャー ★★★
何年か前にブック・オフで買ってきた、なぜか読まないでそのままにしたあった。
いつでも読める・・・と思っていたのかな???
ロンドンの下町で貧しい野菜売りの家に生まれたチャーリー・トランパーは、祖父から譲られた手押し車を唯一の資本に商売を始めた。彼の夢は、高級商店街チェルシー・テラスの全店舗を買収することだった。第一次世界大戦が勃発し、出生したチャーリーは、生涯の敵ガイ・トレンザム大尉とである。やがて彼は、幼馴染で共同経営者となったベッキーと、長い苦難の道を歩き始めた。
アーチャーの作品には善と悪が極めて両極端で、両者が憎み合い、果てしない争いを続ける展開が良く出てくる。チャーリーの敵トレンザムは長生きしないんだが、母で息子を溺愛するミセス・トレンザムはすごいワルでチャーリーを困らせる。ミセス・トレンザムの執念は凄まじい。そしてついにチャーリー一派とトレンザム一派の対決のときがくる。
残酷な場面もまりますが、思ってもいないような筋書き、楽しいです。


金融腐食列島<完結編> 消失 第2巻  高杉 良 ★★★
金融腐食列島〈完結編〉 消失 第2巻を読んだ。
やっぱ、このシリーズは面白いよ〜。

金融当局が銀行に強いる過酷とも言える不良債権処理。その渦中で主人公・竹中は、危機に陥った取引先企業「すずき」の再生を信じ、救済のために奔走する。ライバル銀行による融資引き上げを阻止し、ようやく再建のスキームが整ったときJFG銀行に対する金融庁の特別検査が行われる。同じ頃、JFG銀行内部では、急協立銀行系による「グリーン化作戦」が始まろうとしていた。
竹中はついに離婚する。真紀との関係をより一層深めていく。
竹中チームと金融庁検査官の対決は緊張感がある。
ライバルでありずる賢い杉本が頭取のポストの向かって動き出した。
竹中にいろいろとプレッシャーをかけてくる。
頭取は支店から本部へ戻った竹本に老害相談役鈴木を排除するよう命令する。
竹本の信念と命令は符合するわけであり、竹本はいよいよ鈴木と対決する。
続き、読みたいよ〜。

現在第3巻まで出ているらしい。糸魚川図書館へリクエストしておいたよ。
早く届かないかな〜。


バイアウト 真山 仁 ★★★+★  いつ読んだか忘れるので今度から読んだ日を記入しておくことにします  08.04.01
「ハゲタカ」に引き続き一気に読破。分厚い単行本だったが全編に渡りスリリングだった。江上○さんなどの小説より内容が濃く真実味がある。日本を売ったハゲタカと呼ばれている鷲津は実は日本人の誰よりも「大和魂」に燃えた男であった。日本人らしい誠実感あふれる芝野も潰れかかった企業の再生を任されれば、あるときは冷酷なコストカッターとなる。ただ、カットされるのは不真面目な人たちであり、真面目で勤勉な人たちには暖かい手、気持ちを差し伸べる。
部下アランが自分のせいで殺されたという罪の意識から自暴自棄に陥っていた鷲津がアランの両親から渇を入れられて不死鳥のように復活すし、アメリカの世界的軍事ファンド「プラザ・グループに立ち向かう。
興奮が冷めたら、また読みたいよ。。。


ハゲタカ 真山 仁 ★★★+★
前にNHKのテレビドラマでやっていた。題名は同じでもストーリーは少し似たところもあるが、基本的には違う。上、下巻でかなり長いが、スリリングな場面が連続していて面白い本だった。バブル経済崩壊前後の日本を舞台にバンカー芝野とハゲタカ鷲津の企業買収をめぐる戦いが繰り広げられる。登場人物も個性的だ。正統派芝野の行動、信念に賛同しない人はまずいないだろう。ハゲタカ鷲津の行動、信念は外資、外資と恐れられるが日本の金融業者や経営者の悪い部分を陽にさらす。鷲津が太陽製菓の経営陣を退治する場面なの、良くやってくれたと思う人も多いだろう。僕はそう思いました。バルクセールの場面などスリリングだ。鷲津は宿命の復讐を心に誓ったゴールデンイーグルだった。カッコイイよ〜。芝野も。
またこんどゆっくり読み直したい。


国税査察官 立石勝規 ★★
このコーナ、ほんと久しぶりの更新。
糸魚川図書館で面白そうな本を探していたがこれといったものがなかった。立石かつのりさんという人の本を借りてきた。たたき上げの国税庁査察官の物語であった。コンパクトにまとめられていて読みやすい。そうそう、借りたきっかけは主人公篠崎はなんと糸魚川税務署に3年間配属されていたことになっている筋書きであることにある。篠崎は国税庁で問題を起こし、糸魚川税務署へ左遷されていたのであった。その篠崎が国税庁へ復帰。全日本的な規模の脱税疑獄に挑戦する。国税庁や検察庁の内部の雰囲気が大雑把だが伝わってくる。厳格な内部組織にも出世欲の絡んだえげつない抗争がある。裏切り者もいる。これは普通か・・・


金融腐食列島<完結編> 消失 第1巻  高杉 良 ★★★
このコーナ、久しぶりの更新。
金融腐食列島シリーズの最新刊。バンカー竹中は頭取の逆鱗に触れて左遷される。家庭生活も離婚が現実味をおびてきて破綻寸前である。大阪の支店へ左遷され、不良債権処理に忙しい毎日である。竹中は貸しはがし行為に突っ走る銀行の姿勢には批判的で、スズキ工務店への支援を続けようとし、他の銀行の支店長と張り合ったりする。
以前沈没してしまったカミソリ佐藤をはじめ、老害顧問鈴木会長や竹中と同期でやり手の嫌われ者杉本が復活してくる。竹中の不倫相手麻紀も登場し、竹中との結婚の話しが出てくる。
阿川頭取は退任に追い込まれ、鈴木派の頭取に代わるが、副頭取は竹中を評価している。以前のストーリからかなり飛躍するような展開であるが、相変わらずの切れの良さで一気に読むことができた。早く第2巻が読みたい。このシリーズを読んできた人にとっては待望の進展だ。


「点と線」「時間の習俗」  松本清張★★☆
「死体は切なく語る」から数冊読んだが特におもしろいものがない。
これからどうすれば良いのだろうと迷っていたら、図書館の奥に「松本清張全集」があった。全何巻かわからないが、全部読めばすごいなと思い、とりあえず第一集を借りてきたのがこれ。今度、まとめて「松本清張」コーナーを作りたい。


「死体は切なく語る」   上野正彦★☆
死体シリーズ最新刊。
「死体」を題材にした法医学者で死体監察医であった著者の体験談である。怖いお話しではあるが、ところどころに著者のあたたかい人間性が感じられる。


「名もなき勇者たちへ」 落合信彦 集英社★★☆
「世界最強の情報機関モサド(イスラエル)から、CIAに送り込まれた女性刺客<カリプソ>。
実存の人物をモデルにした女性エージェントの数奇な運命と、非情な世界に生きる人々の、国家の存亡をかけた戦い。そして知られざる人間ドラマ!!」
ということであるが、一番読み応えがあるところは最後の数ページだった。
<カリプソ>こと美人エージェントのレイチェルと、レイチェルのターゲットである、日本人ヒットマン藤岡の劇的な出会い…
感動的であり、323ページ以降を何回も読み直しました。


「円満退社」 江上 剛  ★★
この人の本が連続している。しかし、意識的にそうしようと思っているのではなく、図書館へ行くと、ちょうど目に付くところにあるのだ。これで3冊目だが、今回のも比較的新しい本だ。(2005年11月)
この本は今まで読んだこの人の本とは趣が全然違う。
銀行のリストラとか不良債権処理、繰延税金資産、統合などをテーマにした経済小説なのだが、進め方がマンガチックであり、本質的には悲惨なのだろうが、楽しみながら読める本だ。
今までは暗い雰囲気の本が多かったが、この人にとっては珍しい試みであり、成功していると思おう。
今日限りで定年退職の銀行支店長の長い長い、一日。円満に退職して退職金を手にすることしか頭にない銀行支店長。悪妻と手を切って、退職金で人生をやり直したい。しかし、最期の日に限り、事件が連続して発生。降りかかってくる火の粉は限りない。
果たして退職金を手にすることができるのか。
個性的な登場人物がおもしろい。


大罪 江上 剛 (徳間書店)  ★★ 
前回の金融庁物語と同じ作者の金融小説を読んだ。
スバル銀行頭取の野望はとどまるところを知らない。続投を目論む頭取の執着。交代を狙う秘書室長の野心。
正視できないような滅茶苦茶な展開であるが、何とか最後まで読み終えた。頭取の暴走から、秘書室長の立ち回り、そして幕引きまで、多くの金融小説と流れは一緒。それとは別に、空想的な味付けが濃く、現実には有りえないような場面が出てきて、そこのところがイマイチぴんとこなかった。

今年4月の発刊であり、金融庁物語より早い。金融庁物語が直球で、こちらは変化球だ。

「霞が関中央合同庁舎 第四号館 金融庁物語」 江上 剛 (実業之日本社)  ★★
長い題名。
最新刊。
メガバンクへ金融庁の検査が入る。
金融庁の検査責任者は松島哲夫。彼は、厳格であり、メガバンクが自浄機能を持つまで、徹底的に追求する。弟の松島直哉はそのメガバンクのミドル。兄弟の思いは一致するのだが、いかんせん、敵対する組織の職員。兄弟は互いを思いやるが、メガバンクという組織は、彼らの思いを一筋縄では受入れない。彼らの苦悩は続き、そして!!!!!
「人は誠実に、正しく行きなければならない。組織のなかにいて、道を見失ってはいけない」と教えているように思う。
この類の小説で今まで読んだものは全部銀行側のものだった。役人側のものは初めて。
江上 剛さんの本は、テンポが早く、スパスパ進む。どうしても高杉 良さんと比較してしまう。
高杉さんの本には「空気」のようなぽわっとした感じがあり、味わい深い。
江上さんは一直線。単刀直入。


千秋の賛歌  落合信彦 集英社  ★★
(あらすじ)
アメリカ国防総省は「核」以上の、とんでもない兵器開発を企てた。
イスラエル特殊部隊の佐川は、人類を危機にさらすその計画の阻止を命じられる。
国家と個人、組織の虚実、嘘と策略が張りめぐらされた地獄にあって、男たちは友情を信じる…
(感 想)
テーマが壮大であり、個性的な登場人物も魅力的。
佐川の友人や部下、科学者との信頼関係には胸を打たれる。
ストーリーは意表を突くが、分かり易く、テーマの割りにテンポは軽快なので、すらすら読める。
闇に隠れた各国の武力組織の実態を知らしめることも、テーマの一つ。
日本の航空自衛隊の戦闘機操縦能力はダントツで世界トップクラス。太刀打ちできるのはイスラエル空軍くらい。…とか
著者の情報収集に基づいている思われる国際舞台の描写には真実味があるぞ。
しかし、友情、最終兵器、特殊部隊、国家…など的(マト)が多すぎて、それぞれへの突っ込みが浅いのか、小説として読んだときの深みは今一歩だったのだ。う〜ん残念!
でも、短時間のうちに読めて、これだけ楽しめれば良いと思わなければ。それに最新刊なので、もうけました。
ところで関係ないですが、サスペンス小説といえばジェフリー・アーチャーです。
アーチャーの作品で「十一番目の戒律」というのがあり、テーマは「千秋の賛歌」と似ています。深み、スリル、真実味…こちらは満点であり、お勧めの本です。



ノーサラリーマン・ノークライ (泣かないサラリーマンなんていない)  半場利一  冬幻社 ★★☆
よくあるサラリーマン小説だと思うが、おもしろく読めた。
主人公は優柔不断な銀行員カネテツ。上司や組織の方針へ反発の抱き、「いつかは会社を辞めてやる」と思いつつ、結局は組織から離れることが出来ず、ずるずると現状を引きずる姿は、一般的なサラリーマン像だと思う。

魅力的な脇役が揃っている。
「ガンメン」…顔が大きいからガンメン
先輩であり銀行を辞め、会社を起したが失敗し、フィクサーみたいな闇社会の仕事人になった。闇社会へ入る前、辞めた銀行の貯金口座へ入金になった運転資金を、口座開設店以外の支店でおろそうとしたが、キャッシュカードの磁気が弱くなっていておろせない。口座開設店でないと、対応ができないという女性行員の説明に、決済時間が迫っている「ガンメン」は懸命に懇願するが、どうにもならない。たまたま、その支店に来ていた「カネテツ」に「ガンメン」は助けを求めるが、「カネテツ」はどうにもできず、そこから逃避。たぶん「ガンメン」は資金をおろすことができず、破綻した。そして闇社会へ。闇社会人「ガンメン」と銀行員「カネテツ」は仕事の成り行きで偶然再開した。当然、「ガンメン」は「カネテツ」を冷たくあしらう。しかし、最後は先輩「ガンメン」は「カネテツ」に仕事上の助け舟を送る…

「シート」…業績管理が厳しく、Excelシートを連想させるからシート
カネテツの上司(部長)。サラリーマンに徹していている。カネテツをいじめたりしているみたいだが、カネテツが
一人前になることがうれしそう。「カネテツ、軸足は常に前におけ」「エレベーターで一直線に頂上に上る必要はない。
非常階段から登ることも出来る」といった励ましの言葉が印象的。
そんな「シート」も日常はサラリーマンに徹しすぎた反動からか、不倫をし、それが発覚し左遷されることになった。
心配したカネテツはシートのところへ様子をうかがいに行き、そこでサラリーマンの顔を外した人間「シート」と
お酒を酌み交わす。人間「シート」はその後…

その他、多くの個性的な登場人物
チナツ…カネテツの恋人 サージ…カネテツの幼馴染 メーデルとハーデル…メーデルは目が出ているカネテツの新上司 ハーデルは調子のいいカネテツの同僚
今井さん…カネテツの遊び相手 などなど

当然、登場人物と自分の人生と重ね合わせると思うが、だからといって、自分の生き方を変えるとか、そういった深刻
なところまでは行かないだろう。自分の姿を鏡に移してみて、「しかたないな〜」とつぶやく、そんな感じです。
おもしろい小説です。



死とむきあうための12章 柳田邦男他 日本死の臨床研究会編 人間と歴史社 ★★
死は必ずやってくる。生から死へ向かうに当たってどのような心構えや振る舞いをすべきか。12人の識者が自論を展開。トップバッター柳田邦男氏の話しが一番印象的。
柳田氏はドイツ童話作家アクセル・ハッケ作「ちいさなちいさな王様」から次の文を引用。
「おまえたちは、はじめにすべての可能性を与えられているのに、それが少しずつ奪われて縮んでいくのだ。おまえたちの想像の世界はどんどん小さくなっていく。…大きくなるというより、小さくなっていく、といったほうがいいのではないか?」
これは真理かも知れないが、逆にそうは言っても無理なものは無理であり、精いっぱい努力すれば「ちいさな王様」であってよい、という話しをする。
心理学者ユングから引用
「弾の軌跡が標的に達して終わるように、人生は死をもって終わる。したがて、死は人生全体の目標なのだ。その人生の上昇と、その頂点さえも、目標につまり死に到達しようという、段階であり、手段であるに過ぎない」
最後に「人は生きてきたように死ぬ」



エディプスの恋人 筒井康隆 新潮文庫 ★★★
七瀬三部作の最終編です。「家族八景」「七瀬ふたたび」そしてこの「エディプスの恋人」となります。
この三部作は大変楽しめます。が、エディプスは全二編より少しわかりにくく、つかみ所がないです。
物語は淡々と進み、七瀬の心もそうなったのですが、人間は皆、見えない力に支配されているのだな、というようなことを感じます。七瀬は見えない力を見ることができたのですが、それは見えない方が良かったような感じがします。見えても何もいいことはないようです。
「七瀬ふたたび」で登場していた、七瀬の同僚(超能力者)も最後の方で少し出てきますが、結局、実存することはできず、少し、哀しかったです。
この本も、エライ昔に購入。今でも、愛読者がいるようです。



宣告 加賀乙彦 新潮社 ★★
1979年、つまり今から、え〜と27前に初版で買い、1度読んで感動し、本棚にしまってあった本です。いつか読み直したいと思っていましたが、なにせ厚く、二段組でしかも字が細かいので、なかなか実行できませんでした。今回、時間がかかりましたが読みました。とはいっても、途中、かなり飛ばしたところもありました。若いとき、よくこんな渋い小説を読んだもんだなと思いました。死刑囚、楠本の死刑が執行されるまでの獄中の記録です。たくさんの登場人物いますが、楠本が文通していた恵津子さんという女子学生の設定が今ひとつ不自然に思いながら、読んでしまいました。昔はもっと素直に読めたのに。昔読んだときほど、感動しなかったのは、僕自身が中年になって、スレてきたからでしょうか。この小説のテーマは「生きるということ」だと思います。


ハーリー・レイス自伝 キング・オブ・ザ・リング ハーリー・レイス エンターブレイン ★☆
図書館から、この本を借りてきて読みました。昨日、職場で株主総会のようなものがあり、僕は応援要員で出勤しました。終了後、同僚2人と合計3人で軽く一杯ということで、飲みに行きました。そこで、なぜか昔のプロレスの話しで盛り上がりました。数日前に図書館へこの本を注文してあり、届いていることを話すと、喜んでいました。皆様このレスラーを憶えていますか。チャンピオンで味のある試合をしていました。ハリー・レイスはレスラーとしては乱暴だが、実は誠実で真面目な人らしい。人情味があり、友情を大切にする人らしいです。現役を退き後、プロモーターなどを経て、現在はレスリング学校を開いているみたいです。当時のプロレスの裏側まで言及してあります。
巻かれている帯に
「プロレス低迷の時代に送る全レスラー必読の書!! なぜハリー・レイスはすべてのレスラーから尊敬されるのか? それは”男の中の男”だからだ!」と書かれてあります。
僕の年代の人であれば、レスラーでない一般の人も、懐かしく読めると思います。
糸魚川図書館にあります。


「鬼上司」これがすべての仕事 染谷和巳 三笠書房 ★☆
いろいろためになることが書いているので、目次を見ながらワードに打っておいた。どこまで真似できるだろうか。精鋭を少人集めるのが少数精鋭主義ではない。十人でやっていた仕事を三人でやらせれば、この三人は精鋭になる。小数にすれば精鋭部隊ができる。これが少数精鋭主義だ。強い組織は、無駄な人間に無駄な仕事をさせない。したがって、規模の大小を問わず、会社は絶えず、「この仕事を切り捨てられないか、この人なしですませられないか」と問いかけていかなければならない。これが組織活性化の第一条件である。とのことである。


シベリウス2番 マリス・ヤンソンス/オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 ★★
以前からこの曲のCDが欲しかった。LPのときはオーマンディ(RCA)のが好きだった。CDになってから、ヤルヴィという人のものを買ったが、荒っぽく、線が細い演奏でほとんど聴かず、いつの間にかCDは紛失した。今回ヤンソンスの旧盤を買って聴いた。明るいシベリウス。このオケを聴くのは初めてだが、響きに厚みがない。一生懸命に演奏している感じが伝わってくる。響きに透明感がある。この曲は終曲に向かって、徐々に盛上がって行くが、そのあたり、ヤンソンスの演出に過不足はなく、無難に進む。メロドラマのBGMみたいなところがある。聴き終わると、ある程度は納得させられるが、僕が思っていたシベリウスとは少し違うな、と思った。このCDしかないので、また聴き直してみたい。録音はあまり良くないと思う。


なるほどコーヒー学 金沢大学 コーヒー学研究会編 旭屋出版 ★★
休みの日はコーヒーを何杯か飲みます。そのこととは関係ありませんが、この本は金沢大学大学院教授の工学博士広瀬幸雄さんが中心となってまとめられた、コーヒー百科事典のような本です。図書館で取り寄せてもらい、拝見しました。難しいことが書いてあるのかと思いましたが、わかり易く、字も大きく、イラストも挿入されていて親しみやすい、気楽に読んだり、ながめたりできる楽しい本でした。
「ハードな毎日の生活の中でちょっとした時を与え、会話が弾み、リラックス効果から冷静さを取り戻し、常に気分転換ができる健康的な飲物である。それはコーヒーから漂うふくよかで香り高いフレーバーから、味覚が生まれ、満足できる美味しさの味わいを与えられるからである。その香り高いフレーバーと味わい深い味覚から1000年以上の長期間にわたり、多くの人々から自然飲料としての支持を受け、そこから文化、芸術等が育っている事実を見るとまさに「コーヒーは健康で楽しく飲める自然飲料であり、健康飲料である」と言われる事が納得できる。」(本書より引用)
コーヒーに対する愛着がより一層深まり、もう一杯飲みたくなります。この本は糸魚川図書館にあります。


新・その人事に異議あり 高杉 良 講談社 ★★
主人公は下着メーカー(ワコールだと思われます)の広報部中間管理職の女性。不倫相手は現社長の息子であり、現社長は彼を次期社長と決めているが、彼は株を公開している企業が世襲制をとるのはよくない、としてそれを固持している。途中から若干複雑な展開となり、不倫は遂げられず、女性は別の男性と結ばれる。別の男性は現社長の過去の不倫相手の子供で、親は現社長。したがって専務と男性は異母兄弟。男性はストーカーみたいな感じで彼女に付きまとうが、最後は根性で彼女をものにした。著者の小説の割には読み応えがなく、あまりおもしろくなかった。だいたい主人公の女性みたいな人は、本当にいるのだろうか。美人で、仕事ができて、かなり…で。現社長は一代で会社を築き上げたプライドがあり、独善的だが、勤勉であり、どこか憎めない。現社長のしゃべりっぷりが楽しめた。


瀬川晶司はなぜプロ棋士になれたのか 古田 靖 河出書房新社 ★★
年齢制限でプロ棋士になれなかった瀬川さんが、仲間の支援や検定勝負を経てプロになるまでの様子をリポートした本。アマ、プロ問わず瀬川さんを多くの人々が応援した。そして具体的に行動した。瀬川さん一人ではいくら強くても絶対にプロにはなれなかった。閉鎖的な棋士の世界。奨励会を通じて年間4名のプロ棋士が誕生するそうだが、それはプロを志した少年達のほんの一握りであり、それ以外は夢半ばで挫折する。棋士はタイトルを獲るより、奨励会からプロ棋士になったときの方がうれしいと言う話を聞いたことがある。それほど大変な世界。謙虚な瀬川さんの人柄もすばらしいが、瀬川さんを支援したアマ強豪やプロ棋士の人物像も良く描かれていて、感動する。将棋の世界、というだけの話しではもったいないと思う。


モーツァルト レクイエム ペーター・シュライヤー/シュターツカペレ・ドレスデン ★★★さらに★
1982年の録音。カペレはもちろん、歌手や合奏はあたたかく、やわらかい響きを奏でる。保守的な演奏で中庸を射ていると思う。聴くごとに味が出るタイプ。飽きないモーツァルトだ。このCDは買ってから数度聴いてそのままになっていた。CDではホグウッド盤をたまに聴いているが、なぜシュライヤー盤が無視されていたかというと、多分地味だったからだと思う。古楽器独特の鋭角的な演奏に比べ、確かにまるく収まったような感じだが、今聴くと、地味ながらしっかりと聴かせる。これは年配者向けのレクイエムかも知れない。劇的な印象はなく、大人しい。だが、カペレは例によって渋い光沢を放ち、いろいろな意味で貴重な演奏であることが、今回聴いてわかりました。また、度々聴きたい名盤だと思います。


孤独でも生きられる。 曽根 綾子 イースト・プレス ★★★
今あなたに必要な言葉が必ず見つかります。ということで、図書館で借りてきてパソコンに全部打ち込んでしまいました。自分だけで見るのであれば法律違反にはならないと思います。著者の言葉集はいくつも出ていますが、それらを再編集したものらしい。控えめだが著者なりの真理をしっかりと主張していて、気持ちがいい。
以下著書の最後の方より
この世で誰一人として、完全に幸福だ、などといえる生活をしている人はいない。いまの日本人も、健全な感覚を持った人なら誰でも、自分の生活に悲しみと不安をも持ちながら、同時に、抱き合わせのように与えられているささやかな安らぎや小さな幸福に満足しなければならないのかな、と考えている。
片隅に生きるということはほんとうにすばらしいことなのだ。


乱気流 小説大経済新聞 高杉 良 講談社 ★★☆
今日は2006年ゴールデンウィーク中の5月4日。天気がよく、ついつい外出したくなるが、どこへ行っても人ばかり。前から読みかけていた本を読み上げたい。この本は読み応えがある。だが、おもしろいという意味ではなく、本の厚さがかなりあり、読むのに我慢を要するということである。登場人物も大変に多い。誰が誰なのかわからなくなってしまうので、最初はメモをとらなければならないくらいだ。本では経産新聞となっているが、日経新聞のことらしい。昔、実際にあった日経新聞子会社の振出手形流失事件を柱として、新聞社の裏側、あまりきれいではない体質が暴露されている。冒頭の部分、この事件に関連して社長が検察へ出頭する場面があり、緊張するが、その後、延々と新聞記者の苦労話だとか、報道者としての真実性と現実の矛盾とか、いろいろな話が続き、退屈する。ただ、途中で著者の金融腐食列島に登場する竹中ではないかと思われる人が別の名前で登場する場面もあり、そういうところはおもしろい。ようやくあと1/4ほどのところまで読んだ。すると手形流出事件の話に戻り、少し面白くなってきた。この連休期間中に読み終えたい。
5時間後、読み終わりました。実際要した時間は1時間くらい。残りの1/4は迫力があり、一騎に進みました。金融腐食列島新聞社版とい言えるでしょう。結局、勇気ある1人のミドルの反乱で馬鹿社長は追われることとなりました。公共性の高い新聞社にこんな馬鹿社長がいたとは信じがたいことです。馬鹿社長やその取り巻きの報復を恐れ、ほんの数名以外のミドルは口を閉ざしていました。僕もサラリーマンなんで、このような状態は理解できますが、あまりにも酷い。
勇気ある1人のミドルは社員株主でもあり、馬鹿社長をはじめ、当時の経営陣に対して株主代表訴訟を起こし、現在も裁判中らしいです。1名のミドルは本当にガッツがあり、当然でしょうが、尊敬します。1/4はサラリーマンの薬になること間違い無しです。、また、残りの1/4を読んでみたいと思いました。


明日の記憶 荻原 浩 出版社を控え忘れました。 ★★
主人公佐伯は50歳で若年性アルツハイマー病にかかってしまう。僕と同じ年代なので、切実な思いで読んでいったが、途中で恐くなり、飛ばし飛ばし進んだ。こういう読み方は良くないが、僕も歳をとるにつれ、忘れっぽくなってきたし、「あれ」「これ」とかを使い、固有名詞が出てこないことが多くなっているから。感想をまとめれば書きたいことがたくさんあるが、僕や僕の家族もこうなる確率があるということなので、他人事として記すことは難しい。冷めているようだが、これを読めば、この病気にかかってしまったときの心構えができるということか。


座礁 巨大銀行が震えた日 江上 剛 出版社を控え忘れました。 ★★
金融腐食列島に続き、金融物を読んだ。第一勧銀の総会屋に対する不正融資、利益供与事件でトップ11人が逮捕され、1人が自ら命を絶った。その記録。明らかに不正なのに、組織としては不正ではないと勝手に理由を付けている。世間と、組織の物差しの乖離はおろかなほど大きい。組織を出れば一般人であるのに、組織に組すればその組織の方針に従わなければならないという現実も悲しい。川田総務部長が主人公渡瀬広報部次長に問い詰めれて発した答え。「俺は組織のために精いっぱいやってきた。俺の力が不足していたために。会長や頭取に申し訳ない」…この期に及んで、そうじゃないだろう。悪いのは延々としきたりを引きずってきた組織なのだろう。組織のなかでも自分を見失わないようにしないとね。この小説は暗い。地検の捜索の迫力も真実味がある。渡瀬が重要時効を相談しようと、取締役を探すが、みんな酒を飲みに行って誰もいない…


新・金融腐食列島 混沌 高杉 良 講談社 ★★★
金融腐食列島シリーズ「再生」の続編。以前読んだが、どんなストーリーだったか思い出せず、また読むことにして、図書館から借りてきた。協立銀行広報部長竹中。トップが人材難であり、あまり能力が高くない頭取阿川のフォローに苦労する。竹中や塚本の良識派。実際はこんな人でも銀行で生きていけるのだろうか。まったく常識のない宮田副部なども登場する。人事抗争や権力抗争など、僕らの考えが及ぶ世界ではない。これから新銀行JFGになっていくところで終わりになるが、続編があればぜひ読みたい。フィクサー児玉は亡くなる。追放されたカミソリ佐藤が少し登場する。


ブルックナー4番 ブロムシュテット/ドレスデン シュターツカペレ ★★★さらに★
このCDは昭和60年3月購入。3,800円もしていました。当時安いステレオ機器を所有していて、この名演奏、名録音CDを何度も聴き直し、響きのすばらしさを堪能していました。ただ、正直なところ、不遜な僕はカペレの実演を聴いたこともなかったくせに、余りにも美しいこの響きは、オーディオの世界であり、録音技術のおかげで、実演より誇張されているのではないかと思っていました。
ちょうどその頃、このコンビが来日。大阪のザ・シンフォニーホールでのコンサートで、この曲が演奏されました。運よくそれを聴くことができました。あの時の感動は今でも忘れません。演奏、響きともCDとまったく変らない、いいえそれを凌ぐすばらしさでした。このオケはホールの良し悪しの影響を大変受けやすいタイプだと思います。カペレ独特のあたたかく、やわらかい音が真に体感できるホールは当時の日本ではここしかなかったかも知れません。この来日のさい、東京の人見記念講堂でのブラームス1番も聴きましたが、響きはやっぱりシンフォニーホールに遠く及びませんでした。それが演奏全体やオケのイメージとして残ってしまうので、このオケを聴くときはホールにもこだわる必要があると思いました。
今、DVDプレーヤー+ヘッドフォンでこのCDを聴いているところですが、シンフォニーホールの舞台上のカペレの雄姿が目に浮かんできます。

本拠地 ドイツ センパー・オーパーでのドレスデン・シュターツカペレ
「このオーケストラはけっして華々しくはないがただならぬ響きを放つ」(カラヤン)
「このオーケストラは世界で一番素敵なオーケストラである」(僕)
大指揮者カラヤンの言ったことと同じ配列で僕の思いを書けるなんて、自分のHPだけだ。
1000円CD「英雄の生涯」を聴きました。すごい演奏で、すばらしさは僕には言い表すことができない。後世に伝えたい文化財的名演。ドイツ ゼンパー・オーパー。一度、こんなホールでドレスデンを聴いてみたい!!
http://www.kapelle.jp/classic/dresden/top_dresden.html


「いい人」をやめると楽になる 曽野綾子 祥伝社 ★★★
この本は病気がきっかけで知り合ったDさんから教えてもらって読んだ本です。もう何年も前に買って以来、度々、断片的ですが読み返しています。さっきみていたら「取り柄のないことが取り柄である」ということばが目に入り、読んで感心しました。何度読んでも新しい発見がある、僕にとっては貴重な一冊。曽野綾子さんはこのようなエッセイ集をたくさん出しています。プロの作家が書いているのだから当然だとは思いますが、どうしてこんなに上手に文章が書けるのか。


続 金融腐食列島 再生 高杉 良 角川文庫 ★★★
@金融腐食列島 A呪縛 金融腐食列島U B再生 続 金融腐食列島 は高杉良の金融三部作と呼ばれているとのことです。今回はBの何回目かの読直しです。
登場人物 竹中(主人公 銀行の上級中間管理職で会長や頭取クラスからも評価されている。同期や部下の信望も厚い。派閥や人事抗争、困難な仕事に巻き込まれながらもかろうじて自分を見失わず突き進む) カミソリ佐藤(頭取の座を虎視眈々と狙う野心家。竹中や杉本を自分の子分だと思っている我がままな常務。能力的には頭取に相応しいものを持っているが、反面自己中心的で、非情さ、冷徹さも半端ではない) 杉本(竹中と同期で同期のなかでは自分が一番であると自分では思っている。当初は佐藤の一の子分を自称していたが、銀行の汚職事件で検察に引っ張られたことをきっかけに佐藤から離れる。しかし野心を貫徹するために、再び佐藤に擦り寄らざる得なくなるが、その緊密性は以前ほどではなくなる。竹中をライバル視しつつ、自分は竹中より上だと信じて疑わない。そして竹中を頼りにもしている) 児玉(大物フィクサー。ヤクザよりもっと恐そう。だが自分が好む相手の面倒見は大変良い。竹中をかわいがっている) 鈴木(自分を銀行の天皇だと思っている前頭取の我がままの極まった取締役相談役) 斉藤(割りと良識のある頭取) 知恵子(竹中の妻。性欲が盛んで不倫をしていた) 清水さん(さわやかな美女で竹中の部下であり、竹中の不倫相手でもある)
以上の他にも多くの登場人物がいる。みんな人間臭く、個性的である。
このシリーズは
同僚のO(オー)君から教えてもらったことがきっかけで、愛読書となり何度も読むことになりました。なお続編C新 金融腐食列島 混沌 が発刊されていまして、これも読みましたが、また図書館から借りてきました。読み直そうと思っています。


考えすぎ人間へ ラクに行動できないあなたのために 遠藤周作 青春文庫 ★★☆
息子がブックOFFで買ってきたのを借りて読んだ。題名をみて二十歳前の男子が買ってくるにはえらい渋い本だと思ったが、内容は古里庵先生がこれから社会へ出でいく青年たちへ、爽やかで心温まるメッセージを送る、というようなものであり、僕のような中年が読んでも肯けるものである。(以下、本の一節より)
「世の中に小心でない人間などいないのです。臆病でない人間などいないんです。人間は誰でも欠点を持つのだから、ありのままの姿を見せればいいんです。悪いところをみせまいとし、いいところだけを出そうとするからムリが生じ、それがイヤ味にもなる。だからかりにいいところを3つみせたら、ダメなところも3つみせるようにしたらいいわけです」


奇跡のブランド「いいちこ」 パワーブランドの本質 平林千春 ダイヤモンド社 ★★
焼酎「いいちこ」がなぜ売れるのかを分析している。うまいがそればかりではなく、宣伝の方法が上手なのだ。そして宣伝に引っ張られて本体の品質が向上したようだ。広告をあるデザイナーに委託した。そのデザイナーは次々に詩的な広告を発表した。メーカーはデザイナーが作り出す幻想的な広告のイメージに近づこうと、品質の向上に努力した。以下、本書より 『「ユーザーの信頼こそ最大の企業資産」「顧客志向」とか「お客様本位」とかいくらでもいうことはできる。だが本当に顧客に生かされているということをすべての企業活動の背骨にし、それをもとに自らのありようを徹底的に磨くことがどこまでできるだろうか。幻想としての顧客、仮定としての消費者でなく、一人の生きている実在としてユーザーの思いと期待と夢、そして自らの行動のなかにいか入力できるか。それこそ大切ではないのか。結果として「いいちこ」はそれを可能ならしめた。』
複雑でわかり難い説明である。要するに路線を決めたら信念を持ってそれを推し進めることが大事であり、お客の目先を変える狙いで次々に新商品を打つが、それが単にブームで終わるような商品ではだめである。「いいちこ」は一途であり、成功例だというようなことを言いたいのだろうと思う。あまり難しい言い回しは読む気を失わせる。おもしろいところも多いが、全体的に言い回しが大げさで、飛ばし飛ばしでないと読めない。


人間風車 ビル・ロビンソン自伝 ビル・ロビンソン メディアファクトリー ★☆
引き続いてプロレス関係。2冊とも図書館で借りてきた。彼はレスラーとしては日本人に最も親しまれた1人だと思う。掲載されている写真には昔テレビで見た憶えがあるような場面があり懐かしい。ビル・ロビンソンは今、日本に住んでいて高円寺でレスリングのコーチをしているとのことである。世界を渡り歩いた1人のプロレスラーの軌跡であり、人は誰でも歴史を持っているものである。


人生は3つ数えてちょうどいい レフェリー和田京平 メディアファクトリー ★☆
ジャイアント馬場のプロレス団体でレフェリーや付き人をしていた著者の思い出をまとめたもの。マット界の裏側に触れたりプロレス経営の難しさが述べられている。懐かしい外人レスラーの名前が出てくる。それらのレスラーの性格や癖など面白く書かれていて、そこらへんが一番楽しめた。


シューベルト 交響曲3番 8番(未完成) クライバー/ウィーンフィル (グラモフォン) ★★★
3番は1986年に東京のコンサートで演奏される予定だった。これを聴きに行くことになっていた。シューベルトといえば「未完成」と「9番」であり、3番は全然知らなかった。コンサートまでには覚えなければと、クライバーのLPをカセットテープに録音し、朝、目が覚めるとテープレコーダーのスイッチを入れ布団のなかで聴いていた。そしてコンサート当日クライバーの気が変わり、これは演奏されずモーツァルトとなった。モーツァルトはふわっとした気持ちのいい演奏だったと記憶しているが、せっかく準備をしていたのにこれが聴けず大変に残念に思った記憶がある。今はLPではなくCDを持っていてたまに聴くことがある。聴くたびに新鮮な気持ちを味わえる。8番(未完成)。発売当時、ある評論家が「よい演奏だとは思うが、クライバーはわがままだと言わざるをえない。もっと作曲家に敬意をはらうべきだ」といようなことを書いていた。こんな意見を気にしていてはクライバーを聴くことはできない。「運命」のような「未完成」です。


富豪刑事 筒井康隆 新潮文庫 ★★★
僕が持っているのは昭和63年第16刷版文庫本である。この文庫本の初版は昭和59年である。古い小説だが大変に面白い。推理小説とあるが犯人が誰であるかはあまり関係がない。個性的な登場人物、刑事ややくざの言動の面白さは最高である。。こんなことは現実にはありえない。しかし単なる空想物語ではなく、カフカの小説のように人の心理の裏側を刺激するような不思議さがある。「時をかける少女」とか「七瀬ふたたび」とか「家族八景」とか読んだことがありますか。僕はずいぶん昔に読みました。また読みたいと思います。


人生論手帳 山口瞳 河出書房 ★★★
山口瞳のエッセイは昔よく読んだ。先日図書館へ行ったら目にとまり借りてきて懐かしい思いで読んだ。執筆はもう何年も前であり、作者も故人となっている。江戸っ子らしい気質ではあるが、どこか気弱ではかなく頼りないところが人間的な温かさをかもし出している。「素気ない美しさということ」というエッセイが一番気に入った。僕の書棚には男性自信シリーズ、血涙10番勝負シリーズ、その他のエッセイ集や血族という純文学小説がある。また読み直しをしたくなった。


変身 カフカ 新潮社版 ★★★
不条理文学の代表作で不朽の名作なのであるが、何度読んでも理解できなかった。作者は自分のやりきれない心理を何かの形で人に伝えたいのであろうと思う。人の心理は深い。というような漠然としたことを読むたびに思った。最近、このように思う。この作品は名作だからといってまともに読んで理解しようとするのは不可能である。むしろ漫画的に気楽に読んだ方がよい。例えば鼻血を出したらガメラの血のように緑色だった。さあどうするということと同じである。気楽に読めば到達不可能な底が案外見えてくるかも知れない。ピカソの抽象画のようである。作者に対しては失礼かも知れないが感じ方は見る側、読む側の自由である。そんな読み方をしても、読み終わった後は不思議な気持ちになるのは変わりないのだが。


白道 眼科医、カルテの余白 池田成子 桂書房 ★★★
若い現役女性眼科医のエッセイ集である。若いにもかかわらずものごとを深く考え、しっかりした主義主張を持っている方だと感心した。日常のエピソードがさわやかに記されている。全編に渡り著者の心の芯の強さが感じられた。ご自分の患者に読んでもらいたかったのではないかと思う。医者で本を書いている人は数え切れないほどだが、自分の患者に読んでほしいと思っている人は多いかも知れない。


運命の息子 ジェフリー・アーチャー 新潮文庫 ★★★
図書館で借りて読み、よかったのでブックオフで下巻を買ってきた。そして何度も読み直した。アーチャーを読むのは久しぶりだったが、アーチャーも歳のせいか全編的な密度は以前の作品ほど濃くはなく、特に前半は緊張感を維持して読むのは難しい。カートライトとダヴェンポートという実の兄弟が、兄弟とは知らずにアメリカ大統領選挙を戦うという大胆な設定である。読みどころは絶対に後半である。2人が実の兄弟であることがわかるまで、そしてわかってからの筋書きは出来すぎていると思うがいつものアーチャーの小説と同じく感動してしまう。警察や裁判官など登場人物が個性的である。二人の政敵エリオットの徹底した悪役ぶりはすごい。

十一番目の戒律 ジェフリー・アーチャー 新潮文庫 ★★★
再読。CIA(アメリカ中央情報局)の天才暗殺者フィッツジェラルド登場。筋書きのつかみ難いところもあるがよくできたサスペンス映画を見ているようである。フィッツジェラルドの渋さと女性長官デクスターの憎々しさが印象に残る。フィッツジェラルドが片腕を失いつつ愛する妻の元へ帰還するシーンは感動的だった。

白い巨塔 山崎豊子 新潮文庫 ★★★
一昨年頃、テレビで放映された新版の総集編を見て読みたくなりブックオフで全5巻を購入した。説明をするまでもなく現代小説の名作。財前五郎と里見脩二という人間性が対照的な二人の医者を中心に、複雑な関係で人と人がぶつかり合い、大学医学部のどろどろした世界が展開される。患者の命より自分の出世を優先する財前と、常に冷静に聖人的医師としての生き方を貫く里見。人はどう生きるべきかということを教えてくれる。長い小説なので連休などの時間があるときに読むことをお勧めします。

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